特許第6296234号(P6296234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296234
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】β型チタン合金及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22F 1/18 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
   C22F1/18 H
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-69778(P2014-69778)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190032(P2015-190032A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道山 泰宏
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−195264(JP,A)
【文献】 特開平01−195265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22F 1/00,1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化層を含むβ型チタン合金の製造方法であって、以下の工程1〜3:
(i) Ti-22V-4Al、Ti-15V-6Cr-4Al、Ti-4Fe、Ti-5Fe、Ti-4Fe-1Al、Ti-5Fe-1Al、及びTi-15Mo-5Zr-3Alからなる群より選ばれる1種以上であるβ型チタン合金を熱処理する工程1であって、
前記熱処理の温度H(℃)が、以下の式(1):
200≦H≦β−70 (1)
(式中、βは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)
である、工程1、
(ii) 前記工程1で得られたβ型チタン合金を局所加熱する工程2、及び
(iii) 前記工程2で得られたβ型チタン合金を熱処理する工程3であって、
前記熱処理の時間が168時間以上である工程3、
を順に含むことを特徴とする、硬化層を含むβ型チタン合金の製造方法。
【請求項2】
前記工程1における熱処理の時間が15分以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程3における熱処理の温度が200〜500℃である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程2における局所加熱が、レーザ加熱、高周波誘導加熱及びガスバーナー加熱からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
以下の工程1〜3:
(i) Ti-22V-4Al、Ti-15V-6Cr-4Al、Ti-4Fe、Ti-5Fe、Ti-4Fe-1Al、Ti-5Fe-1Al、及びTi-15Mo-5Zr-3Alからなる群より選ばれる1種以上であるβ型チタン合金を熱処理する工程1であって、
前記熱処理の温度H(℃)が、以下の式(1):
200≦H≦β−70 (1)
(式中、βは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)
である、工程1、
(ii) 前記工程1で得られたβ型チタン合金を局所加熱する工程2、及び
(iii) 前記工程2で得られたβ型チタン合金を熱処理する工程3であって、
前記熱処理の時間が168時間以上である工程3、
を順に含む製造方法によって得られることを特徴とする、硬化層を含むβ型チタン合金。
【請求項6】
前記硬化層の厚さが1mm以上である、請求項に記載のβ型チタン合金。
【請求項7】
前記工程2における局所加熱が、レーザ加熱、高周波誘導加熱及びガスバーナー加熱からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項又はに記載のβ型チタン合金。
【請求項8】
請求項のいずれかに記載のβ型チタン合金を有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β型チタン合金及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン合金は、軽量、高強度、高耐食性等の優れた特性と、地球環境に優しいリサイクル性とを兼ね備えた実用金属として注目されている。
【0003】
