特許第6296303号(P6296303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296303
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】半導体電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/04 20060101AFI20180312BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20180312BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20180312BHJP
【FI】
   H02M7/04 B
   H02M7/48 Z
   H02M7/04 D
   H02M1/00 R
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-103425(P2015-103425)
(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公開番号】特開2016-220416(P2016-220416A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中島 健裕
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴悠
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−213532(JP,A)
【文献】 特開2015−65747(JP,A)
【文献】 特開2014−78542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/04
H02M 1/00
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器と半導体ユニットを内部に収容する内部空間を有する筐体と、
正面側に前記半導体ユニットを収納する半導体ユニット収納室と背面側に前記変圧器を収納する変圧器収納室とを形成するように前記内部空間内の前後を仕切る仕切部と、
前記変圧器収納室内の下側に配置され、前記変圧器の下側の一部を収容し、前記変圧器の内側と連通する風洞を形成する隔壁部と、
前記隔壁部に形成される正面側開口部と、
前記仕切部に形成され、前記半導体ユニット収納室と前記変圧器収納室とを連通させる上側開口部と、
前記隔壁部の前記正面側開口部と対向するように前記仕切部に形成され、前記半導体ユニット収納室と前記風洞とを連通させる下側開口部と、
前記筐体の上側に設置され、前記変圧器収納室の上側から排気する排気ファンと、
を有し、前記半導体ユニット収納室へ取り込まれた冷却空気は、第一のルートと第二のルートに分かれて流れ、
前記第一のルートでは、前記半導体ユニットの内側に形成される流路を通過して冷却しつつ流れ、前記上側開口部を通じて前記半導体ユニット収納室から前記変圧器収納室へ流れ、前記変圧器の外側を冷却してから前記排気ファンにより前記変圧器収納室から排気され、
前記第二のルートでは、前記半導体ユニット収納室、前記下側開口部および前記正面側開口部を経て前記風洞へ流れ、前記変圧器の内側を冷却してから前記変圧器収納室へ流れ、前記排気ファンにより前記変圧器収納室から排気されることを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体電力変換装置において、
前記第一のルートでは、前記半導体ユニットから排気した冷却空気を前記上側開口部で流速を上げつつ排気し、この冷却空気を前記半導体ユニットの後ろに存在する前記変圧器の外側に当てるように噴射して冷却することを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体電力変換装置において、
前記第一のルートでは、前記半導体ユニットの後ろで前記変圧器が不存在の箇所に前記上側開口部から一定距離を隔てて板状の遮蔽部を設置し、前記上側開口部から噴出される冷却空気の流速の均一化を図りつつ、前記遮蔽部に沿って冷却空気を流して前記変圧器の外側に当てるように冷却空気の流れを集約させることを特徴とする半導体電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器および半導体ユニットを筐体内に収納する半導体電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却機能を有する半導体電力変換装置の先行技術が、例えば、特許文献1(特開2007−74865号公報)に開示されている。この先行技術について、図を参照しつつ説明する。図6は、特許文献1の記載に基づく半導体電力変換装置であり、図6(a)は左側面から視た内部構造図、図6(b)は正面から視た内部構造図である。この電力変換装置100は、筐体101、変圧器102、半導体ユニット103、制御・出力盤104、排気ファン105を備える。
