(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態の具体的な構成を説明する前に、本発明の特徴事項を簡単に説明する。
(1)実施形態のコリメータ装置は、電子線源から発生される電子線を放射線に変換するターゲット(4)を内部に配置して前記放射線が外部に漏洩することを抑制する第1のコリメータ(10)と、
前記第1のコリメータ(10)内に隙間(OP)を有した状態で配置され、前記放射線を自身の軸心方向に通過させる第2のコリメータ(20)と、を備え、
前記第1のコリメータ内で前記第2のコリメータを首振り動作させる。
【0013】
「電子線源」としては一般的な電子銃等を用いれば良い。電子線を加速管等を用いて加速して「ターゲット」に衝突させて、X線等の放射線を発生させる。この際、マグネトロン等で発生させた高周波電磁波を加速管に導入することによって電子線を加速する。
【0014】
第2のコリメータは、第1のコリメータの内壁との間に隙間を有した状態で第1のコリメータの内部に配置され、この隙間を利用して第2のコリメータを首振り動作させて対象物を走査(スキャン)するように放射線照射を行う。
【0015】
第2のコリメータは放射線を絞って所要の照射野を形成し、第1のコリメータは、発生した放射線が外部へ漏洩することを抑制する。しかも、コリメータ装置全体を首振り動作させるのではなく、第1のコリメータ内で第2のコリメータだけを首振り動作させるので高速な首振り動作が可能となる。この結果、患部体動に追従させて連続的にX線照射が可能になって高精度な動体追跡が可能となる。
【0016】
第2のコリメータの内部に交換可能に挿入される第3のコリメータを用いてもよい。第2のコリメータの内部に第3のコリメータを交換可能に入れ込むことで、照射野を所望の形状に調整または絞り込むことが可能である。第3のコリメータを第2のコリメータのコリメート空間に嵌合させることで、第2のコリメータの首振り運動にともなって、第3のコリメータは第2のコリメータと一体的にスイングする。
(2)コリメータ装置は、前記第2のコリメータを2方向に首振り動作させるための駆動機構(25)と、この駆動機構を制御する駆動機構制御手段と、を有する。この結果、所望の位置に照射野を形成することができる。駆動機構は、照射野の様々なパターンに対応可能となるため、第2のコリメータを少なくとも直交2方向に搖動させる構成とすることが好ましい。
(3)第2のコリメータの軸心上に前記ターゲット(4)が存在する構成であることが好ましい。第2のコリメータの軸心上にターゲットが常時存在する構成となるので、患部への放射線の照射を正確に行うことが可能となる。たとえば、照射野形状、照射方向、照射線量等を所望のものにすることができる。
(4)コリメータ装置は、前記第2のコリメータの基準位置からの変位量を検出する変位量検出手段(30A、30B)を備え、前記駆動機構制御手段は、この変位量検出手段によって検出された変位量に基づいて前記駆動機構を制御することもできる。ここに変位量は角度や距離等である。
【0017】
この構成によれば、駆動機構制御手段は、変位量検出手段によって検出された変位量に基づいて駆動機構を制御するので、第2のコリメータの基準位置からの変位量をフィードバックして首振り動作制御を安定に行うことができる。前記変位量検出手段としてオートコリメータやエンコーダセンサを用いることができる。
(5)コリメータ装置は、前記第2のコリメータと結合されている適宜な部材上に設けられた可視光レーザーの光軸を前記第2のコリメータの軸心と一致させて放射線とともに可視光を装置外部に導く光学系を備えてもよい。この構成によれば、光学系で可視光レーザーの光軸を第2のコリメータの軸心と一致させて同軸のビームを装置外部に導くので、例えば赤色の可視光が、第2のコリメータの軸心を通って患部方向に照射される放射線の患部表面への入射位置を目視によって把握することが可能になる。
(6)前記駆動機構は、ボイスコイルモータ(150a、150b、150c、150d)を含んでもよい。この構成によれば、ボイスコイルモータを有する駆動機構が、第2のコリメータを首振り駆動するので、高速で高精度の首振り動作を行うことが可能となる。
(7)コリメータ装置では、放射線の線量および照射方向を計測するため線量計、例えばイオンチェンバ(27)を前記第2のコリメータの放射線出射側に設けることもできる。この構成によれば、放射線の線量を計測するためのイオンチェンバを放射線出射側に設けているので、第2のコリメータが首振り動作しながら線量を計測することが可能となる。また、線量分布等を参照して放射線の照射方向を計測することも可能である。
(8)前記第2のコリメータとこれに付設される部品とで形成されるスイング部の首振り動作の回転中心を前記スイング部の重心と略一致させた構成とすることが好ましい。スイング部の首振り動作の回転中心とスイング部の重心とが略一致しているので、重力を含んだ加速度の作用によってスイング部が勝手に振れ回らなくなる。また、放射線治療装置を6軸マニピュレーターに搭載した場合において、この6軸マニピュレーターが動いたとしても、スイング部にはこの動きによる振れ回りが発生しにくくなる。なお、ここで「略一致」は完全に一致する場合でなくても含む趣旨であり、「付設される部品」とは例えば「駆動機構」、「変位量検出手段」、「イオンチェンバ」などである。
【0018】
また、前記第2のコリメータとこれに付設される部品とで形成されるスイング部の各部品の首振り回転中心の周りの慣性モーメントが均等になることも好ましい。この構成によれば、スイング部の各部品の首振り回転中心の周りの慣性モーメントが均等になるので、第2のコリメータを首振り動作する際の加速・減速時の加速トルク変動が少なくなり安定性が良くなる。ここで、付設される部品とは上記と同様である。
(9)上述したコリメータ装置は放射線治療システムに適用可能である。この場合、放射線治療システムは、X線を発生するX線管とこのX線を平面的に検出するX線検出器の組を少なくとも2組用い、2個のX線検出器の検出信号に基づいて、X線を減衰させるマーカーが予め埋め込まれた患部近傍の動きを特定する。この構成によれば、2個のX線検出器の検出信号に基づいて、患部近傍の体動等を精度良く求めることが可能になる。
(10)マーカーが埋め込まれた患部近傍の動きを示す情報に基づいて、コリメータ装置の駆動機構制御手段が前記駆動機構を制御することで、マーカーが埋め込まれた患部近傍の動きに動体追跡するようにして第2のコリメータを首振り駆動することができる。マーカーの動きに基づいて体動を検出する替わりに骨や臓器の動きを画像処理(輪郭抽出等)して体動検出を行うことも可能である。
(11)本発明の他の態様では、放射線治療システムは、
電子線を発生する電子線源(2)と、前記電子線を放射線に変換するターゲット(4)と、前記ターゲット(4)を内部に配置して前記放射線が外部に漏洩することを抑制する第1のコリメータ(10)と、前記第1のコリメータ内に隙間を有した状態で配置され、前記放射線を自身の軸心方向に通過させる第2のコリメータ(20)と、前記第1のコリメータ(10)内で前記第2のコリメータ(20)を首振り動作させる首振り駆動機構(25)と、この首振り駆動機構を制御する駆動機構制御手段と、を有するX線ヘッド(100)と、n軸(nは6以上)移動可能なアーム(210)を有するマニピュレーター(200)と、を備え、前記アームの先端部に前記X線ヘッドが接続されている。
【0019】
この発明によれば、マニピュレーターは、X線ヘッドをその先端部に接続したアームを例えば6軸移動できるので、X線照射開始等にX線ヘッドを所望の位置に移動させることができる。多方向照射による健常組織への被ばくを低減できるので、治療回数が低減され治療効率が向上する。
(12)本発明の他の態様では、コリメータを制御する方法が提供される。この制御方法は、
電子銃から発生される電子線を放射線に変換するターゲットを内部に配置して前記放射線が外部へ漏洩することを抑制する第1のコリメータの内部に、前記第1のコリメータとの間に隙間を有した状態で、前記放射線を自身の軸心方向に通過させる第2のコリメータを配置し、
前記第1のコリメータ内において前記第2のコリメータを前記放射線の目標照射位置に向けて搖動させる。この発明にあっても、第1のコリメータ内において第2のコリメータを首振り動作させるので、患部体動に追従させて連続的にX線照射が可能になって高精度な動体追跡が可能となる。
