【実施例】
【0049】
後掲の表1〜表4に記載される衣液の原材料の詳細を、下記に示す。
【0050】
[成分A]
小麦澱粉:グリコ栄養食品株式会社製、商品名「銀鱗」
馬鈴薯澱粉:南十勝農産加工農業協同組合連合会社製、商品名「南十勝澱粉」
タピオカ澱粉:株式会社J−オイルミルズ製、商品名「アクトボディEAT−2」
コーンスターチ:加藤化学株式会社製、商品名「コーンスターチ」
【0051】
成分Aとの比較のため、下記の成分A’を使用した。
[成分A’]
ワキシコーンスターチ:日本食品化工株式会社製、商品名「日食ワキシコーンスターチMD」
米澱粉(ウルチ米):上越スターチ株式会社製、商品名「ファインスノー」
【0052】
[成分B1]
グリセリン脂肪酸エステル:HLB=4〜5;理研ビタミン株式会社製、商品名「エマルジーMIF−20」
【0053】
[成分B2]
ショ糖脂肪酸エステル1:HLB=3;ショ糖ステアリン酸エステル;三菱化学フーズ株式会社製、商品名「リョートーシュガーエステルS−370」
ショ糖脂肪酸エステル2:HLB=5;ショ糖ステアリン酸エステル;三菱化学フーズ株式会社製、商品名「リョートーシュガーエステルS−570」
ショ糖脂肪酸エステル3:HLB=7;ショ糖ステアリン酸エステル;三菱化学フーズ株式会社製、商品名「リョートーシュガーエステルS−770」
ショ糖脂肪酸エステル4:HLB=9;ショ糖ステアリン酸エステル;三菱化学フーズ株式会社製、商品名「リョートーシュガーエステルS−970」
ショ糖脂肪酸エステル5:HLB=11;ショ糖ステアリン酸エステル;三菱化学フーズ株式会社製、商品名「リョートーシュガーエステルS−1170」
【0054】
成分B2との比較のため、下記の成分B2’を使用した。
[成分B2’]
ショ糖脂肪酸エステル6:HLB=16;三菱化学フーズ株式会社製、商品名「リョートーシュガーエステルS−1670」
【0055】
成分B1及び成分B2との比較のため、下記の成分B’を使用した。
[成分B’]
レシチン:株式会社J−オイルミルズ製、商品名「レシチン」
ソルビタン脂肪酸エステル:理研ビタミン株式会社製、商品名「ポエムO−80V」
【0056】
<実験1>
(実施例1および比較例1〜6の衣液の調製)
下記表1に示す組成にて実施例1および比較例1〜6の衣液を調製した。各衣液の調製手順は、以下の通りである。
(1)冷水に乳化剤(成分B1、成分B2、成分B’)を全量添加し、混合する。
(2)得られた混合物に、澱粉(成分A)、調味料を加え、衣液とする。
【0057】
(竜田揚げの製造)
実施例1および比較例1〜6の各衣液を、1個当たり22±2gにカットした市販の国産皮つき鶏もも肉に付着させた後、実施例1および比較例1〜5は、175℃に調整したキャノーラ油(株式会社J−オイルミルズ製、商品名「キャノーラ油」)で約3分間油チョウして竜田揚げを得、比較例6は180℃に調整したキャノーラ油で約3分間油チョウして竜田揚げを得た。
得られた各竜田揚げを急速凍結して−18℃で1週間保管した後、175℃に調整したキャノーラ油で約4分間再油チョウして竜田揚げを得、室温で1.5時間放置後に官能評価を行った。官能評価は、10名の専門パネラーがそれぞれ以下の評価基準に従って評点を付けた後、それらの平均点を算出することによって行った。
【0058】
外観:表層面の凹凸感
5点:凹凸感が非常にある
4点:凹凸感がある
3点:凹凸感がややある
2点:凹凸感がややない
1点:凹凸感がない
【0059】
外観:粉吹き感(突起部分の白さ)
5点:竜田揚げ様の粉吹き感が非常にある
4点:竜田揚げ様の粉吹き感がある
3点:竜田揚げ様の粉吹き感がややある
2点:竜田揚げ様の粉吹き感がやや少ない
1点:竜田揚げ様の粉吹き感が少ない
【0060】
外観:粉吹き色と生地色とのコントラスト
5点:粉吹きの白さと生地の色調との差が非常にある
4点:粉吹きの白さと生地の色調との差がある
3点:粉吹きの白さと生地の色調との差がややある
2点:粉吹きの白さと生地の色調との差がややない
1点:粉吹きの白さと生地の色調との差がない
【0061】
食感:サクサク感
5点:サクサク感が非常に強い
4点:サクサク感が強い
3点:サクサク感がやや強い
2点:サクサク感がやや弱い
1点:サクサク感が弱い
【0062】
食感:歯切れ感
5点:歯切れが非常に良い
4点:歯切れが良い
3点:歯切れがやや良い
2点:歯切れがやや悪い
1点:歯切れが悪い
【0063】
