(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補強材は、基板と前記基板の両端に設けられた側板とを有する断面コの字状で、一端が前記トーションビームの端縁下部に設けられ、他端が前記高剛性部と前記低剛性部の境界部分の前記天井壁に近接して設けられていることを特徴とする請求項2に記載のトーションビーム。
前記補強材は、前記他端において、前記高剛性部の前記天井壁と前記側壁とが交わる角部を避けて、前記高剛性部に溶接されていることを特徴とする請求項3に記載のトーションビーム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にかかる一実施形態のトーションビーム10について説明する。
図1は、後輪18のサスペンションに、トーションビーム10を用いたトーションビーム式サスペンション14を備えた車両12を示す斜視図である。
図2は、トーションビーム式サスペンション14を、斜め前方の位置から見た状態を示す斜視図である。
図3は、トーションビーム10を、斜め前方の位置から見た状態を示す斜視図である。
図4は、トーションビーム10を、前方から見た状態を示す側面図である。
【0013】
以下、トーションビーム10について、トーションビーム10が車両12に設けられた状態において、車両12の前進方向を前方とし、その逆方向を後方とし、それらを基準に左右を定め、又、重力の方向を下方とし、その逆を上方とし、基本的に車両12の中心に向かう側を内方、あるいは内側とし、その逆を外方、あるいは外側として説明する。
【0014】
図1に、車両12を示す。車両12は、乗用車で、後輪18の懸架装置としてトーションビーム式サスペンション14を用いている。トーションビーム式サスペンション14は、
図2に示すように、左右にそれぞれ一対のトレーリングアーム20を備え、それらの間に設けられたトーションビーム10により、一対のトレーリングアーム20を接合させている。
【0015】
トレーリングアーム20は、前方側の一端に連結部22を備え、他端側に取付基台24を備えている。連結部22は、車両12に、上下方向に回動自在に取り付けられ、取付基台24には、ハブを介して後輪18が組み付けられる。その他、衝撃緩衝器やコイルばね等の他の構成部材が、トーションビーム式サスペンション14と車両12との間に取り付けられる。
【0016】
トーションビーム10は、例えば金属薄板からなり、
図3、
図7に示すように、側壁40、42と天井壁44で囲まれた、下方の一面が開いた概ねコの字形状を有している。トーションビーム10は、
図4〜
図6に示すように、概ね左右対称形で、長手方向にほぼ同一の高さであり、基本的に均一な厚みで形成されている。
図5は、トーションビーム10の平面図、
図6は、トーションビーム10の底面図である。
【0017】
トーションビーム10は、トーションビーム10の左端部(
図4では、右方になる)に、左のトレーリングアーム20に合わせて形成された左端縁26が、又、右端部に、右のトレーリングアーム20に合わせて形成された右端縁28が設けられている。
【0018】
トーションビーム10には、
図3等に示すように左端縁26の側から、第1高剛性部30と、低剛性部34と、第2高剛性部38とが形成されている。より詳しくは、トーションビーム10には、左端縁26から長さaまでの部分に第1高剛性部30が形成され、次に、第1移行部32を挟んで長さbの低剛性部34が形成され、更に、第2移行部36を挟んで長さaの第2高剛性部38が右端縁28まで形成されている。
【0019】
次に、トーションビーム10の上記各部について説明する。尚、第1高剛性部30と第2高剛性部38は、低剛性部34を挟んでほぼ対称に形成されているので、第1高剛性部30について説明し、第2高剛性部38については、第1高剛性部30と同一の部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0020】
図7に、
図4におけるトーションビーム10をF7−F7線で破断した断面図を示す。第1高剛性部30は、
図7に示すように、前後に設けられた一対の側壁40a、42aと、天井壁44aとを備えている。側壁40aと、側壁42aと、天井壁44aとは、いずれも、平板状で、かつ側壁40aと天井壁44a、及び側壁42aと天井壁44aとは、それぞれ角部33においてほぼ直角の角度で屈曲している。
【0021】
側壁40a等の高さはH1で、天井壁44aの横方向の長さはL2であり、それらはほぼ同じ長さ幅を有している。したがって、第1高剛性部30は、ほぼ正方形
の一面が開放されたコの字状の断面を長さaにわたり有している。
【0022】
