(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記温度センサで検出した温度の単位時間当たりの変化率が所定の値を超えた場合に、前記スイッチをオフして前記電源供給ラインを遮断する温度変化率検出回路を含む制御回路を備える請求項1記載のプラグ付きケーブル。
前記制御回路は、前記温度センサで検出した温度が所定の値を超えた場合、又は、前記電源供給配線の電圧が所定の電圧以下になった場合に、前記スイッチをオフして前記電源供給配線を遮断する請求項1又は2記載のプラグ付きケーブル。
前記制御回路は、前記電源供給手段からの電源の供給を断つまで、もしくは、前記電源供給手段からの電源の供給が断たれたと判断されるまで、前記電源供給ラインの遮断を維持するラッチ回路を含む請求項3記載のプラグ付きケーブル。
前記電源供給配線の遮断を維持した時に、前記電源供給配線の遮断の維持を通知するインジケータと、該インジケータを制御するインジケータ制御回路を備える請求項4記載のプラグ付きケーブル。
前記温度センサで検出した温度の単位時間当たりの変化率が所定の値を超えた場合に、前記スイッチをオフして前記電源供給ラインを遮断する温度変化率検出回路を含む請求項6記載の制御回路。
前記制御回路は、前記温度センサで検出した温度が所定の値を超えた場合、又は、前記電源供給配線の電圧が所定の電圧以下になった場合に、前記スイッチをオフして前記電源供給配線を遮断する請求項6又は7記載の制御回路。
前記制御回路は、前記電源供給手段からの電源の供給を断つまで、もしくは、前記電源供給手段からの電源の供給が断たれたと判断されるまで、前記電源供給ラインの遮断を維持するラッチ回路を含む請求項8記載の制御回路。
前記電源供給配線の遮断を維持した時に、前記電源供給配線の遮断の維持を通知するインジケータと、該インジケータを制御するインジケータ制御回路を備える請求項9記載の制御回路。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。
【0014】
なお、添付の全図面の中の記載で、同一又は対応する部材又は部品には、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、特に指定しない限り、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的としない。従って、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定することができる。
【0015】
また、以下説明する実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述される全ての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1〜
図3は、本発明のある実施形態であるプラグ付きケーブルを示している。本実施形態では、プラグ付きケーブルとしてUSB(Universal Serial Bus)ケーブル10を例に挙げて説明するものとする。しかしながら、本発明の適用はUSBケーブルに限定されるものではなく、給電を行う電源供給ラインを有するプラグ付きケーブルに広く適用ができるものである。
【0017】
図1は、USBケーブル10の外観図である。
図1に示すようにUSBケーブル10は、ケーブル12、プラグ14、プラグ16を有している。本実施形態では、プラグ14はUSB規格に準拠したA型プラグ(以下、A型プラグ14という)であり、プラグ16はマイクロB型プラグ(以下、μB型プラグ16)である例を示している。
【0018】
しかしながら、ケーブル12の両端に配設されるプラグ14,16のタイプは、これに限定されるものではなく、またUSB規格に準拠しないプラグを用いた構成としてもよい。また、後述する二次電池28で駆動される二次電池側電子装置32に固有のプラグを有する場合、この固有のプラグを用いることも可能である。
【0019】
ケーブル12は、
図3に示されるように、USBの規格で決まったプラス電源ライン(VSUBライン)12A、マイナス電源ライン(GNDライン)12B、プラス信号ライン(D+ライン)12C、マイナス信号ライン(D−ライン)12D、及びこれらの各ライン12A〜12Dをシールドするシールドライン(Shieldライン)12Eを有している。A型プラグ14はケーブル12の一端部に配設されており、μB型プラグ16はケーブル12の他端部に配設されている。
【0020】
A型プラグ14は、ハウジング18の内部にケーブル12の各ライン12A〜12Dと接続する端子が設けられている。またμB型プラグ16は、ハウジング20の内部に各ライン12A〜12Dと接続する回路基板40が設けられている。
【0021】
ハウジング18,20は、樹脂により形成されている。ハウジング18,20を形成する樹脂材料としては、TPE樹脂(熱可塑性エラストマー樹脂)などの絶縁性樹脂を用いることができる。特にハウジング20の材料としてTPE樹脂等の絶縁性樹脂を用いた場合には、ハウジング20の内部に設けられる回路基板40を機械的に保護するとともに、湿度や温度等の外部の環境から保護することができる。
【0022】
図2は、USBケーブル10の使用態様の一例を示している。同図に示す例では、A型プラグ14、は電源26を有した電源側電子装置30の電源側レセプタクル22に接続される。電源側レセプタクル22は、電源26に接続されている。
【0023】
また、μB型プラグ16は、二次電池28を有した二次電池側電子装置32の二次電池側レセプタクル24に接続される。二次電池側レセプタクル24は、二次電池28に接続されている。
【0024】
電源側電子装置30は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等の電子機器であり、電源26はACアダプタ、電池、PCのUSB端子等である。また、例えば二次電池側電子装置32は携帯用端末装置であり、二次電池28はリチウムイオン電池等である。
【0025】
USBケーブル10は、給電用のVSUBライン12Aを有している。よって、A型プラグ14を電源側レセプタクル22に装着し、μB型プラグ16を二次電池側レセプタクル24に装着することにより、USBケーブル10を介して電源26により二次電池28を充電することができる。
【0026】
ところで、レセプタクル22,24に挿入脱されるプラグ14,16は、装着脱時にプラグ14,16内に異物が侵入するおそれがある。この異物が導電性を有していた場合、A型プラグ14,16内の端子間でショートが発生するおそれがある。