チタン合金は、機械部品(例:摺動部材)などに使用されているが、機械部品には金属が擦れることによって摩耗してしまい、機械部品としての精度が低下したり作動しなくなる箇所が生じるという問題がある。このような観点から、チタン合金には良好な耐摩耗性が付与されることが求められている。
【0004】
金属材料の耐摩耗性を向上させる手段としては、複数の方法がある。その複数の方法の一つに、熱処理などにより材料自身の硬さを増加させる方法が挙げられる。また、上記方法の一つに、(a)真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等のPVD(物理蒸着)や、(b)プラズマ浸炭・窒化、など、材料表面に硬化層を形成する方法も挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-088463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱処理による材料自身の硬さを増加させる方法は、構造体としての靱性を低下させてしまうという問題がある。このような問題を解消する方法として、摩耗量を考慮しながら金属材料表面から所定の深さまでを硬化させる処理(いわゆる表面硬化熱処理)が考えられる。
【0007】
しかしながら、焼入硬化現象の認められる鉄鋼材料では、高周波焼入れや浸炭焼入れ等によって当該表面硬化熱処理を実現することができるが、チタン合金では焼入れ硬化現象は認められないため、当該表面硬化熱処理を採用することができない。
【0008】
また、PVDやプラズマ浸炭・窒化などの方法では、チタン合金表面には数μm〜数十μmという薄い硬化層が形成されるのみであり上記硬化層よりも厚い硬化層(例:1mm以上)が形成されたチタン合金を得ることができないという問題がある。つまり、PVDやプラズマ浸炭・窒化、特定雰囲気での加熱処理などの方法では、チタン合金の耐摩耗性という観点で、さらに改良の余地がある。
【0009】
よって、本発明は、構造体としての靱性を保ち被削性に優れ、且つ、優れた耐摩耗性を有するチタン合金及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の材料を用いて特定の工程により得られるチタン合金によれば、上記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記に示すβ型チタン合金、当該β型チタン合金の製造方法、及び当該β型チタン合金を有する物品に関する。
1. 硬化層を含むβ型チタン合金の製造方法であって、以下の工程1〜3:
(i) Ti-22V-4Al、Ti-15V-6Cr-4Al、Ti-4Fe、Ti-5Fe、Ti-4Fe-1Al、Ti-5Fe-1Al、及びTi-15Mo-5Zr-3Alからなる群より選ばれる1種以上であるβ型チタン合金を熱処理する工程1であって、
前記熱処理の温度H(℃)が、以下の式(1):
200≦H≦β−70 (1)
(式中、βは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)
である、工程1、
(ii) 前記工程1で得られたβ型チタン合金を局所加熱する工程2、及び
(iii) 前記工程2で得られたβ型チタン合金を熱処理する工程3であって、
前記熱処理の時間が168時間以上である工程3、
を順に含むことを特徴とする、硬化層を含むβ型チタン合金の製造方法。
2. 前記工程1における熱処理の時間が15分以上である、上記項1に記載の製造方法。
3. 前記工程3における熱処理の温度が200〜500℃である、上記項1又は2に記載の製造
方法。
4. 前記工程2における局所加熱が、レーザ加熱、高周波誘導加熱及びガスバーナー加熱からなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記項1〜3のいずれかに記載の製造方
法。
5. 以下の工程1〜3:
(i) Ti-22V-4Al、Ti-15V-6Cr-4Al、Ti-4Fe、Ti-5Fe、Ti-4Fe-1Al、Ti-5Fe-1Al、及びTi-15Mo-5Zr-3Alからなる群より選ばれる1種以上であるβ型チタン合金を熱処理する工程1であって、
前記熱処理の温度H(℃)が、以下の式(1):
200≦H≦β−70 (1)
(式中、βは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)
である、工程1、
(ii) 前記工程1で得られたβ型チタン合金を局所加熱する工程2、及び
(iii) 前記工程2で得られたβ型チタン合金を熱処理する工程3であって、
前記熱処理の時間が168時間以上である工程3、
を順に含む製造方法によって得られることを特徴とする、硬化層を含むβ型チタン合金。