【0003】
図6(b)で示すように、正面から視て、筐体101の内部右側に制御・出力盤104が配置される。また、図6(a),(b)で示すように、筐体101の内部左側の中段に敷設した仕切板101aが、残る内部空間を上下に仕切って、下側空間101bおよび上側空間101cを形成する。下側空間101bに変圧器102が配置される。また、上側空間101cに、図6(b)の正面から視て二列三段の半導体ユニット103が配置される。
【0004】
この仕切板101aの背面側に、導風口101dが形成される。そして、下側空間101bの一部であって変圧器102の背面側の空間である下側風洞101eと、上側空間101cの一部であって半導体ユニット103の背面側の空間である上側風洞101fと、が導風口101dにより連通する。筐体101の正面には図示しない扉部が形成され、この扉部には図示しない吸気口が形成されている。
【0005】
変圧器102の冷却について、図示しない扉部前面の吸気口から冷却空気を取り込み、その冷却空気は、図6(a)の一点鎖線で示す矢印の方向に流れる。冷却空気は、変圧器102の表面に沿って流れて変圧器102を冷却し、下側風洞101eまで流れる。下側風洞101e内の暖められた空気は、導風口101dを通じて、上側風洞101fへ流れる。
【0006】
また、半導体ユニット103の冷却について、図示しない扉部前面の吸気口から冷却空気を取り込み、その冷却空気は、図6(a)の破線で示す矢印のように流れる。冷却空気は、半導体ユニット103の下部に配置した冷却フィン部103aを通過し、半導体ユニット103の内側を冷却して上側風洞101fへ流れる。上側風洞101f内の温められた空気は、排気ファン105により排気され、排熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−74865号公報(段落番号[0006]〜[0009]、図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この先行技術の半導体電力変換装置の電圧および容量を大きくすると、新たに以下(1)〜(3)の問題が生ずることが知見された。
【0009】
(1)半導体電力変換装置の大型化
半導体電力変換装置100の電圧および容量を大きくする場合、変圧器102および半導体ユニット103も大型化する。半導体電力変換装置100は、変圧器102および半導体ユニット103を上下に配置していることから、特に筺体101の高さが増大し、半導体電力変換装置100を機械的に安定して設置できないという問題の発生が予想される。また、高さ寸法の増大により機械室等に設置できないという問題の発生が予想される。半導体電力変換装置の電圧および容量を大きくする場合でも、半導体電力変換装置を安定して設置できるような小型の構造を目指すという課題については着目されていなかった。
【0010】
(2)排気ファンの大型化
半導体電力変換装置100の電圧および容量を増加する場合、冷却機能を高めるため、排気ファン105の容量も増加する必要がある。しかしながら、この場合に排気ファン105の形状が大型化するため、筐体101上に安定して設置できないという別の問題の発生が予想される。排気ファンの容量を大きくする場合でも、半導体電力変換装置を安定して設置できるような小型の構造を目指すという課題については着目されていなかった。
【0011】
(3)排熱の困難性
半導体電力変換装置100は、排熱のための導風口101dの通風路断面積が、スペースの制限のため小さく、変圧器102を積極的に冷却する能力が低かった。変圧器102の大型化により損失が大きくなると特に下側風洞101eや上側風洞101f内の温度が高くなり、効率的な冷却が困難になる。効率的な冷却が可能ならば、排気ファンの容量を小さくすることも可能になる。このような半導体電力変換装置の電圧および容量を大きくする場合でも、変圧器および半導体ユニットを効率的に冷却して温度上昇を抑える構造を目指すというという課題については着目されていなかった。
【0012】
そこで、本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、変圧器および半導体ユニットを効率的に冷却する小型で安定的な構造を採用し、容量および電圧をより大きくする半導体電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、
