(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296256
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】変調波制御方法及び三相3線式3レベル回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20180312BHJP
H02M 7/487 20070101ALI20180312BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02M7/487
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-146290(P2016-146290)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2017-99253(P2017-99253A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2016年7月26日
(31)【優先権主張番号】201510791588.1
(32)【優先日】2015年11月17日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511268432
【氏名又は名称】台達電子企業管理(上海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 鋒
(72)【発明者】
【氏名】陸 城
(72)【発明者】
【氏名】張 偉強
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 洪洋
【審査官】
栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−182454(JP,A)
【文献】
特開2002−119067(JP,A)
【文献】
特開2012−070498(JP,A)
【文献】
Salvador Ceballos et al.,"Efficient Modulation Technique for a Four-Leg Fault-Tolerant Neutral-Point-Clamped Inverter",IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRIAL ELECTRONICS,米国,IEEE,2008年 3月,VOL.55, NO.3,pp. 1067-1074
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48−7/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つのブリッジアームがそれぞれ少なくとも3つの変調波に対応する三相3線式3レベル回路に用いられ、前記3つの変調波と搬送波を比較することによって前記三相3線式3レベル回路を制御する変調波制御方法であって、
前記三相3線式3レベル回路の各相にそれぞれ対応する電流に基づき、前記3つの変調波から第1の変調波を取得するステップと、
前記3つの変調波に並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波のピーク値、ボトム値又はピーク値とボトム値との間に介在する中間値に並進させるステップと、
を含み、
前記3つの変調波に前記並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波のピーク値、ボトム値又はピーク値とボトム値との間に介在する中間値に並進させるステップは、前記第1の変調波の極性を判断して、前記3つの変調波に前記並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波の前記ピーク値又は前記ボトム値に並進させることを更に含み、
前記変調波制御方法は、
前記第1の変調波を前記搬送波の前記ピーク値又は前記ボトム値に並進させた後で、前記3つの変調波のいずれかが前記搬送波の前記ピーク値を超え又は前記搬送波の前記ボトム値よりも低い場合に、前記3つの変調波に前記並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波の中間値に並進させるステップを更に含む、変調波制御方法。
【請求項2】
前記3つの変調波から前記第1の変調波を取得するステップは、
前記対応する電流中で最大電流値を有する電流を判断することと、
前記最大電流値を有する前記電流に対応する変調波を前記第1の変調波として取ることと、
を含む請求項1に記載の変調波制御方法。
【請求項3】
前記第1の変調波を前記搬送波の前記中間値に並進させた後で、前記3つの変調波のいずれかが前記搬送波の前記ピーク値を超え又は前記搬送波の前記ボトム値よりも低い場合、
前記対応する電流中で二番目に大きい電流値を有する電流を判断することと、
前記二番目に大きい電流値を有する前記電流に対応する変調波を第2の変調波として取ることと、
前記3つの変調波に前記並進量を重ね合わせて、前記第2の変調波を前記搬送波の前記ピーク値又は前記ボトム値に並進させることと、