【0027】
特にプラグ形状の小さいμB型プラグ16では、これより大きなA型プラグ14であれば容易に離脱するような異物でもプラグ内に残留する可能性がある。また、小型であるμB型プラグ16は、端子間の距離が狭いため、小さな異物でも端子間でショートが発生するおそれがある。
【0028】
仮に、異物の侵入によりμB型プラグ16の内部でショートが発生した場合、μB型プラグ16には次のような現象が発生する。即ち、異物のインピーダンスが大きい場合には、異物に発熱が発生しμB型プラグ16の温度が上昇する(以下、この状態を異常温度状態ということがある)。また、異物のインピーダンスが小さい場合には、通常時(異物が侵入していない状態)に比べて過大な電流が流れる(以下、この状態を過放電状態ということがある)。
【0029】
また本出願人は、異物の侵入に伴いμB型プラグ16内で最も発熱温度が高い位置を調べたところ、VBUS端子42及びGND端子48(
図4(A)参照)の配設位置であった。
【0030】
本実施形態に係るUSBケーブル10は、異物の侵入等により異常温度状態或いは過放電状態となった時、給電を遮断する制御回路11を有している。以下、USBケーブル10に設けられた制御回路11について説明する。
【0031】
図4は、制御回路11のブロック図である。
【0032】
制御回路11は、μB型プラグ16のハウジング20の内部に配設されている。具体的には、ハウジング20には回路基板40が内設されており、制御回路11はこの回路基板40に搭載されている。
【0033】
制御回路11は、配線12a〜12d、FET60、制御IC70、及び温度センサ80を有している。
【0034】
VSUB線12aは、ケーブル12のVSUBライン12Aに接続される配線である。GND線12bは、ケーブル12のGNDライン12Bに接続される配線である。D+線12cは、ケーブル12のD+ライン12Cに接続される配線である。D−線12dは、ケーブル12のD−ライン12Dに接続される配線である。
【0035】
FET60はVBUS線12aに直列に設けられており、VBUS線12aを流れる電流を遮断する電流遮断スイッチとして機能する。このFET60のゲートは、抵抗R2を介して制御IC70の遮断信号出力端子(OV端子)70cに接続されている。
【0036】
FET60は、PチャンネルMOSFETである。よって、OV端子70cから出力される遮断信号に応じて、FET60はオン・オフ動作する。
【0037】
即ち、OV端子70cから出力される遮断信号がローレベルの時、FET60はオンとなりVBUS線12aに電流が流れる。これに対し、OV端子70cから出力される遮断信号がハイレベルの時、FET60はオフとなりVBUS線12aを流れる電流は遮断される。なお、抵抗R1はFET60と並列に接続されたプルアップ抵抗である。
【0038】
本実施形態では、VBUS線12aを流れる電流を遮断する電流遮断スイッチとしてPチャンネルMOSFETを用いた例を示しているが、この電流遮断スイッチはNチャンネルMOSFETを用いることもでき、またバイポーラトランジスタ(PNP、NPNトランジスタ)などの半導体スイッチ、及びメカニカルなリレー等を使用することもできる。
【0039】
本実施形態では、温度センサとして温度の上昇に伴い抵抗が減少するNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタを用いている。NTCサーミスタ80は、VBUS端子42或はGND電極58の近傍に配設される(これについては、後に詳述する)。なお、以下の説明では、NTCサーミスタ80をVBUS端子42の近傍に配設した例について説明する。
【0040】
サーミスタ80は抵抗R4と直列回路を構成し、VBUS線12aとGND線12bとの間に配設されている。また、NTCサーミスタ80と抵抗R4との接続点Aは、制御IC70の温度検出端子(TH端子)70bに接続されている。
【0041】
よって、TH端子70bに入力される温度検出電圧は、NTCサーミスタ80と抵抗R4により分圧された電圧となる。即ち、TH端子70bに入力される温度検出電圧THは、VBUS端子42の温度変化により変化するNTCサーミスタ80の抵抗値に対応して変化する。
【0042】
なお、温度センサはNTCサーミスタ80に限定されるものではなく、温度の上昇に対して抵抗が増大するPTC(Positive Temperature coefficient)サーミスタ、熱電対、またダイオード,トランジスタ,抵抗等の温度特性のある素子を使用することもできる。
【0043】
なお、VBUS線12aとGND線12bの間にはコンデンサーQ1と、コンデンサーQ2と抵抗R3の直列回路が接続されている。このコンデンサーQ1,Q2は、ノイズが制御IC70に侵入するのを防止するために設けられている。
【0044】
また、コンデンサーQ2と抵抗R3との接続点Bは、制御IC70のVSS端子70dに接続されている。更に、VBUS線12aとコンデンサーQ2との間に設けられた接続点Cは、制御IC70のVDD端子70aに接続されている。
【0045】
制御IC70は、温度検出部72、過放電検出部74、オープン検出部76、リセット部78、NORゲート81、ラッチ制御部82、及び遮断信号出力部86を有している。
【0046】
前記のように、μB型プラグ16に異物が侵入しショートが発生した場合、VBUS端子42の温度が上昇して異常温度状態となる。温度検出部72は、VDD端子70aから入力される電圧VDDと、NTCサーミスタ80からTH端子70bを介して入力される温度検出電圧THに基づき、VBUS端子42が異常温度になったことを検出する。異常温度が検出されると、温度検出部72は異常温度検出信号をNORゲート81に送信する。
【0047】
本実施形態では、温度検出電圧THが基準電圧VDDの84パーセント以上(TH>VDD×0.84)となった場合に、VBUS端子42に異常温度となったと判断する構成としている。なお、以下の説明において基準電圧VDDの84パーセントの電圧を異常温度検出電圧ということがある。
【0048】
過放電検出部74は、VDD端子70aから入力される電圧VDDが所定のしきい値電圧以下となった時に過放電が発生したと判定し、NORゲート81に過放電検出信号を送信する。前記のようにμB型プラグ16に侵入した異物のインピーダンスが小さい場合には、通常時に比べて過大な電流が流れ、これに伴いVBUS線12aと接続されたVDD端子70aの電圧が低下する。よって、過放電検出部74は、電圧VDDの電圧値からμB型プラグ16にショートが発生したことを検知することができる。
