(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電力変換装置、制御装置および電力変換装置の制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
[1.第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る電力変換装置1は、電源2から供給される電力を所定の電力へ変換して負荷3へ出力する。例えば、電源2が直流電源であり、負荷3が交流電動機である場合、電力変換装置1は、電源2から供給される直流電力を交流電力へ変換して負荷3へ出力する。なお、電源2は、例えば、交流電源であってもよく、負荷3は、例えば、電力系統であってもよい。
【0012】
[1.1.電力変換装置1]
電力変換装置1は、電力変換部10と、制御部20とを備える。電力変換部10は、複数のスイッチング素子を有し、電源2と負荷3との間に接続される。制御部20は、指令生成部21と、PWM信号生成部22とを備える。
【0013】
指令生成部21は、電圧指令を生成する。PWM信号生成部22は、電圧指令に基づいてPWM信号を生成し、かかるPWM信号を電力変換部10へ出力する。PWM信号生成部22は、PWM制御モードとして第1モードと第2モードを有し、所定条件に基づいて、第1モードおよび第2モードのいずれかを選択する。
【0014】
例えば、PWM信号生成部22は、電力変換部10の温度が所定値未満の場合に、第1モードを選択し、電力変換部10の温度が所定値以上の場合に、第2モードを選択する。第2モードは、第1モードに比べ、PWMパルスがオンになる回数、つまりスイッチング回数は1/2であり、電力変換部10におけるスイッチング損失を低減することができる。
【0015】
なお、ここでは、PWM制御モードとして第1モードと第2モードを有するものとして説明するが、第2モードを実行することにより、電圧指令が出力されるまでの無駄時間の増加を抑制しつつ、スイッチング損失を低減することができる。したがって、電力変換装置1は、第2モードのみを実行するものであってもよい。このことは、後述する他の実施形態に係る電力変換装置においても同様である。
【0016】
図1Bは、PWM制御モードの説明図である。
図1Bに示すように、PWM信号生成部22は、第1モードにおいて、電圧指令の更新周期Ts毎に、第1期間T1、第2期間T2および第1期間T1の順に移行するパターンのPWM信号を繰り返し電力変換部10へ出力する。第1期間T1は、電力変換部10の出力線5a、5b間にゼロ電圧が出力される期間であり、第2期間T2は、出力線5a、5b間に非ゼロ電圧が出力される期間である。
【0017】
第1モードでは、キャリア信号のピーク(山)およびボトム(谷)のタイミングが第1期間T1に含まれ、PWM信号生成部22は、かかるタイミングを更新タイミングTRにしてキャリア信号と比較する電圧指令を更新する。
【0018】
一方、PWM信号生成部22は、第2モードにおいて、第1期間T1の後に第2期間T2になる第1パターンのPWM信号と、第2期間T2の後に第1期間T1になる第2パターンとのPWM信号とを電圧指令の更新周期Ts毎に交互に順序を入れ替えて電力変換部10へ出力する。
【0019】
第2モードでは、キャリア信号のピークおよびボトムのタイミングが第1期間T1または第2期間T2に交互に含まれるようになっていて、PWM信号生成部22は、かかるタイミングを更新タイミングTRにしてキャリア信号と比較する電圧指令を更新する。キャリア信号のピークは、キャリア信号の波形のうち値が最大となる位置を示し、キャリア信号のボトムは、キャリア信号の波形のうち値が最小となる位置を示す。
【0020】
図1Bに示すように、PWM信号生成部22は、第2モードにおいて、第1モードと比べ、PWMパルスがオンとなる回数、つまりスイッチング回数を1/2にでき、これにより、電力変換部10におけるスイッチング損失が低減する。
【0021】
また、PWM信号生成部22は、PWM制御モードが第1モードの場合と第2モードの場合とで、電圧指令の更新タイミングTRは同じであり、電圧指令の更新周期Tsは変わらない。そのため、電圧指令が電圧として負荷3へ出力されるまでの無駄時間の増加を抑制することができる。
【0022】
以下、第1の実施形態に係る電力変換装置1の電力変換部10および制御部20の構成例について、さらに詳細に説明する。なお、以下においては、電力変換部10が直流電圧を単相交流電圧へ変換して出力し、制御部20がキャリア比較法によってPWM信号を生成する例について説明する。
【0023】
[1.2.電力変換部10]
図2は、電力変換部10および制御部20の構成例を示す図である。
図2に示すように、電力変換部10は、入力端子Tp、Tnと、出力端子Ta、Tbと、単相インバータ回路13と、ゲート駆動回路11と、電流検出部12と、温度検出部18とを備える。
【0024】
入力端子Tpは電源2の正極に接続され、入力端子Tnは電源2の負極に接続される。出力端子Ta、Tbは負荷3に接続される。電源2は直流電源であり、負荷3は、例えば、単相交流電動機である。
【0025】
単相インバータ回路13は、スイッチング素子Q1〜Q4と、コンデンサC1とを備える。スイッチング素子Q1〜Q4は、ブリッジ接続され、出力端子Ta、Tbを介して負荷3に接続される。各スイッチング素子Q1〜Q4には、保護用の整流素子が並列に接続される。スイッチング素子Q1〜Q4は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などの半導体素子である。
【0026】
ゲート駆動回路11は、制御部20から出力されるPWM信号L1、L2、R1、R2を増幅して、スイッチング素子Q1〜Q4のゲートへ出力する。これにより、電力変換部10は、電源2から入力端子Tp、Tnを介して入力された直流電圧を、スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチングによって交流電圧へ変換し、変換後の交流電圧を出力端子Ta、Tbから負荷3へ出力する。
【0027】
電流検出部12は、電力変換部10と負荷3との間に流れる電流(以下、出力電流Iと記載する)を検出する。電流検出部12は、例えば、磁電変換素子であるホール素子を利用した電流センサである。温度検出部18は、例えば、電力変換部10内または電力変換部10の周辺の温度(以下、検出温度Tcと記載する)を検出する。
【0028】
[1.3.制御部20]
制御部20は、
図2に示すように、指令生成部21と、PWM信号生成部22とを備える。指令生成部21は、電流指令生成器23と、電流制御器24とを備え、PWM信号生成部22は、キャリア信号生成部30と、モード切替部31と、指令更新部32と、シフト部33と、比較部34とを備える。
【0029】
電流指令生成器23は、電流指令I
*を生成する。電流制御器24は、電流指令I
*と出力電流Iとの偏差がゼロになるように電圧指令V
*を生成する。
【0030】
キャリア信号生成部30は、キャリア信号Vc1、Vc2を出力する。キャリア信号Vc1とキャリア信号Vc2とは、互いに正負が反転した信号である。なお、キャリア信号Vc1、Vc2は、三角波信号であるが、例えば、鋸波状の信号であってもよい。
【0031】
モード切替部31は、モード信号Smをシフト部33へ出力し、第1モードと第2モードとを切替える。例えば、モード切替部31は、検出温度Tcが所定値未満である場合に、第1モードを示すモード信号Smをシフト部33へ出力し、検出温度Tcが所定値以上である場合に、第2モードを示すモード信号Smをシフト部33へ出力する。
【0032】
指令更新部32は、キャリア信号Vc1、Vc2と電圧指令V
*とを入力する。指令更新部32は、キャリア信号Vc1、Vc2のピークおよびボトムのタイミングを更新タイミングTRにし、かかる更新タイミングTR毎に、比較部34へ出力する電圧指令V
*を更新する。これにより、指令更新部32は、更新タイミングTR後に指令生成部21により生成された電圧指令V
*を次の更新タイミングTRで比較部34へ出力することができる。
【0033】
シフト部33は、モード切替部31から第1モードを示すモード信号Smが出力された場合、指令更新部32から取得したキャリア信号Vc1、Vc2をシフトせずにそのままキャリア信号Vc1’、Vc2’として出力する。
【0034】
一方、シフト部33は、モード切替部31から第2モードを示すモード信号Smが出力された場合、指令更新部32によって更新された電圧指令V
*に基づいてキャリア信号Vc1、Vc2をシフトし、キャリア信号Vc1’、Vc2’として出力する。例えば、シフト部33は、キャリア信号Vc1、Vc2のいずれか一方をピーク値またはボトム値と一致するようにシフトし、他方を逆方向にシフトする。
【0035】
比較部34は、キャリア信号Vc1’、Vc2’と電圧指令V
*とを比較してPWM信号L1、L2、R1、R2を生成する。比較部34は、生成したPWM信号L1、L2、R1、R2をゲート駆動回路11へ出力する。
【0036】
ここで、キャリア信号Vc1、Vc2、キャリア信号Vc1’、Vc2’および電圧指令V
*の関係について
図3A〜
図3Bを参照して具体的に説明する。
図3Aは、第1モードの説明図である。