を更に含む請求項1に記載の変調波制御方法。
【請求項4】
3つのブリッジアームがそれぞれ少なくとも3つの変調波に対応する三相3線式3レベル回路に用いられ、前記3つの変調波と搬送波を比較することによって前記三相3線式3レベル回路を制御する変調波制御方法であって、
前記三相3線式3レベル回路の各相にそれぞれ対応する電流に基づき、前記3つの変調波から第1の変調波を取得するステップと、
前記3つの変調波に並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波の高値、低値又は高値と低値との間に介在する中間値に並進させるステップと、
を含み、
前記3つの変調波に前記並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波の高値、低値又は高値と低値との間に介在する中間値に並進させるステップは、前記第1の変調波の極性を判断して、前記3つの変調波に前記並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波の前記高値又は前記低値に並進させることを更に含み、
前記変調波制御方法は、
前記第1の変調波を前記搬送波の前記高値又は前記低値に並進させた後で、前記3つの変調波のいずれかが前記搬送波の前記高値を超え又は前記搬送波の前記低値よりも低い場合に、前記3つの変調波に前記並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波の前記中間値に並進させるステップを更に含む、変調波制御方法。
【請求項5】
前記3つの変調波から前記第1の変調波を取得するステップは、
前記対応する電流中で最大電流値を有する電流を判断することと、
前記最大電流値を有する前記電流に対応する変調波を前記第1の変調波として取ることと、
を含む請求項4に記載の変調波制御方法。
【請求項6】
3つのブリッジアームがそれぞれ少なくとも3つの変調波に対応する三相3線式3レベル回路に用いられ、前記3つの変調波と搬送波を比較することによって前記三相3線式3レベル回路を制御する変調波制御方法であって、
前記三相3線式3レベル回路の各相にそれぞれ対応する電流に基づき、前記3つの変調波から第1の変調波を取得するステップと、
前記3つの変調波に並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波のピーク値、ボトム値又はピーク値とボトム値との間に介在する中間値に並進させるステップと、
を含み、
前記3つの変調波に前記並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波のピーク値、ボトム値又はピーク値とボトム値との間に介在する中間値に並進させるステップは、前記3つの変調波に前記並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波の前記ピーク値、前記ボトム値及び前記中間値の中の1つに並進させることを含み、
前記変調波制御方法は、
前記第1の変調波を前記搬送波の前記ピーク値、前記ボトム値及び前記中間値の中の1つに並進させた後で、前記3つの変調波のいずれかが前記搬送波の前記ピーク値を超え又は前記搬送波の前記ボトム値よりも低い場合に、前記3つの変調波に前記並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波の前記ピーク値、前記ボトム値及び前記中間値の中の別の1つに並進させるステップと、
前記第1の変調波を前記搬送波の前記ピーク値、前記ボトム値及び前記中間値の中の別の1つに並進させた後で、前記3つの変調波のいずれかが前記搬送波の前記ピーク値を超え又は前記搬送波の前記ボトム値よりも低い場合に、前記3つの変調波に前記並進量を重ね合わせて、前記第1の変調波を前記搬送波の前記ピーク値、前記ボトム値及び前記中間値の中の更に別の1つに並進させるステップと、
を更に含む、変調波制御方法。
【請求項7】
前記第1の変調波を前記更に別の1つに並進させた後で、前記3つの変調波のいずれかが前記搬送波の前記ピーク値を超え又は前記搬送波の前記ボトム値よりも低い場合、
前記対応する電流中で二番目に大きい電流値を有する電流を判断することと、
前記二番目に大きい電流値を有する前記電流に対応する変調波を第2の変調波として取ることと、
前記3つの変調波に前記並進量を重ね合わせて、前記第2の変調波を前記搬送波の前記ピーク値又は前記ボトム値に並進させることと、
を更に含む請求項6に記載の変調波制御方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の変調波制御方法が採用される三相3線式3レベル回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形制御方法及び回路に関し、且つ特に、変調波制御方法及び三相3線式3レベル回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電力電子技術の発展に伴って、半導体スイッチングデバイスを適用したコンバータが幅広く該当分野において採用され、例えば、インバーター(Inverter)、整流器(Rectifier)、静止型無効電力発生装置(Static Var Generator;SVG)などのようなグリッド、オングリッド式の三相3線式コンバータの使用は、ますます多くなってきた。
