特許第6296191号(P6296191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6296191膜付ガラス板の製造方法及び膜付ガラス板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296191
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】膜付ガラス板の製造方法及び膜付ガラス板
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20180312BHJP
   C03C 17/245 20060101ALI20180312BHJP
   C03B 33/07 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C03C15/00 Z
   C03C17/245 Z
   C03B33/07
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-79703(P2017-79703)
(22)【出願日】2017年4月13日
(62)【分割の表示】特願2012-129524(P2012-129524)の分割
【原出願日】2012年6月7日
(65)【公開番号】特開2017-149645(P2017-149645A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 悠祐
(72)【発明者】
【氏名】三部 修司
(72)【発明者】
【氏名】淀川 正弘
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/089964(WO,A1)
【文献】 特開2004−317738(JP,A)
【文献】 特開2003−98340(JP,A)
【文献】 特開2008−249923(JP,A)
【文献】 特開2000−169166(JP,A)
【文献】 特公昭47−14993(JP,B1)
【文献】 特開2008−132693(JP,A)
【文献】 特開昭57−34049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−15/02
C03B 33/00−33/14
C03C 17/00−17/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の主面の上に膜が形成された膜付ガラス板を複数用意する工程と、
前記複数の膜付ガラス板を樹脂層を介して積層することにより、少なくとも一方の主面の全面の上に膜が形成された複数の膜付ガラス板を有する積層体を作製する積層工程と、
前記積層体の端面をエッチングするエッチング工程と、
前記エッチング工程の後に、前記積層体から樹脂層を除去する除去工程と、
を備え、
前記エッチング工程により前記膜付ガラス板の角部をR面取り状とし、膜の端面を傾斜面とする、膜付ガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記複数の膜付ガラス板を樹脂層を介して積層することにより積層体を作製するとともに、前記積層体の最外となる前記膜付ガラス板の両主面の上に前記樹脂層を形成する積層工程と、
前記エッチング工程において、前記膜付ガラス板の溶解度が相対的に大きく、前記樹脂層の溶解度が相対的に小さいエッチング液を用る、請求項1に記載の膜付ガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記エッチング工程に先だって、前記積層体を複数に分断する工程をさらに備える、請求項1または2に記載の膜付ガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記積層工程において、前記複数のガラス板を相互に間隔をおいて固定した状態で溶融樹脂中に浸漬した後に、冷却することによって、前記積層体を作製する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の膜付ガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記エッチングを、フッ酸、フッ硝酸またはフツ硫酸を用いて行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の膜付ガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記膜が、酸化ニオブ膜、酸化ケイ素膜、酸化タンタル膜、酸化ランタン膜、酸化ジルコニウム膜及び酸化タングステン膜からなる群から選ばれた少なくとも一種を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の膜付ガラス板の製造方法。
【請求項7】
少なくとも一方の主面の全面の上に膜が形成された膜付ガラス板であって、
主面と、側面と、前記主面と前記側面とを接続しており、一部が前記膜により構成されている稜面を有し、
前記側面と前記稜面とがエッチング面により構成されており、前記エッチング面は、角部をR面取り状とし、前記膜の端面を傾斜面とする、膜付ガラス板。
【請求項8】