【0037】
図3Aに示すように、PWM信号生成部22の比較部34は、第1モードにおいて、キャリア信号Vc1、Vc2と同じ値のキャリア信号Vc1’、Vc2’と電圧指令V
*とを比較し、PWM信号L1、L2、R1、R2を生成する。これにより、PWM信号生成部22は、第1期間T1、第2期間T2および第1期間T1の順に移行する制御パターンのPWM信号を電圧指令V
*の更新周期Ts毎に繰り返し出力する。
【0038】
図3Bは、電圧指令V
*が正の場合の第2モードの説明図である。PWM信号生成部22のシフト部33は、電圧指令V
*が正であり、かつ、PWM制御モードが第2モードである場合、キャリア信号Vc1、Vc2のピーク値Vpと更新された電圧指令V
*との差分ΔVcpを求める。
【0039】
シフト部33は、キャリア信号Vc1から差分ΔVcpを減算してキャリア信号Vc1’を生成し、キャリア信号Vc2に差分ΔVcpを加算してキャリア信号Vc2’を生成する。比較部34は、指令更新部32により更新された電圧指令V
*と、シフト部33から出力されるキャリア信号Vc1’、Vc2’を比較し、比較結果をPWM信号L1、L2、R1、R2として出力する。
【0040】
なお、
図3Bに示す例では、PWM信号生成部22は、キャリア信号Vc2のボトムが第2期間T2内になるようにするが、キャリア信号Vc2のボトムが第1期間T1内になるようにすることもできる。この場合、PWM信号生成部22は、キャリア信号Vc1’と電圧指令V
*の比較によりPWM信号L1、L2を生成し、キャリア信号Vc2’と電圧指令V
*の比較によりPWM信号R1、R2を生成する。
【0041】
図3Cは、電圧指令V
*が負の場合の第2モードの説明図である。PWM信号生成部22のシフト部33は、電圧指令V
*が負であり、かつ、PWM制御モードが第2モードである場合、キャリア信号Vc1、Vc2のボトム値Vbと更新された電圧指令V
*との差分ΔVcbを求める。
【0042】
シフト部33は、キャリア信号Vc1に差分ΔVcbを加算してキャリア信号Vc1’を生成し、キャリア信号Vc2から差分ΔVcbを減算してキャリア信号Vc2’を生成する。比較部34は、指令更新部32により更新された電圧指令V
*と、シフト部33から出力されるキャリア信号Vc1’、Vc2’を比較し、比較結果をPWM信号L1、L2、R1、R2として出力する。
【0043】
なお、
図3Cに示す例では、PWM信号生成部22は、キャリア信号Vc2のボトムが第1期間T1内になるようにするが、キャリア信号Vc2のボトムが第2期間T2内になるようにすることもできる。この場合、PWM信号生成部22は、キャリア信号Vc1’と電圧指令V
*の比較によりPWM信号L1、L2を生成し、キャリア信号Vc2’と電圧指令V
*の比較によりPWM信号R1、R2を生成する。
【0044】
このように、PWM信号生成部22は、第2モードにおいて、第1期間T1、第2期間T2の順に移行する制御パターンのPWM信号と第2期間T2、第1期間T1の順に移行する制御パターンのPWM信号を電圧指令V
*の更新周期Ts毎に交互に出力する。そのため、PWM信号生成部22は、
図1Bに示すように、第1モードの場合と比べ、PWMパルスがオンになる回数、つまりスイッチング回数は1/2にでき、これにより、電力変換部10におけるスイッチング損失が低減する。
【0045】
また、PWM信号生成部22は、いずれのモードにおいても、電圧指令V
*の更新周期Tsは変えないことから、電圧指令V
*が電圧として負荷3へ出力されるまでの無駄時間の増加を抑制することができる。さらに、無駄時間の増加を抑制できることから、無駄時間が増加する場合に比べ、電流制御器24のゲインを上げて電流制御を高応答性とすることが可能となる。
【0046】
図4は、比較部34の構成例を示す図である。
図4に示すように、比較部34は、比較器41、42と、NOT回路43、44とを備える。比較器41は、電圧指令V
*とキャリア信号Vc1’とを比較し、電圧指令V
*がキャリア信号Vc1’以上である場合に、Highレベルの信号を出力し、電圧指令V
*がキャリア信号Vc1’未満である場合に、Lowレベルの信号を出力する。
【0047】
比較器42は、電圧指令V
*とキャリア信号Vc2’とを比較し、電圧指令V
*がキャリア信号Vc2’以上である場合に、Highレベルの信号を出力し、電圧指令V
*がキャリア信号Vc2’未満である場合に、Lowレベルの信号を出力する。NOT回路43は、比較器41の出力を反転して出力し、NOT回路44は、比較器42の出力を反転して出力する。
【0048】
比較部34は、比較器41の出力をPWM信号L1として出力し、NOT回路43の出力をPWM信号L2として出力する。また、比較部34は、比較器42の出力をPWM信号R1として出力し、NOT回路44の出力をPWM信号R2として出力する。
【0049】
なお、比較部34の構成は、
図4に示す構成に限定されず、例えば、4つの比較器を設け、かかる4つの比較器からPWM信号L1、L2、R1、R2を出力する構成であってもよい。
【0050】
[1.4.制御部20の処理]
ここで、制御部20の処理の流れの一例を説明する。
図5は、制御部20の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0051】
図5に示すように、制御部20の指令生成部21は、電圧指令V
*を生成する(ステップS11)。次に、制御部20のPWM信号生成部22は、電圧指令V
*の更新タイミングTRであるか否かを判定する(ステップS12)。電圧指令V
*の更新タイミングTRでないと判定した場合(ステップS12;No)、PWM信号生成部22は、ステップS12の処理を繰り返し行う。
【0052】
電圧指令V
*の更新タイミングTRであると判定した場合(ステップS12;Yes)、PWM信号生成部22は、第2モードであるか否かを判定する(ステップS13)。PWM信号生成部22は、例えば、電圧指令V
*が所定値未満である場合に、第2モードであると判定する。
【0053】
第2モードであると判定した場合(ステップS13;Yes)、PWM信号生成部22は、電圧指令V
*をキャリア信号Vc1、Vc2に対して相対的にシフトする(ステップS14)。例えば、PWM信号生成部22は、キャリア信号Vc1、Vc2のピーク値Vp(またはボトム値Vb)と電圧指令V
*との差分ΔVcp(または差分ΔVcb)に応じて、キャリア信号Vc1、Vc2をシフトする。これにより、電圧指令V
*がキャリア信号Vc1、Vc2に対して相対的にシフトされる。
【0054】
ステップS14の処理が終了した場合、または、ステップS13において、第2モードではないと判定した場合(ステップS13;No)、PWM信号生成部22は、電圧指令V
*とキャリア信号Vc1’、Vc2’とを比較し、PWM信号L1、L2、R1、R2を生成する(ステップS15)。
【0055】
なお、制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。かかるマイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、指令生成部21およびPWM信号生成部22の制御を実現する。なお、指令生成部21およびPWM信号生成部22の少なくともいずれかまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0056】
以上のように、第1の実施形態に係る電力変換装置1は、電圧指令V
*の更新周期Ts毎に、1つの第1期間T1と1つ以上の第2期間T2とが組み合わせられたPWM信号を電力変換部10へ出力する。これにより、電力変換装置1は、指令生成部21から出力された電圧指令V
*が電力変換部10から電圧(電圧指令V
*に応じた電圧)として出力されるまでの無駄時間の増加を低減することができる。
【0057】
[2.第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る電力変換装置について説明する。第2の実施形態に係る電力変換装置は、直流電圧を3相交流電圧へ変換して出力する直列多重電力変換装置である点で、第1の実施形態に係る電力変換装置1と異なる。なお、以下においては、電力変換装置1と同一機能を有する構成要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0058】
図6は、第2の実施形態に係る電力変換装置1Aの構成例を示す図である。かかる電力変換装置1Aは、電力変換セル部9と、電流検出部12Aと、指令生成部21Aとを備え、負荷3A(例えば、3相交流電動機や電力系統)へ3相交流電力を出力する。
【0059】
図6に示すように、電力変換セル部9は、9つの単相電力変換セル15a〜15i(以下、単相電力変換セル15と総称する場合がある)を備える。単相電力変換セル15は、負荷3AのU相、V相およびW相のそれぞれに対応して3つずつ設けられる。
【0060】
具体的には、単相電力変換セル15a〜15cの出力が直列に接続されて構成された単相電力変換セル群の一端が中性点Nに接続され、他端が負荷3AのU相に接続される。また、単相電力変換セル15d〜15fの出力が直列に接続されて構成された単相電力変換セル群の一端が中性点Nに接続され、他端が負荷3AのV相に接続される。また、単相電力変換セル15g〜15iの出力が直列に接続されて構成された単相電力変換セル群の一端が中性点Nに接続され、他端が負荷3AのW相に接続される。