【0003】
上記の回路のいずれも、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor;IGBT)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor;MOSFET)、炭化ケイ素(SiC)MOSFETなどのような半導体スイッチングデバイスを使用する。回路が作動する際に、その内の半導体スイッチングデバイスにスイッチング損失と導通損失が発生し、上記スイッチング損失は、半導体スイッチングデバイスそのものの特性、駆動回路、直流電圧、流した電流及びスイッチング周波数に関係があり、導通損失は、半導体スイッチングデバイスの特性及び流した電流に関係がある。
【0004】
現在、高出力密度、フィルタの体積の減少などの目的を果たすために、一般的に、より高いスイッチング周波数を選択する。しかしながら、一旦スイッチング周波数を向上させると、半導体スイッチングデバイスのスイッチング損失は相応的に増加してしまって、スイッチング損失が大きすぎると、直接半導体スイッチングデバイスの運転温度及びシステム効率に影響を及ぼす。
【0005】
これから見ると、上記の従来の方式は、まだ不便と欠陥が存在し、さらなる改善が待たれている。上記問題を解決するために、関連分野において解決策を取得するために工夫したが、今まで適切な解決手段がまだ開発されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の説明は、読者に本開示内容を基本的に理解させるように、本開示内容の簡略化された概要を提供する。この発明の内容は、本掲示内容の完全な記述ではなく、また本発明の実施例の重要な/肝心な素子を指摘し、又は本発明の範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明内容の一局面は、三相3線式3レベル回路及び変調波制御方法を提供して、これによって従来の技術の問題を改善する。
【0008】
本発明内容の一技術的様態は、三相3線式3レベル回路に用いられる変調波制御方法に関する。三相3線式3レベル回路は、3つのブリッジアームがそれぞれ3つの変調波に対応して、3つの変調波と搬送波を比較することによって三相3線式3レベル回路を制御する。変調波制御方法は、三相3線式3レベル回路の各相にそれぞれ対応する電流に基づき、3つの変調波から第1の変調波を取得するステップと、3つの変調波に並進量を重ね合わせて、第1の変調波を搬送波のピーク値、ボトム値又はピーク値とボトム値との間に介在する中間値に並進させるステップと、を含む。
【0009】
本発明内容の別の技術的様態は、三相3線式3レベル回路に用いられる変調波制御方法に関する。三相3線式3レベル回路は、3つのブリッジアームがそれぞれ3つの変調波に対応して、3つの変調波と搬送波を比較することによって三相3線式3レベル回路を制御する。変調波制御方法は、三相3線式3レベル回路の各相にそれぞれ対応する電流に基づき、3つの変調波から第1の変調波を取得するステップと、3つの変調波に並進量を重ね合わせて、第1の変調波を搬送波の高値、低値又は高値と低値との間に介在する中間値に並進させるステップと、を含む。
【0010】
本発明内容の更に他の技術的様態は、上記変調波制御方法が採用される三相3線式3レベル回路に関する。
【発明の効果】
【0011】
したがって、本発明の技術的内容によれば、本発明の実施例は、三相3線式3レベル回路及び変調波制御方法を提供することによって、半導体スイッチングデバイスのスイッチング損失を効果的に減少させることで、半導体スイッチングデバイスの熱応力を減少させて、システム全体の効率を向上させる。
【0012】
以下の実施形態により、当業者は、本発明の基本的な精神及びその他の発明目的、並びに本発明が採用された技術的手段と実施態様を容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の上記及び他の目的、特徴、メリット及び実施例をより分かりやすくするために、添付図面の説明は以下の通りである。
【
図1】本発明の一実施例による3レベル回路のブリッジアームを示す模式図である。
【
図2】本発明の別の実施形態による正弦波変調方法を示す模式図である。
【
図3】本発明の更に1つの実施形態による変調波制御方法を示す模式図である。
【
図4】本発明の更に他の実施形態による変調波制御方法を示す模式図である。
【