6. 前記硬化層の厚さが1mm以上である、上記項に記載のβ型チタン合金。
7. 前記工程2における局所加熱が、レーザ加熱、高周波誘導加熱及びガスバーナー加熱からなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記項又はに記載のβ型チタン合金。
8. 上記項のいずれかに記載のβ型チタン合金を有する物品。
【0012】

以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
1.本発明のβ型チタン合金の製造方法
本発明の硬化層を含むβ型チタン合金の製造方法は、以下の工程1〜3:
(i) β型チタン合金を熱処理する工程1であって、
前記熱処理の温度H(℃)が、以下の式(1):
200≦H≦β−70 (1)
(式中、βは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)
である、工程1、
(ii) 前記工程1で得られたβ型チタン合金を局所加熱する工程2、及び
(iii) 前記工程2で得られたβ型チタン合金を熱処理する工程3であって、
前記熱処理の時間が120時間以上である工程3、
を順に含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の硬化層を含むβ型チタン合金(以下、単に本発明のβ型チタン合金ともいう)の製造方法は、上記工程1〜工程3を行うため、構造体としての靱性を保ち被削性に優れ、且つ、優れた耐摩耗性を有するβ型チタン合金が好適に得られる。なお、本発明では、β型チタン合金に対して上記特定の熱処理方法により表面硬化処理を行って硬化層を形成しているため、β型チタン合金の製造方法を「β型チタン合金の熱処理方法」、「β型チタン合金の表面処理方法(若しくは表面硬化処理方法)」又は「β型チタン合金に対して硬化層を形成する方法」ということもできる。
【0015】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0016】
工程1
本発明のβ型チタン合金の製造方法では、工程1として、β型チタン合金を熱処理する工程1であって、前記熱処理の温度H(℃)が、以下の式(1):
200≦H≦β−70 (1)
(式中、βは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)を満たす。
【0017】
工程1で使用される(前記硬化層を含まない)β型チタン合金としては、特に限定されない。例えば、Al、C、Ga、N、O、Sn、Mo、V、Nb、Ta、Ru、Cr、Fe、Mn、Cu、Co、Si、Zr、Hf、Ni、W等の1種又は2種以上を含有し、残部Ti及び不可避的な不純物からなるβ型チタン合金が挙げられる。
【0018】
具体的なβ型チタン合金としては、Ti-V-Al系、Ti-V-Cr-Al系、Ti-Mo-V-Fe-Al系、Ti-Al-V-Cr-Mo-Zr系、Ti-Mo-Zr系、Ti-Mo-Zr-Al系、Ti-Fe系、Ti-Fe-Al系、Ti-Mo-Zr-Sn系、Ti-V-Zr-Al-Sn系、Ti-V-Cr-Al-Sn系、Ti-Al-V-Fe系、Ti-Mo-Nb-Al-Si系、Ti-Fe-Cr-Al系、Ti-Mo-Zr-Fe系、Ti-Mo系、Ti-Nb-Zr-Ta系、T-Nb系、Ti-V-Mo-Cr-Al系、Ti-V-Mo-Cr-Fe-Al系、Ti-Al-Sn-Cr-Mo-Zr-Fe系等の各種2元系以上のβ型チタン合金が挙げられる。
【0019】
上記2元系以上のβ型チタン合金のより具体的なものとしては、例えば、Ti-22mass% V-4mass% Al(Ti-22V-4Al)(以下、mass%は記載を省略する場合がある)、Ti-15V-6Cr-4Al、Ti-13V-11Cr-3Al、Ti-8Mo-8V-2Fe-3Al、Ti-3Al-8V-6Cr-4Mo-4Zr、Ti-15Mo-5Zr、Ti-15Mo-5Zr-3Al、Ti-2〜15Fe(Ti-4Fe、Ti-4.5Fe、T-5Fe等を包含する)、Ti-2〜15Fe-1〜10Al(Ti-4Fe-1Al、Ti-5Fe-1Al等を包含する)、Ti-11.5Mo-6Zr-4.5Sn、Ti-11V-11Zr-2Al-2Sn、Ti-15V-3Cr-3Al-3Sn、Ti-1Al-8V-5Fe、Ti-15Mo-2.7Nb-3Al-0.2Si、Ti-4.3Fe-7.1Cr-3Al、Ti-12Mo-6Zr-2Fe、Ti-15Mo、Ti-35Nb-7Zr-5Ta、Ti-45Nb、Ti-10V-2Fe-3Al、Ti-5Al-5V-5Mo-3Cr、 T i-5V-5Mo-1Cr-1Fe-5Al、Ti-5Al-2Sn-2Cr-4Mo-4Zr-1Fe等が挙げられる。