【0061】
電流検出部12Aは、電力変換セル部9と負荷3AのU相、V相およびW相との間に流れる相電流Iu、Iv、Iw(以下、出力相電流Iuvwと記載する)を検出する。電流検出部12Aは、例えば、磁電変換素子であるホール素子を利用した電流センサである。
【0062】
図7は、単相電力変換セル15の構成例を示す図である。
図7に示すように、単相電力変換セル15は、電力変換部10Aと、制御部17と、温度検出部18とを備える。電力変換部10Aは、ゲート駆動回路11と、単相インバータ回路13とを備える。なお、温度検出部18は、9つの単相電力変換セル15a〜15iに対して一つであってもよい。
【0063】
かかる単相電力変換セル15は、入力端子Td(入力端子Tp、Tn)と出力端子Ta、Tbとを有し、電源2から入力端子Tdに入力される直流電圧を単相交流電圧へ変換して出力端子Ta、Tbから出力する。
【0064】
例えば、電力変換部10Aは、単相電力変換セル15a〜15cの出力電圧を加算した電圧を負荷3AのU相へ出力し、単相電力変換セル15d〜15fの出力電圧を加算した電圧を負荷3AのV相へ出力し、単相電力変換セル15g〜15iの出力電圧を加算した電圧を負荷3AのW相へ出力する。
【0065】
制御部17は、PWM信号生成部22を備える。かかるPWM信号生成部22は、指令生成部21Aから出力される後述の相電圧指令に基づいて、PWM信号L1、L2、R1、R2を生成する。
【0066】
指令生成部21Aは、電流指令生成器23Aと、電流制御器24Aとを備える。電流指令生成器23Aは、相電流指令Iuvw
*を生成する。相電流指令Iuvw
*は、相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*を含む。電流制御器24Aは、相電流指令Iuvw
*と出力相電流Iuvwとの偏差がゼロになるように相電圧指令Vuvw
*を生成する。相電圧指令Vuvw
*は、U相、V相およびW相の電圧指令である相電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*を含む。
【0067】
指令生成部21Aは、相電圧指令Vu
*を電圧指令V
*として単相電力変換セル15a〜15cへ出力し、相電圧指令Vv
*を電圧指令V
*として単相電力変換セル15d〜15fへ出力し、相電圧指令Vw
*を電圧指令V
*として単相電力変換セル15g〜15hへ出力する。
【0068】
以上のように、第2の実施形態に係る電力変換装置1Aの単相電力変換セル15a〜15iは、それぞれPWM信号生成部22を有している。したがって、第1の実施形態に係る電力変換装置1と同様に、第2モードにおいて、第1モードの場合と比べ、PWMパルスがオンになる回数、つまりスイッチング回数を1/2にでき、これにより、無駄時間の増加を抑制しつつ、スイッチング損失を低減することができる。
【0069】
なお、指令生成部21Aの処理の流れは、
図5に示すステップS11の処理の流れと同様であり、制御部17の処理の流れは、
図5に示すステップS12〜S15の処理の流れと同様であることから、説明を省略する。また、指令生成部21AおよびPWM信号生成部22は、制御部20と同様に、マイクロコンピュータや各種の回路を含み、マイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、指令生成部21AおよびPWM信号生成部22の制御を実現する。なお、指令生成部21AおよびPWM信号生成部22の一部または全部をASICやFPGA等のハードウェアで構成することもできる。
【0070】
[3.第3の実施形態]
次に、第3の実施形態に係る電力変換装置について説明する。第3の実施形態に係る電力変換装置は、直流電圧を3相交流電圧へ変換して出力する点で、第1の実施形態に係る電力変換装置1と異なる。なお、以下においては、電力変換装置1、1Aと同一機能を有する構成要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0071】
図8は、第3の実施形態に係る電力変換装置1Bの構成例を示す図である。かかる電力変換装置1Bは、電力変換部10Bと制御部20Bとを備え、負荷3Aへ3相交流電力を出力する。以下、電力変換部10Bと制御部20Bの構成例について詳細に説明する。
【0072】
[3.1.電力変換部10B]
図8に示すように、電力変換部10Bは、入力端子Tp、Tnと、出力端子Tu、Tv、Twと、3相2レベルインバータ回路13Bと、ゲート駆動回路11Bと、電流検出部12Aと、温度検出部18とを備える。出力端子Tu、Tv、Twは、それぞれ負荷3AのU相、V相およびW相に接続される。
【0073】
3相2レベルインバータ回路13Bは、スイッチング素子Q11〜Q16と、コンデンサC1とを備える。スイッチング素子Q11〜Q16は、3相ブリッジ接続され、出力端子Tu、Tv、Twを介して負荷3Aに接続される。各スイッチング素子Q11〜Q16には、保護用の整流素子が並列に接続される。スイッチング素子Q11〜Q16は、例えば、IGBTやMOSFETなどの半導体素子である。
【0074】
ゲート駆動回路11Bは、制御部20Bから出力されるPWM信号PA、PB、PCに基づいて、ゲート信号S1〜S6を生成する。例えば、ゲート駆動回路11Bは、PWM信号PA、PB、PCを増幅した信号をそれぞれゲート信号S1、S3、S5としてスイッチング素子Q11、Q13、Q15へ出力する。また、ゲート駆動回路11Bは、PWM信号PA、PB、PCを反転して増幅した信号をゲート信号S2、S4、S6としてスイッチング素子Q12、Q14、Q16へ出力する。
【0075】
これにより、電力変換部10Bは、電源2から入力端子Tp、Tnを介して入力された直流電圧を、スイッチング素子Q11〜Q16のスイッチングによって3相交流電圧へ変換し、変換後の3相交流電圧を出力端子Tu、Tv、Twから出力線6a〜6cを介して負荷3Aへ出力する。
【0076】
[2.2.制御部20B]
制御部20Bは、
図8に示すように、指令生成部21Aと、PWM信号生成部22Bとを備える。PWM信号生成部22Bは、キャリア信号生成部30Bと、モード切替部31Bと、指令更新部32Bと、シフト部33Bと、比較部34Bとを備える。
【0077】
キャリア信号生成部30Bは、キャリア信号Vcを出力する。かかるキャリア信号Vcは、三角波信号であるが、例えば、鋸波状の信号であってもよい。
【0078】
モード切替部31Bは、モード信号Smをシフト部33Bへ出力し、第1モードと第2モードとを切替える。モード切替部31Bは、例えば、検出温度Tcが所定値未満である場合に、第1モードを示すモード信号Smをシフト部33Bへ出力し、検出温度Tcが所定値以上である場合に、第2モードを示すモード信号Smをシフト部33Bへ出力する。
【0079】
指令更新部32Bは、キャリア信号Vcと相電圧指令Vuvw
*とを入力する。指令更新部32Bは、キャリア信号Vcのピークおよびボトムのタイミングを更新タイミングTRにし、かかる更新タイミングTR毎に、比較部34Bへ出力する相電圧指令Vuvw
*を更新する。これにより、指令更新部32Bは、更新タイミングTR後に指令生成部21Aにより生成された相電圧指令Vuvw
*を次の更新タイミングTRで比較部34Bへ出力することができる。
【0080】
シフト部33Bは、モード切替部31Bから第1モードを示すモード信号Smが出力された場合、指令更新部32Bから取得した相電圧指令Vuvw
*をシフトせずにそのまま相電圧指令Vuvw1
*として出力する。相電圧指令Vuvw1
*は、U相、V相およびW相の電圧指令である相電圧指令Vu1
*、Vv1
*、Vw1
*を含む。
【0081】
一方、シフト部33Bは、モード切替部31Bから第2モードを示すモード信号Smが出力された場合、指令更新部32Bによって更新された相電圧指令Vuvw
*とキャリア信号Vcとに基づいて、相電圧指令Vuvw
*をシフトし、相電圧指令Vuvw1
*として出力する。
【0082】
比較部34Bは、キャリア信号Vcと相電圧指令Vu1
*、Vv1
*、Vw1
*とをそれぞれ比較してPWM信号PA、PB、PCを生成する。比較部34Bは、生成したPWM信号PA、PB、PCをゲート駆動回路11Bへ出力する。
【0083】
ここで、キャリア信号Vc、相電圧指令Vuvw
*および相電圧指令Vuvw1
*の関係について
図9A〜
図9Bを参照して具体的に説明する。
図9Aは、第1モードの説明図である。
【0084】
図9Aに示すように、PWM信号生成部22Bの比較部34Bは、第1モードにおいて、相電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*と同じ値の相電圧指令Vu1
*、Vv1
*、Vw1
*とキャリア信号Vcとを比較し、PWM信号PA、PB、PCを生成する。これにより、PWM信号生成部22Bは、第1期間T1、第2期間T2および第1期間T1の順に移行する制御パターンのPWM信号を相電圧指令Vuvw
*の更新周期Ts毎に繰り返し出力する。
【0085】
