特許第6296259号(P6296259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6296259
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】育毛剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20180312BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180312BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   A61K8/92
   A61K8/37
   A61Q7/00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-252758(P2016-252758)
(22)【出願日】2016年12月27日
【審査請求日】2016年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】598092683
【氏名又は名称】霧島ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】章 超
【審査官】 森井 隆信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−066516(JP,A)
【文献】 特開2001−158719(JP,A)
【文献】 特開2012−249587(JP,A)
【文献】 特開2009−234947(JP,A)
【文献】 特開2008−291005(JP,A)
【文献】 西谷尚道 他,本格焼酎に存在する油性成分の蒸留および吸着による除去,J. Brew. Soc. Japan,日本,1978年,Vol.73, No.4,pp.314-317
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 7/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼酎油を有効成分とする育毛剤。
【請求項2】
有効成分とされた焼酎油が、単式蒸留焼酎由来であることを特徴とする請求項1記載の育毛剤。
【請求項3】
有効成分としてパルミチン酸エチル5.0g/100ml以上を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の育毛剤。
【請求項4】
有効成分としてリノール酸エチル3.0g/100ml以上を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の育毛剤。
【請求項5】
有効成分としてα−リノレン酸エチル1.9g/100ml以上を含有することを特徴とする育毛剤。
【請求項6】
他の育毛成分がさらに添加されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の育毛剤。
【請求項7】
さらにビタミン類、アミノ酸類、動植物油、塩化ナトリウムから選択される1種以上の成分を含有させたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の育毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛剤、さらに詳しくは焼酎の製造過程で得られる焼酎油(脂肪酸エステル)を配合した育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な育毛剤が、禿頭、薄毛、フケ症、脂潤などの諸症状に対応し、その予防や治療のために用いられている。一般に、育毛剤の配合薬剤としては、主に頭皮の血行促進、毛母細胞の活性化、頭皮の脂質分泌抑制、頭髪への栄養補給などを目的としたものが使用されている。
【0003】
脱毛は、発毛周期のバランスが崩れて成長期と休止期の毛発サイクルが乱れることにより生じるといわれているが、詳細については不明な点が多い。その中でも天然に存在する生薬の中で各種の植物の抽出エキスを有効成分とする育毛剤は、高い安全性から汎用されてきたが実際の育毛効果については十分な科学的根拠は確立されていない。
【0004】
例えば、唐辛子の種子に含まれる植物性エストロゲンを有効成分とする経口育毛剤(特許文献1参照。)。アロエとドクダミをエタノール又は焼酎に漬け込んだ液を使用する養毛・育毛剤(特許文献2参照。)。米の水抽出物又は有機溶媒抽出物をアルコール発酵させたものをそのまま、あるいはこれを含有する育毛剤(特許文献3参照。)。他にも、黒茶の抽出エキスを有効成分とする育毛剤(特許文献4参照。)。甘藷焼酎粕の加水分解物の液部に含まれる成分を含有する育毛促進剤(特許文献5参照。)。甘藷焼酎粕(酵母エキス)抽出液から得られる発酵生成物からなる育毛及び発毛効果を有する化粧料(特許文献6参照。)等、種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−127382号公報
【特許文献2】特開2007−169206号公報
【特許文献3】特開平05−163121号公報
【特許文献4】特開2011−148792号公報
【特許文献5】特開2009−234947号公報
