(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
レーダシステムの分野における現在の技術では、所定の位置に分散して配置(固定)された複数のアンテナ(サブアレー)の各々の送受信信号を振幅・位相制御してビーム合成を行う「分散開口レーダ」が知られている。
【0003】
分散開口レーダにおいて、分散配置された各アンテナ(サブアレー)の相対位置を計測する手法として、「(1)GPSで計測する手法」、「(2)金属球等疑似目標を各アンテナにてレーダ波で追尾することで計測する手法」、及び「(3)各アンテナにレーザ測距装置を搭載し、レーザ光で追尾することで計測する手法」の3つの手法が考えられる。以下に、それぞれの手法の詳細について説明する。
【0004】
(1)GPSで計測する手法
GPSによる計測は、単独測位(単独瞬時計測)では10〜100m程度の測位精度である。また、スタティック計測(既知点と計測点のGPS受信機で30分〜1時間程度時間をかけて計測)等の干渉測位を用いたとしても測位精度はcmオーダであり、GPS衛星の配置によっては、測位精度が悪化する場合がある。
【0005】
(2)金属球等疑似目標を各アンテナにてレーダ波で追尾することで計測する手法
金属球等疑似目標をレーダ波で追尾して相対測位を行う場合は、分散配置された各アンテナ(サブアレー)では十分な角度精度が得られないために相対位置が大きくずれる問題がある。そもそも、レーダの測角精度を向上するためにアンテナを分散配置して分散開口(大開口径アンテナ)を構成するものであり、各アンテナ単体ではアンテナ径が小さく、ビーム幅が広がるため、十分な角度精度が出ない。
【0006】
また、上記のようなGPSや金属球を用いた測位結果は、レーダ波の波長レベルのオーダから見ると各アンテナ(サブアレー)の概ね(大体)の位置しか計測できないため、分散開口レーダを構成するアンテナ(サブアレー)の相対位置に応じた各々のアンテナ(サブアレー)におけるレーダ波の送受信を正確に制御できない、すなわち、正確なビーム形成ができないという問題がある。例えば、分散開口レーダで利用される波長が数cm〜数mmのレーダ波であるとすると、アンテナ配置計測精度が数cm程度では、ビーム成形に影響を与えてしまう。すなわち、GPSや金属球を用いた電波による測位計測/方位計測には精度に限界がある。
【0007】
(3)各アンテナにレーザ測距装置を搭載し、レーザ光で追尾することで計測する手法
レーザ光を用いた測距を行った場合、レーザ光の波長が電波に対して十分に小さいことから、十分な測距及び方位計測精度が得られるが、レーザ測距装置をアンテナ(サブアレー)へ搭載して疑似目標を追尾するようなアライメント装置を構成した場合、全てのアンテナ(サブアレー)に高価なレーザ測距装置を搭載することになり、コスト(費用)面で不利である。
【0008】
[公知技術]
なお、当該技術分野における公知技術として、特許文献1(特許2500377号公報)が開示されている。特許文献1には、衛星搭載用パラボラアンテナの主鏡の歪(理想パラボラ曲面からのズレ量)を遠方から計測する技術が記載されている。特許文献1に記載の技術では、地球から衛星の主鏡に対して、光(4入射光、例えばレーザ光源)を照射する。また、アンテナ主鏡面の複数箇所に散在させて設けた歪み測定領域(例えば、3小型凹面鏡)にて反射させて集光する。また、集光位置に配した撮像センサにより各歪み測定領域からの反射光を同時に検出してスポット像を取得する。また、アンテナ主鏡面を理想面とした状態で取得される基準スポット像と鏡面歪み測定時に取得したスポット像とのずれに基づいて、アンテナ主鏡面の理想面からのずれを測定する。しかし、特許文献1では、複数設けられた歪み測定領域(例えば、3小型凹面鏡)は、入射光を単に反射するだけの機能となっている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態では、分散開口レーダや分散開口アンテナを構成する複数のアンテナ(サブアレー)の相対位置及び相対方位を、1台のレーザ測距装置により計測する技術について提案する。なお、実際には、複数のレーザ測距装置により計測しても良い。
【0018】
[計測システムの構成例]
図2に示すように、本実施形態に係る計測システムは、レーザ測距装置10と、アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N:Nは任意)を含む。
【0019】
レーザ測距装置10は、光源11(11−m、m=1〜M:Mは任意)と、受光装置12(12−m、m=1〜M’:M’は任意)と、計測装置13を備える。
【0020】
アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)の各々は、光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P:Pは任意)を備える。
【0021】
レーザ測距装置10に配置された光源11(11−m、m=1〜M)の各々は、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対してビームを照射する。このビームは、光信号に相当する。各光源11(11−m、m=1〜M)は、いずれも適切な位置に適切な精度で設置される。各光源11(11−m、m=1〜M)の配置(正確な配置の計測値)は既知データとして、レーザ測距装置10に事前入力されているものとする。
【0022】
