(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2取付部が前記第1固定部側にかつ前記第1取付部が前記第2固定部側に配置されて、前記第2取付部の突起が前記干渉部の先端に接触するとき、前記第2取付部の前記第2挿通孔と前記第1固定部の前記第1固定用孔との位置がずれる
請求項3〜5のいずれか一項に記載の昇降装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10に示されるように、ドラム140は、支持板に設けられた収容部150に収容される。収容部150は、ドラム140を囲む周壁170と、蓋体160とを備える。蓋体160には2つの締結用の挿通孔161,162が設けられている。2つの挿通孔161,162は、蓋体160の中心点に対して回転対称位置にそれぞれ配置される。このうちの一方は、蓋体160の取り付けの基準孔として構成される。このような蓋体160は、所定の向きで収容部150の開口部に配置され、ねじ部材により締結される。しかし、蓋体160は回転対称性(2回対称性)を有するため、蓋体160が逆向きで収容部150に配置される虞がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業時において、ドラムの収容部の開口部を閉鎖するための蓋体の誤配置が抑制される昇降装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する昇降装置は、支持板と、この支持板に対して移動可能に設けられて窓ガラスを昇降させるキャリアと、前記キャリアを移動させるための駆動機構とを備え、前記駆動機構は、前記キャリアに接続されるケーブルと、前記ケーブルを引っ張るドラムとを備え、前記支持板には、前記ドラムが配置される収容部が設けられ、前記収容部は、前記ドラムを囲む周壁と、第1及び第2取付部を有して前記収容部の開口部を閉鎖する蓋体と、前記蓋体の前記第1及び第2取付部それぞれに対応して設けられた第1及び第2固定部とを備え、前記第1及び第2固定部には第1及び第2固定用孔がそれぞれ設けられ、前記蓋体の前記第1及び第2取付部は回転対称位置に配置され、前記第1取付部には、前記蓋体の取り付け基準としての第1挿通孔が設けられ、前記第2取付部には第2挿通孔が設けられ、前記第2取付部の端縁には前記第2固定部の側面に接触可能な突起が設けられ、前記第1取付部と前記第1固定部とがねじ部材により締結され、前記第2取付部と前記第2固定部とがねじ部材により締結される。
【0008】
蓋体が回転対称構造を有する場合は蓋体の向きを把握することが難しい。この点、上記構成では、蓋体の第2取付部に突起が設けられているため、蓋体の向きを容易に把握することができる。このため、蓋体の誤配置が抑制される。
【0009】
上記昇降装置において、前記第2固定部は、前記収容部の前記周壁から径方向に突出するように設けられ、前記突起は、前記第2固定部の側面において周方向上手側の部分に接触可能なように設けられている。
【0010】
蓋体を収容部に取り付けるとき、まず、取り付けの基準となる第1取付部と第1固定部とをねじ部材で締結し、次いで、第2取付部と第2固定部とをねじ部材で締結する。ねじ部材で第1取付部を第1固定部に締結するとき、蓋体に加わる右回りのトルクにより蓋体が右回りに回転し、第2取付部が当初の位置からずれる。そうすると、第2取付部の第2挿通孔と第2固定部の第2固定用孔との位置が互いにずれるようになり、ねじ部材を挿通し難くなる。
【0011】
この点、上記構成によれば、突起が、第2固定部の側面において周方向上手側の部分に接触可能なように、第2取付部に設けられており、蓋体が右回りに回転するときにこの突起が第2固定部に当接するため、蓋体の回転が制限される。これにより、ねじ部材が挿通し難くなることが抑制される。
【0012】
上記昇降装置において、前記第1固定部は、前記収容部の前記周壁から径方向に突出するように設けられ、前記第1固定部には、その側面における周方向上手側の部分から突出する干渉部が設けられている。
【0013】