【特許文献6】特開2009−185011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者は、上記のような実情に鑑み、焼酎の製造工程で産出される焼酎油に育毛促進作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明者は、従来の発毛・育毛剤が満足のいく効果を発揮し得ないのは、毛根にある毛母細胞の活性化を促す成分の不足に原因があると考え、より優れた育毛剤を開発すべく鋭意研究をした結果、焼酎の製造過程で得られる焼酎油に毛母細胞の増殖、分裂を促進する作用があることを知得し、焼酎油が有効な育毛剤となり得ることを見出し、本発明を完成させたものである。
本発明は、毛乳頭細胞の改善を図り、頭髪の成長を短期間のうちに促進することができる育毛剤を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、通常は廃棄される焼酎油を育毛剤の材料として用いることで、焼酎油に含まれる有効成分の再活用を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、焼酎油を有効成分とする育毛剤であることを第1の特徴とする。また、前記有効成分とされた焼酎油が単式蒸留焼酎由来であることを第2の特徴とする。また、パルミチン酸エチルを5.0g/100ml以上含有することを第3の特徴とする。また、リノール酸エチルを3.0g/100ml以上含有することを第4の特徴とする。また、α−リノレン酸エチルを1.9g/100ml以上含有することを第5の特徴とする。さらに、他の育毛成分がさらに添加されてなることを第6の特徴とする。さらにビタミン類、アミノ酸類、動植物油、塩化ナトリウムから選択される1種以上の成分を含有させたことを第7の特徴とする。
【0009】
本発明の有効成分である焼酎油は、単式蒸留焼酎製造工程中に得られるものであるが、ミノキシジル様に育毛増殖因子であるVEGF産生促進能があることが認められた。しかしながら、ミノキシジルには血圧が低下する等の副作用があることも報告されている。
【0010】
尚、本発明が提供する育毛剤は、焼酎油を有効成分として含有するものであるが、他の配合成分として従来養毛剤配合成分として使用されるものを適宜配合添加できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外用剤として優れた育毛効果を発揮することができる。また、焼酎原酒に含まれる余分な焼酎油を廃棄せずに有効活用ができるという効果を有する。すなわち、本発明は、焼酎油の持つ機能性を化粧品又は薬品の材料として用いることで、焼酎油の有効な再利用化を図るものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】焼酎製造工程の一実施例を示すフローチャートである。
図2】ヒトの毛髪形成について示す説明図である。
図3】焼酎油の毒性試験結果を示すグラフである。
図4】焼酎油のVEGF産生試験結果を示すグラフである。
図5】試験期間と再生毛の面積の相関を示すグラフである(全て有効成分)。
図6】試験期間と再生毛の面積の相関を示すグラフである(焼酎油)。
図7】試験期間と再生毛の面積の相関を示すグラフである(パルミチン酸エチル)。
図8】試験期間と再生毛の面積の相関を示すグラフである(リノール酸エチル)。
図9】試験期間と再生毛の面積の相関を示すグラフである(α−リノレン酸エチル)。
図10】育毛状態を示すマウスの背部写真である(焼酎油)。
図11】育毛状態を示すマウスの背部写真である(各有効成分)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0015】
(焼酎油産出工程)
図1に示すように、本発明で使用する焼酎油は、米及び甘藷を原料にした焼酎の製造過程において、常圧又は減圧焼酎蒸留を行った後の原酒の冷却中に浮上したものを掬って得たもので、その主成分を表1に示す。すべての単式蒸留焼酎油にも同じ主成分が含まれる。
【0016】
【表1】
【0017】
分析の結果、焼酎油は含有率の多い順に、パルミチン酸エチル、リノール酸エチル、オレイン酸エチル、ステアリン酸エチル、カプリン酸エチル、ラウリル酸エチル、ミリスチン酸エチル、α−リノレン酸エチルを主たる成分として構成されていることが分かった。
【0018】
ここで、図2を参照してヒトの毛髪形成について説明する。VEGF(血管内皮細胞増殖因子)は、毛球部の毛乳頭細胞から分泌され、毛球部への血管新生を促すことで育毛を促進させる作用を有する。
【0019】
(毒性試験)
まず、ヒト毛乳頭細胞を用いた焼酎油の濃度を変えて育毛試験をおこなった。被験物質の72時間処理後の毛乳頭細胞生細胞数を計測した。図3のグラフから分かるように、全ての被験試料(焼酎油)濃度区において細胞毒性は認められなかった。
【0020】
ヒトの毛乳頭細胞の活性化試験(VEGF産生試験)
図4のグラフから分かるように、VEGF産生試験において、促進対照物質であるミノキシジルで有意に産生促進を示した。そして、焼酎油も濃度依存的に産生促進が認められたばかりでなく、促進作用はミノキシジルを上回る傾向が見られた。
【0021】
毛包は一定の周期で常に生え変わる器官であり、毛周期は成長期、退行期、休止期から構成されている。C3Hマウスにおいては、7週齢から50日間、毛周期は休止期に同調していることが知られている。また、C3Hマウスの背部毛は、生後45〜95日が休止期にあたり、この時期に背部毛を剃毛すると、皮膚はピンク色に呈することが知られている。そして、毛包が成長期に入った部分を観察することにより、育毛促進作用を評価することができる。そこで、このC3Hマウスを本試験で使用した。
【0022】