変圧器と半導体ユニットを内部に収容する内部空間を有する筐体と、
正面側に前記半導体ユニットを収納する半導体ユニット収納室と背面側に前記変圧器を収納する変圧器収納室とを形成するように前記内部空間内の前後を仕切る仕切部と、
前記変圧器収納室内の下側に配置され、前記変圧器の下側の一部を収容し、前記変圧器の内側と連通する風洞を形成する隔壁部と、
前記隔壁部に形成される正面側開口部と、
前記仕切部に形成され、前記半導体ユニット収納室と前記変圧器収納室とを連通させる上側開口部と、
前記隔壁部の前記正面側開口部と対向するように前記仕切部に形成され、前記半導体ユニット収納室と前記風洞とを連通させる下側開口部と、
前記筐体の上側に設置され、前記変圧器収納室の上側から排気する排気ファンと、
を有し、前記半導体ユニット収納室へ取り込まれた冷却空気は、第一のルートと第二のルートに分かれて流れ、
前記第一のルートでは、前記半導体ユニットの内側に形成される流路を通過して冷却しつつ流れ、前記上側開口部を通じて前記半導体ユニット収納室から前記変圧器収納室へ流れ、前記変圧器の外側を冷却してから前記排気ファンにより前記変圧器収納室から排気され、
前記第二のルートでは、前記半導体ユニット収納室、前記下側開口部および前記正面側開口部を経て前記風洞へ流れ、前記変圧器の内側を冷却してから前記変圧器収納室へ流れ、前記排気ファンにより前記変圧器収納室から排気される半導体電力変換装置とした。
【0014】
また、この発明の半導体電力変換装置は、前記第一のルートでは、前記半導体ユニットから排気した冷却空気を前記上側開口部で流速を上げつつ排気し、この冷却空気を前記半導体ユニットの後ろに存在する前記変圧器の外側に当てるように噴射して冷却することが好ましい。
【0015】
また、この発明の電力変換装置は、前記第一のルートでは、前記半導体ユニットの後ろで前記変圧器が不存在の箇所に前記上側開口部から一定距離を隔てて板状の遮蔽部を設置し、前記上側開口部から噴出される冷却空気の流速の均一化を図りつつ、前記遮蔽部に沿って冷却空気を流して前記変圧器の外側に当てるように冷却空気の流れを集約させることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、変圧器および半導体ユニットを効率的に冷却する小型で安定的な構造を採用し、容量および電圧をより大きくする半導体電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を実施するための形態の半導体電力変換装置の正面図である。
図2】本発明を実施するための形態の半導体電力変換装置のうち排気ファン、扉および制御部扉を取り外して正面から視た内部構造図である。
図3】本発明を実施するための形態の半導体電力変換装置のうち天板および排気ファンを取り外して平面から視た内部構造図である。
図4】本発明を実施するための形態の半導体電力変換装置のうち排気ファン、扉、半導体ユニットおよび制御部扉を取り外して正面から視た内部構造図である。
図5】本発明を実施するための形態の半導体電力変換装置のうち側壁を取り外して左側面から視た内部構造図である。
図6】先行技術の半導体電力変換装置であり、図6(a)は左側面から視た内部構造図、図6(b)は正面から視た内部構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、本発明を実施するための形態に係る半導体電力変換装置について、図を参照しつつ以下に説明する。まず、本形態の半導体電力変換装置1が備える構成について説明する。この電力変換装置1は、外観としては図1で示すように、筐体2、制御部3、排気ファン4、扉5、吸気口6を備える。
【0019】
直方体であって堅牢な構造体である筐体2の前面に、二枚の扉5は開閉可能に構成される。これら扉5の前面にグリル状に開口された吸気口6が形成される。筐体2の上側には半導体電力変換装置1の内部から空気を排気する排気ファン4が配置される。排気ファン4が稼働すると、冷却空気として外気が吸気口6を通じて半導体電力変換装置1内に吸い込まれ、後述する半導体電力変換装置1内の第一,第二のルートを経て、排気ファン4から排気される。
【0020】
また、その内部では、図2図3図5で示すように半導体ユニット7を、図3図5で示すように変圧器8、隔壁10、半導体ユニット収納室11、変圧器収納室12を、図3図4図5で示すように仕切部9を、図5で示すように遮蔽部13、台座部14、風洞15を備える。
【0021】