【0020】
本発明におけるβ型チタン合金は、nearβ型チタン合金も包含する。なお、上記列挙した具体的な各β型チタン合金のうち、Ti-10V-2Fe-3Al、Ti-5V-5Mo-1Cr-1Fe-5Al、及びTi-5Al-2Sn-2Cr-4Mo-4Zr-1Feはnearβ型チタン合金である。
【0021】
当該β型チタン合金は、市販品を使用することができる。例えば、大同特殊鋼(株)製 DAT51(Ti-22V-4Al)JIS 80種、(株)神戸製鋼所製 KS15-5-3(Ti-15Mo-5Zr-3Al)、新日鉄住金(株)製 SSAT-2041CF(Ti-20V-4Al-1Sn)等が挙げられる。
【0022】
β型チタン合金の中でも、スズ成分を含まないβ型チタン合金(Al、C、Ga、N、O、Mo、V、Nb、Ta、Ru、Cr、Fe、Mn、Cu、Co、Si、Zr、Hf、Ni、W等の1種又は2種以上を含有し、残部Ti及び不可避的な不純物からなるβ型チタン合金)が好ましく、Ti-V-Al系、Ti-V-Cr-Al系、Ti-Mo-V-Fe-Al系、Ti-Al-V-Cr-Mo-Zr系、Ti-Mo-Zr系、Ti-Mo-Zr-Al系、Ti-Fe系、Ti-Fe-Al系、Ti-Al-V-Fe系、Ti-Mo-Nb-Al-Si系、Ti-Fe-Cr-Al系、Ti-Mo-Zr-Fe系、Ti-Mo系、Ti-Nb-Zr-Ta系、T-Nb系又はTi-V-Mo-Cr-Fe-Al系のβ型チタン合金がより好ましく、Ti-22V-4Al、Ti-15V-6Cr-4Al、Ti-13V-11Cr-3Al、Ti-8Mo-8V-2Fe-3Al、Ti-3Al-8V-6Cr-4Mo-4Zr、Ti-15Mo-5Zr、Ti-15Mo-5Zr-3Al、Ti-2〜15Fe、Ti-2〜15Fe-1〜10Al、Ti-1Al-8V-5Fe、Ti-15Mo-2.7Nb-3Al-0.2Si、Ti-4.3Fe-7.1Cr-3Al、Ti-12Mo-6Zr-2Fe、Ti-15Mo、Ti-35Nb-7Zr-5Ta、Ti-45Nb、Ti-10V-2Fe-3Al又はTi-5V-5Mo-1Cr-1Fe-5Alのβ型チタン合金がさらに好ましく、Ti-22V-4Al(β変態点:730℃)、Ti-15V-6Cr-4Al(β変態点:730℃)、Ti-4Fe(β変態点:830℃)、Ti-5Fe 、Ti-4Fe-1Al、Ti-5Fe-1Al、又はTi-15Mo-5Zr-3Alが特に好ましい。
【0023】
熱処理されるβ型チタン合金の厚さは、特に限定されず、最終的に取得したいβ型チタン合金を有する物品に応じて適宜設定することができる。例えば、β型チタン合金を有する物品が包丁である場合、β型チタン合金の厚さは、0.5〜5.0mm程度である。また、例えば、β型チタン合金を有する物品が摺動部材である場合、β型チタン合金の厚さは、少なくとも1mm以上であり、場合によっては数m以上であってもよい。但し、本発明における上記β型チタン合金の厚さは当該厚さに限定されるものではなく、あらゆる厚さのβ型チタン合金を使用することができる。
【0024】
工程1における熱処理の温度H(℃)は、以下の式(1):
200≦H≦β−70 (1)
(式中、βは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)
を満たす。工程1における熱処理の温度が上記範囲であることにより、工程3で120時間以上の熱処理を行ってもβ型チタン合金全体が硬くなることはなく、構造体としての靱性を保ちつつ、優れた耐摩耗性を有するβ型チタン合金が得られる。
【0025】
β変態点とは、それ以上の温度ではβ単相となる温度である。本発明の工程1では、熱処理温度Hが上記式(1)を満たすように(具体的には、β型チタン合金のβ変態点βよりも大幅に低い温度で)熱処理を行う。この工程1により、β型チタン合金組織を、β相(体心立方晶)にα相(最密立方晶)が混在した組織にする。熱処理温度Hがβ−70(℃)よりも高い場合、α相の析出比率が少なくなるため、工程3での熱処理後で構造体としての靱性を保つことに寄与するα相が工程1で得られにくく、β単相(又はそれに近い組織)が工程1で得られる虞がある。一方、熱処理温度Hが200(℃)よりも低い場合、上記熱処理による効果が得られない虞がある。そのため、熱処理温度Hは上記式(1)とする。熱処理温度Hの上限値はβ−80(℃)が好ましく、Hの下限値は500(℃)が好ましい。
【0026】
熱処理の時間は、特に限定されず、例えば、熱処理されるβ型チタン合金の厚さ、種類等に応じて適宜設定することができる。一般的には、β型チタン合金の厚さや種類にかかわらず、15分(0.25時間)以上とすることが好ましく、1時間以上がより好ましく、3時間以上がさらに好ましく、24時間以上が特段好ましい。