側壁40aと側壁42aの下部には、外方に屈曲した縁部31が形成されている。尚、縁部31は、トーションビーム10の全体にわたりほぼ同一の幅で形成されている。第1高剛性部30は、左端縁26の位置からaの長さまで設けられており、その長さaは、トーションビーム10の全体の長さL1の1/4程度である。
【0023】
第1高剛性部30と第2高剛性部38の間には、
図3等に示すように、低剛性部34が設けられている。低剛性部34は、
図9に示すように側壁40b、42bと、半円状の天井壁44bとを備えている。
図9は、
図3におけるトーションビーム10をF9−F9線で破断した断面図である。
【0024】
側壁40b、42bは、平板状で、H2の高さを有している。H2は、H1の約1/2の高さである。天井壁44bは、ほぼ半円状で、天井壁44bの両端縁は、側壁40b及び側壁42bの上端縁とそれぞれ連続して連結している。連続して連結しているとは、屈曲することなく、側壁40b及び側壁42bと天井壁44bとが、滑らかな曲線で続いているということである。したがって、低剛性部34は、
図9に示すように、側壁40bと側壁42bと半円状の天井壁44bとから、逆U字状の断面形状を有している。
【0025】
又、低剛性部34は、縁部31の下端から天井壁44bの頂部55までの高さH3が、高さH1とほぼ同じである。したがって低剛性部34は、
図4に示すように、第1高剛性部30及び第2高剛性部38と同じ高さで、連続して形成されている。
【0026】
図3に示すように、第1高剛性部30と低剛性部34の間には第1移行部32が、又、低剛性部34と第2高剛性部38の間には第2移行部36が設けられている。第1移行部32及び第2移行部36は、それぞれ長さがcである。
【0027】
第1移行部32及び第2移行部36は、第1高剛性部30と低剛性部34、及び低剛性部34と第2高剛性部38とを連続して変化する曲面で連結している。
図8に、
図3におけるトーションビーム10をF8−F8線で破断した断面図を示す。
図8は、第1移行部32を、第1移行部32の中央部分で破断した断面図である。
【0028】
図8に示すように、第1移行部32の中央部分は、第1高剛性部30の断面形状と低剛性部34の断面形状の中間のような断面形状を有している。これにより、第1移行部32等は、第1高剛性部30と低剛性部34との間等でねじれなどの変位が生じた場合、第1高剛性部30と低剛性部34との間で、応力集中を生じさせることなく応力を伝達する。
【0029】
第1高剛性部30及び第2高剛性部38の内側には、
図4に示すように、補強材60がそれぞれ傾斜して取り付けられている。補強材60は、
図11、
図12に示すように、基板62と基板62の両側に設けられた側板64とを備えている。
【0030】
図11、
図12は、トーションビーム10の第2高剛性部38の近傍を示す。尚、補強材60は、第1高剛性部30の内部にも、第2高剛性部38の内部と同様に、対称にして設けられている。基板62は、ほぼ平板状で、側板64は、基板62の前後端に、基板62とほぼ直角の角度で設けられている。補強材60は、基板62と側板64により、断面が偏平なコの字形状を有している。又、補強材60の外側端部61と内側端部63は、それぞれトーションビーム10の長手方向と平行に形成されている。
【0031】
補強材60は、第2高剛性部38の内部に斜めに設けられ、補強材60の外側端部61が、トーションビーム10の右端縁28の下端に接合されている。更に補強材60の外側端部61は、トレーリングアーム20の形状に沿って形成され、トーションビーム10の右端縁28とともに、トレーリングアーム20に溶接により固着される。
【0032】
補強材60の内側端部63は、第2移行部36と第2高剛性部38との境界部において、
図13に示すように天井壁44aとの間に若干の間隙を有して接合されている。補強材60は、トーションビーム10の内部に、溶接により固着されている。補強材60とトーションビーム10との溶接箇所を
図13に示す。溶接は、
図13に示すように、補強材60を、トーションビーム10の角部33を避けた、
図13の×印を付した箇所に行われている。
【0033】
次に、トーションビーム10の作用効果について説明する。トーションビーム10は、
図2、
図10に示すように、一対のトレーリングアーム20の間に設けられ、トーションビーム式サスペンション14を構成する。トーションビーム式サスペンション14は、
図1に示すように車両12に取り付け、後輪18を支持する。
【0034】
車両12が走行中に、例えば路面の凹凸を通過して後輪18が上下動したり、車両12が旋回して車両12にいわゆるロールが発生した場合などには、左右のトレーリングアーム20がトーションビーム10を挟んで左右個別に作動し、トーションビーム10にねじれやたわみが発生する。
【0035】
