(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水素ガスの通過が可能な管体が螺旋状に巻回された管体巻回部を有する伝熱コイルと、熱媒液の通過が可能に筒状に形成されると共に前記伝熱コイルが収容された容器体とを備え、前記水素ガスと前記熱媒液とが前記容器体内において相互に熱交換可能に構成された熱交換器であって、
前記管体で構成された連結部を介して複数の前記伝熱コイルが連結されて前記水素ガスの通過が可能な水素ガス流路が構成されると共に、当該水素ガス流路における一端部から他端部までの間が端面溶接によって相互に連結された複数の前記管体で一体的に構成され、かつ当該水素ガス流路を構成する当該各管体における当該端面溶接による連結部位が直線状に形成されている熱交換器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、出願人が開示している熱交換器、およびその熱交換器を備えた冷却装置には、以下のような改善すべき課題が存在する。すなわち、出願人が開示している熱交換器では、外側伝熱コイル、接続用配管および内側伝熱コイルを継手(接続金具)によって相互に連結することによって冷却対象の水素ガスを通過させる水素ガス流路が構成されている。
【0007】
この場合、出願人が開示している熱交換器では、各伝熱コイルや接続用配管の製作に際して管体の端部に傷付きや変形が生じることのないように作業を行い、かつ組立てに際しても、接続部位(管体の端部および継手)への異物の付着や傷付きの発生を回避しつつ、継手の締め付けトルクを厳格に管理することにより、接続部位から水素ガスが漏出するのを確実に防止している。しかしながら、冷却装置の設置現場において想定を超える振動や衝撃が熱交換器に対して加えられたときに、継手(接続金具)と管体との間に隙間が生じて水素ガスが漏出する可能性がある。このため、この点を改善するのが好ましい。
【0008】
また、水素ガス冷却装置の構成部品のうち、水素ガス等の高圧の流体に接する部品については、その安全性が確保されているか否かの試験や、規格を満たす部品を使用していることを提示する申請を行う必要がある。このため、水素ガス冷却用の熱交換器に使用可能な継手(水素ガス流路の一部を構成する継手)は非常に高価となっている。したがって、出願人が開示している熱交換器では、継手の部品コストに起因して製造コストの低減が困難となっている現状があるため、この点を改善するのが好ましい。
【0009】
さらに、出願人が開示している熱交換器では、長尺の管体を曲げ加工することで外側伝熱コイルおよび内側伝熱コイルがそれぞれ製作されている。この場合、管体の巻数が多数の管体巻回部を有する伝熱コイルや、巻径が大径の管体巻回部を有する伝熱コイルを製作する際には十分な長さの管体が必要となる。
【0010】
一方、長尺の管体は、その保管時や搬送時の占有スペースを省スペース化するために、巻物の状態で市場に流通している。したがって、長尺の管体を使用して伝熱コイルを製作する際には、管体を所望の形状に曲げ加工するのに先立ち、巻物状態の管体を直線状に曲げ戻してから加熱処理することで巻物状態に復帰しようとする内部応力を除去する前処理が必要となっている。この結果、曲げ加工に先立って実行する前処理の分だけ製造工数が増加しており、また、前処理用の設備も必要となるため、その製造コストの低減が困難となっているため、この点を改善するのが好ましい。
【0011】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、製造コストの低減を図りつつ、水素ガスの漏出を確実に回避し得る熱交換器および水素ガス冷却装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の熱交換器は、水素ガスの通過が可能な管体が螺旋状に巻回された管体巻回部を有する伝熱コイルと、熱媒液の通過が可能に筒状に形成されると共に前記伝熱コイルが収容された容器体とを備え、前記水素ガスと前記熱媒液とが前記容器体内において相互に熱交換可能に構成された熱交換器であって、前記管体で構成された連結部を介して複数の前記伝熱コイルが連結されて前記水素ガスの通過が可能な水素ガス流路が構成されると共に、当該水素ガス流路における一端部から他端部までの間が端面溶接によって相互に連結された複数の前記管体で一体的に構成され
、かつ当該水素ガス流路を構成する当該各管体における当該端面溶接による連結部位が直線状に形成されている。
【0014】
請求項
2記載の熱交換器は、請求項
1記載の熱交換器において、前記伝熱コイルは、前記管体巻回部の巻形が多角形状に形成されている。
【0015】
請求項
3記載の水素ガス冷却装置は、請求項1