(13)本発明の他の態様によれば、電子銃(2)から発生される電子線を放射線に変換するターゲット(4)を自身の内部に配置して前記放射線が外部に漏洩することを抑制する第1のコリメータ(10)と、この第1のコリメータ内に隙間を有した状態で配置され、前記放射線を自身の軸心方向に通過させる第2のコリメータ(20)と、前記第1のコリメータ(10)内で前記第2のコリメータ(20)を首振り動作させるための駆動機構(25)と、を備えた装置に、
前記駆動機構を制御する機能を実現させるためのプログラムが提供される。
【0020】
このプログラムによれば、第1のコリメータ内に隙間を有した状態で配置されて放射線を自身の軸心方向に通過させる第2のコリメータを走査する駆動機構を制御する「制御機能」を実現することができる。首振り動作させるのは第2のコリメータだけなので高速動作でき、この首振り動作によって照射対象物に対する照射エリアを所要の形状にしながら動体追跡が可能となる。
【0021】
実施形態等で発明の構成要素に付された符号は実施形態との整合性を明確にするためであり、権利範囲の広さを限定的にしたものでは無い。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態の放射線治療システム1を用いた放射線治療手順の模式的説明図である。最初に
図1を参照しつつ放射線治療概要を説明することによって、本発明の理解を容易にする。以下では放射線の一例としてX線を例にとり説明する。
(放射線治療手順概要)
(A)放射線治療を実施する患者Pの患部付近に単数または複数個の放射線を減衰させる材料のマーカー、例えば金マーカーGを埋め込む。図中においては、便宜上、1個のマーカーのみを示している。金マーカーGは、一例として、金(Au)を材料として製造される直径「1.5(mm)」程度の球体であり、X線はこの金マーカーGで減衰されて透過できない。このことを利用してX線画像中で患部を特定する。(B)金マーカーGの固定が確認された後、CT(Computer Tomography)装置によって、患者PのCT撮影を行ってCT画像データを得る。
(C)治療計画装置で上述のCT画像データを基にした患者PのX線治療計画を作成する。具体的には、(C−1)オペレータ(医師等)により患部のROI(Region Of Interest:注目画像領域)と目標とする線量分布とが入力され、(C−2)治療計画ソフトウエアによって、最適な照射方向と線量、及びX線ヘッド100(本発明の主要部が含まれる)のターゲット移動パスを演算させる。患者Pの患部に対するX線照射方向・線量等を計画したものが「X線治療計画」である。
(D)オペレータは、放射線治療システム1の全体制御コンソールに、作成された治療計画データをダウンロードする。(E)カウチ190に患者Pを乗せて位置決めを行う。(F)オペレータは放射線治療システム1を操作し、治療用X線を患者Pに照射する。この時、X線は治療計画装置に従って、最適化された線量・方向でX線が照射される。具体的には、6軸マニピュレーター200がX線ヘッド100を指定された位置まで移動し、更に、「患者(患部)表面の動き・心臓の鼓動・呼吸の位相」のそれぞれを、不図示の「体表面監視カメラ・心臓鼓動監視装置・呼吸位相監視装置」のそれぞれで測定し、患部の動きを補償する制御の演算処理のデータとして使う。(G)治療は完了して、患者Pをカウチ190から降ろし、治療室から退出させる。以上の工程(A)〜工程(G)がX線治療手順の概要である。
【0023】
上述した工程(F)において、X線の患部への照射時には患者Pの体動があるため、作成したX線治療計画通りにはX線は患部に照射されない。例えば患者Pに肺癌があり、この肺に存在する患部(肺癌部)に対してX線を照射する場合には、呼吸によって患部が変位するので患部に対する正確なX線照射にはならない。このため、実施形態では
図2を参照して後述するように、X線ヘッド100に含まれる第2のコリメータ(セカンダリコリメータ)20を第1のコリメータ(プライマリコリメータ)10内において、少なくとも、1方向又は直交する2方向(1次元又は2次元)で首振り運動させる。これにより、移動する患部に追従させながらX線を連続照射する。動体追跡を行えるので正確なX線照射が実現可能となる。
【0024】
X線照射時には、6軸マニピュレーター200によってX線ヘッド100を適切な位置まで3次元移動するとともに適切な方向に向け、X線ヘッド100内の第2のコリメータ(セカンダリコリメータ)20(
図2等に図示)を首振り運動させる。6軸マニピュレーター200のアーム210の先端部にはX線ヘッド100が接続されている。アーム210は3軸方向への並進移動およびこの3軸周りの回転移動が可能であり、X線ヘッド100を所望の位置まで移動させ、X線ヘッドから出射されるX線を所望の方向に向けることが可能である。6軸マニピュレータ200の動作とX線ヘッド100の位置は、制御装置120によって制御される。制御装置120は、全体制御部70と、サブユニットコントローラー80を含む。これらの制御動作については
図7を参照して後述する。
【0025】
放射線治療システム1は、X線管50a、50bと、これに対応するFPD(Flat Panel Detector:フラットパネルディテクタ)60a、60bを含む。X線管50a、50bから放射されるマーカー位置検出用X線は、それぞれ対応するFPD60a、60bによって検出されディジタル信号に変換される。2組のX線管50a、50bからのそれぞれのX線放射方向が直交することが望ましいが、必須ではない。FPD60a、60bのそれぞれのX線検出画像には、X線を減衰させる金マーカーGの影ができる。例えば金マーカーGの影の中心を画像処理等で求めてCT画像情報と併せて患部の体動位置情報を算出し、この算出した体動位置情報に基づいて、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)を首振り制御することで、照射野を体動に追従させる。なお、
図1中の制御装置120は放射線治療システム1を動作制御するための制御装置を纏めて記載したもので6軸マニピュレーター200の制御系も含んでいる。
(X線ヘッド100の構成)
図2はX線ヘッド100のX線発生部と照射野形成部の主要部分の模式的な構成図である。X線ヘッド100の少なくとも一部が、コリメータ装置101Aを形成する。第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)は、一点鎖線で示す方向にその中心軸を有し、この軸心(中心軸)に対して対称な形状を呈している。第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)の軸心方向が、加速される電子線の進行方向となるように、加速管3、ターゲット4などが第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)内部に設けられている。加速管3やターゲット4の中心軸はプライマリコリメータ10の軸心に一致する。第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)は、第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)内に隙間(OP)を有した状態で配置され、X線を自身の軸心方向に通過させる。図中、ターゲット4から紙面の横方向に延びる太線の矢印はX線の放射を示す。第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)、ターゲット4は、例えばタングステン(W)などの金属材料を用いて製造される。
【0026】
第2のコリメータ(セカンダリコメータ20)の出射側には、X線線量を計測するための線量計、例えばイオンチェンバ27が設けられている。また、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)に結合されている適宜な部材上には、レーザー可視光(例えば赤色光)を出力する照準用レーザーユニット5が設けられている。照準用レーザーユニット5から発射されるレーザー可視光の進行方向は、ミラー6、ミラー7等の光学系によって、X線放射方向と重なるように設定されている。したがって、レーザー可視光が当たっている患部表面を観察すれば、X線の入射位置がわかる。
【0027】