図9Bは、第2モードの一例を示す説明図である。PWM信号生成部22Bのシフト部33Bは、モード信号Smが第2モードを示す場合、
図9Bに示すように、相電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*のうち最大の相電圧指令とキャリア信号Vcのピーク値Vp(
図9A参照)との差分ΔVc1を求める。
【0086】
シフト部33Bは、相電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*にそれぞれ差分ΔVc1を加算して相電圧指令Vu1
*、Vv1
*、Vw1
*を生成する。比較部34Bは、相電圧指令Vu1
*、Vv1
*、Vw1
*とキャリア信号Vcとを比較し、比較結果をPWM信号PA、PB、PCとして出力する。
【0087】
図9Cは、第2モードの他の例を示す説明図である。
図9Cに示すように、PWM信号生成部22Bのシフト部33Bは、モード信号Smが第2モードを示す場合、相電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*のうち最小の相電圧指令とキャリア信号Vcのボトム値Vb(
図9A参照)との差分ΔVc2を求める。
【0088】
シフト部33Bは、相電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*からそれぞれ差分ΔVc2を減算して相電圧指令Vu1
*、Vv1
*、Vw1
*を生成する。比較部34Bは、相電圧指令Vu1
*、Vv1
*、Vw1
*とキャリア信号Vcとを比較し、比較結果をPWM信号PA、PB、PCとして出力する。
【0089】
このように、第2の実施形態に係るPWM信号生成部22Bは、キャリア信号Vcのピーク値Vpまたはボトム値Vbに基づいて相電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*をそれぞれキャリア信号Vcに対して相対的にシフトしてキャリア信号Vcと比較する。
【0090】
これにより、PWM信号生成部22Bは、第2モードにおいて、第1期間T1、第2期間T2の順に移行する制御パターンのPWM信号と第2期間T2、第1期間T1の順に移行する制御パターンのPWM信号を電圧指令Vuvw
*の更新周期Ts毎に交互に出力することができる。
【0091】
そのため、PWM信号生成部22Bは、第1モードの場合と比べ、PWMパルスがオンになる回数、つまりスイッチング回数を2/3にでき、これにより、電力変換部10Bにおけるスイッチング損失が低減する。また、PWM信号生成部22Bは、いずれのモードにおいても、相電圧指令Vuvw
*の更新周期Tsを変えないことから、相電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*がU相、V相およびW相の出力電圧として負荷3Aへ出力されるまでの無駄時間の増加を抑制できる。さらに、無駄時間の増加を抑制できることから、無駄時間が増加する場合に比べ、電流制御器24Aのゲインを上げて電流制御を高応答性とすることが可能となる。
【0092】
なお、PWM信号生成部22Bのシフト部33Bは、モード信号Smが第2モードを示す場合、例えば、電力変換装置1Bが起動される毎に、
図9Bに示す処理と
図9Cに示す処理とを交互に切り替えることもできる。
【0093】
制御部20Bの処理の流れは、
図5に示す処理の流れと同様であることから、説明を省略する。また、制御部20Bは、制御部20と同様に、マイクロコンピュータや各種の回路を含み、マイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、指令生成部21AおよびPWM信号生成部22Bの制御を実現する。なお、指令生成部21AおよびPWM信号生成部22Bの一部または全部をASICやFPGA等のハードウェアで構成することもできる。
【0094】
[4.第4の実施形態]
次に、第4の実施形態に係る電力変換装置について説明する。第4の実施形態に係る電力変換装置は、3レベルの直流電圧を3相交流電圧へ変換する点で、第3の実施形態に係る電力変換装置1Bと異なる。なお、以下においては、電力変換装置1Bと同一機能を有する構成要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0095】
図10は、第4の実施形態に係る電力変換装置1Cの構成例を示す図である。かかる電力変換装置1Cは、電力変換部10Cと制御部20Cとを備え、負荷3Aへ3相交流電力を出力する。以下、電力変換部10Cと制御部20Cの構成例について詳細に説明する。
【0096】
[4.1.電力変換部10C]
図10に示すように、電力変換部10Cは、入力端子Tp、Tnと、出力端子Tu、Tv、Twと、3相3レベルインバータ回路13Cと、ゲート駆動回路11Cと、電流検出部12Aと、温度検出部18とを備える。
【0097】
3相3レベルインバータ回路13Cは、スイッチング素子Q21〜Q24、Q31〜Q34、Q41〜Q44と、コンデンサC21、C22と、ダイオードD21〜D26とを備え、出力端子Tu、Tv、Twを介して負荷3Aに接続される。各スイッチング素子Q21〜Q24、Q31〜Q34、Q41〜Q44には、保護用の整流素子が並列に接続される。スイッチング素子Q21〜Q24、Q31〜Q34、Q41〜Q44は、例えば、IGBTやMOSFETなどの半導体素子である。
【0098】
ゲート駆動回路11Cは、制御部20Cから出力されるPWM信号PA、PB、PCに基づいて、ゲート信号PA1〜PA4、PB1〜PB4、PC1〜PC4を生成する。なお、以下、ゲート駆動回路11Cにおいて、PWM信号PAによりゲート信号PA1〜PA4を生成する例を説明する。
【0099】
ゲート駆動回路11Cは、例えば、PWM信号PAがLowレベルである場合、ゲート信号PA1、PA2をHighレベルにし、ゲート信号PA3、PA4をLowレベルにする。これにより、3相3レベルインバータ回路13Cは、電源2の直流電圧(以下、電源電圧Vdcと記載する)をU相の出力端子Tuから出力する。
【0100】
また、ゲート駆動回路11Cは、例えば、PWM信号PAがLowレベルである場合、ゲート信号PA3、PA4をHighレベルにし、ゲート信号PA1、PA2をLowレベルにする。これにより、3相3レベルインバータ回路13Cは、ゼロ電位(グランド電位)をU相の出力端子Tuから出力する。
【0101】
また、ゲート駆動回路11Cは、例えば、PWM信号PAがMiddleレベルである場合、ゲート信号PA2、PA3をHighレベルにし、ゲート信号PA1、PA4をLowレベルにする。これにより、3相3レベルインバータ回路13Cは、電源電圧Vdcの1/2の電圧(Vdc/2)をU相の出力端子Tuから出力する。
【0102】
ゲート駆動回路11Cは、PWM信号PB、PCについても、PWM信号PAと同様に、ゲート信号PB1〜PB4、PC1〜PC4を生成する。これにより、電力変換部10Cは、電源2から入力端子Tp、Tnを介して入力された直流電圧を、スイッチング素子Q21〜Q24、Q31〜Q34、Q41〜Q44のスイッチングによって3相交流電圧に変換し、出力端子Tu、Tv、Twから出力線6a〜6cを介して負荷3へ出力する。
【0103】
[4.2.制御部20C]
制御部20Cは、
図10に示すように、指令生成部21Cと、PWM信号生成部22Cとを備える。指令生成部21Cは、電流指令生成器23Aと、電流制御器24Cと、電圧指令生成部25Cとを備える。
【0104】
電流制御器24Cは、相電流指令Iuvw
*と出力相電流Iuvwとの偏差がゼロになるように電圧指令ベクトルVs
*を生成する。電圧指令生成部25Cは、電圧指令ベクトルVs
*から相電圧指令Vuvwpn
*を生成する。相電圧指令Vuvwpn
*は、U相、V相およびW相の相毎の第1の相電圧指令Vup
*、Vvp
*、Vwp
*と第2の相電圧指令Vun
*、Vvn
*、Vwn
*を含む。電圧指令生成部25Cは、例えば、公知のダイポーラ変調(例えば、特開平05−211775号公報参照)により、電圧指令ベクトルVs
*から相電圧指令Vuvwpn
*を生成する。
【0105】
PWM信号生成部22Cは、キャリア信号生成部30Bと、モード切替部31Bと、指令更新部32Cと、シフト部33Cと、比較部34Cとを備える。
【0106】
指令更新部32Cは、キャリア信号Vcと相電圧指令Vuvwpn
*を入力する。指令更新部32Cは、キャリア信号Vcのピークおよびボトムのタイミングを更新タイミングTRにし、かかる更新タイミングTR毎に、比較部34Cへ出力する相電圧指令Vuvwpn
*を更新する。これにより、指令更新部32Cは、更新タイミングTR後に電圧指令生成部25Cにより生成された相電圧指令Vuvwpn
*を次の更新タイミングTRで比較部34Cへ出力することができる。
【0107】
シフト部33Cは、モード切替部31Bから第1モードを示すモード信号Smが出力された場合、指令更新部32Cから取得した相電圧指令Vuvwpn
*をシフトせずにそのまま相電圧指令Vuvwpn1
*として出力する。相電圧指令Vuvwpn1
*は、U相、V相およびW相の相毎の第1の相電圧指令Vup1
*、Vvp1
*、Vwp1
*と第2の相電圧指令Vun1
*、Vvn1