または2記載の熱交換器と、前記熱媒液を冷却する冷凍回路とを備え、前記冷凍回路によって冷却された熱媒液と前記水素ガスとを前記熱交換器内において相互に熱交換させることで当該水素ガスを冷却可能に構成されている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の熱交換器では、連結部を介して複数の伝熱コイルが連結されて水素ガス流路が構成されると共に、水素ガス流路における一端部から他端部までの間が端面溶接によって相互に連結された複数の管体で一体的に構成されている。また、請求項
3記載の水素ガス冷却装置では、上記の熱交換器と、熱媒液を冷却する冷凍回路とを備えて水素ガスを冷却可能に構成されている。
【0017】
したがって、請求項1記載の熱交換器、および請求項
3記載の水素ガス冷却装置によれば、振動や衝撃に起因して両伝熱コイルと連結部との連結部位から水素ガスが漏出する状態となるのを好適に回避できるだけでなく、継手(接続金具)を使用せずに水素ガス流路を構成した分だけ、その製造コストを十分に低減することができる。また、巻物状態で市場に流通している長尺の管体を使用せずに、短尺の管体を使用して水素ガス流路を製作することができるため、曲げ加工に先立って行う前処理が不要となる分だけ、その製造コストを一層低減することができる。
【0018】
また、水素ガス流路を構成する各管体における端面溶接による連結部位を直線状に形成したことにより、端面溶接によって連結した連結部位に不要な外力(曲げ加工時に加えられる力)が加わっていないため、振動や衝撃に起因して連結部位から水素ガスが漏出する状態となるのを一層好適に回避できる。
【0019】
請求項
2記載の熱交換器
、およびそのような熱交換器を備えた水素ガス冷却装置によれば、伝熱コイルの管体巻回部の巻形を多角形状としたことにより、管体巻回部に直線状の部位が多数存在するため、管体巻回部を複数の管体で構成する必要があるときに、この直線状の部位において各管体を端面溶接によって連結することで連結部位に不要な外力(曲げ加工時に加えられる力)が加わっていない管体巻回部を製作することができる結果、振動や衝撃に起因して連結部位から水素ガスが漏出する状態となるのを好適に回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、熱交換器および水素ガス冷却装置の実施の形態について説明する。
【0022】
最初に、水素ガス冷却用熱交換器30および水素ガス冷却装置1の構成について、添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1に示す水素ガス給気システム100は、水素ガス燃料電池自動車等の給気対象Xに水素ガスを給気する水素ガスステーション用の設備であって、水素ガス冷却装置1、ガスタンク2およびディスペンサー3などを備えて構成されている。なお、同図では、水素ガス冷却装置1に関する理解を容易とするために、水素ガス給気システム100における水素ガス冷却装置1以外の構成要素に関して、ガスタンク2およびディスペンサー3や、水素ガス配管4a〜4cだけを図示し、その他の構成要素についての図示を省略している。
【0024】
水素ガス冷却装置1は、「水素ガス冷却装置」の一例であって、冷凍回路11、ブラインタンク12、ブライン配管13a〜13d、液送ポンプ14a,14b、制御部15および水素ガス冷却用熱交換器30を備え、「熱媒液」の一例であるブラインを冷却すると共に、冷却したブラインを水素ガス冷却用熱交換器30に供給することにより、水素ガスとブラインとの熱交換によって水素ガスを冷却することができるように構成されている。
【0025】
冷凍回路11は、「冷凍回路」の一例である一元冷凍回路であって、圧縮機21、凝縮器22、膨張弁23および蒸発器24を備え、後述するように、「冷媒」としてのフロンと「熱媒液」としてのブラインとの熱交換によってブラインを冷却することができるように構成されている。なお、実際の冷凍回路11には、回路内の冷媒圧力や冷媒温度を検出するためのセンサ、各種の冷媒バイパス回路、再熱回路、および圧縮機21からフロンと共に排出された潤滑油を圧縮機21に戻す潤滑油配管等の各種の構成要素が配設されているが、水素ガス冷却装置1についての理解を容易とするために、これらの構成要素についての図示および説明を省略する。
【0026】
ブラインタンク12は、後述するように冷凍回路11(蒸発器24)によって冷却されて水素ガス冷却用熱交換器30に供給されるブラインを貯留可能に構成されている。ブライン配管13a,13bは、冷凍回路11の蒸発器24とブラインタンク12とを相互に接続する。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、ブラインタンク12内のブラインがブライン配管13aを介して蒸発器24に供給されて冷却された後に、ブライン配管13bを介してブラインタンク12に案内されることにより、ブラインタンク12と蒸発器24との間をブラインが循環させられる構成が採用されている。
