【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、経済産業省、ロボット介護機器開発・導入促進事業(開発補助事業)委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
図1に示す介護用移乗機1は、要介護者をくるむスリングシートSH(
図5参照)を吊り上げることによって、要介護者をベッドから車椅子等へ移乗させる。
図1〜
図3に示すように、介護用移乗機1は、固定ボディ部2、可動ボディ部3、脚部4、アーム部5、ボディ駆動部6、アーム駆動部7、フック8、及び制御ボックス9を備えている。
【0010】
固定ボディ部2は、上下方向に延びる柱部21と、柱部21の上端部近傍に取り付けられたハンドル22とを有している。ハンドル22は、介護用移乗機1を移動させる際に、介護者によって把持される。
【0011】
可動ボディ部3は、柱部21の上部に連結されている。可動ボディ部3は、柱部21に連結された基端部3aを軸として、先端部3bが上下に移動するように揺動する(
図2及び
図3参照)。可動ボディ部3は、平行リンク機構30と、固定部31とを有している。平行リンク機構30は、柱部21と固定部31とを連結している。平行リンク機構30は、上側リンク30aと、上側リンク30aの下側に配置された下側リンク30bとを有している。
【0012】
上側リンク30a及び下側リンク30bの基端部は、それぞれ柱部21に揺動可能に連結されている。上側リンク30a及び下側リンク30bの先端部は、それぞれ固定部31(連結板31d)に揺動可能に連結されている。上側リンク30a及び下側リンク30bは、互いに平行となるように、柱部21と固定部31とに連結されている。上側リンク30aにおける柱部21との連結部から固定部31との連結部までの長さと、下側リンク30bにおける柱部21との連結部から固定部31との連結部までの長さとは、同じとなっている。
【0013】
上側リンク30aにおける固定部31との連結部の位置は、下側リンク30bにおける固定部31との連結部の位置に対して鉛直方向直上に位置している。これにより、
図2及び
図3に示すように、平行リンク機構30を揺動させた場合であっても、固定部31の鉛直方向に対する傾きが変化しない。
【0014】
固定部31は、支持部31a、旋回部31b、及び2つの連結板31dを有している。連結板31dは、上側リンク30a及び下側リンク30bの先端部を挟み込むようにして、上側リンク30a及び下側リンク30bに連結されている。上側リンク30a及び下側リンク30bは、連結板31dに対して揺動可能となっている。支持部31aは、連結板31dに固定されている。旋回部31bは、支持部31aに取り付けられた軸31cによって支持部31aに旋回可能に支持されている。軸31cは、鉛直方向に延びている。
図4に示すように、旋回部31bは、軸31cを軸として、支持部31aに対して旋回する。
【0015】
ボディ駆動部6は、固定ボディ部2に対して可動ボディ部3を揺動させる。具体的には、ボディ駆動部6の下端は柱部21に連結され、ボディ駆動部6の上端は下側リンク30bに連結されている。ボディ駆動部6は、例えば、本体部6aに対して進退するロッド6bを有するアクチュエータである。ボディ駆動部6がロッド6bを進退させることによって、可動ボディ部3が揺動し、可動ボディ部3の先端部が上下に移動する。
【0016】
脚部4は、柱部21の下端部に取り付けられている。脚部4は、柱部21から可動ボディ部3が延びる方向と同じ方向に向かって延びている。脚部4は、可動ボディ部3等が取り付けられた柱部21の転倒を防止する。また、脚部4には、キャスター41が取り付けられている。これにより、介護者は、介護用移乗機1を容易に移動させることができる。
【0017】
アーム部5は、要介護者を吊るために使用される。アーム部5は、可動ボディ部3の先端部に固定されている。具体的には、アーム部5は、固定部31の旋回部31bに固定されている。ここで、説明の便宜上、可動ボディ部3に対してアーム部5が設けられている側を「前」、可動ボディ部3に対して固定ボディ部2が設けられている側を「後ろ」と言う。また、介護用移乗機1の後ろ側から前側を見たときの右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0018】
アーム部5は、一対の固定アーム部(右固定アーム部50a及び左固定アーム部50b)と、可動アーム部51とを有している。右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bは、旋回部31bに固定されている。可動ボディ部3の延在方向と軸31cからの旋回部31bの延び方向とを同じとした状態において(
