特許第6296281号(P6296281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6296281ゴム組成物及びそれを架橋させてなる成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296281
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びそれを架橋させてなる成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 13/00 20060101AFI20180312BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20180312BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20180312BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20180312BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20180312BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C08L13/00
   C08K5/17
   C08K3/36
   C08K5/5415
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 Q
   F16J15/10 Y
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-20994(P2014-20994)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-147855(P2015-147855A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113181
【弁理士】
【氏名又は名称】中務 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180600
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】笠本 忠志
(72)【発明者】
【氏名】寄木 彩加
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−106113(JP,A)
【文献】 特開2010−024452(JP,A)
【文献】 特開2013−047177(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/123433(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 13/00−13/02
C08K 3/00−5/59
C09K 3/00−3/32
F16J 15/00−15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を含む水素化ニトリルゴム(A)100質量部、ポリアミン系架橋剤(B)0.5〜10質量部、シリカ(C)5〜100質量部及び下記式(1)で示されるシラン化合物(D)0.1〜10質量部を含有するゴム組成物。
(R−Si−(OR4−n (1)
[式(1)中、Rは炭素数が〜20の脂肪族飽和炭化水素基であり、Rは炭素数が1〜6の炭化水素基であり、nは〜3の整数である。]
【請求項2】
水素化ニトリルゴム(A)が、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を含む水素化ニトリルゴムである請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
ポリアミン系架橋剤(B)が、脂肪族ポリアミン系化合物である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物を加熱して架橋させてなる成形品。
【請求項5】
請求項4に記載の成形品からなるシール
【請求項6】
請求項4に記載の成形品からなるガスケット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化ニトリルゴムとシリカを含有するゴム組成物及びそれを架橋させてなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化ニトリルゴムは、ニトリルゴムよりも耐熱性に優れ、フッ素ゴムほど高価ではない。したがって、そのバランスの良さからそれを用いた成形品は広く用いられている。水素化ニトリルゴムを用いた成形品の機械特性を向上させるための充填材としては、カーボンブラックが広く用いられているが、黒色以外の成形品が求められる場合などにはシリカが用いられることも多い。水素化ニトリルゴムにシリカを配合したゴム組成物を過酸化物で架橋することによって成形品を得ることができる。しかしながらこの場合には、成形時の離型性が悪いので、成形工程のタクトタイムが長くなって生産性が低下することがあった。
【0003】
特許文献1には、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル単量体単位を含有し、特定のガラス転位挙動を示す水素化ニトリルゴム及びポリアミン架橋剤を含有する架橋性ゴム組成物が記載されている。当該架橋性ゴム組成物に用いられる補強性充填材としてカーボンブラックとシリカが例示されているが、その実施例では、カーボンブラックを配合した成形品が記載されているのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/38720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、水素化ニトリルゴムにシリカを配合したゴム組成物を過酸化物で架橋する場合には、成形時の離型性が悪いという問題があった。したがって、この点を解決し、しかも耐水性にも優れた成形品を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を含む水素化ニトリルゴム(A)100質量部、ポリアミン系架橋剤(B)0.5〜10質量部、シリカ(C)5〜100質量部及び下記式(1)で示されるシラン化合物(D)0.1〜10質量部を含有するゴム組成物を提供することによって解決される。