この構成によれば、蓋体が逆向きに配置されて第2取付部が第1固定部側に配置された場合、第2取付部の突起部と第1固定部の干渉部とが互いに干渉し合う。このため、蓋体が逆向きに配置されたことを作業者に気付かせることができる。
【0014】
上記昇降装置において、前記収容部は、前記ケーブルを案内する2本のガイド壁のうちの一方のガイド壁の途中に配置され、前記第1固定部と前記第2固定部とは、前記一方のガイド壁に沿って配置されている。
【0015】
ドラムが回転するときにキャリアが停止するとケーブルを介してドラムに大きな力が加わる。この力によりドラム及び蓋体が傾き、この力が第1及び第2取付部に伝達される。しかし、第1及び第2取付部に加わる力が均等でなく、一方に過大に力が加わると、当該取付部が変形する。このような点を鑑み、上記構成においては、第1及び第2取付部が締結される第1及び第2固定部がガイド壁に沿って(すなわちケーブルに沿って)配置される。このため、第1及び第2取付部に加わる力が略均等になり、第1及び第2取付部の変形が抑制される。
【0016】
上記昇降装置において、前記第1固定部は、前記周壁を右回りに辿って行くときに前記周壁が前記一方のガイド壁に対して外から内に交差する部分に設けられ、前記第2固定部は、前記周壁を右回りに辿って行くときに前記周壁が前記一方のガイド壁に対して内から外へと交差する部分に設けられている。
【0017】
この構成によれば、紙面上で上下に延びるケーブルガイド(2本のガイド壁により構成されるガイド)に対して左側のガイド壁側に収容部が配置される場合には、収容部の上側に第1固定部が、収容部の下側に第2固定部が配置されるようになる。この場合、干渉部は、第1固定部の側面から突出し、ガイド壁から離れる方向に延びるため、干渉部とケーブルとの干渉が生じない。
【0018】
また、上記構成によれば、紙面上で上下に延びるケーブルガイドに対して右側のガイド壁側に収容部が配置される場合には、収容部の下側に第1固定部が、収容部の上側に第2固定部が配置されるようになる。この場合、干渉部は、第1固定部の側面から突出し、ガイド壁から離れる方向に延びるため、干渉部とケーブルとの干渉が生じない。すなわち、上記構成によれば、ケーブルガイドと収容部との配置関係に関わらず、干渉部とケーブルとの干渉は生じない。
【0019】
上記昇降装置において、前記第2取付部が前記第1固定部側にかつ前記第1取付部が前記第2固定部側に配置されて、前記第2取付部の突起が前記干渉部の先端に接触するとき、前記第2取付部の前記第2挿通孔と前記第1固定部の前記第1固定用孔との位置がずれる。
【0020】
この構成によれば、蓋体が逆向きに配置されて第2取付部が第1固定部に配置されると、第2取付部の第2挿通孔と第1固定部の第1固定用孔との位置がずれるため、第1固定部にねじ部材をねじ込むことができなくなる。これにより、誤配置の状態で蓋体がねじ部材で締結されてしまうことが抑制される。
【発明の効果】
【0021】
上記構成の昇降装置では、組立時において蓋体の誤配置が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜
図9を参照して、車両のサイドドアに装着される昇降装置について説明する。
図1に、車両のサイドドア1の模式図を示す。
図1は、内側(座席側)から見たサイドドア1の図である。
【0024】
車両のサイドドア1(すなわち車両用ドア)は、サイドドア1の外側を構成するアウターパネル2と、サイドドア1の内側を構成するインナーパネル3と、アウターパネル2とインナーパネル3との間に配置される昇降装置4と、昇降装置4により昇降する窓ガラス5とを備える。昇降装置4には、昇降装置4を駆動するためのモータユニット6が取り付けられている。
【0025】
インナーパネル3の中央部には部品組付け用の開口部3eが設けられている。
インナーパネル3の外面には昇降装置4が取り付けられている。具体的には、昇降装置4の上部がインナーパネル3の上辺部3a(開口部3eの上側部分)にボルト等の締結部材により締結される。昇降装置4の下部がインナーパネル3の下辺部3b(開口部3eの下側部分)にボルト等の締結部材により締結される。
【0026】
