特許第6295448号(P6295448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 池田食研株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6295448
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】消臭剤及び抗酸化剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20180312BHJP
   A61K 36/07 20060101ALI20180312BHJP
   A61K 36/06 20060101ALI20180312BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20180312BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20180312BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20180312BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20180312BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180312BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20180312BHJP
   A23K 10/12 20160101ALI20180312BHJP
   A23K 20/00 20160101ALI20180312BHJP
   C09K 15/34 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   A61L9/01 H
   A61K36/07
   A61K36/06
   A61P39/06
   A61K8/97
   A61K8/99
   A61Q15/00
   A61Q19/00
   A23L33/10
   A23K10/12
   A23K20/00
   C09K15/34
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-239709(P2013-239709)
(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公開番号】特開2015-97700(P2015-97700A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】本間 亮介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由夏理
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−259835(JP,A)
【文献】 特開平02−277456(JP,A)
【文献】 特開平11−080015(JP,A)
【文献】 特開2004−307436(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/002027(WO,A1)
【文献】 特開2003−210133(JP,A)
【文献】 特開2013−133423(JP,A)
【文献】 特表2013−524791(JP,A)
【文献】 特開平07−021403(JP,A)
【文献】 特開平04−029792(JP,A)
【文献】 特開平11−236287(JP,A)
【文献】 特開2004−149442(JP,A)
【文献】 特開平06−065575(JP,A)
【文献】 特開2002−173441(JP,A)
【文献】 特開2006−052189(JP,A)
【文献】 特開2006−083064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00− 9/22
A23K 10/00− 40/35
A23K 50/15
A23L 5/40− 5/49
A23L 31/00− 33/29
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
A61K 35/00− 35/768
A61K 36/06− 36/068
A61K 36/00− 36/05
A61K 36/06
A61K 36/07− 36/9068
A61P 1/00− 43/00
C09K 15/00− 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用キノコ抽出物にGluconobacter属に属する微生物を10〜1010cfu/gとなるように接種して、15〜40℃で、3時間〜72時間発酵させることにより得られる、未発酵の食用キノコと比較してメチルメルカプタン消去能が増強された発酵処理物を含有する消臭剤。
【請求項2】
前記食用キノコが、マッシュルーム、エノキタケ、ブナシメジ、シイタケ、ポルチーニ、エリンギ及びマイタケから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の消臭剤。
【請求項3】
前記Gluconobacter属に属する微生物が、Gluconobacter wancherniae、Gluconobacter thailandicus、Gluconobacter frateurii、Gluconobacter cerinus及びGluconobacter oxydansから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は請求項に記載の消臭剤。
【請求項4】