【0027】
ブライン配管13c,13dは、ブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30とを相互に接続する。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、ブラインタンク12内のブラインがブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30に供給されて水素と熱交換させられた後に、ブライン配管13dを介してブラインタンク12に案内されることにより、ブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30との間をブラインが循環させられる構成が採用されている。
【0028】
液送ポンプ14aは、制御部15の制御に従ってブラインタンク12内のブラインを蒸発器24に向けて圧送する。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、液送ポンプ14aがブラインタンク12内のブラインを蒸発器24に圧送することにより、蒸発器24内のブライン(蒸発器24において冷却されたブライン)がブラインタンク12に案内される構成が採用されている。
【0029】
液送ポンプ14bは、制御部15の制御に従ってブラインタンク12内のブラインを水素ガス冷却用熱交換器30に向けて圧送する。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、液送ポンプ14bがブラインタンク12内のブラインを水素ガス冷却用熱交換器30に圧送することにより、水素ガス冷却用熱交換器30内のブラインがブラインタンク12に案内される構成が採用されている。
【0030】
なお、上記の水素ガス冷却装置1の構成に代えて、例えば、「貯液槽(ブラインタンク)」内のブラインを冷凍回路11(蒸発器24)に供給して冷却した後に水素ガス冷却用熱交換器30に直接供給して水素ガスを冷却すると共に、水素ガスの冷却によって温度上昇したブラインを「貯液槽」に回収するように「貯液槽」を配設することもできる(図示せず)。また、大量の水素ガスを連続して冷却する可能性がない環境下、すなわち、大量のブラインを備えている必要がない環境下で使用するときには、「貯液槽(ブラインタンク)」を不要として冷凍回路11(蒸発器24)と水素ガス冷却用熱交換器30との間でブラインを直接循環させる構成を採用することもできる(図示せず)。
【0031】
制御部15は、水素ガス冷却装置1を総括的に制御する。具体的には、制御部15は、冷凍回路11(蒸発器24)によってブラインを冷却するブライン冷却処理の実行時に、冷凍回路11の圧縮機21を制御してブラインの冷却に必要かつ十分な量の冷媒を圧縮させると共に、膨張弁23を制御してブラインの冷却に必要かつ十分な量の冷媒を蒸発器24に供給させる。
【0032】
また、制御部15は、冷凍回路11によるブライン冷却処理と並行して液送ポンプ14aを制御することにより、ブラインタンク12と蒸発器24との間でブラインを循環させてブラインタンク12内のブラインの温度を規定温度(水素ガスの冷却に適した温度)に維持させる。さらに、制御部15は、液送ポンプ14bを制御してブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30との間でブラインを循環させることにより、ガスタンク2からディスペンサー3に向かって移動させられている水素ガスを、水素ガス冷却用熱交換器30においてブラインと熱交換させて冷却させる。
【0033】
一方、水素ガス冷却用熱交換器30は、「熱交換器」の一例であって、
図2に示すように、容器体40および水素ガス配管50を備え、水素ガス配管4bを介してディスペンサー3に接続され、かつ水素ガス配管4cを介して給気対象Xに接続されると共に、ブライン配管13c,13dを介してブラインタンク12に接続されている。この水素ガス冷却用熱交換器30は、ガスタンク2から水素ガス配管4aおよびディスペンサー3を通過して給気対象Xに向かって流動させられる水素ガスをブラインとの熱交換によって予め規定された温度(一例として、−33℃〜−40℃の温度範囲内の温度)まで冷却する。なお、本例では、水素ガス冷却用熱交換器30を水素ガス冷却装置1の構成要素として備えた例について説明するが、水素ガス冷却用熱交換器30を外部機器として「水素ガス冷却装置」に接続して使用することもできる。