可動部材MVに設けられた首振り駆動機構25が可動部材MVを移動させ、可動部材MVに接続された第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)を、矢印Aで示した方向にスイングさせる。第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)の軸心上にターゲット4が存在する構成とする。例えば、ターゲット4を中心とする球面をもつ第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)の当該球面と、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)が結合された可動部材MVの間にベアリングを設ける。ベアリングは、例えば2自由度動作ができるように円弧状曲線運動軸受を2方向に備えた結合部材であり、可動部材MVを保持するとともにターゲット4を回転中心とした第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)の円滑な首振り動作を可能とする。首振り駆動機構25を駆動制御することで、患部への放射線の照射を正確に行うことが可能となる。また、変位量検出手段の一例として、首振り角度検出部30Aが設けられる。首振り角度検出部30Aは、基準位置からの第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)の首振り変位量(首振り角度)を検出して首振り角度情報として出力する。
(首振り角度検出部30A)
図4は首振り角度検出部30Aの模式的構成図である。首振り角度検出部30Aは、検出ユニット31と、反射ミラー35を有する。反射ミラー35はたとえば
図2に示すように可動部材MV上に配置される。検出ユニット31内の半導体レーザー32から出力されるレーザー可視光はコリメータレンズ34によって平行光にされてハーフミラー36を透過し、反射ミラー35によって反射され、再度ハーフミラー36で反射される。この反射光は受光レンズ37によって、CCD等の受光素子38上に結像される。
図4では基準時(例えば第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)の首振り動作がされない場合)の光路を実線で示している。これに対して、首振り角度検出部30が傾く即ち首振り動作がされると、点線で示す光路となって受光素子38上での結像位置が移動する。
【0028】
具体的には、首振り角度検出部30Aがその基準角度から「α」だけ傾くと、点線で示す光路は実線で示す光路に対して「2α」傾き、受光素子38上の結像位置が移動する。そして、信号処理部39は、受光素子38からの信号を処理して首振り角度検出部30Aの傾きを演算して首振り角度の情報を出力する。首振り角度検出部30Aの傾きに応じた受光素子38上の結像位置等の情報を予めテーブル化しておいて、受信信号がテーブル化された情報に最も近いものに基づいて、首振り角度検出部30Aの傾き即ち第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)の首振り角度を検出・出力してもよい。この構成を用いると信号処理部39のソフトウエア・ハードウエア構成が簡素になり好ましい。コリメータレンズ34によって半導体レーザー32から出力される光を平行光にしているため、反射ミラー35の法線方向に検出ユニット31が移動したとしても、受光素子38の結像情報には影響が少ない光学系となっている。
図8、
図9および
図10に示すように、検出ユニット31をブラケット180を介してX線ヘッドベース300に固定し、反射ミラー35を可動部材MV(
図8のスイングベース170)上に設け、その他の光学系部材(半導体レーザー32、コリメータレンズ34、ハーフミラー36、及び受光レンズ37)とCCD系の受光素子38をX線ヘッド100の内蔵筐体上に設置する構成を取ることも可能である。後者の形態は首振り可動部が軽量にできるという利点がある。受光素子38としてCCDに替えてCMOSセンサを用いてもよい。
【0029】
図2に戻り、電子銃2(
図3参照)から発射された電子線は、加速管3によって加速されてターゲット4に衝突し、この結果、電子線がX線に変換される。ターゲット4によって発生されたX線は、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)によって照射エリアが絞られて、患部に対する所要の照射野を形成することが可能となる。さらに、第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)によって、ターゲット4によって発生されたX線が外部へ漏洩することを抑制できる。
【0030】
首振り駆動機構25を駆動制御することによって、可動部材MVが、矢印Aで示した両方向(図面上下方向)に移動するので、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)は図面上下方向に首振り動作を行う。基準位置からの首振り量である首振り変位量(首振り角度)は、首振り角度検出部30によって検出される。検出された首振り変位量を例えばフィードバックして首振り動作を行うようにし、かつ制御動作の安定化を図っている。なお、図面上下方向の首振り動作(1次元動作、1方向動作)以外に図面の表裏方向にも可動部材MVを動かすことによって、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)を図面に対して垂直な方向(表裏方向)にも首振り動作を行うことが可能となる。
【0031】
つまり、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)の2方向(2次元)での首振り動作が可能となる。この2次元首振り駆動は方向別に設けた首振り駆動機構で行うことも可能である。また、首振り変位量の検出・出力についても、一つの首振り角度検出部30で行うことも可能であるし方向別に設けた検出部で行うことも可能である。首振り駆動機構25として例えばボイスコイルモータを用いることで、高速・高精度の首振り動作を行うことが可能となる。以上に示すように、X線ヘッド100は、電子銃2、加速管3、ターゲット4、照準用レーザーユニット5、第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)、首振り駆動機構25、首振り角度検出部30、X線ヘッド内コントローラー90(
図5参照)等を主要な構成要素として構成される。
(X線発生部)
図3はX線ヘッド100内で特に電子線の発生部と加速部とX線発生部の模式的な構成図である。電源・制御ユニット105は、所要の箇所に電源供給を行ったり、制御信号を与えたりする。電子銃2には電子銃駆動電力が供給されていて、イオンポンプ45の駆動によってその内部が真空雰囲気とされる。加速管3は、その管内において、電子銃2が発射した電子線を加速する。加速管3内はイオンポンプ43の動作によって真空雰囲気とされる。ステアリングコイル11は電子線の加速方向を微調整するための磁界印加を行うためのコイルである。
【0032】
加速管3の端部(図面右側)近傍にはターゲット4が埋め込まれており、電子線が衝突するとX線を生成するので、このターゲット4は「電子線−X線」変換手段となる。発生されたX線は、首振り動作を行う第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)で所要の照射野にされるのは、先に説明した通りである。
図3では、照準用レーザーユニット5から出力されるレーザー可視光をミラー6、7(
図2参照)で導いて、X線軸(X線の進行方向中心軸)とレーザー光の光軸(レーザービームの中心軸)とが重なるようにしている様子を図示している。冷却水分配器180からの冷却水は、流量調整バルブでその供給量が調整されて所要の箇所に供給される。特にターゲット4、加速管3、マグネトロン40、サーキュレータ42等には温度が一定の冷却水が供給される。
【0033】
マグネトロン高電圧パルスがパルストランス154に供給されると、このパルストランス154の高電圧がヒータートランス156を介してマグネトロン40に印加されて、マグネトロン40は高周波電磁波を生成出力する。なお、イオンポンプ46の動作によって、マグネトロン40近傍は真空雰囲気とされている。
【0034】
マグネトロン40によって生成出力された電磁波は、Eベンド、フレキシブル導波管、Hベンド、サーキュレータ42、Hベンド、カプラ44等の導波管デバイスを通り、RF窓15を介して加速管3に導入される。AFC位相検出部152は、カプラ44の2端子を利用して導波デバイス内を導波される進行波と反射波の位相差を検出し、マグネトロン40のキャビティに接続されているAFCモータ駆動部150は、この検出された位相差に応じて、キャビティの大きさを制御して、発振周波数を変更制御する。この結果、AFC(Auto Frequency Control)、つまり高周波電磁界の周波数偏移をフィードバックして周波数安定制御が行われる。
