特許第6296374号(P6296374)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296374
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】V型エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02M 63/00 20060101AFI20180312BHJP
   F02M 69/00 20060101ALI20180312BHJP
   F02M 35/116 20060101ALI20180312BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20180312BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   F02M63/00 P
   F02M69/00 350P
   F02M35/116 V
   F02F1/24 J
   F02B67/00 C
   F02B67/00 E
   F02B67/00 K
   F02B67/00 L
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-565765(P2016-565765)
(86)(22)【出願日】2014年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2014084347
(87)【国際公開番号】WO2016103407
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西殿 武広
(72)【発明者】
【氏名】野口 格
(72)【発明者】
【氏名】高井 淳次
(72)【発明者】
【氏名】横山 敏郎
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−202769(JP,U)
【文献】 特許第4495211(JP,B2)
【文献】 特開2008−075509(JP,A)
【文献】 特許第4042635(JP,B2)
【文献】 特開2005−009380(JP,A)
【文献】 特開2005−054655(JP,A)
【文献】 特許第2609297(JP,B2)
【文献】 特開2002−048035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 63/00
F02M 35/116
F02M 69/00
F02F 1/24
F02B 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バンクと第2バンクからなる一対のバンクを備えるV型エンジンであって、
前記一対のバンクの間でそれぞれ上方を向いて開口し、シリンダヘッド部に設けられる前記第1バンクの複数の第1側吸気ポートと、
前記一対のバンクの間でそれぞれ上方を向いて開口し、シリンダヘッド部に設けられる前記第2バンクの複数の第2側吸気ポートと、
前記第1側吸気ポートのそれぞれに直接連結され、前記一対のバンクの間から前記第1バンクに沿って上方に伸びる分岐通路の複数からなる第1多岐通路部と、
前記第2側吸気ポートのそれぞれに直接連結され、前記一対のバンクの間から前記第2バンクに沿って上方に伸びる分岐通路の複数からなる第2多岐通路部と、
前記第1側吸気ポートと前記第1多岐通路部からなる第1側吸気路に燃料を噴射するよう構成される第1側吸気路噴射装置と、
前記第2側吸気ポートと前記第2多岐通路部からなる第2側吸気路に燃料を噴射するよう構成される第2側吸気路噴射装置と、を備え、
前記第1側吸気路噴射装置は、前記第1側吸気路と前記第2側吸気路の間において、前記第1側吸気路のうちの前記第2バンク側へ最も突出する部分である第1側突出部に設けられ、
該第1側突出部は、前記第1側吸気ポートの上方向いた開口と前記第1多岐通路部の下方を向いた開口が連結される連結部であり、
前記第2側吸気路噴射装置は、前記第1側吸気路と前記第2側吸気路の間において、前記第2側吸気路のうちの前記第1バンク側へ最も突出する部分である第2側突出部に設けられ、
該第2側突出部は、前記第2側吸気ポートの上方向いた開口と前記第2多岐通路部の下方を向いた開口が連結される連結部であり、
さらに、前記一対のバンクの間において前記第1側吸気路噴射装置の下方に設けられ、第1バンクの燃焼室内に燃料を直接噴射するよう構成される第1側筒内噴射装置と、
前記一対のバンクの間において前記第2側吸気路噴射装置の下方に設けられ、第2バンクの燃焼室内に燃料を直接噴射するよう構成される第2側筒内噴射装置と、を備え
V型エンジンの正面視において前記第1多岐通路部は前記第2バンクに向けて上方から斜め下方に指向しており、前記第2多岐通路部は前記第1バンクに向けて上方から斜め下方に指向していることを特徴とするV型エンジン。
【請求項2】
前記一対のバンクのそれぞれに形成されるシリンダの軸線がクランク軸心に対してクランク軸の回転方向と同一方向にオフセットされることを特徴とする請求項1に記載のV型エンジン。