なお、レーザ測距装置10の各光源11(11−m、m=1〜M)は一般的にレーザ光源であるが、実際には、各光源11(11−m、m=1〜M)はレーザ光源に限らず、通常光源でも良い。すなわち、レーザ測距装置10の各光源11(11−m、m=1〜M)は、レーザ光源に限定されない。
【0023】
レーザ測距装置10に配置された受光装置12(12−m、m=1〜M’)の各々は、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)からの反射光を受光する。各受光装置12(12−m、m=1〜M’)は、いずれも適切な位置に適切な精度で設置される。各受光装置12(12−m、m=1〜M’)の配置(正確な配置の計測値)は既知データとして、レーザ測距装置10に事前入力されているものとする。
【0024】
レーザ測距装置10に配置された計測装置13は、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)からの反射光に基づいて、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)の相対位置を計測する。具体的には、計測装置13は、光源11(11−m、m=1〜M)から光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)を介して受光装置12(12−m、m=1〜M’)に至るまでの光信号の伝搬距離を計測し、伝搬距離を基に、光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)の相対位置を計測する。
【0025】
各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、レーザ測距装置10に配置された各光源11(11−m、m=1〜M)からの入射光に対し、疑似ランダムパターン等により変調を加えて反射する。すなわち、光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、入射光として光信号を入力し、反射光として光学的変化を加えた光信号を出力する光信号入出力装置でもある。各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、いずれも適切な位置に適切な精度で設置される。各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)の配置データ(正確な配置の計測値)は既知データとして、レーザ測距装置10に事前入力されているものとする。例えば、配置データは、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)が配置されているアンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)と、そのアンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)上における設置位置(座標情報等)を示す。また、レーザ測距装置10は、配置データを、対応テーブル等のファイル形式で、手動操作(直接入力)や通信を介して事前入手する。
【0026】
また、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、各々固有の変調パターンにより入射光の変調を行う。各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に固有の変調パターンは既知データとして、レーザ測距装置10に事前入力されているものとする。例えば、レーザ測距装置10は、固有の変調パターンを、対応テーブル等のファイル形式で、手動操作(直接入力)や通信を介して事前入手する。
【0027】
なお、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、レンズ、LN変調器等の変調デバイス、ミラー等で形成されている。各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)の相対方位を計測する場合は、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に、少なくとも(最低でも)3つずつ配置されるが、実際には、これらの例に限定されない。
【0028】
[動作の概要]
本実施形態では、光源11(11−m、m=1〜M)から光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)を介して受光装置12(12−m、m=1〜M’)に至るまでの光信号の伝搬ルートが3つ以上得られる様に、レーザ測距装置10へ搭載する光源11(11−m、m=1〜M)及び受光装置12(12−m、m=1〜M’)の台数(M、M’)を決定し、レーザ測距装置10は、光源11(11−m、m=1〜M)及び受光装置12(12−m、m=1〜M’)を用いて、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)の相対位置を3点交差法により計測する。なお、3点交差法は一例に過ぎない。実際には、3点以上(光信号の伝搬ルートを3つ以上)として計測(多点交差法)しても良い。
【0029】
具体的には、レーザ測距装置10は、全てのアンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された全ての光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対し、各光源11(11−m、m=1〜M)からビーム照射を行い、各受光装置12(12−m、m=1〜M’)で反射光を受光する。なお、ビーム照射は、1回に限らず、複数回でも良い。