結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示す結果から明らかなように、グリセリン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルとを組み合わせた本発明の衣液を用いて製造された竜田揚げは、全ての評点が3点を超え、竜田揚げ特有の適度な凹凸感、白い粉吹き感および粉吹き色と生地色とのコントラストが良好で、且つ、サクサク感および歯切れ感も良好であった。
一方、レシチンとグリセリン脂肪酸エステルとを組み合わせた比較例1の衣液を用いて製造された竜田揚げは、外観の評点は3点を超えているものの、歯切れ感の評点は3点未満であった。また、レシチンとソルビタン脂肪酸エステルとを組み合わせた比較例3の衣液を用いて製造された竜田揚げは、食感の評点は3点を超えているものの、粉吹き色と生地色とのコントラストの評点は3点未満であった。これらのように比較例の衣液によっては、良好な外観(適度な凹凸感、白い粉吹き感、粉吹き色と生地色とのコントラスト)と良好な食感(サクサク感および歯切れ感)を両方とも充分に兼ね備えた、高品質な竜田揚げを製造することはできなかった。
【0066】
<実験2>
(実施例2〜6および比較例7の衣液の調製)
下記表2に示す組成にて実施例2〜6および比較例7の衣液を調製した。各衣液の調製手順は、以下の通りである。
(1)冷水に乳化剤(成分B1、成分B2、成分B2’)を全量添加し、混合する。
(2)得られた混合物に、澱粉(成分A)を加え、衣液とする。
【0067】
(竜田揚げの製造)
実施例2〜6および比較例7の各衣液を、1個当たり22±2gにカットした市販の国産皮つき鶏もも肉に付着させた後、175℃に調整したキャノーラ油で約3分間油チョウして竜田揚げを得た。
得られた各竜田揚げを急速凍結して−18℃で1週間保管した後、175℃に調整したキャノーラ油で約4分間再油チョウして竜田揚げを得、室温で1.5時間放置後に官能評価を行った。官能評価は、10名の専門パネラーがそれぞれ実験1と同様の評価基準に従って評点を付け、それらの平均点を算出することによって行った。
【0068】
結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示す結果から明らかなように、ショ糖脂肪酸エステルのHLBが3〜11である本発明の衣液を用いて製造された竜田揚げは、竜田揚げ特有の適度な凹凸感、白い粉吹き感および粉吹き色と生地色とのコントラストが良好で、且つ、サクサク感および歯切れ感も良好であった。中でも、ショ糖脂肪酸エステルのHLBが3〜7であるとき、竜田揚げ特有の適度な凹凸感、白い粉吹き感および粉吹き色と生地色とのコントラストが特に良好であった。
【0071】
<実験3>
(実施例7〜10および比較例8、9の衣液の調製)
下記表3に示す組成にて実施例7〜10および比較例8、9の衣液を調製した。各衣液の調製手順は、以下の通りである。
(1)冷水に乳化剤(成分B1、成分B2)を全量添加し、混合する。
(2)得られた混合物に、澱粉(成分A、成分A’)を加え、衣液とする。
【0072】
(竜田揚げの製造)
実施例7〜10および比較例8、9の各衣液を、1個当たり22±2gにカットした市販の国産皮つき鶏もも肉に付着させた後、175℃に調整したキャノーラ油で約3分間油チョウして竜田揚げを得た。
得られた各竜田揚げを急速凍結して−18℃で1週間保管した後、175℃に調整したキャノーラ油で約4分間再油チョウして竜田揚げを得、室温で1.5時間放置後に官能評価を行った。官能評価は、10名の専門パネラーがそれぞれ実験1と同様の評価基準に従って評点を付け、それらの平均点を算出することによって行った。
【0073】
結果を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
表3に示す結果から明らかなように、小麦澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ又は馬鈴薯澱粉を含む本発明の衣液を用いて製造された竜田揚げは、竜田揚げ特有の適度な凹凸感、白い粉吹き感および粉吹き色と生地色とのコントラストが良好で、且つ、サクサク感および歯切れ感も良好であった。特に、小麦澱粉、タピオカ澱粉、又はコーンスターチを含む本発明の衣液は、原材料混合段階時に特に問題も無く生産できた。
一方、ワキシコーンスターチ又は米澱粉を用いた場合は、原材料を混合することができず(澱粉が塊となり円滑な混合が困難)、衣液を調製することができなかった。
