(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、シーケンスバルブがソレノイドにより切り替えられる構造が開示されている。特許文献1でも本発明においてもロックアップ付き4速の自動変速機において、後述する
図2の係合表に示すように各変速段やリバース等は、クラッチC1〜C3、ブレーキB1〜B2のいずれか2つに係合させることで構成されている。係合表に示す通りブレーキB2自体は、リバースRやL(1速)レンジのときにのみ係合され、それ以外の前進走行時の変速段で係合圧が出るとインターロックは発生してしまう。
【0003】
詳細には後述するが、前進走行時のインターロックを回避するためには第1速以外でのB2圧供給の禁止が必要となる。また、リバースレンジにいきなり係合しようとするとショックが大きいためB2圧をソレノイドにより制御して係合し、係合終了し保持段階には供給元圧(ライン圧)に切り替える構造とすることが考えられる。すなわち係合制御中の油圧勾配を低勾配化して制御性を向上させつつ係合終了するとB2の必要圧を確保すべく元圧(ライン圧)を供給する方法である。
【0004】
このようにB2圧を係合可能(L(1速)レンジ又は第1速時)、B2係合禁止(第2〜4速時)、リバースのときの係合時や係合終了時のライン圧供給など状況に応じて切り替える必要があるため、専用のリレーソレノイドや制御用リニアソレノイドが必要となりコストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み創作されたものであり、自動変速機の油圧回路において専用のリレーソレノイドや制御用のリニアソレノイドを設けなくても、ロックアップ用のソレノイドやリレーソレノイド等をそのまま利用して、前進走行時のインターロックの発生を回避し、リバース時の係合ショックを防止しつつ制御性を向上させる構成の油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、自動変速機の油圧回路のリバースコントロールバルブを制御する油圧制御装置を提供する。このリバースコントロールバルブは、
(1)ブレーキ圧(B1圧)、クラッチ圧(C3圧)、リバース圧(R圧)及びB2コントロールバルブによる制御圧(B2制御圧)が供給されるポートが設定され、且つ
(2)これに対抗する側に、スプリング及びソレノイド圧(SL圧)が供給されるポートが設定される。さらに、(1)の圧力及び(2)の圧力のうち圧力の
小さい方向に内部のスプールの位置は切り替え可能であり、その位置により、前記B2コントロールバルブによる制御圧(B2制御圧)又は前記リバース圧(R圧)が選択的されてブレーキ(B2)に放出され、リバースシフト時に、前記B2コントロールバルブによる制御圧(B2制御圧)から前記リバース圧(R圧)に切り替わる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の油圧制御装置によれば、自動変速機の油圧回路において元々必要であったロックアップ用の制御ソレノイド(SLUソレノイド)及びリレーバルブ(SLソレノイド)、ロックアップリレーバルブを利用して、2種のスプールバルブ(例えば、リバースコントロールバルブ、B2コントロールバルブ)を追加するだけで特に専用のリレーソレノイド等を設けなくても、前進走行時(Dレンジ時)に前進には無関係なB2圧の発生によるインターロックを防止することができる。また、リバースレンジで、係合過渡中はB2制御圧を入れることで油圧勾配を緩やかにして制御性を向上させることができ、保持時(係合終了後)は元圧(ライン圧)に戻すように切り替えることができる。さらに、本発明はソレノイドがフェール状態でのリバースシフトであってもB2ピストン室にリバース圧(R圧)を供給できるため、リバース走行を保障することができる点でも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず前提として自動変速機の油圧回路について説明する。
図1は本油圧制御装置における油圧回路の主要部のみを抽出したものであり、本発明は、上述するように既存のロックアップ制御用の部品を活用し、これに2つのスプールバルブを追加するだけで足りる点が特徴であるため、ここでは自動変速機の油圧回路のうちロックアップ関連部品と関連スプールバルブ、マニュアルバルブのみを表示している。また、本発明の油圧制御装置において係合するクラッチとこれに対応する変速段を示す係合表が
図2に示されている。
【0011】
まず、前提として