【0030】
各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、各光源11(11−m、m=1〜M)からの入射光を異なる符号で変調し、反射光として出力する。
【0031】
そのため、レーザ測距装置10に配置された計測装置13は、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)からの反射光が重畳された状態においても、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対応した変調パターンを用いて、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)からの反射光を分離識別できる。これにより、レーザ測距装置10に配置された計測装置13は、全てのアンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された全ての光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)の相対位置を高精度に計測する。
【0032】
また、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)を各々3つ以上配置した場合、計測装置13は、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)の相対方位を、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に設置されている光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)の相対位置の計測値からベクトル計算により計測(算出)することが可能である。
【0033】
[本実施形態における計測手法]
図3を参照して、本実施形態における計測手法の詳細について説明する。
【0034】
レーザ測距装置10に配置された各光源11(11−m、m=1〜M)は、時分割/周波数分割で、光信号を出力する。ここでは、光源11(11−m、m=1〜M)の各々は、全てのアンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された全ての光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対してビームを照射することで、光信号を送信する。
【0035】
各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、各光源11(11−m、m=1〜M)からの入射光に、各々異なる光学変調を加えて反射する。
【0036】
レーザ測距装置10に配置された各受光装置12(12−m、m=1〜M’)は、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)からの反射光を受光する。
【0037】
レーザ測距装置10に配置された計測装置13は、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対応した変調パターンで受光波を相関処理する。また、計測装置13は、光源11(11−m、m=1〜M)から光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)を介して受光装置12(12−m、m=1〜M’)に至るまでの光信号の伝搬距離を高精度に測定する。また、計測装置13は、高精度距離測定結果を用いた3点交差法(3点以上の高精度距離測定結果を用いても良い)により、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)の相対位置を計測し、相対位置計測結果を用いて、
図4に示すように、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)の相対方位を計測する。
【0038】
[光学変調波反射装置の構成例]
図5を参照して、本実施形態に係る光学変調波反射装置の構成例について説明する。
【0039】
本実施形態に係る光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)の各々は、受信レンズ211と、光スプリッタ212と、PD(Photo Diode)213と、変調器ドライバ214と、レーザドライバ215と、変調器216と、レーザ増幅器217と、送信レンズ218を備える。
【0040】
受信レンズ211は、レーザ測距装置10に配置された各光源11(11−m、m=1〜M)からの光信号(受信信号)を受信する。ここでは、受信レンズ211は、レーザ測距装置10の各光源11(11−m、m=1〜M)から照射されたビームを受光することで、光信号を受信する。
【0041】
光スプリッタ212は、受信レンズ211で受光した光信号を、PD213と変調器216に分配する。
【0042】
PD213は、光信号を電気信号へ変換し、その電気信号を変調器ドライバ214とレーザドライバ215に向けて出力する。
【0043】
変調器ドライバ214は、PD213からの電気信号に応じて、変調器216を制御するための電気信号を出力する。
【0044】
レーザドライバ215は、PD213からの電気信号に応じて、レーザ増幅器217を制御するための電気信号を出力する。