本発明では、毛周期が休止期にある7週齢の雄性C3Hマウス33匹の背中を剃毛し、塗布を開始した。尚、試験に使用した溶液は、白ワセリンをコントロールとし、表2に示す各濃度となるように焼酎油、パルミチン酸エル、リノール酸エチル、α−リノレン酸エチルを溶解し、剃毛したマウスを3匹ずつの11群に分け、そのうち1群をコントロール群とし、残り10群にそれぞれに試験液を背部に毎日塗布し、背部の毛様子と肌質を観察した。
【0023】
【表2】
【0024】
すなわち、白ワセリン(0.0g/100ml)をコントロールとし、焼酎油を(75.0g/100ml)、(50.0g/100ml)及び(20.0g/100ml)の三種の濃度で、パルミチン酸エチルを(49.0g/100ml)、(15.0g/100ml)、(10.0g/100ml)、(5.0g/100ml)の四種の濃度で、リノール酸エチルを(24.2g/100ml)、(12.0g/100ml)、(6.0g/100ml)及び(3.0g/100ml)の四種の濃度で、α−リノレン酸エチル(1.9g/100ml)の一種の濃度で育毛試験を行った。結果を表2に示す。試験期間は7週目の剃毛したC3Hマウスの背中に毎日1回綿棒で塗布し、21日、29日目に毛の再生を確認して終了した。その判定基準値を表3に示す。
【0025】
(マウスの育毛試験結果)
塗布開始、4週間育毛促進作用について評価を行った。その結果、図5乃至図9のグラフからも分かるように、焼酎油(20g/100ml)以上、パルミチン酸エチル(5.0g/100ml)以上、リノール酸エチル(3.0g/100ml)以上、α−リノレン酸エチル(1.9g/100ml)以上を含む試料に育毛効果(毛髪成長促進効果)が見られた。
【0026】
図10乃至図11は、マウスの写真であり、コントロール群(無処理群、溶媒白ワセリン群)のマウスでは、4週間の観察で極わずかな育毛が見られたが、依然として毛周期が休止期間に属していることが判る。一方、焼酎油群、パルミチン酸エチル群、リノール酸エチル群及びα−リノレン酸エチルでは、すべてのマウスに育毛効果が有意に見られた。すなわち、本来であれば毛周期は休止期に属するため育毛効果が見られないはずであるが、本実施例では、育毛が促進されたことが判る。
【0027】
すなわち、コントロール群では、すべてのマウスにわずかな育毛効果しか確認できなかったのに対し、焼酎油を塗布した群のマウスでは、ほぼすべてのマウスで育毛効果が顕著に確認された。
【0028】
併せて、試験液塗布後のマウスの肌質について観察した結果を表4に示す。
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
表2と表4の判定結果からわかるように、本発明に係る育毛剤における焼酎油の濃度は、特に限定されるものではないが、育毛効果の発現と肌への安全性の観点から、好ましくは10〜70g/100mlであり、より好ましくは25〜50g/100mlであり、最も好ましくは30〜45g/100mlである。
【0032】
本発明の育毛剤は、製剤用坦体と混合して調製して外用製剤の形で塗布される。例えば液状、乳液状、クリーム状、ローション状、ペースト状、ムース状、ジェル状、シート状(基材担持)、エアゾール状、スプレー状、オイル状、パック状、ゲル状、軟膏状等の形態であり得るが、これらに限定されるものではない。尚、製剤用坦体としては、製剤分野において常用され、かつ本発明の育毛成分と反応しない物質が挙げられる。
【0033】
本発明の育毛剤には、必要に応じて種々の他の有効成分をさらに含んでもよい。このような他の有効成分としては、例えば、細胞賦活剤、血行促進剤、抗男性ホルモン剤、皮脂分泌抑制剤、免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤、殺菌消毒剤、局所刺激剤、角質軟化剤、消炎剤、抗アポトーシス剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、他の有効成分の含有量は、所望される効果や適用される被験者の年齢、性別、状態等の種々の要因により適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の育毛剤は、以上のようにして得た焼酎油に、適宜通常の化粧剤に使用される防腐剤としての安息香酸、酸化防止剤としてのビタミンE、あるいはpH調製剤としてのビタミンC等を配合し、長期保存に耐えられるように調整できる。他の配合成分として従来の育毛剤配合成分として使用されるものも適宜配合添加できる。例えば、ビタミン類、アミノ酸類、動植物油、塩化ナトリウム等が挙げられる。この場合のビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン(ニコチン酸)、ビタミンC、ビタミンE、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カリウム、ビオチンH(ビタミンH)等が挙げられる。また、アミノ酸類としては、ドーパ(β−3,4−ジヒロドキシフェルニルアラニン)が挙げられる。さらに動植物油として、馬油、卵油、オリーブ油、ツバキ油、ナタネ油、ゴマ油、胚芽油等が挙げられる。
【要約】

【課題】外用剤として優れた育毛効果を発揮することができる。また、焼酎原酒に含まれる余分な焼酎油を廃棄せずに有効活用ができるという効果を有する。
【解決手段】単式蒸留焼酎の製造過程において、常圧又は減圧焼酎蒸留を行った際の原酒の冷却中に浮上して得られる焼酎油を育毛剤の有効成分とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11