図5】本発明の別の実施形態による変調波制御方法を示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態による変調波制御方法を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の別の実施形態による変調波制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の更に1つの実施形態による変調波制御方法を示すフローチャートである。 一般的な作業形態に基づき、図面における各種の特徴及び素子を比例で描写しなく、その描写方式は、最適な形態で本発明に関する具体的な特徴及び素子を表現するためのものである。なお、異なる図面には、同じ又は類似の素子符号で類似の素子/部材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の記述をより詳細化し充実させるためには、以下、本発明の実施形態と具体的な実施例に対して説明的な記述を提出するが、これは、本発明の具体的な実施例を実施又は適用する唯一の形式ではない。実施形態において複数の具体的な実施例の特徴及びこれらの具体的な実施例を構成及び操作する方法、ステップ及びその順序が含まれる。しかしながら、その他の具体的な実施例を利用して同じ又は等価の機能及びステップ順序を実現してもよい。
【0015】
本明細書で特に定義されない限り、ここで用いられた科学及び技術用語の意味は当業者が理解及び慣用する意味と同様である。なお、コンテキストに衝突しない場合に、本明細書に用いられる単数名詞に該名詞の複数形が含まれ、使用された複数名詞にも該名詞の単数形が含まれる。
【0016】
また、本文に使用される「結合」とは、2つ又は複数の素子が互いに直接的に実体又は電気的に接触し、又は互いに間接的に実体又は電気的に接触してもよく、2つ又は複数の素子が互いに操作し又は動作してもよい。
【0017】
図1は、本発明の一実施例による3レベル回路のブリッジアームを示す模式図である。図に示すように、3レベル回路のブリッジアームは、出力レベルV
ANで3種の動作状態に分けられ、該ブリッジアームの各種の動作状態で、異なるスイッチング組み合わせを有する可能性があるが、前記動作状態で求められるレベルを出力すればよく、例えば、スイッチトランジスタS1とS3とが補完的に導通し、S2とS4とが補完的に導通する。上記の3種の動作状態を以下に詳しく説明する。
【0018】
図2を参照して、動作状態Pで、スイッチング組み合わせを、例えば、スイッチトランジスタS1とS2を導通させ、スイッチトランジスタS3とS4をオフにして、この場合の出力レベルは、以下の通りである。
【0020】
動作状態Oで、スイッチング組み合わせを、例えば、スイッチトランジスタS2とS3を導通させ、スイッチトランジスタS1とS4をオフにして、この場合の出力レベルは、以下の通りである。
【0022】
動作状態Nで、スイッチング組み合わせは例えばスイッチトランジスタS3とS4を導通させ、スイッチトランジスタS1とS2をオフにし、この場合の出力レベルは、以下の通りである。
【0024】
上記の3種の動作状態に基づいて、
図2は、正弦波変調(Sinusoidal Pulse Width Modulation;SPWM)方式で、1つのスイッチングサイクルにおける各相のスイッチング動作状況を示す。上下の2つの三角形は、搬送波W1、W2であり、符号Va〜Vcは、三相3線式3レベル回路の3つのブリッジアームにそれぞれ対応する変調波をそれぞれ代表する。三角搬送波の2つの隣接する頂点を1つのスイッチングサイクルとし、且つ仮に1つのスイッチングサイクルで変調波が基本的に変わらないようにしてもよい。なお、変調波と搬送波を比較する論理は、変調波が上搬送波W1よりも大きい時に、ブリッジアームがP動作状態に作動し、変調波が下搬送波W2よりも小さい時に、ブリッジアームがN動作状態に作動し、変調波が上下搬送波の中間にある時に、ブリッジアームがO動作状態に作動することである。これにより、1つのスイッチングサイクルにおける三相のブリッジアームの動作状況を取得することができるが、本発明はこれに限定されない。
図2における1つのスイッチングサイクルで、三相3線式3レベル回路の3つのブリッジアームにそれぞれ対応する3つの変調波Va〜Vcは、いずれもそれぞれ2回動作する。
【0025】
最初に説明する必要があるのは、三相3線式3レベル回路において、三相変調波Va〜Vcを同時に同じ方向に同じ量で移動し、即ち変調波Va〜Vcにゼロシーケンス成分を注入する場合、各相の出力電圧と電流に影響を及ぼさない。上記の特性によると、本発明の実施例は、三相変調波Va〜Vcを同時に同じ方向に同じ量で移動することによって、スイッチトランジスタの全体のスイッチング回数を減少させ、このようにして、対応的にスイッチング損失を低減させることができる変調波制御方法を開示して、以降で詳しく説明する。
【0026】
図3〜
図5を参照されたい。本発明の実施例の変調波制御方法は、3つの変調波Va〜Vcと搬送波W1〜W2を比較することによって三相3線式3レベル回路を制御する。上記変調波制御方法は、三相3線式3レベル回路の各相にそれぞれ対応する電流に基づき、3つの変調波Va〜Vcから第1の変調波を取得するステップと、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波を搬送波W1〜W2のピーク値Pe(
図3に示すように、仮にこの時に選択された第1の変調波をVaとする)、ボトム値V(
図4に示すように、仮にこの時に選択された第1の変調波をVcとする)又はピーク値とボトム値との間に介在する中間値M(