また、以降の説明において、昇降装置4の「内面」または「内側」とは、昇降装置4を車両のサイドドア1に装着した場合において座席側に配置される「面」または「側」を示す。昇降装置4の「外面」または「外側」とは、昇降装置4を車両のサイドドア1に装着した場合において外側に配置される「面」または「側」を示す。
【0027】
また、昇降装置4の「前側」とは、昇降装置4を車両のサイドドア1に装着した場合において車両の前側に配置される「側」を示す。また、昇降装置4の「後側」とは、昇降装置4を車両のサイドドア1に装着した場合において車両の後側に配置される「側」を示す。また、「前方」とは、昇降装置4を車両のサイドドア1に装着した場合において車両が前進する方向と一致する方向をいい、「後方」とは、昇降装置4を車両のサイドドア1に装着した場合において車両が後進する方向と一致する方向をいう。
【0028】
また、昇降装置4の「上側」または「上部」とは、昇降装置4を車両のサイドドア1に装着した場合において上側に配置される「側」または「部分」を示す。また、昇降装置4の「下側」または「下部」とは、昇降装置4を車両のサイドドア1に装着した場合において下側に配置される「側」または「部分」を示す。
【0029】
図2に、外側から見た昇降装置4の模式図を示す。
図3に、昇降装置4の側面(
図2の矢印X方向からみた側面)の模式図を示す。
図2に示すように、昇降装置4は、窓ガラス5を昇降させるための駆動機構20と、駆動機構20を支持する支持板10と、支持板10に摺動可能に取り付けられて駆動機構20の動力により昇降する2個のキャリア31,32とを備えている。以下、昇降装置4の前側に配置されるキャリアを「第1キャリア31」と呼び、昇降装置4の後側に配置されるキャリアを「第2キャリア32」と呼ぶものとする。
【0030】
支持板10は、窓ガラス5に沿うように構成されている。
例えば、窓ガラス5が外側に膨らむように湾曲する場合には、支持板10は、
図3に示すように、外側に膨らむように構成される。すなわち、支持板10は、湾曲した窓ガラス5が上下移動するときに窓ガラス5と支持板10との間の間隙距離が一定に保たれるように、構成される。このような支持板10は、例えば、樹脂により形成される。樹脂製の支持板10では、成形性の向上のために幾つかの開口部14が設けられている。
【0031】
支持板10は、前方に配置されて上下方向に延びる前側部10dと、後方に配置されて上下方向に延びる後側部10eと、前側部10dと後側部10eとの間に配置される中央部10cとを有する。
【0032】
支持板10の前方側端(前側部10dの前側)には、第1キャリア31を案内する第1ガイドレール11が設けられ、支持板10の後方側端(後側部10eの後側)には、第2キャリア32を案内する第2ガイドレール12が設けられている。
【0033】
第1及び第2ガイドレール11,12は、支持板10と一体成形される。
第1及び第2ガイドレール11,12は互いに平行(または略平行)に、かつ窓ガラス5の昇降方向に沿うように両ガイドレール11,12が斜めに構成される。「斜め」とは、昇降装置4を車両のサイドドア1に装着した場合の鉛直方向に対して斜めになることを示す。
【0034】
支持板10の外面10a側には、駆動機構20が設けられている。
支持板10の内面10b側(
図1参照)には、駆動機構20を駆動するためのモータユニット6が配置されている。モータユニット6は、減速機やギア機構を有する。減速機(またはギア機構)の出力軸(以下、「モータ出力軸6a」という。
図4参照。)から出力される動力は、駆動機構20に伝達される。モータ出力軸6aは、支持板10を貫通する孔を挿通して支持板10の外面10a側に突出する。
【0035】
第1キャリア31及び第2キャリア32は次のように構成される。
第1キャリア31は、第1ガイドレール11に摺動可能に取り付けられている。第2キャリア32は、第2ガイドレール12に摺動可能に取り付けられている。
【0036】
第1キャリア31は、第1ガイドレール11に取り付けられるキャリアブラケット33と、キャリアブラケット33に取り付けられて窓ガラス5を保持するホルダ34と、ストッパ13に当接する当接部35とを備えている。当接部35は樹脂またはゴム製の緩衝部材により形成されている。第2キャリア32は、当接部35が設けられていない点を除いて、第1キャリア31に準じた構造を有する。