図10において、例えば右の後輪18が、左の後輪18に対して上昇した場合、左のトレーリングアーム20が上昇し、その変位が第1高剛性部30から第1移行部32を介して低剛性部34に伝達される。一方、左の後輪18は上昇しないとすると、トーションビーム10、つまり第1高剛性部30と第2高剛性部38との間にねじれが発生する。
【0036】
第1高剛性部30及び第2高剛性部38の断面が
コの字状であるので、トレーリングアーム20と第1高剛性部30との間、およびトレーリングアーム20と第2高剛性部38との間では、上下左右のいずれの方向にも変形しにくい。そのため、ねじれの力は、第1高剛性部30から第1移行部32を介して、又、第2高剛性部38から第2移行部36を介して低剛性部34に伝達される。
【0037】
低剛性部34は、断面が逆U字状に形成されているので、第1高剛性部30と第2高剛性部38から逆方向のねじりの力が低剛性部34に伝達されると、半円状の天井壁44bの湾曲に沿って適宜変形する。低剛性部34によりねじれが吸収されることから、第1高剛性部30等とトレーリングアーム20や第2高剛性部38とトレーリングアーム20との接合部分等に大きな応力が発生しない。
【0038】
更に、第1高剛性部30から低剛性部34へ、又、第2高剛性部38から低剛性部34へは、第1移行部32及び第2移行部36を介してねじれの力が伝達されるので、かかる部分においても、応力集中を生じさせることがない。かかるトーションビーム10のねじれ易さは、低剛性部34の長さb、及び第1移行部32と第2移行部36の長さc等に応じて適宜増減する。
【0039】
これにより、トレーリングアーム20は、円滑に作動し、後輪18は路面に追従して上下動する。又、トーションビーム10には、いずれの個所にも過大な応力が発生しないので、耐久性に不具合を生じさせない。
【0040】
そして、走行路が平坦になったり、車両12が直進走行に移行したら、トーションビーム10は、復元力でねじれを解消し、所定の状態に復帰する。トーションビーム10が復帰すると、トーションビーム式サスペンション14は、第1高剛性部30と第2高剛性部38がそれぞれトレーリングアーム20を保持するので、後輪18を所定の状態に安定させる。
【0041】
又、車両12にロールが発生した場合、トレーリングアーム20に、
コの字状断面を有する第1高剛性部30及び第2高剛性部38が、所定の長さaで接続しているので、後輪18は安定して保持される。
【0042】
又、後輪18を進行方向に対して左右方向、つまり
図10のR1の方向に変位させる応力が作用したときは、低剛性部34が適宜変形して、過大な力を吸収するとともに、第1高剛性部30等の天井壁44aと補強材60の外側端部61が、主にその応力に対応し、トレーリングアーム20を安定して保持する。
【0043】
又、後輪18を上下方向に沿って内外方向、つまりキャンバーの方向に変位させる応力が作用したときも同様に、低剛性部34が適宜変形して、過大な力を吸収するとともに、第1高剛性部30等の側壁40a、42aが主にその応力に対応し、トレーリングアーム20を安定して保持する。
【0044】
更に、トーションビーム10にねじれが生じたとき、第1高剛性部30及び第2高剛性部38の角部33に応力が集中することがある。これに対しては、補強材60が、角部33を避けた(20mm〜30mm)位置においてトーションビーム10と溶接接合されているので、第1高剛性部30や第2高剛性部38にかかる応力を分散し、応力の集中を防止できる。又、補強材60を、角部33を避けた位置においてトーションビーム10と溶接接合するため、角部33は、直角に近い、いわゆる角が立った状態に形成してある。
【0045】
このように、トーションビーム10に、ねじりやたわみを生じさせるような応力が発生した場合でも、第1高剛性部30及び第2高剛性部38の断面が
コの字状であるので、操縦安定性に影響を与えるような変位がトレーリングアーム20に生じにくい。
【0046】
したがって、トーションビーム式サスペンション14は、低剛性部34でねじりやたわみを適宜逃がすとともに、第1高剛性部30や第2高剛性部38がトレーリングアーム20を確実に保持して、車両12を不安定な状態にさせない。
【0047】
更に、第1高剛性部30と第2高剛性部38の内部には、補強材60が上下方向に斜めに設けられているので、トレーリングアーム20との接合において、ねじれやたわみの発生がより強く抑止されるとともに、トレーリングアーム20と第1移行部32等とを強く接合させ、耐久性等に不具合を生じさせない。これにより、トーションビーム式サスペンション14は、重量車にも、トーションビーム式サスペンションが有する、軽量、簡易な構造である利点を有したまま用いることができる。
【0048】
尚、本発明は、上記実施形態に限るものではなく、説明した範囲を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。