(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱融着性繊維が、ポリエチレン、共重合ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、共重合ポリエチレンテレフタレート、共重合ナイロンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂から成る熱融着性繊維の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の不織布シート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<不織布シート>
本発明の不織布シートは、表面を金属で被覆された繊維と、結着性繊維および結着性粒子からなる群より選ばれる1種以上の結着性物質と含有する不織布シートである。
【0013】
(結着性物質)
本発明においては、結着性繊維および結着性粒子からなる群より選ばれる1種以上の結着性物質と併用することにより、前記、表面を金属で被覆された繊維を接着剤などで被覆することなく、繊維間を結合させて不織布シートとする事が出来る。したがって、不織布シート中における、表面を金属で被覆された繊維の含有量を低く抑えることが出来る。
【0014】
本発明の不織布シートにおいて使用される結着性物質は、不織布シート全体に対して3〜99.9質量%以下の範囲で含有することが出来る。5〜80質量%の範囲がより好ましく、更に好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%の範囲である。結着性物質が3質量%未満ではウェブの強度が弱くハンドリング性に劣り、99.9質量%を越えると必要な量の表面を金属で被覆された繊維を含有することが出来ない。また、結着性繊維や結着性粒子は夫々単独で使用する事も出来る。例えば、フィブリル化繊維と熱融着繊維やフィブリル化繊維と熱融着性粒子、また熱融着性繊維と熱融着性粒子などの様に、2種以上の異なるタイプを組み合わせて使用することができる。また、必要に応じて、水溶性あるいは水分散性の接着剤を形成させた繊維ウェブに付与して接着するケミカルボンド法と組み合わせて使用することもできる。
【0015】
(結着性繊維)
本発明で使用することの出来る結着性繊維としては、熱融着性繊維の他、パルプ状ポリエチレン繊維、パルプ状アクリル系繊維などのフィブリル化合成繊維やパルプ繊維のようなフィブリル化された各種繊維が例示される。
【0016】
本発明における熱融着性繊維は、不織布シートを得るためのバインダー繊維であり、融点が80〜160℃の繊維が好ましく使用される。具体的には、ポリエチレン、共重合ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、共重合ポリエチレンテレフタレート、共重合ナイロン等からなる合繊繊維が好ましく使用される。
【0017】
熱融着性繊維は、単一の樹脂からなる単一繊維であってもよいが、上記に示したような二種以上の樹脂を組み合わせ、高融点の繊維と低融点の熱融着性樹脂を複合させた複合繊維であってもよい。例えば、芯部であるポリプロピレン繊維(融点160℃)を被覆層であるポリエチレン層(融点130℃)で被覆した芯鞘型複合繊維が例示される。芯鞘型複合繊維を使用する場合には、外側の被覆層が溶融し芯部は溶融しない温度、例えば140℃の熱風を加えて被覆層のみを溶融する。この場合、芯部は溶融しないため安定した繊維として残存しているので、溶融接着の際に空隙が損なわれることがなく嵩高の不織布シートを得ることが出来る。また、例えば二種の融点の異なる樹脂を隣接して配置させた、サイドバイサイド型などの複合繊維も使用することが出来る。
【0018】
熱融着性繊維は上記のような種々のものを適宜使用することが出来、単独あるいは2種類以上を併用しても構わない。
【0019】
パルプ状ポリエチレン繊維、パルプ状アクリル系繊維のようなフィブリル化された合成繊維やパルプ繊維は、繊維表面に多くの水素結合部位を持ち、繊維ウェブ内でこれらの繊維が結着することによってシートを形成させることができる。
【0020】
本発明に使用される結着性繊維の太さは、不織布シートの使用目的により適宜選択することが出来、特に限定するものではないが、繊度0.1〜30dtexのものが好ましく使用される。不織布シートを形成する原料繊維の繊度が小さいと不織布シートはしなやかな風合いになりやすい。一方、繊度の大きい原料繊維を用いると、嵩高で腰のある不織布シートにする事が出来る。