【0034】
容器体40は、「容器体」に相当し、一例として、円筒状の筒状部41と、筒状部41の下端部を閉塞する蓋部42b、および筒状部41の上端部を閉塞する蓋部42tと、筒状部41および蓋部42b,42tによって形成される熱交換処理空間S内にブラインを導入するブライン導入部43と、熱交換処理空間Sからブラインを排出するブライン排出部44と、熱交換処理空間S内におけるブラインの流速を上昇させるための増速用シャフト45とを備えている。また、蓋部42tには、水素ガス配管50を貫通させるための貫通金具46,46・・が取り付けられている。
【0035】
この場合、ブライン導入部43は、ブライン配管13cを介してブラインタンク12のブライン排出口に接続されている。また、ブライン排出部44は、ブライン配管13dを介してブラインタンク12のブライン流入口に接続されている。これにより、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、ブライン配管13cを介して供給されるブラインが、ブライン導入部43から熱交換処理空間S内に噴出され、容器体40の熱交換処理空間S内を上向きに移動させられた後に、ブライン排出部44からブライン配管13dを介してブラインタンク12に流入させられる。
【0036】
水素ガス配管50は、「水素ガス流路」を構成する配管であって、内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60o(「複数の伝熱コイル」の一例)が連結部60c(「管体で構成された連結部」の一例)によって相互に連結されて、水素ガス冷却用熱交換器30に対して冷却対象の水素ガスを導入する水素ガス導入部51a(「水素ガス流路における一端部」の一例)から、冷却を完了した水素ガスを排出する水素ガス排出部51b(「水素ガス流路における他端部」の一例)まで水素ガスを流動させることができるように構成されていている(「連結部を介して複数の伝熱コイルが連結されて」との構成の一例)。この場合、水素ガス配管50における水素ガス導入部51aには、接続金具F4を介して水素ガス配管4bが接続されると共に、水素ガス排出部51bには、接続金具F4を介して水素ガス配管4cが接続されている。
【0037】
また、
図2,4に示すように、内側伝熱コイル60iは、一端部(上端部)が水素ガス導入部51aを構成する立下り直線状部61i、一端部(上端部)が立下り直線状部61iの下端部に連結されている管体巻回部62i、および一端部(下端部)が管体巻回部62iの下端部に連結されると共に他端部(上端部)が連結部60cに連結されている立上り直線状部63iを備えている。この場合、
図3に示すように、管体巻回部62iは、管体が螺旋状に巻回されて曲線状部65ciおよび直線状部65siが交互に設けられ、その巻形が平面視四角形状(丸みを帯びた略四角形)に形成されている(「巻形が多角形状」との構成の一例)。
【0038】
さらに、
図2,4に示すように、外側伝熱コイル60oは、一端部(上端部)が連結部60cに連結されている立下り直線状部61o、一端部(上端部)が立下り直線状部61oの下端部に連結されている管体巻回部62o、および一端部(下端部)が管体巻回部62oの下端部に連結されると共に他端部(上端部)が水素ガス排出部51bを構成する立上り直線状部63oを備えている。この場合、
図3に示すように、管体巻回部62oは、管体が螺旋状に巻回されて曲線状部65coおよび直線状部65soが交互に設けられ、その巻形が平面視四角形状(丸みを帯びた略四角形)に形成されている(「巻形が多角形状」との構成の一例)。
【0039】
なお、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図2に示すように、管体巻回部62i,62oの巻回軸方向が容器体40の筒長方向に沿うようにして内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60oが容器体40内に収容されている。また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、外側伝熱コイル60oの管体巻回部62oが内側伝熱コイル60iの管体巻回部62iよりも大径に形成されて外側伝熱コイル60oにおける管体巻回部62oの内側に内側伝熱コイル60iにおける管体巻回部62iが位置するように外側伝熱コイル60oおよび内側伝熱コイル60iが容器体40内に収容されている。
【0040】