【0035】
加速管3内には、RF窓15から高周波電磁波が導入されるとその管(tube)の中心軸に沿って加速に適した電場が形成され、電子線が加速される。電子銃2から出力される電子線は、加速管3内に生成される高周波電磁界によって加速されてターゲット4に衝突し、X線が生成される。なお、本出願人等が出願(共同出願)して公開された公開公報「特開2008−198522」には、このようなリニアック型のX線発生部の原理等について記載しており、ターゲット4に向けて発射する電子線のスポット径を1(mm)以下としターゲット4がX線案内孔(孔径0.6(mm)以下)を有するコリメータを備えた構成とすれば、高エネルギーでビームスポット径の小さなX線を発生できることを確認している。
(制御系の構成)
図5はX線ヘッド100の首振り制御の制御部の基本ブロック図、
図6は、首振り制御の基本原理、
図7は放射線治療システム1全体での首振り制御の概略ブロック図である。
図5に示すように、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)の2次元の首振り角を示す情報「θx,θy」が供給されると、X線ヘッド内コントローラー90は、X軸方向首振り駆動機構94、Y軸方向首振り駆動機構96に指令を与える。この結果、X軸方向首振り駆動機構94、Y軸方向首振り駆動機構96のそれぞれは、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)のX軸方向の首振り角、Y軸方向の首振り角が「θx,θy」となるように駆動制御される。これが制御系の基本的な構成である。
【0036】
図6に示すように、X線ヘッド内コントローラー90のボイスコイルモータドライバ92が、生成された制御信号に応じてボイスコイルモータ150を制御することによって首振り動作が行われる。首振り角度検出部30Aによってこの首振り角度が検出され、この検出角度とサブユニットコントローラー80から与えられた角度指令値とが比較されてその偏差を吸収するようにフィードバック制御される。この構成により制御の安定性が図られる。
【0037】
図7は放射線治療システム1の制御系の構成例である。全体制御部70は、追尾コントローラー71とタイミングコントローラー72とを有する。タイミングコントローラー72はシステム内の各デバイスの同期を取るための同期信号を生成し、6軸マニピュレーター200、イメージャー65、サブユニットコントローラー80等に供給する。なお、イメージャー65は、
図1のX線管50とFPD60を1組としたもので(X線管50a,FPD60aの組と、X線管50b,FPD60bの組)、X線画像取得のためのデバイスである。追尾コントローラー71は、6軸マニピュレーター200からX線ヘッド100の座標(x,y,z,yaw,roll,pitch)の供給を受ける。
【0038】
6軸マニピュレーター200は、常にX線ヘッド100をアイソセンタ(治療中心)に向けるように動作する。ここで座標系はアイソセンタを原点として平面上2方向にx、y軸をとり、鉛直方向にZ軸をとる。「yaw」はz軸回りの回転量、「roll」はx軸回りの回転量、「pitch」はy軸回りの回転量である。また、追尾コントローラー71は、イメージャー65から照射ターゲットの座標(x,y,z)の供給を受ける。そして、サブユニットコントローラー80は、追尾コントローラー71から首振り角度設定情報(θx,θy)の供給を受けて、X線ヘッド100に内蔵されるX線ヘッド内コントローラー90に首振り角度設定情報(θx,θy)を供給する。
(制御動作)
(1)全体制御部70の追尾コントローラー71は、6軸マニピュレーター200から、X線ヘッド100の座標(x,y,z,yaw,roll,pitch)を受け取る。追尾コントローラー71はまた、イメージャー65から、照射ターゲットの座標(x,y,z)を受け取る。追尾コントローラー71は、受け取ったX線ヘッド100の現在座標および照射ターゲット座標に基づいて、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)のあるべき首振り角度を演算して求める。
(2)全体制御部70の追尾コントローラー71は、求めた首振り角度を首振り角度設定情報として、X線発生部のサブユニットコントローラー80に送信する。サブユニットコントローラー80は、受信した首振り角度設定情報をX線ヘッド100内のX線ヘッド内コントローラー90に送信する。
(3)X線ヘッド内コントローラー90が首振り角度設定情報を受信し、フィードバック制御のための演算処理を行って、ドライバー回路を通してこれを首振り駆動機構25に渡す。首振り駆動機構25は、受け取った首振り角度設定情報に基づく首振り角度になるように第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)を駆動する。なお、図中、X線ヘッド100内の「照射野形成部」は、第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)、首振り駆動機構25等の照射野形成機能を有する部分である。
【0039】
以上の動作(1)〜(3)が繰り返されることによって、常にX線軸が照射ターゲットに向けられるのでたとえ体動があったとしても、コリメータ首振り動作によって患部への適切なX線照射が実現できる。
図7の右下側に、患者Pの照射ターゲットT(照射目標である患部)が、基準コリメータ軸心から離れたとしても、コリメータ首振り動作(図面上下方向)によって、X線軸が追従する様子が太線で示されている。これらの一連の動作は、全体制御部70のタイミングコントローラー72が生成出力する同期信号に従ってリアルタイムに実行されるので、動体追跡を高速に行うことが可能である。
(画像処理)
図16及び
図17を参照して、イメージャー65の画像処理動作を説明する。
図16(a)はX線透視撮影の原理図である。X線透過画像では、正常組織と癌患部とのコントラストの差がないため、癌患部を直接見ることができない。そこで、癌患部付近に直径1.5(mm)程度の金マーカーGを挿入してこれを観測する。1組のX線管とFPD(Flat Panel Detector)とを、2組(X線管50a、FPD60aの組と、X線管50b、FPD60bの組)用意する。それぞれの組のX線管50a、50bからのX線軸(X線の進行方向中央軸)が直交するように設定するのが望ましいが、必ずしもこの例に限定されない。
図16(b)は、FPD60a、60bが検出したX線画像例である。これを解析処理することにより、FPDの座標系((η、ξ)座標系)において金マーカーGの中心座標を得ることができる。なお、ここでは2組のX線管とFPDとを利用して画像処理を行う場合を例に取り説明するが、3組以上のX線管とFPDとを利用してより高精度の画像処理を行うことも可能である。
【0040】
二つの画像の4個の座標(η1、ξ1)と(η2、ξ2)とに基づいて、金マーカーGの中心の三次元座標(x、y、z) を得ることができる。即ち、「(x、y、z)=f(η1、ξ1 、η2、ξ2)」となる。関数fを適切に決めて、最後はキャリブレーションにより調整を行えば、金マーカーGの座標が精度良く計測できる。実際の治療で必要な情報は,金マーカーGの座標ではなく、癌患部の座標であるが、金マーカーGと癌患部との位置関係は、CT 画像を用いて予め治療計画で求めておくことにする。例えば、癌患部の座標(x1、y1、z1)は、金マーカーGの座標を(x0、y0、z0)として、「x1=x0+a、y1=y0+b、z1=z0+c」等となる。
【0041】
以下にイメージャー65を使用して金マーカーGの座標(ターゲット座標)を求める演算アルゴリズムの一例について説明する。基本原理はX線管50とFPD60で構成されるイメージャー65で得られるステレオ画像に基づいて位置座標を求めるものである。この演算アルゴリズムを決定するためには、X線管(50a、50b)とFPD(60a、60b)の配置が重要である。具体的には
図17に示すようにイメージャー65を配置する。
