(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6295392
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】保護手袋
(51)【国際特許分類】
A41D 19/00 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
A41D19/00 N
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-234441(P2017-234441)
(22)【出願日】2017年12月6日
【審査請求日】2017年12月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509209753
【氏名又は名称】杉本 尚美
(72)【発明者】
【氏名】杉本 尚美
【審査官】
▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3081979(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3138629(JP,U)
【文献】
実開昭56−146716(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/00 − 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に遊戯用起毛部を有する第1の繊維シートの裏面に、動物の爪又は牙の貫通を防止し手及び前腕を保護する第2の繊維シートを重ね、前記起毛部を有する第1繊維シートの生地がフェルト生地、キルティング生地よりなる前記第2の繊維シートの生地がフリースよりなり前記第1の繊維シートより第2の繊維シートの繊維密度が高いことを特徴とする保護手袋。
【請求項2】
表面に遊戯用起毛部を有する第1の繊維シートの裏面に、動物の爪又は牙の貫通を防止し手及び前腕を保護する第2の繊維シートを重ね、前記起毛部を有する第1繊維シートの生地がフェルト生地、ウール生地、ニット生地、シャーリング加工タオル生地、ネル生地、コーディロイ生地よりなり、前記第2の繊維シートの生地がキルティング生地よりなり前記第1の繊維シートより第2の繊維シートの繊維密度が高いことを特徴とする保護手袋。
【請求項3】
第1繊維シートと第2繊維シートの間に空間部が形成され、前記両シートが摺動することを特徴とする請求項1又は2に記載の保護手袋。
【請求項4】
5本指部、掌部、手の甲部が両シートで覆われていることを特徴とする請求項1又は2記載の保護手袋。
【請求項5】
手の先端部又は甲に遊戯用飾りを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の保護手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ペット、小型動物と遊ぶ時、接触をする時に爪のひっかけ傷等から手を保護する保護手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ペット、小型動物と遊ぶ時、接触をする時に爪のひっかけ傷や噛まれた時の歯型の傷跡がつく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実登3138629
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の文献には、愛玩動物の牙や爪から人間の手や腕を保護する作業性の良い手袋が記載され、この手袋はアラミド繊維又はこの上にゴムをコーティングした構造が示されている。しかしながら、この文献の手袋は、動物病院やトリミング、ペットショップでの動物の対応作業用であって、ペットの遊戯用途は考慮されていない。この構造の手袋は本発明者が実験したところアラミド繊維のみでは動物の牙や爪が貫通することが判明した。また、ゴムをコーティングしたものは、ペット(猫)が嫌がり警戒して近寄らないことも分かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、この構造の手袋はペットや小型動物と遊ぶ時にペットが好むとともに、ペットの爪による引っかき傷や歯又は牙(以下歯又は牙を総称して牙と記す)で噛まれた時の怪我を防止することを目的とする。