(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの製造プロセスにおいて、ウエハの表面をエッチング処理する装置として、例えば特許文献1,2に示すプラズマエッチング装置が広く使用されている。
ここで、プラズマエッチング装置の一例を
図5に示す。このプラズマエッチング装置50は、真空雰囲気とされた反応室51と、反応室51の内部に配置された電極板52と、この電極板52に対して間隔をあけて対向配置された架台53と、電極板52と架台53との間に高周波電圧を印加する高周波電源54と、を備えている。
【0003】
上述のプラズマエッチング装置50によるプラズマエッチング処理方法について説明する。架台53の上にウエハ1を載置し、電極板52に形成された貫通細孔52aを介してウエハ1に向かってエッチングガス5を流しながら高周波電源54によって電極板52と架台53の間に高周波電圧を印加する。これにより、電極板52と架台53の間の空間でプラズマ7を発生させて、プラズマ7による物理反応と、エッチングガス5による化学反応と、によってウエハ1の表面をエッチングする。
【0004】
上述の電極板としては、例えば特許文献3,4に示すように、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンからなるシリコン電極板が使用されている。ここで、上述のプラズマエッチング装置においては、プラズマやエッチングガスによって電極板の表面も損耗し、パーティクルを発生させてウエハを汚染するおそれがあった。そこで、従来は、パーティクルの発生を抑制するために、エッチング処理や熱処理によって、シリコン電極の表面のクラックや欠陥を消滅させていた。また、特許文献4には、結晶面が(100)面とされた単結晶シリコンを用いることで、クラック等の発生を抑制することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のプラズマエッチング装置においては、反応室の内部に、電極板以外の部材も多く配置されており、これらの部材もプラズマおよびエッチングガスによってエッチングされ、パーティクルの一因となっていた。また、これらの部材の寿命が短くなるといった問題があった。
また、シリコン電極や上述の部材において表面のクラック、欠陥やパーティクルを低減するために、結晶粒界のない単結晶シリコンを用いることが考えられる。しかしながら、単結晶シリコンは、一般に石英ルツボを用いて製造されるために酸素濃度が高い傾向にあり、プラズマエッチング速度が速く、早期に損耗してしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであって、プラズマエッチング装置の反応室内部に配置されても、プラズマエッチングによって早期に損耗することがなく、パーティクルの発生を抑制することが可能なプラズマエッチング装置用シリコン部材及びプラズマエッチング装置用シリコン部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明に係るプラズマエッチング装置用シリコン部材は、プラズマエッチング装置の反応室内部で使用されるプラズマエッチング装置用シリコン部材であって、多結晶シリコン又はモノライクシリコンからなり、ドーパントとしてボロンを1×10
18atoms/ml以上1×10
20atoms/ml以下の範囲内で含有して
おり、表面の結晶方位をEBSD法で測定し、(001)、(101)、(111)を頂点とするステレオ三角形内の方位分布を求め、このステレオ三角形を、各辺の二等分点と前記ステレオ三角形の重心とを結ぶ線によって(001)側領域、(101)側領域、(111)側領域に3分割し、これらの各領域に占める結晶方位分布の割合を、各領域内にある測定点数を全測定点数で割ることにより求め、(111)側領域に分布する割合が70%以上とされていることを特徴としている。
【0009】
この構成のプラズマエッチング装置用シリコン部材においては、多結晶シリコン又はモノライクシリコンからなる場合には、シリコン製造時に石英ルツボの表面をシリコンナイトライド等でコーティングすることで、酸素濃度を低く抑えることが可能となる
。そして、ドーパントとしてボロンを1×10
18atoms/ml以上1×10