【0027】
工程1における熱処理としては、炉中加熱、低周波加熱炉等の全体加熱が挙げられる。炉としては、ガス炉、電気炉等が挙げられる。
【0028】
工程1における雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下(例:アルゴン等の希ガス雰囲気下)、真空下等が挙げられる。
【0029】
工程2
本発明のβ型チタン合金の製造方法では、工程2として、前記工程1で得られたβ型チタン合金を局所加熱する。この加熱により、局所(局部)的な急熱および急冷が得られる。当該局所加熱により、局所加熱の影響が少ないと思われる部分(母材部)における結晶粒の粗大化を防ぎつつ、局所加熱の影響が大きい部分(表面部)の結晶粒の粗大化も抑えて当該表面部をβ単相にすることができる。なお、当該局所加熱の加熱温度は限定的ではないが、当該局所加熱によってβ型チタン合金の一部は1000℃以上(好ましくは、1300℃以上)にまで加熱されるものと推定される。
【0030】
工程2の局所加熱は、耐摩耗性を付与したい領域に対して行う。これにより、工程3後において、β型チタン合金に対して選択的に優れた耐摩耗性の領域を付与することが可能となる。
【0031】
工程2における局所加熱としては、例えば、レーザ、高周波誘導、ガスバーナー、電子ビーム等による加熱が挙げられる。局所加熱の中でも、レーザ加熱、高周波誘導加熱及びガスバーナー加熱からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0032】
レーザ加熱としてのレーザは、CO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、半導体レーザ、ファイバレーザ、LDレーザ、LD励起固体レーザ熱等が挙げられる。具体的に、局所加熱として半導体レーザによる加熱を行う場合、出力:300〜1000W、移動速度6mm/sでチタンの処理表面を溶解させないという条件で行うことが好ましい。レーザ加熱装置は、市販品を使用することができる。例えば、発振器がLDL160-1000(レーザライン社)である高出力半導体レーザの他、坂口電熱(株)製、浜松ホトニクス(株)製の各種レーザ加熱装置が挙げられる。
【0033】
高周波誘導加熱は、交流電源による高周波電流の誘導加熱で加熱する。高周波誘導加熱装置は、市販品を使用することができる。ガスバーナーとしては、燃料ガス(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の炭化水素系ガス)を空気と混合して燃焼させるものであれば特に限定されない。ガスバーナー装置は市販品を使用することができる。電子ビームによる加熱は、真空中で高密度に収束させた電子ビームを対象物に照射して加熱する。電子ビーム加熱装置は市販品を使用することができる。
【0034】
工程2における局所加熱後は、必要に応じて、空冷、水冷などにより急速冷却を行ってもよい。この急速冷却により、母材部の結晶粒の粗大化の防止と表面部のβ単相形成がより得られる。
【0035】
工程3
本発明のβ型チタン合金の製造方法では、工程3として、工程2で得られたβ型チタン合金を熱処理する工程3であって、前記熱処理の時間は120時間以上である。当該工程3の熱処理により、工程2で得られた表面部(β単相)は硬化が促進されるとともに、母材部(α相とβ相の二相)は上記熱処理による硬化が抑制される。そのため、構造体としての靱性を保ちつつ、優れた耐摩耗性を有するβ型チタン合金(具体的には、軟らかい母材層と硬くて厚い硬化層を組み合わせたβ型チタン合金)が好適に得られる。なお、当該工程3は、一般的に時効処理とも呼ばれている。
【0036】
工程3における熱処理の温度は、200〜500℃が好ましく、200〜450℃がより好ましい。
【0037】
熱処理の時間は120時間以上である。工程3の熱処理時間が当該範囲であることにより、硬化層の硬さが400HV以上になり、耐摩耗性が向上する。なお、当該熱処理の時間の上限は、特に限定はないが、硬さが下がる過時効となる時間を上限とすることが好ましく、当該時間は例えば1000時間程度である。
【0038】
工程3における熱処理としては、炉中加熱、低周波加熱炉等の全体加熱が挙げられる。炉としては、ガス炉、電気炉等が挙げられる。
【0039】
工程3における雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気下、酸素雰囲気下、窒素雰囲気下、不活性ガス雰囲気下(例:アルゴン等の希ガス雰囲気下)、真空下等が挙げられるが、大気雰囲気下が好ましい。
【0040】
<好ましい態様1>