【請求項3】
前記第1側吸気路噴射装置と前記第2側吸気路噴射装置とは互いにクランク軸方向にずらされて配置されることを特徴とする請求項1又はに記載のV型エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はV型エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2種類のインジェクタを有するV型エンジンが開示されている。特許文献1のV型エンジンは、燃焼室内に直接燃料を噴射するインジェクタ(筒内噴射インジェクタ)と、吸気通路内に燃料を噴射するインジェクタ(吸気管噴射インジェクタ)を1気筒毎に装備している。より詳細には、V型エンジンの各バンクの吸気ポートはバンク内に開口しており、インマニ(吸気マニホールド)は、一方のバンク(左バンク)の上部に設けられたサージタンクから両方のバンクのそれぞれの吸気ポートにインマニが伸びている。そして、バンク内において、吸気管噴射インジェクタはインマニの外側に設けれ、筒内噴射インジェクタはインマニの内側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2006/302628(特許第4495211号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の吸気管噴射インジェクタは、インマニとその外側に位置する各バンクの間の狭い空間に設けられている。このため、吸気管噴射インジェクタの設置角度がインマニとバンクによって制限されてしまい、所望の角度を有するように吸気管噴射インジェクタを設置することが困難となるおそれがある。また、このように吸気管噴射インジェクタの設置空間が狭いため、吸気管噴射インジェクタを取り付ける作業も設置空間がより広い場合に比べて困難となると共に、吸気管噴射インジェクタの設置のための作業手順も制限される。そして、このような懸念点は、エンジンが小型化するほど顕著となる。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、吸気路噴射装置の設置領域と設置角度の自由度が増大させられるV型エンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るV型エンジンは、第1バンクと第2バンクからなる一対のバンクを備えるV型エンジンであって、前記一対のバンクの間でそれぞれ開口する前記第1バンクの複数の第1側吸気ポートと、前記一対のバンクの間でそれぞれ開口する前記第2バンクの複数の第2側吸気ポートと、前記第1側吸気ポートのそれぞれに連結され、前記一対のバンクの間から前記第1バンクに沿って上方に伸びる分岐通路の複数からなる第1多岐通路部と、前記第2側吸気ポートのそれぞれに連結され、前記一対のバンクの間から前記第2バンクに沿って上方に伸びる分岐通路の複数からなる第2多岐通路部と、前記第1側吸気ポートと前記第1多岐通路部からなる第1側吸気路に燃料を噴射するよう構成される第1側吸気路噴射装置と、前記第2側吸気ポートと前記第2多岐通路部からなる第2側吸気路に燃料を噴射するよう構成される第2側吸気路噴射装置と、を備え、前記第1側吸気路噴射装置は、前記第1側吸気路と前記第2側吸気路の間において、前記第1側吸気路のうちの前記第2バンク側へ最も突出する部分である第1側突出部に設けられ、前記第2側吸気路噴射装置は、前記第1側吸気路と前記第2側吸気路の間において、前記第2側吸気路のうちの前記第1バンク側へ最も突出する部分である第2側突出部に設けられる。
【0007】
上記(1)の構成によれば、第1バンクと第2バンクの吸気路噴射装置(第1側吸気路噴射装置、第2側吸気路噴射装置)のそれぞれは、一対のバンクの間(バンク内)やバンク内の上方の空間(バンク間)などのバンク空間において、最も突出する部分(第1側突出部、第2側突出部)に設けられる。これによって、吸気路噴射装置の設置領域と設置角度の自由度を増大させることができる。このため、好ましい噴射角度での燃料噴射を容易に実現できるため、燃費を向上させることができる。また、吸気路噴射装置は、吸気ポート(第1側吸気ポート、第2側吸気ポート)と多岐通路部(第1多岐通路部、第2多岐通路部)からなる吸気路(第1側吸気路、第2側吸気路)の内側に設けられる。このため、第1バンクと第2バンクと多岐通路部が保護壁の役割を果たし、この保護壁によって吸気路噴射装置を保護することができる。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記第1側吸気ポートの前記開口と前記第2側吸気ポートの前記開口は上方を向いている。
上記(2)の構成によれば、第1バンクと第2バンクのそれぞれの側面に沿って上方伸びる多岐通路部は上方を向けて開口する吸気ポートに連結されるため、突出部にはシリンダヘッドに形成される吸気ポートが含まれる。このため、吸気路噴射装置をシリンダヘッドに固定することができるので、吸気路噴射装置の設置の安定性を高めることができ、V型エンジンの信頼性を高めることができる。