【0045】
レーザドライバ215は、レーザ測距装置10に配置された各光源11(11−m、m=1〜M)の出力レベルを手動操作(直接入力)や通信を介して事前入力する。また、レーザドライバ215は、PD213からの電気信号の振幅レベルから受信信号の振幅レベルを計測する。また、レーザドライバ215は、事前入力した各光源11(11−m、m=1〜M)の出力レベルと受信信号の振幅レベル計測結果用いて、送信信号の振幅レベルがレーザ測距装置の位置において手動操作(直接入力)や通信を介して設定された設定値となるようにレーザ増幅器217における光増幅度を制御する。なお、レーザドライバ215によるレーザ増幅器217の光増幅度の制御は、省略も可能である、また、レーザドライバ215及びレーザ増幅器217を省略することも可能である。すなわち、レーザドライバ215及びレーザ増幅器217は、必要に応じて設けるものであり、不要であれば設けなくても良い。
【0046】
変調器216は、変調器ドライバ214からの電気信号に応じて、光スプリッタ212からの光信号を変調し、変調された光信号(変調波)をレーザ増幅器217に向けて出力する。
【0047】
レーザ増幅器217は、レーザドライバ215からの電気信号に応じて、変調器216からの光信号(変調波)の振幅を制御し、送信レンズ218に向けて出力する。ここでは、レーザ増幅器217は、光信号(変調波)の振幅がレーザ測距装置10側で一定の振幅になるように出力を制御する。
【0048】
送信レンズ218は、レーザ増幅器217からの光信号(送信信号)を、レーザ測距装置10に向けて送信する。ここでは、送信レンズ218は、レーザ測距装置10の各受光装置12(12−m、m=1〜M’)に対してビームを照射することで、光信号を送信する。
【0049】
なお、本実施形態では、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、光信号の受信から送信までの時間が一定精度内に収まるようにしている。
【0050】
また、本実施形態では、光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)における光路を、ミラーやレンズを用いて光路を構成する自由空間光伝送路とした場合、及び、ファイバやフォトニック結晶等の導波路を用いた光伝送路とした場合のいずれの場合でも対応可能である。
【0051】
[第1実施形態の固有の作用・効果]
本実施形態では、有事等で即時展開した分散開口レーダの複数のアンテナ(サブアレー)の各々の相対位置及び相対方位を計測する。
【0052】
被測定物である各アンテナ(サブアレー)の相対位置及び相対方位を計測するために、各アンテナ(サブアレー)に反射鏡を設置して遠方の計測器から光を照射して各アンテナ(サブアレー)の反射鏡からの反射光を計測する。
【0053】
このとき、各アンテナ(サブアレー)に設置する反射鏡を、入射光を各々異なる疑似ランダムパターン等により変調してから反射する光学変調反射鏡としている点を特徴とする。
【0054】
これにより、各反射光を測定器で計測した後、各光学変調反射鏡の変調パターンに対応したレプリカ信号で相関処理を行うことで、どのアンテナ(サブアレー)からの反射光であるかを分離識別することができる。
【0055】
本実施形態により、複数の被測定物の設置位置及び設置方位を遠方から即座に高精度で計測することが可能である。例えば、上記のように、3個以上の複数光源からビームを照射することで複数の各光学変調波反射装置の相対位置及び相対方位を同時に高精度に計測することができる。
【0056】
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0057】
本実施形態では、光学変調波反射装置の機能を簡素化した事例について説明する。
【0058】
第1実施形態では、光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)においてLN変調器等のアクティブデバイスを使用したが、第2実施形態では、光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)において偏光素子等のパッシブデバイスを使用して変調器の機能を簡素化したものとする。計測システムの構成自体は、第1実施形態と同じである
【0059】
[本実施形態における計測手法]
図6を参照して、本実施形態における計測手法の詳細について説明する。
【0060】
レーザ測距装置10に配置された各光源11(11−m、m=1〜M)は、時分割/周波数分割で、光信号を出力する。ここでは、光源11(11−m、m=1〜M)の各々は、全てのアンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された全ての光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対してビームを照射することで、光信号を送信する。
【0061】
本実施形態では、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、各光源11(11−m、m=1〜M)からの入射光に、ファラデー回転子等の偏光素子を用いて各々異なる偏光を加えて反射する。
【0062】
レーザ測距装置10に配置された各受光装置12(12−m、m=1〜M’)は、複数の偏光フィルタを介して、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)からの反射光を受光する。このとき、レーザ測距装置10又は各受光装置12(12−m、m=1〜M’)は、複数の偏光フィルタを有しているものとする。