【0007】
(R−Si−(OR4−n (1)
[式(1)中、Rは炭素数が1〜20の炭化水素基であり、Rは炭素数が1〜6の炭化水素基であり、nは0〜3の整数である。]
【0008】
このとき、水素化ニトリルゴム(A)が、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を含む水素化ニトリルゴムであることが好ましい。また、ポリアミン系架橋剤(B)が脂肪族ポリアミン系化合物であることも好ましい。
【0009】
また上記課題は、前記ゴム組成物を加熱して架橋させてなる成形品を提供することによっても解決される。また、当該成形品からなるシール又はガスケットが、本発明の好適な実施態様である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴム組成物は、水素化ニトリルゴムにシリカを配合してなるものであり、それを架橋させて成形品を得る際の離型性が良好である。また、得られる成形品は、機械的性能及び耐水性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を含む水素化ニトリルゴム(A)、ポリアミン系架橋剤(B)、シリカ(C)及び特定のシラン化合物(D)を含有するゴム組成物に関する。
【0012】
上述のように、水素化ニトリルゴムにシリカを配合したゴム組成物を過酸化物で架橋する場合には、成形時の離型性が悪いという問題があった。そこで本発明者らは、過酸化物を用いて架橋する代わりに、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を含む水素化ニトリルゴム(A)及びシリカ(C)を含むゴム組成物を、ポリアミン系架橋剤(B)を用いて架橋させたところ、離型性が改善することを見出した。
【0013】
しかしながら、そうして架橋された成形品の物性を確認したところ、耐水性が低下することが明らかになった。これは、水素化ニトリルゴムにシリカを配合したゴム組成物を過酸化物で架橋した場合には認められなかった現象であり、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を含む水素化ニトリルゴム(A)及びシリカ(C)を含むゴム組成物を、ポリアミン系架橋剤(B)を用いて架橋させた場合に初めて認められた問題点であった。
【0014】
これに対し、本願発明者らが鋭意検討した結果、シリカ(C)とともに特定のシラン化合物(D)を配合することによって、成形品の耐水性が改善されることを見出すことができた。これによって、加硫成形時の離型性が良好であるとともに、得られる成形品の耐水性に優れるゴム組成物が提供されることになった。以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明のゴム組成物で用いられる水素化ニトリルゴム(A)は、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を含む。カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を導入する方法は特に限定されないが、これらの官能基又はその前駆体を含む単量体を、アクリロニトリル及び1,3−ブタジエンとともに共重合し、その後水素添加することが好ましい。そのような単量体として好適なものとしては、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体が挙げられる。この場合、水素化ニトリルゴム(A)はα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を含む水素化ニトリルゴムである。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量は、好適には1〜10質量%である。
【0016】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
【0017】
水素化ニトリルゴム(A)中のアクリロニトリル単位の含有量は、15〜49質量%であることが好ましい。また、1,3−ブタジエン単位の含有量は水添されたものも含めて、50〜84質量%であることが好ましい。水素化ニトリルゴム(A)のヨウ素価は50g/100g以下であることが好ましく、20g/100g以下であることがより好ましい。
【0018】
本発明で用いられるポリアミン系架橋剤(B)は、2つ以上のアミノ基を有する化合物であるか、又は、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になり得るものであれば特に限定されない。脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素が、アミノ基又はヒドラジド基(−CONHNH)で置換された化合物が好ましい。ポリアミン系架橋剤(B)の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン−シンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミン−ジベンゾエート塩などの脂肪族ポリアミン系化合物;2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)などの芳香族ポリアミン系化合物;イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド構造を2つ以上有する化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、脂肪族ポリアミン系化合物が好ましく、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが特に好ましい。