図17(a)、(b)に示すように治療室のアイソセンタCを原点として、鉛直方向にz軸を取り、これに直交するようにx軸とy軸を取る。次に述べるパラメータが重要である。「直交性」:二組のX線管(50a、50b)の焦点とFPD(60a、60b)の中心を結ぶ直線であるX線軸を直交させることが望ましい。「平面対称性」:治療室座標系のyz平面に対して対称である。「FPDの座標軸」:FPD画像のη軸は軸一対のX線軸が成す平面と交叉するFPD面とし、ξ軸もFPD面にありη軸と直交する。「仰角」:軸一対のX線軸が成す平面と治療室座標のxy平面のそれぞれの法線のなす角度をθとして、これを「イメージャー仰角」と称する。「拡大率」:X線管のX線発生点から金マーカーGまでと、X線管のX線発生点と金マーカーGを結ぶ直線上にあるFPD面までの距離の比は「1:α」とする。これはFPD画面上での拡大率となる。直交性と平面対称性は必須ではないが望ましい。
【0042】
癌患部位置をxアッパーバー、yアッパーバーおよびzアッパーバーとすると次式(1)のように表される。
【0043】
また、治療室座標系における金マーカーGの座標(x,y,z)とFPD座標系[(η1、ξ1),(η2、ξ2)]の関係は、座標の回転行列(Rx、Rz)と拡大率αとで次式(2)のように表される。
【0044】
【数1】
ただし、アイソセンタから金マーカーGまでの距離(x
2+y
2+z
2)
1/2はX線管−アイソセンタ、あるいは、FPD−アンソセンタ間距離に比べて十分に短いと仮定している。つまり、拡大率αをX線管の発生点からアイソセンタまでと、FPD中心までの距離の比として近似している。ここで使用している行列は以下の(3)式〜(5)式である。
【0045】
【数2】
これらの行列を纏めると以下の(6)式となる。
【0046】
【数3】
従って以下の行列方程式(7)を解けばよいことに帰着する。
【0047】
【数4】
ここで観測量(η1、ξ1,η2、ξ2)から未知数(x,y,z)を求めるのであるが、この方程式は未知数が3個で式数が4であるため通常は解が定まらないので、最小二乗法の解を使う。これは正規方程式として知られており、以下の(8)式となる。ここでx、y、zはそれぞれ最小二乗法の解である。
【0048】
【数5】
この連立方程式の解は単純であり、以下の(9)式のようになる。
【0049】
【数6】
この式を計算すれば金マーカーGのイメージャー座標から金マーカーの治療室座標を得ることができる。そして、癌患部位置は、(1)式より(x+a、y+b、z+c)となる。このように画像処理等によってイメージャー座標から、照射ターゲット座標を求めることができる。
【0050】
さて、X線ヘッドにおけるX線発生点(ターゲット4)の座標を(xs、ys、zs)とする。また極座標系を(r、θ、φ)とすると、以下の変換式が成立する。ただし、「r」は、SADと称される量であり治療中は一定値である。「θ」は、仰角ではない。
【0051】
【数7】
アイソセンタとX線発生点を結ぶ線がz軸となるような新しい座標系を決める。この新しい座標系を
図18に示す。
図18において、xyz座標系の原点Cはアイソセンタである。点pはxyz座標系でのX線発生点の座標であるが、この点pを原点とする新たな座標系から見たターゲット(癌患部)の座標値が、首振りコリメータの照射ターゲット座標となる。そこで、
図18の新たな座標(u、v、w)系から見たターゲット位置を求める。この新しい座標系を得るためには、次式(11)の座標変換を用いる。
【0052】
【数8】
円環行列Rx(−θ)Rz(−π/2+φ)を用いることにより前記の新しい(x、y、z)座標系によるターゲット位置が求まり、さらに回転行列Ry(π)と並行移動rにより
図18に示したX線発生点が原点となる座標(u、v、w)系によるターゲット位置が次式によって求まる。
【0053】
【数9】
図18において、X線ヘッド100が出射X線のビーム軸(w軸)回りに回転角θrollで回転したときは、このw軸回りに回転した座標(u'、v'、w')系で定義されるターゲット位置が(11)式の座標変換Rz(x)より求まる。このことより、首振りコリメータの首振り角度(θu、θv)は、次の(13)式と(14)式より求まる。
【0054】
なお、回転角θrollは、X線ヘッド100の座標(x、y、z、yaw、roll、pitch)により決定される。
【0055】
【数10】
この首振りコリメータの首振り角度(θu、θv)は、
図6、
図7におけるx軸方向の首振り角とy軸方向の首振り角度(θx、θy)となる。このようにして、セカンダリコリメータ20の首振り角度(θx、θy)が求まり、追尾コントローラー71はこの求めた(θx、θy)をサブユニットコントローラー80に渡す。そして、X線ヘッド内コントローラー90がこれをサブユニットコントローラー80から受け取って、セカンダリコリメータ20は首振り制御を行うので、所望の首振り動作が行われる。
(X線照射装置)
図8〜
図11はX線ヘッド100を組み込んだX線照射装置の構成を示す。
図8はX線照射装置の正面図、
図9は斜視図、
図10は平面図、
図11は
図8のX−X断面図である。X線照射装置は
図2、3等を参照して説明したX線ヘッド100をX線ヘッドベース300内に装着している。このX線ヘッドベース300は、大略、内部中空の筒状の形状を成していて、この筒状体の一方(X線出射側)の先端側にはこの一端を閉塞するように第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)が詰め込まれて装着されている。この第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)の軸心上には、電子銃2(
図3参照)から発射される電子線をX線に変換するターゲット4が設けられていて、基準となるX線軸が第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)の軸心と一致する構成となっている。
【0056】
X線ヘッドベース300の外周面には、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)を少なくとも直交2方向で首振り駆動制御するための4台のボイスコイルモータ150a、150b、150c、150dが、それぞれ円周上でその円周の四分の1ずつ(対応する円の中心角を90度ずつ)ずらして設けられている。ボイスコイルモータ150a〜150dは、
図2の首振り駆動機構25の一例である。また、このX線ヘッドベース300の外周面から伸びるように設けられたブラケット180の先端部には首振り角度検出部30Aの検出ユニット31(
図2参照)が固定接続されている。検出ユニット31に対向するスイングベース170(
図2の可動部材MV)の外表面位置には
図4の平面反射ミラー35が固着されている。
【0057】
ボイスコイルモータ150aの先端部(X線出射側)には適宜の部材を介して照準用レーザーユニット5が設けられ、この照準用レーザーユニット5から出力されるレーザー可視光は、ミラー7等で構成される光学系でX線軸と重なるようにされている。かくして、X線照射先はレーザー可視光を目視することで確認可能である。更に、ミラー7と第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)との間のスイングベース170の外面側には適宜の部材によってイオンチェンバ27が固定設置されているので、放射線の線量や照射方向等の計測を容易に行うことが可能である。
【0058】
図9において、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)と結合されたスイングベース170と中間部材152間に円弧状曲線運動軸受151aと151bを設ける。また前記中間部材152と第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)上にある取付けベース153間に前記軸受と直交する方向に向く円弧状曲線運動軸受け151cと151dを設ける(ただし、151dは
図9の斜視図では見えない。この構成によって、スイングベース170がスムースに首振り動作できる。
(首振り駆動機構)
次に、
図11乃至
図13を参照して首振り駆動機構について説明する。
図11乃至
図13は、
図8のX−X断面図である。なお、
図11乃至
図13においては、理解容易化のためにコリメータ10、20等には敢えて斜線を付しておらず、電子銃2、加速管3等は省略されている。
