特許第6296237号(P6296237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296237
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/28 20140101AFI20180312BHJP
   E05B 79/08 20140101ALI20180312BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   E05B77/28
   E05B79/08
   B60J5/00 M
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-90605(P2014-90605)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-209661(P2015-209661A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155767
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 憲志
(72)【発明者】
【氏名】多田 武史
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 英二
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 佑介
(72)【発明者】
【氏名】三戸 翔
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 淳
(72)【発明者】
【氏名】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】尾高 善樹
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−038799(JP,A)
【文献】 特開2006−266026(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0013246(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアを車体に対して閉じた状態で保持可能なラッチ機構と、
前記ラッチ機構を前記車体に設けられたストライカとの係合が解除可能なアンロック状態、或いは前記ストライカとの係合が解除不能なロック状態に設定するためのロック機構と、を含む車両用ドアロック装置であって、
前記ロック機構は、
前記車両ドアの内側または外側に設けられたドア操作ハンドルのドア開放操作に伴って駆動されるオープンレバーと、
前記オープンレバーのドア開放方向動作を前記ラッチ機構に伝達可能なアンロック位置と前記ラッチ機構に伝達不能なロック位置との間で回転可能に構成されたアクティブレバーと、
前記アクティブレバーを当該アクティブレバーの前記ロック位置に保持するためのダブルロックレバーと、
ロック位置とアンロック位置との間で回転可能となるようにハウジングの支持部に取付けられたインサイドロッキングレバーと、
前記ハウジングの前記支持部の軸径を上回るコイル内径のコイル部と、前記コイル部の線材の両端からそれぞれ延出する第1アーム部及び第2アーム部とを有し、前記コイル部が前記支持部に挿入され、前記第1アーム部が前記アクティブレバーに係止され且つ前記第2アーム部が前記インサイドロッキングレバーに係止されることによって前記インサイドロッキングレバーに組付けられ、前記アクティブレバー及び前記インサイドロッキングレバーを弾性付勢した状態で相対回転可能に連結するトーションスプリングと、
を備え、
前記インサイドロッキングレバーは、前記トーションスプリングの組付け時に前記第1アーム部及び前記第2アーム部がそれぞれ係止されることで生じる反力によって前記コイル部の内周面が前記支持部の外周面に接触するのを阻止するために前記コイル部に係合する係合部を備える、車両用ドアロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアロック装置であって、
前記インサイドロッキングレバーの前記係合部は、前記トーションスプリングの前記第1アーム部と前記第2アーム部とによって区画される領域に設けられ前記コイル部の外周面に当接することによって前記コイル部に係合する、車両用ドアロック装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用ドアロック装置であって、
前記インサイドロッキングレバーは、前記ハウジングの前記支持部への取付けのために開口形成された取付け穴を備え、前記取付け穴の穴径は、前記支持部の軸径を上回り、且つ前記トーションスプリングの前記コイル部のコイル内径を下回るように構成され、前記コイル部が前記係合部によって前記取付け穴と同心状に位置決めされる、車両用ドアロック装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ドアロック装置であって、
前記インサイドロッキングレバーは、前記トーションスプリングの前記第1アーム部の係止のための第1係止部と、前記トーションスプリングの前記第2アーム部の係止のための第2係止部と、を備え、前記係合部、前記第1係止部及び前記第2係止部の協働によって前記トーションスプリングを保持する、車両用ドアロック装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用ドアロック装置であって、
前記インサイドロッキングレバーは、前記トーションスプリングの組付け状態で前記トーションスプリングの前記コイル部のコイル面に沿って延在するとともに、前記係合部、前記第1係止部及び前記第2係止部と一体化されたベースプレート部を備え、
前記第1係止部は、前記ベースプレート部から当該ベースプレート部の延在面と交差する方向に延出して前記トーションスプリングの前記第1アーム部に当接する第1延出壁として構成され、前記第1延出壁は、その延出先端部に前記コイル部に向かうにつれて壁高さが低くなるように傾斜した傾斜面を備える、車両用ドアロック装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の車両用ドアロック装置であって、