20atoms/ml以下の範囲内で含有していることから、エッチング速度が遅くなり、プラズマエッチング装置の反応室内部に配置されても、プラズマエッチングによって早期に損耗することを抑制できる。また、パーティクルの発生を抑制することができ、ウエハのエッチングを良好に行うことができる。
ドーパントとしてのボロンの含有量が1×10
18atoms/ml未満の場合には、エッチング速度を十分に遅くすることができなくなるおそれがある。一方、ボロンの含有量が1×10
21atoms/mlを超える場合には、固溶できないボロンが析出してしまい、エッチングが不均一に発生するおそれがある。よって、本発明では、ドーパントとしてのボロンの含有量を1×10
18atoms/ml以上1×10
20atoms/ml以下の範囲内に設定している。なお、ボロンの含有量は、上述の範囲の中でも、特に1×10
19atoms/ml以上1×10
20atoms/ml以下の範囲内とすることが好ましい。
また、[111]方位に強く配向した多結晶シリコンで構成されていることになり、エッチング速度をさらに低減することが可能となる。なお、多結晶シリコンであることから、[111]方位に配向していても、へき開が生じにくく、取扱いは容易である。
【0010】
ここで、本発明のプラズマエッチング装置用シリコン部材においては、酸素濃度が5×10
17atoms/ml以下であることが好ましい。
酸素濃度を5×10
17atoms/ml以下に低減することにより、エッチング速度を確実に抑制することができ、プラズマエッチングによる早期損耗を抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明のプラズマエッチング装置用シリコン部材においては、窒素濃度が7×10
14atoms/ml以上4×10
15atoms/ml以下の範囲内とされていることが好ましい。
窒素濃度を7×10
14atoms/ml以上4×10
15atoms/ml以下、より好ましくは1×10
15atoms/ml以上3×10
15atoms/ml以下の範囲内とすることにより、エッチング速度を遅くすることができ、プラズマエッチングによる早期損耗を抑制することが可能となる。
ここで、窒素濃度が7×10
14atoms/ml未満の場合には、エッチング速度を十分に遅くすることができなくなるおそれがある。一方、窒素濃度が4×10
15atoms/mlを超える場合には、窒素がシリコンナイトライドとして析出し、パーティクルの原因となったり、エッチングが不均一に発生するおそれがある。よって、本発明では、窒素濃度を7×10
14atoms/ml以上4×10
15atoms/ml以下の範囲内に設定している。
【0013】
本発明に係るプラズマエッチング装置用シリコン部材の製造方法は、上述のプラズマエッチング装置用シリコン部材を製造するプラズマエッチング装置用シリコン部材の製造方法であって、ボロンの含有量が1×10
18atoms/ml以上1×10
20atoms/ml以下の範囲内とされたシリコン融液を形成するシリコン融液形成工程と、前記シリコン融液を一方向凝固させる一方向凝固工程と、を有し、前記一方向凝固工程における凝固速度が5mm/h以上10mm/h以下の範囲内とされていることを特徴としている。
この構成のプラズマエッチング装置用シリコン部材の製造方法によれば、上述した本発明のプラズマエッチング装置用シリコン部材を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、プラズマエッチング装置の反応室内部に配置されても、プラズマエッチングによって早期に損耗することがなく、パーティクルの発生を抑制することが可能なプラズマエッチング装置用シリコン部材及びプラズマエッチング装置用シリコン部材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態であるプラズマエッチング装置用シリコン部材について説明する。
本実施形態であるプラズマエッチング装置用シリコン部材は、多結晶シリコンで構成されており、より具体的には、一方向凝固法によって製造された柱状晶シリコンで構成されたものとされている。
【0017】
この柱状晶シリコンは、鋳造において製造されるが、その製造過程が通常の多結晶シリコンの場合と異なり、内部応力を除去する方式で製造される。そのため、一方向凝固法により製造された柱状晶シリコンは、結晶粒同士の界面(以下、「粒界」と言う。)にかかる内部応力が緩和され、一般的な多結晶シリコンと比較して加工性に優れている。さらに、一方向に凝固する際に不純物を結晶中から排除しながら結晶化するため、高純度品が得られるという特徴がある。