前記発酵処理物が、さらに80〜130℃で加熱処理したものである、請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の消臭剤。
【請求項5】
食用キノコ抽出物にGluconobacter属に属する微生物を10〜1010cfu/gとなるように接種して、15〜40℃で、3時間〜72時間発酵させることにより得られる、未発酵の食用キノコと比較してDPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)ラジカル消去活性が増強された発酵処理物を含有する抗酸化剤。
【請求項6】
前記食用キノコが、マッシュルーム、エノキタケ、ブナシメジ、シイタケ、ポルチーニ、エリンギ又はマイタケから選ばれる少なくとも1種である、請求項に記載の抗酸化剤。
【請求項7】
前記Gluconobacter属に属する微生物が、Gluconobacter wancherniae、Gluconobacter thailandicus、Gluconobacter frateurii、Gluconobacter cerinus及びGluconobacter oxydansから選ばれる少なくとも1種である、請求項5又は請求項に記載の抗酸化剤。
【請求項8】
前記発酵処理物が、さらに80〜130℃で加熱処理したものである、請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の抗酸化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵させたキノコを含有する消臭剤及び抗酸化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
担子菌門や子嚢菌門に属する食用キノコは、抗腫瘍作用や免疫賦活作用を有することが知られており、古くから医薬品や健康食品の原材料として種々利用されている。
【0003】
また、食用キノコの抽出物が消臭剤として有効であることが報告されている。例えば、マッシュルーム子実体の親水性溶媒抽出物を有効成分とする経口消臭剤(特許文献1)、アガリクスキノコの抽出物と、マッシュルームの抽出物と、霊芝の抽出物とを含み、飲食して用いられることを特徴とする消臭剤(特許文献2)、ハナビラタケ乾燥物又はハナビラタケの処理物を有効成分とすることを特徴とする消臭剤(特許文献3)が開示されている。
【0004】
さらに、食用キノコの多くが、抗酸化活性を有していることが報告されている。例えば、きのこの抽出物を有効成分とする酸化防止剤(特許文献4)、マンネンタケ属に属するキノコおよびトリュフの中から一種または二種以上選ばれる抽出物を含有する生体の酸化防止または予防剤(特許文献5)、マスタケ、ホウキタケ、ムキタケ、コガネタケから選ばれる1種以上の担子菌類からの抽出物を有効成分とする抗酸化剤(特許文献6)、クロアワビタケ、スギタケ、アズマタケ、ツチグリ、Pleurotus nebrodensisから選ばれる1種以上の担子菌類からの抽出物を有効成分とする抗酸化剤(特許文献7)が開示されている。
【0005】
このように、従来から、食用キノコ又はその抽出物が、消臭活性や抗酸化活性を有していることが知られているが、必ずしも十分な効果を発揮するものではなく、より優れた消臭活性組成物や抗酸化活性組成物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−277456号公報
【特許文献2】特開平11−80015号公報
【特許文献3】特開2004−307436号公報
【特許文献4】特開平6−65575号公報
【特許文献5】特開2002−173441号公報
【特許文献6】特開2006−52189号公報
【特許文献7】特開2006−83064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、発酵させた食用キノコを含有する消臭剤、特にメチルメルカプタン消去作用に基づく消臭活性を有する消臭剤及び発酵させた食用キノコを含有する抗酸化剤、特にラジカル消去作用に基づく抗酸化活性を有する抗酸化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、食用キノコを微生物を用いて発酵させることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、食用キノコを微生物を用いて発酵させることにより得られる、消臭活性を増強させた発酵処理物を含有する消臭剤を提供するものである。また、本発明は、食用キノコを微生物を用いて発酵させることにより得られる、抗酸化活性を増強させた発酵処理物を含有する抗酸化剤を提供するものである。
【0010】
本発明には、下記の態様が含まれる。
項(1)
食用キノコを微生物を用いて発酵させることにより得られる発酵処理物を含有する消臭剤。
項(2)
前記食用キノコが、マッシュルーム、エノキタケ、ブナシメジ、シイタケ、ポルチーニ、エリンギ及びマイタケから選ばれる少なくとも1種である、項(1)に記載の消臭剤。
項(3)
前記微生物がGluconobacter属に属する微生物である、項(1)又は項(2)に記載の消臭剤。
項(4)
前記Gluconobacter属に属する微生物が、Gluconobacter wancherniae、Gluconobacter thailandicus、Gluconobacter frateurii、Gluconobacter cerinus及びGluconobacter oxydansから選ばれる少なくとも1種である、項(1)乃至項(3)のいずれか1項に記載の消臭剤。
項(5)
前記発酵処理物が、さらに加熱処理したものである、項(1)乃至項(4)のいずれか1項に記載の消臭剤。
項(6)
食用キノコを微生物を用いて発酵させることにより得られる発酵処理物を含有する抗酸化剤。