*、Vwn1
*を含む。
【0108】
一方、シフト部33Cは、モード切替部31Bから第2モードを示すモード信号Smが出力された場合、指令更新部32Cによって更新された相電圧指令Vuvwpn
*とキャリア信号Vcとに基づいて、相電圧指令Vuvwpn
*をシフトし、相電圧指令Vuvwpn1
*として出力する。
【0109】
比較部34Cは、キャリア信号Vcと相電圧指令Vup1
*、Vvp1
*、Vwp1
*、Vun1
*、Vvn1
*、Vwn1
*とをそれぞれ比較してPWM信号PA、PB、PCを生成する。比較部34Cは、生成したPWM信号PA、PB、PCをゲート駆動回路11Cへ出力する。
【0110】
ここで、キャリア信号Vc、相電圧指令Vuvwpn
*および相電圧指令Vuvwpn1
*の関係について、
図11A、
図11Bを参照して具体的に説明する。
図11Aは、第1モードの説明図である。
【0111】
図11Aに示すように、PWM信号生成部22Cの比較部34Cは、第1モードにおいて、相電圧指令Vup
*、Vvp
*、Vwp
*、Vun
*、Vvn
*、Vwn
*と同じ値の相電圧指令Vup1
*、Vvp1
*、Vwp1
*、Vun1
*、Vvn1
*、Vwn1
*とキャリア信号Vcとを比較し、PWM信号PA、PB、PCを生成する。
【0112】
これにより、PWM信号生成部22Cは、第1期間T1、第2期間T2、第1期間T1、第2期間T2および第1期間T1の順に移行する制御パターンのPWM信号を相電圧指令Vuvwpn
*の更新周期Ts毎に繰り返し出力する。
【0113】
図11Bは、第2モードの一例を示す説明図である。PWM信号生成部22Cのシフト部33Cは、
図11Bに示すように、相電圧指令Vup1
*、Vvp1
*、Vwp1
*のうち最大の相電圧指令とキャリア信号Vcのピーク値Vp(
図11A参照)との差分ΔVc3を求める。シフト部33Cは、相電圧指令Vup
*、Vvp
*、Vwp
*にそれぞれ差分ΔVc3を加算して相電圧指令Vup1
*、Vvp1
*、Vwp1
*を生成する。
【0114】
また、シフト部33Cは、相電圧指令Vun
*、Vvn
*、Vwn
*のうち最小の相電圧指令とキャリア信号Vcのボトム値Vb(
図11A参照)との差分ΔVc4を求める。シフト部33Cは、相電圧指令Vun
*、Vvn
*、Vwn
*からそれぞれ差分ΔVc4を減算して相電圧指令Vun1
*、Vvn1
*、Vwn1
*を生成する。
【0115】
比較部34Cは、Vup1
*、Vvp1
*、Vwp1
*、Vun1
*、Vvn1
*、Vwn1
*とキャリア信号Vcとを比較し、比較結果をPWM信号PA、PB、PCとして出力する。これにより、PWM信号生成部22Cは、第2期間T2、第1期間T1および第2期間T2の順に移行する制御パターンのPWM信号を相電圧指令Vuvwpn
*の更新周期Ts毎に繰り返し出力する。
【0116】
このように、第3の実施形態に係るPWM信号生成部22Cは、キャリア信号Vcのピーク値Vpまたはボトム値Vbに基づいて相電圧指令Vup
*、Vvp
*、Vwp
*、Vun
*、Vvn
*、Vwn
*をそれぞれキャリア信号Vcに対して相対的にシフトしてキャリア信号Vcと比較する。
【0117】
これにより、PWM信号生成部22Cは、第1モードの場合と比べ、PWMパルスがオンになる回数、つまりスイッチング回数を2/3にでき、これにより、電力変換部10Cにおけるスイッチング損失が低減する。また、PWM信号生成部22Cは、いずれのモードにおいても、相電圧指令Vuvwpn
*の更新周期Tsは変えないことから、相電圧指令Vuvw
*がU相、V相およびW相の出力電圧として負荷3Aへ出力されるまでの無駄時間の増加を抑制できる。さらに、無駄時間の増加を抑制できることから、無駄時間が増加する場合に比べ、電流制御器24Aのゲインを上げて電流制御を高応答性とすることが可能となる。
【0118】
制御部20Cの処理の流れは、
図5に示す処理の流れと同様であることから、説明を省略する。また、制御部20Cは、制御部20と同様に、マイクロコンピュータや各種の回路を含み、マイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、指令生成部21CおよびPWM信号生成部22Cの制御を実現する。なお、指令生成部21CおよびPWM信号生成部22Cの一部または全部をASICやFPGA等のハードウェアで構成することもできる。
【0119】
なお、電力変換部10Cは、
図10に示す例に限定されない。
図12は、第4の実施形態に係る他の電力変換部10Cの構成例を示す図である。
図12に示す電力変換部10Cは、ゲート駆動回路11C’と、電流検出部12Aと、3相2レベルインバータ回路13C’とを備える。
【0120】
3相2レベルインバータ回路13C’は、
図12に示すように、スイッチング素子Q21〜Q24、Q31〜Q34、Q41〜Q44と、コンデンサC21、C22とを備える。各スイッチング素子Q21〜Q24、Q31〜Q34、Q41〜Q44には、保護用の整流素子が並列に接続される。
【0121】
ゲート駆動回路11C’は、制御部20Cから出力されるPWM信号PA、PB、PCに基づいて、ゲート信号PA1〜PA3、PB1〜PB3、PC1〜PC3を生成する。なお、以下、ゲート駆動回路11C’において、PWM信号PAによりゲート信号PA1〜PA3を生成する例を説明する。
【0122】
ゲート駆動回路11C’は、例えば、PWM信号PAがLowレベルである場合、ゲート信号PA1をHighレベルにし、ゲート信号PA2、PA3をLowレベルにする。これにより、3相3レベルインバータ回路13C’は、電源電圧VdcをU相の出力端子Tuから出力する。
【0123】
また、ゲート駆動回路11C’は、例えば、PWM信号PAがLowレベルである場合、ゲート信号PA3をHighレベルにし、ゲート信号PA1、PA2をLowレベルにする。これにより、3相3レベルインバータ回路13C’は、ゼロ電位をU相の出力端子Tuから出力する。
【0124】
また、ゲート駆動回路11C’は、例えば、PWM信号PAがMiddleレベルである場合、ゲート信号PA3をHighレベルにし、ゲート信号PA1、PA3をLowレベルにする。これにより、3相3レベルインバータ回路13C’は、電源電圧Vdcの1/2の電圧(Vdc/2)をU相の出力端子Tuから出力する。
【0125】
ゲート駆動回路11C’は、PWM信号PB、PCについても、PWM信号PAと同様に、ゲート信号PB1〜PB4、PC1〜PC4を生成する。これにより、電力変換部10Cは、電源2から入力端子Tp、Tnを介して入力された直流電圧を、スイッチング素子Q21〜Q24、Q31〜Q34、Q41〜Q44のスイッチングによって3相交流電圧に変換し、出力端子Tu、Tv、Twから出力線6a〜6cを介して負荷3へ出力する。
【0126】
[5.第5の実施形態]
次に、第5の実施形態に係る電力変換装置について説明する。第5の実施形態に係る電力変換装置は、空間ベクトル法によってPWM信号を生成する点で、第3の実施形態に係る電力変換装置1Bと異なる。なお、以下においては、電力変換装置1Bと同一機能を有する構成要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0127】
図13は、第5の実施形態に係る電力変換装置1Dの構成例を示す図である。かかる電力変換装置1Dは、電力変換部10Bと制御部20Dとを備え、負荷3Aへ3相交流電力を出力する。以下、制御部20Dの構成例について詳細に説明する。
【0128】
制御部20Dは、
図13に示すように、指令生成部21Dと、PWM信号生成部22Dとを備える。指令生成部21Dは、電流指令生成器23Aと、電流制御器24Dとを備える。電流制御器24Dは、相電流指令Iuvw
*と出力相電流Iuvwとの偏差がゼロになるように電圧指令ベクトルVs
*(電圧指令の一例)を生成する。
【0129】
PWM信号生成部22Dは、モード切替部31Dと、選択部35と、演算部36と、変更部37と、生成部38とを備える。
【0130】
モード切替部31Dは、モード信号Smを演算部36へ出力し、第1モードと第2モードとを切替える。モード切替部31Dは、例えば、検出温度Tcが所定値未満である場合に、第1モードを示すモード信号Smを演算部36へ出力し、検出温度Tcが所定値以上である場合に、第2モードを示すモード信号Smを演算部36へ出力する。
【0131】
選択部35は、電圧指令ベクトルVs
*に基づいて、更新周期Ts毎に、複数の電圧ベクトルから2つのゼロ電圧ベクトルと2つの非ゼロ電圧ベクトルとの組み合わせを選択する。
図14は空間ベクトル法の説明図である。なお、θvは、電圧ベクトルV1から電圧指令ベクトルVs
*までの位相角である。
【0132】
図13には、ゼロ電圧ベクトルV0、V7と非ゼロ電圧ベクトルV1〜V6とを含む8つの電圧ベクトルが示される。選択部35は、例えば、電圧指令ベクトルVs
*が隣接する2つの非ゼロ電圧ベクトルV1、V2と、ゼロ電圧ベクトルV0、V7とを選択する。
【0133】
この場合、選択部35は、例えば、電圧ベクトルV0、V1、V2、V7の順に選択するパターン(以下、第1選択パターンと記載する)と、電圧ベクトルV7、V2、V1、V0の順に選択するパターン(以下、第2選択パターンと記載する)とを更新周期Ts毎に交互に切替える。