前記膜が、酸化ニオブ膜、酸化ケイ素膜、酸化タンタル膜、酸化ランタン膜、酸化ジルコニウム膜及び酸化タングステン膜からなる群から選ばれた少なくとも一種を含む、請求項7に記載の膜付ガラス板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜付ガラス板の製造方法及び膜付ガラス板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イメージセンサ用カバーガラスなどとして、表面上に膜が形成されている膜付ガラス板が種々用いられている。
【0003】
イメージセンサ用カバーガラスでは、イメージセンサの表面やカバーガラスの表面に異物が付着することを抑制するために、発塵しないことが強く望まれている。よって、イメージセンサ用カバーガラスには、ガラス板のチッピングや、膜の剥がれが生じないことが強く望まれている。これに鑑み、特許文献1等において、発塵し難いカバーガラスが種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−140348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、イメージセンサの高性能化に伴って、さらに発塵し難いカバーガラスが求められている。同様に、例えばイメージングデバイス以外の電子部品に用いられる膜付ガラス板にも、さらに発塵し難いことが求められている。
【0006】
本発明は、発塵し難い膜付ガラス板を製造し得る方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る膜付ガラス板の製造方法では、少なくとも一方の主面の上に膜が形成されたガラス板を複数用意する。複数のガラス板を樹脂層を介して積層することにより、少なくとも一方の主面の全面の上に膜が形成された複数のガラス板を有する積層体を作製する積層工程を行う。積層体の端面をエッチングするエッチング工程を行う。エッチング工程の後に、積層体から樹脂層を除去する除去工程を行う。
【0008】
本発明に係る膜付ガラス板の製造方法では、エッチング工程に先だって、積層体を複数に分断する工程をさらに行うことが好ましい。
【0009】
積層工程において、複数のガラス板を相互に間隔をおいて固定した状態で溶融樹脂中に浸漬した後に、冷却することによって、積層体を作製することが好ましい。
【0010】
エッチングを、フッ酸、フッ硝酸、またはフツ硫酸を用いて行ってもよい。
【0011】
膜が、酸化ニオブ膜、酸化ケイ素膜、酸化タンタル膜、酸化ランタン膜、酸化ジルコニウム膜及び酸化タングステン膜からなる群から選ばれた少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0012】
本発明に係る膜付ガラス板は、少なくとも一方の主面の全面の上に膜が形成された膜付ガラス板である。本発明に係る膜付ガラス板は、主面と、側面と、主面と側面とを接続しており、一部が膜により構成されている稜面とを有する。側面と稜面とがエッチング面により構成されている。
【0013】
膜が、酸化ニオブ膜、酸化ケイ素膜、酸化タンタル膜、酸化ランタン膜、酸化ジルコニウム膜及び酸化タングステン膜からなる群から選ばれた少なくとも一種を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発塵し難い膜付ガラス板を製造し得る方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における膜付マザーガラス板の略図的断面図である。
図2】本発明の一実施形態における積層工程を説明するための略図的断面図である。
図3】本発明の一実施形態における積層工程を説明するための略図的断面図である。
図4】本発明の一実施形態におけるマザー積層体の略図的断面図である。
図5】本発明の一実施形態における分断後の積層体の略図的断面図である。
図6】本発明の一実施形態におけるエッチングされた積層体の略図的断面図である。
図7】本発明の一実施形態において製造された膜付ガラス板の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0017】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0018】
本実施形態では、図7に示す膜付ガラス板1の製造方法の一例について説明する。
【0019】
まず、図1に示されるマザーガラス板11を複数用意する。マザーガラス板11は、第1の主面11aと第2の主面11bとを有する。
【0020】
次に、各マザーガラス板11の少なくとも第1の主面11aの上に、膜12を形成する。膜12の形成方法は、特に限定されない。膜12は、例えば、スパッタリング法やCVD法等により形成することができる。
【0021】
膜12の構成は、特に限定されない。膜12の構成は、膜付ガラス板1に要求される特性に応じて適宜選択することができる。膜12は、例えば、高屈折率膜と低屈折率膜とが交互に積層された誘電体多層膜により構成されていてもよい。膜12は、例えば、酸化ニオブ膜、酸化ケイ素膜、酸化タンタル膜、酸化ランタン膜、酸化ジルコニウム膜及び酸化タングステン膜からなる群から選ばれた少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0022】
次に、膜12が形成されたマザーガラス板11からなる膜付マザーガラス板10を複数用いて、図4に示すマザー積層体13を作製する。具体的には、複数の膜付マザーガラス板10を樹脂層14を介して積層することにより、マザー積層体13を作製する。マザー積層体13の表面も樹脂層14により覆われている。
【0023】