【0021】
本発明に使用される結着性繊維の加重平均繊維長は1〜60mmであることが好ましく、2〜20mmであることがより好ましい。更に好ましくは、2〜10mmである。結着性繊維の繊度及び平均繊維長が前記範囲であれば、エアレイドウェブを形成しやすく、均一な結着力や分散状態を得やすい。
【0022】
(結着性粒子)
本発明で使用することの出来る結着性粒子としては、熱融着性粒子の他、ラテックス粒子等が例示される。
【0023】
本発明における熱融着性粒子は、不織布シートを得るためのバインダーであり、加熱融着によってシートを構成する成分を接着、固定できるものであれば、特に限定されない。例えば、融点が80〜160℃の熱可塑性樹脂よりなる熱融着性粒子が好ましく使用される。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステルよりなる群より選ばれる一種以上を用いることが出来る。熱融着性粒子は、夫々単独あるいは2種以上を併用する事が出来、上記に示したような熱融着性繊維をはじめとする1種以上の結着性物質と組み合わせて使用することも出来る。
【0024】
ラテックス粒子としては、例えば、ポリスチレンラテックス粒子等が挙げられる。
【0025】
本発明に使用される結着性粒子としては、粒度5〜500μm程度の粒子が好ましく使用される。
【0026】
本発明の結着性物質としては、熱融着性繊維および/または熱融着性粒子(以下、熱融着性接着剤と称する)を使用することが好ましい。
【0027】
これらの熱融着性接着剤は、加熱融着によってシートを構成する成分を接着、固定できるものであれば、特に限定されない。例えば、融点が80〜160℃の熱融着性接着剤が好ましく使用される。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステルよりなる群より選ばれる一種以上を用いることが出来る。また、熱融着性接着剤としては、熱融着性粒子や熱融着性繊維は、夫々単独あるいは2種以上を併用する事が出来る。
【0028】
熱融着性接着剤としては、熱融着性粉体や熱融着性繊維の形態があり、夫々、単独あるいは、二種以上を併用し、熱融着性粉体と熱融着性繊維を組み合わせて使用しても良い。 熱融着性接着剤は、表面を金属で被覆された繊維を含有する原料繊維中に混合されて繊維ウェブを形成し、このウェブを熱融着性接着剤の融点以上に加熱して加熱融着させシートを形成する事が出来る。また、熱融着性粒子を熱融着性接着剤として使用する場合には、表面を金属で被覆された繊維を含有する原料繊維を解繊混合し、繊維ウェブ形成させた上に熱融着性粒子を付与し、これをその融点以上に加熱して加熱融着させシートを形成することも出来る。
【0029】
熱融着性接着剤を含有する繊維ウェブは、周面に通気性を有する回転ドラムを備えたスルーエアードライヤに接触させて熱処理する方法(熱風循環ロータリードラム方式)や、エアレイドウェブを、ボックスタイプドライヤに通し、エアレイドウェブに熱風を通過させることで熱処理する方法(熱風循環コンベアオーブン方式)などのウェブ中に高温の空気を通過させて熱融着接着剤を融解させてウェブを構成する繊維を結着させるサーマルボンド法等によってシート化される。
【0030】
本発明の不織布シート中の熱融着性接着剤の量は、特に限定するものではないが、不織布シート全体に対して3〜99.9質量%以下の範囲で含有することが出来る。5〜80質量%の範囲がより好ましく、更に好ましくは5〜60質量%、10〜50質量%の範囲が更に好ましい。熱融着性接着剤が5質量%未満ではウェブの強度が弱くハンドリング性に劣り、99.9重量を越えると必要な量の表面を金属で被覆された繊維を含有することが出来ない。
【0031】
(表面を金属で被覆された繊維)
本発明の表面を金属で被覆された繊維は、合成繊維やパルプ等の天然繊維などのベースとなる繊維の表面を金属で被覆した繊維である。表面を金属で被覆された繊維を含有することによって、本発明の不織布シートは、抗菌あるいは防カビ性もしくは両者の機能が付与される。 また、表面を金属で被覆された繊維は導電性を有し、このような導電性の繊維の比率を多くすることによって不織布シートに導電性を付与することも出来る。このような導電性の不織布シートを用いることにより、不織布シートに通電するような用途に使用することが可能であり、また、電磁波シールドや静電気防止などの効果を得ることもできる。
【0032】
