【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は請求項1の特徴を含む方法によって解決される。
【0006】
さらに、本発明の根底をなす課題は、この方法を実施するための装置を提供することである。
【0007】
この課題は請求項9の特徴を有する装置によって解決される。
【0008】
有利な発展形態はそれぞれ従属請求項の対象である。
【0009】
本発明に係る方法では、物体を透過する波長の光を照射することによって物体が照射される。さらに、直接透過した照射光の部分の検出を少なくとも部分的に回避しつつ、1回反射した照射光の部分の検出を少なくとも部分的に回避し、複数回反射した照射光の部分が検出される。従って、複数回反射した照射光の部分は検出されるが、同時に直接透過した照射光の部分の少なくとも一部と、1回反射した照射光の部分の少なくとも一部は検出されない。さらに、検出した照射光の部分の強度の差を評価することによって、欠陥が識別される。光とは、物体を透過する波長を有する限り、基本的にあらゆる種類の電磁波であると理解すべきである。本発明の意味における直接透過した照射光の部分は、事前に反射しないで物体を透過する光部分である。本発明の意味における欠陥とは、例えば、粒界を含む一般的な結晶欠陥でなく、物体の機械的な損傷、例えば、ひび割れ、微小ひび割れ、空洞、機械的歪みまたは包有物である。
【0010】
照射光は、反射する場合には、大部分が物体の界面で、すなわち上面および下面で反射する。このように複数回反射した光部分は物体内において、直接透過した光部分または1回のみ反射した光部分と比較して、長い路程距離を進む。この場合、物体の不均一構造、例えば、多結晶半導体物体の結晶構造、特に多結晶シリコンウェハーの結晶構造に関する情報が失われる。その代わりに上記の界面の状態、すなわち表面の状態が検出信号にとって必要である。表面が比較的に粗いと、上記の複数回散乱はランバート反射に類似し得る。上記の複数回反射はランバートの多数回反射と解釈することができ、比較的に等方性の光が物体内に生じる。直接透過した光部分または1回だけ反射した光部分の検出が少なければ少ないほど、そして検出された光が頻繁に拡散されればされるほど、検出された信号内の結晶構造の情報の消滅が大きくなる。検出された信号が画像に変換されると、画像の表示において結晶構造が対応して大きく悪化する。
【0011】
これに対して、例えば、多結晶半導体ディスク内に割れ目が存在すると、この割れ目はそこで支配的な結晶構造に沿って形成される。従って、割れ目の表面が非常に滑らかであると仮定されるので、割れ目の表面では全反射が行われる。割れ目の方向に伝播する照射光は、割れ目の鏡面で全反射する、すなわち鏡のように反射する。この鏡面は基本的には任意の方向に向けることができるので、割れ目における全反射は、シリコンディスクの上面または下面を明るくする。これに対して、明るくされない側は暗くなる。その結果生じる明暗特性は、割れ目を確実に識別するために、画像処理アルゴリズムで利用することができる。その際最後に、照射光の検出部分内の強度の差が評価され、これによって欠陥、特に上記割れ目が識別される。割れ目の代わりに、例えば、包有物が検査物体内に存在すると、この包有物は明るい背景の前で暗く写り、適当な画像処理アルゴリズムによって同様に識別可能である。
【0012】
上記の欠陥は
図1〜
図3に概略的に示してある。
図1は、従来技術に係る直接透過光法の赤外線カメラによって撮影した多結晶シリコンディスク20の画像を概略的に示している。この画像には、多数の粒界24が確認可能である。しばしば、このような粒界に沿って割れ目が延在する。
図1にはこのような割れ目22が縁取りされている。この割れ目の延在は太い輪郭線によって人工的に強調されている。この人工的な強調がないと、割れ目22は実際には粒界24と区別がつかない。このことが、このような材料または類似の材料の場合に欠陥の検出を困難にする。既に述べたように、
図1の撮影は直接的な透過光で行われた。すなわち、シリコンディスクは一方の側から局部的に照明され、そして他方の側でカメラを用いてまず第1に直接透過光が検出された。シリコンディスク20の全体画像を発生するために、シリコンディスクはカメラと使用光源によって走査された(abgerastert)。
【0013】
これに対して、本発明に係る方法によって提案するように、直接透過光部分の検出の少なくとも一部と、1回反射した光部分の検出の少なくとも部分的に回避されると、
図2の図示にほぼ一致するシリコンディスク20の画像が得られる。
図2が示すように、これにより、粒状組織24の大部分が消えるので、割れ目22の識別がきわめて簡単になる。割れ目22の周囲において、結晶構造24が