図5に示すように、仮にこの時に選択された第1の変調波をVbとする)に並進させるステップと、を含む。
【0027】
並進量の重ね合わせは、単一の並進量を一回で重ね合わせることも含み、多回で調整された並進量を一回で重ね合わせることも含み、複数の同じ又は異なる並進量を多回で重ね合わせることを更に含んで、本方法を経た後で、3つの変調波と変調される前のものと同じ並進量を有すればよく、本発明はこれに限定されない。
【0028】
このようにして、
図2の変調波Va〜Vcが1つのスイッチングサイクルでそれぞれ2回変わることと比べて、
図3〜
図5における変調波Va〜Vcのいずれも1つのスイッチングサイクルで少なくとも1相が同一の動作状態に保持され、例えば、
図3におけるA相ブリッジアームがずっとP動作状態を保持し、
図4におけるC相ブリッジアームがずっとN動作状態を保持し、そして
図5におけるB相ブリッジアームがすっとO動作状態を保持する。一旦ブリッジアームが1つのスイッチングサイクルで同一の動作状態に保持されると、このブリッジアームにスイッチング(オン/オフ)動作がないため、本発明の実施例の変調波制御方法を採用して、スイッチトランジスタの全体のスイッチング回数を減少させることができ、このようにして、スイッチング損失を効果的に低減させ、且つ半導体スイッチングデバイスの熱応力を減少させ、且つシステム全体の効率を向上させることができる。しかしながら、本発明が上記の実施例に限定されず、当業者は、実際の回路配置状況に応じて、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波を搬送波W1〜W2の搬送波の高値、低値又は高値と低値との間に介在する中間値に並進させるが、搬送波W1〜W2のピーク値Pe、ボトム値V又はピーク値とボトム値との間に介在する中間値Mに限定されなく、高値が例えば0.9〜1であり、低値が例えば-1〜-0.9である。スイッチトランジスタの駆動設置を組み合わせて、スイッチトランジスタの全体のスイッチング回数を減少させてもよい。
【0029】
図3〜
図5を参照されたい。一実施例において、上記の3つの変調波Va〜Vcから第1の変調波を取得するステップは、三相3線式3レベル回路の各相にそれぞれ対応する電流中のいずれが最大電流値であるかを判断することと、該最大電流値に対応する変調波を第1の変調波として取ることと、を含む。
【0030】
注意すべきなのは、本発明の実施例の変調波制御方法によって問題を解決する技術的手段に対して以上のように説明し、以下、本発明をより理解しやすくするために、変調波制御方法を実現するいくつかの実施例を例示したが、本発明は後続きの実施例に限定されない。
【0031】
図6を参照されたい。
図6は、本発明の一実施形態による変調波制御方法を示すフローチャートである。まず、ステップ401において、三相3線式3レベル回路の各相にそれぞれ対応する電流ia、ib、icをサンプリングし、例えば、直接各相のインダクタンスを流した電流をサンプリングして、或いは三相の対応なブリッジアームスイッチトランジスタの電流を採用し、次に三相電流値を比較してもよいが、本発明はこれらに限定されない。ステップ403において、最大電流値に対応した相xを見つけ、最大電流値に対応した相xの変調波を第1の変調波Vxとして取る。例えば、iaが最大であると、相Aに対応する変調波Vaを第1の変調波として選択する。前記電流値の比較には一般的に絶対値の比較を採用するが、本発明はこれに限定されない。その後、ステップ407において、第1の変調波Vxが3つの変調波Va〜Vc中で最大であるか、最小であるか、あるいは最大と最小との間に介在する中間であるかを判断する。
【0032】
ステップ407において、第1の変調波Vxが3つの変調波Va〜Vcの中で最大であると判定すると、ステップ409を実行し、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波Vxを搬送波のピーク値Peに並進させる。本ステップを理解しやすくするために、
図3を参照されたい。第1の変調波が3つの変調波Va〜Vcの中で最大である、例えばA相変調波であると判定すると、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波Vaを搬送波のピーク値Peに並進させ、このようにして、
図3において、A相ブリッジアームがこの動作サイクルでずっとP動作状態を保持して、スイッチトランジスタの全体のスイッチング回数を低下させて、効果的にスイッチング損失を低減させることができる。
【0033】
ステップ407を参照し続けて、第1の変調波Vxが3つの変調波Va〜Vcの中で最小であると判定すると、ステップ413を実行し、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波Vxを搬送波のボトム値Vに並進させる。本ステップを理解しやすくするために、
図4を参照されたい。第1の変調波が該3つの変調波Va〜Vcの中で最小である、例えばC相変調波であると判定すると、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波Vcを搬送波のボトム値Vに並進させ、このようにして、