【0018】
そして、本実施形態であるプラズマエッチング装置用シリコン部材は、ドーパントとしてボロンを1×10
18atoms/ml(atoms/cc)以上1×10
20atoms/ml(atoms/cc)以下の範囲内で含有している。また、酸素濃度が5×10
17atoms/ml(atoms/cc)以下に抑えられており、窒素濃度が7×10
14atoms/ml(atoms/cc)以上4×10
15atoms/ml(atoms/cc)以下の範囲内に調整されている。
【0019】
さらに、本実施形態であるプラズマエッチング装置用シリコン部材は、(111)方位に強く配向した多結晶シリコンで構成されている。具体的には、
図2に例示するように、表面の結晶方位をEBSD法で測定し、(001)、(101)、(111)を頂点とするステレオ三角形内の方位分布を求め、このステレオ三角形を、各辺の二等分点と前記ステレオ三角形の重心とを結ぶ線によって(001)側領域A、(101)側領域B、(111)側領域Cに3分割したときに、(111)側領域Cに分布する割合が70%以上とされている。
【0020】
次に、本実施形態であるプラズマエッチング装置用シリコン部材の素材となる多結晶シリコンインゴットを製造する際に用いられる多結晶シリコンインゴット製造装置10について、
図1を参照して説明する。
この多結晶シリコンインゴット製造装置10は、シリコン融液Lが貯留されるルツボ20と、このルツボ20が載置されるチルプレート12と、このチルプレート12を下方から支持する床下ヒータ13と、ルツボ20の上方に配設された天井ヒータ14と、を備えている。また、ルツボ20の周囲には、断熱材15が設けられている。
チルプレート12は、中空構造とされており、供給パイプ16を介して内部にArガスが供給される構成とされている。
【0021】
ルツボ20は、水平断面形状が角形(四角形)又は丸形(円形)とされており、本実施形態では、角形(四角形)とされている。
このルツボ20は、石英(SiO
2)で構成されており、その内面にシリコンナイトライド(Si
3N
4)がコーティングされている。すなわち、ルツボ20内のシリコン融液Lが石英(SiO
2)と直接接触しないように構成されているのである。
【0022】
次に、この多結晶シリコンインゴット製造装置10を用いて多結晶シリコンインゴットを製造する方法について説明する。
まず、ルツボ20内に、シリコン原料を装入する。ここで、シリコン原料としては、11N(純度99.999999999)の高純度シリコンを砕いて得られた「チャンク」と呼ばれる塊状のものが使用される。この塊状のシリコン原料の粒径は、例えば、30mmから100mmとされている。
また、ボロンの添加は、予めボロンが高濃度に添加されたシリコンウエハまたは金属ボロンを原料として用い、所定の添加量となるように秤量後、シリコン原料の入ったルツボ20内に投入する。なお、ボロンの添加量は、シリコン結晶中のボロンの含有量が1×10
18atoms/ml以上1×10
20atoms/ml以下の範囲内となるように調製されている。
【0023】
このシリコン原料を、天井ヒータ14と床下ヒータ13とに通電して加熱する。これにより、加熱されたシリコン原料は溶解し、ルツボ20内には、シリコン融液Lが貯留されることになる。ここで、シリコン溶解後の条件としては、1500℃、2h保持とすることが好ましい。
【0024】
次に、床下ヒータ13への通電を停止し、チルプレート12の内部に供給パイプ16を介してArガスを供給する。これにより、ルツボ20の底部を冷却する。さらに、天井ヒータ14への通電を徐々に減少させることにより、ルツボ20内のシリコン融液Lは、ルツボ20の底部から冷却され、底部から上方に向けて伸びる柱状晶が成長して一方向凝固することになる。ここで、鋳造条件としては、凝固速度が5mm/h以上10mm/h以下の範囲内となるように調整することが好ましい。
このとき、シリコンの優先成長方位が<100>、<111>方位であることから、柱状晶としてこれらの方位を向くものが多く存在することになるが、本実施形態では、特に[111]方位の成長が促進されるように鋳造条件を調整している。具体的には、凝固速度を5mm/h以上10mm/h以下の範囲内とすることが好ましい。また、結晶方位を制御する手段としては、種結晶(シリコン単結晶)、デンドライト成長等を用いることもできる。