項(7)
前記食用キノコが、マッシュルーム、エノキタケ、ブナシメジ、シイタケ、ポルチーニ、エリンギ及びマイタケから選ばれる少なくとも1種である、項(6)に記載の抗酸化剤。
項(8)
前記微生物がGluconobacter属に属する微生物である、項(6)又は項(7)に記載の抗酸化剤。
項(9)
前記Gluconobacter属に属する微生物が、Gluconobacter wancherniae、Gluconobacter thailandicus、Gluconobacter frateurii、Gluconobacter cerinus及びGluconobacter oxydansから選ばれる少なくとも1種である、項(6)乃至項(8)のいずれか1項に記載の抗酸化剤。
項(10)
前記発酵処理物が、さらに加熱処理したものである、項(6)乃至項(9)のいずれか1項に記載の抗酸化剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、消臭活性を増強させた新規な消臭剤を提供することができる。特に、優れたメチルメルカプタン消去作用に基づく消臭活性を有する消臭剤を提供することができる。さらに、本発明によれば、抗酸化活性を増強させた新規な抗酸化剤を提供することができる。特に、優れたラジカル消去作用に基づく抗酸化活性を有する抗酸化剤を提供することができる。
本発明による消臭剤及び抗酸化剤は、天然物由来の安全なものであり、食品、飲料、飼料、化粧品、医薬品、医薬部外品等に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明品の製造において用いる食用キノコは、食用として供される菌類の子実体であって、いわゆるキノコとして一般に食材として流通するものであれば、いずれを用いてもよい。本発明において用いる食用キノコとしては、例えば、マッシュルーム(ツクリタケ)、エノキタケ、ブナシメジ、シイタケ、ポルチーニ、エリンギ、マイタケ、ヒラタケ、ハラタケ、ヤマドリタケ、ナメコ、ホンジメジ、ハタケシメジ、マツタケ、カワラタケ、アンズタケ、セイヨウショウロ(トリュフ)及びマツタケ等が挙げられ、好ましくは、マッシュルーム、エノキタケ、ブナシメジ、シイタケ、ポルチーニ、エリンギ及びマイタケであり、より好ましくは、マッシュルーム、エノキタケ、ブナシメジ及びシイタケである。
前記食用キノコは、野生種のものであってもよく、また、栽培・培養されたものであってもよい。また、前記食用キノコは、1種を単独で用いてもよく、また複数種を併用してもよい。さらに、前記食用キノコは、乾燥物であっても非乾燥物であっても用いることができる。
【0013】
本発明品の製造において、食用キノコは、そのままで用いてもよく、粉砕物若しくは抽出物として用いてもよい。中でも、抽出物として用いることが好ましい。
【0014】
食用キノコを粉砕物として用いる場合は、食用キノコ単独で又は水等の溶媒を加えて粉砕処理した粉砕物であればよい。食用キノコを粉砕処理する方法は、特に限定されず、食材の加工に一般に用いられる方法を単独又は組み合わせて処理することができる。粉砕処理に用いる機器としては、例えば、切断、粉砕、摩擦、空気圧、水圧等を利用して加工する各種の裁断機、粉砕機等が挙げられる。食用キノコの粉砕物は、粉砕後そのまま又は固液分離して得られる液部を用いることができる。さらに、食用キノコの粉砕物は、適宜pH調整剤等の添加物を配合したものを用いることができる。また、食用キノコの粉砕物は、各種酵素を用いて酵素処理したものを用いることができる。
【0015】
食用キノコを抽出物として用いる場合は、食用キノコを水、アルコール又は水−アルコール混合溶液等の溶媒を用いて抽出した抽出物であればよい。
食用キノコを抽出する方法は、特に限定されず、公知の手段を単独又は組み合わせて抽出することができる。抽出方法としては、例えば、常温抽出、加熱抽出、加圧抽出、撹拌抽出、超音波抽出等が挙げられる。
食用キノコは、そのままの形状で抽出してもよく、細切処理又は粉砕処理したものを用いてもよい。食用キノコを細切処理又は粉砕処理する方法は、特に限定されず、食材の加工に一般に用いられる方法を単独又は組み合わせて処理することができる。細切処理又は粉砕処理に用いる機器としては、例えば、切断、粉砕、摩擦、空気圧、水圧等を利用して加工する各種の裁断機、粉砕機等が挙げられる。
食用キノコの抽出物は、抽出後そのまま又は固液分離をして得られる液部を用いることができる。また、食用キノコの抽出物は、その濃縮物として用いることができる。さらに、食用キノコの抽出物は、適宜pH調整剤等の添加物を配合したものを用いることができる。また、食用キノコの抽出物は、各種酵素を用いて酵素処理したものを用いることができる。
【0016】
本発明品においては、食用キノコを微生物を用いて発酵させることにより得られる発酵処理物を用いる。該発酵において用いる食用キノコは、適宜濃度を調整して用いればよく、食用キノコが乾燥物である場合には、水等の溶媒で溶解、希釈して用いればよい。また、食用キノコがアルコール分を含む場合には、アルコール分を留去して用いることができる。