【0037】
駆動機構20は、3本のケーブル(以下、それぞれを「第1ケーブル25」、「第2ケーブル26」、「第3ケーブル27」という。)と、第1及び第2ケーブル25,26を引っ張るドラム28と、第1〜第3ケーブル25〜27を案内する4個のプーリ(以下、それぞれ「第1プーリ21」〜「第4プーリ24」という。)とを備えている。
【0038】
ドラム28は、支持板10の中央部に配置された収容部50に収容されている。ドラム28は、モータユニット6のモータ出力軸6a(
図4参照)に接続され、モータユニット6の駆動により回転する。
【0039】
第1〜第4プーリ21〜24は次に示すように支持板10に回転可能に取り付けられている。第1プーリ21は、支持板10の前側部10dの下部に取り付けられている。第2プーリ22は、支持板10の前側部10dの上部に取り付けられている。第3プーリ23は、支持板10の後側部10eの下部に取り付けられている。第4プーリ24は、支持板10の後側部10eの上部に取り付けられている。
【0040】
第1ケーブル25は、第1キャリア31の下端部とドラム28とを互いに接続する。
具体的には、第1ケーブル25は、一端部で第1キャリア31の下端部に接続されて下方に引っ張られ、中間部(一端部と他端部との間の部分。以下、同じ。)で第1プーリ21を介して上方に折り返され、他端部でドラム28に接続される。
【0041】
第2ケーブル26は、第2キャリア32の上端部とドラム28とを互いに接続する。
具体的には、第2ケーブル26は、一端部で第2キャリア32の上端部に接続されて上方に引っ張られ、中間部で第4プーリ24を介して下方に折り返され、他端部でドラム28に接続される。
【0042】
第3ケーブル27は、第1キャリア31と第2キャリア32とを接続する。
具体的には、第3ケーブル27は、一端部で第1キャリア31の上端部に接続されて上方に引っ張られ、一端部寄り部分で第2プーリ22を介して下方に折り返され、他端部寄り部分で第3プーリ23を介して上方に折り返され、他端部で第2キャリア32の下端部に接続される。
【0043】
これらケーブル25,26,27は、支持板10の中央部において2本のガイド壁により案内されている。例えば、第1ガイド壁15と第2ガイド壁16との間の通路にケーブル25,26が配置される。
【0044】
駆動機構20の作用を説明する。
ドラム28が、第1ケーブル25をドラム28自身に巻き込むように回転すると(以下、この回転方向を「第1方向」という。)、第1キャリア31は下方に移動する。すると、第1キャリア31の下方への移動に伴い第3ケーブル27が引っ張られるため、第2キャリア32が第1キャリア31の移動とともに下方に移動する。すなわち、ドラム28の第1方向の回転に基づいて第1キャリア31と第2キャリア32とが同じ距離だけ下方に移動する。
【0045】
ドラム28が、第2ケーブル26をドラム28自身に巻き込むように回転すると(以下、この回転方向を「第2方向」という。)、第2キャリア32は上方に移動する。すると、第2キャリア32の上方への移動に伴い第3ケーブル27が引っ張られるため、第1キャリア31が第2キャリア32の移動とともに上方に移動する。すなわち、ドラム28の第2方向の回転に基づいて第1キャリア31と第2キャリア32とが同じ距離だけ上方に移動する。
【0046】
図4〜
図9を参照して、ドラム28が収容される収容部50の構造について説明する。
図4に、収容部50の分解図を示す。
図5(a)に第1及び第2固定部55、56と第1ガイド壁15との配置関係を示す。
図5(b)に収容部50の平面図を示す。
図6に、
図5(b)のA−A線に沿う第1固定部55の断面図を示す。
図7に、
図5(b)のB−B線に沿う第2固定部56の断面図を示す。
【0047】
収容部50は、第1ガイド壁15の途中部分に配置される。
収容部50は、ドラム28を囲む周壁51と、開口部52を閉鎖する蓋体60と、蓋体60を固定するための第1及び第2固定部55,56とを備える。第1固定部55は、蓋体60の第1取付部63が固定される部分である。第2固定部56は、蓋体60の第2取付部64が固定される部分である。
【0048】