【0025】
このようにして、一方向凝固法により多結晶シリコンインゴットが製造される。
そして、得られた多結晶シリコンインゴットを加工し、表面を鏡面研磨以上の平坦度となるように研磨することにより、プラズマエッチング装置の反応室内部で使用されるプラズマエッチング装置用シリコン部材が製造される。なお、プラズマエッチング装置用シリコン部材としては、例えば、電極板、及び、保護リング、シールリング、アースリング 等の各種リング等が挙げられる。
【0026】
以上のような構成とされた本実施形態であるプラズマエッチング装置用シリコン部材によれば、ドーパントとしてボロンを1×10
18atoms/ml以上1×10
20atoms/ml以下の範囲内で含有しているので、エッチング速度が遅くなり、プラズマエッチング装置の反応室内部に配置されても早期に損耗することを抑制できるとともに、パーティクルの発生を抑制することができる。また、シリコンに固溶した余剰のボロンが析出することがない。
【0027】
また、酸素濃度が5×10
17atoms/ml以下に抑えられていることから、エッチング速度を確実に抑制することができ、プラズマエッチングによる早期損耗を抑制することが可能となる。なお、本実施形態では、石英(SiO
2)で構成され、内面にシリコンナイトライド(Si
3N
4)がコーティングされたルツボ20を用いて鋳造されており、ルツボ20内のシリコン融液Lが石英(SiO
2)と直接接触しないようにして鋳造されているので、酸素濃度を5×10
17atoms/ml以下に低減することが可能である。さらに、凝固速度を10mm/h以下と遅くすることにより、シリコン融液LからSiOガスとして酸素を放出することを促進でき、酸素濃度の低下を図ることができる。このとき、不活性ガスをルツボ20の上に吹き付けることで、SiOの放出をさらに促進することが可能となる。また、シリコン融液Lの温度を1430℃以下とすることにより、シリコン融液L中に溶解する酸素量を低減することができる。
【0028】
さらに、窒素濃度が7×10
14atoms/ml以上4×10
15atoms/ml以下の範囲内とされているので、エッチング速度を遅くすることができ、プラズマエッチングによる早期損耗を抑制することが可能となる。また、余剰の窒素がシリコンナイトライドとして析出することを抑制できる。なお、本実施形態では、石英(SiO
2)で構成され、内面にシリコンナイトライド(Si
3N
4)がコーティングされたルツボ20を用いていることから、窒素濃度を7×10
14atoms/ml以上4×10
15atoms/ml以下の範囲内とすることができる。ここで、窒素は、上述のコーティングからシリコン融液L内に混入することから、凝固速度を5mm/h以上と速くすることにより、窒素濃度の低減を図ることが可能となる。なお、窒素は偏析係数が非常に小さいため、対流を促進することで窒素濃度をシリコン融液Lの全体で均一化することが好ましい。また、シリコン融液Lの温度を1450℃以下とすることにより、シリコン融液L中に溶解する窒素量を低減することができる。
【0029】
また、本実施形態のプラズマエッチング装置用シリコン部材においては、
図2に例示するように、表面の結晶方位をEBSD法で測定し、(001)、(101)、(111)を頂点とするステレオ三角形内の方位分布を求め、このステレオ三角形を、各辺の二等分点と前記ステレオ三角形の重心とを結ぶ線によって(001)側領域A、(101)側領域B、(111)側領域Cに3分割し、これらの各領域に占める結晶方位分布の割合を、各領域内にある測定点数を全測定点数で割ることにより求め、(111)側領域Cに分布する割合が70%以上とされており、[111]方位に強く配向した多結晶シリコンからなるものとされているので、エッチング速度をさらに低減することが可能となる。
【0030】
さらに、本実施形態においては、上述のように、一方向凝固法によって得られた多結晶シリコンインゴットを用いていることから、シリコン以外の金属元素等の不純物を低減することができ、エッチングむらの発生を抑制することができる。これにより、部材の一部が局所的に損耗することを抑制でき、部材の寿命延長を図ることができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態であるプラズマエッチング装置用シリコン部材について説明したが、これに限定されることはなく、適宜設計変更することができる。
