(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Mアルカリ度を低減した前記被処理水に、ポリ塩化アルミニウムを50mg/L〜1000mg/Lの濃度となるように添加することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の水処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、石油やシェールガス等の採掘に使用する水にポリマー増粘剤を添加して使用するケミカル圧入法(ケミカル攻法)が近年盛んに適用されるようになったため、副次的に発生する随伴水の性質が従来とは大きく変化しており、従来と同様の凝集処理を行っても油分のフロック化が起こらず、油分を除去できないケースが出てきた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、油分及びポリマー増粘剤を含む被処理水から油分を効率的に除去することが可能な水処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、本発明は以下の手段を提供している。
(1)油分及びポリマー増粘剤を含む被処理水から油分を除去する水処理方法であって、前記被処理水のMアルカリ度を低減する工程と、前記被処理水にポリ塩化アルミニウム及び硫酸バンドのうち少なくとも何れか一方を添加して、前記被処理水中に前記油分を含むフロックを形成する工程と、を有することを特徴とする水処理方法。
(2)前記被処理水の初期のMアルカリ度が約80mgCaCO
3/L以上であることを特徴とする上記(1)に記載の水処理方法。
(3)前記被処理水に含まれるポリマー増粘剤の濃度が50mg/L〜500mg/Lであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の水処理方法。
(4)前記被処理水に酸を添加することにより、前記被処理水のMアルカリ度を低減することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一項に記載の水処理方法。
(5)前記被処理水のMアルカリ度を約70mgCaCO
3/L以下に低減することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一項に記載の水処理方法。
(6)Mアルカリ度を低減した前記被処理水に、ポリ塩化アルミニウムを50mg/L〜1000mg/Lの濃度となるように添加することを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか一項に記載の水処理方法。
(7)前記ポリマー増粘剤の主成分がポリアクリルアミドであることを特徴とする上記(1)〜(6)の何れか一項に記載の水処理方法。
(8)前記被処理水の初期粘度が、0.9cP以上であることを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか一項に記載の水処理方法。
(9)前記被処理水がエネルギー資源の採掘で発生した随伴水であることを特徴とする上記(1)〜(8)の何れか一項に記載の水処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水処理方法によれば、被処理水に含まれる油分をフロック化して効率的に除去することができる。従来方法と比べて被処理水のMアルカリ度を低減するという工程は増えるが、従来方法と同様の水槽を有する施設で処理することができるため、本発明を実施するにあたって新たな設備投資はほとんど不要であるといえる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる水処理方法の第一実施形態は、油分及びポリマー増粘剤を含む被処理水から油分を除去する水処理方法であって、前記被処理水のMアルカリ度を低減する工程と、前記被処理水にポリ塩化アルミニウム及び硫酸バンドのうち少なくとも何れか一方を添加して、前記被処理水中に前記油分を含むフロックを形成する工程と、を有する。
【0011】