該発酵において用いる微生物は、Gluconobacter属に属する微生物であることが好ましく、例えば、Gluconobacter wancherniae、Gluconobacter thailandicus、Gluconobacter frateurii、Gluconobacter cerinus、Gluconobacter oxydans、Gluconobacter albidus、Gluconobacter japonicus、Gluconobacter kondonii、Gluconobacter diacetonicus、Gluconobacter dioxyacetonicus、Gluconobacter gluconicus、Gluconobacter hansenii、Gluconobacter industrius、Gluconobacter kanchanaburiensis、Gluconobacter melanogenus、Gluconobacter nephelii、Gluconobacter roseus、Gluconobacter rubiginosus、Gluconobacter sphaericus、Gluconobacter suboxydans、Gluconobacter uchimurae、Gluconobacter xylinus等が挙げられ、好ましくは、Gluconobacter wancherniae、Gluconobacter thailandicus、Gluconobacter frateurii、Gluconobacter cerinus又はGluconobacter oxydansである。また、該発酵において用いる微生物は、1種を単独で用いてもよく、また複数種を併用してもよい。
なお、該発酵において用いる微生物については、独立行政法人製品評価技術基盤機構又は独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター等から入手することができる。
【0017】
該発酵において、微生物を用いて発酵させる温度は、通常15〜40℃、好ましくは20〜37℃、より好ましくは25〜35℃である。また、該発酵において、微生物を用いて発酵させる時間は、通常3時間〜72時間、好ましくは6時間〜60時間、より好ましくは12〜48時間である。さらに、該発酵において、接種する微生物の添加量は、発酵させる温度及び時間により適宜変更することができるが、通常、10〜1010cfu/g、好ましくは10〜10cfu/g、より好ましくは10〜10cfu/gである。
なお、該発酵において、微生物を用いた発酵は、好気条件下で行う。
【0018】
該発酵においては、微生物を用いて発酵させる前に、食用キノコのpHを、微生物を用いた発酵に至適なpH付近に調整することができる。調整するpHは、通常pH2〜10であり、好ましくはpH3〜9であり、より好ましくはpH4〜8である。
なお、前記pH調整を行った場合、該発酵後に中和処理を行ってもよい。pHの調整及び中和処理は、pH調整剤として一般に食品に利用されているものを用いることができる。pH調整剤は、食品添加物として指定されたものであれば特に限定されない。pH調整剤としては、酸、アルカリ、及びそれらの塩等が用いられるが、例えば、塩酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0019】
本発明により得られる発酵処理物は、微生物を用いた発酵により、未発酵の食用キノコと比較して、悪臭物質であるメチルメルカプタン消去能が優位に増強されていて、消臭剤として有用である。さらに、本発明により得られる発酵処理物は、微生物を用いた発酵により、未発酵の食用キノコと比較して、抗酸化活性の指標の一つであるDPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)ラジカル消去活性が優位に増強されていて、抗酸化剤として有用である。
【0020】
本発明品の製造においては、食用キノコを微生物を用いて発酵させることにより得られる発酵処理物が、加熱処理したものであってもよい。
本発明品のうち、加熱処理した発酵処理物は、未発酵の食用キノコと比較して、悪臭物質であるメチルメルカプタン消去能が顕著に増強されていて、消臭剤として極めて有用である。さらに、本発明のうち、加熱処理した発酵処理物は、未発酵の食用キノコと比較して、抗酸化活性の指標の一つであるDPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)ラジカル消去活性が顕著に増強されていて、抗酸化剤として極めて有用である。
【0021】
該発酵処理物の加熱処理は、常圧下又は加圧条件下のいずれでも行うことができる。また、該発酵処理物を加熱処理する温度は、通常60℃以上、好ましくは80〜130℃である。さらに、該発酵処理物を加熱処理する時間は、通常5分間〜2時間、好ましくは10分間〜1時間である。
【0022】
本発明において、該発酵処理物を加熱処理する方法は、特に限定はされず、湿式加熱又は乾式加熱のいずれであってもよい。例えば、蒸気加熱や過熱水蒸気を用いた加熱、直火加熱、電熱加熱、赤外線加熱、電磁加熱、高周波加熱等を挙げることができる。また、加熱処理する装置は、特に限定はされず、密閉容器であっても、非密閉(開放)容器であってもよい。例えば、密閉容器であれば、耐圧密閉加熱釜(オートクレイブ)等が挙げられ、非密閉容器であれば、平釜、斜軸釜、ニーダー等が挙げられる。さらに、いずれにおいても、撹拌装置が備わっていることが好ましい。
【0023】
本発明による消臭剤及び抗酸化剤は、そのままの形態でも利用することができるが、さらに、固液分離した液部として用いることができる。固液分離する方法は、特に限定されず、濾過、遠心分離等の公知の方法により行うことができる。また、本発明による消臭剤及び抗酸化剤は、そのまま又は固液分離した液部を常法により濃縮機等で処理して濃縮物として用いてもよく、また、乾燥して用いてもよい。乾燥方法は、特に限定されず、公知の手段を用いて乾燥することができる。乾燥方法としては、例えば、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、フリーズドライヤー、エアードライヤー等の公知の手段を用いることができる。また、デキストリン等の賦形剤を添加して乾燥してもよい。さらに、乾燥により得られたものを粉砕後、粉末等として用いてもよく、必要に応じて造粒機等を用いて顆粒品とすることができる。
【0024】
