特許第6296152号(P6296152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296152
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】電圧検出部を備える電源装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20180312BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20180312BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   G01R19/00 D
   H01M10/48 P
   H02J7/00 Q
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-514727(P2016-514727)
(86)(22)【出願日】2015年4月24日
(86)【国際出願番号】JP2015002224
(87)【国際公開番号】WO2015162937
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2016年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-91018(P2014-91018)
(32)【優先日】2014年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116078
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 淳
(72)【発明者】
【氏名】松原 智之
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−181168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 31/36
H01M 10/48
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続されるN(Nは任意の自然数)個の電池セルで構成される組電池と、
各々の電池セルの端子電位に応じたアナログ信号を取得する(N+1)個の測定線と、
前記(N+1)個の測定線を介して入力される複数のアナログ信号を、所定の周波数成分を減衰させて出力するフィルタ回路と、該フィルタ回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器と、を備え、
前記フィルタ回路は、
前記(N+1)個の測定線が接続される(N+1)個の入力端子と、
前記(N+1)個の入力端子に対応して設けられる(N+1)個の出力端子と、
同一の抵抗値を有する(N+1)個のフィルタ抵抗であって、各々の入力端子と各々の出力端子とを接続するように設けられる(N+1)個のフィルタ抵抗と、
同一のキャパシタンスを有する(N+1)個のフィルタコンデンサと、を含むと共に、
前記フィルタ回路は、グランドに対してフローティングされており、
前記(N+1)個のフィルタコンデンサは、それぞれ、一端が各々の前記フィルタ抵抗と各々の前記出力端子の間に接続され、他端が互いに共通に接続されることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
各々のフィルタコンデンサは、少なくとも一つのコンデンサ素子を含み、
各々のフィルタ抵抗は、少なくとも一つの抵抗器を含むことを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルが直列に接続された組電池と、各々の電池セルの電圧を検出する電圧検出部を備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルで構成される組電池を備えた電源装置では、過充電や過放電等の電池セルの異常な状態を回避するために、各々の二次電池セルの電圧や温度等を状態監視部が常時監視している。特に、複数の電池セルが直列に接続された組電池を使用する場合、状態監視部として、各々の電池セルの電圧を検出するための電圧検出部が設けられる。検出される各々の電池セルの電圧は、充放電制御などに使用される。
【0003】
電圧検出部は、組電池を構成する各々の電池セルの端子電位を取得し、差動増幅器やアナログデジタル変換器を介して、各々の電池の電圧を検出する。このとき、アナログデジタル変換器に入力される入力信号の周波数と、アナログデジタル変換器のサンプリング周波数の関係によっては、電圧検出の精度が低下することがある。具体的には、アナログデジタル変換器に入力されるアナログ信号の最大周波数が、サンプリング周波数の半分の値(ナイキスト周波数)を超えないようにする必要がある。アナログ信号にナイキスト周波数を超える周波数成分があると、入力信号が重なり合ってしまう。入力信号が重なり合うと、アナログデジタル変換器の出力信号は、不要な信号情報(エイリアシング誤差)を含んだデジタル信号となり、デジタル信号の精度が低下する問題が生じる。
