特許第6296166号(P6296166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296166
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20180312BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20180312BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20180312BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20180312BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20180312BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   H01L29/78 657A
   H01L29/78 655A
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 652H
   H01L29/78 656A
   H01L29/78 657Z
   H01L27/06 102A
   H01L27/088 A
   H01L29/06 301V
   H01L29/06 301D
   H01L29/78 657G
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-555144(P2016-555144)
(86)(22)【出願日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2015077318
(87)【国際公開番号】WO2016063681
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2016年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2014-217183(P2014-217183)
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】大月 正人
【審査官】 恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−344779(JP,A)
【文献】 特開2014−130909(JP,A)
【文献】 特開2013−125806(JP,A)
【文献】 特開2012−253202(JP,A)
【文献】 特開平04−354156(JP,A)
【文献】 特開2002−016253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/8234
H01L 27/06
H01L 27/08
H01L 29/06
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IGBT素子と、
前記IGBT素子と並列に接続された超接合型トランジスタ素子と、
前記IGBT素子のゲート端子に印加するゲート電圧を、前記超接合型トランジスタ素子のゲート端子に印加するゲート電圧よりも制限する制限部と
を備え
前記制限部は、前記IGBT素子に印加する前記ゲート電圧の範囲を、前記超接合型トランジスタ素子に印加する前記ゲート電圧の範囲よりも狭い範囲にクランプする半導体装置。
【請求項2】
外部から外部電圧を受け取る外部端子をさらに備え、
前記IGBT素子および前記超接合型トランジスタ素子は、共通の前記外部電圧にそれぞれ基づいた前記ゲート電圧が印加される
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記制限部は、前記IGBT素子のゲートエミッタ間に接続されたクランプダイオードを有する
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記IGBT素子のゲート抵抗が、前記超接合型トランジスタ素子のゲート抵抗より大きく、前記IGBT素子の閾値電圧が、前記超接合型トランジスタ素子の閾値電圧より高い
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記超接合型トランジスタ素子のゲート抵抗が、前記IGBT素子のゲート抵抗より大きく、前記超接合型トランジスタ素子の閾値電圧が、前記IGBT素子の閾値電圧より高い
請求項1からのいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記IGBT素子および前記超接合型トランジスタ素子を、同一の半導体基板に形成した