被処理水の種類は、油分及びポリマー増粘剤を含む水であれば特に制限されず、例えば、石油や天然ガス等のエネルギー資源の採掘に伴って発生する随伴水であってもよいし、工場、ガソリンスタンド、厨房、家庭等から排出される食用油、鉱物油、ガソリン等を含む排水であってもよい。
【0012】
被処理水に含まれる油分の種類は特に制限されない。石油随伴水や排水中に含まれる油分の種類を特定することが困難である場合もあり得るが、例えば、炭素原子数が5〜30の炭化水素、炭素原子数が5〜20の炭化水素等を油分の一例として挙げることができる。
【0013】
被処理水に含まれる油分の量は特に制限されないが、水処理が必要になる濃度として、例えば、0.1mg/L以上の油分含有量が挙げられる。石油随伴水に含まれる油分の一例として、10〜200mg/L程度の油分含有量が挙げられる。
被処理水に含まれる油分の量が1mg/L〜1000mg/L程度であると、本実施形態の水処理方法によって容易に油分を除去することができる。
【0014】
被処理水に含まれるポリマー増粘剤の種類は特に制限されないが、ケミカル圧入法に使用される、ポリアクリルアミド、ポリサッカライド(多糖類)等のポリマーが例示できる。前記ポリアクリルアミドは部分的に加水分解されていてもよい。
【0015】
本実施形態の水処理方法において、ポリマー増粘剤の主成分としてポリアクリルアミドが含まれると、油分除去の効果が一層優れる場合がある。ここで、「主成分」とは、被処理水に含まれるポリマー増粘剤の総質量に対するポリアクリルアミドの含有量が50質量%以上である場合、又は、被処理水に含まれる複数のポリマー増粘剤のうち、質量基準で、最も含有量が多いポリマー増粘剤がポリアクリルアミドである場合をいう。
【0016】
ポリサッカライドの例として、食品添加物に使用される増粘多糖類を構成する、カラーギナン、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム、タマリンドガム、アミロース、アミロペクチン、アガロース、セルロース、カルボキシメチルセルロース、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0017】
被処理水に含まれるポリマー増粘剤を構成するポリマーの分子量は特に制限されないが、通常、500万〜4000万ダルトン程度の分子量であると増粘剤としての効果が高まり易い。
【0018】
被処理水に含まれるポリマー増粘剤の濃度は特に制限されないが、増粘剤としての効果を得るために、原油等を回収する場では1000mg/L以上の濃度となっている。これが随伴水として地上に汲上げられるまでには、周辺の随伴水(地下水)により希釈されるため、被処理水のポリマー増粘剤の濃度は500mg/L程度、もしくはそれ以下となる場合が多い。被処理水に含まれるポリマー増粘剤の濃度が50mg/L以上であると、本実施形態による処理効果が充分に発揮され得る。
【0019】
上記濃度範囲でポリマー増粘剤を含む被処理水であると、従来方法では油分除去が困難になる場合が多いが(後述する比較例を参照)、本実施形態の水処理方法によれば、容易に油分を除去することができる(後述する実施例を参照)。
【0020】
ポリマー増粘剤を含む被処理水の初期粘度は特に制限されず、例えば、0.9〜5.0cP程度の粘度の被処理水において、本実施形態の水処理方法は充分に効果が発揮され得る。ここで、初期粘度は、Mアルカリ度を調整する前の被処理水の粘度であり、単位cPはセンチポアズを意味する。なお、1000cPは1Pa・s(パスカル秒)である。
【0021】
被処理水には、油分及びポリマー増粘剤の他に塩類、油分及びポリマー増粘剤以外の有機物、無機物、重金属類等の夾雑成分が含まれていても構わない。これらの夾雑成分が本実施形態の水処理方法による油分除去を妨げる恐れがある場合、当該夾雑成分を除くための脱塩処理等の別の処理を行ってもよいし、当該被処理水を水で希釈することにより夾雑成分による影響を低減してもよい。通常、塩類の濃度が1〜5質量%未満であれば油分除去に対する影響はみられない。
【0022】
本実施形態の水処理方法においては、被処理水のMアルカリ度を低減する前処理工程を行う。ここで、「Mアルカリ度」とは、被処理水に含まれる炭酸(H
2CO
3)、炭酸イオン(CO
32-)、炭酸水素イオン(HCO
3-)、水酸化イオン(OH
-)などの酸を消費する成分の濃度を炭酸カルシウム(CaCO