前記インサイドロッキングレバーの前記第2係止部は、前記ベースプレート部から当該ベースプレート部の延在面と交差する方向に延出して前記第2アーム部に当接する第2延出壁として構成され、前記第2延出壁は、前記ドアロックノブと前記インサイドロッキングレバーを連結する長尺状の連結部材との接続のための接続部と、当該第2延出壁との当接位置から前記第2アーム部が抜け出すのを阻止するためのスプリング抜け止め部と、のうちの少なくとも一方を備える、車両用ドアロック装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用ドアロック装置であって、
前記第2延出壁は、前記スプリング抜け止め部を備え、
前記トーションスプリングは、前記コイル部からの前記第1アーム部の延出長さが前記コイル部からの前記第2アーム部の延出長さを上回るように構成されている、車両用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアに取付けられる車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドアロック装置として、車両ドア側のラッチ機構を車体側のストライカとの係合が解除可能なアンロック状態、或いはストライカとの係合が解除不能なロック状態に設定するためのロック機構と、ロック機構によるラッチ機構のロック状態を保持することが可能なダブルロック機構とを備えているものが知られている。この車両用ドアロック装置の一つが、例えば下記特許文献1に開示されている。
【0003】
この車両用ドアロック装置では、ロック機構は、ドアロックノブにロッキングケーブルを介して連結されたインサイドロッキングレバー(ロック操作レバー)と、オープンリンクをアンロック状態とロック状態とに切り替えるためのアクティブレバーと、インサイドロッキングレバーとアクティブレバーとを相対回転可能に連結するトーションスプリング(被係止レバー)と、を備えている。ダブルロック機構は、そのダブルロックセット状態においてアクティブレバーのロック位置からロック解除位置への回転動作を阻止するためのダブルロックレバー(係止レバー)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−38799号公報
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
【0006】
上記の車両用ドアロック装置では、トーションスプリングは、ダブルロックレバーによってアクティブレバーの回転動作が阻止された状態で、ドアロックノブの操作に伴ってインサイドロッキングレバーがロック位置とロック解除位置との間で回転可能となるように、インサイドロッキングレバー及びアクティブレバーを弾性付勢する機能を果たす。このトーションスプリングでは、インサイドロッキングレバーを回転可能に支持する支持部(支持ピン)にコイル部が挿入され、コイル部から延出する2つのアーム部がそれぞれインサイドロッキングレバー及びアクティブレバーに係止されている。この場合、このトーションスプリングの組付け時に2つのアーム部がそれぞれ係止されることで生じる反力によって、コイル部のコイル内周面が支持部に常時に押し付けられることが想定される。その結果、ドアロックノブの操作に伴ってトーションスプリングがインサイドロッキングレバーとともに回転動作する際、コイル部のコイル内周面と支持部との間の摺動抵抗によってドアロックノブの操作フィーリング(荷重フィーリング)が低下するという問題が生じ得る。
【0007】
そこで本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、車両用ドアロック装置において、ドアロックノブの操作フィーリングの低下を抑えるのに有効な技術を提供することである。
【0008】
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ドアロック装置は、ラッチ機構及びロック機構を含む。ラッチ機構は、車両ドアを車体に対して閉じた状態で保持可能に構成される。ロック機構は、ラッチ機構を車体に設けられたストライカとの係合が解除可能なアンロック状態、或いはストライカとの係合が解除不能なロック状態に設定する機能を果たす。
【0009】
ロック機構は、更にオープンレバー、アクティブレバー、ダブルロックレバー、インサイドロッキングレバー及びトーションスプリングを備える。オープンレバーは、車両ドアの内側または外側に設けられたドア操作ハンドルのドア開放操作に伴って駆動される。アクティブレバーは、オープンレバーのドア開放方向動作をラッチ機構に伝達可能なアンロック位置とラッチ機構に伝達不能なロック位置との間で回転可能に構成される。ダブルロックレバーは、アクティブレバーを当該アクティブレバーのロック位置に保持する機能を果たす。このダブルロックレバーを含む機構を、ラッチ機構のロック状態を保持可能なダブルロック機構ということもできる。インサイドロッキングレバーは、ロック位置とアンロック位置との間で回転可能となるようにハウジングの支持部に取付けられる。
【0010】
トーションスプリングは、ハウジングの支持部の軸径を上回るコイル内径のコイル部と、コイル部の線材の両端からそれぞれ延出する第1アーム部及び第2アーム部とを有する。このトーションスプリングは、コイル部が支持部に挿入され、第1アーム部がアクティブレバーに係止され且つ第2アーム部がインサイドロッキングレバーに係止されることによってインサイドロッキングレバーに組付けられ、アクティブレバー及びインサイドロッキングレバーを弾性付勢した状態で相対回転可能に連結する。従って、アクティブレバーがダブルロックレバーによってロック位置に保持された状態でインサイドロッキングレバーが回転する際、トーションスプリングは、弾性付勢力に抗して第1アーム部及び第2アーム部が互いに近接するように動作し、或いは弾性付勢力にしたがって第1アーム部及び第2アーム部が互いに離間するように動作する。
【0011】
上記構成のインサイドロッキングレバーは、トーションスプリングの組付け時に第1アーム部及び第2アーム部がそれぞれ係止されることで生じる反力によってコイル部の内周面が支持部の外周面に接触するのを阻止するためにコイル部に係合する係合部を備える。これにより、トーションスプリングがインサイドロッキングレバーとともに回転動作する際、コイル部と支持部とが直接的に接触することが係合部によって阻止される。この場合、コイル部のコイル内周面と支持部との間に摺動抵抗が生じることがなく、その結果、トーションスプリングに起因してドアロックノブの操作フィーリングが低下するのを阻止できる。
【0012】
上記構成の車両用ドアロック装置では、インサイドロッキングレバーの係合部は、トーションスプリングの第1アーム部と第2アーム部とによって区画される領域に設けられコイル部の外周面に当接することによってコイル部に係合するのが好ましい。これにより、インサイドロッキングレバーがトーションスプリングのコイル部に係合する構造を簡素化することができる。
