【実施例】
【0026】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、本実施例において、各原料及び素材の配合比率、含有比率、濃度は断りのない限り全て重量部基準である。
【0027】
[調製1]
マッシュルーム(生鮮)2000gに、水2000gを加えて、95℃で60分間抽出した後、40℃まで冷却した。次いで、不織布を用いて固液分離し、回収した液部をエバポレーターを用いて減圧濃縮することで、マッシュルーム抽出物800g(固形分:10.1%、pH6.8)(調製1)を得た。
【0028】
[実施例1]
調製1で得られたマッシュルーム抽出物50gに、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter cerinus NBRC3274(実施例1−1)又はGluconobacter wancherniae NBRC103581(実施例1−2)をそれぞれ1×10
4cfu/g程度となるように接種して、30℃で20時間振盪培養した後、80℃で10分間殺菌処理して、発酵処理物を得た。次いで、5000×Gで10分間遠心分離を行い、液部を回収することで、本発明品(実施例1−1及び実施例1−2)それぞれ45gを得た。
【0029】
[評価試験1]
実施例1の本発明品及び調製1のマッシュルーム抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を下記の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0030】
<メチルメルカプタン消去能の測定方法>
30mL容量のバイアル瓶に、各検体の100倍希釈液(希釈溶媒:200mMリン酸カリウム緩衝液、pH7.0)5mL及び10ppmメチルメルカプタン水溶液150μLを封入し、30℃で10分間攪拌した後、ヘッドスペースガス500μLをガスクロマトグラフィー(GC)に供し、下記の条件でメチルメルカプタンのエリア面積を測定することで算出した。
【0031】
<GCの測定条件>
機器:GC−9A(株式会社島津製作所製)
検出器:Flame Photometric Detector(FPD)、100℃
カラム:PPE−5rings Shimalite TPA60/80(信和化工株式会社製)
カラム温度:70℃
キャリアーガス:窒素(50mL/分)
注入量:500μL
インジェクタ温度:120℃
【0032】
<DPPHラジカル消去活性の測定方法>
参考文献(篠原ら編、食品機能研究法、光琳、2000年、p.218)を参照し、以下の通り測定した。
80%エタノールにて適宜希釈した各検体50μLに、200mMの2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液(200mM、pH6.0)50μL、20%エタノール50μL及び400μMの1、1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)エタノール溶液50μLの混合液を添加して混和し、さらに20分間静置した後、マイクロプレートリーダーを用いて520nmにおける吸光度を測定した。
0〜200μMのα−トコフェロール(和光純薬工業株式会社製)について同様の操作を行うことで検量線を作成し、得られた検量線をもとに、各検体1gあたりのラジカル消去活性をα−トコフェロール相当量(濃度)として算出した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示すとおり、微生物を用いて発酵させた実施例1の本発明品は、いずれも調製1のマッシュルーム抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能が1.6倍以上に増強されていて、優れた消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた実施例1の本発明品は、いずれも調製1のマッシュルーム抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性が1.3倍以上に増強されていて、優れた抗酸化活性を示した。
【0035】
[実施例2]
調製1で得られたマッシュルーム抽出物50gを50%クエン酸水溶液を用いてpH5.5に調整し、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter cerinus NBRC3274(実施例2−1)、Gluconobacter Thailandicus NBRC3255(実施例2−2)、Gluconobacter oxydans NBRC3294(実施例2−3)、Gluconobacter frateurii NBRC3264(実施例2−4)又はGluconobacter wancherniae NBRC103581(実施例2−5)をそれぞれ1×10
4cfu/g程度となるように接種して、30℃で20時間振盪培養した後、80℃で10分間殺菌処理して、発酵処理物を得た。次いで、5000×Gで10分間遠心分離を行い、液部を回収して該発酵処理物を130℃で1時間加熱処理することで、本発明品(実施例2−1乃至実施例2−5)それぞれ40gを得た。
【0036】
[比較例1]
調製1で得られたマッシュルーム抽出物50gを130℃で1時間加熱処理することで、加熱処理マッシュルーム抽出物(比較例1)40gを得た。
【0037】
[評価試験2]
実施例2の本発明品及び比較例1の加熱処理マッシュルーム抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を評価試験1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2に示すとおり、微生物を用いた発酵を行わず加熱処理をした比較例1の加熱処理マッシュルーム抽出物は、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性のいずれも、調製1のマッシュルーム抽出物と同程度の活性しか示さなかった。しかし、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例2の本発明品は、いずれも調製1のマッシュルーム抽出物及び比較例1の加熱処理マッシュルーム抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能が2.2倍以上に増強されていて、顕著な消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例2の本発明品は、いずれも調製1のマッシュルーム抽出物及び比較例1の加熱処理マッシュルーム抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性が1.5倍以上に増強されていて、優れた抗酸化活性を示した。
【0040】
[実施例3]
調製1で得られたマッシュルーム抽出物50gを17.5%塩酸水溶液を用いてpH4.8に調整し、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter wancherniae NBRC103581を5×10
4cfu/g程度となるように接種して、30℃で24時間振盪培養した後、80℃で10分間殺菌処理して、発酵処理物を得た。次いで、5000×Gで10分間遠心分離を行い、液部を回収して該発酵処理物を表3に示す温度及び時間(実施例3−1乃至実施例3−5)でそれぞれ加熱処理することで、本発明品(実施例3−1乃至実施例3−5)それぞれ40g得た。
【0041】
[評価試験3]
実施例3の本発明品を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を評価試験1と同様にして測定した。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