β型チタン合金がTi-22V-4Al又はTi-15V-6Cr-4Alである場合、
以下の工程1〜3:
(i) β型チタン合金を熱処理する工程1であって、
前記熱処理の温度H(℃)が、以下の式(2):
200≦H≦660 (2) (より好ましくは、500≦H≦650)
であり、
前記熱処理の時間が0.25〜72時間(より好ましくは、48〜72時間)である、工程1、
(ii) 前記工程1で得られたβ型チタン合金を局所加熱する工程2であって、
前記局所加熱がレーザ加熱、高周波誘導加熱及びガスバーナー加熱からなる群から選ばれた少なくとも1種である工程2、及び
(iii) 前記工程2で得られたβ型チタン合金を熱処理する工程3であって、
前記熱処理の温度が200〜450℃(より好ましくは250〜350℃)であり、
前記熱処理の時間が120時間以上(より好ましくは240〜1000時間)である、工程3、
を順に含む、硬化層を含むβ型チタン合金の製造方法であることが好ましい。
【0041】
<好ましい態様2>
β型チタン合金がTi-2〜15Feである場合、
以下の工程1〜3:
(i) β型チタン合金を熱処理する工程1であって、
前記熱処理の温度H(℃)が、以下の式(3):
500≦H≦β−70 (3) (より好ましくは、550≦H≦β−70)
であり、
前記熱処理の時間が0.5〜1000時間(より好ましくは、720〜1000時間)である、工程1、
(ii) 前記工程1で得られたβ型チタン合金を局所加熱する工程2であって、
前記局所加熱がレーザ加熱、高周波誘導加熱及びガスバーナー加熱からなる群から選ばれた少なくとも1種である工程2、及び
(iii) 前記工程2で得られたβ型チタン合金を熱処理する工程3であって、
前記熱処理の温度が250〜500℃(より好ましくは300〜450℃)であり、
前記熱処理の時間が120時間以上である、工程3、
を順に含む、硬化層を含むβ型チタン合金の製造方法であることが好ましい。
【0042】
2.本発明のβ型チタン合金
本発明のβ型チタン合金は、上述の通り、 以下の工程1〜3:
(i) β型チタン合金を熱処理する工程1であって、
前記熱処理の温度H(℃)が、以下の式(1):
200≦H≦β−70 (1)
(式中、βは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)
である、工程1、
(ii) 前記工程1で得られたβ型チタン合金を局所加熱する工程2、及び
(iii) 前記工程2で得られたβ型チタン合金を熱処理する工程3であって、
前記熱処理の時間が120時間以上である工程3、
を順に含む製造方法によって好適に得られる。上記製造方法によって得られた本発明のβ型チタン合金は、構造体としての靱性を保ちつつ、優れた耐摩耗性を有する。各工程の詳細については、上記1.本発明のβ型チタン合金の製造方法の項目での詳細と同様である。
【0043】
本発明のβ型チタン合金の硬化層の厚さ(厚み)は、特に限定されず、当該β型チタン合金自体の厚さによって適宜設定することができるが、一般的には1mm以上が好ましい。また、当該硬化層の厚さSの上限値は、硬化層を含むβ型チタン合金全体の厚さをβとした場合に、S=0.5βLを満たす値が好ましい。
【0044】
本発明の硬化層を有するβ型チタン合金は、(a)硬化層と(b)母材層(母材部)の2層から構成される。硬化層の硬さは、ビッカース硬度で400HV以上であり、420〜700HVが好ましく、600〜700HVがより好ましい。母材層(母材部)の硬さは、ビッカース硬度で350HV以下であり、140〜300HVが好ましく、140〜250HVがより好ましい。言い換えれば、
本発明のβ型チタン合金の製造方法では、硬化層と母材層とを有するβ型チタン合金であって、前記硬化層のビッカース硬度が400HV以上(好ましくは420〜700HV、より好ましくは600〜700HV)であり、前記母材層のビッカース硬度が350HV以下(好ましくは140〜300HV、より好ましくは140〜250HV)である、前記β型チタン合金を得ることができる。
【0045】
3.本発明のβ型チタン合金を有する物品
本発明の上記物品は、構造体としての靱性を保ちつつ、優れた耐摩耗性を有する当該β型チタン合金を有する。そのため、本発明の上記物品は、靱性と耐摩耗性の両方の特性が要求される各種分野で使用することができる。
【0046】
本発明のβ型チタン合金を有する物品としては、特に限定されず、一般的に金属を使用する物品に対して当該βチタン合金を使用することができる。具体的なβ型チタン合金を有する物品としては、機械部品、食品加工機器、調理器具、医療器具、工具等が挙げられる。
【0047】