【0009】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)または(2)の構成において、前記第1側突出部は、前記第1側吸気ポートの開口と前記第1多岐通路部の開口が連結される連結部であり、前記第2側突出部は、前記第2側吸気ポートの開口と前記第2多岐通路部の開口が連結される連結部である。
上記(3)の構成によれば、シリンダヘッドに吸気路噴射装置を固定することができるので、吸気路噴射装置の設置の安定性を高めることができ、V型エンジンの信頼性を高めることができる。
【0010】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の構成において、前記一対のバンクの間において前記第1側吸気路噴射装置の下方に設けられ、第1バンクの燃焼室内に燃料を直接噴射するよう構成される第1側筒内噴射装置と、前記一対のバンクの間において前記第2側吸気路噴射装置の下方に設けられ、第2バンクの燃焼室内に燃料を直接噴射するよう構成される第2筒内噴射装置と、をさらに備える。
上記(4)の構成によれば、V型エンジンには吸気路噴射装置と筒内噴射装置とが設けられるため、運転状況に適した燃料噴射を行うことができる。また、バンク内に筒内噴射装置が設けられるため、吸気路噴射装置と同様に、両方のバンクによる保護壁によって筒内噴射装置を保護することができる。
【0011】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(4)の構成において、前記一対のバンクのそれぞれに形成されるシリンダの軸線がクランク軸心に対してクランク軸の回転方向と同一方向にオフセットされる。
上記(5)の構成によれば、上記のオフセットにより生じる前記一対のバンクの高低差を利用することで、互いにぶつかり合うなどの相互干渉が生じることなく、第1バンクと第2バンクの吸気路噴射装置(第1側吸気路噴射装置、第2側吸気路噴射装置)をバンク空間に設置することができる。
【0012】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)の構成において、前記第1側吸気路噴射装置と前記第2側吸気路噴射装置とは互いに前後方向にずらされて配置される。
上記(6)の構成によれば、一対のバンクの挟み角(バンク角)が狭い場合においても、前記1側吸気路噴射装置と前記2側吸気路噴射装をバンク空間に配置することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、吸気路噴射装置の設置領域と設置角度の自由度が増大させられるV型エンジンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るV型エンジンの正面図である。
図2図1中のV型エンジンのシリンダヘッド部から上の一部断面図である。
図3図1中のV型エンジンのシリンダヘッド部より上の部分の側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る吸気路噴射装置の斜視図である。
図5図4の吸気路噴射装置の側面図である。
図6図1のV型エンジンの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るV型エンジン1の正面図である。図2は、図1中のV型エンジンのシリンダヘッド部3から上の一部断面図である。図3は、図1中のV型エンジン1のシリンダヘッド部3より上の部分の側面図である。図4は、幾つかの実施形態における吸気路噴射装置4の斜視図である。図5は、図4の吸気路噴射装置4の側面図である。また、図6は、図1のV型エンジンの平面図である。
そして、図1に示されるように、V型エンジン1(以下、エンジン1)は、吸気ポート32(第1側吸気ポート32a、第2側吸気ポート32b)と、多岐通路部52(第1多岐通路部52a、第2多岐通路部52b)と、吸気路噴射装置4(第1側吸気路噴射装置4a、第2側吸気路噴射装置4b)と、を備える。
【0017】
エンジン1は、図1の例示では、6気筒V型エンジンであり、直列に並べられた3個のシリンダ23(気筒)をそれぞれ有する第1バンク12a(図1では右バンク)と第2バンク12b(図1では左バンク)とがV字状(V字形)に配されており、両方のバンク(12a、12b)が1本のクランク軸15を共有している。そして、このエンジン1のエンジン本体11は、V字状のシリンダブロック部2とシリンダヘッド部3からなっている。
【0018】
シリンダブロック部2は、V字状のデッキシリンダ部21と、デッキシリンダ部21の下部に設けられた両方のバンク(12a、12b)に共通するクランクケース部22とを有している。そして、デッキシリンダ部21のV字状の両方の頭部には、シリンダヘッド部が搭載される面であるアッパーデッキ面26が設けられると共に、デッキシリンダ部21の内部には、上記の複数のシリンダ23が設けられる。また、上記のクランクケース部22にはクランク軸15が回転自在に支持されている。そして、このクランク軸15には、各シリンダ23に摺動自在に収容されるピストン24がコンロッド25を介して連結されている。これによって、各気筒の燃焼室31内での燃焼による熱エネルギーは、ピストン24を往復運動させると共にクランク軸15を回転させる運動エネルギーに変換される。なお、図1の例示では、クランク軸15は、クランク軸15の軸中心Oを中心に時計回りとなる矢印Eで示される向きに回転している。また、シリンダブロック部2は、クランクケース部22の下部開口を覆うように装着されたオイルパン28を含んでも良い。