【0019】
水素化ニトリルゴム(A)100質量部に対するポリアミン系架橋剤(B)の含有量は0.5〜10質量部である。ポリアミン系架橋剤(B)の含有量が0.5質量部未満の場合、架橋反応が十分に進行せず、機械特性の良好な成形品を得ることができない。ポリアミン系架橋剤(B)の含有量は、好適には1質量部以上である。一方、ポリアミン系架橋剤(B)の含有量が10質量部を超える場合、得られる成形品の伸びが大幅に低下する。ポリアミン系架橋剤(B)の含有量は、好適には5質量部以下である。
【0020】
本発明のゴム組成物に配合されるシリカ(C)は、特に限定されず、一般にゴム組成物に配合されるものであればよい。例えば、ヒュームドシリカ等の乾式法シリカ、沈殿シリカ等の湿式法シリカが挙げられる。水素化ニトリルゴム(A)100質量部に対するシリカ(C)の含有量は5〜100質量部である。シリカ(C)の含有量が5質量部未満の場合、得られる成形品の機械特性が不十分になる。シリカ(C)の含有量は、好適には10質量部以上である。一方、シリカ(C)の含有量が100質量部を超える場合、得られる成形品の耐水性が低下する。シリカ(C)の含有量は、好適には80質量部以下である。
【0021】
本発明のゴム組成物に配合されるシラン化合物(D)は、下記式(1)で示されるものであることが必要である。
(R−Si−(OR4−n (1)
[式(1)中、Rは炭素数が1〜20の炭化水素基であり、Rは炭素数が1〜6の炭化水素基であり、nは0〜3の整数である。]
【0022】
このような構造を有するシラン化合物(D)を配合することによって、得られる成形品の耐水性が向上する。その理由は必ずしも明らかではないが、シリカの表面をシラン化合物(D)が覆ってシリカの表面を疎水化していることが推定される。本発明で用いられるシラン化合物(D)は、アルコキシ基以外の官能基を有さないものであり、この点で、アルコキシ基以外の反応性官能基(エポキシ基、アミノ基、二重結合など)を有する、いわゆるシランカップリング剤とは異なる。
【0023】
式(1)中、Rは炭素数が1〜20の炭化水素基である。Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの脂肪族飽和炭化水素基;シクロヘキシル基などの脂環式飽和炭化水素基:フェニル基などの芳香族炭化水素基が例示される。これらのうちでは、脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。また、疎水性を向上させる点からはRの炭素数が大きい方が好ましく、3以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。式(1)においてnが2又は3である場合には、Rが異なる炭化水素基を含んでいても構わない。
【0024】
式(1)中、Rは炭素数が1〜6の炭化水素基である。Rは、メチル基、エチル基などの脂肪族飽和炭化水素基;シクロヘキシル基などの脂環式飽和炭化水素基;フェニル基などの芳香族炭化水素が例示される。これらのうちでは、脂肪族飽和炭化水素基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。式(1)においてnが0〜2である場合には、Rが異なる炭化水素基を含んでいても構わない。
【0025】
式(1)中、nは0〜3の整数である。すなわち、シラン化合物(D)はアルコキシ基又はフェノキシ基を有しており、これが反応することによってシラン化合物(D)がシリカ(C)の表面に結合するものと推測される。このとき、nが1〜3であることが好ましく、この場合にはケイ素原子に直接結合する炭化水素基を有しているので、シリカ(C)粒子の表面を疎水化する効果が向上する。
【0026】
シラン化合物(D)の具体例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシランなどが例示される。
【0027】
水素化ニトリルゴム(A)100質量部に対するシラン化合物(D)の含有量は0.1〜10質量部である。シラン化合物(D)の含有量が0.1質量部未満の場合、得られる成形品の耐水性が不十分になる。シラン化合物(D)の含有量は、好適には0.5質量部以上である。一方、シラン化合物(D)の含有量が10質量部を超える場合、機械的強度が低下する。シラン化合物(D)の含有量は、好適には3質量部以下である。
【0028】
また、本発明のゴム組成物は、塩基性架橋促進剤(E)をさらに含有することが好ましい。塩基性架橋促進剤(E)を含有させることにより、架橋反応が一層進行しやすくなる。
【0029】
塩基性架橋促進剤(E)の具体例としては、テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−オルト−トリルグアニジン、オルトトリルビグアニドなどのグアニジン系塩基性架橋促進剤;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メトキシエチルイミダゾール、1−フェニル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−エトキシイミダゾール、1−メチル−4−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−4−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−アミノイミダゾール、1−メチル−4−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール、1−メチル−5−ニトロベンゾイミダゾール、1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−フェニルイミダゾリン、1−メチル−2−ベンジルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−メチル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾリンなどの環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤;n−ブチルアルデヒドアニリン、アセトアルデヒドアンモニアなどのアルデヒドアミン系塩基性架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、グアニジン系塩基性架橋促進剤および環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤が好ましく、グアニジン系塩基性架橋促進剤がより好ましい。