図1に示す状態)、右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bは、旋回部31bから可動ボディ部3の基端部3a側に対して反対側に向かって延びている(
図1及び
図2等参照)。すなわち、右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bは、旋回部31bを起点として、可動ボディ部3の基端部3aから離れる側に向かって延びている。具体的には、右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bは、旋回部31bから前側に向かって延びている。また、
図2に示すように、右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bは、旋回部31bから鉛直方向に対して所定の角度で下方側に向かって延びている。
【0019】
右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bは、互いに平行に延びる平行部位hをそれぞれ有している。右固定アーム部50aの平行部位hと、左固定アーム部50bの平行部位hとは、水平方向において互いに所定距離離間している。右固定アーム部50aは、旋回部31bから右方向に向かって延びたあと、前側に向かって延びている。右固定アーム部50aの平行部位hは、右固定アーム部50aにおいて前側に向かって延びる部位である。左固定アーム部50bは、旋回部31bから左方向に向かって延びたあと、前側に向かって延びている。左固定アーム部50bの平行部位hは、左固定アーム部50bにおいて前側に向かって延びる部位である。
【0020】
なお、右固定アーム部50aと左固定アーム部50bとは、一つの部材によって構成されていてもよい。
【0021】
可動アーム部51は、右湾曲アーム部51aと、左湾曲アーム部51bと、連結アーム部51cとを有している。
図2において、右湾曲アーム部51aと連結アーム部51cとの区別を容易にするため、境界線Kを示している。左湾曲アーム部51bと連結アーム部51cとの境界線についても、右湾曲アーム部51aと連結アーム部51cとの境界線Kと同様の位置となる。但し、右湾曲アーム部51a、左湾曲アーム部51b、及び連結アーム部51cは、それぞれ別々の部材であることに限定されない。右湾曲アーム部51a、左湾曲アーム部51b、及び連結アーム部51cは、一つの部材によって構成されていてもよい。
【0022】
右湾曲アーム部51aは、右固定アーム部50aの先端部に揺動可能に連結されている。より詳細には、右固定アーム部50aの先端部は、右湾曲アーム部51aの中間部に連結されている。右湾曲アーム部51aは、右湾曲アーム部51aの両端部が固定部31側に近づくように湾曲している。具体的には、
図2に示すように、右湾曲アーム部51aの両端部をつなぐ仮想線Lよりも、右湾曲アーム部51aの中間部分が固定部31から離れる側に位置している。
【0023】
右湾曲アーム部51aと同様に、左湾曲アーム部51bは、左固定アーム部50bの先端部に揺動可能に連結されている。より詳細には、左固定アーム部50bの先端部は、左湾曲アーム部51bの中間部に連結されている。左湾曲アーム部51bは、左湾曲アーム部51bの両端部が固定部31側に近づくように湾曲している。具体的には、右湾曲アーム部51aと同様に、左湾曲アーム部51bの両端部をつなぐ仮想線よりも左湾曲アーム部51bの中間部分が固定部31から離れる側に位置している。
【0024】
右湾曲アーム部51a及び左湾曲アーム部51bは、上方から見たときに、それぞれ前後方向に延びている。連結アーム部51cは、右湾曲アーム部51aの上端部と、左湾曲アーム部51bの上端部とを連結している。
【0025】
アーム駆動部7は、右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bに対して、可動アーム部51を傾斜させる。具体的には、アーム駆動部7の一方の端部は左固定アーム部50bに連結され、アーム駆動部7の他方の端部は左湾曲アーム部51bに連結されている。アーム駆動部7は、例えば、本体部7aに対して進退するロッド7bを有するアクチュエータである。
【0026】
アーム駆動部7がロッド7bを進退させることによって、可動アーム部51は、
図2に示すように、右固定アーム部50aの先端部との連結部T及び左固定アーム部50bの先端部との連結部Tを軸として揺動する。