請求項1からのいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)と、MOSFET等の電界効果トランジスタとを並列に接続する半導体装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1 特開2014−130909号公報(米国特許出願公開第2014/184303号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置の短絡耐量は、IGBTおよびFETの短絡耐量のうち小さい方で決まる。短絡検出時、IGBTにはFETに比べて大きな電流が流れる。このため、IGBTとFETを並列に接続した半導体装置の短絡耐量は、IGBTの短絡耐量で定まる。IGBTの短絡耐量を大きくするには、IGBTのチャネル密度を低くすればよいが、チャネル密度を低くするとIGBTのターンオフ時の損失が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、IGBT素子と、超接合型トランジスタ素子と、制限部とを備える半導体装置を提供する。超接合型トランジスタ素子は、IGBT素子と並列に接続されてよい。制限部は、IGBT素子のゲート端子に印加する電圧を、超接合型トランジスタ素子のゲート端子に印加する電圧よりも制限してよい。
【0005】
半導体装置は、外部から外部電圧を受け取る外部端子をさらに備えてよい。IGBT素子および超接合型トランジスタ素子は、共通の外部電圧にそれぞれ基づいたゲート電圧が印加されてよい。
【0006】
制限部は、IGBT素子に印加するゲート電圧の範囲を、超接合型トランジスタ素子に印加するゲート電圧の範囲よりも狭い範囲にクランプしてよい。制限部は、IGBT素子のゲートエミッタ間に接続されたクランプダイオードを有してよい。
【0007】
制限部は、IGBT素子に印加するゲート電圧を、超接合型トランジスタ素子に印加するゲート電圧よりも小さくしてよい。制限部は、IGBT素子のゲート端子に直列に接続した電圧ドロップ用ダイオードを有してよい。
【0008】
IGBT素子のゲート抵抗が、超接合型トランジスタ素子のゲート抵抗より大きくてよい。IGBT素子の閾値電圧が、超接合型トランジスタ素子の閾値電圧より高くてよい。超接合型トランジスタ素子のゲート抵抗が、IGBT素子のゲート抵抗より大きくてよい。超接合型トランジスタ素子の閾値電圧が、IGBT素子の閾値電圧より高くてよい。IGBT素子および超接合型トランジスタ素子を、同一の半導体基板に形成してよい。
【0009】
本発明の第2の態様においては、IGBT素子と、IGBT素子と並列に接続された超接合型トランジスタ素子と、IGBT素子のゲート端子に接続された抵抗とを備える半導体装置を提供する。IGBT素子のゲート抵抗が、超接合型トランジスタ素子のゲート抵抗より大きくてよい。IGBT素子および超接合型トランジスタ素子を、同一の半導体基板に形成してよい。
【0010】
本発明の第3の態様においては、IGBT素子と、IGBT素子と並列に接続された超接合型トランジスタ素子と、超接合型トランジスタ素子のゲート端子に接続された抵抗とを備える半導体装置を提供する。超接合型トランジスタ素子のゲート抵抗が、IGBT素子のゲート抵抗より大きくてよい。IGBT素子および超接合型トランジスタ素子を、同一の半導体基板に形成してよい。
【0011】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】半導体装置100および保護回路200の回路構成の一例を示す図である。
図2】IGBT素子120およびSJMOS素子150の断面の一例を示す図である。
図3】IGBT素子のVce−Jc特性の一例を示す図である。
図4】IGBT素子120およびSJMOS素子150の短絡耐量の一例を示す図である。
図5】半導体装置100の他の構成例を示す図である。
図6】半導体装置100の他の構成例を示す図である。
図7】同一の半導体基板に形成されたIGBT素子120およびSJMOS素子150の断面の一例を示す図である。
図8】半導体装置100の他の構成例を示す図である。
図9】半導体装置100の他の構成例を示す図である。
図10】半導体装置100の他の構成例を示す図である。
図11】半導体装置100の他の構成例を示す図である。
図12】半導体装置100の他の構成例を示す図である。
図13】半導体装置100の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1は、半導体装置100および保護回路200の回路構成の一例を示す図である。半導体装置100は、IGBT素子120のゲート端子に印加する電圧を、超接合型トランジスタ素子の一例であるSJMOS素子150のゲート端子に印加する電圧よりも制限する。これにより、IGBT素子120のチャネル密度を高くしても、短絡耐量を維持することができる。このため、短絡耐量を維持しつつ、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善できる。