図1のマニュアルバルブに流入するライン圧とLUCコントロールバルブ14に流入するセカンダリ圧について説明する。オイルポンプ(図示せず)からの油がプライマリーレギュレータバルブ(図示せず)に流入し、ライン圧を生成・調圧して各種部品に送られる。
図1の油圧回路ではマニュアルバルブ12のポートにライン圧は流入している。これがマニュアルバルブ12に流入するライン圧となる。また、プライマリーレギュレータバルブの下流にはセカンダリーレギュレータバルブ(図示せず)が配設され、プライマリーレギュレータバルブへの信号圧を生成するSLTソレノイド(図示せず)がセカンダリーレギュレータバルブにも流入し、作動させる。セカンダリーレギュレータバルブから放出された油は、
図3のLUCリレーバルブ18に流入するセカンダリ圧となり、LUCコントロールバルブ14を経由してその下流にあるロックアップクラッチ20やクーラーに到達する。
【0012】
上述するように本発明の油圧制御装置は、自動変速機の油圧回路において元々必要であったロックアップ制御用の部材をブレーキB2圧の制御に兼用し、これに所望の部材を追加して構成するものであり、
図1の油圧回路でもこれに相当するロックアップ用のリレーバルブであるLUCリレーバルブ18とこれを動作するSLソレノイド16、ロックアップの係合制御を行うためのSLUソレノイド13とこのLUCコントロールバルブ14と、が設けられており、さらに2種のスプールバルブであるリバースコントロールバルブ10と、B2プレッシャコントロールバルブ22とが設けられている。
【0013】
次に
図2の係合表を参照する。
図2は各変速段(リバース等含む)と各クラッチの係合の対応が示されている。各変速段はクラッチ又はブレーキを2つ係合させることで成立する。パーキングPとニュートラルNはいずれのクラッチにも係合していないことが前提となる。まず、リバースレンジRはクラッチC1とブレーキB2とが係合している。また、第1速(D1)は、クラッチC2とワンウェイクラッチF(図示せず)とが係合している。また、第2速(D2)は、クラッチC2とワンウェイクラッチFから持ち替えてブレーキB1とに係合している。第3速(D3)は、クラッチC2とブレーキB1から持ち替えてC3とが係合している。さらに、第4速(D4)は、クラッチC3とクラッチC2を持ち替えてブレーキB1とが係合しており、Lレンジの1速(L)は、クラッチC2とワンウェイクラッチを持ち替えたブレーキB2に係合している。
【0014】
本発明の油圧制御装置は、換言すればB2圧の制御をロックアップ用のものを使って、専用のソレノイドを要さないという構成のものである。そして、B2自体はリバースレンジのときやLレンジ又は第1速のときに係合させたい一方、それ以外の変速段のときに係合圧が出てしまうとインターロック現象が発生する。したがって、第2〜第4速には係合を禁止しておかないといけない(禁止要件がある)。また、
図2の係合表に示すようにC1はリバースにしか係合しないので、Nレンジからリバースに係合しようとすると、いきなりC1とB2の両者ともに係合油圧をかけるとショックが出てしまうので、B2への油圧入力を制御することで係合ショックを低減している。リバース時にB2に係合圧をかける場合、そのときのB2の必要圧は高く、リバースが逆転出力させないといけないのでB2ピストン室が受ける圧力は大きくなる。したがって、リバースの時だけライン圧値を変更したりして対応するが、リバース時のB2への係合圧を高い油圧まで制御できるようなソレノイド電流値に対する油圧特性を設定するとソレノイド電流値に対する油圧勾配(制御効果)が急になり、制御性が低下し、好ましくない(油圧勾配が急になると制御し難い)。
【0015】
したがって、油圧勾配を緩やかにすべくリバース時にB2係合中(係合過渡中)はB2プレッシャバルブ22による制御圧(B2制御圧<ライン圧)をB2係合圧としてB2ピストン室入れることで油圧勾配を緩やか設定し、B2係合が終わると切り替えてライン圧を入れるという構成を採用する。
【0016】
換言すれば、
図2の係合表の油圧回路では、Lレンジ又は第1速ではB2が制御できるようにし、第2〜4速のときにはB2係合を禁止し、リーバス時の係合過渡中はB2制御圧を入れ、そして係合が終了すれば供給元圧(ライン圧)を入れるという要件がB2の制御要件に課せられることとなる。本発明の油圧制御装置では、このB2制御の要件を専用のソレノイド等を準備せず、元々油圧回路内にあるロックアップ用のソレノイドやリレーソレノイドをそのまま全部使うような構成にしている。
【0017】
図3は、
図1の油圧回路のリバースコントロールバルブの動作状況を示したものである。リバースコントロールバルブ10の内部には左右に滑動するスプールが配設されている。
図3(a)はスプールが左に移動しており、