図1よりもぼんやり見える。なぜなら、ここでは、直接透過した光部分の一部および/または1回反射した光部分の一部が検出されるからである。
【0014】
しかしながら、直接透過した照射光の部分の検出と、1回反射した照射光の部分の検出を完全に回避すると、
図2で見える粒状組織24を同様に消すことが可能である。この場合、
図3に示すような画像が得られる。ここで、割れ目22ははっきり見える。なぜなら、粒状組織24が完全に消されているからである。
図3に概略的に示す画像はシリコンディスク20の表面粗さによって決定される。特にシリコンブロックを切断又は鋸引きして酸性エッチング剤でオーバーエッチングした多結晶シリコンディスク20の場合に、ランバートの多数回反射、ひいては局部等方性照射がきわめて近似的に実現可能であることが実際にわかった。
【0015】
本発明に係る方法の有利な変形例では、照射光が物体の表面に集束される。これによって、物体を非常に強く局部的に照明することができる。
【0016】
物体を照明するために、好ましくは線形光、特に有利には物体の表面に集束される線形光が照射され、そして照射光の複数回反射した部分が線に沿って検出される。この検出は例えば、ラインセンサ(線形センサ)によって、特にラインカメラによって実現可能である。
【0017】
本発明に係る方法の有利な変形の場合には、不均質物体内の欠陥が検出される。本発明の意味における不均質な物体とは、画一的な基本構造、例えば、画一的な結晶構造を有していない物体であると理解すべきである。従って、多結晶物体、特に多結晶半導体材料はこのような不均質物体である。
【0018】
本発明に係る方法は、シリコン体、好ましくはシリコンディスクおよび特に有利には多結晶シリコンディスクの欠陥を検出する際に有効であることが実証された。一方では、本発明の意味におけるシリコンディスクは、切断又は鋸引きされただけのシリコンディスクまたは切断され又は鋸引きされオーバーエッチングされたシリコンディスクまたは完成したまたは部分プロセス化されたシリコン太陽電池である。
【0019】
本発明の発展形態では、シリコン体の欠陥の検出時に、1100〜5000nmの波長の光、特に1100〜2000nmの波長の光が照射される。
【0020】
本発明に係る方法の有利な変形では、切断又は鋸引きによってシリコン材料部材から分離されたシリコン体の欠陥が検出される。その結果、シリコン体は少なくとも一部が切断又は鋸引きによる粗い表面を有する。それによって、シリコン界面で照射光の統計的拡散が生じ得る。この拡散の統計はランバート反射によって比較的に良好に説明することができる。
【0021】
シリコン体が欠陥の検出の前に少なくとも部分的にオーバーエッチングされる場合には、本発明に係る方法によって欠陥を検出するために、酸性エッチング剤によるシリコン体のオーバーエッチングが有利であることがわかった。これに対して、アルカリ性エッチング剤によるオーバーエッチングは欠陥検出を困難にする。
【0022】
本発明に係る方法のより好ましい実施形態では、局部的な照明のために、光は物体の一方の側の少なくとも一部に照射され、物体の同じ側で複数回反射した照射光部分が検出される。これはいわゆる入射光方法である。この入射光方法は、特に、物体の一方の側に、入った光を透過しない層、例えば、金属コーティングが設けられていると有利である。なぜなら、局部照明のための光源と、複数回反射した光部分を検出するための検出器とを、金属コーティングしていない物体の側に配置することができるからである。
【0023】
有利な変形では、光が物体の表面に対して斜めに照射される。これにより、光は物体内で長い路程距離を進む。これは、結晶構造または他の不均質性を考慮しないようにするために有利であることがわかった。
【0024】
上記の入射光方法の代替的な変形では、局部的な照射のために、光が物体の第1側の一部に照射され、複数回反射した照射光部分が物体の第1側とは反対側の第2側で検出される。この方法はしばしば透過光方法と呼ばれる。
【0025】
透過光方法の場合にも、光は好ましくは物体の表面に対して斜めに照射される。これは入射光方法に関連して既に説明したように、欠陥の検出に有利に作用する。
【0026】
本発明に係る方法の有利な変形では、局部的な照明のために、照射光が物体の表面の少なくとも一部にわたって、好ましくは物体の側面全体にわたって案内される。このような案内は連続的に行うことができるかあるいは走査可能である。これにより、物体の完全画像を生じることができる。物体を検出器および光源と相対的に動かすことにより、照射光を物体の表面の少なくとも一部にわたって案内することができる。
【0027】