【0030】
本発明のゴム組成物中における、塩基性架橋促進剤(E)の含有量は、水素化ニトリルゴム(A)100質量部に対して、0.5〜10質量部である。塩基性架橋促進剤(E)の含有量が0.5質量部未満の場合、架橋速度が遅くなり、その結果得られる成形品の架橋密度が低下するおそれがある。塩基性架橋促進剤(E)の含有量は、好適には1質量部以上である。一方、塩基性架橋促進剤(E)の含有量が10質量部を超える場合、架橋速度が速くなりすぎ、スコーチを起こしたり、作業性が低下したりするおそれがある。塩基性架橋促進剤(E)の含有量は、好適には5質量部以下である。
【0031】
本発明のゴム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で水素化ニトリルゴム(A)以外のゴムを含有してもよい。このようなゴムとして好適なものとしては、まず、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を含まない水素化ニトリルゴムが挙げられる。また他にも、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴムなども挙げられる。水素化ニトリルゴム(A)以外のゴムの含有量は、水素化ニトリルゴム(A)100質量部に対して、好ましくは60質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。また、本発明のゴム組成物には、上述した各成分に加えて、ゴム組成物において通常使用されるその他の配合剤を配合してもよい。
【0032】
本発明のゴム組成物は、上記各成分を混合することによって製造される。混合する方法は特に限定されず、オープンロール、ニーダ、バンバリーミキサ、インターミキサ、押出機などを用いて混練することができる。なかでも、オープンロール又はニーダを用いて混練することが好ましい。混練時のゴム組成物の温度は20〜120℃とすることが好ましい。
【0033】
本発明の成形品は、上記ゴム組成物を所望の形状に成形し、加熱することにより架橋させてなるものである。ゴム組成物の成形方法としては、射出成形や圧縮成形などが挙げられる。このとき、型の中にゴム組成物を充填した後にその型の中で架橋反応を進行させて、成形品を得る。こうして得られる成形品の離型性が良い点が本発明のゴム組成物の大きな特徴である。架橋温度は、通常100〜250℃であり、好ましくは110〜220℃であり、より好ましくは120〜200℃である。架橋時間は、通常1分〜24時間であり、好ましくは2分〜12時間であり、より好ましくは3分〜6時間である。また、ゴム成形品の形状や寸法などによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0034】
このように、本発明のゴム組成物は成形時の離型性が良いので、成形品を生産する際の効率が良く、不良品の発生率を低下させることができる。また、複雑な形状の成形品、厚みの薄い成形品、線径の細い成形品など、様々な形状の成形品を製造するのに適している。そして、本発明の成形品は、機械的強度、耐熱性および耐油性に優れるという、水素化ニトリルゴムが本来持っている性質を有しながら、耐水性にも優れている。したがって、耐水性とゴム弾性が要求される各種の用途に用いることができる。
【0035】
中でも、本発明の成形品の好適な用途は、シール又はガスケットである。これらは、複数の部材間に介装されて用いられる肉薄の成形品であって、ゴム弾性に加えて、機械的強度、耐熱性および耐油性が要求されるものである。また、寸法精度が要求される薄肉の成形品であるために、成形時の離型性も要求される。本発明の成形品は耐水性に優れるので、外気に接触する環境などで用いられるシール又はガスケットとして特に好適である。シールとしては、ベアリングシールやオイルシールなどが例示され、ガスケットとしては、ウォーターポンプ用ガスケットなどが例示される。
【実施例】
【0036】
以下の実施例で使用した原料は以下の通りである。
【0037】
(1)ゴム
・カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム
日本ゼオン株式会社製「ZPT 136(Zetpol 2510)」
アクリロニトリル/1,3−ブタジエン/α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル共重合体の水素添加物
(アクリロニトリル含有量35重量%、ヨウ素価12g/100g以下)
・水素化ニトリルゴム
日本ゼオン株式会社製「Zetpol 2010」
アクリロニトリル/1,3−ブタジエン共重合体の水素添加物
(アクリロニトリル含有量36重量%、ヨウ素価11g/100g)
【0038】
(2)架橋剤
・ポリアミン系架橋剤
ヘキサメチレンジアミンカルバメート(HDC)
デュポン社製「Diak−1」
・有機過酸化物
1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン
化薬アクゾ株式会社製「パーカドックス14R−P」
【0039】
(3)架橋促進剤
・1,3−ジフェニルグアニジン(DPG)
大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーD」
【0040】
(4)共架橋剤
・N,N'−m−フェニレンビスマレイミド
住化ケムテックス株式会社製「スミファインBM」
【0041】
(5)老化防止剤