図4において、C相ブリッジアームがこの動作サイクルでずっとN動作状態を保持して、スイッチトランジスタの全体のスイッチング回数を低下させて、効果的にスイッチング損失を低減させることができる。
【0034】
ステップ407を参照し続けて、第1の変調波Vxが3つの変調波Va〜Vcの中で中間であると判定すると、ステップ411を実行し、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波Vxを搬送波の中間値Mに並進させる。本ステップを理解しやすくするために、
図5を参照されたい。第1の変調波が3つの変調波Va〜Vcの中で中間である、例えばB相変調波であると判定すると、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波Vbを搬送波の中間値Mに並進させ、このようにして、
図5において、B相ブリッジアームがこの動作サイクルでずっとO動作状態を保持して、スイッチトランジスタの全体のスイッチング回数を低下させて、効果的にスイッチング損失を低減させることができる。
【0035】
説明する必要があるのは、ステップ411を採用すると、第1の変調波Vxが搬送波の中間値Mに並進されることができるが、その他の相の変調波が搬送波のピーク値Pe又はボトム値Vを超えて、過変調現象が発生し、3レベル回路にエラーが出ることを招く。この時、後述するように、ある修正方式を使用して、上記の状況を改善することができる。
【0036】
ステップ411の後に、ステップ415を実行して、第1の変調波Vxを搬送波の中間値に並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれかが搬送波のピーク値Peを超えるか、又は搬送波のボトム値Vよりも低いかを判断してもよいが、本発明はこれらに限定されない。第1の変調波Vxを搬送波の中間値に並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれも搬送波のピーク値Peを超えなく又は搬送波のボトム値Vよりも低くない場合、過変調現象が発生しなく、本発明の実施例の変調波制御方法は、このスイッチングサイクルでの作用が終了でき、且つ次のスイッチングサイクルで作用し続け、本発明はこれに限定されない。なお、第1の変調波Vxを搬送波の中間値に並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれかが搬送波のピーク値Peを超え又は搬送波のボトム値Vよりも低く、即ち過変調現象が発生する場合、後続きのステップ417、419、421、423に示すような修正方式を採用する。
【0037】
ステップ417において、三相3線式3レベル回路の各相にそれぞれ対応する電流中のいずれが二番目に大きい電流値であるかを判断して、二番目に大きい電流値に対応する変調波を第2の変調波Vyとして取る。その後、ステップ419において、第2の変調波Vyは3つの変調波Va〜Vcの中で最大であるか、あるいは最小であるかを判断する。第2の変調波Vyが3つの変調波Va〜Vcの中で最大であると判定すると、ステップ421を実行し、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第2の変調波Vyを搬送波のピーク値Peに並進させる。第2の変調波Vyが3つの変調波Va〜Vcの中で最小であると判定すると、ステップ423を実行して、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第2の変調波Vyを搬送波のボトム値Vに並進させる。上記の説明から分かるように、修正方式を採用して、過変調現象の発生を避けることができるが、本発明はこれに限定されなく、例えば電流値が最小であるものの変調波を第2の変調波としてもよい。
【0038】
図7を参照されたい。
図7は、本発明の別の実施形態による変調波制御方法を示すフローチャートである。まず、ステップ501において、サンプリングした三相電流情報に基づき、最大電流に対応した相xを比較し、最大電流値に対応した相xの変調波を第1の変調波Vxとして取る。前記電流値の比較に一般的に絶対値の比較を採用するが、実効値又はその他の電流量を代表できる比較方法でもよいが、本発明はこれらに限定されない。ステップ503において、第1の変調波Vxの極性を判断する。第1の変調波Vxが零よりも大きいと、ステップ505を実行し、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波Vxを搬送波のピーク値Peに並進させる。第1の変調波Vxが零よりも小さいと、ステップ507を実行し、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波Vxを搬送波のボトム値Vに並進させる。
【0039】