本発明に係る装置は、物体を透過する波長の光を物体に局部的に照明するための光源と、光源から出射された光を検出するための検出器とを備えている。さらに物体を光源によって局部的に照明可能である照明領域の少なくとも一部と、直接透過した光部分の射出領域の少なくとも一部とが、検出器の検出領域の外に位置するように、検出器と光源が配置されている。直接透過した光部分の射出領域とは、直接透過した照射光部分が物体から外に出る物体の表面領域であると理解すべきである。検出器の検出領域は、検出器によって検出可能である物体の領域を指す。
【0028】
本発明に係る装置の変形では、1100〜5000nmの周波数を有する光、特に1100〜2000nmの周波数を有する光が、光源によって放出可能である。
【0029】
同様に、好ましくは、1100〜5000nmの波長領域、特に好ましくは1100〜2000nmの波長領域において感知する検出器が設けられている。
【0030】
本発明に係る有利な変形では、光源から出射された光を物体の表面上に集束するためのレンズが設けられている。これにより、光源から出射され物体に照射された光を強く集中させることができる。
【0031】
本発明に係る装置の有利な変形は、検出器の検出領域を通って物体を搬送することができる搬送装置を備えている。このような装置は好ましくは、しばしば「インライン」運転と呼ばれる連続的な運転のために設計されていると有利である。これにより、多数の物体を低コストで検査することができる。
【0032】
有利な変形では、本発明に係る装置は、照射光の検出された部分の強度の差を評価するための評価装置を備えている。
【0033】
本発明の発展形態では、検出器の検出領域が照明領域と、直接透過した光部分の射出領域とから離隔されている。これにより、直接透過した光部分の大部分の検出と、1回反射した光部分の大部分の検出を容易に回避することができる。
【0034】
本発明の変形では、光源と検出器が物体を支持可能な支持平面の同じ側に配置されている。この構造は入射光方法での欠陥の検出を可能にする。他の変形では、光源と検出器が支持平面の互いの反対側に配置されている。これは透過光方法での欠陥の検出を可能にする。
【0035】
本発明に係る装置の有利な変形では、光源として少なくとも1個の線光源が設けられ、検出器として、ラインセンサを備えた少なくとも1個の装置が設けられている。好ましくはラインセンサとして、ラインカメラが使用される。
【0036】
本発明に係る装置のすべての変形において、検出器は好ましくは、光源の波長領域で動作する対物レンズを備えている。その際、この対物レンズと、場合によっては、必要になるかもしれない検出器の他の光学要素とが、検出器の検出範囲内に位置する物体の領域を、検出器のセンサ、例えば、検出器のラインセンサに結像するように、設置されると有利である。
【0037】
有利な変形では、検査すべき物体、例えば、シリコンディスクが、検出器の検出領域を通って搬送される間に、完全に検出可能であるように、ラインセンサと、ことによると必要になるかもしれない対物レンズと、ことによると必要になるかもしれない他の光学要素とが配向されている。検査すべき物体、例えば、シリコンディスクが、検出領域を通って搬送されることにより、物体、例えば、シリコンディスクの全体画像を作成することができる。
【0038】
本発明に係る装置の発展形態では、線光源の長手延長方向と線光源の光軸によって形成された光平面と、ラインセンサの長手延長方向とラインセンサの光軸によって形成された検出器平面がそれぞれ、支持平面と共に、互いに平行な交線を形成するように、線光源とラインセンサが配向されている。検出器がラインセンサであり、光源が線光源であるので、光軸の代わりに、光学平面という用語を用いることができる。この場合、光平面は線光源の光学平面に一致し、検出器平面はラインセンサの光学平面に一致する。
【0039】
有利な変形では、支持平面の少なくとも一部が搬送装置、例えば、コンベヤベルトによって形成されている。このコンベヤベルトの上面は物体の支持平面を形成する。
【0040】
本発明に係る装置のきわめて有利な変形では、検出器あるいは特にラインセンサは、それらの光軸が支持平面の面垂線に対して平行に延在するように配向されている。
【0041】
本発明に係る装置の発展形態では、平行な交線の間隔が可変であるように、装置が形成されている。これにより、直接透過した光部分の検出または1回反射した光部分の検出をどの程度回避するかを、簡単に調節することができる。
【0042】
本発明に係る装置の有利な変形では、光源と検出器からなる群のうちの少なくとも1つの要素が可動に支持されている。特に、この要素は回転可能および/または揺動可能に支持されている。これは、光源と検出器の方向を互いに容易に適合させることを可能にする。これにより、本発明の変形では、検出器平面または光平面と支持平面との交線を、互いに平行に容易に向けることができる。
【0043】
次に、図に基づいて本発明を詳しく説明する。合目的である限りは、同じように作用する要素には、同じ参照符号が付けてある。