【0049】
この過放電を検知する基準となるしきい値電圧は、(a)ショートが発生してない実使用領域の最低電圧以下であること、(b)ショート発生時にハウジング20及びケーブル12を被覆する樹脂が溶融しないこと、という二つの条件を満たす必要がある。本実施形態では、VDDを5V±5%、最大電流を3A、ケーブル12のケーブルインピーダンスを300mohmであるため、しきい値電圧Vshは、Vsh=4.75V−3A×300mohm=3.85Vとなる。
【0050】
上記した(b)の条件を満たす電圧設定が低い場合、ショートを検出するしきい値電圧Vshに達するまでの時間が長くなり、その間に樹脂が溶融するおそれがあるため、しきい値電圧Vshは高い方が望ましい。またしきい値電圧Vshは、制御IC70の検出バラつきも考慮する必要がある。そこで本実施形態では、しきい値電圧Vshを3.5Vに設定している。なお過放電を検出するしきい値電圧Vshは、給電時の電流値やケーブル12のインピーダンス等に応じて適宜設定する必要がある。
オープン検出部76は、NTCサーミスタ80の異常を検出するものである。NTCサーミスタ80が適正動作しない状態(オープン状態)となっている場合、適正な
異常温度検出を行うことができない。
【0051】
このため本実施形態では、NTCサーミスタ80に異常が発生していることをオープン検出部76で検出し、異常が発生している場合にはNORゲート81にセンサ異常信号を送信する構成としている。このNTCサーミスタ80の異常検出は、VDD端子70aから入力されるVDD電圧とTH端子70bから入力される温度検出電圧THに基づき判定される。
【0052】
NORゲート81は、温度検出部72から異常温度検出信号が供給された時、過放電検出部74から過放電検出信号が供給された時、またオープン検出部76からセンサ異常信号が供給された時、ラッチ制御部82に対してローレベルの異常検出信号を出力する。
【0053】
ラッチ制御部82に供給された異常検出信号は、レベルシフト部84で所定電圧にレベルシフトが行われた後、遮断信号出力部86に供給される。遮断信号出力部86は、異常検出信号が供給されると、FET60を遮断するためOV端子を介してハイレベルの遮断信号をFET60に供給する。
【0054】
FET60は、ゲートに遮断信号出力部86からハイレベルの遮断信号が供給されることによりオフ状態となり、VBUS線12aを遮断する。これにより、μB型プラグ16に異物が侵入しショートが発生したとしても、VBUS線12a及びGND線12bによる給電が停止されるため、USBケーブル10、電源側電子装置30、及び二次電池側電子装置32が損傷したり、ハウジング20やケーブル12が熱により溶融したりすることを防止することができる。
【0055】
またラッチ制御部82は、NORゲート81から異常検出信号が供給されると、後述するリセット部78からリセット信号が供給されるまでFET60をオフ状態に保持する(ラッチする)。よって、FET60がオフ状態になった後は、VBUS端子42の温度或はVDD端子70aの電圧VDDが一時的に正常値になったとしても、VBUS線12aが導通されることはない。よって異常状態において、FET60がオン状態とオフ状態を繰り返すことを防止でき、確実にUSBケーブル10の破損を防止することができる。
【0056】
リセット部78は、VDD端子70aの電圧が所定電圧以下となるまでラッチ制御部82をラッチ状態に保持する。本実施形態では、リセット部78はVDD端子70aの電圧を監視し、VDD端子70aの電圧が1,8V以下となった時にラッチ制御部82のラッチを解除する構成としている。また、FET60はリセット部78から供給される検出信号により直接制御されることになる。
【0057】
ここで、VDD端子70aの電圧が1,8V以下なるUSBケーブル10の状態は、例えば電源26からの給電を停止した時合(USBケーブル10を電源側電子装置30から抜いた時)、或は電源26の電源電圧が低下した時(電池で充電しているような時)等である。
【0058】
図5は、上記構成とされた制御回路11を搭載した回路基板40を示している。
【0059】
図5(A)は、回路基板40の表面40Aを示している。表面40Aには、VBUS端子42、D+端子44、GND端子48、VBUS電極52、GND電極58、FET60、NTCサーミスタ80、抵抗R1、及びコンデンサーQ1等が配設されている。これらの各電子素子は、表面40Aに形成されたプリント配線(梨地で示す)により接続されている。このプリント配線は、VSUB線12a,GND線12b、D+線12c,D−線12dを構成する。
【0060】
VBUS端子42、D+端子44、及びGND端子48は、二次電池側レセプタクル24に接続される端子である。またVBUS電極52には、ケーブル12のVBUSライン12Aが接続されている。またGND電極58には、ケーブル12のGNDライン12Bが接続されている。
【0061】
また
図5(B)は、回路基板40の背面40Bを示している。背面40Bには、D−端子46、OPEN端子50、D+電極54、D−電極56、制御IC70、抵抗R2,R4、及びコンデンサーQ2等が配設されている。これらの各電子素子は、背面40Bに形成されたプリント配線(梨地で示す)により接続されている。
【0062】
D−端子46及びOPEN端子50は、二次電池側レセプタクル24に接続される端子である。またD+電極54にはケーブル12のD+ライン12Cが接続され、D−電極56にはケーブル12のD−ライン12Dが接続されている。更に、表面40Aに形成されたプリント配線と背面40Bに形成されたプリント配線は、スルーホールTW1〜TW6により表裏面間で接続されている。
【0063】
本実施形態では、表面40Aに低インピーダンスとする必要がある電子素子を集約的に配置しており、背面40Bには低インピーダンスとする必要が少ない電子素子を集約的に配置している。これにより、低インピーダンスとする必要がある電子素子を効率的に駆動させることができる。
【0064】
また本実施形態では、比較的大きな形状を有するFET60と制御IC70を回路基板40の表裏面40A,40Bに分けて配置した構成としている。このため、回路基板40の面積を小さくすることができ、よって回路基板40を内設してもμB型プラグ16の形状をコンパクトにすることができる。
【0065】