【0063】
レーザ測距装置10に配置された計測装置13は、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対応した偏光パターンで受光波を分離識別する。これにより、第1実施形態と同様の計測機能を実現する。
【0064】
偏光フィルタは、偏光パターンと同数以上であると好適である。すなわち、偏光フィルタは、少なくとも各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)と同数以上である。
【0065】
[光学変調波反射装置の構成例]
図7を参照して、本実施形態に係る光学変調波反射装置の構成例について説明する。
【0066】
本実施形態に係る光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)の各々は、受信レンズ211と、送信レンズ218と、偏光素子219を備える。
【0067】
受信レンズ211は、レーザ測距装置10に配置された各光源11(11−m、m=1〜M)からの光信号(受信信号)を受信する。ここでは、受信レンズ211は、レーザ測距装置10の各光源11(11−m、m=1〜M)から照射されたビームを受光することで、光信号を受信する。
【0068】
送信レンズ218は、レーザ増幅器217からの光信号(送信信号)を、レーザ測距装置10に向けて送信する。ここでは、送信レンズ218は、レーザ測距装置10の各受光装置12(12−m、m=1〜M’)に対してビームを照射することで、光信号を送信する。
【0069】
偏光素子219は、受信レンズ211で受光した光信号を偏光し、偏光された光信号を送信レンズ218に向けて出力する。ここでは、偏光素子219は、光信号(変調波)がレーザ測距装置10側で一定の偏光パターンになるように偏光する。
【0070】
なお、本実施形態では、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、光信号の受信から送信までの時間が一定精度内に収まるようにしている。
【0071】
また、本実施形態は第1実施形態と同様に、光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)における光路を、ミラーやレンズを用いて光路を構成する自由空間光伝送路とした場合、及び、ファイバやフォトニック結晶等の導波路を用いた光伝送路とした場合のいずれの場合でも対応可能である。但し、導波路を用いた光伝送を採用する場合は、偏波保持型の光伝送路を採用するものとする。
【0072】
[第2実施形態の固有の作用・効果]
本実施形態は、複数のアンテナ(サブアレー)の数が少ない場合に有効である。
【0073】
また、光学変調波反射装置の機能を簡素化することで、コスト(費用)低減につなげることができる。
【0074】
<第3実施形態>
以下に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0075】
第3実施形態では、アンテナ(サブアレー)が移動可能である事例について説明する。
【0076】
なお、実際には、アンテナ(サブアレー)自体が移動体であっても良いし、アンテナ(サブアレー)を移動体に搭載していても良い。
【0077】
ここでは、移動体の例として、自走式の車輌を想定している。また、車輌に限らず、自走ロボット(多脚ロボット等)や船舶等も考えられる。また、水陸両用車等でも良い。但し、実際には、これらの例に限定されない。
【0078】
[本実施形態における計測手法]
図8を参照して、本実施形態における計測手法の詳細について説明する。
【0079】
レーザ測距装置10に配置された各光源11(11−m、m=1〜M)は、逐次/周期的に、時分割/周波数分割で、光信号を出力する。ここでは、光源11(11−m、m=1〜M)の各々は、逐次/周期的に、全てのアンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された全ての光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対してビームを照射することで、光信号を送信する。
【0080】
本実施形態では、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)は移動体に搭載されている。或いは、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)自体が移動体である。各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、移動体の移動中/停止中を問わず、各光源11(11−m、m=1〜M)からの入射光に、各々異なる光学変調を加えて反射する。
【0081】
レーザ測距装置10に配置された各受光装置12(12−m、m=1〜M’)は、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)からの反射光を受光する。
【0082】