表3に示すとおり、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例3の本発明品は、表3に示すいずれの加熱条件であっても調製1のマッシュルーム抽出物及び微生物を用いた発酵を行わず加熱処理をした比較例1の加熱処理マッシュルーム抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能が1.5倍以上に増強され、さらに、加熱温度が100℃以上では、2.2倍以上に増強されていて、顕著な消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例3の本発明品は、表3に示すいずれの加熱条件であっても調製1のマッシュルーム抽出物及び微生物を用いた発酵を行わず加熱処理をした比較例1の加熱処理マッシュルーム抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性が1.2倍以上に増強されていて、優れた抗酸化活性を示した。
【0044】
[調製2]
エノキタケ(乾燥物)120gに、水600gを加えて、90℃で10分間抽出した後、40℃まで冷却した。次いで、不織布を用いて固液分離し、液部を回収することで、エノキタケ抽出物420g(固形分:9.1%、pH6.5)(調製2)を得た。
【0045】
[実施例4]
調製2で得られたエノキタケ抽出物50gに、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter cerinus NBRC3274(実施例4−1)又はGluconobacter wancherniae NBRC103581(実施例4−2)をそれぞれ1×10
4cfu/g程度となるように接種して、30℃で20時間振盪培養した後、80℃で10分間殺菌処理して、発酵処理物を得た。次いで、該発酵処理物を130℃で1時間加熱処理した後、5000×Gで10分間遠心分離を行い、液部を回収することで、本発明品(実施例4−1及び実施例4−2)それぞれ40gを得た。
【0046】
[評価試験4]
実施例4の本発明品及び調製2のエノキタケ抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を評価試験1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
表4に示すとおり、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例4の本発明品は、いずれも調製2のエノキタケ抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能がおよそ4倍に増強されていて、顕著な消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例4の本発明品は、いずれも調製2のエノキタケ抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性が10倍以上に増強されていて、顕著な抗酸化活性を示した。
【0049】
[調製3]
ブナシメジ(乾燥物)160gに、水800gを加えて、90℃で10分間抽出した後、40℃まで冷却した。次いで、不織布を用いて固液分離し、液部を回収することで、ブナシメジ抽出物350g(固形分:10.1%、pH5.9)(調製3)を得た。
【0050】
[実施例5]
調製3で得られたブナシメジ抽出物50gに、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter cerinus NBRC3274(実施例5−1)又はGluconobacter wancherniae NBRC103581(実施例5−2)をそれぞれ1×10
4cfu/g程度となるように接種して、30℃で20時間振盪培養した後、80℃で10分間殺菌処理して、発酵処理物を得た。次いで、5000×Gで10分間遠心分離を行い、液部を回収することで、本発明品(実施例5−1及び実施例5−2)それぞれ45gを得た。
【0051】
[評価試験5]
実施例5の本発明品及び調製3のブナシメジ抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を評価試験1と同様にして測定した。結果を表5に示す。
【0052】
【表5】
【0053】
表5に示すとおり、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例5の本発明品は、いずれも調製3のブナシメジ抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能がおよそ1.7倍に増強されていて、優れた消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例5の本発明品は、いずれも調製3のブナシメジ抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性が4倍以上に増強されていて、顕著な抗酸化活性を示した。
【0054】
[実施例6]
調製3で得られたブナシメジ抽出物50gに、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter cerinus NBRC3274(実施例6−1)又はGluconobacter wancherniae NBRC103581(実施例6−2)をそれぞれ1×10
4cfu/g程度となるように接種して、30℃で20時間振盪培養することで、発酵処理物を得た。次いで、該発酵処理物を130℃で1時間加熱処理した後、5000×Gで10分間遠心分離を行い、液部を回収することで、本発明品の(実施例6−1及び実施例6−2)それぞれ40gを得た。
【0055】
[評価試験6]
実施例6の本発明品及び調製3のブナシメジ抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を評価試験1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
【0056】
【表6】
【0057】
表6に示すとおり、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例6の本発明品は、いずれも調製3のブナシメジ抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能が2.4倍以上に増強されていて、顕著な消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例6の本発明品は、いずれも調製3のブナシメジ抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性がおよそ7倍に増強されていて、顕著な抗酸化活性を示した。
【0058】
[調製4]
シイタケ(乾燥物)120gに、水600gを加えて、90℃で10分間抽出した後、40℃まで冷却した。次いで、不織布を用いて固液分離し、液部を回収することで、シイタケ抽出物380g(固形分:7.1%、pH5.8)(調製4)を得た。
【0059】
[実施例7]
調製4で得られたシイタケ抽出物50gに、Gluconobacter属に属する微生物であるGluconobacter cerinus NBRC3274(実施例7−1)又はGluconobacter wancherniae NBRC103581(実施例7−2)をそれぞれ1×10
4cfu/g程度となるように接種して、30℃で20時間振盪培養することで、発酵処理物を得た。次いで、該発酵処理物を130℃で1時間加熱処理することで、本発明品(実施例7−1及び実施例7−2)それぞれ45gを得た。
【0060】
[評価試験7]
実施例7の本発明品及び調製4のシイタケ抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去能及びDPPHラジカル消去活性を評価試験1と同様にして測定した。結果を表7に示す。
【0061】
【表7】
【0062】
表7に示すとおり、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例7の本発明品は、いずれも調製4のシイタケ抽出物と比較して、メチルメルカプタン消去能がおよそ2倍に増強されていて、顕著な消臭活性を示した。また、微生物を用いて発酵させた後に加熱処理した実施例7の本発明品は、いずれも調製4のシイタケ抽出物と比較して、DPPHラジカル消去活性が7倍以上に増強されていて、顕著な抗酸化活性を示した。