本発明に使用することの出来る、表面を金属で被覆された繊維は、不織布シートの使用目的に応じた太さのものを適宜選択することが出来、特に限定するものではないが、繊度0.1〜50dtex程度のものが好ましく使用される。不織布シートの形成に使用される原料繊維の繊度が小さいと、不織布シートはしなやかな風合いになりやすく、繊度の大きい原料繊維を用いると嵩高で腰のある不織布シートにする事が出来る。
【0033】
また、表面を金属で被覆された繊維の繊維長についても、特に限定するものではない。例えば、本発明の好ましい態様であるエアレイド法を用いてウェブを形成する乾式不織布シートである場合、平均荷重繊維長として1〜60mmであることが好ましく、2〜20mmのものが好ましく使用される。表面を金属で被覆された繊維の繊度及び平均繊維長が前記範囲であれば、エアレイドウェブを形成しやすく、均一な結着力や分散状態を得やすい。
【0034】
表面を金属で被覆された繊維は、抗菌効果のある金属イオンを発生し、細菌や真菌に対して持続的に抑える効果があり、特に限定するものではないが、本発明の不織布シート中に0.01〜10質量%含有され、0.01〜5質量%でも種々の用途に充分な抗菌効果を得ることが出来る。
【0035】
また、表面を金属で被覆された繊維の繊度を小さくすると、不織布シート中の当該繊維の配合量が少なくても、十分に抗菌・防カビ効果を得ることができる。例えば、繊度0.1〜10dtex程度であると、不織布シート全体に対し0.01〜4質量%程度の低配合量であっても、優れた抗菌・防カビ効果が得られる。
【0036】
一方、不織布シート中の含有量を多くすることにより、導電性を付与することもでき、電磁シールド性や通電を利用した用途に対応することが出来る。このような場合、不織布シート中に5〜95質量%、好ましくは20質量%以上含有される。
【0037】
(金属で被覆するベースとなる繊維)
表面を金属で被覆された繊維のベースとなる繊維としては、種々の合成繊維あるいは木綿やパルプ等の天然繊維を使用することが出来る。
【0038】
例えば、熱融着性接着剤の融点よりも高い融点を有する繊維が用いられ、ナイロン、ポリエステル、アクリルよりなる合成繊維などが例示される。
【0039】
(繊維を被覆する金属)
繊維を被覆する金属としては、銀、金、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、バラジウム、またはこれらの混合物ないし合金からなるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。抗菌性を付与するための被覆金属としては銀、銅または亜鉛が特に好ましい。銀、銅および亜鉛は、抗菌・防臭効果がきわめて高いことが知られている。また、銀は毒性がきわめて低く、これに加えて、展延性が高く、引っ張りや曲げに対する耐久性が強いといった特性を有している。このため、不織布シートを様々な形に加工しやすくなり、特に好ましい。
【0040】
繊維の表面を金属で被覆する方法は特に限定されるものではなく、蒸着、無電解メッキ等の方法によって繊維表面を金属で被覆したもの等を挙げることができる。
【0041】
無電解メッキによって、ナイロン、ポリエステル、アクリルよりなる合成繊維の表面に、金、銀、銅、ニッケル等の金属をメッキしたものが市販されており、適宜使用することが出来る。
【0042】
(防腐剤)
本発明の不織布シートには、抗菌・防カビ性をより向上させるために、更に防腐剤を含有させることも出来る。
【0043】
当該防腐剤は、固体でも液体でもよく、また、両者を適宜併用することも出来る。
【0044】
固体の防腐剤としては、粉体状、ペレット状、ぺレットを破砕したもの、造粒物、針状、繊維状などが例示されるが、形状によって限定されない。また、有効成分のみのものでもよく、固体状のものとの混合物でも練り込んだものでもよい。
【0045】
液体の防腐剤としては、有効成分が液体に溶解しているものでも分散しているものでも差し支えない。また、当該液体も、特に限定されないが、例えば、水などを挙げることができる。
【0046】
当該防腐剤としては、無機系、有機合成系、天然由来系等の防腐剤が挙げられる。
【0047】
無機系防腐剤としては、例えば、金属イオン系、光触媒系、金属イオンと光触媒を混合した無機ハイブリット品等を挙げることができる。具体的には、ゼオミック(シナネンゼオミック社製)ノバロン(東亞合成社製)、パームケムAg+10’(パームケムアジア社製)等が挙げられる。
【0048】