【0013】
上記構成の車両用ドアロック装置では、インサイドロッキングレバーは、支持部への取付けのために開口形成された取付け穴を備えるのが好ましい。この取付け穴の穴径は、支持部の軸径を上回り、且つトーションスプリングのコイル部のコイル内径を下回るように構成され、コイル部が係合部によって取付け穴と同心状に位置決めされる。これにより、係合部によるコイル部の位置決めによって、インサイドロッキングレバーの取付け穴の開口縁部がコイル部に優先して支持部に接触するため、コイル部が支持部に直接的に接触するのをより確実に阻止できる。
【0014】
上記構成の車両用ドアロック装置では、インサイドロッキングレバーは、トーションスプリングの第1アーム部の係止のための第1係止部と、トーションスプリングの第2アーム部の係止のための第2係止部と、を備え、係合部、第1係止部及び第2係止部の協働によってトーションスプリングを保持するのが好ましい。これにより、インサイドロッキングレバーにトーションスプリングを予め組み付けてアセンブリ化することができるため、トーションスプリングの組付け作業が容易になる。
【0015】
上記構成の車両用ドアロック装置では、インサイドロッキングレバーは、トーションスプリングの組付け状態でトーションスプリングのコイル部のコイル面に沿って延在するとともに、係合部、第1係止部及び第2係止部と一体化されるベースプレート部を備えるのが好ましい。この場合、第1係止部は、ベースプレート部から当該ベースプレート部の延在面と交差する方向に延出してトーションスプリングの第1アーム部に当接する第1延出壁として構成され、この第1延出壁は、その延出先端部にコイル部に向かうにつれて壁高さが低くなるように傾斜した傾斜面を備える。この傾斜面によれば、トーションスプリングの組付けの時にコイル部をインサイドロッキングレバーのベースプレート部に対して位置決めした状態で、第1アーム部を第1延出壁の延出先端部を越えて所定の係止位置にセットする際、第1アーム部が第1延出壁の延出先端部に干渉し難くなり、第1アーム部を係合位置まで容易に誘導することができる。その結果、トーションスプリングの組付け作業を円滑に行うことが可能になる。
【0016】
上記構成の車両用ドアロック装置では、インサイドロッキングレバーの第2係止部は、ベースプレート部から当該ベースプレート部の延在面と交差する方向に延出して第2アーム部に当接する第2延出壁として構成され、この第2延出壁は、接続部とスプリング抜け止め部とのうちの少なくとも一方を備えるのが好ましい。接続部は、ドアロックノブとインサイドロッキングレバーを連結する長尺状の連結部材との接続のための部位である。スプリング抜け止め部は、第2延出壁との当接位置から第2アーム部が抜け出すのを阻止する機能を果たす。このスプリング抜け止め部によれば、トーションスプリングの組付け状態を安定させることができる。この場合、インサイドロッキングレバーの第2係止部は、トーションスプリングの第2アーム部を係止するという本来の機能に加えて、接続部やスプリング抜け止め部のような別の機能を兼務することができ合理的である。
【0017】
上記構成の車両用ドアロック装置では、第2延出壁は、スプリング抜け止め部を備え、且つトーションスプリングは、コイル部からの第1アーム部の延出長さがコイル部からの第2アーム部の延出長さを上回るように構成されるのが好ましい。第1アーム部の延出長さを長くすることで、第1アーム部の延出長さが第2アーム部の延出長さと同等若しくは第2アーム部の延出長さよりも短い場合に比して、第1アーム部を第2係止部に係合した第2アーム部に近接する方向に撓ませ易くなり、第1アーム部を第1係止部に係合させ易くなる。その結果、トーションスプリングの組付け作業を更に円滑に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、車両用ドアロック装置において、ドアロックノブの操作フィーリングの低下を抑えることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施の形態の車両用ドアロック装置100の構造を示す図である。
図2図2は、図1中の車両用ドアロック装置100のハウジング101に収容されるロック機構120及びダブルロック機構130の構成を示す図である。
図3図3は、図1中の車両用ドアロック装置100のA−A線についての断面構造を示す図である。
図4図4は、図2中の車両用ドアロック装置100の斜視図である。
図5図5は、図4をアクティブレバー124が取り外された状態にて示す部分拡大図である。
図6図6は、図5中のインサイドロッキングレバー125及びトーションスプリング127の斜視図である。
図7図7は、図6中のインサイドロッキングレバー125及びトーションスプリング127の側面図である。
図8図8は、図6中のインサイドロッキングレバー125及びトーションスプリング127の平面図である。
図9図9は、車両用ドアロック装置100において、ドアロックノブ20のロック操作時にロック機構120のインサイドロッキングレバー125及びアクティブレバー124がともにロック位置に設定され、且つダブルロック機構130のダブルロックレバー131がダブルロック解除位置に設定された状態を示す図である。
図10図10は、図9に示す車両用ドアロック装置100において、ダブルロック機構130のダブルロックレバー131がダブルロック解除位置からダブルロック位置へと回転動作した状態を示す図である。
図11図11は、図10に示す車両用ドアロック装置100において、ドアロックノブ20のロック解除操作時の状態を示す図である。
図12図12は、図11に示すドアロックノブ20のロック解除操作時のインサイドロッキングレバー125及びトーションスプリング127の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。尚、当該図面では、車両前方及び車両後方をそれぞれ矢印X1及び矢印X2で示し、車両上方及び車両下方をそれぞれ矢印Y1及び矢印Y2で示している。車両ドアに取付けられる前の状態の車両用ドアロック装置に対して、また車両ドアに取付けられた後の状態の車両用ドアロック装置に対して、これらの方向を適用することができる。
【0021】
図1に示す本実施の形態の車両用ドアロック装置(以下、単に「ドアロック装置」ともいう)100は、車両ドアDRのドアアウタパネル(車外側パネル)とドアインナパネル(車内側パネル)とによって区画される領域に装着される。図1にはこの車両ドアDRの典型例として車両右側の車両ドアが記載されている。