説明する必要があるのは、上記ステップ505、507を実行した後で、過変調現象が発生する可能性があるため、過変調現象が発生するかどうかを判断するように、ステップ509を実行することができる。詳細的に、第1の変調波Vxを搬送波のピーク値Pe又はボトム値Vに並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれかが搬送波のピーク値Peを超えるか、搬送波のボトム値Vよりも低いかを判断するように、ステップ509を実行する。第1の変調波Vxを並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれも搬送波のピーク値Peを超えなく又は搬送波のボトム値Vよりも低くない場合、過変調現象が発生しなく、本発明の実施例の変調波制御方法は、本スイッチングサイクルで終了することができる。なお、第1の変調波を搬送波のピーク値Pe又はボトム値Vに並進された後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれかが搬送波のピーク値Peを超え又は搬送波のボトム値Vよりも低い場合、ステップ511を実行し、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波を搬送波の中間値Mに並進させる。
【0040】
説明する必要があるのは、上記ステップ511を実行した後で、まだ過変調現象が発生する可能性があるため、過変調現象が発生したかどうかを判断するように、ステップ513を実行することができる。詳細的に、第1の変調波Vxを搬送波の中間値Mに並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれかが搬送波のピーク値Peを超えるか、搬送波のボトム値Vよりも低いかを判断するように、ステップ513を実行する。第1の変調波Vxを並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれも搬送波のピーク値Peを超えなく又は搬送波のボトム値Vよりも低くない場合、過変調現象が発生しなく、本発明の実施例の変調波制御方法は、本スイッチングサイクルでの作用が終了することができ、且つ次のスイッチングサイクル内で作用し続けるが、本発明はこれらに限定されない。なお、第1の変調波Vxを搬送波の中間値Mに並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれかが搬送波のピーク値Peを超え又は搬送波のボトム値Vよりも低い場合、ステップ515の修正方式を採用することができる。詳細的に、三相3線式3レベル回路の各相にそれぞれ対応する電流中のいずれが二番目に大きい電流値であるかを判断し、該二番目に大きい電流値に対応する変調波を第2変調波Vyとして取るように、ステップ515を実行する。次に、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第2の変調波を搬送波のピーク値Pe又はボトム値Vに並進させ、例えば、
図6でステップ417、419、421、423に示すとおりであるが、本発明はこれらに限定されない。上記の説明から分かるように、修正方式を採用して、過変調現象の発生を避けることができる。
【0041】
図8を参照されたい。
図8は、本発明の更に他の実施形態による変調波制御方法を示すフローチャートである。まず、ステップ601において、サンプリングした三相電流情報に基づき、最大電流に対応した相xを比較し、最大電流値に対応した相xの変調波を第1の変調波Vxとして取る。前記電流値の比較には一般的に絶対値の比較を採用するが、実効値又はその他の電流量を代表できる比較方法でもよいが、本発明はこれらに限定されない。ステップ603において、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波Vxを搬送波のピーク値Peに並進させる。説明する必要があるのは、上記ステップ603を実行した後で、過変調現象が発生する可能性があるため、過変調現象が発生するかどうかを判断するように、ステップ605を実行する。詳細的に、第1の変調波Vxを搬送波のピーク値Peに並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれかが搬送波のピーク値Peを超えるか、搬送波のボトム値Vよりも低いかを判断するように、ステップ605を実行する。第1の変調波Vxを並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれも搬送波のピーク値Peを超えなく又は搬送波のボトム値Vよりも低くない場合、過変調現象が発生しなく、本発明の実施例の変調波制御方法は、本スイッチングサイクルでの作用が終了することができ、且つ次のスイッチングサイクル内で作用し続け、本発明はこれらに限定されない。なお、第1の変調波を搬送波のピーク値Peに並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれかが搬送波のピーク値Peを超え又は搬送波のボトム値Vよりも低い場合、ステップ607を実行し、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波を搬送波のボトム値Vに並進させる。
【0042】