ここで、NTCサーミスタ80の配設位置に注目する。本実施形態では、NTCサーミスタ80をVBUS端子42に近接した位置に配置している。また、VBUS端子42は熱伝導性の良好な銅合金で形成されており、プリント配線にはんだ付けされている。
【0066】
よって、二次電池28と接続されたVBUS端子42に付着した導電性の異物により、VBUS線12aとGND線12bとがショートして、導電性異物に電流が流れて発熱したとしても、NTCサーミスタ80は発熱体である導電性異物が付着した位置、即ちVBUS端子42に近接(隣接)した位置に設置されている。
【0067】
このため、発熱体である導電性異物の熱は短時間でNTCサーミスタ80に伝導し、正確な温度を短時間で測定することができる。これにより、NTCサーミスタ80で検出した温度が所定温度を超えた場合には、制御IC70により直ちにFET60をオフしてVBUS線12aを遮断するため、μB型プラグ16の破損や二次電池側レセプタクル24の破損、二次電池側レセプタクル24が設置されている二次電池側電子装置32の破損、ケーブル12の破損、及び電源側電子装置30の破損等を確実に防止することができる。
【0068】
続いて、上記構成とされた制御回路11の動作について説明する。
【0069】
図6は制御回路11の動作を示す状態還移図であり、
図7は異常温度が所定時間発生した時における制御回路11の動作を示すタイミングチャートであり、
図8は異常温度が連続的に発生した時における制御回路11の動作を示すタイミングチャートであり、
図9は過放電が発生した時における制御回路11の動作を示すタイミングチャートであり、
図10はプラグがレセプタクルから引き抜かれた時における制御回路11の動作を示すタイミングチャートである。
【0070】
なお
図7〜
図10において、(A)はVDD端子70aの電圧VDDを示し、(B)は異物の侵入により発生する異常温度を示し、(C)はTH端子70bの温度検出電圧THを示し、(D)はOV端子に出力される遮断信号を示し、(E)はμB型プラグ16から出力される給電電圧VOUTを示している。
【0071】
図6に示すように、本実施形態に係る制御IC70は、通常状態A1、異常温度検出状態A2、リセット状態A3、及び過放電検出状態A4を有している。
【0072】
まず
図6及び
図7を用いて、異常温度が所定時間発生した時における制御回路11の動作について説明する。
【0073】
図7において、時刻0はUSBケーブル10の各プラグ14,16が各レセプタクル22,24に挿入された時刻を示している。制御IC70は、各プラグ14,16が各レセプタクル22,24に挿入される前はリセット状態A3となっている。リセット状態A3状態では、FET60はオフ状態となっており、ラッチ制御部82によるラッチは解除された状態となっている。なお
図7に示す例では、過放電は発生しないものとする。
【0074】
制御IC70がリセット状態A3になると、VBUS電極52に電源26の電圧が印加され、これに伴いコンデンサーQ2等に電荷が蓄積される。よって、
図7(A)に示すように、VDD端子70aの電圧VDDは漸次上昇する。
【0075】
制御IC70に設けられたリセット部78は、VDD端子70aの電圧VDDを監視している。そして、VDD端子70aの電圧VDDが3.8V以上になったことを検出すると、リセット部78は遮断信号出力部86に通常状態検出信号を送信する(
図6に符号b3で示す処理)。遮断信号出力部86は、リセット部78から通常状態検出信号が供給されると、OV端子70cを介してFET60にローレベルの信号を出力する。
【0076】
これにより、FET60はオン状態となり(
図7(D)参照)、VBUS線12aは導通されてUSBケーブル10は通常状態A1となる。制御IC70が通常状態A1になることにより、給電電圧VOUTは上昇し二次電池28に対する充電が開始される。
【0077】
図7は、異物がμB型プラグ16に侵入することにより、時刻t2〜t4の間にVBUS端子42の温度が異常温度となった例を示している。
【0078】
NTCサーミスタ80はVBUS端子42に近接した位置に配設されているため、VBUS端子42の温度が異常温度になると、この熱はNTCサーミスタ80に短時間で熱伝導する。これによりNTCサーミスタ80の抵抗は小さくなり、これに伴いTH端子70bの温度検出電圧THは上昇する。
【0079】
温度検出部72は、温度検出電圧THが異常温度検出電圧(基準電圧VDDの84パーセントの電圧)以上になり、かつ、その状態が50ms継続したと判断すると、NORゲート81に対して異常温度検出信号を送信する(
図6に符号b1で示す処理)。
【0080】
なお、温度検出電圧THが異常温度検出電圧以上となった時に直ちに異常温度検出信号を送信するのではなく、50ms(時刻t2〜t3の間)だけ待つ構成としたのは、外乱等により瞬間的に温度検出電圧THが変動する場合を排除するためである。
【0081】
NORゲート81に異常温度検出信号が送信されると、NORゲート81,ラッチ制御部82,レベルシフト部84,及び遮断信号出力部86が前記した所定の処理を行うことによりFET60はオフ状態になり、制御IC70は異常温度検出状態A2となる。異常温度検出状態A2では、VBUS線12aは遮断され、二次電池28に対する充電も停止される(
図7(E)参照)。また、異常温度検出状態A2ではラッチ制御部82が起動するため、FET60はオフ状態に維持される(
図7(D)参照)。
【0082】
異常温度検出状態A2においては、FET60はラッチ制御部82によりオフ状態に維持される。よって
図7に示すように、異常温度状態が時刻t4で解消しVBUS端子42の温度が通常温度に戻ったとしても、制御IC70は異常温度検出状態A2を維持する。
【0083】
このように、VBUS端子42の温度が一時的に正常値になったとしても、制御IC70はVBUS線12aを遮断した状態を維持する。仮にVBUS端子42の温度が一時的に正常値に戻った時にFET60をオンにすると、再び異常状態になると再度オフ状態になる。このようにFET60がオン・オフを繰り返すと温度上昇をおさえることができない。
【0084】
よって本実施形態のように、VBUS端子42の温度が一時的に正常値になったとしても、制御IC70はVBUS線12aを遮断した状態を維持する構成とすることにより、USBケーブル10、電源26、及び二次電池28等に破損が生じることを防止することができる。
【0085】
電源26をオフする、もしくはケーブルのA型プラグ14をレセプタクル22から引き抜くとVDD端子70aのVDD電圧は漸次減少する。(