【0004】
この問題を解決する方法として、アナログデジタル変換器と各々の電池セルの間に設けられるフィルタ回路を備える構成の電源装置が知られている(特許文献1)。特許文献1のフィルタ回路は、ローパスフィルタであり、各々の電池セルの電位に対応するアナログ信号がフィルタ回路に入力されると、それぞれの入力信号に対して、遮断周波数以上の周波数の信号を減衰させてアナログデジタル変換器へ出力する。この構成により、アナログデジタル変換器へ入力されるアナログ信号の最大周波数を低減することができ、エイリアシング誤差の発生を防止するようになっている。
【0005】
特許文献1の電源装置は、各々のコンデンサの容量や各々の抵抗器の抵抗値を最適な値に設定することで、電池モジュール間に接続される抵抗器が共通としながら、フィルタ回路の各々の出力の周波数応答を均一にすることができるようになっている。このように、精度の高い電圧検出を行うためには、フィルタ回路は、各々の出力の周波数応答を揃える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−150867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、フィルタ回路の周波数応答は、フィルタ回路を構成するコンデンサおよび抵抗器の回路定数によって決まる。標準化されているコンデンサ(汎用品のコンデンサ)の種類は、抵抗器と比べて限られているので、実際にフィルタ回路を設計する場合には、選択したコンデンサのキャパシタンスに合せて、抵抗器の抵抗値でフィルタ回路の周波数応答を調整することになる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成では、各々のコンデンサの容量が電池モジュールの直列数や対応する電池モジュールの位置に応じて異なっており、その最適な値も演算によって決まる。そのため、接続する電池セルの直列数に応じて、容量の異なるコンデンサを多数用意する必要がある。各々のコンデンサのキャパシタンスは、演算によって最適値が決まるため、必ずしも演算した最適値と一致するキャパシタンスのコンデンサが標準化されているとは限らない。特許文献1の電源装置には、演算した最適値と一致する容量のコンデンサがなければ、特性が近いコンデンサで代用することになり、フィルタ回路の各々の出力の周波数応答にずれが生じる問題がある。
【0009】
本発明は、斯かる状況を鑑みてなされたものであり、その主な目的は、フィルタ回路の各々の出力の周波数応答を容易に揃えることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電源装置は、直列に接続されるN(Nは任意の自然数)個の電池セルで構成される組電池と、各々の電池セルの端子電位に応じたアナログ信号を取得する(N+1)個の測定線と、前記(N+1)個の測定線を介して入力される複数のアナログ信号を、所定の周波数成分を減衰させて出力するフィルタ回路と、該フィルタ回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器と、を備えている。前記フィルタ回路は、前記(N+1)個の測定線が接続される(N+1)個の入力端子と、前記(N+1)個の入力端子に対応して設けられる(N+1)個の出力端子と、同一の抵抗値を有する(N+1)個のフィルタ抵抗であって、各々の入力端子と各々の出力端子とを接続するように設けられる(N+1)個のフィルタ抵抗と、同一のキャパシタンスを有する(N+1)個のフィルタコンデンサとを含んでいる。(N+1)個のフィルタコンデンサは、それぞれ、一端が各々のフィルタ抵抗と各々の出力端子の間に接続され、他端が互いに共通に接続される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のある態様によれば、略同一のキャパシタンスを有するフィルタコンデンサと、略同一の抵抗値を有するフィルタ抵抗を用いて、各々の出力の周波数応答が揃うフィルタ回路を構成することができるので、各々の出力の周波数応答が揃ったフィルタ回路を、標準化されている回路定数(キャパシタンスや抵抗値等)の回路素子を用いて形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のある態様の電源装置の構成を示す回路図である。
図2】本発明のある態様のフィルタ回路の構成を示す回路図である。