・4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
大内新興化学工業株式会社製「ノクラックCD」
・2−メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩(ZnMBI)
大内新興化学工業株式会社製「ノクラックMBZ」
【0042】
(6)可塑剤
・トリメリット酸トリス(2−エチルへキシル)(TOTM)
大八化学工業株式会社製「TOTM」
【0043】
(7)滑剤
・ステアリン酸
日油株式会社製「ステアリン酸 さくら」
【0044】
(8)加工助剤
・天然植物性ワックス
デュポン社製「VPA No.2」
【0045】
(9)シリカ
・沈殿法シリカ
東ソー・シリカ株式会社製「ニップシールER」
【0046】
(10)シラン化合物
・n−デシルトリメトキシシラン
信越化学工業株式会社製「KBM3103C」
【0047】
また、本実施例中で行った評価方法は以下の通りである。
【0048】
(a)加硫特性
JIS K6300−2に準拠して測定した。オープンロールで混練後の未加硫のゴムシートを試料とし、JSR株式会社製の「キュラストメーター7」を用いて測定した。測定温度200℃で5分間の加硫曲線を測定し、縦軸をトルク、横軸を時間としたグラフのトルクの最小値ML(kgf・cm)、最大値MH(kgf・cm)、MHの10%のトルクになるまでの時間t10(分)及びMHの90%のトルクになるまでの時間t90(分)を求めた。結果を表1に示す。
【0049】
(b)離型性
オープンロールで混練後の未加硫のゴムシートを用い、4個取りの金型を用いて180℃で3分間プレス加硫して、内径が25.2mmで線径が3.5mmのO−リングを成形した。この成形操作を繰り返し、型を開いたときに上側の金型に加硫後のO−リングが少なくとも1個付着する現象が発生するまでの繰り返し成形回数を求めた。その結果を以下の基準に従って評価した。
・A:30回以上
・B:10〜29回
・C:9回以下
【0050】
(c)引張試験
JIS K6251に準拠して引張試験を行った。二次加硫後の厚さ2mmのシートを打ち抜いて得られた、ダンベル状3号形の試験片を用い、23℃、相対湿度50%において、引張速度500mm/分の引張速度で測定した。ここで、引張破断応力(TB)は試験片の切断時の引張強さ(MPa)である。また、破断伸び(EB)は試験片の切断時の伸び(%)である。
【0051】
(d)JIS−A硬度(HAS)
JIS K6253に準拠して測定した。二次加硫後の厚さ2mmのシートを3枚重ね、タイプAデュロメータを用いて、23℃、相対湿度50%において測定を行った。
【0052】
(e)耐水性
二次加硫後の厚さ2mmのシートを20mm×30mmの長方形に打ち抜いて得られた試験片を、100℃の水に70時間浸漬した後の体積変化率(%)を求めた。
【0053】
実施例1
カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム「ZPT136」100質量部に、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(HDC)1.5質量部、1,3−ジフェニルグアニジン(DPG)2質量部、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン1.5質量部、2−メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩(ZnMBI)1.5質量部、トリメリット酸トリス(2−エチルへキシル)(TOTM)5質量部、ステアリン酸1質量部、天然植物性ワックス3質量部、シリカ30質量部及びn−デシルトリメトキシシラン1質量部を、オープンロールを用いて、ゴム組成物の温度を40℃として40分間混練し、未加硫ゴムシートを作製した。配合比を表1に示す。
【0054】
得られたゴムシートを用い、上記方法で加硫特性を評価した。トルクの最小値MLが2.2kgf・cm、最大値MHが29.5kgf・cm、MHの10%のトルクになるまでの時間t10が0.52分、MHの90%のトルクになるまでの時間t90が1.95分であった。
【0055】
また、得られたゴムシートを180℃で3分間プレス加硫(一次加硫)して厚さ2mmのシート状に成形した後、オーブンを用いて180℃で1時間二次加硫を行って、厚さ2mmの加硫シートを得た。得られた加硫シートを用いて、上記方法で引張試験を行った。その結果、引張破断応力(TB)が24MPaであり、破断伸び(EB)が430%であった。JIS−A硬度は63であった。上記方法で離型性を評価したところ、評価は「A」であった。また、上記方法で耐水性を評価したところ体積変化率が+7%であった。以上の結果を表1に示す。
【0056】
実施例2
実施例1において、n−デシルトリメトキシシランの配合量を2質量部に変更した以外は実施例1と同様にして試験を行い評価した。結果を表1に示す。
【0057】
比較例1
実施例1において、n−デシルトリメトキシシランを配合しなかった以外は実施例1と同様にして試験を行い評価した。結果を表1に示す。
【0058】
比較例2
実施例1において、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴム「ZPT136」の代わりに、カルボキシル基を含有しない水素化ニトリルゴム「Zetpol2010」を用い、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(HDC)の代わりに1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン3質量部を用い、1,3−ジフェニルグアニジン(DPG)の代わりにN,N'−m−フェニレンビスマレイミド1質量部を用いた以外は実施例1と同様にして試験を行い評価した。結果を表1に示す。
【0059】
比較例3
比較例2において、n−デシルトリメトキシシランを配合しなかった以外は比較例2と同様にして試験を行い評価した。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】