3)の濃度で表した値(単位:mgCaCO
3/L)である。
【0023】
被処理水の初期のMアルカリ度は、ポリマー増粘剤及び含まれ得る夾雑成分の影響によって、100mgCaCO
3/L以上であることが多く、150〜1600mgCaCO
3/Lの範囲であることが多い。本実施形態の水処理方法においては、夾雑成分の濃度にもよるが、被処理水のMアルカリ度を、100mgCaCO
3/L以下に低減することが好ましく、70mgCaCO
3/L以下に低減することがより好ましく、0mgCaCO
3/Lに低減することが更に好ましい。被処理水のMアルカリ度の下限値は特に制限されず、0mgCaCO
3/Lにまで低減させてもよい。
【0024】
被処理水のMアルカリ度を低減させる方法としては、例えば、酸を添加する方法、曝気する方法が挙げられる。これらの方法のうち酸を添加する方法が容易かつ効果的であるため好ましい。曝気することによって被処理水から炭酸を抜くことによってもMアルカリ度を低減することは可能であるが、油分が揮発して爆発や火災が起こることや、装置の酸化や腐食を避けるために窒素ガスを使用することが望ましい。窒素ガスで曝気する場合、被処理水を大量に処理することが現実的には難しくなることがある。一方、酸を添加して被処理水を撹拌することによりMアルカリ度を低減する場合には、大量の被処理水を一括して処理することができる。
【0025】
添加する酸の種類は特に制限されず、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。これらの酸のうち、被処理水を自然環境に返送する最終処分において環境負荷が比較的少ない無機酸が好ましく、塩酸がより好ましい。
【0026】
添加する酸の量は特に制限されず、酸を被処理水に添加して撹拌するとともに、当該被処理水のMアルカリ度を測定し、目的の値にまで低減するために必要な量を徐々に添加する方法が好ましい。酸を大過剰に添加すると被処理水のpHが極端に低下して、被処理水の取り扱いが難しくなる場合があるので、必要最小量の酸を添加することが好ましい。必要最小量の酸を徐々に添加した場合、酸は被処理水に含まれる炭酸、炭酸イオン、炭酸水素イオン、水酸化イオンによって消費されるため、被処理水のpHの低下は抑制される傾向がある。したがって、Mアルカリ度を低減するための酸の添加は、被処理水のpHを低下させる目的で酸を滴下することとはその意義が異なる。
【0027】
酸を添加して所定のMアルカリ度に達した被処理水のpHは特に制限されないが、油分のフロック化を妨げず、被処理水の取り扱いが容易なpH範囲として、pH6.5〜8.0の範囲であることが好ましい。pHの調整方法は特に制限されず、例えば、塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液の滴下する公知方法によって調整することができる。
【0028】
被処理水のMアルカリ度は公知の測定器、測定試薬で測定することができる。例えば、(株)共立理化学研究所製のドロップ・テスト(品番:WAD−AL−M)を使用した滴定分析によって、被処理水のMアルカリ度を簡易に測定することができる。
【0029】
被処理水のMアルカリ度を低減する工程において、被処理水の温度は調整してもよいし、調整しなくてもよい。被処理水のMアルカリ度を低減する際の被処理水の温度は特に制限されず、通常、屋外環境そのままの4〜50℃でも行うことができる。
【0030】
被処理水のMアルカリ度を低減した後、凝集剤として、ポリ塩化アルミニウム及び硫酸バンドのうち少なくとも何れか一方を添加することによって、当該被処理水に含まれる油分をフロック化することができる。通常、油分のフロック化に伴って、当該被処理水の濁度を低下させることもできる。
【0031】
ポリ塩化アルミニウム(PAC)の添加量としては、油分含有量や塩類濃度等の水質の違いによって最適値も異なるが、前述した油分含有量及び塩類濃度の範囲であれば、50mg/L〜1000mg/Lが好ましく100mg/L〜1000mg/Lがより好ましく、200mg/L〜400mg/Lが更に好ましく、250mg/L〜400mg/Lが特に好ましく、300mg/L〜400mg/Lが最も好ましい。