機械部品としては、自動車部品、航空機部品、摺動部材等が挙げられる。自動車部品としては、エンジン部品、コンロッド、バルブ等が挙げられる。航空機部品としては、エンジン部品が挙げられる。摺動部材としては、摺動部材としては、ベアリング、ベアリングボール、ローラ、コンプレッサ用ベーン、ガスタービン翼、カムローラ等が挙げられる。
【0048】
食品加工機器としては、肉用スライサー、野菜用切断機、ミキサー等が挙げられる。
【0049】
調理器具としては、包丁、調理バサミ、鍋、フライパン等が挙げられる。
【0050】
医療器具としては、メス、ハサミ等が挙げられる。
【0051】
工具としては、各種切削工具(バイト、フライス、ドリル等)などが挙げられる。
【0052】
β型チタン合金を有する物品(又はβ型チタン合金を有する物品中のβ型チタン合金部分)に関して、(a)硬化層を含まないβ型チタン合金に対して硬化層を形成した後、当該βチタン合金を加工することによって上記物品又は上記部分を得てもよく、また、(b)硬化層を含まないβ型チタン合金を加工した後、当該β型チタン合金の加工品に対して硬化層を形成することによって上記物品又は上記部分を得てもよい。
【発明の効果】
【0053】
本発明の製造方法によれば、構造体としての靱性を保ち被削性に優れ、且つ、優れた耐摩耗性を有する本発明のβ型チタン合金が得られる。また、本発明の物品は、上記β型チタン合金を有するため、靱性と耐摩耗性の両方の特性が要求される各種分野(機械部品、食品加工機器、調理器具、医療器具、工具等)で好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】実施例におけるレーザトーチの模式図を示す。
図2】試験2における摩耗試験で使用したBall-on-Flat型往復動式摩耗試験機の模式図を示す。
図3】実施例1の工程2後のβ型チタン合金の光学顕微鏡写真を示す。
図4】実施例1で得られた(工程3後の)β型チタン合金の光学顕微鏡写真を示す。
図5】実施例4の工程2後のβ型チタン合金の光学顕微鏡写真を示す。
図6】実施例4で得られた(工程3後の)β型チタン合金の光学顕微鏡写真を示す。
図7】実施例7で得られた硬化層を含むβ型チタン合金を有する物品(包丁)の写真を示す。
図8】実施例1及び比較例3のβ型チタン合金に対して試験3の切削を行った時のドリルの刃の観察結果(写真)を示す。比較例3における丸印は、ドリルのマージン部の破損箇所を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例の態様に限定されない。
【0056】
実施例1
まず、β型チタン合金として、Ti-22V-4Al合金(JIS 80種(大同特殊鋼(株)製)を用意した。当該合金を15mm×40mm×3mmに切削加工して、平板の試験片とした。
【0057】
次に、工程1として、当該試験片を加熱炉に入れて、当該試験片全体を炉中加熱した。当該加熱条件は、加熱炉温度:650℃、雰囲気:大気中、加熱保持時間:30分、とした。次いで、当該加熱された試験片を水冷した。これにより、試験片表面には、酸化膜が形成されたことが確認された。
【0058】
次に、試験片の前記酸化膜を、ショットブラストを用いて除去した。ショットブラストの条件は、ノズル径:φ8mm、圧力:0.5MPa、粒度:JIS R6001に準拠したF46、材質:アルミナ、とした。次いで、当該試験片を、アセトンを用いて洗浄した。
【0059】
次に、工程2として、洗浄された当該試験片に対して、半導体レーザ(発振器がLDL160-1000(レーザライン社)である高出力半導体レーザ)を用いてレーザ照射をした。当該レーザの照射条件は、出力:720W、移動速度:6mm/s、焦点距離:100mm、デフォーカス15mm、スポット径:4.5mmとした。また、レーザ照射は、試験片の15mm×40mmの面に対して照射を行い、レーザトーチを照射面の垂直方向に対して10度傾けて試験片面中央試験片面長手方向に移動させた(図1参照)。レーザ照射による加熱時のシールドガスには、アルゴンを使用した。これにより、試験片は急速に1000℃以上に加熱され、且つ冷却された。
【0060】
次に、工程3として、レーザ照射された試験片を加熱炉に入れて、当該試験片全体を加熱した。当該加熱条件は、加熱炉温度:300℃、雰囲気:大気中、加熱保持時間:120時間、とした。これにより、実施例1のβ型チタン合金を得た。
【0061】
実施例2〜6及び比較例1〜18
(a)β型チタン合金の種類、(b)工程1(レーザ照射前の熱処理)における加熱温度、及び/又は(c)工程3(レーザ照射後の熱処理)における加熱の保持時間を適宜変更する以外は、実施例1と同様にして、各実施例及び比較例のβ型チタン合金を得た。上記(a)〜(c)の変更点については、表2〜5に示す。
【0062】