すなわち本発明は、人の痛みや怪我を防止しかつペットのストレスを緩和でき、動物も人も楽しく、快適に安全に動物との遊び方を広げ、接することが可能とし、前述の欠点を解決しようとするものである。本発明は、指や手、腕を保護する為に指先から肘あたりまである長さで牙や爪が貫通しにくい二重構造の生地を使用し、動物も楽しく遊べるように起毛タイプの生地を用い、望ましくは動物の興味を引く為に飾りを設けた5本指の手ぶくろで、動物側のストレスと人に怪我や傷痕がつく問題点を解決している。本発明は、表面に遊戯用起毛部を有する第1の繊維シートの裏面に、動物の爪又は牙の貫通を防止し手及び前腕を保護する第2の繊維シートを重ね、前記起毛部を有する第1繊維シートの生地がフェルト生地、キルティング生地よりなり、前記第2の繊維シートの生地がフリースよりなり前記第1の繊維シートより第2の繊維シートの繊維密度が高いことを特徴とする保護手袋を提供する。又本発明は、表面に遊戯用起毛部を有する第1の繊維シートの裏面に、動物の爪又は牙の貫通を防止し手及び前腕を保護する第2の繊維シートを重ね、前記起毛部を有する第1繊維シートの生地がフェルト生地、ウール生地、ニット生地、シャーリング加工タオル生地、ネル生地、コーディロイ生地よりなり、前記第2の繊維シートの生地がキルティングよりなり前記第1の繊維シートより第2の繊維シートの繊維密度が高いことを特徴とする保護手袋提供する。上記構成において本発明は、第1繊維シートと第2繊維シートの間に空間部が形成され、前記両シートが摺動することを特徴とする保護手袋を提供する。本発明は上記構成において、5本指部、掌部、手の甲部が両シートで覆われていることを特徴とする保護手袋を提供する。本発明は上記において、手の先端部又は甲に遊戯用飾りを設けたことを特徴とする保護手袋を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の保護具はペットなどの愛玩動物と遊ぶ際、手や腕に怪我や傷痕がつきにくく、病原菌が傷から感染しにくくするのは勿論、動物と人との遊び方を広げ人と動物両方のストレスを解放するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の保護手袋の実施例である保護手袋の右手甲側全体図
【
図3】本発明に使用するフェルト生地フリース生地又はキルティング生地2層タイプの生地断面図
【
図4】本発明に使用するフェルト生地フリース生地又はキルティング生地2層タイプ生地断面図
【
図6】保護手袋の良い例(爪又は牙が貫通しない例)の断面図
【
図9】保護手袋の悪い例(爪又は牙が貫通した例)の断面図
【
図12】第1繊維シートと第2繊維シートの間に接着芯が有る良い例の断面図
【
図13】第1繊維シートと第2繊維シートの間に接着芯が有る良い例の断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の保護手袋は指先から肘あたりまでの長さと5本指を有するものが望ましく、素材は牙や爪が簡単に貫通しないよう第1繊維シートと第2繊維シートからなり、ペットも心地よい素材で興味を引き出すため第1繊維シートは起毛生地よりなり、好ましくは飾りを施すことで身近にペットと接することが自由自在となる。第2繊維シートは牙や爪が貫通しにくい生地を用いる。本発明をするにいたった経緯を説明する。先ず、本発明者は子猫を飼うことになり世話をしていく中で、子猫と一緒に遊ぶ時、家族の者や、親しい方の腕や手が引っかき傷や噛み跡により痛々しい様子を見て肘あたりまで覆う長い手袋があれば良いと考えた。一般的な猫との遊び道具は、よく市販されている猫じゃらしなどで猫の興味を引き出し猫じゃらしを追いかけさせたりジャンプさせたり、少し猫との距離を置く遊びが主流である。身近で遊ぼうとするとクッションや毛布などの物陰の下に指先を動かしその動きを猫が狙い飛びかかったりする遊び方となり、その時に傷を受けたりする。また、遊びの際、肘から下の腕に猫が前足と後ろ足で腕に絡みつき抱きかかえる姿勢(クリンチ)で蹴りを入れてくる動きに加え、噛みつくことは猫がよくする遊びである。このとき、皮膚に引っかき傷や噛み跡を受ける。このような傷を受けないために最初はキッチンにあるゴム手袋で猫の遊び相手をしてみたところ猫はゴムの感触を警戒して嫌がり近寄らなかった。そこで軍手(前述したアラミド繊維使用も含む)を使用し相手したところ警戒しつつ手に絡んでくるが軍手の生地は目が荒く簡単に牙や爪が皮膚に刺さった。次に市販のフリース生地素材の手袋で遊んだが生地は薄く軍手の時と同じく牙や爪が貫通した。そこで次に厚手の生地である道着の袖にゴムを通し腕につけて使用した。これも綿の厚手であるが目が荒く簡単に牙や爪が貫通し皮膚を傷つけた。
