特許第6295481号(P6295481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6295481
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】誘導加熱コイル
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/10 20060101AFI20180312BHJP
   H05B 6/40 20060101ALI20180312BHJP
   H05B 6/36 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   H05B6/10 381
   H05B6/40
   H05B6/36 D
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-263125(P2013-263125)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-118882(P2015-118882A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151367
【弁理士】
【氏名又は名称】柴 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100184262
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 義則
(72)【発明者】
【氏名】清澤 裕
(72)【発明者】
【氏名】西岡 光輝
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−189981(JP,A)
【文献】 特開平06−306476(JP,A)
【文献】 特開昭63−279591(JP,A)
【文献】 特開昭63−202880(JP,A)
【文献】 実開平04−118595(JP,U)
【文献】 特開2000−068043(JP,A)
【文献】 特開2006−302635(JP,A)
【文献】 特開平05−029074(JP,A)
【文献】 特開2008−066005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/10
H05B 6/36
H05B 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成され且つ円周方向の一箇所で軸方向に沿って延びるスリットを有するワークを加熱するための誘導加熱コイルであって、
前記軸方向の一端部において前記ワークの周面から離間して円周方向に延びる第一の円弧部と、
前記軸方向の他端部において前記ワークの周面から離間して円周方向に延びる第二の円弧部と、
前記第一の円弧部と前記第二の円弧部のそれぞれ同じ側にある一端部同士を接続し、前記ワークの周面に沿って湾曲して配置される第一の傾斜部と、
前記第一の円弧部の他端部から前記第二の円弧部に向けて延びて、前記ワークの周面に沿って湾曲して配置される第二の傾斜部と、
から構成され、
前記第一の傾斜部及び第二の傾斜部は、前記第一の円弧部又は第二の円弧部から離れるにしたがい、互いに接近していることを特徴とする、誘導加熱コイル。
【請求項2】
前記第一の傾斜部及び前記第二の傾斜部が、前記第一の円弧部の中点と前記第二の円弧部の中点とを結ぶ直線の中点に向けて接近するように延び、かつ前記直線の前記中点から前記第二の円弧部に向けて互いに離れる方向に延びている、請求項1に記載の誘導加熱コイル。
【請求項3】
前記第一の傾斜部及び前記第二の傾斜部が、前記第一の円弧部の前記中点と前記第二の円弧部の前記中点とを結ぶ前記直線に関して対称に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の誘導加熱コイル。
【請求項4】
前記第一の傾斜部及び前記第二の傾斜部が、前記第一の円弧部の前記中点と前記第二の円弧部の前記中点とを結ぶ前記直線の前記中点を通り前記直線と直交する直線に関して対称に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の誘導加熱コイル。
【請求項5】
少なくとも2個の請求項1〜4の何れかに記載の誘導加熱コイルが、前記第二の傾斜部を隣接して前記ワークの周方向に配置され、前記第二の傾斜部の末端部が互いに接続していることを特徴とする、誘導加熱コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状に形成され且つ円周方向の一箇所で軸方向に沿って平行に延びるスリットを有するワークを誘導加熱するための誘導加熱コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒状部材を高周波により誘導加熱する場合、円筒状部材の外側に高周波加熱コイルを配置し、高周波電流を流している(特許文献1)。円筒状に形成され且つ円周方向の一箇所で軸方向に沿って平行に延びるスリットを有するワークに誘導加熱処理を行なう場合、一般的には、例えば図5及び図6に示すように、円筒状の加熱コイルが用いられている。