【0134】
なお、
図14において、例えば、V1(100)は、電圧ベクトルV1によるU相、V相およびW相の状態を示し、U相の上側のスイッチング素子Q11がオンになり、V相とW相の下側のスイッチング素子Q14、Q16がオンになる状態を示す。
【0135】
演算部36は、選択部35によって選択された電圧ベクトルの出力期間を演算する。例えば、選択部35が非ゼロ電圧ベクトルV1、V2を選択した場合、演算部36は、例えば、下記式(1)、(2)を演算することにより、非ゼロ電圧ベクトルV1の出力期間t1と、非ゼロ電圧ベクトルV2の出力期間t2とを求める。
【数1】
【0136】
また、演算部36は、非ゼロ電圧ベクトルV1、V2の出力期間t1、t2の合計を更新周期Tsから減算した期間(=Ts−t1―t2)を2つに分割することにより、ゼロ電圧ベクトルV0の出力期間t0と、ゼロ電圧ベクトルV7の出力期間t7とを求める。
【0137】
演算部36は、選択部35によって選択された順に電圧ベクトルの出力期間の情報を変更部37へ出力する。例えば、選択部35によって、第1選択パターンの電圧ベクトルV0、V1、V2、V7が選択された場合、演算部36は、出力期間t0、t1、t2、t7の順に出力期間の情報を出力する。
【0138】
変更部37は、モード切替部31Dから第1モードを示すモード信号Smが出力された場合、演算部36から取得した出力期間の情報をそのまま出力する。変更部37は、例えば、演算部36から出力期間t0、t1、t2、t7の情報を取得した場合、かかる出力期間t0、t1、t2、t7の情報をそのまま出力する。
【0139】
一方、変更部37は、モード切替部31Dから第2モードを示すモード信号Smが出力された場合、演算部36によって演算された出力期間のうち2つ以上のゼロ電圧ベクトルの出力期間の合計期間を一つのゼロ電圧ベクトルの出力期間として変更する。
【0140】
例えば、変更部37は、演算部36から出力期間t0、t1、t2、t7の情報を取得した場合、出力期間t0、t7を加算して、加算結果を出力期間t0、t7のいずれか一方の出力期間にし、他方の出力期間を0にする。これにより、出力されるゼロ電圧ベクトルが2つから1つへ変更される。
【0141】
変更部37は、加算結果を出力期間t0の出力期間にした場合、出力期間t0、t1、t2の情報を出力し、加算結果を出力期間t7の出力期間にした場合、出力期間t1、t2、t7の情報を出力する。
【0142】
生成部38は、変更部37から出力される出力期間の情報に基づいて、PWM信号PA、PB、PCを生成する。生成部38は、生成したPWM信号PA、PB、PCを電力変換部10B(ゲート駆動回路11B)へ出力する。
【0143】
例えば、生成部38は、第1モードにおける出力期間の情報として、変更部37から出力期間t0、t1、t2、t7の情報と出力期間t7、t2、t1、t0の情報とを順に取得した場合、
図15Aに示すように、PWM信号PA、PB、PCを生成する。
図15Aは、第1モードにおける電圧ベクトル、出力期間およびPWM信号の関係を示す図である。
【0144】
また、生成部38は、第2モードにおける出力期間の情報として、変更部37から出力期間t0、t1、t2の情報と出力期間t2、t1、t0の情報を取得した場合、
図15Bに示すように、PWM信号PA、PB、PCを生成する。
図15Bは、第2モードにおける電圧ベクトル、出力期間およびPWM信号の関係を示す図である。
【0145】
また、生成部38は、第2モードにおける出力期間の情報として、変更部37から出力期間t1、t2、t7の情報と出力期間t7、t2、t1の情報を取得した場合、
図15Cに示すように、PWM信号PA、PB、PCを生成する。
図15Cは、第2モードにおける電圧ベクトル、出力期間およびPWM信号の他の関係を示す図である。
【0146】
図15Bおよび
図15Cに示すように、生成部38は、第2モードにおいて、変更部37によって変更された出力期間t0または出力期間t7を第1期間T1とし、2つの非ゼロ電圧ベクトルの出力期間(例えば、
図15Bおよび
図15Cに示すt1、t2)を2つの第2期間T2にしたPWM信号PA、PB、PCを生成する。
【0147】
これにより、電力変換装置1Dは、電力変換装置1Bと同様に、第1モードの場合と比べ、PWMパルスがオンになる回数、つまりスイッチング回数を2/3にできるので、無駄時間の増加を抑制しつつ、スイッチング損失を低減することができる。
【0148】
なお、上述においては、選択部35において、電圧指令ベクトルVs
*の順番を設定したが、生成部38によって電圧ベクトルの順番を設定してもよい。この場合、生成部38は、例えば、電圧指令ベクトルVs
*とモード信号Smとに基づき、電圧ベクトルの順番を設定する。
【0149】
ここで、制御部20Dの処理の流れの一例を説明する。
図16は、制御部20Dの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0150】
図16に示すように、制御部20Dの指令生成部21Dは、電圧指令ベクトルVs
*を生成する(ステップS21)。次に、制御部20DのPWM信号生成部22Dは、電圧指令ベクトルVs
*の更新タイミングTRであるか否かを判定する(ステップS22)。
【0151】
電圧指令ベクトルVs
*の更新タイミングTRであると判定した場合(ステップS22;Yes)、PWM信号生成部22Dは、電圧指令ベクトルVs
*に基づき、電圧ベクトルを選択する(ステップS23)。PWM信号生成部22Dは、選択した電圧ベクトルの出力期間を演算する(ステップS24)。
【0152】
次に、PWM信号生成部22Dは、第2モードであるか否かを判定する(ステップS25)。PWM信号生成部22Dは、例えば、電圧指令V
*が所定値未満である場合に、第2モードであると判定する。
【0153】
第2モードであると判定した場合(ステップS25;Yes)、PWM信号生成部22Dは、複数のゼロ電圧ベクトルの出力期間を一つのゼロ電圧ベクトルの出力期間にする(ステップS26)。
【0154】
ステップS26の処理が終了した場合、または、ステップS25において、第2モードではないと判定した場合(ステップS25;No)、PWM信号生成部22Dは、電圧ベクトルの出力期間に基づいて、PWM信号PA、PB、PCを生成する(ステップS27)。
【0155】
なお、制御部20Dは、制御部20と同様に、マイクロコンピュータや各種の回路を含み、マイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、指令生成部21DおよびPWM信号生成部22Dの制御を実現する。なお、指令生成部21DおよびPWM信号生成部22Dの一部または全部をASICやFPGA等のハードウェアで構成することもできる。
【0156】
[6.第6の実施形態]
次に、第6の実施形態に係る電力変換装置について説明する。第6の実施形態に係る電力変換装置は、空間ベクトル法によってPWM信号を生成する点で、第4の実施形態に係る電力変換装置1Cと異なる。なお、以下においては、電力変換装置1C、1Dと同一機能を有する構成要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0157】
図17は、第6の実施形態に係る電力変換装置1Eの構成例を示す図である。かかる電力変換装置1Eは、電力変換部10Cと制御部20Eとを備え、負荷3Aへ3相交流電力を出力する。以下、制御部20Eの構成例について詳細に説明する。
【0158】
制御部20Eは、
図17に示すように、指令生成部21Dと、PWM信号生成部22Eとを備える。PWM信号生成部22Eは、モード切替部31Dと、選択部35Eと、演算部36Eと、変更部37Eと、生成部38Eとを備える。
【0159】
選択部35Eは、電圧指令ベクトルVs
*(電圧指令の一例)に基づいて、更新周期Ts毎に、27種類の電圧ベクトルから3つのゼロ電圧ベクトルと4つの非ゼロ電圧ベクトルとの組み合わせを選択する。
図18は空間ベクトル法の説明図である。
【0160】
図18には、3つのゼロ電圧ベクトルOp、Om、Onと、24個の非ゼロ電圧ベクトルa(1)〜a(3)、b(1)〜b(3)、ap(1)〜ap(3)、an(1)〜an(3)、bp(1)〜bp(3)、bn(1)〜bn(3)、z(1)〜z(6)とが示される。
【0161】
図19は、電圧指令ベクトルVs
*と空間ベクトルとの対応例を示す図である。電圧指令ベクトルVs
*が
図19に示す状態である場合、選択部35Eは、例えば、電圧指令ベクトルVs
*が隣接する4つの非ゼロ電圧ベクトルap、an、bp、bnと、3つのゼロ電圧ベクトルOp、Oo、Onとを選択する。
【0162】
この場合、選択部35Eは、On→an→bn→Oo→ap→bp→Opの順に電圧ベクトルを選択するパターン(以下、第1選択パターンと記載する)と、Op→bp→ap→Oo→bn→an→Onの順に電圧ベクトルを選択するパターン(以下、第2選択パターンと記載する)とを更新周期Ts毎に交互に切替える。
【0163】
なお、
図19において、例えば、PPOは、電圧ベクトルap(1)のU相、V相およびW相の出力状態を示し、U相およびV相の上側のスイッチング素子Q21、Q22、Q31、Q32がオンになり、W相の中央側のスイッチング素子Q42、Q43がオンになる状態を示す。