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、水素ガス配管50の水素ガス導入部51aから水素ガス排出部51bまでの間(内側伝熱コイル60i、連結部60cおよび外側伝熱コイル60o)が端面溶接によって相互に連結された複数の管体で一体的に構成されている。また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、水素ガス配管50を構成する各管体における端面溶接による連結部位が直線状に形成されている。
【0041】
この水素ガス配管50では、後述するように、内側伝熱コイル60i、外側伝熱コイル60oおよび連結部60cを別個に製作しておき、これらを端面溶接によって相互に連結されて一体化されている。また、本例では、一例として、2m〜4m程度の複数の短管を端面溶接によって連結することで1本の水素ガス配管50が形成されている。
【0042】
次に、水素ガス冷却用熱交換器30の製造方法について説明する。
【0043】
まず、内側伝熱コイル60i、外側伝熱コイル60oおよび連結部60cをそれぞれ製作する。この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60oにおける管体巻回部62i,62oの巻数が多数のため、1本の管体で内側伝熱コイル60iを形成したり、1本の管体で外側伝熱コイル60oを形成しようとしたりした場合には、長尺の管体が必要となる。
【0044】
したがって、内側伝熱コイル60iの製作に際しては、一例として、立下り直線状部61iと、管体巻回部62iにおける上側巻回部62ia(
図4参照)とを1本の管体で構成し、管体巻回部62iにおける下側巻回部62ib(
図4参照)を他の1本の管体で構成し、かつ立上り直線状部63iをさらに他の1本の管体で構成すると共に、これらを端面溶接によって相互に連結することで一体化する。
【0045】
具体的には、立下り直線状部61iおよび上側巻回部62iaを構成する管体を曲げ加工装置(パイプベンダー)にセットし、立下り直線状部61iとする部位を確保して管体巻回部62iの製作を開始させる。この際に、曲げ加工装置は、予め設定された加工情報に従い、曲線状部65ciおよび直線状部65siを交互に形成することによって管体巻回部62iにおける上側巻回部62iaを製作する。また、管体の端部近傍まで加工が進んだときに、曲げ加工装置を停止させ、加工中の管体に、下側巻回部62ibを製作するための管体を端面溶接する。
【0046】
次いで、曲げ加工装置を再稼働させ、上側巻回部62iaの未製作部位および下側巻回部62ibを順次製作させる。これにより、最初の管体(立下り直線状部61iおよび上側巻回部62iaを構成する管体)と、下側巻回部62ibを構成する管体とが、
図4に示す溶接箇所P1iにおいて溶接された状態で管体巻回部62iが製作される。この場合、上記の2本の管体は、管体巻回部62iにおける直線状部65siに溶接箇所P1iが位置するようにそれぞれの長さが予め調整されている。これにより、溶接箇所P1iを曲げ加工することなく管体巻回部62iが製作されて、立下り直線状部61iおよび管体巻回部62iが連結された中間体が完成する。
【0047】
続いて、立上り直線状部63iを構成する管体を上記の中間体における管体巻回部62iに端面溶接する。これにより、上記の下側巻回部62ibを構成する管体と、立上り直線状部63iを構成する管体とが、
図4に示す溶接箇所P2iにおいて溶接された状態となる。この場合、上記の下側巻回部62ibを構成する管体は、水素ガス配管50における直線状の部位(同図に示す破線L2iの範囲内)に立上り直線状部63iとの溶接箇所P2iが位置するように長さが予め調整されている。これにより、溶接箇所P2iを曲げ加工することなく内側伝熱コイル60iが製作される。
【0048】
また、外側伝熱コイル60oの製作に際しては、一例として、立下り直線状部61oと、管体巻回部62oにおける上側巻回部62oa(
図4参照)とを1本の管体で構成し、管体巻回部62oにおける下側巻回部62ob(
図4参照)を他の1本の管体で構成し、かつ立上り直線状部63oをさらに他の1本の管体で構成すると共に、これらを端面溶接によって相互に連結することで一体化する。なお、この外側伝熱コイル60oの製作工程については、上記の内側伝熱コイル60iの製作工程と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0049】
この外側伝熱コイル60oでは、最初の管体(立下り直線状部61oおよび上側巻回部62oaを構成する管体)と、下側巻回部62obを構成する管体とが、
図4に示す溶接箇所P1oにおいて溶接された状態で管体巻回部62oが製作されている。この場合、上記の2本の管体は、管体巻回部62oにおける直線状部65soに溶接箇所P1oが位置するようにそれぞれの長さが予め調整されている。これにより、この外側伝熱コイル60oでは、溶接箇所P1oを曲げ加工することなく管体巻回部62oが製作されている。