半導体電力変換装置1は、図1で示すように、正面から視て、筐体2の内部右側に制御3が配置される。制御部3の中は複数の制御機器で構成されている。また、図3図4図5で示すように、仕切部9が、残る内部空間の前後を仕切るように敷設され、半導体ユニット収納室11および変圧器収納室12を形成する。半導体電力変換装置1の内部構成は、図2図3図5に示すように、半導体ユニット収納室11に正面から視て五列三段(特に図2参照)の半導体ユニット7が、また、変圧器収納室12に変圧器8が配置される。
【0022】
半導体ユニット7は、図2で示すように、冷却フィン7a、電解コンデンサ7bを備える。半導体ユニット7は、例えば、IGBT(絶縁形バイポーラトランジスタ)などの半導体スイッチング素子や、電解コンデンサ7bその他発熱量が大きい電子素子を含む電力変換回路であり、この電力変換回路が冷却フィン7aに集中的に取り付けられて、ユニット化されている。冷却フィン7aと電解コンデンサ7bは流路(図5参照)内に配置されており、これら流路を冷却空気が通過する。このような半導体ユニット7が、三段積みであってU,V,Wの三相分にわたり収納されている。
【0023】
仕切部9に、図4で示すような、冷却フィン用開口部9aおよび電解コンデンサ用開口部9bが形成されている。冷却フィン用開口部9aおよび電解コンデンサ用開口部9bは、本発明の上側開口部である。冷却フィン用開口部9aおよび電解コンデンサ用開口部9bはそれぞれ半導体ユニット7と同じ数(本形態ではそれぞれ15個)が形成される。冷却フィン用開口部9aおよび電解コンデンサ用開口部9bは、半導体ユニット収納室11と変圧器収納室12とを連通させ、冷却空気が流通する。正面の吸気口6から取り込まれた冷却空気は、半導体ユニット収納室11の半導体ユニット7の内側を流れ、これら冷却フィン用開口部9aおよび電解コンデンサ用開口部9bを通り、変圧器収納室12に流れる。
【0024】
また、この仕切部9に、図4で示すような、変圧器一次巻線用開口部9cも形成されている。変圧器一次巻線用開口部9cは本発明の下側開口部である。後述するが、隔壁10の前側開口部10cと対向するように形成される。
【0025】
図5で示すように、変圧器収納室12では、仕切部9の背面側に、変圧器8が設置されている。変圧器8は、台座部14により下側で支持されている。変圧器8は例えば三相式変圧器であり、上側と下側に鉄心8aの一部が位置する。この変圧器8も発熱ユニットである。変圧器8は重量物であるため下部に配置され、また、比較的保守の必要がないとの理由で背面側の変圧器収納室12に配設される。
【0026】
隔壁10は、上板10a、縦板10b、前側開口部10cを有し、隔壁10により区画されて変圧器下部の空間である風洞15を形成する。隔壁10の前側の縦板10bは、仕切部9と対向(または接触)し、また、上板10aの背面側の端部は筺体2の背面内壁と接触する。また、隔壁10の左右両端にも図示しない仕切板が形成されており、風洞15の区画に利用される。
【0027】
この風洞15内に変圧器8の鉄心8aが位置する。隔壁10の上板10aは、巻線直下の平面方向に取り付けられる仕切板であり、この上板10aに孔が開いている。この孔は、例えば、鉄心8aが通過する孔であり、また、変圧器8内部の一次巻線へ冷却空気が到達するような孔である。巻線はU,V,Wと3つあり、これらにそれぞれ到達するように孔が形成されている。変圧器一次巻線用開口部9cより取り込まれた空気は、前側開口部10cを経て風洞15へ流れ、下側の鉄心8aを冷却し、この風洞15から孔を通じて変圧器8の一次巻線の内側を通過し、上側の鉄心8aを冷却し、最終的に変圧器収納室12へ流れる。
【0028】
続いて冷却空気の流れについて説明する。半導体ユニット収納室11へ吸気された冷却空気の流れは、図5の一点鎖線の矢印で示される第一のルート、および、破線の矢印で示される第二のルート、の二通りとなる。
【0029】
第一のルートは、半導体ユニット7を経由する上側を流れるルートである。正面の扉5の吸気口6より取り込まれた冷却空気は、一点鎖線の矢印のように半導体ユニット7の冷却フィン部7aおよび電解コンデンサ部7bが配置された流路を流れて半導体ユニット7の内側を冷却する。そして、冷却空気は、仕切部9の冷却フィン用開口部9aおよび電解コンデンサ用開口部9bを通って変圧器収納室12へ流入する。この流入した冷却空気は、変圧器8の二次巻線の前側を冷却する。そして、変圧器8の背面側へ回り込み二次巻線の後側も冷却する。そして冷却空気は、二次巻線の全表面を冷却しつつ変圧器収納室12を上方向に流れ、排気ファン4を通じて筺体2の外部へ排気され、排熱が行われる。
【0030】