周壁51は、第1ガイド壁15よりも外側に配置される第1周壁51aと、第1ガイド壁15よりも内側に配置される第2周壁51bとにより構成される。第2周壁51bには、第1ケーブル25が出入りする第1ケーブル出入口53と、第2ケーブル26が出入りする第2ケーブル出入口54とが設けられている。
【0049】
図5(a)に示すように、第1固定部55と第2固定部56とは、第1ガイド壁15に沿うように配列されている。
第1固定部55は、周壁51を右回り(矢印R1参照)に辿って行った場合にこの周壁51が第1ガイド壁15に対してガイド領域17の外から内へと交差する部分に設けられる。また、第1固定部55は、周壁51から径方向に突出するように設けられる。
【0050】
第1固定部55には、蓋体60を取り付けるときの基準孔としての第1固定用孔55a(ねじ孔)が設けられている。基準孔とは、蓋体60を位置決めするための孔である。
また、
図5(a)に示すように、第1固定部55には干渉部57が設けられている。干渉部57は、側面55bにおいて周方向上手側の部分から突出する。周方向上手側とは、側面55bを右回り(矢印R2参照)に辿るときの上手側の部分を示す。
【0051】
図6に、干渉部57の断面を示す。このように、干渉部57は、第1固定部55の延長部として構成される。この干渉部57は、第1固定部55と略同じ高さ(支持板10の外面10aからの高さ)を有する。
【0052】
干渉部57の長さ(第1固定部55の側面55bからの長さLA)は次のように構成されることが好ましい。蓋体60が逆向きに配置されて(
図8参照)、蓋体60の第2取付部64の突起65が干渉部57の先端に接触するとき、第2取付部64の第2挿通孔64aと第1固定部55の第1固定用孔55aとの位置がずれるように構成される。
【0053】
例えば、第1固定用孔55aの中心点から干渉部57の先端までの長さLB(
図5(a)参照。長さLBは長さLAを含む長さ。)は、蓋体60の第2挿通孔64aの中心点から突起65の内端面65aまでの長さLC(
図5(b)参照)よりも長くなるように設定される。更には、上記長さLBは、上記長さLCに第2挿通孔64aの短軸長さの半分を加えた長さよりも長いことが好ましい。
【0054】
第2固定部56は、周壁51を右回り(矢印R1参照)に辿って行った場合にこの周壁51が第1ガイド壁15に対してガイド領域17の内から外へと交差する部分に設けられている。また、第2固定部56は、第1固定部55と同様に、周壁51から径方向に突出するように設けられている。この第2固定部56には、蓋体60を取り付けるための第2固定用孔56a(ねじ孔)が設けられている。
【0055】
蓋体60は次のように構成されている(
図4参照)。
蓋体60は、本体部61と、本体部61から延びる第1及び第2取付部63,64とを有する。蓋体60は、例えば、金属で形成される。本体部61には、モータ出力軸6aを受ける軸受62が設けられている。
【0056】
第1取付部63は、本体部61から径方向に突出する。
第1取付部63には、基準孔としての第1挿通孔63aが設けられている。この第1挿通孔63aは円形孔として構成される。
【0057】
第2取付部64は、本体部61から径方向に突出する。
第2取付部64には、副基準孔としての第2挿通孔64aが設けられている。例えば、第2挿通孔64aは長円または楕円として構成される。この場合、長軸が径方向に沿うように第2挿通孔64aが形成される。
【0058】
また、第2取付部64には突起65が設けられている。
突起65は、第2固定部56の側面56bにおいて周方向上手側の部分に接触可能に設けられる。第2固定部56の側面56bにおいて周方向上手側の部分とは、側面56bを右回り(
図5(a)の矢印R3参照)に辿るときの上手側の部分を示す。
【0059】
接触可能とは、第1固定部55と第1取付部63だけがねじ部材で締結されて蓋体60が回転可能である状態のときに、蓋体60の回転により、突起65を、第2固定部56の側面56bにおける周方向上手側の部分に接触させることが可能であることを示す。すなわち、蓋体60の突起65は、蓋体60の回転を制限する機能を有する。
【0060】
図7に示すように、突起65は、第2取付部64に対して垂直方向に突出する。
なお、