【0164】
演算部36Eは、選択部35Eによって選択された順に電圧ベクトルの出力期間の情報を変更部37Eへ出力する。例えば、選択部35Eによって、第1選択パターンの電圧ベクトルが選択された場合、演算部36Eは、電圧ベクトルOn、an、bn、Oo、ap、bp、Opの順に出力期間の情報を出力する。
【0165】
演算部36Eは、選択部35Eによって選択された電圧ベクトルの出力期間を演算する。例えば、選択部35Eが非ゼロ電圧ベクトルap、an、bp、bnを選択した場合、演算部36Eは、各非ゼロ電圧ベクトルap、an、bp、bnの出力期間tap、tan、tbp、tbnを求める。
【0166】
また、演算部36Eは、出力期間tap、tan、tbp、tbnの合計を更新周期Tsから減算した期間(=Ts−tap−tan−tbp−tbn)を3つに分割することにより、ゼロ電圧ベクトルOp、Oo、Onの出力期間top、too、tonとを求める。
【0167】
変更部37Eは、モード切替部31Dから第1モードを示すモード信号Smが出力された場合、演算部36Eから取得した出力期間の情報をそのまま出力する。変更部37Eは、例えば、演算部36Eから出力期間ton、tan、tbn、too、tap、tbp、topの情報を取得した場合、かかる出力期間ton、tan、tbn、too、tap、tbp、topの情報をそのまま出力する。
【0168】
一方、変更部37Eは、モード切替部31Dから第2モードを示すモード信号Smが出力された場合、演算部36Eによって演算された出力期間のうち3つ以上のゼロ電圧ベクトルの出力期間の合計期間を一つのゼロ電圧ベクトルの出力期間として変更する。
【0169】
例えば、変更部37Eは、演算部36Eから出力期間ton、tan、tbn、too、tap、tbp、topの情報を取得した場合、出力期間ton、too、topを加算して、加算結果を新たな出力期間tooにし、出力期間ton、topを0にする。これにより、出力されるゼロ電圧ベクトルが3つから1つへ変更される。
【0170】
変更部37Eは、上述のように、加算結果を新たな出力期間tooの出力期間にした場合、出力期間tan、tbn、too、tap、tbpの情報を順に出力する。
【0171】
生成部38Eは、変更部37Eから出力される出力期間の情報に基づいて、PWM信号PA、PB、PCを生成する。生成部38Eは、生成したPWM信号PA、PB、PCを電力変換部10C(ゲート駆動回路11C)へ出力する。
【0172】
例えば、生成部38Eは、第1モードにおける出力期間の情報として、変更部37Eから出力期間ton、tan、tbn、too、tap、tbp、topの情報と出力期間top、tbp、tap、too、tbn、tan、tonの情報を順に取得した場合、
図20Aに示すように、PWM信号PA、PB、PCを生成する。
図20Aは、第1モードにおける電圧ベクトル、出力期間およびPWM信号の関係を示す図である。
【0173】
また、生成部38Eは、第2モードにおける出力期間の情報として、変更部37Eから出力期間tan、tbn、too、tap、tbpの情報と出力期間tbp、tap、too、tbn、tanの情報を取得した場合、
図20Bに示すように、PWM信号PA、PB、PCを生成する。
図20Bは、第2モードにおける電圧ベクトル、出力期間およびPWM信号の関係を示す図である。
【0174】
図20Bに示すように、生成部38Eは、第2モードにおいて、変更部37Eによって変更された出力期間tooを第1期間T1とし、4つの非ゼロ電圧ベクトルan、bn、ap、bpの出力期間tan、tbn、tap、tbpを4つの第2期間T2するPWM信号PA、PB、PCを生成する。
【0175】
これにより、電力変換装置1Eは、電力変換装置1Cと同様に、第1モードの場合と比べ、PWMパルスがオンになる回数、つまりスイッチング回数を2/3にできるので、無駄時間の増加を抑制しつつ、スイッチング損失を低減することができる。
【0176】
なお、上述においては、選択部35Eにおいて、電圧指令ベクトルVs
*の順番を設定したが、生成部38Eによって電圧ベクトルの順番を設定してもよい。この場合、生成部38Eは、例えば、電圧指令ベクトルVs
*とモード信号Smとに基づき、電圧ベクトルの順番を設定する。
【0177】
制御部20Eの処理の流れは、
図16に示す処理の流れと同様であることから、説明を省略する。また、制御部20Eは、制御部20と同様に、マイクロコンピュータや各種の回路を含み、マイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、指令生成部21DおよびPWM信号生成部22Eの制御を実現する。なお、指令生成部21DおよびPWM信号生成部22Eの一部または全部をASICやFPGA等のハードウェアで構成することもできる。
【0178】
[7.第7の実施形態]
次に、第7の実施形態に係る電力変換装置について説明する。第7の実施形態に係る電力変換装置は、PWM信号生成部から出力されるPWM信号に対し状態反転処理を施すことにより、1つの第1期間T1を設定したPWM信号を生成する点で、電力変換装置1Bと異なる。なお、以下においては、電力変換装置1Bと同一機能を有する構成要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0179】
図21は、第6の実施形態に係る電力変換装置1Fの構成例を示す図である。かかる電力変換装置1Eは、電力変換部10Bと制御部20Fとを備え、負荷3Aへ3相交流電力を出力する。以下、制御部20Fの構成例について詳細に説明する。
【0180】
制御部20Fは、
図21に示すように、指令生成部21Aと、PWM信号生成部22Fと、モード切替部26と、状態反転部27とを備える。
【0181】
PWM信号生成部22Fは、キャリア信号生成部30Bと、指令更新部32Bと、比較部34Bと、反転時間演算部39とを備える。かかるPWM信号生成部22Fは、キャリア信号生成部30B、指令更新部32Bおよび比較部34Bにより、PWM信号生成部22Bが第1モードで動作した場合と同様のPWM信号PA、PB、PCを生成する。
【0182】
反転時間演算部39は、キャリア信号Vcのピーク値Vpおよびボトム値Vbと相電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*とに基づいて、PWM信号PA、PB、PCの状態を判定し、PWM信号PA、PB、PCのそれぞれに対する反転時間を演算する。
【0183】
図22は、PWM信号PA、PB、PCのそれぞれに対する反転時間の演算方法の説明図である。ここでは、キャリア信号Vcがピークからボトムへ移行する期間Ts1と、キャリア信号Vcがボトムからピークへ移行する期間Ts2とに分けて説明する。
【0184】
期間Ts1において、反転時間演算部39は、キャリア信号Vcのピーク値Vpと相電圧指令Vu
*との差分ΔVu1を演算し、かかる差分ΔVu1に基づいてゼロ電圧(NNN)の出力期間t0を演算する。また、反転時間演算部39は、相電圧指令Vu
*と相電圧指令Vv
*との差分ΔVv1を演算し、かかる差分ΔVv1に基づいて非ゼロ電圧(PNN)の出力期間t1を演算する。
【0185】
さらに、反転時間演算部39は、相電圧指令Vv
*と相電圧指令Vw
*との差分ΔVw1を演算し、かかる差分ΔVw1に基づいて非ゼロ電圧(PPN)の出力期間t2を演算する。また、反転時間演算部39は、出力期間t0、t1、t2からゼロ電圧ベクトル(PPP)の出力期間t7を演算する。
【0186】
反転時間演算部39は、出力期間t7を用いてPWM信号PAに対する反転時間RAを時間t11から時間t12までの間にし、出力期間t1を用いてPWM信号PBに対する反転時間RBを時間t12から時間t13までの間にする。また、反転時間演算部39は、出力期間t2を用いてPWM信号PCに対する反転時間RCを時間t13から時間t14までの間にする。
【0187】
期間Ts2において、反転時間演算部39は、キャリア信号Vcのボトム値Vbと相電圧指令Vw
*との差分ΔVw2を演算し、かかる差分ΔVw2に基づいてゼロ電圧(PPP)の出力期間t7を演算する。また、反転時間演算部39は、相電圧指令Vw
*と相電圧指令Vv
*との差分ΔVv2を演算し、かかる差分ΔVv2に基づいて非ゼロ電圧(PPN)の出力期間t2を演算する。
【0188】
さらに、反転時間演算部39は、相電圧指令Vv
*と相電圧指令Vu
*との差分ΔVu2を演算し、かかる差分ΔVu2に基づいて非ゼロ電圧(PNN)の出力期間t1を演算する。また、反転時間演算部39は、出力期間t7、t2、t1からゼロ電圧ベクトル(NNN)の出力期間t0を演算する。
【0189】
反転時間演算部39は、出力期間t7を用いてPWM信号PAに対する反転時間RAを時間t16から時間t17までの間にし、出力期間t2を用いてPWM信号PBに対する反転時間RBを時間t15から時間t16までの間にする。また、反転時間演算部39は、出力期間t1を用いてPWM信号PCに対する反転時間RCを時間t14から時間t15までの間にする。
【0190】