【0050】
また、この外側伝熱コイル60oでは、下側巻回部62obを構成する管体と、立上り直線状部63oを構成する管体とが、
図4に示す溶接箇所P2oにおいて溶接された状態となっている。この場合、上記の下側巻回部62obを構成する管体は、水素ガス配管50における直線状の部位(同図に示す破線L2oの範囲内)に立上り直線状部63oとの溶接箇所P2oが位置するように長さが予め調整されている。これにより、この外側伝熱コイル60oでは、溶接箇所P2oを曲げ加工することなく製作されている。
【0051】
次いで、内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60oを連結部60cによって連結する。具体的には、容器体40の蓋部42tに貫通金具46を取り付け、取り付けた貫通金具46を貫通させるようにして内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60oを蓋部42tに組み付ける。
【0052】
この場合、
図5に示すように、貫通金具46は、管体挿通用金具であって、基部71、締込み部72およびシール材73を備えて構成されている。また、基部71には、貫通(挿通)対象の管体(本例では、水素ガス配管50を構成している上記の管体)の外径よりも僅かに大径の挿通孔H71aと、締込み部72をねじ込み可能なねじ孔H71bとが連通形成されると共に、蓋部42tに形成された挿通孔H42にねじ込み可能なねじ山が外周面に形成されている。
【0053】
さらに、締込み部72には、貫通(挿通)対象の管体(本例では、水素ガス配管50を構成している上記の管体)の外径よりも僅かに大径で上記の挿通孔H71aと同径の挿通孔H72が形成されると共に、基部71のねじ孔H71bにねじ込み可能なねじ山が外周面に形成されている。また、シール材73は、基部71(ねじ孔H71b)に対して締込み部72をねじ込むことで圧縮変形可能な耐腐食性材料で環状に形成されている。
【0054】
蓋部42tへの内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60oの組付けに際しては、まず、内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60oの立下り直線状部61i,61oおよび立上り直線状部63i,63oを貫通させるべき位置に形成されている4つの挿通孔H42に貫通金具46の基部71をねじ込む。次いで、蓋部42tの裏面側(後に熱交換処理空間Sとなる側)から各基部71の挿通孔H71aおよびねじ孔H71bに、立下り直線状部61i,61oおよび立上り直線状部63i,63oをそれぞれ挿通させ、その先端部を蓋部42tの表面側(上面側)に大きく突出させる。
【0055】
続いて、突出させた立下り直線状部61i,61oおよび立上り直線状部63i,63oにシール材73および締込み部72をこの順でそれぞれ装着し、シール材73をねじ孔H71b内に嵌め込んだ後に、嵌め込んだシール材73が変形しない程度に締込み部72をねじ孔H71bに軽くねじ込む。この際には、立下り直線状部61i,61oおよび立上り直線状部63i,63oが蓋部42t(貫通金具46)に対して矢印U,Dの向きでスライド可能な状態となっている。
【0056】
次いで、立下り直線状部61iおよび立上り直線状部63oに接続金具F4をそれぞれ装着する。なお、この接続金具F4の装着作業については、以下に説明する内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60oの連結作業の完了後に行うこともできる。
【0057】
続いて、立上り直線状部63iおよび立下り直線状部61oを連結部60cによって連結する。具体的には、連結部60cを構成する管体の一端部を立上り直線状部63iに端面溶接すると共に、連結部60cを構成する管体の他端部を立下り直線状部61oに端面溶接する。これにより、内側伝熱コイル60i(立上り直線状部63i)と連結部60cとが
図2に示す溶接箇所P1aにおいて溶接された状態になると共に、外側伝熱コイル60o(立下り直線状部61o)と連結部60cとが
図2に示す溶接箇所P1bにおいて溶接された状態になる。
【0058】
この場合、連結部60cは、予めU字状に曲げ加工されている。また、上記の立上り直線状部63iを構成する管体は、水素ガス配管50における直線状の部位(同図に示す破線L1iの範囲内)に溶接箇所P1aが位置するように長さが予め調整されている。さらに、上記の立下り直線状部61oを構成する管体は、水素ガス配管50における直線状の部位(同図に示す破線L1oの範囲内)に溶接箇所P1bが位置するように長さが予め調整されている。これにより、溶接箇所P1a,P1bを曲げ加工することなく、内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60oを連結部60cによって相互に連結して一体化させることが可能となっている。