図7(A)参照)。リセット部78は、VDD端子70aの電圧VDDを監視している。
【0086】
そして、VDD端子70aの電圧VDDが1.8V以下になったことを検出すると、リセット部78はラッチ制御部82にラッチ解除信号を送信する(
図6に符号b2で示す処理)。ラッチ制御部82は、リセット部78からラッチ解除信号が供給されるとFET60のラッチ状態を解除する。これにより制御IC70は、再びリセット状態A3になる(
図7に示す例では、時刻t5において制御IC70はリセット状態A3となる)。
【0087】
リセット状態A3では、FET60はオフ状態を維持する(
図7(D)参照)。しかしながら、FET60をオン状態に移行する制御は可能な状態となっている。このリセット状態は、例えばUSBケーブル10をレセプタクル22.24から抜かれるまで、又は電源26からの電源の供給が停止されるまで継続される。
【0088】
次に
図6及び
図8を用いて、異常温度が連続的に発生している時における制御回路11の動作について説明する。
【0089】
図7に示した例では、時刻t2〜t4の間だけ異常温度が発生している例を示した。これに対して
図8に示す例では、USBケーブル10の各プラグ14,16を各レセプタクル22,24に挿入された時点から(時刻0から)、既にVBUS端子42の温度が異常温度となっている場合である。
【0090】
前記のように制御IC70は、各プラグ14,16が各レセプタクル22,24に挿入される前にはリセット状態A3となっている。そして、制御IC70に設けられたリセット部78はVDD端子70aの電圧VDDを監視し、電圧VDDが3.8V以上になったことを検出すると、リセット部78は遮断信号出力部86に通常状態検出信号を送信する(
図6に符号b3で示す処理)。
【0091】
リセット部78から通常状態検出信号が供給されると、遮断信号出力部86はOV端子70cを介してFET60にローレベルの信号を出力し、これよりFET60はオン状態となる(時刻t1においてオン状態となる。
図8(D)参照)。
【0092】
図8に示す例は、VBUS端子42の温度が連続的に異常温度となった例である。よって、FET60がオンになった状態で、既にVBUS端子42の温度は異常温度になっている。前記のように、温度検出部72は温度検出電圧THが異常温度検出電圧(基準電圧VDDの84パーセントの電圧)以上になり、かつ、その状態が50ms継続したと判断すると、NORゲート81に対して異常温度検出信号を送信する(
図6に符号b1で示す処理)。
【0093】
よって、VBUS端子42の温度が連続的に異常温度である場合には、FET60がオンになった後、50ms経過した時点(時刻t2)において、温度検出部72はNORゲート81に対して異常温度検出信号を送信する。
【0094】
これにより、NORゲート81,ラッチ制御部82,レベルシフト部84,及び遮断信号出力部86が前記した所定の処理を行い、FET60はオフ状態になるとともに、ラッチ制御部82によりFET60はオフ状態に維持(ラッチ)される(
図7(D)参照)。
【0095】
このように制御IC70は、異常温度が連続的に発生している場合は、FET60を50msの短時間だけがオンにして異常温度検出を可能にした後、直ちに異常温度検出状態とする。
【0096】
FET60がオン状態となることにより、VSUB線12aは一時的に導通した状態となるが、この導通時間は50msと短時間である。よって、一時的にFET60がオン状態としても、USBケーブル10、電源26、及び二次電池28等が損傷するようなことはない。よって、異常温度が連続的に発生している場合であっても、制御回路11によりUSBケーブル10、電源26、及び二次電池28等を確実に保護することができる。
【0097】
次に
図6及び
図9を用いて、過放電が発生した時における制御回路11の動作について説明する。
【0098】
図9に示す例においても、時刻0はUSBケーブル10の各プラグ14,16が各レセプタクル22,24に挿入された時刻を示しており、制御IC70はリセット状態A3となっている。また各プラグ14,16が各レセプタクル22,24に挿入されることにより、VBUS電極52に電源26の電圧が印加され、これに伴いVDD端子70aの電圧VDDは漸次上昇する。なお
図9に示す例では、異常温度は発生しないものとする。
【0099】
制御IC70に設けられたリセット部78はVDD端子70aの電圧VDDを監視し、電圧VDDが3.8V以上になると遮断信号出力部86に通常状態検出信号を送信する(
図6に符号b3で示す処理)。
【0100】
リセット部78から通常状態検出信号が供給されると、遮断信号出力部86はOV端子70cを介してFET60にローレベルの信号を出力し、FET60はオン状態となり(
図9(D)参照)、VBUS線12aは導通されてUSBケーブル10は通常状態A1となる。制御IC70が通常状態A1となることにより、給電電圧VOUTは上昇し二次電池28に対する充電が開始される。
【0101】
図9は、異物の侵入により時刻t2にVBUS端子42とGND電極58とのショートにより過放電が発生した例を示している。
【0102】
VBUS端子42とGND電極58がショートし過放電が発生すると、
図9(A)に示すようにVDD端子70aの電圧VDDが減少する。
【0103】
過放電検出部74は、VDD端子70aの電圧VDDを監視している。そして過放電検出部74は、VDD端子70aの電圧VDDが過放電検出電圧(本実施形態では3,5V)以下になり、かつ、その状態が50ms継続したと判断すると、NORゲート81に対して過放電検出信号を送信する(
図6に符号b4で示す処理)。
【0104】
なお、VDD端子70aの電圧VDDが過放電検出電圧以下となった時(
図9に示す時刻t3)に直ちに過放電検出信号を送信するのではなく、50ms(時刻t3〜t4の間)だけ待つ構成としたのは、外乱等により瞬間的に電圧VDDが変動する場合を排除するためである。
【0105】
NORゲート81に異常温度検出信号が送信されると、NORゲート81,ラッチ制御部82,レベルシフト部84,及び遮断信号出力部86が前記した所定の処理を行うことによりFET60はオフ状態になり、制御IC70は過放電検出状態A4となる。過放電検出状態A4では、VBUS線12aは遮断され、二次電池28に対する充電も停止される(
図9(E)参照)。また、過放電検出状態A4ではラッチ制御部82が起動するため、FET60はオフ状態に維持される(