【0015】
本例の半導体装置100は、IGBTチップ110、SJ(超接合)型トランジスタチップ140、および、外部端子102、104、106、108を有する。外部端子102から108は、半導体装置100の内部と外部とを電気的に接続するための端子である。
【0016】
IGBTチップ110は、IGBT素子120および制限部112を有する。SJ型トランジスタチップ140は、SJMOS素子150を有する。IGBT素子120は、コレクタ端子が外部端子106に接続し、エミッタ端子が外部端子108に接続する。SJMOS素子150は、IGBT素子120と並列に接続される。つまり、SJMOS素子150は、外部端子106および外部端子108の間に接続される。
【0017】
IGBT素子120およびSJMOS素子150を並列に接続することで、低電流領域ではSJMOS素子150の特性を利用してオン電圧を低くできる。このため、定常損失を低くすることができる。また、大電流領域ではIGBT素子120の特性を利用して、高耐圧にすることができる。
【0018】
制限部112は、IGBT素子120のゲート端子に印加する電圧を、SJMOS素子150のゲート端子に印加する電圧よりも制限する。ここで制限するとは、IGBT素子120のゲート端子に印加する電圧の上限値を、SJMOS素子150のゲート端子に印加する電圧の上限値よりも低くすることを指してよく、また、IGBT素子120のゲート端子に印加する電圧を、SJMOS素子150のゲート端子に印加する電圧よりも低くすることを指してもよい。本例の制限部112は、IGBT素子120に印加するゲート電圧の範囲を、SJMOS素子に印加するゲート電圧の範囲よりも狭い範囲にクランプする。
【0019】
外部端子102は、外部の電源から外部電圧を受け取る。当該外部電圧は、例えば15V等である。本例のIGBT素子120およびSJMOS素子150は、各ゲート端子が共通の外部端子102に電気的に接続され、共通の外部電圧にそれぞれ基づいたゲート電圧が印加される。
【0020】
本例では、IGBT素子120に印加されるゲート電圧は、制限部112により制限される。一方、SJMOS素子150に印加されるゲート電圧は、制限部112により制限されない。なお、制限部112は、SJMOS素子150に印加されるゲート電圧の両方を制限してもよい。この場合、制限部112は、IGBT素子120に印加されるゲート電圧を、SJMOS素子150に印加されるゲート電圧よりも更に制限する。
【0021】
本例の制限部112は、抵抗114およびクランプダイオード116を有する。クランプダイオード116は、IGBT素子120のゲートエミッタ間に接続される。クランプダイオード116のカソード端子はIGBT素子120のゲート端子に接続し、アノード端子がIGBT素子120のエミッタ端子に接続する。クランプダイオード116は、例えばツェナーダイオードである。クランプダイオード116は、所定のクランプ電圧以上の電圧がIGBT素子120のゲートエミッタ間に印加された場合に、ゲートエミッタ間を導通させる。これにより、IGBT素子120のゲートエミッタ間の電圧がクランプされる。
【0022】
なお、当該クランプ電圧は、通常動作時に外部端子102に印加される電圧よりも低い。例えば通常動作時に外部端子102に印加される電圧は15V程度であり、クランプ電圧は13V程度である。これにより、通常動作時において、SJMOS素子150には15V程度のゲート電圧が印加され、IGBT素子120には13V程度のゲート電圧が印加される。
【0023】
IGBT素子120のゲート電圧を制限することで、IGBT素子120の短絡耐量を向上させることができる。このため、短絡耐量が向上する分に応じてIGBT素子120のチャネル密度を上昇させても、短絡耐量を維持することができる。従って、短絡耐量を維持しつつ、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善できる。なお、チャネル密度を維持しつつ、短絡耐量を向上させてもよい。
【0024】
抵抗114は、外部端子102とIGBT素子120のゲート端子との間に接続される。抵抗114を設けることで、IGBT素子120のゲート抵抗がSJMOS素子150のゲート抵抗よりも大きくなり、IGBT素子120の閾値電圧がSJMOS素子150の閾値電圧よりも高くなる。なお、本明細書においてゲート抵抗は、ゲート電極自体の抵抗成分と、ゲート電極に接続される抵抗成分との合成抵抗成分を指す。これにより、IGBT素子120よりもSJMOS素子150のほうが早くターンオンして、遅くターンオフする。これにより大電流領域でオン抵抗の大きいSJMOS素子150を先にオンさせることでターンオン損失を低減できる。
【0025】