有機合成系防腐剤としては、例えば、微生物の生合成を阻害するフェノール系、ピリジン・キノリン系、トリアジン系、イソチアゾロン系、アニリド系の他、呼吸阻害(エネルギー代謝阻害)するニトリル系、イミダゾール系、チアゾール系や微生物の生体物質(DNA,RNA,酵素等たんぱく質)の損傷(増殖阻害)するアルコール系、アルデヒド系、ジスルフィド系、チオカーバーメート系、微生物の細胞構造を破壊するカルボン酸系、エステル系、エーテル系、4級アンモニウム塩系、ビグアナイド系、界面活性剤系等を挙げることができる。具体的には、パームケムアジア社製のトップサイドシリーズ、パームケムシリーズやケイアイ化成社製のバイオシリーズ、カビガードシリーズ、カビカットシリーズ、KE,KKシリーズ、大和化学工業社製のアモルデンシリーズ、タンドルシリーズ、アニセロンシリーズ、バイオデンシリーズ、エムアイシー社製のパシフィックモールドシリーズ、三愛石油化学社製のサンアイバックシリーズ、サンアイゾールシリーズ、SK−IPMP等が挙げられる。
【0049】
また、パシフィックモールド-ハイブリットセブン(エムアイシー社製)のような有機合成系と無機系の複合防腐剤も使用できる。
【0050】
天然由来系防腐剤としては、キチン・キトサン、プロポリス由来、ヒノキチオール、茶カテキン、カラシ、わさび抽出物や微生物由来のポリリジンなどがあり、ユーカリ抽出物ユーカリET(王子木材緑化社製)、ユーカリとキトサン由来のOJI-ユーカリ抗菌剤(王子木材緑化社製)、ポリリジン10(一丸ファルコス社製)等が挙げられる。
【0051】
当該防腐剤は、上記のものを単独で使用してもよいし、また、2種以上を併用してもよい。
【0052】
防腐剤の配合量は、細菌や真菌などの微生物の繁殖を持続的に抑制する限り、特に限定されないが、本発明の不織布シート中に0.01〜15質量%程度含有される。
【0053】
(その他の繊維)
本発明の不織布シートには、必要に応じて、ガラス繊維、炭素繊維などの各種無機繊維や、高融点樹脂合成繊維あるいは水溶性、生分解性などの性質を有するような各種合成繊維など、表面を金属で被覆された繊維や結着性繊維以外の繊維も適宜併用する事が出来る。
【0054】
(その他の材料)
本発明の不織布シートには、必要に応じて、分散剤、撥水剤、界面活性剤、着色剤、難燃剤、無機顔料などの材料を付与あるいは含有させることもできる。
【0055】
(不織布シートの坪量)
本発明の不織布シートの坪量は特に限定されるものではなく、例えば5〜5000g/m
2の範囲、より好ましくは5〜3000g/m
2の範囲で適宜決定することが出来る。坪量は不織布シートの用途に応じて好適な範囲があり、例えば、マスクに使用する場合には、フィット性の点から薄手の不織布シートとする事が好ましく、5〜〜100g/m
2の範囲、より好ましくは5〜50g/m
2の範囲で調節される。また、エアフィルター用途の場合、好ましい坪量は15〜700g/m
2であり、坪量が少なすぎると、不織布の形態が維持しにくくなる傾向がある。逆に坪量が多すぎると不織布の圧力損失が上昇する傾向がある。 一方、揮散体に用いる場合は、更に大きな坪量で使用されることがあり、例えば、100〜3000g/m
2の範囲が用いられる。
【0056】
<不織布シートの製造方法>
不織布シートの製造は、原料を水に分散して抄紙と同様の方法で繊維ウェブを形成する湿式法、原料を空気中で混合解繊し気流にエアレイド法、ニードルパンチ法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。パルプ状ポリエチレン繊維、パルプ状アクリル系繊維のようなフィブリル化された合成繊維やパルプ繊維は、繊維表面に多くの水素結合部位を持ち、繊維ウェブ内でこれらの繊維が結着することによってシートを形成させることができる。これらを用いてシートを形成させる場合には、原料繊維を水に分散し、水を介在させてシート化する湿式法が使用される。また、表面が金属で被覆された繊維と結着性物質、そして適宜選択された基材となる繊維とを空気中で混合解繊してウェブが形成されるエアレイド法からなる乾式不織布は、結着性物質によって金属メッキ繊維の表面が覆われて抗菌防カビ性能が損なわれることを避けるために、特に好ましく用いられる。乾式不織布の製造方法としては、エアレイド法の他にカーディング法を挙げることができるが、金属メッキ表面との接触を増やすという観点から考えると、空隙の多いウェブの形成に適したエアレイド法による乾式不織布が特に好ましい。
【0057】
(エアレイド法による乾式不織布の製造)
さらにエアレイド法による乾式不織布の製造方法の具体例の一例を示す。この製造方法は、混合工程とウェブ形成工程と結着工程とを有する。
【0058】
(混合工程)