図9(D)参照)。
【0106】
過放電検出状態A4においては、FET60はラッチ制御部82によりオフ状態に維持される。よって
図9に示すように、過放電状態が時刻t5で解消されたとしても、制御IC70は過放電検出状態A4を維持する。
【0107】
このように、VDD端子70aの電圧VDDが一時的に正常値になったとしても、制御IC70はVBUS線12aを遮断した状態を維持するため、USBケーブル10、電源26、及び二次電池28等に破損が生じることを防止することができる。
【0108】
電源26をオフする、もしくはケーブルのA型プラグ14をレセプタクル22から引き抜くとVDD端子70aのVDD電圧は漸次減少し(
図9(A)参照)、1.8V以下になるとリセット部78はラッチ制御部82にラッチ解除信号を送信する(
図6に符号b5で示す処理)。ラッチ制御部82は、リセット部78からラッチ解除信号が供給されるとFET60のラッチ状態を解除する。これにより制御IC70は、再びリセット状態A3になる(
図9に示す例では、時刻t6において制御IC70はリセット状態A3となる)。
【0109】
次に
図6及び
図10を用いて、プラグがレセプタクルから引き抜かれた時における制御回路11の動作について説明する。
【0110】
図10に示す例においても、時刻0はUSBケーブル10の各プラグ14,16が各レセプタクル22,24に挿入された時刻を示しており、制御IC70はリセット状態A3となっている。また各プラグ14,16が各レセプタクル22,24に挿入されることにより、VBUS電極52に電源26の電圧が印加され、これに伴いVDD端子70aの電圧VDDは漸次上昇する。なお
図9に示す例では、異常温度及び過放電は発生しないものとする。
【0111】
制御IC70に設けられたリセット部78はVDD端子70aの電圧VDDを監視し、電圧VDDが3.8V以上になると遮断信号出力部86に通常状態検出信号を送信する(
図6に符号b3で示す処理)。
【0112】
リセット部78から通常状態検出信号が供給されると、遮断信号出力部86はOV端子70cを介してFET60にローレベルの信号を出力し、FET60はオン状態となり(
図9(D)参照)、VBUS線12aは導通されてUSBケーブル10は通常状態A1となる。制御IC70が通常状態A1となることにより、給電電圧VOUTは上昇し二次電池28に対する充電が開始される。
【0113】
図10は、通常状態A1状態においてUSBケーブル10のプラグ14,16がレセプタクル22,24から引き抜かれた例を示している。
【0114】
リセット部78は、制御IC70が通常状態A1である時もVDD端子70aの電圧VDDを監視している。プラグ14,16がレセプタクル22,24から引き抜かれることにより、VDD端子70aの電圧VDDはVDD=0となる(
図10(A)参照)。即ち、VDD端子70aの電圧VDDは1.8V以下になる。
【0115】
VDD端子70aのVDD電圧が1.8V以下になると、リセット部78はラッチ制御部82にラッチ解除信号を送信する(
図6に符号b6で示す処理)。ラッチ制御部82は、リセット部78からラッチ解除信号が供給されるとFET60のラッチ状態を解除する。これにより、通常状態A1状態においてUSBケーブル10のプラグ14,16がレセプタクル22,24から引き抜かれ場合、制御IC70はリセット状態A3になる(
図10に示す例では、時刻t2において制御IC70はリセット状態A3となる)。
【0116】
ところで、上記した異常温度検出処理においては、異物の侵入によるVBUS端子42又はGND電極58の温度上昇をNTCサーミスタ80で検知し、TH端子70bに入力される温度検出電圧が所定のしきい値以上となった時に異常温度が発生したとして、通常状態A1から異常温度検出状態A2に状態を切り替える構成としていた。
【0117】
しかしながら異常温度の検出はこれに限定されるものではなく、温度上昇の変化率を検知する温度変化率検出回路を制御IC70に設けることによっても行うことができる。以下、温度上昇の変化率に基づき異常温度検出を行う方法について説明する。
【0118】
温度変化率検出回路は、
図4に示す温度検出部72に代えて設けられる。また以下の説明では、NTCサーミスタ80に代えてVBUS端子42又はGND電極58の温度Tを測定できる温度センサを用い例について説明するものとする。
【0119】
なお、この温度センサもNTCサーミスタ80と同様に、VBUS端子42又はGND電極58に近接した位置(熱伝導が良好に行われる位置)に配置される。
【0120】
図11は温度変化率検出回路が実行する温度検出処理を示すフローチャートであり、
図12は温度検出処理の原理を説明するための図である。
【0121】
まず、
図12を用いて本実施形態における温度検出処理の原理について説明する。
図12は、横軸に時間を示し、縦軸に温度センサが検出する温度を示している。図中、矢印Aで示す実線は異常温度が発生した異常温度検出状態A2における温度変化を示しており、矢印Bで示す破線は異物の侵入がない通常状態A1における温度変化を示している。
【0122】
通常状態A1における温度変化Bを見ると、単位時間当たりの変化率は小さく、よって略一定の温度となっている。これに対して異常温度検出状態A2における温度変化Aを見ると、単位時間当たりの変化率は大きくなっている。例えば、単位時間(Δt=t2−t1)における変化率を見ると、通常状態A1における温度変化Bでは温度変化がないのに対し、異常温度検出状態A2における温度変化Aでは、ΔTで示す温度変化が発生している。
【0123】
このように、異常温度検出状態A2では単位時間当たりの温度変化(以下、温度変化率という)が大きいため、この温度変化率を求めることにより異常温度検出状態A2を検知することができる。
【0124】
また、
図12に示す温度T
SLは、
図6に示す通常状態A1から異常温度検出状態A2に制御IC70が移行する条件b1に対応する温度を示している。
図12に示されるように、先に説明した実施形態では、VBUS端子42又はGND電極58の温度が温度T
SLを超えるまでは、制御IC70が通常状態A1から異常温度検出状態A2に移行することはなかった。
【0125】
しかしながら本実施形態では、VBUS端子42又はGND電極58の温度が温度T
SL以下であっても、温度変化率が所定の判定値(判定値αということがある)を超えた場合には、異常温度が発生したと判定し、制御IC70の状態を通常状態A1から異常温度検出状態A2に移行させることができる。