図7に示す突起65は第2固定部56の側面56bに接触するが、ねじ部材で第2固定部56に蓋体60の第2取付部64を締結した状態において蓋体60の突起65が第2固定部56の側面56bから離間するようにこの突起65を構成してもよい。
【0061】
蓋体60は、次のように、第1及び第2固定部55,56に締結される。
ねじ部材が蓋体60の第1挿通孔63aして第1固定部55の第1固定用孔55aにねじ入れられる。また、ねじ部材が蓋体60の第2挿通孔64aに挿通して第2固定部56の第2固定用孔56aにねじ入れられる。これにより、蓋体60と第1及び第2固定部55,56とが締結される。
【0062】
蓋体60の取り付け手順について説明する。
蓋体60を収容部50の開口部52に取り付けるとき、蓋体60を所定の向きで開口部52に配置する。すなわち、蓋体60の取り付けの際、位置決めの基準となる部分同士が重なり合うように、蓋体60を配置する。具体的には、
図4に示すように、第1固定部55に蓋体60の第1取付部63を配置し、第2固定部56に蓋体60の第2取付部64を配置する。そして、先に、第1取付部63と第1固定部55とをねじ部材で締結する。次いで、第2取付部64と第2固定部56とをねじ部材で締結する。このような順で締結することにより、蓋体60が所定の位置に固定される。
【0063】
蓋体60は、このような手順に従って収容部50に取り付けられるが、回転対称構造を有する蓋体60では、蓋体60が逆向き(本来の向きから180度回転した向き。)に配置される虞がある。蓋体60が逆向きに配置された場合、次の問題が生じる。
【0064】
例えば、先に、第2取付部64と第1固定部55とがねじ部材で締結されると、第2取付部64の第2挿通孔64aが長円または楕円であって蓋体60が径方向にも移動可能であることから、蓋体60が径方向にずれて締結されるおそれがある。蓋体60の位置ずれが生じると、後で締結される第1取付部63と第2固定部56とが互いにずれるため、ねじ部材を第2固定用孔56aに挿通することが困難になる。また、蓋体60の軸受62が中心軸からずれるため、モータ出力軸6aを蓋体60の軸受62に挿通することが困難になるか、あるいは、モータ出力軸6aが本来の位置から傾いた状態で保持されてしまう。
【0065】
また、先に、第1取付部63と第2固定部56とがねじ部材で締結されると、第2固定部56の第2固定用孔56aが基準孔ではないことから、蓋体60が径方向にずれて締結されるおそれがある。このため、上記と同様の理由により、ねじ部材を第1固定用孔55aに挿通することが困難になったり、モータ出力軸6aを蓋体60の軸受62に挿通することが困難になったり、あるいは、モータ出力軸6aが本来の位置から傾いた状態で保持されたりする虞がある。
【0066】
そこで、このような蓋体60の誤配置(逆向きの配置)を抑制するため、蓋体60の取り付けの際には、蓋体60の向き(例えば、第1取付部63から第2取付部64に向かう向き。)を確認する作業が行われる。
【0067】
しかし、回転対称構造を有する蓋体60では、その外形に基づいて蓋体60の向きを把握することができない。このようなことから、第1及び第2挿通孔63a,64aの形状からその向き決定しなければならないが、第1及び第2挿通孔63a,64aは小さく、円であるか楕円(または長円)であるかの違いを目視で判別しなければならないため、この決定の作業は集中力を要するものとなっており、蓋体60の誤配置が懸念される。
【0068】
このような事情から、蓋体60の誤配置を抑制するべく、上記のように収容部50が構成されている。
以下、本実施形態に係る収容部50の作用について説明する。
【0069】
本実施形態に係る蓋体60は、第1及び第2取付部63,64のうちの第2取付部64にだけ突起65が設けられている。すなわち、蓋体60は2回対称性が失われている。このため、目視によっても容易に蓋体60の向きを把握することができる。また、手に感触によっても、蓋体60の向きを把握することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る収容部50によれば、蓋体60の逆向きに配置されたとしても、次に示す作用により、ねじ部材を挿入する前に蓋体60が逆向きに配置されていることを作業者に気付かせることができる。