混合工程は、機械的に解繊された金属メッキ繊維と結着性物質や基材となる繊維と空気中で均一に混合してウェブ原料を得る工程である。固体状の防腐剤を配合する場合は、混合工程で繊維とともに空気中で均一に混合し、ウェブ原料に配合することが出来る。
【0059】
混合に際しては、繊維同士を攪拌することが好ましく、攪拌機を使用しても良いが、空気流を利用して混合しても良い。
【0060】
(ウェブ形成工程)
ウェブ形成工程は、エアレイド法によってウェブ原料からエアレイドウェブを得る工程である。ここで、エアレイド法とは、空気流を利用して繊維を3次元的にランダムに堆積させてウェブを形成する方法である。
【0061】
本実施形態におけるウェブ形成工程では、例えば、コンベアと透気性無端ベルトと繊維混合物供給手段と第1のキャリアシート供給手段と第2のキャリアシート供給手段とサクションボックスと備えたウェブ形成装置を用いる。
【0062】
該ウェブ形成装置の繊維混合物供給手段は、透気性無端ベルトの上方に設置され、第1のキャリアシート供給手段は透気性無端ベルトの上流に設置され、第2のキャリアシート供給手段は透気性無端ベルトの下流に設置されている。第1のキャリアシートは、透気性無端ベルトの上に接触するように第1のキャリアシート供給手段から繰り出される。
【0063】
固体の防腐剤を配合する場合は、ここで、第1のキャリアシートの上に供給装置から配合することも出来る。この場合、キャリアシートとウェブの間に防腐剤を局在化させることが可能である。
【0064】
透気性無端ベルトは、複数のローラーによって構成されるコンベアに装着されて回転する。サクションボックスによって透気性無端ベルトを内側から吸引しながら、繊維混合物供給手段から空気流と共に繊維混合物を下降させ、透気性無端ベルト上の第1のキャリアシート上に繊維混合物を落下、堆積させ、エアレイドウェブを形成する。
【0065】
また、固体の防腐剤を配合する場合は、ここで供給装置から配合することも出来る。この場合も、キャリアシートとウェブの間に防腐剤を局在化させることが可能である。次いで、該エアレイドウェブの上に、第2のキャリアシート供給手段より第2のキャリアシートを供給して、エアレイドウェブ含有積層シートを得る。
【0066】
(結着工程)
結着工程は、エアレイドウェブを加熱処理して、結着性物質によって結着させる工程である。
【0067】
エアレイドウェブの加熱処理としては、熱風処理、赤外線照射処理が挙げられ、装置が低コストである点では、熱風処理が好ましい。
【0068】
熱風処理としては、エアレイドウェブを、周面に通気性を有する回転ドラムを備えたスルーエアードライヤに接触させて熱処理する方法(熱風循環ロータリードラム方式)や、エアレイドウェブを、ボックスタイプドライヤに通し、エアレイドウェブに熱風を通過させることで熱処理する方法(熱風循環コンベアオーブン方式)などが例示される。
【0069】
本実施形態のように、エアレイドウェブが第1のキャリアシート及び第2のキャリアシートに挟まれて積層シートになっている場合には、積層シートのまま熱風処理する事も出来、この場合、第1のキャリアシート及び第2のキャリアシートは、熱風処理後にエアレイドウェブから剥離することが出来る。
【0070】
なお、液体の防腐剤を配合する場合は、結着工程の前後に、スプレー等で配合させることが出来る。タイミングとしては、配合したい場所(キャリアシートの上か、ウェブの上か)によって適宜決定できる。また、結着工程の後に配合する場合は、必要に応じて乾燥工程を設ける。
【0071】
エアレイドウェブが結着性物質以外に、熱可塑性樹脂を含有する場合には、結着性物質は溶融するが、熱可塑性樹脂は溶融しない温度で加熱処理することが好ましい。このような温度で加熱処理をすれば、結着性物質によって熱可塑性繊維同士を確実に結着しつつ、不織布シートを成形する前に熱可塑性繊維が溶融することを抑制できる。
【0072】
エアレイドウェブが熱可塑性樹脂を含有しない場合には、加熱処理温度は、結着性物質が溶融する温度とすればよい。
【0073】
結着工程の後には、プレシートの厚み及び密度を微調整する目的で、加熱ロールなどを用いて圧縮処理してもよい。
【0074】
(他の実施形態)
なお、本発明のプレシートの製造方法は、上記例示の製造方法に限定されるものではない。例えば、上記例示では、第1のキャリアシート及び第2のキャリアシートを用いたが、必ずしもこれらを用いなくても構わない。また、キャリアシートとして、熱可塑性樹脂を含有する不織布シートを用いて、結着工程の熱風処理や加熱ロールによる圧縮処理によって、本発明の不織布シートを含む不織布積層体とする事も出来る。
【0075】
<適用菌種>