より具体的には、まず、図2に示されるように、複数の膜付マザーガラス板10をスペーサ15を介在させて積層する。この状態で固定したまま、図3に示されるように、複数の膜付マザーガラス板10を加熱溶融された溶融樹脂(溶融された熱可塑性樹脂)16中に浸漬する。その後、冷却して溶融樹脂16を固化させることにより、図4に示す、マザー積層体13を得る。
【0024】
なお、溶融樹脂16を用いずに、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を塗布し、硬化させることにより樹脂層14を形成し、マザー積層体13を作製するようにしてもよい。
【0025】
なお、樹脂層14は、後の工程において用いるエッチング液に対して、膜付マザーガラス板10よりも溶解しにくいものであれば特に限定されない。樹脂層14は、例えば、ポリビニルアルコール、及びポリ酢酸ビニルからなる群から選ばれた少なくとも一種により構成することができる。
【0026】
次に、マザー積層体13を図4に示されるカットラインCLで切断することにより複数に分断し、図5に示される積層体19を得る。なお、この工程において、膜12が設けられていない部分や、スペーサ15が設けられている部分は、切除される。これにより、一主面の全面の上に膜12(図5においては図示を省略)が形成された複数の膜付ガラス板18が樹脂層14を介在させて複数積層されてなる積層体19を得る。
【0027】
次に、積層体19の端面をエッチング液に浸漬することによりエッチングする(エッチング工程)。例えば、積層体19をエッチング液中に浸漬することにより積層体19の端面をエッチングする。ここで、膜付ガラス板18の溶解度が相対的に大きく、樹脂層14の溶解度が相対的に小さいエッチング液を用いる。このため、図6に示されるように、膜付ガラス板18の角部がR面取り状となる。
【0028】
なお、膜付ガラス板18の溶解度が相対的に大きく、樹脂層14の溶解度が相対的に小さいエッチング液の具体例としては、例えば、フッ酸、フッ硝酸、フツ硫酸等が挙げられる。
【0029】
次に、積層体19から樹脂層14を除去することによって、図7に示す膜付ガラス板1を得ることができる(除去工程)。樹脂層14は、例えば、イソプロピルアルコールやアセトン等の有機溶剤を用いて溶解し、除去することができる。
【0030】
図7に示されるように、膜付ガラス板1は、ガラス板20と、ガラス板20の少なくとも一主面20aの全面の上に形成された膜12とを備える。膜付ガラス板1は、主面1a、1bと、側面1cと、稜面1d、1eとを有する。主面1a、1b及び側面1cは、それぞれ略平面状である。稜面1dは、主面1aと側面1cとを接続している。一方、稜面1eは、主面1bと側面1cとを接続している。稜面1d、1eは、それぞれ、曲面状である。稜面1dの一部が膜12によって構成されている。また、稜面1d、1e及び側面1cとは、それぞれエッチング面により構成されている。
【0031】
上述のように、上述の製造方法により製造された膜付ガラス板1では、稜面1dの一部が膜12によって構成されている。膜12の端面が傾斜面となっている。このため、膜12がガラス板20から剥離しにくい。さらに、稜面1d、1e及び側面1cとは、それぞれエッチング面により構成されている。このため、稜面1d、1eや側面1cにおいてガラス板20のチッピング等が生じ難い。従って、膜付ガラス板1からは発塵し難い。よって、膜付ガラス板1は、例えばイメージングセンサのカバーガラスなどの発塵に対する規制が厳しい用途に好適に使用することができる。
【0032】
なお、発塵を抑制するために、膜付ガラス板の端部をエッチングする場合は、通常、膜付ガラス板の端部をエッチング液に浸漬する方法が採用される。しかしながら、本発明者らがこの方法を採用したところ、膜の端部とガラス板との間に隙間が生じ、膜の端部が剥離しやすくなることが見出された。
【0033】
それに対して本実施形態の方法では、エッチング時に樹脂層14が存在している。この樹脂層14によって膜12の主面がエッチング液と接触することが抑制されている。エッチング液は、膜付ガラス板18の端面のみに実質的に接触する。このため、膜12の端部とガラス板20との間に隙間が生じにくい。従って、膜12の剥離が生じにくい膜付ガラス板1を製造することができる。本発明者らは、実際にサンプルを作製した結果、本実施形態の方法を採用することにより、膜12の端部とガラス板20との間に隙間が生じ難くなることを確認した。
【0034】
本実施形態のように、マザーガラス板11を用いることにより、複数の積層体19を高効率に作製することができる。但し、本発明は、これに限定されない。積層体19をひとつずつ作製してもよい。
【0035】
本実施形態では、ガラス板の片面に膜が形成されている例について説明したが、ガラス板の両面に膜が形成されていてもよい。
【0036】
スペーサを用いずに、固定具を用いて、複数のガラス板を所定間隔をあけて固定した状態で樹脂層を形成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…膜付ガラス板
1a、1b…主面
1c…側面
1d、1e…稜面
10…膜付マザーガラス板
11…マザーガラス板
11a…第1の主面
11b…第2の主面
12…膜
13…マザー積層体
14…樹脂層
15…スペーサ
16…溶融樹脂
17…積層体
18…膜付ガラス板
19…積層体
20…ガラス板
20a…主面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7