説明する必要があるのは、上記ステップ607を実行した後で、過変調現象が発生する可能性があるため、過変調現象が発生するかどうかを判断するように、ステップ609を実行することができる。詳細的に、第1の変調波Vxを搬送波のボトム値Vに並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれかが搬送波のピーク値Peを超えるか、搬送波のボトム値Vよりも低いかを判断するように、ステップ609を実行する。第1の変調波Vxを並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれも搬送波のピーク値Peを超えなく又は搬送波のボトム値Vよりも低くない場合、過変調現象が発生しなく、本発明の実施例の変調波制御方法は、本スイッチングサイクルで終了することができる。なお、第1の変調波を搬送波のボトム値Vに並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれかが搬送波のピーク値Peを超え又は搬送波のボトム値Vよりも低い場合、ステップ611を実行し、3つの変調波Va〜Vcに並進量を重ね合わせて、第1の変調波を搬送波の中間値Mに並進させる。
【0043】
説明する必要があるのは、上記ステップ611を実行した後で、まだ過変調現象が発生する可能性があるため、過変調現象が発生するかどうかを判断するように、ステップ613を実行することができる。詳細的に、第1の変調波Vxを搬送波の中間値Mに並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれかが搬送波のピーク値Peを超えるか、搬送波のボトム値Vよりも低いかを判断するように、ステップ613を実行する。第1の変調波Vxを並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれも搬送波のピーク値Peを超えなく又は搬送波のボトム値Vよりも低くない場合、過変調現象が発生しなく、本発明の実施例の変調波制御方法は、本スイッチングサイクルでの作用が終了することができ、且つ次のスイッチングサイクル内で作用し続け、本発明はこれらに限定されない。なお、第1の変調波を搬送波の中間値Mに並進させた後で、3つの変調波Va〜Vcのいずれかが搬送波のピーク値Peを超え又は搬送波のボトム値Vよりも低い場合、ステップ615の修正方式を採用することができる。詳細的に、三相3線式3レベル回路の各相にそれぞれ対応する電流中のいずれが二番目に大きい電流値であるかを判断し、二番目に大きい電流値に対応する変調波を第2の変調波Vyとして取るように、ステップ615を実行する。次に、3つの変調波Va〜Vcに該並進量を重ね合わせて、第2の変調波を搬送波のピーク値Pe又はボトム値Vに並進させ、例えば、
図6におけるステップ417、419、421、423に示すとおりであるが、本発明はこれらに限定されない。上記の説明から分かるように、修正方式を採用して、過変調現象の発生を避けることができる。本実施例において、ステップ603、607、611の順序を交換及び変更することができ、本発明はこれに限定されない。
【0044】
一実施例において、本発明は、
図3〜
図5に示すような変調波制御方法を採用でき、且つ
図6〜
図8に示すような変調波制御方法のフローを実行することができる三相3線式3レベル回路を提供する。別の実施例において、三相3線式3レベル回路は、ダイオード中性点クランプ型3レベル回路(Diode Neutral− Point−Clamped;DNPC)、T型中性点クランプ型3レベル回路(T−type Neutral− Point−Clamped;TNPC)、アクティブ中性点クランプ型3レベル回路(Active Neutral− Point−Clamped;ANPC)又はフライングキャパシタ式3レベル回路であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0045】
当業者は、変調波制御方法における各ステップがその実行する機能によって命名され、ただ本発明の技術をより理解しやすいためであり、これらのステップを限定するためではないことを理解すべきである。各ステップを同一のステップに統合するか又は複数のステップを分解するか、又はいずれかのステップを他のステップに切り替えて実行することは、いずれも本発明の内容の実施形態に属する。
【0046】
上記の本発明の実施形態から分かるように、本発明を適用すると以下の利点を有する。本発明の実施例は、三相3線式3レベル回路及び変調波制御方法を提供することにより、半導体スイッチングデバイスのスイッチング損失を効果的に低減させて、且つ半導体スイッチングデバイスの熱応力を減少させ、且つシステム全体の効率を向上させる。
【0047】
本発明の実施形態を前述の通りに開示したが、これは、本発明を限定するものではなく、当業者なら、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修正を加えることができ、したがって、本発明の範囲は、後の特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0048】
401、403、407、409、411、413、415、417、419、421、423、501、503、505、507、509、511、513、515、601、603、605、607、609、611、613、615 ステップ