本発明による消臭剤及び抗酸化剤は、そのまま又は水等で希釈して利用することができる。さらに、本発明による消臭剤及び抗酸化剤は、種々の加工食品、例えば、即席食品、乳製品、菓子類、調味料、茶飲料、野菜飲料、大豆飲料、豆乳飲料等の各種飲食品に適宜添加、配合して用いることもできる。また、必要に応じて、通常の飲食品の原料や添加物として使用されているものと併用することもできる。
【0025】
本発明による消臭剤及び抗酸化剤は、特定保健用食品、機能性食品、栄養補助食品といった食品や、飼料、各種化粧品、医薬品又は医薬部外品等に用いることができる。形態としては、アンプル、カプセル、丸剤、錠剤、粉末、顆粒、固形、液剤、ゲル、エアロゾル等とすることができるほか、各種製品中に配合することができる。これら製品の調製に当たっては、賦形剤、結合剤、潤沢剤等を適宜配合することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、本実施例において、各原料及び素材の配合比率、含有比率、濃度は断りのない限り全て重量部基準である。
【0027】
[調製1]
マッシュルーム(生鮮)2000gに、水2000gを加えて、95℃で60分間抽出した後、40℃まで冷却した。次いで、不織布を用いて固液分離し、回収した液部をエバポレーターを用いて減圧濃縮することで、マッシュルーム抽出物800g(固形分:10.1%、pH6.8)(調製1)を得た。
【0028】
[実施例1]
調製1で得られたマッシュルーム抽出物50gに、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter cerinus NBRC3274(実施例1−1)又はGluconobacter wancherniae NBRC103581(実施例1−2)をそれぞれ1×10cfu/g程度となるように接種して、30℃で20時間振盪培養した後、80℃で10分間殺菌処理して、発酵処理物を得た。次いで、5000×Gで10分間遠心分離を行い、液部を回収することで、本発明品(実施例1−1及び実施例1−2)それぞれ45gを得た。
【0029】
[評価試験1]
実施例1の本発明品及び調製1のマッシュルーム抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を下記の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0030】
<メチルメルカプタン消去能の測定方法>
30mL容量のバイアル瓶に、各検体の100倍希釈液(希釈溶媒:200mMリン酸カリウム緩衝液、pH7.0)5mL及び10ppmメチルメルカプタン水溶液150μLを封入し、30℃で10分間攪拌した後、ヘッドスペースガス500μLをガスクロマトグラフィー(GC)に供し、下記の条件でメチルメルカプタンのエリア面積を測定することで算出した。
【0031】
<GCの測定条件>
機器:GC−9A(株式会社島津製作所製)
検出器:Flame Photometric Detector(FPD)、100℃
カラム:PPE−5rings Shimalite TPA60/80(信和化工株式会社製)
カラム温度:70℃
キャリアーガス:窒素(50mL/分)
注入量:500μL
インジェクタ温度:120℃
【0032】
<DPPHラジカル消去活性の測定方法>
参考文献(篠原ら編、食品機能研究法、光琳、2000年、p.218)を参照し、以下の通り測定した。
80%エタノールにて適宜希釈した各検体50μLに、200mMの2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液(200mM、pH6.0)50μL、20%エタノール50μL及び400μMの1、1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)エタノール溶液50μLの混合液を添加して混和し、さらに20分間静置した後、マイクロプレートリーダーを用いて520nmにおける吸光度を測定した。
0〜200μMのα−トコフェロール(和光純薬工業株式会社製)について同様の操作を行うことで検量線を作成し、得られた検量線をもとに、各検体1gあたりのラジカル消去活性をα−トコフェロール相当量(濃度)として算出した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示すとおり、微生物を用いて発酵させた実施例1の本発明品は、いずれも調製1のマッシュルーム抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能が1.6倍以上に増強されていて、優れた消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた実施例1の本発明品は、いずれも調製1のマッシュルーム抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性が1.3倍以上に増強されていて、優れた抗酸化活性を示した。
【0035】
[実施例2]
調製1で得られたマッシュルーム抽出物50gを50%クエン酸水溶液を用いてpH5.5に調整し、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter cerinus NBRC3274(実施例2−1)、Gluconobacter Thailandicus NBRC3255(実施例2−2)、Gluconobacter oxydans NBRC3294(実施例2−3)、Gluconobacter frateurii NBRC3264(実施例2−4)又はGluconobacter wancherniae NBRC103581(実施例2−5)をそれぞれ1×10cfu/g程度となるように接種して、30℃で20時間振盪培養した後、80℃で10分間殺菌処理して、発酵処理物を得た。次いで、5000×Gで10分間遠心分離を行い、液部を回収して該発酵処理物を130℃で1時間加熱処理することで、本発明品(実施例2−1乃至実施例2−5)それぞれ40gを得た。