上記範囲の下限値以上を添加することによって油分を短い時間で効率的にフロック化し、更に濁度を低下させることができる。一方、上記範囲の上限値を超えて添加しても、油分のフロック化及び濁度の低下に対する寄与は殆ど見られない。
【0032】
硫酸バンド(硫酸アルミニウム)の添加量としては、油分含有量によって最適値も多少異なるが、前述した油分含有量の範囲であれば、100mg/L〜1000mg/Lが好ましく、200mg/L〜400mg/Lがより好ましく、250mg/L〜400mg/Lが更に好ましく、300mg/L〜400mg/Lが特に好ましい。
上記範囲の下限値以上を添加することによって油分を短い時間で効率的にフロック化し、更に濁度を低下させることができる。一方、上記範囲の上限値を超えて添加しても、油分のフロック化及び濁度の低下に対する寄与は殆ど見られない。
【0033】
本実施形態の水処理方法で使用する凝集剤として、比較的低濃度で優れた油分除去率及び濁度低下率を示すことから、PACを使用することが好ましい。PACと共に硫酸バンドを併用することも好ましい。また、本実施形態の水処理方法で使用する凝集剤として、PACと硫酸バンド以外の公知の凝集剤を併用しても構わない。
【0034】
Mアルカリ度を低減した被処理水に所定濃度でPAC及び/又は硫酸バンドを添加した後、穏やかに撹拌することによって、油分のフロック化を促進することができる。凝集剤の添加後、数十秒〜数十分以内、又は数十分〜数時間以内に油分を含むフロックが形成し、濁度も低下する。フロックの平均的な直径は5mm以上になり得る。
【0035】
形成されたフロックを被処理水から除去する方法は特に制限されず、公知の方法が適用できる。例えば、フロックを沈殿させて回収してもよいし、水槽の壁や底にスカムとして吸着させて回収してもよいし、被処理水の上部に浮上させて回収してもよい。
【0036】
油分が除去された被処理水をさらにアンスラサイト、活性炭等と接触させて、フロック化せずに被処理水に残留した有機物質、無機物質等を吸着することによって、より高度に精製された水を得ることができる。
【実施例】
【0037】
[比較例1]
産油国においてケミカル圧入法による石油採掘に使用された、ポリマー増粘剤としてポリアクリルアミドを500mg/Lの濃度で含む石油随伴水(A)を試験液として、種々の濃度になるようにPAC又は硫酸バンドを添加した各試験液における、フロックの形成を調べた。
その結果、
図1Aの写真(上)に示すように、0〜200mg/LでPACを添加した試験液ではフロックが形成されず、石油等の含有物による濁りが観察された。一方、
図1Aの写真(下)に示すように、0〜200mg/Lで硫酸バンドを添加した試験液では、0〜125mg/Lの範囲ではフロックが形成されず、150〜200mg/Lの範囲でフロックが形成された。フロックが形成された試験液においては、フロックが沈殿し、溶液の濁度が低下した(透明度が増した)。
比較例1の結果から、ポリマー増粘剤が含まれる随伴水において、PACによる油分の凝集効果が発揮され難いことが分かった。
【0038】
[比較例2]
ポリマー増粘剤が含まれない石油随伴水を試験液として使用し、比較例1と同様にPAC又は硫酸バンドを0〜350mg/Lの濃度で添加した結果、
図1Bに示すように、硫酸バンドよりもPACの凝集効果が高かった。このことから、ポリマー増粘剤が含まれる随伴水(比較例1)の処理方法は、ポリマー増粘剤が含まれない随伴水(比較例2)の処理方法とは区別して考える必要があることが分かる。
【0039】
[比較例3]
前記石油随伴水(A)を試験液として、250,300,350,400mg/Lの各濃度でPAC又は硫酸バンドを添加した各試験液における、濁度(FTU)を調べた。
その結果、
図2のグラフに示すように、250mg/Lで添加した場合はいずれの凝集剤を添加した場合にも濁度が100以上(グラフの欄外)であったが、PACを添加した試験液よりも硫酸バンドを添加した試験液の方が低い濁度を示していた。また、300mg/Lで添加した場合はPAC添加の方が低い濁度を示し、350mg/Lで添加した場合は硫酸バンド添加の方が低い濁度を示し、400mg/Lで添加した場合はいずれの凝集剤を添加した場合も、濁度はほぼゼロになった。
比較例3の結果から、ポリマー増粘剤が含まれる随伴水において、300mg/L以上でPAC及び硫酸バンドを添加した場合には、いずれの凝集剤を添加した場合にも目視でも確認できる程度に濁度の低下が起こることが分かった。