【0009】
猫はよく腕に抱きつき爪を立てて噛みつく動きが好きである。この動きに対応するため肘を覆うまでの長さがある手袋が必要になりミシンと数種類の生地を用意した。用意した生地はフェルト生地(2mm)、ニット生地(2mm)、ウール生地(2mm)、ネル生地(2mm)、コーディロイ生地(3mm)、シャーリング加工タオル生地(3mm)、キルティング薄手生地等である。前記の生地よりなる第1繊維シートは起毛タイプを使用した。なぜなら、動物は毛足のある起毛タイプのものやウール素材を好む。始めに起毛薄手生地の一枚もので指先から肘あたりまでの手袋を製作し猫と遊んでみたが牙や爪が貫通した。この時猫の反応も良かったので第2繊維シートを重ねることで皮膚を保護できるかと思い組み合わせを研究することになった。行き着いたのが第2繊維シートはフリース生地とキルティング生地が肌触り指の動き製作過程がよく猫の牙や爪の貫通がなかった。第1繊維シートは毛足のある起毛生地を用いることで猫は警戒することなくリラックスし遊ぶ。第1繊維シートと第2繊維シートを重ねることで間に空間部ができることにより、カーブした動物の爪の角度と繊維シートが動物の動きによってずれ動く(摺動)ことで第2繊維シートに貫通しにくくなる。牙に対しても同じ状況になり皮膚までとどきにくい形態となる。前記の形態状況で家庭で飼育する愛玩動物に小型犬や鳥やリス、鋭い牙や爪がある動物にも対応できる。また第1繊維シートの指先に羽根や目玉や小さなボンボリをとり付け物陰から猫にチラッと見せたところとても楽しそうに遊び満足し、飼い主に親しみを感じるのか良く甘えてきた。小型犬のジャックラッセルテリアと愛玩動物遊戯用保護手袋を付けロープの引っ張り合いをして遊んだ。以前はロープを掴んでいる指先まで牙が迫って時には牙が指の極まできて傷つくこともあったがそんな心配もなく楽しく遊べた。
【0010】
なお、生地によっては第1繊維シートと第2繊維シートの間に接着芯を合わせて空間部が無い状態でも牙又は爪の貫通が無く製作しやすく手の動きもスムーズであることが判明した。本発明の保護手袋は装着することでペットの猫や犬、鳥など家庭で一緒に過ごす小型の動物との遊びの幅を広げることができる。この手袋を用いることで遊ぶ時に牙又は爪によって人の手や腕に痛みや傷がつくことのストレスをなくすことと、室内で過ごすことでできるストレスともっと遊びたい気持ちを我慢するペット側のストレスを緩和し、発散することができる。保護手袋の素材は動物の興味をそそる起毛を有するネル生地、コーディロイ生地、フリース生地、ウール生地、ニット生地、フェルト生地、キルティング生地の素材で目の詰まった生地を重ねて作ることで簡単に牙又は爪が貫通するのを防ぐように作ることができる。さらに手袋先端にペットの好奇心をそそる飾りのビーズ、羽根、ボンボリで目のようなビーズ2個と耳のように見える飾り、尻尾を施すことで遊び方が増えて楽しく遊ぶことができる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図において、4は第1繊維シート、4b、4c、4d、4eはシート4の具体生地を示し、6は第2繊維シート、6a、6b、6e、6dはシート6の具体生地を示す。4bコーディロイ生地3mm、4cはフェルト生地2mm、4dはニット生地2mm、4eはシャーリング加工タオル生地3mm、6a はフリース生地2mm、6bはキルティング薄手生地を示す。
【0012】
図1において、1aは5本指部を有する保護手袋1の右手甲側本体で、愛玩動物の牙や爪が貫通して怪我や傷が手や腕につきにくくすることができる。2は滑り止め部保護手袋1の本体が肘で止まるようゴムで縮めて滑り止めのためである。
図2において、1bは保護手袋の右手掌側本体であり、その親指、人差し指、中指の先に導電部材3を施しタッチパネルの操作が保護手袋の脱着をしなくても安易にできるために取り付けられている。
図3は生地4dと生地6aのものを重ね合わせた保護手袋を作った場合の断面図である。
図4はフリース生地(4cと6a)のものを重ね合わせた保護手袋1を作った場合の断面図である。
【0013】
図5は
図1のA-A’の断面図であり、第1繊維シート4と第2繊維シート6の間には空間部5が設けられている構造となっている。
図6、
図7、