図11には2つのボイスコイルモータ150a、150dの模式的な構成が示されており、いずれのボイスコイルモータ150a〜150dも同一の構造を有している。ボイスコイルモータ150は、その内部が空洞部SPとなっているコイル支柱155が先頭に延びていて、その根元にはボビン161が接続されている。ボビン161には導電線が巻回されてコイルが形成されている。ボビン161の外側には適宜の間隔で2個の円環状のコイルスペーサ160を配置して、これらスペーサ160間とこれより外側(図面左右側)に導電線(図中黒丸で図示)が巻回され、3個のコイル166が形成されている。なお中間にあるコイルと外側2つのコイル166は巻き方向が逆になっている。
【0059】
ボイスコイルモータ150の磁気回路は、X線ヘッドベース300の外側に固定される。この磁気回路として、ボビン161内側には磁界を生成する円筒状のマグネット165が2個設けられ、このマグネット165間とそれぞれのマグネット165の外側(図面左右側)には円筒状の内側ヨークが形成され、ボビン161の外側には筒状の外側ヨーク157が形成される。なおマグネット165の磁極は、接している内側ヨーク方向に存在し、二つのマグネットが向き合う磁極は同じ極性(一方がSの場合他方もS)となる。このことにより内側ヨークと外側ヨーク157間の空隙部には磁束が通り、この空隙部にあるコイルとこの磁束が鎖交し、コイルに電流が流れることで「力」が生成される。外側ヨーク157と内側ヨーク156(a)はボイスコイルモータの底部で磁性体のベース部材158で結合されている。なお、
図11乃至
図13におけるC1、C2、C3はボイスコイルモータ150内の隙間を示している。更に、第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)および第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)の先端には、正面視が自動車ハンドルに類似した形状のスイングベース170が配置されている。このスイングベース170は、コイル支柱155に連結されていると共に、その中心部が適宜の部材を介して、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)と連結されている。
【0060】
かかる構成によって、或る方向(以下「正方向」とも記す)に電流が流れるとマグネット165で生成される磁界と相まってフレミングの左手の法則によって図面右方向にコイル支柱155が動く。或る方向とは逆の方向(以下「逆方向」とも記す)に電流が流れるとコイル支柱155は図面左側に動く。互いに向き合うボイスコイルモータ150aと150dに電流を正方向と逆方向に流すことによってコイル支柱155を両方向矢印で示すように図面の左右方向に動かす。その結果、スイングベース170が図面上下方向に動き果、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)の首振り動作が行われる。なお、スイングベース170は第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)の球面上にある図示しないベアリング(
図9における2自由度動作ができるように円弧状曲線運動軸受を2方向に備えた結合部材)で結合されて、首振り動作が可能な構成となっている。
【0061】
図12は第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)を図面上方にスイングする動作を示している。ボイスコイルモータ150a、ボイスコイルモータ150dのそれぞれに対して、逆方向、正方向の電流を供給すると、それぞれ図面左向き(矢印DA方向)、図面右向き(矢印DB方向)にコイル支柱155が動く結果、スイングベース170が上向きに動き、その結果、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)が上方に動くことになる。
【0062】
図13は第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)を図面下方にスイングする動作を示している。ボイスコイルモータ150a、ボイスコイルモータ150dのそれぞれに対して、正方向、逆方向の電流を供給すると、それぞれ図面右向き(矢印DB方向)、図面左向き(矢印DA方向)にコイル支柱155が動く結果、スイングベース170が下向きに動き、その結果、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)が下方に動くことになる。以上の通り、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)を図面上下方向にスイング動作させることが可能である。
【0063】
図14は4個のボイスコイルモータ150a、150b、150c、150dで第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)を首振り動作させる模式的説明図である。
図8と並べて参照すると分かるように、
図12、
図13の状態は
図14(a)、
図14(b)の状態に対応する。
図14(a)に示すように、ボイスコイルモータ150a、150dによりスイングベース170を動かす力をVDA(図では「ベクトル」状に記載)となり、ボイスコイルモータ150b、150cによりスイングベース170を動かす力をVDBとすると合力はV1となり上向きの力が働く。一方、4個のモータに対する供給電流を逆転して、ボイスコイルモータ150a、150dによりスイングベース170を動かす力をVDDとし、ボイスコイルモータ150b、150cによりスイングベース170を動かす力をVDCとすると合力はV2となり下向きの力が働く。この結果、
図14(a)、
図14(b)で示すように、モータ駆動を行うと第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)を上下方向にスイングできる。このスイング量調整は各モータへの供給電流を調整することによって行われる。
【0064】
図14(c)は、
図14(a)に示す状態において、ボイスコイルモータ150a、150dの供給電流方向を逆転した状態である。
図14(c)に示すように、ボイスコイルモータ150b、150cによりスイングベース170を動かす力をVDFとし、ボイスコイルモータ150a、150dによりスイングベース170を動かす力をVDEとすると合力はV3となり右向きの力が働く。一方、
図14(d)は、
図14(a)に示す状態において、ボイスコイルモータ150b、150cの供給電流方向を逆転した状態である。
図14(d)に示すように、ボイスコイルモータ150a、150dによりスイングベース170を動かす力がVDGとなり、ボイスコイルモータ150b、150cによりスイングベース170を動かす力をVDHとすると合力はV4となり左向きの力が働く。この結果、
図14(c)、
図14(d)のようにモータ駆動を行うと、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)を左右方向にスイングできる。このスイング量調整は各モータへの供給電流を調整することによって行われる。以上のような、モータ制御は、首振り角度設定情報(θx、θy)を受け取ったX線ヘッド内コントローラー90が行うように構成されている。ボイスコイルモータの他の形態として、コイルとマグネットを各1個で構成しても良い。この場合、
図11における外側ヨーク157と内側ヨーク156(a)を結合するベース部材158もヨーク材で形成され、ボイスコイルモータ開放端側の内側ヨーク156(c)と外側ヨーク157間の空隙部を通る磁路と鎖交する位置にボビン上の1個のコイルが形成される構成を取る(
図11において内側ヨーク156(b)が存在しない形態である)。なお、ボイスコイルモータは、可動部が傾斜される(
図12、
図13参照)ことが許容されるので本実施形態のように構成すればリンク機構が不要となり振動問題を回避でき安定に駆動することができる。したがって、ピエゾアクチュエータ等のリニアモータを首振り駆動機構として採用する場合は高精度なリンク機構と組み合わせれば良い。
(寸法、装置外観等)
上述のように、各ボイスコイルモータ150a〜150dの電流の向きと大きさを調整することによって、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)を360度全方向に「3(deg)」スイングできる。また、
図8、
図9、
図10で示すX線照射装置の大きさは縦方向最大250(mm)、横方向最大250(mm)、奥行き方向最大200(mm)、重量約6(kg)であり現段階で小型化を達成している。