【0071】
図8に、蓋体60が逆向きで取り付けられたときの収容部50の平面図を示す。
蓋体60が逆向きに配置されると、第1固定部55の干渉部57に蓋体60の第2取付部64の突起65が接触し、蓋体60が傾くようになる。あるいは、第2挿通孔64aと第1固定用孔55aとがずれた状態で蓋体60が開口部52に配置されるようになる。これにより、蓋体60が逆向きに配置されていることを作業者に気付かせることができる。
【0072】
図9に、昇降装置4の変形例を示す。
この昇降装置4では、第2ガイド壁16側に収容部50が配置されている。その他の構成は、上記昇降装置4と同様である。
【0073】
第2ガイド壁16側に収容部50が配置されている場合においても、上記に示したルールに従って第1及び第2固定部55,56が配置され、干渉部57が設けられ、更に、蓋体60についても、上記に示したルールに従って突起65が設けられる。
【0074】
具体的には、蓋体60の取り付けの際の基準孔が設けられる第1固定部55は、周壁51を右回り(矢印R1参照)に辿って行った場合にこの周壁51が第2ガイド壁16に対してガイド領域17の外から内へと交差する部分に設けられる。第2固定部56は、周壁51を右回り(矢印R1参照)に辿って行った場合にこの周壁51が第2ガイド壁16に対してガイド領域17の内から外へと交差する部分に設けられる。
【0075】
干渉部57は、第1固定部55の側面55bにおける周方向上手側の部分から突出するように設けられる。周方向上手側とは、側面55bを右回り(矢印R2参照)に辿るときの上手側を示す。
【0076】
蓋体60に設けられる突起65は、第2固定部56の側面56bにおいて周方向上手側の部分に接触可能に設けられる。第2固定部56の側面56bにおいて周方向上手側の部分とは、側面56bを右回り(矢印R3参照)に辿るときの上手側の部分を示す。
【0077】
第2ガイド壁16側に収容部50が配置されている場合においても、第1ガイド壁15側に収容部50が配置されている場合と同様の作用がある。このため、この配置の場合においても上記
図8を参照して示した効果が得られ、蓋体60の誤配置が抑制されるようになる。
【0078】
以上に説明したように、本実施形態に係る昇降装置4は次の効果を奏する。
(1)上記実施形態では、蓋体60の第1及び第2取付部63,64は回転対称位置に配置されている。そして、第2取付部64の端縁にだけ第2固定部56の側面56bに接触可能な突起65が設けられている。
【0079】
蓋体60が回転対称構造を有する場合は蓋体60の向きを把握することが難しいが、上記構成の蓋体60では第2取付部64にだけ突起65が設けられているため、蓋体60の向きを容易に把握することができる。このため、蓋体60の誤配置が抑制される。
【0080】
(2)上記実施形態では、第2固定部56は、収容部50の周壁51から径方向に突出するように設けられている。蓋体60の突起65は、第2固定部56の側面において周方向上手側の部分に接触可能なように設けられている。
【0081】
蓋体60を収容部50に取り付けるとき、まず、取り付けの基準となる第1取付部63と第1固定部55とをねじ部材で締結し、次いで、第2取付部64と第2固定部56とをねじ部材で締結する。ねじ部材で第1取付部63を第1固定部55に締結するとき、蓋体60に加わる右回りのトルクにより蓋体60が右回りに回転し(
図4矢印R参照。)、第2取付部64が当初の位置からずれる。そうすると、第2取付部64の第2挿通孔64aと第2固定部56の第2固定用孔56aとの位置が互いにずれるようになり、ねじ部材を挿通し難くなる。
【0082】
この点、上記構成によれば、蓋体60の突起65が、第2固定部56の側面56bにおいて周方向上手側の部分に接触可能なように、第2取付部64に設けられており、蓋体60が右回りに回転するときにこの突起65が第2固定部56に当接するため、蓋体60の回転が制限される。これにより、ねじ部材が挿通し難くなることが抑制される。
【0083】
(3)上記実施形態では、第1固定部55は、収容部50の周壁51から径方向に突出するように設けられている。第1固定部55には、その側面55bにおける周方向上手側の部分から突出する干渉部57が設けられている。