【0027】
フック8には、要介護者をくるむスリングシートSHの紐が引っ掛けられる(
図5参照)。本実施形態においてフック8は、右湾曲アーム部51aに対して3つ設けられている。より詳細には、右湾曲アーム部51aには、右固定アーム部50aとの連結部Tよりも前側の位置に一つ、連結部Tよりも後ろ側の位置に2つ設けられている。すなわち、フック8は、右湾曲アーム部51aに対して、右湾曲アーム部51aと右固定アーム部50aとの連結部Tを挟んで2以上設けられている。
【0028】
同様に、フック8は、左湾曲アーム部51bに対して3つ設けられている。より詳細には、左湾曲アーム部51bには、左固定アーム部50bとの連結部Tよりも前側の位置に一つ、連結部Tよりも後ろ側の位置に2つ設けられている。すなわち、フック8は、左湾曲アーム部51bに対して、左湾曲アーム部51bと左固定アーム部50bとの連結部Tを挟んで2以上設けられている。
【0029】
制御ボックス9には、ボディ駆動部6及びアーム駆動部7を駆動するための制御回路、バッテリー、及び制御用のスイッチ等が設けられている。介護者は、制御ボックス9に設けられたスイッチを操作することによって、可動ボディ部3を上下させたり、可動アーム部51を傾斜させたりすることができる。
【0030】
次に、介護用移乗機1によって要介護者を吊り上げる手順について説明する。
図5に示すように、要介護者Aを吊り上げる場合、まず、介護者は、要介護者Aを下側からスリングシートSHでくるみ、スリングシートSHの紐をフック8に引っ掛ける。
図5に示す例では、右湾曲アーム部51a及び左湾曲アーム部51bに設けられた6個のフック8のうち、右湾曲アーム部51a及び可動アーム部51にそれぞれ設けられた最も後ろ側のフック8を除いた4つのフック8にスリングシートSHの紐を引っ掛けている。
【0031】
スリングシートSHの紐をフック8に引っ掛けた状態で、介護者は、可動ボディ部3の先端部が上側に移動するように制御ボックス9のスイッチを操作し、要介護者Aを吊り上げる。このとき、要介護者Aは、上方から見たときに、右固定アーム部50aの平行部位hと左固定アーム部50bの平行部位hとの間に位置している。
【0032】
介護者は、可動ボディ部3の先端部の旋回部31bを支持部31aに対して旋回させることで、アーム部5の向きを変えることができる。アーム駆動部7を駆動させて可動アーム部51を傾斜させることで、スリングシートSHにくるまれた要介護者Aの姿勢を起こした状態にしたり、寝かせた状態にしたりすることができる。介護者は、ハンドル22を握って介護用移乗機1を移動させることで、吊り上げられた要介護者Aを移動させることができる。
【0033】
本実施形態は以上のように構成され、一対の右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bは、水平方向において互いに所定距離離間している。具体的には、右固定アーム部50aの平行部位hと、左固定アーム部50bの平行部位hとは水平方向において互いに離間している。これにより、介護用移乗機1は、右固定アーム部50aの平行部位hと左固定アーム部50bの平行部位hとの間に要介護者を位置させた状態で要介護者を右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bで吊り上げることができる。また、介護用移乗機1の右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bは、可動ボディ部3の先端部から可動ボディ部3の基端部3a側に対して反対側に向かって延びている(
図2に示す例では、前側に向かって延びている)。これにより、右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bの上側に可動ボディ部3が位置することが無い。このように、介護用移乗機1は、右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bで要介護者を吊り上げるときにも、要介護者の上側に容易に空間を確保することができる。要介護者の上側に空間が確保されているので、この介護用移乗機1では、要介護者の移乗を容易に行うことができる。
【0034】