【0065】
図15は、放射線治療システム1の外観図である。この図では、X線管50aとFDP60aのセット、及びX線管50bとFDP60bのセットは省略されているが、X線管50a、50b、FDP60a、60bの配置構成とイメージャーとしての機能は、
図16と
図17を参照して「画像処理」の項目で説明したとおりである。患者Pはカウチ190に載り、X線治療を受ける。その際、6軸マニピュレーター200がX線ヘッド100を所要の位置まで移動させる。これらの制御は制御装置で行われる。
図15に示すように、
図8乃至
図10でその外観を説明したX線ヘッド100を含む装置が、6軸マニピュレーター200のアームに搭載できる程度の大きさや重さになっている。なお、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)とこれに付設される部品(首振り角度検出部30等)とで成るスイング部の首振り動作の回転中心をスイング部重心とを略一致させた構成とすると、スイング部が勝手に振れ回らなくなる等の理由で好ましい。
(変形例1)
図19〜
図22は、変位量検出手段の別の構成例として、首振り角度検出器30Bを示す。
図4の光学系を用いた首振り角度検出器30Aに替えて、エンコーダ方式の首振り角度検出器30Bを用いてもよい。
図19は、首振り角度検出器30Bの一部であるリニアエンコーダ303の正面図、
図20は、ボイスコイルモータ150a〜150dとリニアエンコーダ303の位置関係を示す斜視図である。
図20に示すように、首振り角度検出器30Bは、セカンダリコリメータ20の首振りの方向であるX軸とY軸の各々に沿って配置される少なくとも1組のリニアエンコーダ303を含む。
図20の例では、首振り角度検出器30Bは4つのリニアエンコーダ303a〜303d(適宜、「リニアエンコーダ303」と総称する)を有し、リニアエンコーダ303bと303dはX軸に沿って、リニアエンコーダ303aと303cはY軸に沿って配置される。リニアエンコーダ303aと303bで1つの組を形成し、リニアエンコーダ303cと303dでもう1つの組を形成する。いずれか一方の組を用いることで基準位置からのセカンダリコリメータ20のX方向及びY方向の変位量(首振り角度)を検出できるが、2組用いることで装置の信頼性が向上する。
【0066】
図19に戻って、各リニアエンコーダ303は、リニアスケール301とエンコーダセンサ302を有する。リニアスケール301は、首振り原点すなわちX線発生源であるターゲット4の位置をX軸またはY軸と平行にリニアエンコーダ303の配置面まで並進させたときの位置Sを中心に、半径Rの円弧を描くスケーラ面を有する。エンコーダセンサ302は、リニアスケール301の円弧状のスケーラ面と対向する位置にセンサ面を有する。ボイスコイルモータ150a〜150dによる第2のコリメータ20の首振り運動によって、エンコーダセンサ302はリニアスケール301から一定の距離を保ったまま円弧運動し、リニアスケール301に対して相対的に変位する。
【0067】
図21は、リニアエンコーダ303の拡大図である。リニアスケール301の円弧状のスケーラ面301fに一定間隔のスケールが形成されている。スケールの間隔すなわち単位距離は、リニアスケール301の分解能と相関する。エンコーダセンサ302で読み取られたスケーラ面301fの位置情報は、分解能と曲率半径Rで決まる角度情報を表わす。
【0068】
リニアエンコーダ303の種類として、磁気式または光学式のエンコーダを使用できる。磁気式の場合は、たとえばスケーラ面301fにS極とN極のマイクロ磁石を交互に配置し、エンコーダセンサ302の磁気センサで相対的な変位量を検出する。光学式の場合は、たとえば、スケーラ面301fに反射面と吸収面と交互に配置し、エンコーダセンサ302の光センサで相対的な変位量を検出する。磁気式エンコーダは埃、油などに対する環境ロバスト性に優れている。環境がよい場合は、コストの低い光学式反射エンコーダを用いることができる。
【0069】
図22は、エンコーダセンサ302で読み取られた情報に基づく首振り角度の検出を説明する図である。リニアスケール301の単位距離Δdは、スケーラ面301fの曲率半径Rを用いて単位角度へ変換することができる。Δd=R×sinθであり、θが小さいときはsinθ≒Δθと近似できる。必要とされる分解能は、患部のサイズ、照射X線のスポット径等に応じて、ナノメータ(nm)オーダーから数百ミクロンまで適宜決定される。エンコーダセンサ302で読み取られた位置情報を角度に変換することで、首振り角度θが得られる。
【0070】
X軸に沿って配置されるリニアエンコーダ303b、303dの出力は、Y軸回りの首振り角度θyを表わす。Y軸に沿って配置されるリニアエンコーダ303a、303cの出力は、X軸回りの首振り角度θxを表わす首振り角度(θx,θy)の検出用に、リニアエンコーダの組を2組用いることで、センサ自体の異常の検出が可能であり、また、センサ故障時にバックアップが可能になる。なお、リニアエンコーダ303を用いた首振り角度検出器30Bで検出される首振り角度(θx、θy)は、
図6のフィードバック制御に用いられる(θ'x,θ'y)に相当する。
【0071】
2組のリニアエンコーダの組は、すべて同じ種類のリニアエンコーダ303を用いてもよいし、1組を磁気式のリニアエンコーダ、他の1組を光学式のリニアエンコーダとしてもよい。また、1組のリニアエンコーダ303を、
図4の首振り角度検出器30Aと組み合わせて用いてもよい。
【0072】
リニアエンコーダ303の出力タイプとして、インクリメンタルタイプとアブソリュートタイプがある。インクリメンタルタイプでは電源のOFF−ONごとに原点決めの動作が必要になる。アブソリュートタイプは位置情報を記録してあるためその必要はない。いずれの出力タイプも使用可能である。
【0073】
ボイスコイルモータ150a〜150dと、リニアエンコーダ303a〜303dの位置関係としては、
図20のように対向するボイスコイルモータ150同士を結ぶ対角線に対して、リニアエンコーダ303を45度傾けて配置してもよい。この場合は、首振り方向の基準となるX軸とY軸が、ボイスコイルモータ150a〜150dの対角線に対して45度傾き、リニアエンコーダ303a〜303dがX軸またはY軸と平行に設置される。この配置は装置の小型化に有利である。
【0074】
リニアエンコーダ303a〜303dを、ボイスコイルモータ150a〜150dの対角線と平行に配置する構成も可能である。この場合は、ボイスコイルモータ150a〜150dの可動軸が、首振り方向の基準となるX軸、Y軸に一致し、リニアエンコーダ303による位置−角度変換が単純化され、より高精度の制御が期待できる。
(変形例2)
図23及び
図24は、コリメータの変形例として、第3のコリメータ310を用いたコリメータ装置101Bを示す。第1のコリメータ(プライマリコリメータ)10の内部に隙間OPを持たせて第2のコリメータ(セカンダリコリメータ)20Aを首振り動作可能に配置する点は、
図2と同様である。
図23では、第2のコリメータ20Aの内部に、第3のコリメータ310を交換可能に挿入して、照射野を変更可能にする。患部の位置、大きさによっては照射X線のビーム径が狭く絞られていることが望ましい場合がある。また、患部の位置、大きさに応じてビーム径を適宜選択、変更できることが望ましい。第3のコリメータ310は、このような照射野の調整を実現する。
【0075】
第2のコリメータ20Aは、第3のコリメータ310の挿入を想定して、
図2のセカンダリコリメータ20とは異なる形状を有する。第2のコリメータ20と20Aに共通する機能は、第1のコリメータ10の内壁との間の隙間OPを利用して首振り運動する機能である。第2のコリメータ20Aは第3のコリメータと一体となって、軸方向にX線を通過させる機能、照射野を形成する機能、及び第2のコリメータ20Aの外形形状と第1のコリメータ10の形状とで漏れ線量を低減する機能を果たす。照射野形成の機能は主として第3のコリメータにより実現される。
【0076】
第2のコリメータ20Aは、第3のコリメータ310を受け取ることができ、かつ第1のコリメータ10の内部で首振り運動ができる形状を有する。一例として、第2のコリメータ210の外壁はなだらかな曲線を描いて、隙間OP内での円滑な搖動と、安定したX線遮蔽効果を実現する
図24は、第3のコリメータ310の挿入例を示す図である。
図24(a)の第3のコリメータ310Aと、