保護回路200は、トランジスタ206、比較器208、基準電圧源210、抵抗212、接続端子202および接続端子204を有する。接続端子202は、半導体装置100の外部端子102に接続する。接続端子204は、半導体装置100の外部端子104に接続する。なお、外部端子102には、保護回路200のほかに、ゲート電圧を印加する電圧源が接続される。
【0026】
抵抗212の一端は、接続端子204および外部端子104を介して、IGBT素子120のエミッタ端子に接続する。抵抗212の他端には、接地電位等の基準電位が印加される。抵抗212には、IGBT素子120のエミッタ電流に応じた電流が流れる。抵抗212の両端間の電圧は、当該電流に応じて定まる。
【0027】
比較器208は、抵抗212の一端の電位と、基準電圧源210が生成する所定の参照電位とを比較する。比較器208は、抵抗212の電位が参照電位よりも高い場合に、トランジスタ206をオフさせる。トランジスタ206は、接続端子202と接地電位との間に設けられる。トランジスタ206がオフすると、IGBT素子120のゲート端子が接地電位に接続されてIGBT素子120をオフにする。このような構成により、例えば半導体装置100の外部端子106および108間が短絡するアーム短絡が生じた場合に、IGBT素子120のゲート電圧をプルダウンして、IGBT素子120をオフすることができる。
【0028】
図2は、IGBT素子120およびSJMOS素子150の断面の一例を示す図である。IGBT素子120は、表面側にp型ベース層125を有する。また、本例のIGBT素子120は、トレンチ型のゲート電極122を複数有する。それぞれのゲート電極122の周囲には、ゲート絶縁膜121が形成される。それぞれのゲート電極122は、少なくともp型ベース層125の裏面側端部まで達するように形成される。
【0029】
p型ベース層125の表面においてゲート絶縁膜121と隣接する領域には、エミッタ領域124が形成される。また、p型ベース層125の表面においてエミッタ領域124に挟まれた領域に、コンタクト領域123が形成される。なお、IGBT素子120は、コンタクト領域123およびエミッタ領域124に接続する表面電極、および、当該表面電極とゲート電極122とを絶縁する絶縁膜等を有するが、図2では省略している。
【0030】
IGBT素子120は、p型ベース層125およびゲート絶縁膜121の裏面側に、n型ベース層126を有する。ゲート電極122に所定の電圧が印加されると、ゲート絶縁膜121に沿ってp型ベース層125にチャネルが形成されて、エミッタ領域124およびn型ベース層126が導通する。
【0031】
n型ベース層126の裏面側には、FS(フィールドストップ)層127、コレクタ層128および裏面電極129が順次形成される。これにより、IGBT素子120が形成される。
【0032】
SJMOS素子150は、表面側にp型ベース層155を有する。また、本例のSJMOS素子150は、トレンチ型のゲート電極152を複数有する。それぞれのゲート電極152の周囲には、ゲート絶縁膜151が形成される。それぞれのゲート電極152は、少なくともp型ベース層155の裏面側端部まで達するように形成される。
【0033】
p型ベース層155の表面においてゲート絶縁膜151と隣接する領域には、ソース領域154が形成される。また、p型ベース層155の表面においてソース領域154に挟まれた領域に、コンタクト領域153が形成される。なお、SJMOS素子150は、コンタクト領域153およびソース領域154に接続する表面電極、および、当該表面電極とゲート電極152とを絶縁する絶縁膜等を有するが、図2では省略している。
【0034】
SJMOS素子150は、p型ベース層155およびゲート絶縁膜151の裏面側に、n型カラム156−nおよびp型カラム156−pを有する。n型カラム156−nおよびp型カラム156−pは、SJMOS素子150の表面と平行な方向において交互に配置される。本例では、ゲート絶縁膜151の裏面側にn型カラム156−nが設けられ、p型ベース層155の裏面側にp型カラム156−pが形成される。なお、n型カラム156−nの表面側端部は、p型ベース層155にも接している。
【0035】
n型カラム156−nおよびp型カラム156−pの裏面側には、FS層157、ドレイン層158および裏面電極159が順次形成される。これにより、SJMOS素子150が形成される。
【0036】
図3は、IGBT素子のVce−Jc特性の一例を示す図である。Vceは、コレクタエミッタ間電圧を指し、Jcはコレクタ電流密度を指す。図3では、高いチャネル密度を有するIGBT素子においてゲートエミッタ間電圧VGEを15V、13V、12.5Vおよび12Vに設定した場合と、低いチャネル密度を有するIGBT素子においてゲートエミッタ間電圧VGEを15Vに設定した場合を示している。
【0037】