【0022】
ドアロック装置100は、当該ドアロック装置のドアロック構成要素を収容するハウジング101と、このハウジング101の上部に取付けられるカバー部材102とを備えている。ハウジング101は、車外側の第1ハウジング構成体101aと、車内側の第2ハウジング構成体101bとによって構成されている。カバー部材102は、車両ドアDRの外部から侵入した水や盗難用部材からハウジング101に収容されたドアロック構成要素を保護する機能を果たす。ドアロック構成要素には、ラッチ機構110、ロック機構120及びダブルロック機構130が含まれる。
【0023】
ラッチ機構110は、周知のように、車両ドアDRを車体BDに対して閉じた状態で保持するためのものであり、第1ハウジング構成体101a及び第2ハウジング構成体101bに取付けられている。このラッチ機構110は、車体BDに固定されたストライカSTに対して係合及び離脱が可能なラッチ(図示省略)と、このラッチに対して係合及び非係合が可能でありストライカSTに対するラッチの係合の維持及び解除が可能なポール(図示省略)と、このポールと一体的なリフトレバー(図示省略)を備えている。このラッチがストライカSTと係合して、その係合状態が維持されることで、車両ドアDRが閉じた状態(ラッチ状態)に保持される。一方で、ラッチとストライカSTとの係合が解除されてストライカSTがラッチから離脱することで、車両ドアDRが閉じた状態から開いた状態(アンラッチ状態)に移行する。このラッチ機構110が本発明の「ラッチ機構」に相当する。
【0024】
ロック機構120は、ラッチ機構110を車体BDに設けられたストライカSTとの係合が解除可能なアンロック状態、或いはストライカSTとの係合が解除不能なロック状態に設定する機能を果たす。図2に示されるように、このロック機構120は、インサイドオープンレバー121、アウトサイドオープンレバー122、オープンリンク123、アクティブレバー124、インサイドロッキングレバー125及びトーションスプリング126,127を備えている。このロック機構120が本発明の「ロック機構」に相当する。
【0025】
インサイドオープンレバー121は、車両ドアDRの内側に設けられたドア操作ハンドルであるインサイドドアハンドル10(図1参照)にインサイドオープンケーブルW1(図1参照)を介して接続されている。このため、インサイドオープンレバー121は、インサイドドアハンドル10のドア開放操作によって、回転軸121aを中心にして図2に示す初期位置から、アウトサイドオープンレバー122及びオープンリンク123を所定量持ち上げる作動位置まで回転動作するように構成されている。この目的のため、インサイドオープンレバー121は、アウトサイドオープンレバー122との係合及び離脱が可能であり、且つインサイドロッキングレバー125は、アクティブレバー124との係合及び離脱が可能である。
【0026】
アウトサイドオープンレバー122は、車両ドアDRの外側に設けられたドア操作ハンドルであるアウトサイドドアハンドル(図示省略)に接続されている。このため、アウトサイドオープンレバー122は、アウトサイドドアハンドルのドア開放操作によって、回転軸(図示省略)を中心にして初期位置からトーションスプリング126の弾性付勢力に抗して作動位置まで回転動作するように構成されている。上記構成のインサイドオープンレバー121及びアウトサイドオープンレバー122はいずれも、ドア開放操作に伴って駆動されるレバーであり、本発明の「オープンレバー」に相当する。
【0027】
オープンリンク123は、インサイドオープンレバー121の初期位置から作動位置への回転動作時に、或いはアウトサイドオープンレバー122の初期位置から作動位置への回転動作時に、初期位置から作動位置へと移動するように構成されている。オープンリンク123が作動位置においてアンロック状態にあるとき、各ドアハンドルのドア開放操作に伴う各オープンレバー121,122のドア開放方向動作は、オープンリンク123を介してラッチ機構110のリフトレバーに伝えられる。一方、オープンリンク123が初期位置においてロック状態にあるとき、各ドアハンドルのドア開放操作に伴う各オープンレバー121,122のドア開放方向動作は、オープンリンク123には伝えらえるものの、オープンリンク123からラッチ機構110のリフトレバーには伝えられない。尚、このオープンリンク123の機能を別の要素によって達成することが可能な場合は、オープンリンク123を省略した構成を採用することもできる。
【0028】
アクティブレバー124は、アンロック位置とロック位置との間で回転可能であり、この回転動作に伴ってオープンリンク123の設定位置を変更することができる。このアクティブレバー124が本発明の「アクティブレバー」に相当する。この場合、アクティブレバー124のアンロック位置においてオープンリンク123が初期位置でアンロック状態に設定されることによって、オープンレバー121,122のドア開放方向動作はラッチ機構110に伝達可能になる。一方で、アクティブレバー124のロック位置においてオープンリンク123が初期位置に設定されることによって、オープンレバー121,122のドア開放方向動作はラッチ機構110に伝達不能になる。
【0029】
ダブルロック機構130は、概してロック機構120によるロック状態を保持することが可能な機構であり、アクティブレバー124の作動を規制するダブルロックセット状態と、アクティブレバー124の作動を許容するダブルロックアンセット状態とのいずれかの状態を選択的に達成する機能を果たす。このダブルロック機構130は、ダブルロックレバー131と、ダブルロックレバー131を駆動するためのアクチュエータである電気モータ132と、を備えている。このダブルロック機構130のダブルロックレバー131が本発明の「ダブルロックレバー」に相当する。この場合、ダブルロック機構130をロック機構120の一構成要素とすることもできる。
【0030】
この目的のため、ダブルロックレバー131は、第1ハウジング構成体101aに設けられた軸状の支持部103に回転可能に取付けられており、且つトーションスプリング127(具体的には、後述の被ロック部127e)と係合することによってアクティブレバー124の回転動作をロックするためのロック部131aを備えている。ダブルロック機構130のダブルロックアンセット状態では、ダブルロックレバー131は、電気モータ132によってロック部131aがトーションスプリング127に係合しない非係合位置(ダブルロック解除位置)に設定される。一方で、ダブルロック機構130のダブルロックセット状態では、ダブルロックレバー131は、電気モータ132によってロック部131aがトーションスプリング127に係合する係合位置(ダブルロック位置)に設定される。即ち、ダブルロックレバー131は、トーションスプリング127に係合する係合位置とトーションスプリング127に係合しない非係合位置とに切り替え可能であり、アクティブレバー124を当該アクティブレバー124のロック位置に保持するために係合位置に設定される。