【0040】
[比較例4]
前記石油随伴水(A)を試験液として、250,300,350,400mg/Lの各濃度でPAC又は硫酸バンドを添加した各試験液における、油分除去率(%)を調べた。
その結果、
図3のグラフに示すように、250mg/Lで添加した場合はPACを添加した試験液よりも硫酸バンドを添加した試験液の方が明らかに高い油分除去率を示していた。また、300mg/Lで添加した場合はいずれの凝集剤を添加した場合も同等の高い油分除去率を示し、350,400mg/Lで添加した場合はいずれの凝集剤を添加した場合も、ほぼ完全に油分が除去された。
比較例4の結果から、ポリマー増粘剤が含まれる随伴水において、300mg/L以下でPACを添加した場合には、硫酸バンドと比べて油分除去効果が発揮され難いことが分かった。
【0041】
[実施例1]
前記石油随伴水(A)のMアルカリ度及びpHを測定したところ、145mgCaCO
3/L、
pH=8.2であった。この石油随伴液に塩酸を滴下することにより、Mアルカリ度を70mgCaCO
3/Lへ低下させた石油随伴水(B)を試験液として使用した。石油随伴水(B)のpHは7.6であった。この試験液に、250,300,350,400mg/Lの各濃度でPAC又は硫酸バンドを添加した各試験液における、濁度(FTU)を調べた。
その結果、
図4のグラフに示すように、250mg/Lで添加した場合には両者共に80FTU付近まで濁度が低下しており、300mg/L以上で添加した場合には明らかにPAC添加の方が濁度の低下が促進された。
実施例1と比較例3の結果を比較すると、被処理水である石油随伴水のMアルカリ度を予め低減しておくことにより、PAC及び硫酸バンドの何れを添加した場合にも低濃度の添加で濁度の低下が促進され、特にPAC添加の場合に濁度低下の格別顕著な促進効果が見られた。また、Mアルカリ度を低減した被処理水においては、硫酸バンドとPACの効果の発現率が逆転することが分かった。
【0042】
[実施例2]
実施例1でMアルカリ度を低減した石油随伴水(B)を試験液として使用した。この試験液に、250,300,350,400mg/Lの各濃度でPAC又は硫酸バンドを添加した各試験液における、油分除去率(%)を調べた。
その結果、
図5のグラフに示すように、250mg/L以上で添加した場合には明らかにPAC添加の方が油分除去を促進していた。
実施例2と比較例4の結果を比較すると、被処理水である石油随伴水のMアルカリ度を予め低減しておくことにより、PAC及び硫酸バンドの何れを添加した場合にも低濃度の添加で濁度の低下が促進され、特にPAC添加による油分除去が格別顕著に促進されることが分かった。また、Mアルカリ度を低減した被処理水においては、硫酸バンドとPACの効果の発現率が逆転することが分かった。
【0043】
<濁度の測定方法>
被処理水の濁度の測定は、デジタル濁度計(型番:HI 93703;ハンナ インスツルメンツ・ジャパン社製)を使用して行った。
【0044】
<油分除去率の測定方法>
被処理水の油分濃度の測定は、まず抽出溶媒(型番:H-997;堀場製作所社製)と被処理水を混合して激しく撹拌することによって、抽出溶媒中に抽出された油分量をフーリエ変換赤外分光光度計(型番:FTIR-8400、島津製作所社製)を使用して測定することによって行った。FTIRによる油分濃度の測定においては、A重油を標準物質として作成した検量線を使用した。検量線の作成は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第六条第一項第四号に規定する海洋投入処分を行うことができる産業廃棄物に含まれる油分の検定方法(平四環庁告四五・平五環庁告一〇〇・平七環庁告八六・一部改正)」に準拠して行った。
【0045】
<Mアルカリ度の測定方法>
被処理水の油分濃度の測定は、簡易測定キット(型番:WAD-AL-M;共立理化学研究所社製)を使用して行った。本簡易測定キットの測定精度が充分に高いことを、予めMアルカリ度が分かっている標準液で確認した。
【0046】
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。