例えば、高いチャネル密度を有するIGBT素子においてゲートエミッタ間電圧VGEを13Vに設定した場合と、低いチャネル密度を有するIGBT素子においてゲートエミッタ間電圧VGEを15Vに設定した場合で、飽和電流密度をほぼ同一にすることができる。つまり、チャネル密度を高くしても、ゲート電圧をクランプすることで、飽和電流密度が上昇することを防ぐことができ、短絡耐量を維持することができる。そして、チャネル密度を高くしているので、ターンオフ損失を低減することができる。
【0038】
半導体装置100の外部電源として、例えば15Vの電源が用いられる。制限部112は、外部電源の印加電圧がゲート電圧として印加された場合のIGBT素子120の飽和電流密度に対して、例えば60%程度の飽和電流密度となるようにIGBT素子120のゲート電圧を制限する。IGBT素子120は、ゲート電圧を制限して飽和電流密度が低下した分、チャネル密度を上昇させてよい。制限部112は、ゲート電圧を制限しない場合のIGBT素子120の飽和電流密度に対して、ゲート電圧を制御した場合のIGBT素子120の飽和電流密度が40%から80%程度の範囲となるように、ゲート電圧を制限してよい。好ましくは、飽和電流密度が50%から70%程度の範囲となるようにゲート電圧を制限する。
【0039】
図4は、IGBT素子120およびSJMOS素子150の短絡耐量の一例を示す図である。また、比較例として、低チャネル密度でゲート電圧を15Vに設定したIGBT素子の例を併せて示している。本例のIGBT素子120は、ゲート電圧を13Vにクランプして、チャネル密度を比較例のIGBT素子よりも高くしている。また、SJMOS素子150は、ゲート電圧を15Vとしている。
【0040】
図4に示すように、IGBT素子120の短絡耐量は、チャネル密度が低い比較例と同等である。なお短絡耐量は、図4において電流が流れ始めてから、電流が遮断されるまでの時間の長さに対応する。
【0041】
図5は、半導体装置100の他の構成例を示す図である。本例の半導体装置100は、図1に示した半導体装置100に比べ、制限部112の構成が異なる。他の構成は、図1に示した半導体装置100と同一である。本例の制限部112は、IGBT素子120に印加するゲート電圧を、SJMOS素子150に印加するゲート電圧よりも小さくする。本例の制限部112は、クランプダイオード116に代えて電圧ドロップ用ダイオード118を有する。
【0042】
電圧ドロップ用ダイオード118は、IGBT素子120のゲート端子に直列に接続する。本例では、抵抗114と、IGBT素子120のゲート端子との間に電圧ドロップ用ダイオード118を設ける。電圧ドロップ用ダイオード118は、ゲート電圧を例えば2V程度降下させる。このような構成によっても、IGBT素子120のゲート電圧を、SJMOS素子150のゲート電圧よりも低くすることができる。従って、IGBT素子120の短絡耐量を維持しつつ、チャネル密度を高くしてターンオフ損失を低減することができる。
【0043】
図6は、半導体装置100の他の構成例を示す図である。本例の半導体装置100は、図1に示した半導体装置100に比べ、IGBT素子120およびSJMOS素子150が同一の半導体基板160に形成される点が異なる。半導体基板160には、クランプダイオード116も形成されてよい。また、半導体基板160には、抵抗114も形成されてよい。他の構成は、図1に示した半導体装置100と同一である。このような構成により、半導体装置100を小型化することができる。
【0044】
図7は、同一の半導体基板に形成されたIGBT素子120およびSJMOS素子150の断面の一例を示す図である。本例のSJMOS素子150は、IGBT素子120と隣接して形成される。本例では、FS層127が、SJMOS素子150のFS層としても機能する。また、裏面電極129が、SJMOS素子150の裏面電極としても機能する。他の構造は、図2に示したIGBT素子120およびSJMOS素子150と同一である。
【0045】
図8は、半導体装置100の他の構成例を示す図である。本例の半導体装置100は、図5に示した半導体装置100に比べ、IGBT素子120およびSJMOS素子150が同一の半導体基板160に形成される点が異なる。半導体基板160には、電圧ドロップ用ダイオード118も形成されてよい。また、半導体基板160には、抵抗114も形成されてよい。他の構成は、図5に示した半導体装置100と同一である。このような構成により、半導体装置100を小型化することができる。
【0046】
図9は、半導体装置100の他の構成例を示す図である。本例の半導体装置100は、図1または図6に示したいずれかの半導体装置100に比べ、クランプダイオード116の配置が異なる。図9では、図1に示した半導体装置100に対してクランプダイオード116の配置を変更した例を示している。本例のクランプダイオード116は、カソード端子が抵抗114を介してIGBT素子120のゲート端子に接続する。このような構成によってもIGBT素子120のゲート電圧を制限することができる。