【0126】
これにより、異常温度発生時において、温度変化を迅速に検出することができ、USBケーブル10、電源26、及び二次電池28等に破損が生じることをより確実に防止することができる。
【0127】
なお、
図12に矢印T
Wで示す温度範囲は、製品の使用温度(使用環境温度)を示している。この使用環境温度の範囲内において異常温度検出状態A2となりVSUB線12aが遮断されると、USBケーブル10の使い勝手は悪くなる。また、使用環境温度は比較的低い温度であるため、この温度範囲においてUSBケーブル10を使用しても、USBケーブル10、電源26、及び二次電池28等に損傷が発生する可能性は低い。
【0128】
そこで、USBケーブル10等の安全性を保ちつつ使い勝手を向上させるため、使用環境温度内においては、異常温度検出を行わない構成としてもよい。
【0129】
次に、温度変化率検出回路が実施する温度変化率検出処理について、
図11を用いて説明する。
【0130】
温度変化率検出回路の動作が開始されると、まずステップ10(図では、ステップをSと略している)において、温度センサで測定される温度測定値T1を読み取り、これをメモリ等の記憶部に格納する。その後、ステップ12において、所定時間(単位時間Δt)の経過を待つ。
【0131】
所定時間(単位時間Δt)が経過すると、ステップ14において温度変化率検出回路は再び温度センサで測定される温度測定値T2を読み取り、これをメモリ等の記憶部に格納する。続いて温度変化率検出回路は、ステップ16において単位時間Δt当たりの温度変化量ΔT(ΔT=T2−T1)を演算する。
【0132】
ステップ18では、ステップ16で演算された温度変化量ΔTが、所定の判定値α以上であるかどうか判断される。ここで、判定値αとはμB型プラグ16内に異物が侵入した場合に発生する単位時間当たりの温度変化量の内、最も低い温度変化量に設定されている。この判定値αは、実験等により求めることができる。
【0133】
ステップ18で温度変化量ΔTが判定値α未満であると判定された時は、ステップ24において温度測定値T2を温度測定値T1に置き換え(T2→T1)、その後処理はステップ12に戻る。
【0134】
一方、ステップ18で温度変化量ΔTが判定値α以上であると判定された時は、処理はステップ20に進み、温度測定値T1,T2の双方が
図12に矢印TWで示した使用環境温度T
Wを超えているかどうかを判断する。
【0135】
温度測定値T1,T2が使用環境温度T
Wの範囲内であると判断されると、ステップ24において温度測定値T2を温度測定値T1に置き換え(T2→T1)、その後処理はステップ12に戻る。
【0136】
一方、ステップ20で温度測定値T1,T2の双方が使用環境温度T
Wを超えていると判断された場合は、ステップ22において温度変化率検出回路は異常温度が発生したと判断し、異常温度検出信号をNORゲート81に送信する(
図4参照)。温度変化率検出回路が上記の処理を実施することにより、異常温度の検出を迅速に行うことが可能になる。
【0137】
なお前記したように、ステップ20の処理は必ずしも必要ではないが、USBケーブル10の使い勝手を考慮した場合には、含めておいた方が有効である。
【0138】
図13及び
図14は、温度変化率検出回路90Aの具体的な実施例を示している。
【0139】
図13に示す温度変化率検出回路90Aは、A/D変換器92、メモリ93、タイマ94、演算、判定回路96、及び出力回路98を有している。
【0140】
温度センサからの温度信号は、A/D変換器92に供給される。タイマ94はA/D変換器92に接続されており、タイマ94が単位時間Δtごとに発生する信号により、A/D変換器92は温度信号をA/D変換しメモリ93に送信する。
【0141】
演算、判定回路96では、メモリ93から今回測定された温度測定値T2から前回測定された温度測定値T1を減算して温度変化量ΔT(ΔT=T2−T1)を求める。温度変化量ΔTが演算されると、判定回路96は予めメモリ93に格納されている判定値αと温度変化量ΔTとを比較する。そして、温度変化量ΔTが判定値α以上であると判定された場合は、演算、判定回路96は出力回路98に判定信号を送信し、出力回路98は異常温度検出信号をNORゲート81に向け出力する。
【0142】
一方、
図14に示す温度変化率検出回路90Bは、スイッチSW1〜SW3、温度情報保持回路100、演算回路102、及び判定回路104を有している。
【0143】
スイッチSW1とスイッチSW2,SW3は、同期して接続状態を変える構成とされている。本実施形態では、スイッチSW1〜SW3は単位時間Δtごとに接続状態を変える構成とされている。
【0144】
また温度情報保持回路100は、第1電圧保持回路106と第2電圧保持回路108が並列に配置された構成とされている。第1及び第2の温度情報保持回路100,108は、オペアンプとコンデンサー等により構成されるサンプル&ホールド回路であり、温度センサから供給される温度信号をホールドできる構成とされている。
【0145】
温度センサから供給される温度信号は、スイッチSW1により単位時間Δtごとに第1電圧保持回路106と第2電圧保持回路108に交互に供給される。よって、第1電圧保持回路106と第2電圧保持回路108には、測定時間が単位時間Δtだけずれた温度信号がホールドされる。
【0146】
演算回路102には、スイッチSW2,SW3が単位時間Δtごと切り替わることにより、第1及び第2電圧保持回路106から測定時間が単位時間だけずれた温度測定値T1と温度測定値T2が供給される。
【0147】
演算回路102では、温度測定値T2から温度測定値T1を減算して温度変化量ΔT(ΔT=T2−T1)を求める。また温度変化量ΔTを判定値αに対応した基準電圧と比較し、温度変化量ΔTが判定値α以上である場合は、判定回路104に判定信号を送信する。判定信号が供給されると、判定回路104は異常温度検出信号をNORゲート81に向け出力する。
【0148】
なお、温度変化率検出回路は
図13及び
図14に示した温度変化率検出回路90A,90Bに限定されるものではなく、種々の回路構成とすることが可能なものである。
【0149】
次に、
図4に示した制御回路11における電流の遮断方向に着目する。
【0150】
図4に示す実施形態のように、異常状態においてVBUS線12aを遮断する部品としてFET60等の半導体素子を用いると、半導体素子の内部で生成される寄生ダイオード(Body-Diode)のため、単一方向のみ電流制御が可能であるが、逆方向の電流遮断は寄生ダイオードを経由して電流が流れるため電流遮断制御ができなくなる。