<実験4>
(実施例11の衣液の調製)
下記表4に示す組成にて実施例11の衣液を調製した。当該衣液の調製手順は、以下の通りである。
(1)冷水に乳化剤(成分B1、成分B2)の一部を添加して混合し(第1混合)、その後、残りを全量添加して混合する(第2混合)。
(2)得られた混合物に、澱粉(成分A)を加え、衣液とする。
【0076】
(竜田揚げの製造)
実施例11の衣液を、1個当たり22±2gにカットした市販の国産皮つき鶏もも肉に付着させた後、175℃に調整したキャノーラ油で約3分間油チョウして竜田揚げを得た。
得られた竜田揚げを急速凍結して−18℃で1週間保管した後、175℃に調整したキャノーラ油で約4分間再油チョウして竜田揚げを得、室温で1.5時間放置後に官能評価を行った。官能評価は、10名の専門パネラーがそれぞれ実験1と同様の評価基準に従って評点を付け、それらの平均点を算出することによって行った。
【0077】
結果を表4に示す。尚、乳化剤を2回に分けず、一括混合した実施例3の結果を併記した。
【0078】
【表4】
【0079】
表4に示す結果から明らかなように、乳化剤を2回以上に分けて添加して製造された衣液を用いて製造された竜田揚げは、乳化剤全量を一括して添加して製造された衣液を用いて製造されたものに比べ、より一層好ましい外観および食感を有していた。
【0080】
<実験5>
(比較例10〜14の衣液の調製)
下記表5に示す組成(単位:重量部)にて、特許文献3(特許4648932号公報)記載の衣液(比較例10)、特許文献1(特許3410585号公報)記載の衣液(比較例11)、特許文献4(特許4365670号公報)記載の衣液(比較例12)および特許文献2(特開平10−94375号公報)記載の衣液(比較例13および14)を調整した。各衣液は、計量した原材料を粉々混合した後、冷水を加えて調製した。
【0081】
下記表5における化工澱粉1及び2、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル3及び5は、それぞれ以下の通りである。
化工澱粉1:松谷化学工業株式会社製、商品名「ファリネックスVA70X」
化工澱粉2:松谷化学工業株式会社製、商品名「パインベークCC」
ポリグリセリン脂肪酸エステル:太陽化学株式会社製、商品名「サンソフトQ−185SP」
ショ糖脂肪酸エステル3:三菱化学フーズ株式会社製、商品名「リョートーシュガーエステルS−770」
ショ糖脂肪酸エステル5:三菱化学フーズ株式会社製、商品名「リョートーシュガーエステルS−1170」
【0082】
【表5】
【0083】
(竜田揚げの製造)
比較例10の衣液を、1個当たり22±2gにカットした市販の国産皮つき鶏もも肉に付着させた後、175℃に調整したキャノーラ油で4分間油チョウして竜田揚げを得た。
比較例11の衣液に、1個当たり22±2gにカットした市販の国産皮つき鶏もも肉を10分間浸漬した後、170℃に調整したキャノーラ油で4分間油チョウして竜田揚げを得た。
比較例12の衣液を、1個当たり22±2gにカットした市販の国産皮つき鶏もも肉に付着させた後、180℃に調整したキャノーラ油で3分間油チョウして竜田揚げを得た。
比較例13、比較例14の衣液に、1個当たり22±2gにカットした市販の国産皮つき鶏もも肉を10分間浸漬した後、170℃に調整したキャノーラ油で4分間油チョウして竜田揚げを得た。
【0084】
(官能評価)
得られた各竜田揚げを室温で1.5時間放置した後に官能評価を行った。官能評価は、10名の専門パネラーがそれぞれ実験1と同様の評価基準に従って評点を付け、それらの平均点を算出することによって行った。
結果を表6に示す。尚、実施例3の結果を併記した。
【0085】
【表6】
【0086】
表6に示す結果から明らかなように、本発明の衣液を用いて製造された竜田揚げは、従来の衣液を用いて製造されたものに比べ、竜田揚げ特有の適度な凹凸感および白い粉吹き感が良好であった。
また、従来の衣液を用いて製造された竜田揚げは、全体的に衣液に覆われているように見えるのに対し、本発明の衣液を用いて製造された竜田揚げは、粉を吹いた状態の白色と鶏肉の生地色とのコントラストがあった。すなわち、本発明の衣液を用いて製造された竜田揚げは、粉吹き感に優れ、より際立った色調を有していた。
加えて、本発明の衣液を用いて製造された竜田揚げは、従来の衣液を用いて製造されたものに比べ、サクサク感および歯切れ感とも良好であった。