図8に示す各実施例において第1繊維シート4(4c、4d、4e、)と第2繊維シート6(6a、6b、)の間には空間部5を設けてあり、第1繊維シート4の生地がある事で牙又は爪7が引っかかり第1繊維シートを貫いても空間部5があるため牙又は爪7が引っかかった第1繊維シートがずれ動く(X方向に摺動する)ので牙又は爪7の角度が変わる。その結果、第2繊維シートまで牙又は爪7が届いても腕まで届きにくい。生地と生地との接合部8の縫目部分も厚みがあるため手・腕11まで牙又は爪7が届きにくい。
図9に示すように、第1繊維シート4eとして起毛の毛が細く繊維の密度のない生地4eは、第2繊維シート6aにも牙又は爪7が届き貫通しやすく手・腕11に怪我や傷がつきやすい。Zは傷ついた部分を示す。
図10は、ニット生地4dからなる第1繊維シートだけの一枚シートで成形すると牙又は爪7が手・腕11に貫通し直接皮膚に届き傷つき易い。
図11は生地4dと薄手生地6d、又は6eを使用した図である。ニット生地4d自体牙又は爪7が貫通しやすく第2繊維シートに薄手生地6d、6eを合わせても牙又は爪7が貫通することを防ぐことができない。
【0014】
図12、
図13においては第1繊維シート4e、4b、4dと第2繊維シート6b、6aの間に接着芯21を介してアイロン等で圧接して生地と生地を合わせた使用状態(良い例)の断面図である。空間部が無い状態でも牙又は爪7が貫通はなく製作時生地と生地がY方向にずれることがないので製作しやすく指の動きもスムーズである。
なお、接着芯21での接着時、圧接(プレス)力をかけすぎるとフリース生地6aが薄くなる事があり、プレスをかけすぎない事が望ましい。
【0015】
図14は、本発明の保護手袋1を装着し猫18が手腕にしがみついて遊んでいる時の使用状態である。
【0016】
図15は、本発明の保護手袋1を装着しロープ12を持って犬20と引っ張って遊んでいる時の使用状態である。
【0017】
図16、
図17は、本発明の保護手袋1を装着し物(イスの背もたれ22、クッション19)の陰から指先を動かし猫の好奇心を誘う飾りのビーズ13と羽根14を狙って猫が指に飛びつき遊んでいる時の使用状態である。
【0018】
図18は、本発明の保護手袋1に、愛玩動物が興味を持つ飾りのビーズ13と羽根14とボンボリ15と甲側に目のようなビーズ2個13と模写した耳17と模写した尻尾16を施した拡大図である。
【0019】
表1は、本発明者が作成した手袋を用いて、猫の牙又は爪7の貫通状況をテスト(実験)した表である。
【0020】
発明者は多くの材料で試験してみた。実験の結果その内、この表1は使用可能な例を記載したものである。表1において、無は牙又は爪7の貫通が無い事、有は同貫通が有る事を示す。指の動きの優は着用した時の指の動きが優れている事を示す。良はそれよりも動きが劣るけれども、この用途に使用可能である事を示す。
【表1】
【0021】
尚、本発明の保護手袋は、第1図に示す5本指部を有しないミトンタイプ(親指以外の4本指全体が包まれている構造)も用いることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 保護手袋
1a 保護手袋の右手甲側
1b 保護手袋の右手掌側
2 滑り止め部
3 導電部材
A 保護手袋の断面
4 第1繊維シート
4b コーディロイ生地
4c フェルト生地2mm
4d ニット生地2mm
4e シャーリング加工タオル生地3mm
4f ネル生地2mm
4g ウール生地2mm
4h キルティング薄手生地
5 空間部
6 第2繊維シート
6a フリース生地2mm
6b キルティング薄手生地
6e 綿薄手生地
6d ビロード薄手生地
7 爪
8 第1繊維シートと第2繊維シートの接合部の縫目
9 キルティング生地の表裏の生地
10 キルティング生地の中綿
11 手・腕
12 ロープ
13 ビーズ
14 羽根
15 ボンボリ
16 尻尾
17 耳
18 猫
19 クッション
20 犬
21 接着芯
22 イスの背もたれ
【要約】
【課題】
本発明は、この構造の手袋はペットや小型動物と遊ぶ時にペットが好むとともに、ペットの爪による引っかき傷や歯又は牙(以下歯又は牙を総称して牙と記す)で噛まれた時の怪我を防止することを目的とする。すなわち本考案は、人の痛みや怪我を防止しかつペットのストレスを緩和でき、動物も人も楽しく、快適に安全に動物との遊び方を広げ、接することが可能になり前述の欠点を解決しようとするものである。
【解決手段】
本発明は、指や手、腕を保護する長さで爪や歯が貫通しにくい二重構造の生地を使用し、動物も楽しく遊べるように起毛タイプの生地を用い、望ましくは動物の興味を引く為に飾りを設けた5本指の手ぶくろで、動物側のストレスと人に怪我や傷痕がつく問題点を解決している。
【選択図】
図6