【0151】
図4に示す例では、S(ソース)からD(ドレイン)に向かう電流方向、A型プラグ14からμB型プラグ16への電流方向の遮断制御のみ可能となる。即ち、μB型プラグ16に電源26を接続し、A型プラグ14に二次電池28を接続した場合には、二次電池28に対して適正な充電処理を行うことができなくなる。
【0152】
しかしながら、今後のUSBケーブル10の応用として、双方向で電力を供給する用途の拡大が想定される。即ち、A型プラグ14側が電源供給手段に接続される時は、A型プラグ14側が電源供給手段で、μB型プラグ16側に接続された二次電池を充電し、もしくはμB型プラグ16側に接続された負荷を駆動する。
【0153】
また双方向で電力供給が可能なUSBケーブル10では、A型プラグ14側が負荷に接続される時には、μB型プラグ16側に接続された二次電池で負荷を駆動することができる。この際、負荷は携帯機器そのものでも良いし、二次電池としても良い。更に、負荷として二次電池を接続した場合は、μB型プラグ16側に接続された二次電池で、A型プラグ14側に接続された二次電池を充電することが可能になる。
【0154】
次に、上記のように双方向で電力供給が可能となる具体的な制御回路の構成について説明する。
【0155】
図15及び
図16は、USBケーブル10の双方向に対して電力供給が可能となるよう構成された制御回路111,211を示している。なお、
図15及び
図16において、
図4に示した構成と対応する構成については同一符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0156】
双方向で電力供給が可能なUSBケーブル10では、電源がA型プラグ14とμB型プラグ16のいずれか、或いは双方から電流供給が行われる。従って、電流遮断制御も双方向の電流に対応することが必要となる。
【0157】
図15に示す例は、2個のFET60−1,60−2をVBUS線12aに直列に付加することにより双方向に対する電流の遮断を可能としたものである。FET60−1とFET60−2は、D(ドレイン)が共通となるようVBUS線12aに直列に配置されている。なお、以下の説明において一対のFET60−1,60−2を双方向接続したものを双方向スイッチと称することがある。
【0158】
制御回路111の制御IC70は一対のFET60−1,60−2に対応して一対の遮断信号出力部86−1,86−2を設けている。なお
図15では、図示の便宜上、遮断信号出力部86−1,86−2のみを図示し、温度検出部72、過放電検出部74、オープン検出部76、リセット部78、NORゲート81,ラッチ制御部82、及びレベルシフト部84等は、まとめて制御回路構成部71として示している。
【0159】
しかしながら、
図15に示した制御回路111では、制御IC70がそれぞれFET60−1,60−2を確実に遮断するために、各FET60−1,60−2のゲートG1,G2に対して各ソースS1,S2の電位に等しい電圧で駆動する必要がある。このため、制御IC70には、個々のFET60−1,60−2ごとに電源供給用のVDD1端子70a−1及びVDD2端子70a−2が必要となるとともに、個々の遮断信号出力端子(OV端子)70c−1,70c−2が必要になり、制御IC70の規模や端子数が大幅に増加してしまう。
【0160】
これに対して
図16に示す実施形態に係る制御回路211は、
図15に示した制御回路111と同様に2個のFET60−1,60−2をVBUS線12aに直列に付加するが、S(ソース)が共通となるようFET60−1,60−2をVBUS線12aに直列に配置している点で異なっている。
【0161】
本実施形態のようにFET60−1,60−2の各ソースS側を中点として接続するとともにドレインD1,D2を外側に配置することで、FET60−1,60−2の寄生ダイオードをワイヤードORとして使用することができる。
【0162】
これにより、A型プラグ14又はμB型プラグ16のいずれかから電源が供給されても、FET60−1,60−2は制御IC70のVDD端子70aを共通の電源(VDD)として使用することができる。更に、各々のFET60−1,60−2の電流遮断時のゲート電位を上記のワイヤードOR(共通のソース電位)にすることが可能となり、確実にFET60−1,60−2でVBUS線12aの双方向に対する電流遮断を行うことができる。
【0163】
図15及び
図16に示すように、制御回路111,211がVBUS線12aに直列に挿入された双方向スイッチ(FET60−1,60−2)を制御するので、通常時においてはUSBケーブル10を用いて双方向で電力供給が可能になり、また異常発生時(NTCサーミスタ81で検出した温度が所定の値を超えた場合等)には、双方向スイッチをオフしてVBUS線12aを遮断することができる。
【0164】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【0165】
具体的には、上記した実施形態ではNTCサーミスタ80をVBUS端子42の近傍に配置した例を示したが、異物の侵入位置によってはGND端子48の温度が上昇する場合もある。よって、NTCサーミスタ80をGND端子48に近接した位置に配置する構成としてもよい。
【0166】
また、上記した実施形態では設けなかったが、制御IC70がVSUB線12aの遮断を維持した時に、VSUB線12aの遮断の維持を通知するインジケータ及びこのインジケータを制御するインジケータ制御回路をμB型プラグ16に設けた構成としてもよい。インジケータとしては、例えばLEDを使用することができる。VSUB線12aの遮断を維持した時にLEDを点灯するようにしてもよいし、遮断を維持した時以外は点灯し、遮断を維持した時に消灯するようにしてもよい。この構成することにより、USBケーブル10のユーザーに、USBケーブル10の異常を通知することができる。
【0167】
また、上記した実施例では、制御回路11,111,211、FET60,60−1,60−2、及びNTCサーミスタ81をμB型プラグ16側のハウジング20に内蔵した例で説明したが、これらの各構成部品をA型プラグ14側のハウジング18に内蔵しても良く、またA型プラグ14とμB型プラグ16の各ハウジング18,20の両方に内蔵した構成としてもよい。この場合にはA型プラグ14及びμB型プラグ16の双方で異常温度の検出を行うことができるため、制御回路11,111,211の信頼性を高めることができる。