レーザ測距装置10に配置された計測装置13は、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対応した変調パターンで受光波を相関処理する。また、計測装置13は、光源11(11−m、m=1〜M)から光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)を介して受光装置12(12−m、m=1〜M’)に至るまでの光信号の伝搬距離を高精度に測定する。また、計測装置13は、高精度距離測定結果を用いた3点交差法(3点以上の高精度距離測定結果を用いても良い)により、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)の相対位置を計測し、相対位置計測結果を用いて、
図4に示すように、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)の相対方位を計測する。
【0083】
更に、計測装置13は、ビームの出力周期(出力間隔)や反射光の受光周期(受光間隔)等の時間情報を取得することで、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)の相対速度を計測することも可能となる。
【0084】
なお、本実施形態では、各光学変調波反射装置に対応した変調パターンを用いる事例について説明しているが、第2実施形態と同じく、各光学変調波反射装置に対応した偏光パターンを用いて実施することも可能である。
【0085】
[第3実施形態の固有の作用・効果]
本実施形態では、光学変調波反射装置を搭載した分散開口レーダのアンテナ(サブアレー)を移動体としても、瞬時に全てのアンテナ(サブアレー)の相対位置/相対方位が計測できるため、分散開口レーダの信号処理(ビーム制御)に適用できる。
【0086】
<第4実施形態>
以下に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0087】
第4実施形態では、レーダ測距装置が移動可能である事例について説明する。
【0088】
なお、実際には、レーダ測距装置自体が移動体であっても良いし、レーダ測距装置を移動体に搭載しても良い。また、レーダ測距装置に配置された光源及び受光装置が可動式/回転式(回転台等)の機構であっても良い。
【0089】
ここでは、移動体の例として、航空機等の飛翔体を想定している。但し、実際には、これらの例に限定されない。
【0090】
[本実施形態における計測手法]
図9を参照して、本実施形態における計測手法の詳細について説明する。
【0091】
本実施形態では、レーザ測距装置10は移動体に搭載されている。或いは、レーザ測距装置10自体が移動体である。また、レーザ測距装置10自体の移動に関わらず、レーザ測距装置10に配置された各光源11(11−m、m=1〜M)及び各受光装置12(12−m、m=1〜M’)を可動式/回転式(回転台等)の機構としても良い。レーザ測距装置10に配置された各光源11(11−m、m=1〜M)は、逐次/周期的に、時分割/周波数分割で、光信号を出力する。ここでは、光源11(11−m、m=1〜M)の各々は、移動体の移動中/停止中を問わず、逐次/周期的に、全てのアンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された全ての光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対してビームを照射することで、光信号を送信する。
【0092】
各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、各光源11(11−m、m=1〜M)からの入射光に、各々異なる光学変調を加えて反射する。
【0093】
レーザ測距装置10に配置された各受光装置12(12−m、m=1〜M’)は、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)からの反射光を受光する。
【0094】
レーザ測距装置10に配置された計測装置13は、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対応した変調パターンで受光波を相関処理する。また、計測装置13は、光源11(11−m、m=1〜M)から光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)を介して受光装置12(12−m、m=1〜M’)に至るまでの光信号の伝搬距離を高精度に測定する。また、計測装置13は、高精度距離測定結果を用いた3点交差法(3点以上の高精度距離測定結果を用いても良い)により、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)の相対位置を計測し、相対位置計測結果を用いて、
図4に示すように、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)の相対方位を計測する。
【0095】
なお、本実施形態では、各光学変調波反射装置に対応した変調パターンを用いる事例について説明しているが、第2実施形態と同じく、各光学変調波反射装置に対応した偏光パターンを用いて実施することも可能である。
【0096】
[第4実施形態の固有の作用・効果]
本実施形態では、レーダ測距装置が移動体に搭載されたシステムとした場合も、瞬時に全てのアンテナ(サブアレー)の相対位置/相対方位が計測できるため、分散開口レーダの信号処理(ビーム制御)に適用できる。
【0097】
<第5実施形態>
以下に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0098】