【0003】
図5及び図6において、軸方向に延びるスリット11を有する円筒状のワーク10に対して、ワーク10の全周に亘って、その外周面に対向させて、円筒状の誘導加熱コイル51を配置し、誘導加熱コイル51に電力供給装置50から高周波電力を供給することにより、ワーク10が誘導加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−306476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような誘導加熱コイル51を使用したワーク10の誘導加熱においては、円筒状の誘導加熱コイルによって磁束が生じ、ワーク10に渦電流が矢印Aで示す円周方向に流れる。しかし、ワーク10がスリット11を備えているため、スリット11に近づくと、この渦電流は軸方向両側に分かれて、ワーク10の軸方向両端付近を逆方向に流れる。そのため、ワーク10の全体が均一に加熱されなくなり、均質な品質を保てずワークの硬度にバラツキが生じてしまう。
【0006】
本発明は以上の点に鑑み、簡単な構成により、円筒状に形成され且つ円周方向の一箇所で軸方向に平行に延びるスリットを有するワークを、均一に加熱する誘導加熱コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の誘導加熱コイルは、円筒状に形成され且つ円周方向の一箇所で軸方向に沿って延びるスリットを有するワークを誘導加熱するための誘導加熱コイルであって、
前記軸方向の一端部において前記ワークの周面から離間して円周方向に延びる第一の円弧部と、
前記軸方向の他端部において前記ワークの周面から離間して円周方向に延びる第二の円弧部と、前記第一の円弧部と第二の円弧部のそれぞれ同じ側にある一端部同士を接続し、前記ワークの周面に沿って湾曲して配置される第一の傾斜部と、
前記第一の円弧部の他端部から前記第二の円弧部に向けて延びて、前記ワークの周面に沿って湾曲して配置される第二の傾斜部と、から構成され、
前記第一の傾斜部及び第二の傾斜部は、前記第一の円弧部又は第二の円弧部から離れるにしたがい、互いに接近している。
【発明の効果】
【0008】
上記構成により、本発明の誘導加熱コイルは、円筒状に形成され且つ円周方向の一箇所で軸方向に平行に延びるスリットを有するワークを均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の誘導加熱コイルに係る第一実施形態を示す概略斜視図である。
図2】第一実施形態に示す誘導加熱コイルとワークの拡大展開図である。
図3】本発明の誘導加熱コイルに係る第二実施形態を示す概略斜視図である。
図4】第二実施形態に示す誘導加熱コイルとワークの拡大展開図である。
図5】従来の誘導加熱コイルの概略斜視図である。
図6】従来の誘導加熱コイルの概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図1図4を参照して詳細に説明する。
本発明の誘導加熱コイルに係る第一実施形態を図1及び図2に示す。
[ワーク]
本発明の誘導加熱コイルの加熱対象であるワーク10は、図1に示すように、円筒状に形成され、周囲方向の一箇所で軸方向Oに平行に延びるスリット11を有している。なお、ワーク10は、上下の治具(図示せず)により保持され、回転機構(図示せず)によりワーク10は、治具に保持された状態で回転されて誘導加熱される。
【0011】
[誘導加熱コイル]
図1に第一実施形態の誘導加熱コイルを示す。
この誘導加熱コイル1は、ワーク10の軸方向Oの一端部(図1においては、上端部)において、ワーク10の周面から離間して円周方向に延びる第一の円弧部20と、軸方向Oの他端部においてワーク10の周面から離間して円周方向に延びる第二の円弧部23と、第一の円弧部20と第二の円弧部23のそれぞれ同じ側にある一端部同士21、24とを接続し、ワーク10の周面に沿って湾曲して配置される第一の傾斜部30と、第一の円弧部20の他端部22から第二の円弧部23に向けて延びて、ワーク10の周面に沿って湾曲して配置される第二の傾斜部31と、から構成されている。
【0012】
第一の円弧部20と第二の円弧部23とは、お互いに対向しており、ワーク10から離間して配置されている。第一の円弧部20及び第二の円弧部23は、ワーク10の円周の全長にわたっていてもよく、円周の一部分の長さを有して設けてもよい。
【0013】
第一の円弧部20の一端部21と、一端部21に対向する第二の円弧部23の一端部24とには、第一の傾斜部30が接続している。また、第一の円弧部20の他端部22には、第二の円弧部23に向けて延びる第二の傾斜部31が接続している。なお、第二の傾斜部31は、第二の円弧部23とは接続していない。