例えば、
図1に示す多結晶シリコンインゴット製造装置を用いて製造された多結晶シリコンインゴットを素材とするものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の構成の製造装置によって製造された多結晶シリコン、モノライクシリコ
ンを素材としてもよい。
モノライクシリコンは、シリコンナイトライドでコーティングされた石英ルツボの底部に、例えば厚さ20mmの(111)面の種結晶(単結晶シリコン)を並べて、その上にポリシリコン原料を入れ、所定の濃度となるようにボロンを添加し、上下ヒータの温度を制御して種結晶を完全に溶かさずに一方向凝固することにより製造される
。
【実施例】
【0032】
本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果を示す。本実施形態で説明したシリコンインゴット製造装置を用いて、680mm角×高さ300mmの四角形柱状の多結晶シリコンインゴットを製造した。このとき、ドーパントとしてのボロンの含有量を調整するとともに、酸素濃度、窒素濃度を調整し、表1に示す組成の多結晶シリコンインゴットを製造した。さらに、凝固速度を調整することにより、(111)側領域Cに分布する割合が70%以上となるように調整した。これらのインゴットから、100mm角×厚さ1 mmの板を切り出し、板の主面を鏡面研磨して供試材を製造した。なお、ボロンの含有量、酸素濃度、窒素濃度は、SIMSによって測定した。
【0033】
このようにして得られた供試材に対して、プラズマエッチング装置(株式会社ユーテック製YR−4011 1H−DXII)を用いてプラズマエッチング処理を行い、エッチング部とマスク部との段差を、表面粗さ計(Bruker AXS製Dektak)を用いて測定し、エッチング速度を算出した。なお、プラズマエッチング条件は、真空度:50mTorr、エッチング時間:30分、エッチングガス:SF
6、エッチングガス流量:10sccm、出力:100Wとした。評価結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
ボロンの含有量が本発明の範囲より少ない比較例1,2においては、エッチング速度が速いことから早期にエッチングが進行すると判断される。
これに対して、多結晶シリコンからなり、ボロンの含有量が本発明の範囲内とされた本発明例1−7においては、エッチング速度が遅く、早期損耗が抑制されていることが確認される。なお、酸素濃度を5×10
17atoms/ml以下、窒素濃度を7×10
14atoms/ml以上4×10
15atoms/ml以下の範囲内とし、ボロンが1×10
19atoms/ml以上1×10
20atoms/ml以下の範囲内で添加された本発明例1,2においては、特に、エッチング速度が遅くなっていることが確認される。
【0036】
また、本発明例1の結晶方位をEBSD法で測定した結果を
図2に、比較例1の結晶方位をEBSD法で測定した結果を
図3に示す。
EBSD法とは、SEM内で試料表面の1点に電子線を入射させ、生じる反射電子回折模様を用いて局所領域の結晶方位や結晶構造を解析するものである。試料表面の一点に電子線を入射することによりできた回折模様からEBSD像が得られる。一定間隔で試料表面上に電子線を走査させ、これを繰返すことによって得られたKikuchi線を解析することにより、結晶方位と結晶構造のマップ化が可能となる。なお、測定サンプルとして5mm角×厚さ2mmの板状サンプルをそれぞれ8個用意し、測定面を鏡面研磨したのち、測定面全体を測定した。
ここで、
図2及び
図3に示す黒点一つ一つが測定点であるため、(111)側領域Cにある点数を全測定点数で割ることによって、(111)側領域Cに分布する割合を算出することができる。本発明例1では約80%、比較例1では約30%であった。
【0037】
ここで、[111]方位の結晶のエッチング量と[111]以外の方位の結晶のエッチング量を比較した結果を
図4に示す。方位を測定した後、プラズマエッチングを実施し、その後の供試材の表面高さを、表面粗さ計(Bruker AXS製Dektak)を用いて測定したものである。
[111]方位の部分は、[111]以外の方位の部分に比べて高さが一段高くなっているのが確認される。[111]方位の結晶においてエッチング速度が遅くなっていると判断される。