第5実施形態は、第3実施形態と第4実施形態を組み合わせたものである。本実施形態では、レーダ測距装置とアンテナ(サブアレー)がそれぞれ移動可能である事例について説明する。
【0099】
なお、第1実施形態及び第2実施形態のレーダ測距装置やアンテナ(サブアレー)自体が移動体であっても良い。
なお、実際には、レーダ測距装置やアンテナ(サブアレー)自体が移動体であっても良いし、レーダ測距装置やアンテナ(サブアレー)を移動体に搭載しても良い。また、レーダ測距装置に配置された光源及び受光装置が可動式/回転式(回転台等)の機構であっても良い。
【0100】
[本実施形態における計測手法]
図10を参照して、本実施形態における計測手法の詳細について説明する。
【0101】
本実施形態では、レーザ測距装置10は移動体に搭載されている。或いは、レーザ測距装置10自体が移動体である。レーザ測距装置10に配置された各光源11(11−m、m=1〜M)は、逐次/周期的に、時分割/周波数分割で、光信号を出力する。ここでは、光源11(11−m、m=1〜M)の各々は、移動体の移動中/停止中を問わず、逐次/周期的に、全てのアンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された全ての光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対してビームを照射することで、光信号を送信する。
【0102】
本実施形態では、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)は移動体に搭載されている。或いは、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)自体が移動体である。各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)に配置された各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)は、移動体の移動中/停止中を問わず、各光源11(11−m、m=1〜M)からの入射光に、各々異なる光学変調を加えて反射する。
【0103】
レーザ測距装置10に配置された各受光装置12(12−m、m=1〜M’)は、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)からの反射光を受光する。
【0104】
レーザ測距装置10に配置された計測装置13は、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)に対応した変調パターンで受光波を相関処理する。また、計測装置13は、光源11(11−m、m=1〜M)から光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)を介して受光装置12(12−m、m=1〜M’)に至るまでの光信号の伝搬距離を高精度に測定する。また、計測装置13は、高精度距離測定結果を用いた3点交差法(3点以上の高精度距離測定結果を用いても良い)により、各光学変調波反射装置21(21−p、p=1〜P)の相対位置を計測し、相対位置計測結果を用いて、
図4に示すように、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)の相対方位を計測する。
【0105】
更に、計測装置13は、ビームの出力周期(出力間隔)や反射光の受光周期(受光間隔)等の時間情報を取得することで、各アンテナ(サブアレー)20(20−n、n=1〜N)の相対速度を計測することも可能となる。
【0106】
なお、本実施形態では、各光学変調波反射装置に対応した変調パターンを用いる事例について説明しているが、第2実施形態と同じく、各光学変調波反射装置に対応した偏光パターンを用いて実施することも可能である。
【0107】
[第5実施形態の固有の作用・効果]
本実施形態では、レーダ測距装置やアンテナ(サブアレー)が移動可能であるシステムとした場合も、瞬時に全てのアンテナ(サブアレー)の相対位置/相対方位が計測できるため、分散開口レーダの信号処理(ビーム制御)に適用できる。
【0108】
<各実施形態の関係>
なお、上記の各実施形態は、組み合わせて実施することも可能である。また、上記の各実施形態において、アンテナ(サブアレー)は、アンテナ装置(サブアレーユニット)と読み替えても良い。また、実際には、上記の各実施形態において、個々のアンテナ(サブアレー)が、レーダ測距装置又はその構成を搭載することも可能である。例えば、移動可能な個々のアンテナ(サブアレー)が、自動制御/自律制御により、相互に相対位置/相対方位を計測するようにしても良い。また、アンテナ(サブアレー)は、一例に過ぎない。実際には、本発明における被測定物は、アンテナ(サブアレー)に限定されない。したがって、上記の各実施形態において、アンテナ(サブアレー)は、単に被測定物と読み替えても良い。
【0109】
<本発明の特徴>
本発明は、被測定物に設置する反射鏡を(入射光を各々異なる疑似ランダムパターン等により変調してから反射する)光学変調反射鏡とし、各反射鏡からの反射光を測定器で検出した後、相関処理で分離識別することで、複数の被測定物の相対位置及び相対方位を遠方から同時(即座)に高精度で計測できることを特徴としている。
【0110】
本発明は、分散開口レーダを始め、アンテナ装置の精密相対測位が必要な製品に適用可能である。
【0111】
<備考>
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。