図3図3A図3Bおよび図3Cは、本発明のある態様のフィルタ回路の入出力比を説明するための回路図である。具体的には、図3Aは、ある態様のフィルタ回路の回路図であり、図3Bは、図3Aにおいて、電位が高いほうから数えて2番目の電池セルからの入力電圧V2inに対する出力に着目した場合の図3Aの等価回路であり、図3Cは、図3Bにおいて同電位となるノードを整理して図示した等価回路である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る電源装置100の概要を模式的に示す回路図である。実施の形態に係る電源装置100は、車両や蓄電装置に搭載される電源として備えられる複数の組電池200と、組電池200からアナログ信号を取得し、所定の遮断周波数を越える周波数成分を減衰させて出力するフィルタ回路300と、フィルタ回路300が出力するアナログ信号が入力され、入力されるアナログ信号を基に組電池200の状態を監視する状態監視部400と、を備える。フィルタ回路300は、組電池200ごとに設けられており、複数の入力端子310と複数の出力端子320を有している。さらに、電源装置100は、フィルタ回路300の各々の入力端子310と、対応する組電池200を構成する電池セルの電極端子を接続する測定線DLを備えている。
【0014】
状態監視部400は、複数のフィルタ回路300の各々の出力が入力され、任意の出力を選択するスイッチ部420と、スイッチ部420が選択した出力が入力される差動増幅回路440と、アナログデジタル変換器460とを含む。スイッチ部420は、各々の入力を周期的に選択して出力する切替回路であり、測定値と検出対象の電池セルを関係付けることができるようになっている。差動増幅回路440は、入力されたアナログ信号を増幅して出力し、アナログデジタル変換器460へ入力する。
【0015】
アナログデジタル変換器460は、所定のサンプリング周期で、入力されるアナログ信号をデジタル信号へ変換して出力する。アナログ信号を所定のサンプリング周期(fs)でサンプリングすると、アナログ信号の周波数(fi)に対して、新たに差の周波数信号(fs−fi)と和の周波数信号(fs+fi)が生じる。従って、サンプリング周期が短くなると、アナログ信号の周波数fiと差の周波数信号(fs−fi)とが重なりあってしまうおそれがある。実際には、組電池を構成する電池セルのから取得するアナログ信号は、さまざまな周波数成分を有するスペクトルとなるが、その最大周波数成分fimaxに対して、差の周波数信号が小さくなるような(fs−fimax≦fimax)サンプリング周波数が設定されると、検出信号のスペクトルが重なり合い、アナログデジタル変換器460のデジタル信号出力にノイズが混入してしまう。
【0016】
一般的には、アナログ信号をサンプリングしてデジタル信号へ変換する場合、上述のようなノイズの混入を防ぐ目的で、サンプリング周波数を充分な速度になるように設定される。サンプリング周波数の1/2の周波数は、特にナイキスト周波数と呼ばれており、具体的には、このナイキスト周波数がアナログ信号の最高周波数成分よりも大きくなるように、サンプリング周期を設定する必要がある。アナログデジタル変換器460のサンプリング周期を短くすることで、ノイズの混入を容易に防止することができるが、サンプリング周期が極端に短いと、サンプリングされるデータ量が増大する問題がある。特に、サンプリングしたデータを使って、演算処理を行う場合、データ量が膨大になると演算にかかる時間が増大するため、サンプリング速度を高速化する構成には限界がある。
【0017】
フィルタ回路300は、電圧検出回路を実現する測定器やA/D変換ボードの制限等により、アナログデジタル変換器460のサンプリング周期を充分な速度に設定できないような場合に有効である。フィルタ回路300は、上述の通り、ローパスフィルタであり、測定線DLから取得するアナログ信号に対して、遮断周波数以上の周波数の信号を減衰させる。それにより、アナログデジタル変換器460へ入力する信号の最高周波数成分がナイキスト周波数を上回ることを抑制することができるようになっている。
【0018】
本願発明の電源装置のように、車両や蓄電装置へ搭載される組電池の場合は、組電池から取得する測定値を使って、各々の電池セルのSOC(充電率)や劣化度を演算するため、サンプリング速度はあまり速くできない。従って、フィルタ回路は、実質的に必須の構成であるが、フィルタ回路は、多数の抵抗器とコンデンサ素子を必要であり、電源装置のコスト増加が問題となる。電源装置のコストを低減するためには、コンデンサの耐圧抑制や、配線の共通化が有効である。
【0019】
図2は、本願発明のある態様におけるフィルタ回路の構成を示す回路図である。組電池200は、直列に接続される三つの電池セルを有する。電源装置100は、アナログ信号を取得するための四つの測定線DLを有しており、各々の電池セルの電極端子に、測定線DLが接続される。フィルタ回路300は、各々の測定線DLが接続される四つの入力端子310と、各々の入力端子310に対応して設けられる四つの出力端子320と、を備える。フィルタ回路300は、さらに、各々の入力端子310と各々の出力端子320とを接続するように設けられる四つのフィルタ抵抗340と、一端が各々のフィルタ抵抗340と各々の出力端子320の間に接続される三つのフィルタコンデンサ360と、各々のフィルタコンデンサ360の他端が接続される共通ラインBLと、を備える。また、共通ラインBLは、グランドに対してフローティングされている。なお、ここでいう「フローティング」とは、グランドに対して共通ラインBLの電位が独立している状態を指すものとする。