図3(b)はスプールが右に移動している。リバースコントロールバルブ10は、ポート107でB1の係合圧を、そしてポート106でC3の係合圧を入力させている。そして、ポート104にSLソレノイド(リレーソレノイド)16の出力圧も入力されている。また、リバースコントロールバルブ10はポート103とポート104にリバース圧、ポート102にB2プレッシャーコントロールバルブ22からのB2の制御圧が入力するように構成している。
【0018】
図3(a)の位置にスプール10aが配設されているときには、ポート102に入力されたB2の制御圧がポート105からB2ピストン室に流入し、B2に係合圧が与えられる。また、
図3(b)の位置にスプール10aが配設されているときには、リ
バース圧(R圧)がポート102を介してポート105から流出されB2の係合圧となる。リバースコントロールバルブ10のスプール10aの動作は、ポート107、106,104から入力されるB1圧,C3圧、SL出力圧の差で制御する。
【0019】
具体的には、
1)第2速〜第4速でB2禁止の動き
まず、Dレンジの第2速,第3速,第4速で走行しているとき、すなわちB2係合を禁止したいというときには、B1かC3のいずれかの圧がポート107又はポート106に入力されている状態になる。したがって、スプール10aは
図3(b)の位置になる。このときポート103に入力されるリバース圧は、ポート105から出力されるB2ピストン室圧とつながることなるが、Dレンジで走行しているのでリバース圧はマニュアルバルブ12でドレーンされており、ポート105からの出力圧もなくB2ピストン圧は解放される。
【0020】
2)Lレンジ又は第1速のときのB2係合の動き
次に、Lレンジ又は第1速で走行しているときにはB1圧,C3圧も出ない(
図2参照)。また、スプール10bはリバースコントロールバルブ10の内部右側とスプリング10bで接続されており、スプリング10bは他の力が作用しない場合はスプール10bを右端に滑動させる。したがって、Lレンジ又は第1速のときにスプール10aはスプリング10bのみの力が作用するため
図3(a)の位置になる。その結果、ポート105から出力されるB2ピストン室への係合力はポート102に入力されるB2制御圧となる。
【0021】
3)リバース時の係合過渡中の動き
また、リバースの係合制御するときにはスプール10aは
図3(a)の位置になり、ポート102へのB2制御圧がポート105からB2ピストン室に入り、B2制御圧がB2係合圧を形成する。リバース時にはC1,B2が係合し、B1圧とC3圧が入力されないためスプリングで左に動くからである。ただし、リバース圧も発生するのでポート101から入力されるリバース圧でスプール10aを右に押す力も発生するが、これに対してはSLソレノイド16をON(ロックアップはしない:後述)にしてポート104からのSL出力圧と釣り合わせることでスプリング10bの力だけ作用させてスプール10aを左位置に維持させている。
【0022】
4)リバース係合制御が終わったときの動き
さらに、リバース係合が終了しリバースレンジ保持状態になったときには、SLソレノイド16をOFFにしてポート104のSL出力圧を抜いて、ポート101からのリバース圧によりスプリング10bの力に打ち勝ってスプール10aは右に動き
図3(b)の位置になる。したがって、供給元圧(ライン圧)がポート103からポート105を介してB2ピストン室に入る。ライン圧が入力されるのは、マニュアルバルブ12から出力されるライン圧がポート103につながっているからである。
【0023】
このときSLソレノイド16はそもそもロックアップ用のソレノイドなので、これをONにするとロックアップする。まず、前提として
図3(b)のとき(Dレンジ時)にはLUCリレーバルブ18がロックアップを制御できる状態になる。そして、普通のDレンジのときには。SLソレノイドがONのときにはリバースコントロールバルブ10が
図3(b)の状態になりロックアップ制御できる。一方、リバースのときだけはロックアップリレーバルブ18(LUCリレーバルブ18)の後側(左端ポート)にリバース圧を引いているので、
図3(a)の状態が維持されSLソレノイド16をONしてもロックアップすることができない。したがって、SLソレノイド16をONしてもリバース時にロックアップはせずリバース走行を保障することができる。
【0024】
以上、本発明の自動変速機の油圧制御装置についての実施形態およびその概念について説明してきたが本発明はこれに限定されるものではなく特許請求の範囲および明細書等に記載の精神や教示を逸脱しない範囲で他の変形例、改良例が得られることが当業者は理解できるであろう。