【0031】
図3及び図4に示されるように、インサイドロッキングレバー125は、車両ドアDRの内側に設けられたドアロックノブ20(図1参照)のロック操作によるロック位置とドアロックノブ20のロック解除操作によるアンロック位置との間で回転可能となるように、第1ハウジング構成体101a(ハウジング101)の軸状の支持部104に回転可能に取付けられている。この目的のために、インサイドロッキングレバー125は、第1ハウジング構成体101aに沿って延在する平板状のベースプレート部125aに取付け穴125bを備えている。この取付け穴125bは、支持部104の軸径に所定隙間を加えた穴径を有する。更に、このインサイドロッキングレバー125にトーションスプリング127が組み付けられている。インサイドロッキングレバー125にトーションスプリング127が組付けられた組付け状態では、ベースプレート部125aは、トーションスプリング127のコイル部(後述のコイル部127a)のコイル面に沿って延在する。このインサイドロッキングレバー125が本発明の「インサイドロッキングレバー」に相当する。尚、インサイドロッキングレバー125のロック操作は、ドアロックノブ20の操作によるもの以外にパワーロッキングによるものでもよい。
【0032】
同様に、アクティブレバー124は、インサイドロッキングレバー125が取付けられる支持部104に回転可能に取付けられている。この目的のために、アクティブレバー124は、支持部104の軸径に所定隙間を加えた穴径を有する取付け穴124aを備えている。要するに、アクティブレバー124及びインサイドロッキングレバー125は、支持部104による同軸構造になっており、いずれも支持部104を中心に回転可能に構成されている。
【0033】
アクティブレバー124は、弾性部材であるトーションスプリング127を介してインサイドロッキングレバー125と一体化される。この場合、アクティブレバー124は、係合部124b(図4参照)においてインサイドロッキングレバー125に係合し、且つ係止部124c(図2参照)においてトーションスプリング127に係合するように構成されている。本構成によれば、ダブルロック機構130が作動していない状態(ダブルロックアンセット状態)では、アクティブレバー124とインサイドロッキングレバー125とを連結するトーションスプリング127の回転動作が阻止されないため、アクティブレバー124及びインサイドロッキングレバー125は一体的に回転動作することができる。一方で、ダブルロック機構130が作動した状態(ダブルロックセット状態)では、ダブルロックレバー131によってトーションスプリング127の回転動作が阻止されるため、インサイドロッキングレバー125は、トーションスプリング127の弾性付勢力に抗して、或いはトーションスプリング127の弾性付勢力にしたがってアクティブレバー124に対して相対的に回転動作することができる。
【0034】
図5に示されるように、インサイドロッキングレバー125は、いずれもベースプレート部125aと一体化された第1係止部125c、第2係止部125e及び係合部125hを備えている。
【0035】
第1係止部125cは、ベースプレート部125aから当該ベースプレート部125aの延在面と交差する方向に延出してトーションスプリング127の第1アーム部127bに当接する第1延出壁として構成されている。この第1係止部125cが本発明の「第1係止部」に相当する。この第1係止部125c(第1延出壁)は、その延出先端部にトーションスプリング127のコイル部127aに向かうにつれて壁高さが低くなるように傾斜した傾斜面125dを備えるのが好ましい。
【0036】
第2係止部125eは、ベースプレート部125aから当該ベースプレート部125aの延在面と交差する方向に延出して第2アーム部127fに当接する第2延出壁として構成されている。この第2係止部125eが本発明の「第2係止部」に相当する。この第2係止部125e(第2延出壁)には、接続部125fが設けられている。この接続部125fは、ドアロックノブ20とインサイドロッキングレバー125を連結する連結部材である長尺状のロッキングケーブルW2(図1参照)との接続のための部位であり、ロッキングケーブルW2の一端が取り付けられるケーブル取付け孔を備えている。この接続部125fが本発明の「接続部」に相当する。尚、必要に応じては、この接続部125fに相当する部位を、第2係止部125eから分離して個別の設けることもできる。
【0037】
図6に示されるように、トーションスプリング127は、バネ鋼の線材よりなるもので、線材によってコイル状に形成されたコイル部127aと、コイル部127aの線材の両端からそれぞれ径外方(具体的には、支持部104の軸方向と略直交する径方向)に互いに離間して延出する第1アーム部127b及び第2アーム部127fを有する。このトーションスプリング127は、コイル部127aからの第1アーム部127bの延出長さがコイル部127aからの第2アーム部127fの延出長さを上回るように構成されている。コイル部127aは、そのコイル内径が支持部104の軸径を上回り、且つインサイドロッキングレバー125の取付け穴125bの穴径を下回るように構成されている。このトーションスプリング127は、コイル部127aのコイル中心まわりにねじりモーメントを受けるスプリング、所謂「ねじりコイルばね」として構成されている。このトーションスプリング127が本発明の「トーションスプリング」に相当する。
【0038】
トーションスプリング127は、コイル部127aが支持部104に挿入された状態で、第1アーム部127bのうち先端側領域127cがアクティブレバー124の係止部124cに常時に係止され、且つ、第1アーム部127bのうち先端側領域127cよりもコイル部127aに近接した基端側領域127dがインサイドロッキングレバー125の第1係止部125cに係止されている。また先端側領域127cの先端部によって構成される被ロック部127eは、ダブルロック機構130のダブルロックセット状態において係合位置(図6中の二点鎖線で示す位置)に設定されたダブルロックレバー131に係止される。更に、このトーションスプリング127は、第2アーム部127fがインサイドロッキングレバー125の第2係止部125eに常時に係止されている。これにより、トーションスプリング127は、アクティブレバー124及びインサイドロッキングレバー125を弾性付勢した状態で相対回転可能に連結する機能を果たす。この場合、インサイドロッキングレバー125は、トーションスプリング127からの弾性付勢力に対抗する剛性を有する金属製のプレートによって構成されるのが好ましい。一方で、このインサイドロッキングレバー125は、樹脂製のプレートであってもよい。