【0059】
次いで、蓋部42tに対して立下り直線状部61i,61oおよび立上り直線状部63i,63oをスライドさせることで蓋部42tに対する管体巻回部62i,62oの位置を調整した後に、各基部71に対して締込み部72をそれぞれ締め込む。この際には、基部71に対する締込み部72の締め込みによってシール材73が変形し、これにより、立下り直線状部61i,61oおよび立上り直線状部63i,63oの外周面と、基部71および締込み部72の内周面とがシール材73によってシーリングされ、かつ矢印U,Dへのスライドが規制されて、蓋部42tに対する内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60oの取付けが完了する。
【0060】
この後、筒状部41の内側に内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60oを位置させるように筒状部41の上端部に蓋部42tを固定する。なお、筒状部41には、蓋部42b、ブライン導入部43およびブライン排出部44が予め固定され、蓋部42tには、増速用シャフト45が予め固定されている。これにより、
図2に示すように、水素ガス冷却用熱交換器30が完成する。
【0061】
この水素ガス冷却装置1では、給気対象Xへの充填(給気)に際して水素ガスを冷却する構成が採用されている。具体的には、水素ガスの充填に際して、一例として、水素ガス給気システム100の主制御装置(図示せず)から水素ガス冷却装置1の制御部15に給気開始信号が出力されたときに、制御部15が、液送ポンプ14bを制御してブラインタンク12から水素ガス冷却用熱交換器30にブラインを供給させる。これにより、冷凍回路11によって予め冷却されてブラインタンク12に貯留されている低温のブラインがブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30に供給される。
【0062】
この結果、ガスタンク2からディスペンサー3を通過して給気対象Xに向かって移動させられる水素ガスが水素ガス冷却用熱交換器30の水素ガス配管50の通過時に熱交換処理空間S内においてブラインと熱交換させられて冷却され、十分に温度低下した水素ガス(一例として、−33℃〜−40℃の温度範囲内の温度の水素ガス)が給気対象Xの燃料タンク(ガスタンク)内に充填される。これにより、給気対象Xへの水素ガスの充填効率を十分に向上させることができる。
【0063】
このように、この水素ガス冷却用熱交換器30では、連結部60cを介して内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60oが連結されて「水素ガス流路(水素ガス配管50)」が構成されると共に、「水素ガス流路」における水素ガス導入部51aから水素ガス排出部51bまでの間が端面溶接によって相互に連結された複数の管体で一体的に構成されている。また、この水素ガス冷却装置1では、上記の水素ガス冷却用熱交換器30と、「熱媒液」としてのブラインを冷却する冷凍回路11とを備えて水素ガスを冷却可能に構成されている。
【0064】
したがって、この水素ガス冷却用熱交換器30および水素ガス冷却装置1によれば、振動や衝撃に起因して内側伝熱コイル60i、外側伝熱コイル60oおよび連結部60cの連結部位から水素ガスが漏出する状態となるのを好適に回避できるだけでなく、継手(接続金具)を使用せずに水素ガス配管50を構成した分だけ、その製造コストを十分に低減することができる。また、巻物状態で市場に流通している長尺の管体を使用せずに、短尺の管体を使用して水素ガス配管50を製作することができるため、曲げ加工に先立って行う前処理が不要となる分だけ、その製造コストを一層低減することができる。
【0065】
また、この水素ガス冷却用熱交換器30および水素ガス冷却装置1によれば、「水素ガス流路」を構成する各管体における端面溶接による連結部位を直線状に形成したことにより、端面溶接によって連結した連結部位に不要な外力(曲げ加工時に加えられる力)が加わっていないため、振動や衝撃に起因して連結部位から水素ガスが漏出する状態となるのを一層好適に回避できる。
【0066】