本発明の不織布シートは、抗菌効果のある金属イオンを発生することにより、細菌や真菌の増殖を、持続的に抑制および/または防止することができる。
【0076】
前記細菌類としては、例えばグラム陰性桿菌、グラム陽性桿菌、グラム陰性球菌、グラム陽性球菌等が挙げられる。
【0077】
グラム陰性桿菌としては、具体的には大腸菌(Eshericha coli)に代表されるエスケリキア属(Eshericha属)、シュードモナス属(Pseudomonas属)、セラチア属 (Serratia属)、シゲラ属(Shigella属)、サルモネラ属(Salmonella属)、クレブシエラ属(Klebsiella属)、プロテウス属(Proteus属)、エルシニア属(Yersinia属)、コレラ菌(V.cholerae属)、腸炎ビブリオ(Vparahaemolyticus属)、ヘモフィルス属(Haemophilus属)、レジオネラ属(Legionella属)、ボルデテラ属(Bordetella属)、ブルセラ属(Brucella属)、野兎病菌(Francisella tularensis)、バクテロイデス属(Bacteroides)、インフルエンザ菌、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ミラビリス変形菌(Proteus mirabilis)等が挙げられる。
【0078】
グラム陰性球菌としては、具体的にはナイセリア属(Neisseria属)、ブランハメラ属(Branhamella属)等が挙げられる。
【0079】
グラム陽性桿菌としては、具体的にはバシラス属(Bacillus属)、クロストリジウム属(Clostridium属)リステリア属(Listeria属)等が挙げられる。
【0080】
グラム陽性球菌としては、具体的には黄色ブドウ球菌などのブドウ球菌属(Staphylococcus)、レンサ球菌属(Streptococcus)、腸球菌属(Enterococcus)、レンサ球菌属(Streptococcus属)等が挙げられる。
【0081】
前記真菌類としては、例えばカビ、酵母等が挙げられる。
【0082】
カビとしては、具体的には、ペニシリウム属(Penicillium属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アウレオバシディウム(Aureobasidium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、グリオクラディウム属(Gliocladium属)、アスペルギルス属(Aspergilosis属)、ユーロチウム属(Eurotium属)、リゾープス属(Rhizopus属)、トリコデルマ属(Trichoderma属)、オーレオバシジウム属(Aureobasidium属)、ケトミウム属(Chaetomium属)、ミロテシウム属(Myrothecium属)、フザリウム属(Fusarium属)、エクソフィアラ属(Exophiala属)、ドレクスレラ属(Drechslera属)、アクレモニウム属(Acremonium属)、トリコフィトン属(Trichophyton)、ムコール属(Mucor属)、セハロスポリウム属(Cephalosporium属)等が挙げられる。
【0083】
酵母としては、具体的にはロドトルラ属(Rhodotorula属)、サッカロマイセス属(Saccharomyces属)、カンジダ属(Candida属)、トルロプシス属(Torulopsis属)、ジゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces属)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces属)、ピチア属(Pichia属)、ヤロウィア属(Yarrowia属)、ハンセヌラ属(Hansenula属)、クルイウェロマイセス属(Kluyveromyces属)、デバリオマイセス属(Debaryomyces)、スポロボロマイセス属(Sporobolomyces属)等が挙げられる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0085】
[実施例1]
<不織布シートの製造>