図24(b)の第3のコリメータ310Bは、その外形形状は同じであるが、コリメート空間3001の径が異なる。
図24(a)のコリメート空間3001の径は、
図24(b)のコリメート空間3001の径よりも小さく、X線照射ビームをより絞り込むことができる。第2のコリメータ20Aの内部に第3のコリメータ310Aまたは310Bを交換可能に挿入することで、所望のビーム径が得られる。
【0077】
第3のコリメータ310A、310Bは、第2のコリメータ20Aの出力端2002まで挿入され、第2のコリメータ20Aと一体となって搖動する。第1のコリメータ10内部での首振り運動自体は、第2のコリメータ20Aが行う。第3のコリメータ310は第2のコリメータ20Aの内部の空間に嵌合し、結果的に第2のコリメータ20Aと一体となって首振り運動を行う。この構成により、第2のコリメータ20Aの首振り運動を妨げることなく、照射野を簡便に変更することができる。
【0078】
なお、第3のコリメータを用いない場合に、異なる照射野を有する第2のコリメータを複数用意して、第2のコリメータを交換可能にする構成も可能である。
(制御系のハードウェア構成と処理フロー)
図25は、制御系のハードウエア構成図である。制御装置120は、プロセッサ1201と、メモリ1202と、入出力インタフェース1203を有し、これらはバス1205で相互に接続されている。X線ヘッド内コントローラー90は、プロセッサ901と、メモリ902と、入出力インタフェース903を有し、これらはバス905で相互に接続されている。
図25では、制御装置120とX線ヘッド内コントローラー90は別々のハードウェアとして描かれているが、ひとつの制御ボード上にSoC(System on Chip)とメモリチップを配置して単一のハードウェアで実現してもよい。
【0079】
制御装置120の、プロセッサ1201は制御装置120の全体動作を制御するとともに、各種の演算を行う。メモリ1202は、基本入出力プログラムや演算プログラムを記憶するROM(read only memory)と、プロセッサ1201のワークエリアとして使用されるRAM(random access memory)を含む。入出力インタフェース1203は、外部機器との間の接続インタフェースを含み、必要に応じて所定のプロトコルで動作する通信装置を含んでもよい。入出力インタフェース1203は、6軸マニピュレータ200からロボット座標、すなわち現在のX線ヘッドの座標(x, y, z, yaw, roll, pitch)を受け取り、メモリ1202に格納する。また、イメージャー65(
図7参照)から金マーカーの座標または金マーカー座標に基づいて計算された照射ターゲット(患部)の座標を受け取り、メモリ1202に格納する。プロセッサ1201は、メモリ1202から座標情報を読み出して、第2のコリメータ20(または20A)の首振り角度を計算し、入出力インタフェース1203により首振り角度指示をXヘッド内コントローラー90に供給する。
【0080】
X線ヘッド内コントローラー90のプロセッサ901は、X線ヘッド内コントローラー90の全体動作を制御するとともに、各種の演算を行う。メモリ902は、基本入出力プログラムや演算プログラムを記憶するROM(read only memory)と、プロセッサ1201のワークエリアとして使用されるRAM(random access memory)を含む。入出力インタフェース903は、外部機器との間の接続インタフェースを含み、必要に応じて所定のプロトコルで動作する通信装置を含んでもよい。入出力インタフェース903は、制御装置120から首振り角度指示を受け取って、メモリ902に格納する。入出力インタフェース903は、首振り角度検出器30Aあるいは30Bから第2のコリメータ20(または20A)現在の首振り角度の検出値を受け取って、メモリ902に格納する。プロセッサ901は、メモリ902から首振り角度指示と首振り角度の検出値を読み出して、首振り駆動量を算出し、入出力インタフェース903から首振り駆動信号を出力する。
【0081】
制御装置120とX線ヘッド内コントローラー90をひとつの制御ボードで実現する場合は、制御ボードを6軸マニピュレータ200の本体内に配置して、直接ロボット位置座標(X線ヘッドの位置座標)を取得してもよい。また、制御ボードと、首振り駆動機構25や首振り角度検出器30A(または30B)との間を信号線で接続して、駆動電流やセンサ出力の入出力を行ってもよい。
【0082】
図26は、放射線治療システム1の基本的な処理フローを示す。まず、6軸マニピュレータ200のロボット座標(x, y, z, yaw, roll, pitch)と、金マーカーの座標(x, y, z)を取得する(S11)。金マーカーの座標に替えて、イメージャー65によって算出された患部の座標(x, y, z)を取得してもよい。後者の場合は、制御装置120で患部座標の計算を行う必要はない。
【0083】
次に、取得した座標情報に基づいて、第2のコリメータ20(または20A)の首振り角度(θx,θy)を算出し、これを角度指令としてX線ヘッド100に与える(S12)。首振り角度の算出については、
図18を参照して説明したとおりである。
【0084】
与えられた首振り角度と、検出された首振り角度のフィードバック情報に基づいて、首振り駆動機構25を制御して、第2のコリメータを第1のコリメータの内部で駆動する(S13)。照射終了命令があるまでS11〜S13を繰り返す(S14)。
【0085】
図26の処理は、プロセッサ1201及びまたは901が、メモリ1202及び/またはメモリ902に記録されたプログラムを実行することにより行われてもよい。単一の制御ボードを用いる場合は、制御ボード上のマイクロプロセッサがROM等の記憶媒体に記録されたプログラムを実行してもよい。
【0086】
図27は、
図26のステップS13の処理の具体例を示すスローチャートである。たとえば、X線ヘッド内コントローラー90は、メモリ902から制御目標角度(θx,θy)を読み出す(S21)。この制御目標角度(θx,θy)は制御装置120から与えられ、メモリ902に記憶されたものであってもよいし、制御装置120とX線ヘッド内コントローラー90をひとつの制御ボードで形成する場合は、制御ボード上のプロセッサで算出され、ボード上のメモリに記憶されたものであってもよい。
【0087】
X線ヘッド内コントローラー90は、首振り角度検出器30Aまたは30Bからセンサ値を取得し(S22)、現在の首振り角度(θ'x,θ'y)を計算する(S23)。ステップS21と、ステップS22及びS23は順不同であり、同時に行われてもよい。また、現在の首振り角度(θ'x,θ'y)の算出を首振り角度検出器30Aまたは30Bで行って、X線ヘッド内コントローラー90に入力する構成としてもよい。
【0088】
X線ヘッド内コントローラー90は、首振り角度の目標値と現在値を比較し、ボイスコイルモータ150a〜150dの電流値(Ix,Iy)を計算し(S24)、決定した電流値(Ix,Iy)をコイル電流として出力する(S25)。ボイスコイルモータ150a〜150dの各々は、それぞれ与えられたコイル電流により第2のコリメータを駆動する。この与える。放射線の照射が完了するまで、S21〜S25を繰り返す(S26)。
【0089】
図27の処理は、X線ヘッド内コントローラー90のメモリ902に記録されたプログラムに従って行われてもよい。
図26及び
図27の方法により、体動に追従した正確な放射線の照射が実現する。
【0090】
以上説明してきたように、本発明の実施形態によれば、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20又は20A)は、第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)内に隙間(OP)を有した状態で配置される。第1のコリメータ(プライマリコリメータ10)内で隙間(OP)を利用して、第2のコリメータ(セカンダリコリメータ20)のみを首振り動作させて対象物を走査して放射線照射を行うので、首振り動作が高速に行える。この結果、患部の体動に追従させて連続的にX線照射が可能になり、忠実な動体追跡が可能となる。例えば1回又は複数回のスイング毎にスイング角度を徐々増加させたり減少させたりして複雑な2次元形状の患部に対するX線照射を行うことも可能である。
【0091】
また、本発明にあっては、そのハードウエア、ソフトウエアにおける構成において様々な変形を施すことができ、この変形も本発明の要旨を満たす限り、本発明に包含されるものである事は言うまでもない。