さらに、この水素ガス冷却用熱交換器30および水素ガス冷却装置1によれば、内側伝熱コイル60iおよび外側伝熱コイル60oにおける管体巻回部62i,62oの巻形を多角形状としたことにより、管体巻回部62i,62oに直線状部65si,65soが多数存在するため、管体巻回部62i,62oを複数の管体で構成する必要があるときに、この直線状部65si,65soにおいて各管体を端面溶接によって連結することで連結部位に不要な外力(曲げ加工時に加えられる力)が加わっていない管体巻回部62i,62oを製作することができる結果、振動や衝撃に起因して連結部位から水素ガスが漏出する状態となるのを好適に回避できる。
【0067】
なお、「熱交換器」および「水素ガス冷却装置」の構成は、上記の水素ガス冷却用熱交換器30および水素ガス冷却装置1の構成の例に限定されない。例えば、水素ガス導入部51aから水素ガス排出部51bまで1本の水素ガス配管50で「水素ガス流路」を構成した例について説明したが、水素ガスの「導入部」に「分岐部」を設けると共に水素ガスの「排出部」に「合流部」を設けることにより、「導入部」と「排出部」との間に複数本の「水素ガス流路」を並列的に設けることもできる(図示せず)。このような構成を採用する場合においても、各「水素ガス流路」における一端部および他端部の間を構成する各管体を端面溶接によって連結することにより、上記の水素ガス冷却用熱交換器30と同様の効果を奏することができる。
【0068】
また、平面視四角形状の管体巻回部62iを備えた内側伝熱コイル60i、および平面視略四角形状の管体巻回部62oを備えた外側伝熱コイル60oを連結部60cによって連結した水素ガス配管50を備えた構成を例に挙げて説明したが、「管体巻回部」の巻形は、上記の四角形状に限定されず、任意の多角形状(三角形状、または五角形以上の任意の多角形状)とすることができる。また、「管体巻回部」を複数の管体で構成しない場合には、平面視円形状や平面視楕円形状に形成することもできる。さらに、「管体巻回部」を複数の管体で構成する場合においても管体の連結部位が直線状であれば、他の部位の巻形については多角形以外の任意の形状とすることができる。
【0069】
また、立下り直線状部61iおよび上側巻回部62iaを1本の管体で形成し、その管体に別の管体を端面溶接して下側巻回部62ibを形成し、下側巻回部62ib(管体巻回部62i)に立上り直線状部63iを端面溶接することで形成した内側伝熱コイル60iや、立下り直線状部61oおよび上側巻回部62oaを1本の管体で形成し、その管体に別の管体を端面溶接して下側巻回部62obを形成し、下側巻回部62ob(管体巻回部62o)に立上り直線状部63oを端面溶接することで形成した外側伝熱コイル60oを備えた構成について説明したが、別個に形成した上側巻回部62ia(管体巻回部62i)に端面溶接によって立下り直線状部61iを連結したり、別個に形成した上側巻回部62oa(管体巻回部62o)に端面溶接によって立下り直線状部61oを連結したり、下側巻回部62ibおよび立上り直線状部63iを1本の管体で形成したり、下側巻回部62obおよび立上り直線状部63oを1本の管体で形成したりすることもできる。
【0070】
さらに、外側伝熱コイル60oにおける管体巻回部62oの内側に内側伝熱コイル60iにおける管体巻回部62iを配置した構成を例に挙げて説明したが、2つ以上の「伝熱コイル」における「管体巻回部」を巻軸方向に沿って並べて配置することもできる。
【0071】
また、容器体40における下方部位にブライン導入部43を配設すると共に容器体40における上方部位にブライン排出部44を配設することで容器体40内を下方から上方に向かってブラインを流動させる構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、「容器体」の上方から下方に向かって「熱媒液(ブライン)」を流動させる構成を採用することもできる(図示せず)。このような構成を採用する場合には、「伝熱コイル」における「管体巻回部」を下方から上方に向かって水素ガスを流動させる構成を採用することにより、上記の水素ガス冷却用熱交換器30と同様にして、水素ガスと「熱媒液」とを対向する向きに流動させるのが好ましい。さらに、水素ガスや「熱媒液」が水平方向に移動するように「熱交換器」を横倒しにして使用する構成を採用することもできる(図示せず)。
【0072】
また、「一元冷凍回路」の一例である冷凍回路11によって「熱媒液」の一例であるブラインを冷却する構成を例に挙げて説明したが、第1冷凍回路(高温側冷凍回路)の蒸発器によって第2冷凍回路(低温側冷凍回路)の凝縮器を冷却することで第2冷凍回路の凝縮器において十分な量の冷媒を短時間で凝縮させると共に、第2冷凍回路の蒸発器によって「熱媒液」を冷却することで、水素ガスの冷却に適した十分に低い温度まで「熱媒液」の温度を低下させ得る「二元冷凍回路」を採用することもできる(図示せず)。