【0047】
図10は、半導体装置100の他の構成例を示す図である。本例の半導体装置100は、図5または図8に示したいずれかの半導体装置100に比べ、電圧ドロップ用ダイオード118の配置が異なる。図10では、図5に示した半導体装置100に対して電圧ドロップ用ダイオード118の配置を変更した例を示している。本例の電圧ドロップ用ダイオード118は、外部端子102および抵抗114の間に接続される。このような構成によってもIGBT素子120のゲート電圧を制限することができる。
【0048】
図11は、半導体装置100の他の構成例を示す図である。本例の半導体装置100は、図1から図10に示したいずれかの半導体装置100に比べ、抵抗114の配置が異なる。図11では、図1に示した半導体装置100に対して抵抗114の配置を変更した例を示している。本例の抵抗114は、SJMOS素子150のゲート端子と外部端子102との間に接続する。
【0049】
抵抗114を設けることで、SJMOS素子150のゲート抵抗がIGBT素子120のゲート抵抗よりも大きくなり、SJMOS素子150の閾値電圧がIGBT素子120の閾値電圧よりも高くなる。これにより、SJMOS素子150よりもIGBT素子120のほうが早くターンオンして、遅くターンオフする。これにより、SJMOS素子150に流れる電流を抑制することができるので、SJMOS素子150を保護することができる。
【0050】
図12は、半導体装置100の他の構成例を示す図である。本例の半導体装置100は、図6に示した半導体装置100に比べ、制限部112およびクランプダイオード116を有さない。抵抗114がIGBT素子120のゲート端子に接続されることで、IGBT素子120のゲート抵抗が、SJMOS素子150のゲート抵抗より大きくなる。これにより、IGBT素子120よりもSJMOS素子150を早くターンオンさせ、遅くターンオフさせることができる。
【0051】
また、IGBT素子120のゲート電極の材料、膜厚等を制御することで、IGBT素子120のゲート抵抗を大きくしてもよい。IGBT素子120のゲート電極自体の抵抗値を、SJMOS素子150のゲート抵抗よりも十分大きくすることができれば、抵抗114は設けなくともよい。
【0052】
図13は、半導体装置100の他の構成例を示す図である。本例の半導体装置100は、図8に示した半導体装置100に比べ、制限部112および電圧ドロップ用ダイオード118を有さない。抵抗114がSJMOS素子150のゲート端子に接続されることで、SJMOS素子150のゲート抵抗が、IGBT素子120のゲート抵抗より大きくなる。これにより、SJMOS素子150よりもIGBT素子120を早くターンオンさせ、遅くターンオフさせることができる。
【0053】
また、SJMOS素子150のゲート電極の材料、膜厚等を制御することで、SJMOS素子150のゲート抵抗を大きくしてもよい。SJMOS素子150のゲート電極自体の抵抗値を、IGBT素子120のゲート抵抗よりも十分大きくすることができれば、抵抗114は設けなくともよい。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0055】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0056】
100・・・半導体装置、102、104、106、108・・・外部端子、110・・・IGBTチップ、112・・・制限部、114・・・抵抗、116・・・クランプダイオード、118・・・電圧ドロップ用ダイオード、120・・・IGBT素子、121・・・ゲート絶縁膜、122・・・ゲート電極、123・・・コンタクト領域、124・・・エミッタ領域、125・・・p型ベース層、126・・・n型ベース層、127・・・FS層、128・・・コレクタ層、129・・・裏面電極、140・・・SJ型トランジスタチップ、150・・・SJMOS素子、151・・・ゲート絶縁膜、152・・・ゲート電極、153・・・コンタクト領域、154・・・ソース領域、155・・・p型ベース層、156−n・・・n型カラム、156−p・・・p型カラム、157・・・FS層、158・・・ドレイン層、159・・・裏面電極、160・・・半導体基板、200・・・保護回路、202、204・・・接続端子、206・・・トランジスタ、208・・・比較器、210・・・基準電圧源、212・・・抵抗
図1
図2
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図4
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図6
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図11
図12
図13