パルプ状ポリエチレン繊維(商品名:SWP E780、繊維長1.6mm、三井化学株式会社製)20%、単一型のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)繊維(商品名:テピルス TA04N 繊度3.3dtex、繊維長5mm、融点約260℃、帝人株式会社製)40%、芯鞘型のPET系熱融着繊維(商品名:メルティー 繊維長5mm 芯部の融点255℃、鞘部の融点130℃、日本エステル株式会社製)40%および、銀メッキナイロン繊維(商品名:AGposs 銀含有量0.2〜25%、繊維長5mm 三ッ富士繊維工業株式会社製)を0.5%配合し、空気流により均一に混合して繊維混合物を得た。次いで、コンベアに装着されて走行する透気性無端ベルトの上に、第1のキャリアシート供給手段によって、PETスパンボンド不織布からなる第1のキャリアシートを繰り出し、サクションボックスによって透気性無端ベルトを吸引しながら、該第1のキャリアシートの上に、繊維混合物供給手段から空気流と共に上記繊維混合物を落下堆積させて、単位面積あたりの500g/m
2となるように供給してエアレイドウェブを形成させた。形成したエアレイドウェブを140℃の熱風を通過させる熱循環コンベアオーブンで熱処理してシート化し、実施例1の不織布シートを得た。
【0086】
[実施例2]
銀メッキナイロン繊維(商品名:AGposs)の配合量を1.0%とした以外は、実施例1と同様に不織布シートを得た。
【0087】
[比較例1]
銀メッキナイロン繊維(商品名:AGposs)の配合量を0%とした以外は、実施例1と同様に不織布シートを得た。
【0088】
<実施例1、2および比較例1の評価方法>
抗菌性(静菌活性値2.2以上)及び制菌性(殺菌活性値0以上)については、JIS L1902の菌液吸収法にて評価した。
【0089】
供試菌は、黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)と大腸菌(グラム陰性菌)の2種で行った。また、抗菌の持続性を評価するため、洗濯10回後(JIS L0217,103号吊干し、但しJAFET標準配合洗剤を使用)と耐光処理(抗菌製品技術協議会持続性基準の区分1に準拠)後についても、抗菌試験を行った。
【0090】
カビ抵抗性については、JIS Z2911の湿式法にて評価した。
【0091】
供試菌は、Aspergillus niger(NBRC 105649)、Penicillium citrinum(NBRC6352)、Cheatomium globosum(NBRC6347)、Myrothecium verrucaria(NBRC6133)を用いた。
【0092】
評価結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
銀メッキナイロン繊維を配合した実施例1,2の不織布シートは、抗菌性・制菌性・防カビ性に優れていた。また、洗濯10回・耐光処理後の抗菌性も優れていた。
【0095】
銀メッキナイロン繊維を配合していない比較例1では、抗菌性・制菌性・防カビ性が劣った。
【0096】
[実施例3]
銀メッキナイロン繊維(商品名:AGposs)を繊維重量に対して1.0%、抗菌・防腐剤(商品名:アモルデンSK−950、大和化学工業製)を繊維重量に対し0.3%配合した以外は、実施例1と同様に不織布シートを得た。なお、キャリアシートとしては、レーヨンスパンレース(#7128、シンワ株式会社製)を用い、最終的に剥離せず積層した状態とした。
【0097】
[実施例4]
防腐剤(商品名:アモルデンSK−2OH、大和化学工業製)を繊維重量に対し0.3%配合した以外は、実施例3と同様にキャリアシート積層不織布シートを得た。
【0098】
[実施例5]
防腐剤(商品名:アモルデンSK−2OH、大和化学工業製)を繊維重量に対し0.7%配合した以外は、実施例4と同様にキャリアシート積層不織布シートを得た。
【0099】
<実施例3〜5および比較例1の評価方法>
抗菌性(静菌活性値2.2以上)及び制菌性(殺菌活性値0以上)については、JIS L1902の菌液吸収法にて評価した。
【0100】
供試菌は、黄色ブドウ球菌、大腸菌、セラチア菌、緑膿菌の4種で行った。また、抗菌の持続性を評価するため、湿った状態を維持するために、流水中に浸漬して1000時間後・3000時間後の抗菌試験を行った。
【0101】
カビ抵抗性については、JIS Z2911の繊維製品の試験の乾式法にて評価した。
【0102】
評価結果を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
銀メッキナイロン繊維および防腐剤を配合した実施例3,4,5の不織布シート(キャリアシート積層タイプ)は、抗菌性・制菌性・防カビ性に優れていた。また、湿った状態で保持した場合の抗菌性も優れていた。
【0105】
銀メッキナイロン繊維を配合していない比較例1では、抗菌性・制菌性・防カビ性が劣った。