さらに、第一の傾斜部30及び第二の傾斜部31は、第一の円弧部20又は第二の円弧部23から離れるにしたがい、それぞれが互いに接近するように延びており、かつワーク10の周面に沿って湾曲して形成されている。
【0014】
詳しくは、第一の傾斜部30は、第一の円弧部20の一端部21及び第二の円弧部23の一端部24から第一の円弧部20の中点と第二の円弧部23の中点とを結ぶ直線の中点C(以降、中点Cという)に向けて延び、中点Cを頂点として山形を形成している。第二の傾斜部31は、第一の円弧部20の他端部22及び第二の円弧部23の他端部25側から中点Cに向けて延び、中点Cを頂点として山形を形成している。
【0015】
すなわち、第一の傾斜部30及び第二の傾斜部31は、第一の円弧部20から中点Cに向けて、互いに接近するように延び、かつワーク10の周面に沿って湾曲している。中点Cから第二の円弧部23に向けて、第一の傾斜部30及び第二の傾斜部31は、互いに離れる方向に延び、かつワーク10の周面に沿って湾曲して形成されている。
【0016】
したがって、第一の円弧部20、第二の円弧部23、第一の傾斜部30及び第二の傾斜部31から形成されるコイルの形状は、第一の円弧部20の中点と第二の円弧部23の中点とを結ぶ直線に関して左右対称になっている。また、第一の円弧部20の中点と第二の円弧部23の中点とを結ぶ直線と直交する中点を通る直線に関して、コイルの形状は上下対称の関係になっている。
【0017】
第二の円弧部23の他端部25及び第二の傾斜部31の末端部32には、それぞれ接続導体40が接続されて電力供給装置50と接続している。
【0018】
第一の円弧部20、第二の円弧部23、第一の傾斜部30及び第二の傾斜部31から形成されるコイルの形状は、中空導体部材をろう付け等で接続して形成されている。第一の円弧部の一端部21及び/又は他端部22において、第一の円弧部20とワーク10の周面に沿って湾曲する第一の傾斜部30とを交差して接続するために、第一の傾斜部30には、ひねりが加えられていてもよい。同様に、第二の傾斜部31にもひねりが加えられていてもよい。
第一の円弧部20、第二の円弧部23、第一の傾斜部30及び第二の傾斜部31を中空導体部材とすることにより、冷却液を外部から誘導加熱コイル1に注入し、誘導加熱コイル1を冷却し、冷却した後の冷却液を外部に排出することができる。第二の円弧部23の他端部25、第二の傾斜部31の末端部32を、冷却液の注入口、排出口として用いる。
【0019】
電力供給装置50から誘導加熱コイル1に対して高周波電力が供給され、ワーク10が誘導加熱される。このとき、誘導加熱コイル1により磁束が生ずるが、中点C付近では、磁束が互いに打ち消しあうため、軸方向中央付近で磁束密度が高くなりにくく、ワーク10の軸方向において誘導加熱が均等に行われることになる。
【0020】
本発明の誘導加熱コイルに係る第二実施形態を図3及び図4に示す。
本実施形態の誘導加熱コイルは、第一実施形態の第二の傾斜部31を離間して隣接し、ワーク10の周方向に配置したものであり、隣接する2つのコイルの形状物は、第二の傾斜部31の末端部32でお互いに接続している。
2つの第二の円弧部23の他端部25には、それぞれ接続導体40が接続し、接続導体40は、電力供給装置50と接続している。
【0021】
第二実施形態では第一実施形態と同じく、電力供給装置50から誘導加熱コイル1に対して高周波電力が供給され、ワーク10が誘導加熱される。このとき、誘導加熱コイル1によって磁束が生ずるが、中点C付近では、磁束が互いに打ち消しあうため、軸方向中央付近で磁束密度が高くなりにくく、ワーク10の軸方向において誘導加熱が均等に行われることになる。
【0022】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
例えば、一つ又は二つのコイル形状をワークの円周に沿って配列した実施形態を示したが、これに限らず、三つ以上のコイル形状をワークの円周に隣接して配列してもよい。
【0023】
また、上述した実施形態においては、第一の傾斜部及び第二の傾斜部は、展開図において一定の傾斜角で直線状に延びて形成されているが、円弧状等に形成してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 誘導加熱コイル
10 ワーク
11 スリット
20 第一の円弧部
21 第一の円弧部の一端部
22 第一の円弧部の他端部
23 第二の円弧部
24 第二の円弧部の一端部
25 第二の円弧部の他端部
30 第一の傾斜部
31 第二の傾斜部
32 第二の傾斜部の末端部
40 接続導体
50 電力供給装置
O 軸方向
C 第一の円弧部20の中点と第二の円弧部23の中点とを結ぶ直線の中点
H 中点Cを通り、第一の円弧部20の中点と第二の円弧部23の中点とを結ぶ直線に直交する直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6