ここで半導体ユニット7から排出される冷却空気は、仕切部9の冷却フィン用開口部9aおよび電解コンデンサ用開口部9bを通過する。これら開口部は比較的通風路断面積が小さい孔であり、通過時に冷却空気の流速が高められ、その冷却空気が変圧器8の二次巻線の表面に直接当たる。この速い流れの冷却空気が熱を効率的に奪い、冷却効率を向上させることができる。
【0031】
また、本形態では遮蔽部13を設けている。変圧器8の高さが筺体2に対して低い場合、仮に遮蔽部13がないと、上段の半導体ユニット7から排出される冷却空気は変圧器8の二次巻線を冷却することなく直接排気ファン4により排気されてしまう。変圧器8を効率的に冷却するために半導体ユニット7が排出した冷却空気はできる限り変圧器8に向けて噴射したい。そこで、板状の遮蔽部13を設けて冷却空気が流れる方向を変え、変圧器8へ向けて流すようにした。これにより、冷却フィン用開口部9aおよび電解コンデンサ用開口部9bを通過する全ての冷却空気が変圧器8を冷却するので冷却効率を高めている。
【0032】
また、仮に上段の半導体ユニット7の後ろ側に遮蔽部13がないと、上段の冷却フィン用開口部9aおよび電解コンデンサ用開口部9bを通過する冷却空気は、中段と下段と比較して、風速が上昇して多量の冷却空気が流れ、冷却バランスが悪くなるおそれがある。本発明では冷却空気を流れにくくする板状の遮蔽部13を上段の半導体ユニット7の後ろ側に設けたため、上中下段の全ての冷却フィン用開口部9aおよび電解コンデンサ用開口部9bを通過する冷却空気の風速が等しくなるように機能させ、冷却バランスを偏らせないようにしている。
【0033】
第二のルートは、半導体ユニット7を経由しないで下側を流れるルートである。吸気口6から取り込まれた冷却空気は、変圧器一次巻線用開口部9cおよび前側開口部10cを通過して、変圧器下部の風洞15へ流入する。下側の鉄心8aを冷却し、変圧器8の一次巻線の内側を冷却空気が通過して冷却し、上側の鉄心8aを冷却して、変圧器収納室12へ流れ、排気ファン4を通じて筺体2の外部へ排気され、排熱が行われる。この冷却空気は半導体ユニット7を通らないため、温められていない冷却空気であり、変圧器8の内側の一次巻線を効率的に冷却することが可能である。
【0034】
以上、本発明の半導体電力変換装置1について説明した。この半導体電力変換装置1によれば、半導体ユニット7と変圧器8とを前後方向に並べて同一筺体2に収納する。これにより、特に高さが低い装置となって小型化が実現し、排気ファン4、半導体ユニット7および変圧器8が大型になった場合でも不安定になって倒れるおそれが低減され、安定化を実現した。
【0035】
また、この半導体電力変換装置1によれば、第一のルートで冷たい冷却空気により半導体ユニット7を冷却し、かつ第二のルートで冷たい冷却空気により変圧器8を冷却しており、半導体ユニット7および変圧器8の冷却効果が高まり、半導体電力変換装置1の容量の増加または過負荷耐量を高めることができる。
【0036】
また、変圧器8の冷却空気が、変圧器8の外側(二次巻線)を冷却する第一のルートと、変圧器8の内側(一次巻線)を冷却する第二のルートと、に分けられている。第一のルートでは、半導体ユニット7を経由して暖められているが、通風路断面積が狭い冷却フィン用開口部9aおよび電解コンデンサ用開口部9bを経由したことにより、流速が速くなった冷却空気を変圧器8の二次巻線に当てることで二次巻線の冷却効率を向上させている。第二のルートでは、変圧器8の特に温度が上昇しやすい内側を冷たい冷却空気が効率的に排熱して一次巻線の冷却効果を高めている。
【0037】
また、半導体ユニット7と変圧器8とを冷却するための排気ファン4や吸気口6を共通構成としており、少ない部品点数で効率的に冷却空気を導入することができ、小型化にも寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の半導体電力変換装置は、変圧器と半導体ユニットを用いる装置であって、例えば、交流電力を直流電力に変換するコンバータや、直流電力を所望の電圧と周波数の交流電力に変換するインバータなどの装置に適用可能とし、広範囲な利用を期待できる。
【符号の説明】
【0039】
1:半導体電力変換装置
2:筐体
3:制御部
4:排気ファン
5:扉
6:吸気口
7:半導換ユニット
7a:冷却フィン
7b:電解コンデンサ
8:変圧器
8a:鉄心
9:仕切部
9a:冷却フィン用開口部
9b:電解コンデンサ用開口部
9c:変圧器一次巻線用開口部
10:隔壁
10a:上板
10b:前板
10c:前側開口部
11:半導体ユニット収納室
12:変圧器収納室
13:遮蔽部
14:台座部
15:風洞
図1
図2
図3
図4
図5
図6