【0039】
トーションスプリング127をインサイドロッキングレバー125に組付ける作業では、まず第1アーム部127b及び第2アーム部127fのうち相対的にアーム長さが短い第2アーム部127fを第2係止部125eに係合させ、且つコイル部127aを係合部125hに係合させるのが好ましい。これにより、トーションスプリング127は、インサイドロッキングレバー125に対して第2アーム部127f及び係合部125hにて位置決めされる。その後、第1アーム部127bがトーションスプリング127の弾性付勢力に抗して第2アーム部127fに近接する方向に撓みつつ第1係止部125cの上端を越えるような操作によって、第1アーム部127bは、第1係止部125cとの非係合位置(図6中の二点鎖線で示される位置)から第1係止部125cとの係合位置(図6中の実線で示される位置)まで誘導される(図6中の矢印参照)。
【0040】
このとき、第1係止部125cの延出先端部に設けられた傾斜面125dによれば、トーションスプリング127の第1アーム部127b(基端側領域127d)を第1係止部125cとの係合位置まで容易に誘導することができる。具体的に説明すると、トーションスプリング127の組付けの時にコイル部127aをインサイドロッキングレバー125のベースプレート部125aに対して位置決めした状態で、第1アーム部127bを第1係止部125cの延出先端部を越えて所定の係止位置にセットする際、第1アーム部127bが第1係止部125cの延出先端部に干渉し難くなり、第1アーム部127bを係合位置まで容易に誘導することができる。その結果、トーションスプリング127の組付け作業を円滑に行うことが可能になる。
【0041】
図7に示されるように、インサイドロッキングレバー125の第2係止部(第2延出壁)125eにはスプリング抜け止め部125gが設けられている。このスプリング抜け止め部125gは、トーションスプリング127をインサイドロッキングレバー125に組付けた状態で、第2延出壁との当接位置からトーションスプリング127の第2アーム部127fが抜け出すのを阻止する機能を果たす。即ち、トーションスプリング127の第2アーム部127fは、図7中の矢印方向の動作が阻止される。このスプリング抜け止め部125gによれば、トーションスプリング127の組付け状態を安定させることができる。このスプリング抜け止め部125gが本発明の「スプリング抜け止め部」に相当する。尚、第1アーム部127bの延出長さが第2アーム部127fの延出長さを下回る場合には、スプリング抜け止め部125gに相当する部位を、第2アーム部127fに代えて第1アーム部127bに対して設けることができる。
【0042】
また、トーションスプリング127の組付け易さを考慮した場合には、相対的に延出長さが短い第2アーム部127fを第1アーム部127bよりも先に所定の係止位置にセットするのが効果的である。この場合、スプリング抜け止め部125gによって第2アーム部127fが第2延出壁との当接位置から抜け出すのが阻止されるため、第2アーム部127fを確実に位置決めした状態で、その後に相対的に延出長さが長い第1アーム部127bを所定の係止位置にセットすることができる。この場合、第1アーム部127bの延出長さが長いため、第1アーム部127bの延出長さが第2アーム部127fの延出長さと同等若しくは第2アーム部127fの延出長さよりも短い場合に比して、第1アーム部127bを第2係止部125eに係合した第2アーム部127fに近接する方向に撓ませ易くなり、第1アーム部127bを第1係止部125cに係合させ易くなる。その結果、トーションスプリング127の組付け作業を更に円滑に行うことが可能になる。
【0043】
本実施の形態では、インサイドロッキングレバー125の第2係止部125eは、トーションスプリング127の第2アーム部127fを係止するという本来の機能に加えて、スプリング抜け止め部125g及び前記の接続部125fの別の機能を兼務することができ合理的である。尚、このスプリング抜け止め部125gの機能を接続部125fによって達成することもできる。この場合、スプリング抜け止め部125gを省略し、トーションスプリング127の第2アーム部127fが抜け出す動作を接続部125fのみによって阻止する構成を採用することができる。
【0044】
図8に示されるように、トーションスプリング127の第1アーム部127b及び第2アーム部127fがともに係止される場合、インサイドロッキングレバー125は、第1係止部125cが第1アーム部127bの基端側領域127dから矢印Fb方向の弾性付勢力を受け、且つ第2係止部125eが第2アーム部127fから矢印Fc方向の弾性付勢力を受ける。このような係止状態では、コイル部127aは、第1アーム部127b及び第2アーム部127fがそれぞれ係止されることで生じる反力によって、インサイドロッキングレバー125の取付け穴125bから外れる方向(図7中の矢印Fa方向)、即ちコイル部127aのコイル中心と取付け穴125bの穴中心との位置がずれる方向に付勢される。この場合、コイル部127aのコイル内周面が支持部104に外周面に接触するため、このときの摺動抵抗によってドアロックノブ20の操作フィーリングが低下することが想定される。
【0045】
そこで、本実施の形態のインサイドロッキングレバー125は、前記の反力によってコイル部127aが支持部104の外周面に接触するのを阻止するために、コイル部127aに係合する係合部125hを備えている。この係合部125hが本発明の「係合部」に相当する。
【0046】