【0036】
[比較例1]
調製1で得られたマッシュルーム抽出物50gを130℃で1時間加熱処理することで、加熱処理マッシュルーム抽出物(比較例1)40gを得た。
【0037】
[評価試験2]
実施例2の本発明品及び比較例1の加熱処理マッシュルーム抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を評価試験1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2に示すとおり、微生物を用いた発酵を行わず加熱処理をした比較例1の加熱処理マッシュルーム抽出物は、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性のいずれも、調製1のマッシュルーム抽出物と同程度の活性しか示さなかった。しかし、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例2の本発明品は、いずれも調製1のマッシュルーム抽出物及び比較例1の加熱処理マッシュルーム抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能が2.2倍以上に増強されていて、顕著な消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例2の本発明品は、いずれも調製1のマッシュルーム抽出物及び比較例1の加熱処理マッシュルーム抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性が1.5倍以上に増強されていて、優れた抗酸化活性を示した。
【0040】
[実施例3]
調製1で得られたマッシュルーム抽出物50gを17.5%塩酸水溶液を用いてpH4.8に調整し、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter wancherniae NBRC103581を5×10cfu/g程度となるように接種して、30℃で24時間振盪培養した後、80℃で10分間殺菌処理して、発酵処理物を得た。次いで、5000×Gで10分間遠心分離を行い、液部を回収して該発酵処理物を表3に示す温度及び時間(実施例3−1乃至実施例3−5)でそれぞれ加熱処理することで、本発明品(実施例3−1乃至実施例3−5)それぞれ40g得た。
【0041】
[評価試験3]
実施例3の本発明品を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を評価試験1と同様にして測定した。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
表3に示すとおり、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例3の本発明品は、表3に示すいずれの加熱条件であっても調製1のマッシュルーム抽出物及び微生物を用いた発酵を行わず加熱処理をした比較例1の加熱処理マッシュルーム抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能が1.5倍以上に増強され、さらに、加熱温度が100℃以上では、2.2倍以上に増強されていて、顕著な消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例3の本発明品は、表3に示すいずれの加熱条件であっても調製1のマッシュルーム抽出物及び微生物を用いた発酵を行わず加熱処理をした比較例1の加熱処理マッシュルーム抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性が1.2倍以上に増強されていて、優れた抗酸化活性を示した。
【0044】
[調製2]
エノキタケ(乾燥物)120gに、水600gを加えて、90℃で10分間抽出した後、40℃まで冷却した。次いで、不織布を用いて固液分離し、液部を回収することで、エノキタケ抽出物420g(固形分:9.1%、pH6.5)(調製2)を得た。
【0045】
[実施例4]
調製2で得られたエノキタケ抽出物50gに、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter cerinus NBRC3274(実施例4−1)又はGluconobacter wancherniae NBRC103581(実施例4−2)をそれぞれ1×10cfu/g程度となるように接種して、30℃で20時間振盪培養した後、80℃で10分間殺菌処理して、発酵処理物を得た。次いで、該発酵処理物を130℃で1時間加熱処理した後、5000×Gで10分間遠心分離を行い、液部を回収することで、本発明品(実施例4−1及び実施例4−2)それぞれ40gを得た。
【0046】
[評価試験4]
実施例4の本発明品及び調製2のエノキタケ抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を評価試験1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
表4に示すとおり、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例4の本発明品は、いずれも調製2のエノキタケ抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能がおよそ4倍に増強されていて、顕著な消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例4の本発明品は、いずれも調製2のエノキタケ抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性が10倍以上に増強されていて、顕著な抗酸化活性を示した。