【0020】
この構成によると、各々の出力端子320は、隣接する出力端子320に対して、直列接続される二つのフィルタコンデンサ360を介して接続される。図2のフィルタ回路300において、各々のフィルタコンデンサ360は、同一のキャパシタンスである。また、各々のフィルタ抵抗340は、同一の抵抗値を有する。
【0021】
なお、図2において、各々のフィルタコンデンサ360は、一つのコンデンサ素子で構成され、各々のフィルタ抵抗340は、一つの抵抗器で構成される回路図を図示しているが、複数の回路素子を用いてフィルタコンデンサ360あるいはフィルタ抵抗340を実現することもできる。
【0022】
また、フィルタ回路300は、ICではなく回路基板に実装される回路素子の組み合わせによって実現できるので、必ずしも部材としての入力端子310や出力端子320を有する必要はない。例えば、電池セルの電極端子とフィルタ回路300や、フィルタ回路300と状態監視部400は、リード線や回路基板のパターンによってシームレスに接続される場合もあるが、本明細書における入力端子310あるいは出力端子320とは、このような構成も含むことは当業者に理解されるところである。
【0023】
次に図2に例示するフィルタ回路の周波数応答について説明する。図2に例示する本願発明のある態様のフィルタ回路は、一般化すると以下のような構成となる。
【0024】
組電池200は、任意の自然数(正の整数)となるN個の電池セルが直列に接続される。組電池200には、(N+1)個の測定線DLが接続されており、N個の電池セルのそれぞれの電極端子に測定線DLが接続される。フィルタ回路300は、(N+1)個の入力端子310と(N+1)個の出力端子320とを有しており、各々の測定線DLが対応する入力端子310に接続される。フィルタ回路300は、(N+1)個のフィルタ抵抗340を有しており、各々のフィルタ抵抗340は、対応する入力端子310と出力端子320とを接続するように設けられる。また、フィルタ回路300は、(N+1)個のフィルタコンデンサ360を有しており、各々のフィルタコンデンサ360は、一端が各々のフィルタ抵抗340と各々の出力端子320の間に接続され、他端が共通ラインBLに接続される。
【0025】
図3は、本発明のある態様の実施形態における周波数応答の導出方法を説明するための回路図である。具体的には、上述の一般化した回路構成において、N=4のフィルタ抵抗について図示している。図3Aにおいて、四つの電池セルのうち、電位が高いほうから数えて2番目の電池セルからの入力電圧V2inに着目する。交流成分で考える必要があるので、フィルタコンデンサ360については、複素数の直交成分表示で表現されるインピーダンスZを用いる。インピーダンスZは、次の数式で表される。なお、jは複素数、ωは角周波数、Cはフィルタコンデンサ360のキャパシタンスである。
【0026】
【数1】
上述の通り、本発明の実施形態において、各々のフィルタ抵抗340の抵抗値Rは同一であり、各々のフィルタコンデンサ360のインピーダンスZも同一であるので、着目している電池セル以外の電圧変動は、着目している電池セルに対応するフィルタ回路300の出力電圧V2filに影響を与えない。従って、図3Aは、図3Bと実質的に同じとなる。
【0027】
図3Bを整理すると図3Cとなる。具体的には、フィルタ抵抗340とフィルタコンデンサ360が直列に接続されてRC回路を構成し、2並列のRC回路と3並列のRC回路が直列に接続される。2並列のRC回路の合成インピーダンスZは、Z=(R+Z)/2となる。3並列のRC回路の合成インピーダンスZは、Z=(R+Z)/3となる。フィルタ回路300にはV2inの電圧が入力され、合成インピーダンスZ、Zで分圧される。
【0028】
図3Cでは、同電位が同じ高さに位置するように図示されている。図3Bに図示しているノードA〜Eは、図3CのノードA〜Eに対応する。それぞれ、ノードA、Bが同電位となり、ノードC、D、Eが同電位となり、ノードF、Gが同電位となる。入力電圧V2inに対するフィルタ回路300の出力電圧V2filは、ノードB、F間の電圧V2ilUZ、電圧V2filLからノードF、C間の電圧V2filLZの合計値となる。
【0029】
次に、任意の自然数となるN個の電池セルが直列に接続される組電池を備える電源装置100に拡張して考える。組電池200の最上位の電池セルから数えてm番目(mは1≦m<Nを満たす自然数)に位置する電池セルに着目して考えると、図3に例示されるように、フィルタ回路300は、m並列のRC回路と(N−m)並列のRC回路の直列接続となる。各々のRC回路の合成インピーダンスZ、ZN−mは、以下の数式で表すことができる。
【0030】
【数2】
【0031】
【数3】
フィルタ回路300にはVminの電圧が入力され、合成インピーダンスZ、ZN−m+1で分圧される。各々の合成インピーダンスZ、ZN−m+1に対応する電圧VmfilU、VmfilLは、次の式で表される。
【0032】
【数4】
【0033】