【0084】
この構成によれば、蓋体60が逆向きに配置されて第2取付部64が第1固定部55側に配置された場合、第2取付部64の突起65と第1固定部55の干渉部57とが互いに干渉し合う。このため、蓋体60が逆向きに配置されたことを作業者に気付かせることができる。
【0085】
(4)上記実施形態では、収容部50は、第1ガイド壁15(または第2ガイド壁16)の途中に配置される。そして、第1固定部55と第2固定部56とは、第1ガイド壁15(または第2ガイド壁16)に沿って配置されている。
【0086】
窓ガラス5が下方に移動してキャリア31がストッパ13に当たってキャリア31,32が停止するとき、または窓ガラス5が上方に移動してアウターパネル2の外枠に当たってキャリア31,32が停止するとき、この停止の瞬間においてはドラム28の回転が持続するため、第1ケーブル25(または第2ケーブル26)には大きな張力が加わる。このため、キャリア31,32の停止時には、第1ケーブル25(または第2ケーブル26)を介してドラム28に大きな力が加わる。この力によりドラム28及び蓋体60が傾き、この力が第1及び第2取付部63,64に伝達される。しかし、第1及び第2取付部63,64に加わる力が均等でなく、一方に過大に力が加わると、その取付部63,64が変形する虞がある。
【0087】
このような点を鑑み、上記構成においては、第1及び第2固定部55,56が第1ガイド壁15(または第2ガイド壁16)に沿って(すなわちケーブル25,26に沿って)配置される。すなわち、第1及び第2固定部55,56の配列方向すなわち第1及び第2取付部63,64の配列方向とケーブル25,26の配線方向とが一致する。このため、キャリア31,32の停止時には、ドラム28に加わる力によってドラム28及び蓋体60がこの配列方向に対して垂直方向に傾くようになり、第1及び第2取付部63,64に加わる力が略均等になる。このため、第1及び第2取付部63、64の変形が抑制されるようになる。
【0088】
(5)上記実施形態では、第1固定部55は、周壁51を右回りに辿って行くときに周壁51が第1ガイド壁15(または第2ガイド壁16)に対して外から内に交差する部分に設けられている。また、第2固定部56は、周壁51を右回りに辿って行くときに周壁51が第1ガイド壁15(または第2ガイド壁16)に対して内から外へと交差する部分に設けられている。
【0089】
上記構成によれば、第1固定部55に設けられる干渉部57は、第1ガイド壁15(または第2ガイド壁16)から離れる方向に延びるため、干渉部57とケーブル25,26との干渉は生じない。
【0090】
(6)上記実施形態では、
図8に示すように、蓋体60の第2取付部64が第1固定部55側にかつ第1取付部63が第2固定部56側に配置された場合において、蓋体60の第2取付部64の突起65が干渉部57の先端に接触するとき、第2取付部64の第2挿通孔64aと第1固定部55の第1固定用孔55aとの位置がずれる。このため、この構成によれば、第1固定部55にねじ部材をねじ込むことができなくなる。これにより、誤配置の状態で蓋体60がねじ部材で締結されてしまうことが抑制される。
【0091】
なお、上記実施形態は以下のように変更することもできる。
・上記実施形態では、干渉部57は、平面視(
図5(a)参照)において棒状のものであるが、その形状は限定されない。例えば、干渉部57は、平面視で三角形、矩形、半円形等様々な形態に構成されうる。
【0092】
・上記実施形態では、干渉部57を第1固定部55にだけ設けているが、第2固定部56に設けてもよい。この場合において、第2固定部56に設けられる干渉部57は、第1ガイド壁15(または第2ガイド壁16)から離れる方向に延びるように構成されることが好ましい。
【0093】
・上記実施形態では、干渉部57は、平面視(
図5(a)参照)において細長い棒状のものであるが、これを幅広のものとして構成してもよい。これにより、キャリア31,32の停止時に加わる力によって第1及び第2固定部55,56が歪むことが抑制される。すなわち、この構成により、干渉部57を補強リブとして機能させることができる。