係合部125hは、具体的には、トーションスプリング127の第1アーム部127bと第2アーム部127fとが鋭角をなして互いに対向することによって区画される領域Bに設けられ、トーションスプリング127のコイル部127aの外周面に当接することによって当該コイル部127aに係合するように構成されている。この領域Bは、第1アーム部127bと第2アーム部127fとが鈍角をなして互いに対向することによって区画される領域であってもよい。これにより、係合部125hがコイル部127aの外表面に当接してコイル部127aからの荷重を受けることによって、コイル部127aがインサイドロッキングレバー125の取付け穴125bから外れる方向に移動するのが阻止される。特に、係合部125hがコイル部127aの外周面に当接する構成によれば、コイル部127aの外径等の影響を受けることなく係合部125hの形状を独立して設定することができ、インサイドロッキングレバー125がコイル部127aに係合する構造を簡素化することができる。この係合部125hの作用によれば、トーションスプリング127がインサイドロッキングレバー125とともに回転動作する際、コイル部127aと支持部104とが直接的に接触することが阻止される。この場合、コイル部127aのコイル内周面と支持部104の外周面との間に摺動抵抗が生じることがなく、ドアロックノブ20の操作フィーリングを向上させることが可能になる。
【0047】
上記のインサイドロッキングレバー125では、係合部125hのうちコイル部127aの外周面(円弧面)との当接面は、コイル部127aの外周面に沿った曲面であるのが好ましい。これにより、係合部125hとコイル部127aの外周面との接触面積を増やすことができるため、係合部125hを必要以上に大きくすることなくコイル部127aを安定して保持することが可能になる。勿論、係合部125hの当接面が平面であってもよい。
【0048】
上記のインサイドロッキングレバー125では、支持部104への取付けのために開口形成された取付け穴125bの穴径は、支持部104の軸径を上回り、且つトーションスプリング127のコイル部127aのコイル内径を下回るように構成されている。この場合、コイル部127aが係合部125hによって取付け穴125bと同心状に位置決めされる(コイル部127aの位置と取付け穴125bの位置とが合致する)。これにより、係合部125hによるコイル部127aの位置決めによって、インサイドロッキングレバー125の取付け穴125bの開口縁部がコイル部127aに優先して支持部104の外周面に接触するため、コイル部127aが支持部104に直接的に接触するのをより確実に阻止できる。
【0049】
上記のインサイドロッキングレバー125は、係合部125hと、トーションスプリング127の第1アーム部127bの係止のための第1係止部125cと、トーションスプリング127の第2アーム部127fの係止のための第2係止部125eとの3つの要素の協働によってトーションスプリング127を保持するように構成されている。これにより、インサイドロッキングレバー125にトーションスプリング127を予め組み付けてアセンブリ化することができるため、トーションスプリング127の組付け作業が容易になる。
【0050】
尚、上記のラッチ機構110、ロック機構120及びダブルロック機構130のそれぞれの更なる具体的な構成については、例えば特開2002−38799号公報に開示の「被係止機構」、「第1作動機構」及び「第2作動機構」等が参照される。
【0051】
ここで、図9図12を参照しつつ、上記構成のロック機構120のインサイドロッキングレバー125及びアクティブレバー124の動作と、上記構成のダブルロック機構130のダブルロックレバー131の動作について説明する。
【0052】
ダブルロックレバー131が電気モータ132によって図9に示されるダブルロック解除位置に移動することで、ダブルロック機構130がダブルロックアンセット状態になる。この場合に、ドアロックノブ20が操作されると、インサイドロッキングレバー125は、時計回り方向の回転動作によってアンロック位置に設定される。アクティブレバー124は、インサイドロッキングレバー125のこの回転動作に伴ってロック位置から図2に示すアンロック位置へと回転動作してオープンリンク123をアンロック状態に設定する。このとき、ダブルロックレバー131のロック部131aは、トーションスプリング127の被ロック部127eに係合しない非係合位置にあるため、アクティブレバー124は、インサイドロッキングレバー125と一体的に回転動作することができる。
【0053】
その後、ダブルロックレバー131が電気モータ132によって図10に示されるダブルロック位置に移動することで、ダブルロック機構130がダブルロックアンセット状態からダブルロックセット状態へと切り替わる。図10に示される状態では、アクティブレバー124がロック位置にある一方で、ダブルロックレバー131のロック部131aは、トーションスプリング127の被ロック部127eに係合可能な係合位置にある。
【0054】
図10に示される状態においてドアロックノブ20がロック解除操作されると、インサイドロッキングレバー125は時計回り方向に図11に示すロック解除位置まで回転動作する。このとき、アクティブレバー124は、トーションスプリング127の被ロック部127eがダブルロックレバー131のロック部131aに係合することによって時計回り方向の回転が阻止されるため、インサイドロッキングレバー125とともに回転動作することになく、図10に示すロック位置に保持される。その結果、ダブルロック機構130のダブルロックセット状態では、ドアロックノブ20がロック解除操作されてもロック機構120のロック状態が維持される。この状態でインサイドロッキングレバー125が回転する際、トーションスプリング127は、弾性付勢力に抗して第1アーム部127b及び第2アーム部127fが互いに近接するように動作し、或いは弾性付勢力にしたがって第1アーム部127b及び第2アーム部127fが互いに離間するように動作する。このトーションスプリング127の更なる具体的な動作については図12が参照される。
【0055】
図12に示されるように、ドアロックノブ20のロック解除操作時にインサイドロッキングレバー125及びトーションスプリング127はそれぞれ、二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へと移動する。即ち、インサイドロッキングレバー125は時計回り方向に回転動作し、このインサイドロッキングレバー125の第2係止部124eによってトーションスプリング127の第2アーム部127fは、トーションスプリング127の弾性付勢力に抗してコイル部127aを中心にして時計回り方向に回転動作する。
【0056】