なお、上述のβ型チタン合金としてのTi-22V-4Al合金及びTi-15V-6Cr-4Alの組成およびβ変態点について、以下の表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例7
3mm厚さのβ型チタン合金板(Ti-22V-4Al合金(JIS 80種(大同特殊鋼(株)製))から、放電加工にて包丁の形状に切り出した。次いで、当該切り出されたβ型チタン合金を、大気雰囲気下650℃で30分間の熱処理を行った(工程1)。次に、上記熱処理されたβ型チタン合金を、半導体レーザを用いて局所加熱した(工程2)。次いで、β型チタン合金の刃の部分の厚みをグラインダーで薄く加工した後、大気雰囲気下300℃で120時間の熱処理を行った(工程3)。最後に、当該β型チタン合金を柄につけた。これにより、本発明のβ型チタン合金を有する物品(包丁)を得た。なお、実施例7における工程1〜3の各熱処理又は局所加熱の方法及び条件は、いずれも実施例1と同様とした。当該包丁の写真については、図7に示す。
【0065】
試験1:ビッカース硬度測定
JIS Z2244に準拠して、(a)試験片の、工程2の局所加熱を行った領域の中心位置表面から0.2mm深さ位置、(b)試験片の上記表面から1mm深さ位置、及び(c)工程2の加熱の影響がない位置(試験片の上記表面から0.5×3=1.5mm深さ位置よりもさらに深い位置)のビッカース硬度を測定した。
なお、上記各試験片の表面からの深さ位置とは、試験片のレーザ照射部の深さ方向における深さを意味するものであり、当該ビッカース硬度は、レーザ照射移動方向に垂直な切断面において、照射表面直下から内部に向かって行った。
【0066】
試験2:耐摩耗性測定
耐摩耗性測定では、図2に示すようなBall-on-Flat型往復動式摩耗試験機を用いた。まず、各実施例及び比較例の各β型チタン合金試験片の表面(具体的には、工程2の局所加熱を行った領域の表面)を0.2mm研削した後、エメリー紙で2000番まで研磨(Ra=0.03μm)し、エチルアルコールで洗浄して乾燥させた。摺動相手材料としては、SUJ2(硬さ850HV0.5)、直径4.76mmの鋼球を用いた。鋼球は、防錆油などによる汚れを取り除くため、ヘキサン、アセトン、及びエチルアルコールでそれぞれ10分の超音波洗浄を行い、乾燥させてから試験機のBall側に取り付けた。試験条件は、荷重0.98N、振動数1Hz、振幅5mm、摩擦距離36m、無潤滑、温度25℃、湿度50%RHの大気中とした。摩擦試験は、各試験片の上記表面に対して4回行った。試験後、表面粗さ計による試験片の上記表面の3次元形状測定を行い、摩耗痕の3次元形状から摩耗した体積を算出し、摩耗体積とした。また、4回の試験の摩耗体積を平均して、各処理条件に対する摩耗量(単位:mm3)とした。
【0067】
試験3:切削性評価
各実施例及び比較例のβ型チタン合金に対して、切削加工を行った。具体的には、ドリル(φ3mm FT-GDS, OSG製)を含む切削加工機を用いて、各試験片の工程2の局所加熱を行っていない領域に対して穴開けを行い、ドリルの刃を観察した。ドリルの刃の観察は、2回穴開け毎に行った。切削条件については以下の通りである。
<切削条件>
・切削速度V=15 (m/min)
・1刃1回転当たりの送り量f=0.1(mm/刃)
<切削性評価基準>
○:30個の穴開けを行っても、ドリルの破損が見られなかった。
×:30個の穴開け後には、ドリルの破損が見られた。つまり、穴開け個数が30個以内でドリルの破損が見られた。
【0068】
各評価について結果を以下の表に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
(切削性に関する考察)
従来の方法では、強度の高いβ型チタン合金製物品の製造方法として、溶体化熱処理(本発明の工程1に対応)によりβ単相金属組織を得てから切削加工を行い、時効硬化処理(本発明の工程3に対応)を行うのが一般的であるが、上記溶体化熱処理は上記時効硬化処理を念頭に置いたものであって、切削性を考慮していない。そのため、被削性が悪いという問題があった。一方、切削性を考慮して熱処理を行い、加工を行おうとすると、本発明の工程1に対応する溶体化処理を行うことができず、本発明の工程3に対応する時効処理を行っても材料の強化は期待できないという問題があった。これに対して、本発明では、上記工程1〜3を有する新規な熱処理法を採用しているため、上記問題を解決し、切削性に優れたβ型チタン合金が得られた。
【符号の説明】
【0074】
1. 硬化層(硬化部)
2. 母材層(母材部又は未硬化部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8