モード切替部26は、モード切替部31Bと同様に、モード信号Smにより第1モードと第2モードとを切替える。例えば、モード切替部26は、検出温度Tcが所定値未満である場合に、第1モードを示すモード信号Smを状態反転部27へ出力し、検出温度Tcが所定値以上である場合に、第2モードを示すモード信号Smを状態反転部27へ出力する。
【0191】
状態反転部27は、モード切替部26から第1モードを示すモード信号Smが出力された場合、PWM信号生成部22Eから入力されるPWM信号PA、PB、PCをそのままPWM信号PA’、PB’、PC’として出力する。
【0192】
これにより、制御部20Fは、第1期間T1、第2期間T2および第1期間T1の順に移行する制御パターンのPWM信号PA’、PB’、PC’を相電圧指令Vuvw
*の更新周期Ts毎に繰り返し出力することができる。
【0193】
一方、状態反転部27は、モード切替部26から第2モードを示すモード信号Smが出力された場合、PWM信号PA、PB、PCのそれぞれの一部を反転時間RA、RB、RCに基づいて反転してPWM信号PA’、PB’、PC’を生成して出力する。
【0194】
例えば、状態反転部27は、時間t11〜t12の間と時間t16〜t17の間にPWM信号PAを反転させてPWM信号PA’を生成する。また、状態反転部27は、時間t12〜t13の間と時間t15〜t16の間にPWM信号PBを反転させてPWM信号PB’を生成する。また、状態反転部27は、時間t13〜t14の間と時間t14〜t15の間にPWM信号PCを反転させてPWM信号PC’を生成する。
【0195】
これにより、制御部20Fは、第2モードにおいて、第1期間T1、第2期間T2の順に移行する制御パターンのPWM信号と、第2期間T2、第1期間T1の順に移行する制御パターンのPWM信号とを更新周期Ts毎に交互に出力する。
【0196】
これにより、電力変換装置1Fは、電力変換装置1Bと同様に、第1モードの場合と比べ、PWMパルスがオンになる回数、つまりスイッチング回数を2/3にできるので、無駄時間の増加を抑制しつつ、スイッチング損失を低減することができる。
【0197】
なお、第4の実施形態に係る電力変換装置1Cにおいても電力変換装置1Fと同様に、シフト部33Cに代えて反転時間演算部および状態反転部を設けるようにしてもよい。この場合、反転時間演算部は、キャリア信号Vcのピーク値Vpおよびボトム値Vbと相電圧指令Vuvwpn
*とから各ゼロ電圧(On、Oo、Op)の出力期間および各非ゼロ電圧(an、bn、ap、ap)の出力期間を演算し、これらの出力期間から反転時間RA、RB、RCを演算する。状態反転部は、PWM信号PA、PB、PCのそれぞれの一部を反転時間RA、RB、RCに基づいて反転してPWM信号PA’、PB’、PC’を生成して出力する。
【0198】
また、第1の実施形態に係る電力変換装置1においても電力変換装置1Fと同様に、シフト部33に代えて反転時間演算部および状態反転部を設けるようにしてもよい。この場合、反転時間演算部は、キャリア信号Vc1のピーク値Vpまたはキャリア信号Vc2のボトム値Vbと電圧指令V
*とから各ゼロ電圧の出力期間および各非ゼロ電圧の出力期間を演算し、これらの出力期間から反転時間を演算する。状態反転部は、PWM信号L1、L2、R1、R2のそれぞれの一部を反転時間に基づいて反転する。
【0199】
なお、制御部20Fは、制御部20と同様に、マイクロコンピュータや各種の回路を含み、マイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、指令生成部21A、PWM信号生成部22F、モード切替部26および状態反転部27の制御を実現する。なお、指令生成部21A、PWM信号生成部22F、モード切替部26および状態反転部27の一部または全部をASICやFPGA等のハードウェアで構成することもできる。
【0200】
[8.第8の実施形態]
次に、第8の実施形態に係る電力変換装置について説明する。第8の実施形態に係る電力変換装置は、ゲート駆動回路の出力に対し状態反転処理を施すことにより、1つの第1期間T1を設定したPWM信号を生成する点で、第7の実施形態に係る電力変換装置1Fと異なる。なお、以下においては、第7の実施形態の電力変換装置1Fと同一機能を有する構成要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0201】
図23は、第8の実施形態に係る電力変換装置1Gの構成例を示す図である。
図23に示すように、電力変換装置1Gは、電力変換部10Gと制御部20Gとを備え、負荷3Aへ3相交流電力を出力する。電力変換部10Gは、3相2レベルインバータ回路13Bと、電流検出部12Aとを備える。
【0202】
制御部20Gは、指令生成部21Aと、PWM信号生成部22Fと、モード切替部26と、ゲート駆動回路11Bと、状態反転部27Gとを備える。PWM信号生成部22Fは、PWM信号生成部22Bが第1モードで動作した場合と同様のPWM信号PA、PB、PCを生成する。
【0203】
状態反転部27Gは、モード切替部26から第1モードを示すモード信号Smが出力された場合、ゲート駆動回路11Bから入力されるゲート信号S1〜S6をそのままゲート信号S1’〜S6’として出力する。なお、ゲート信号S1〜S6、S1’〜S6’は、PWM信号であるが、PWM信号PA、PB、PCと区別するために、ゲート信号と記載している。
【0204】
これにより、制御部20Gは、第1期間T1、第2期間T2および第1期間T1の順に移行する制御パターンのPWM信号を相電圧指令Vuvw
*の更新周期Ts毎に繰り返し出力することができる。
【0205】
一方、状態反転部27Gは、モード切替部26から第2モードを示すモード信号Smが出力された場合、ゲート駆動回路11Bから入力されるゲート信号S1〜S6のそれぞれの一部を反転時間RA、RB、RCおよびキャリア信号Vcに基づいて反転してゲート信号S1’〜S6’を生成して出力する。
【0206】
例えば、状態反転部27Gは、時間t11〜t12の間と時間t16〜t17の間にゲート信号S1、S2を反転させてゲート信号S1’、S2’を生成する。また、状態反転部27Gは、時間t12〜t13の間と時間t15〜t16の間にゲート信号S3、S4を反転させてゲート信号S3’、S4’を生成する。また、状態反転部27Gは、時間t13〜t14の間と時間t14〜t15の間にゲート信号S5、S6を反転させてゲート信号S5’、S6’を生成する。
【0207】
これにより、制御部20Gは、第2モードにおいて、第1期間T1、第2期間T2の順に移行する制御パターンのPWM信号と、第2期間T2、第1期間T1の順に移行する制御パターンのPWM信号とを更新周期Ts毎に交互に出力する。
【0208】
したがって、電力変換装置1Gは、電力変換装置1Bと同様に、第1モードの場合と比べ、PWMパルスがオンになる回数、つまりスイッチング回数を2/3にできるので、無駄時間の増加を抑制しつつ、スイッチング損失を低減することができる。
【0209】
なお、上述した実施形態に係る制御部20、20B〜20G、17は、更新周期Tsを変更しない例について説明したが、例えば、モード切り替えに加え、出力電圧(または、電圧指令)の周波数に応じて更新周期Tsを変更することもできる。
【0210】
また、上述した実施形態に係る制御部20、20B〜20G、17は、電力変換装置1、1A〜1Gの温度に基づいてモードの変更を行ったが、例えば、出力電圧(または、電圧指令)の周波数や出力電圧の歪みに基づいてモードの変更を行ってもよい。
【0211】
例えば、電力変換装置1、1A〜1Gのモード切替部26、31、31Bは、出力電圧(または、電圧指令)の周波数が所定値以上の場合に第1モードを選択し、出力電圧(または、電圧指令)の周波数が所定値未満の場合に第2モードを選択する。
【0212】
また、例えば、電力変換装置1、1A〜1Gは、出力電圧の歪みを検出する歪み検出部を備え、モード切替部26、31、31Bは、歪み検出部が検出した出力電圧の歪みが所定値未満の場合に第1モードを選択し、出力電圧の歪みが所定値以上の場合に第2モードを選択する。
【0213】
また、指令生成部21、21A、21C、21Dは、例えば、電力変換部10、10A、10B、10C、10Gの出力電圧の位相や負荷3、3Aの位相(電気角)に同期して回転する直交座標のdq軸成分の電圧指令を用いて電圧指令V
*、Vuvw
*を生成することもできる。
【0214】
また、PWM信号生成部22、22B〜22Gは、第2モードにおいて、キャリア信号のボトムおよびピークのいずれか一方を電圧指令の更新タイミングとすることもできる。
【0215】
また、上述においては、第1の実施形態に係る電力変換装置1は、単相インバータ回路13に対するPWM信号をキャリア比較法により生成したが、第4および第5の実施形態の電力変換装置1C、1Dと同様に空間ベクトル法で生成してもよい。また、上述の実施形態では、3レベルまでのインバータ回路に対するPWM信号について説明したが、3ベルを超えるインバータ回路に対するPWM信号についても同様に、1つの第1期間T1と1つ以上の第2期間T2とが組み合わせられたPWM信号を出力することで、無駄時間の増加を抑制しつつ、スイッチング損失を低減することができる。
【0216】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。