このとき、トーションスプリング127の第1アーム部127bは、先端側領域127cの被ロック部127eがダブルロックレバー131のロック部131aに係止されることによって、時計回り方向の回転動作が阻止されるため、その位置が変化しない。従って、第1アーム部127bの先端側領域127cからアクティブレバー124の係止部124cに付与される荷重が発生せず、このためアクティブレバー124は時計回り方向には回転することができない。その結果、インサイドロッキングレバー125の時計回り方向の回転動作に伴って、トーションスプリング127は第1アーム部127b及び第2アーム部127fが互いに近接する方向(トーションスプリング127の弾性付勢力が高まる方向)に動作する。本実施の形態では、トーションスプリング127のこの動作を利用して、インサイドロッキングレバー125をアクティブレバー124から切り離して時計回り方向に独立して回転動作させることが可能になる。この場合、ダブルロックレバー131は、トーションスプリング127を係止することによって、当該トーションスプリング127を介して間接的にアクティブレバー124をロック位置に保持することができる。
【0057】
その後、ドアロックノブ20から手を放すと、インサイドロッキングレバー125は、トーションスプリング127の弾性付勢力にしたがってコイル部127aを中心にして反時計回り方向に回転動作する。その結果、インサイドロッキングレバー125は、図12中の実線で示す位置から二点鎖線で示す位置へと復帰することができる。
【0058】
尚、上記構成のアクティブレバー124及びダブルロックレバー131はそれぞれ、以下の各作動形態にしたがって作動可能である。1つの態様では、スイッチやワイヤレスキー等の操作部材の1回目のロック操作によってアクティブレバー124がアンロック位置からロック位置へと回転動作し、操作部材の更なる2回目のロック操作によってダブルロックレバー131がダブルロック解除位置からダブルロック位置へと回転動作する。別の態様では、操作部材の1回目のロック操作のみによって、アクティブレバー124がアンロック位置からロック位置へと回転動作し、引き続いてダブルロックレバー131がダブルロック解除位置からダブルロック位置へと回転動作する。
【0059】
一方で、アクティブレバー124及びダブルロックレバー131はそれぞれ、操作部材のロック解除操作によって初期位置へと復帰することができる。1つの態様では、操作部材の1回目のロック解除操作によってダブルロックレバー131がダブルロック位置からダブルロック解除位置へと回転動作し、操作部材の更なる2回目のロック解除操作によってアクティブレバー124がロック位置からアンロック位置へと回転動作する。別の態様では、操作部材の1回目のロック解除操作のみによって、ダブルロックレバー131がダブルロック位置からダブルロック解除位置へと回転動作し、引き続いてアクティブレバー124がロック位置からアンロック位置へと回転動作する。更なる別の態様では、操作部材の1回目のロック解除操作によって、運転席のドアロック装置においてはダブルロックレバー131がダブルロック位置からダブルロック解除位置へと回転動作し、引き続いてアクティブレバー124がロック位置からアンロック位置へと回転動作する。運転席以外のドアロック装置おいては、この操作部材の1回目のロック解除操作によって、ダブルロックレバー131がダブルロック位置からダブルロック解除位置へと回転動作するが、アクティブレバー124はロック位置から回転動作しない。操作部材の更なる2回目のロック解除操作によって、このアクティブレバー124がロック位置からアンロック位置へと回転動作する。
【0060】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0061】
上記実施の形態では、インサイドロッキングレバー125の係合部125hが、トーションスプリング127のコイル部127aの外周面に当接することによって、コイル部127aと支持部104との接触を阻止する構成について記載したが、本発明では、この係合部125hに代えて或いは加えて、インサイドロッキングレバー125にコイル部127aの内周面に当接する係合部を設けることもできる。
【0062】
上記実施の形態では、ダブルロックレバー131がトーションスプリング127を介して間接的にアクティブレバー124をロック位置に保持する場合について記載したが、本発明では、ダブルロックレバー131がトーションスプリング127に代えてアクティブレバー124に係合することによって、アクティブレバー124を直接的にロック位置に保持する構成を採用することもできる。本構成の場合、ダブルロック機構130が作動していない状態では、ダブルロックレバー131によってアクティブレバー124の回転動作が阻止されないため、アクティブレバー124及びインサイドロッキングレバー125はトーションスプリング127を介して連結された状態で一体的に回転動作することができる。一方で、ダブルロック機構130が作動した状態では、ダブルロックレバー131によってアクティブレバー124の回転動作が阻止されるため、インサイドロッキングレバー125は、トーションスプリング127の弾性付勢力に抗して、或いはトーションスプリング127の弾性付勢力にしたがってアクティブレバー124に対して相対的に回転動作することができる。その結果、本構成を採用した場合も、前述の構成を採用した場合と同様の作用効果を奏することになる。
【0063】
本発明では、上記のドアロック装置100の本質的な構造を車両の各車両ドアに適用することができる。例えば、車両前席用の左右のドアや、車両後席用の左右のドア、更には車両後部のドア(バックドア)等に、本発明に係るドアロック装置100の本質的な構造を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…インサイドドアハンドル、20…ドアロックノブ、100…(車両用)ドアロック装置、101…ハウジング、101a…第1ハウジング構成体、101b…第2ハウジング構成体、102…カバー部材、103,104…支持部、110…ラッチ機構、120…ロック機構、121…インサイドオープンレバー、122…アウトサイドオープンレバー、123…オープンリンク、124…アクティブレバー、124a…取付け穴、124b…係合部、124c…係止部、125…インサイドロッキングレバー、125a…ベースプレート部、125b…取付け穴、125b…ケーブル連結部、125c…第1係止部,125d…傾斜面、125e…第2係止部、125f…接続部、125g…スプリング抜け止め部、125h…係合部、126,127…トーションスプリング、127a…コイル部、127b…第1アーム部、127c…先端側領域、127d…基端側領域、127e…被ロック部、127f…第2アーム部、130…ダブルロック機構、131…ダブルロックレバー、131a…ロック部、132…電気モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12