【0049】
[調製3]
ブナシメジ(乾燥物)160gに、水800gを加えて、90℃で10分間抽出した後、40℃まで冷却した。次いで、不織布を用いて固液分離し、液部を回収することで、ブナシメジ抽出物350g(固形分:10.1%、pH5.9)(調製3)を得た。
【0050】
[実施例5]
調製3で得られたブナシメジ抽出物50gに、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter cerinus NBRC3274(実施例5−1)又はGluconobacter wancherniae NBRC103581(実施例5−2)をそれぞれ1×10cfu/g程度となるように接種して、30℃で20時間振盪培養した後、80℃で10分間殺菌処理して、発酵処理物を得た。次いで、5000×Gで10分間遠心分離を行い、液部を回収することで、本発明品(実施例5−1及び実施例5−2)それぞれ45gを得た。
【0051】
[評価試験5]
実施例5の本発明品及び調製3のブナシメジ抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を評価試験1と同様にして測定した。結果を表5に示す。
【0052】
【表5】
【0053】
表5に示すとおり、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例5の本発明品は、いずれも調製3のブナシメジ抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能がおよそ1.7倍に増強されていて、優れた消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例5の本発明品は、いずれも調製3のブナシメジ抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性が4倍以上に増強されていて、顕著な抗酸化活性を示した。
【0054】
[実施例6]
調製3で得られたブナシメジ抽出物50gに、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter cerinus NBRC3274(実施例6−1)又はGluconobacter wancherniae NBRC103581(実施例6−2)をそれぞれ1×10cfu/g程度となるように接種して、30℃で20時間振盪培養することで、発酵処理物を得た。次いで、該発酵処理物を130℃で1時間加熱処理した後、5000×Gで10分間遠心分離を行い、液部を回収することで、本発明品の(実施例6−1及び実施例6−2)それぞれ40gを得た。
【0055】
[評価試験6]
実施例6の本発明品及び調製3のブナシメジ抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を評価試験1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
【0056】
【表6】
【0057】
表6に示すとおり、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例6の本発明品は、いずれも調製3のブナシメジ抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能が2.4倍以上に増強されていて、顕著な消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例6の本発明品は、いずれも調製3のブナシメジ抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性がおよそ7倍に増強されていて、顕著な抗酸化活性を示した。
【0058】
[調製4]
シイタケ(乾燥物)120gに、水600gを加えて、90℃で10分間抽出した後、40℃まで冷却した。次いで、不織布を用いて固液分離し、液部を回収することで、シイタケ抽出物380g(固形分:7.1%、pH5.8)(調製4)を得た。
【0059】
[実施例7]
調製4で得られたシイタケ抽出物50gに、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter cerinus NBRC3274(実施例7−1)又はGluconobacter wancherniae NBRC103581(実施例7−2)をそれぞれ1×10cfu/g程度となるように接種して、30℃で20時間振盪培養することで、発酵処理物を得た。次いで、該発酵処理物を130℃で1時間加熱処理することで、本発明品(実施例7−1及び実施例7−2)それぞれ45gを得た。
【0060】
[評価試験7]
実施例7の本発明品及び調製4のシイタケ抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を評価試験1と同様にして測定した。結果を表7に示す。
【0061】
【表7】
【0062】
表7に示すとおり、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例7の本発明品は、いずれも調製4のシイタケ抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能がおよそ2倍に増強されていて、顕著な消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例7の本発明品は、いずれも調製4のシイタケ抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性が7倍以上に増強されていて、顕著な抗酸化活性を示した。