【数5】
同様にして、電圧VmfilU、VmfilLは、抵抗値RとインピーダンスZで分圧される。電圧V2filUZに対応する電圧VmfilUZ、電圧V2filLZに対応する電圧VmfilLZは、次の式で表される。
【0034】
【数6】
【0035】
【数7】
従って、フィルタ回路300の入出力比は、数式4〜7から、次の数式で表される。数8で示すように、フィルタコンデンサ360のインピーダンスZと、フィルタ抵抗340の抵抗値Rだけで表すことができる。
【0036】
【数8】
ここで、実際に数値がわかる回路定数で表記できるよう式変形を行う。Vmfilは、実際には角周波数ωの関数Vmfil(ω)であり、数式1を使って式変形すると、次式が得られる。
【0037】
【数9】
【0038】
【数10】
以上の通り、本発明の実施形態におけるフィルタ回路300の入出力比は、フィルタ回路300を構成するフィルタ抵抗340およびフィルタコンデンサ360の回路定数のみを用いて表されるωの関数で表現することができる(周波数応答)。
【0039】
数式10において、フィルタ回路300の周波数応答は、mに依存しないことが明らかである。mが着目する電池セルの番号を表していることを考慮すると、数式10からフィルタ回路300の各々の出力の周波数応答が一致することが容易に理解できる。このように、図2に例示する本発明のある態様の実施形態によると、同一のキャパシタンスを有するフィルタコンデンサ360と、同一の抵抗値を有するフィルタ抵抗340を用いて、各々の出力の周波数応答が揃うフィルタ回路300を構成することができる。
【0040】
なお、上述の通り、本発明の主な目的は、標準化されている回路素子を用いながら、容易にフィルタ回路の出力の周波数応答を揃えることができる技術を提供することにある。従って、本発明における「同一」とは、厳密な意味での同一ではなく、ある程度の誤差を含んだ範囲を指すことは自明である。具体的には、同じ公称キャパシタンスのコンデンサであっても、製品のばらつきによって、実際のキャパシタンスは多少相違する。このような製品ばらつきに起因するキャパシタンスの相違があるコンデンサも、実質的に「同一」であるとみなし、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0041】
以上の電源装置の構成によると、共通ラインBLをグランドに接続する必要がないため、高電圧の電池システムに適用する場合には、適当な数の電池セルごとに組電池200を構成し、各々の組電池200に対してフィルタ回路300を設けることができる。また、共通ラインBLをグランドに接続する必要がないので、任意の直列数の組電池を一つの単位としてまとめ、組電池ごとにフィルタ回路を設けることもできる。この構成によると、フィルタ回路300を構成するフィルタコンデンサ360に印加される電圧を抑制できるので、比較的低耐圧のコンデンサ素子で、フィルタコンデンサ360を構成することができる。特に、高出力の電源装置では、電源装置の総電圧が200〜300Vとなる場合もあるが、本発明のフィルタ回路を採用することで、フィルタ回路300を構成するコンデンサ素子に大電圧が印加されることを防止できる。
【0042】
さらに、数式10に示すとおり、本発明のフィルタ回路300の周波数応答は、組電池200を構成する電池セルの数に依らず、フィルタコンデンサ360のキャパシタンスと、フィルタ抵抗340の抵抗値によって決まるため、さまざまな直列数の組電池に対して、設計を変えることなく対応できる特徴がある。
【0043】
また、図2の実施形態の構成では、フィルタ回路300の各々の出力端子320間には、必ず二つのコンデンサ素子が直列に接続される構成となる。そのため、一方のコンデンサ素子がショート故障しても、フィルタ抵抗340を介した電池セルの放電を抑制することができる。
【0044】
なお、上述の実施形態では、状態監視部400は、複数のフィルタ回路300の各々の出力が入力され、任意の出力を選択するスイッチ部420と、スイッチ部420が選択した出力が入力される差動増幅回路440と、アナログデジタル変換器460とを含む構成として例示したが、複数のアナログ入力をアナログデジタル変換できれば手段は問わない。例えば、状態監視部400は、複数のフィルタ回路300の各々の出力を複数のアナログデジタル変換器でデジタル信号に変換後、レベルシフト回路にて、デジタル信号を同一の電位レベルに変換する構成を採用することもできる。
【0045】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各々の構成要素や各々の処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0046】
100 電源装置、200 組電池、300 フィルタ回路、310 入力端子、320 出力端子、340 フィルタ抵抗、360 フィルタコンデンサ、400 状態監視部、420 スイッチ部、440 差動増幅回路、460 アナログデジタル変換器、BL 共通ライン、DL 測定線。
図1
図2
図3