右湾曲アーム部51aは、右湾曲アーム部51aの両端部が可動ボディ部3の先端部3bに近づく向きに湾曲している。左湾曲アーム部51bは、左湾曲アーム部51bの両端部が可動ボディ部3の先端部3bに近づく向きに湾曲している。フック8は、右湾曲アーム部51aに対して、右湾曲アーム部51aと右固定アーム部50aとの連結部Tを挟んで2以上設けられている。同様に、フック8は、左湾曲アーム部51bに対して、左湾曲アーム部51bと左固定アーム部50bとの連結部Tを挟んで2以上設けられている。スリングシートSHの紐を右湾曲アーム部51aに設けられたフック8に引っ掛ける場合、右固定アーム部50aと右湾曲アーム部51aとの連結部Tよりも前側に設けられたフック8と、連結部Tよりも後ろ側に設けられたフック8に紐を引っ掛ける。同様に、スリングシートSHの紐を左湾曲アーム部51bに設けられたフック8に引っ掛ける場合、左固定アーム部50bと左湾曲アーム部51bとの連結部Tよりも前側に設けられたフック8と、連結部Tよりも後ろ側に設けられたフック8に紐を引っ掛ける。この場合、介護用移乗機1は、要介護者を吊り上げたときに、右固定アーム部50aと右湾曲アーム部51aとの連結部T、及び左固定アーム部50bと左湾曲アーム部51bとの連結部Tとを要介護者に近づけることができる。すなわち、介護用移乗機1は、これらの連結部Tを軸として可動アーム部51を揺動させたときに、揺動の軸を要介護者に近づけることができる。従って、介護用移乗機1は、可動アーム部51を揺動させて要介護者の姿勢を変化させる(要介護者を寝かせる、又は起こす)際に、揺動の軸が要介護者から遠い場合に比べて少ない移動量で要介護者の姿勢を変化させることができる。
【0035】
介護用移乗機1は、右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bに対して可動アーム部51を揺動させるアーム駆動部7を備えている。これにより、介護者は、アーム駆動部7を駆動させて可動アーム部51の傾斜角度を変えることで、要介護者の姿勢を変化させることができる。
【0036】
フック8が取り付けられる右湾曲アーム部51a及び左湾曲アーム部51bは、連結アーム部51cによって互いに連結されている。これにより、右湾曲アーム部51aと左湾曲アーム部51bとの間隔を容易に一定に保つことができる。また、右湾曲アーム部51aと左湾曲アーム部51bとを連動させて揺動させることができる。これにより、右湾曲アーム部51a及び左湾曲アーム部51bの一方のみをアーム駆動部7によって駆動することで、右湾曲アーム部51a及び左湾曲アーム部51bの両方を揺動させることができる。
【0037】
可動ボディ部3は、平行リンク機構30を備えている。これにより、介護用移乗機1は、可動ボディ部3の固定部31に固定されたアーム部5の鉛直方向に対する傾きを変化させることなく、可動ボディ部3を揺動させることができる。このように、可動ボディ部3を揺動させてもアーム部5の傾きが変化しないので、介護用移乗機1は、アーム部5によって吊り上げられた要介護者の姿勢の変化を抑制しつつ要介護者を昇降させることができる。
【0038】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、右湾曲アーム部51aに設けられるフック8の数は3つに限定されない。同様に、左湾曲アーム部51bに設けられるフック8の数は3つに限定されない。また、可動アーム部51に設けられた4つのフック8にスリングシートSHの紐を引っ掛けて要介護者を吊り上げたが、4つのフック8を用いることに限定されない。例えば、可動アーム部51に設けられた6つのフック8にスリングシートSHの紐を引っ掛けて要介護者を吊り上げてもよい。
【0039】
可動アーム部51は、右湾曲アーム部51aと左湾曲アーム部51bとを連結する連結アーム部51cを有していなくてもよい。
【0040】
また、アーム部5は、可動アーム部51を有していなくてもよい。この場合、右固定アーム部50a及び左固定アーム部50bにフック8を取り付けて、このフック8を用いて要介護者を吊り上げてもよい。
【0041】
ボディ駆動部6は、本体部6aに対して進退するロッド6bを有するアクチュエータとしたが、これ以外の機構であってもよい。また、介護用移乗機1は、ボディ駆動部6を備えていなくてもよい。例えば、可動ボディ部3は、介護者によって手動で揺動させられる構成であってもよい。
【0042】
アーム駆動部7は、本体部7aに対して進退するロッド7bを有するアクチュエータとしたが、これ以外の機構であってもよい。また、介護用移乗機1は、アーム駆動部7を備えていなくてもよい。例えば、可動アーム部51は、介護者によって手動で揺動させられる構成であってもよい。
【0043】
可動ボディ部3は、平行リンク機構30を有していなくてもよい。この場合、可動ボディ部3は、他の機構によって、揺動可能に柱部21に取り付けられていてもよい。