【0019】
一方、シリンダヘッド部3の内部には、複数のシリンダ23のそれぞれに対応するように位置決めされた複数の窪み(例えば、半球形状など)が設けられている。そして、シリンダヘッド部3がデッキシリンダ部21のアッパーデッキ面26に搭載された時には、デッキシリンダ部21内部の複数のシリンダ23と上記の複数の窪みがそれぞれ一致することで、シリンダ23毎に燃焼室31が形成される。また、シリンダヘッド部3がデッキシリンダ部21へ搭載されることによって第1バンク12aと第2バンク12bの一対のバンク12が形成される。これと共に、第1バンク12aと第2バンク12bとがエンジン本体11の左右方向(以下、「左右方向」)における両側の壁となって囲まれる空間(バンク内13)が第1バンク12aと第2バンク12bの間に形成される。なお、シリンダヘッド部3は、それぞれのバンク12のシリンダヘッド部3毎にその頭部開口を塞ぐように搭載されるロッカカバー37を含んでも良い。
【0020】
また、シリンダヘッド部3には、それぞれ2つの吸気弁および排気弁(不図示)と、バンク内13に開口する吸気ポート32(後述)と、排気ポート35とがシリンダ23毎に設けられている。すなわち、各シリンダ23の燃焼室31とシリンダヘッド部3の外部は、燃焼室31へ吸気を導く通路である吸気ポート32(32a、32b)によってそれぞれ連通されると共に、この連通状態は吸気弁によって制御されるよう構成される。一方、燃焼室31からの燃焼ガス(排気ガス)を外部に導く通路である排気ポート35も各燃焼室31と各バンク12の外部とをそれぞれ連通しており、この連通状態は排気弁によって制御されるよう構成される。そして、この排気ポート35は、吸気ポート32が設けられるバンク内13とは反対の側などのバンク内13以外に伸びることによって外部と各燃焼室31を連通しても良い。また、吸気ポート32と排気ポート35は、それぞれの内部で2つに分岐して燃焼室31へ連結されており、この分岐毎にそれぞれ1個ずつ吸気弁と排気弁は設けられている。
【0021】
なお、図1では、第1バンク12aと第2バンク12bの2つのバンク12がなす挟み角(バンク角)は約60度であり、バンク内13に形成される空間はバンク角が90℃のものに比べて狭い。但し、バンク角は60度に限定されず90度など任意の角度であっても良い。そして、後述するように、エンジン本体11の上下方向(以下、上下方向)におけるバンク内13の上方(上部)に広がる空間であるバンク間に過給機8は設けられても良い。また、エンジン1の気筒数は6気筒に限定されず、複数の気筒を有する多気筒エンジンであっても良い。シリンダ23毎の吸気弁および排気弁の数も任意であり、1つであっても良いし、複数であっても良く、吸気ポート32と排気ポート35の内部の分岐数もこの吸気弁および排気弁の数に応じたものとなる。
【0022】
この吸気ポート32は、一対のバンク12の間でそれぞれ開口する第1バンク12aの複数の第1側吸気ポート32aと、一対のバンク12の間でそれぞれ開口する第2バンク12bの複数の第2側吸気ポート32bとを含む。すなわち、図1に例示されるように、第1バンク12aには吸気ポート32(第1側吸気ポート32a)が複数(図1では3つ)設けられており、それぞれバンク内13に開口する。同様に、第2バンク12bにも吸気ポート32(第2側吸気ポート32b)が複数(図1では3つ)設けられており、それぞれバンク内13に開口する。
【0023】
また、吸気ポート32は、空気を燃焼室31に供給する吸気通路の一部を構成する多岐通路部52(吸気マニホールド)が連結(接続)されるよう構成されており、燃焼室31へ向けて吸気通路を流れる吸入空気(吸気)は、上流側に位置する多岐通路部52から吸気ポート32へ供給される。
【0024】
このように、吸気ポート32の開口33は多岐通路部52が連結可能に構成されると共に、後述する吸気路噴射装置4の先端部41も連結可能に構成されている。例えば、吸気ポート32の開口33は、多岐通路部52の内部通路の形状に一致する形状をベースに、吸気路噴射装置4の先端部41を挿入(連結)可能となるようにこのベース形状の一部分を広げるように形成しても良い(図3参照)。
【0025】
この多岐通路部52は、第1側吸気ポート32aのそれぞれに連結され、一対のバンク12の間から第1バンク12aに沿って上方に伸びる分岐通路53の複数からなる第1多岐通路部52aと、第2側吸気ポート32bのそれぞれに連結され、一対のバンク12の間から第2バンク12bに沿って上方に伸びる分岐通路53の複数からなる第2多岐通路部52bとを含む。図1の例示では、第1多岐通路部52a(複数の分岐通路53)は、第1バンク12aの第1側吸気ポート32aの開口33から、バンク内13を形成する第1バンク12aの側面に沿って(第1バンク12aの外形に従うように)、第1バンク12aに接触することなくバンク内13の上方に向けて伸びている。同様に、第2多岐通路部52b(複数の分岐通路53)は、第2バンク12bの第2側吸気ポート32bの開口33から、バンク内13を形成する第2バンク12bの側面に沿って、第2バンク12bに接触することなくバンク内13の上方に向けて伸びている。
【0026】
より詳細には、図3の側面図に示されるように、第1多岐通路部52aは、エンジン本体11の前後方向(以下、「前後方向」)の前方側(正面側)に位置する前方分岐通路53fと、エンジン1の後方側(背面側)に位置する後方分岐通路53rと、前方分岐通路53fと後方分岐通路53rの間に位置する中央分岐通路53cの3つの分岐通路53を有している。そして、第1多岐通路部52aの各分岐通路53(63f、63c、63r)は、それぞれ独立する吸気通路を内部に形成しながら、第1バンク12aの3つの第1側吸気ポート32aにそれぞれ連結されている。一方、第2多岐通路部52bも同様に、図示は省略されているが、前方分岐通路53fと中央分岐通路53cと後方分岐通路53rを有し、第2多岐通路部52bの各分岐通路53(63f、63c、63r)は、それぞれ独立する吸気通路を内部に形成しながら、第2バンク12bの3つの第2側吸気ポート32bにそれぞれ連結されている。
【0027】
このように第1多岐通路部52aと第2多岐通路部52bの有する各分岐通路53の一端(下流端)は各吸気ポート32にそれぞれ連結されると共に、他端(上流端)は他の吸気通路9に連結されることで、多岐通路部52は、エンジン1の外部から内部の各燃焼室31へ空気(新気)を導くための吸気通路の一部を形成している。すなわち、第1側吸気ポート32aと第1多岐通路部52aとによって第1側吸気路5aが形成される。また、第2側吸気ポート32bと第2多岐通路部52bによって第2側吸気路5bが形成される。
【0028】
この第1側吸気路5aおよび第2側吸気路5bは、それぞれの形状おいて、最もバンク空間に向けてせり出している部分(突出部51)を有する。詳述すると、図1に例示されるように、第1側吸気路5aを形成する第1多岐通路部52aは第1バンク12aの側面に沿って上方へ伸び、と第2側吸気路5bを形成する第2多岐通路部52bは第2バンク12bの側面に沿って上方へ伸びる。このため、第1多岐通路部52aと第2多岐通路部52bとは、吸気ポート32の開口33とのそれぞれの連結部54より上部(吸気の流れ方向の上流側)において、エンジン本体11の外側(図1では左方向と右方向)に向かって互いに開きながら上方に伸びる領域を有している。言い換えると、第1多岐通路部52aと第2多岐通路部52bとの間の距離が各バンク12に沿って上方に伸びるに従って長くなっている領域を第1多岐通路部52aと第2多岐通路部52bは有している。その一方で、吸気ポート32の開口33は多岐通路部52よりも下方に位置するため、上方に向けて広がるバンク内13にあっては、両方のバンク12の間の距離がより短くなる箇所に吸気ポート32の開口33は位置する。そして、このような位置にある吸気ポートの32の開口33に多岐通路部52は連結されると共に各バンク12に沿って上方に伸びるため、第1側吸気路5aと第2側吸気路5bとには他方のバンク12側に突出する形状せり出す形状(突出部51)が形成される。
【0029】
より具体的には、図1(正面図)に例示される実施形態では、第1バンク12aの吸気ポート32aは、エンジン1の正面視において吸気ポート32aの中心軸がバンク内13に向けて(第2バンク12bに向けて)斜め上方を指向している。一方、第1多岐通路部52aは、エンジン1の正面視において第1多岐通路部52aを構成する各分岐通路53の中心軸がバンク内13に向けて(第2バンク12bに向けて)斜め下方を指向している。そして、吸気ポート32aの上記中心軸と第1多岐通路部52aの上記中心軸との交点において吸気ポート32aの開口33と第1多岐通路部52aとの開口が連結することで、突出部51が形成されている。同様な形状が第2バンク12b側でも形成されている。すなわち、第2バンク12bの吸気ポート32bは、エンジン1の正面視において吸気ポート32bの中心軸がバンク内13に向けて(第1バンク12aに向けて)斜め上方を指向している。一方、第2多岐通路部52bは、エンジン1の正面視において第2多岐通路部52bを構成する各分岐通路53の中心軸がバンク内13に向けて(第1バンク12aに向けて)斜め下方を指向している。そして、吸気ポート32bの上記中心軸と第2多岐通路部52bの上記中心軸との交点において吸気ポート32bの開口33と第2多岐通路部52bとの開口が連結することで、突出部51が形成されている。このように、第1バンク12aに連結される第1側吸気路5aは第2バンク12b側に突出する形状を有しており、第2バンク12bに連結される第2側吸気路5bは第1バンク12a側に突出する形状を有している。そして、この突出部51に吸気路噴射装置4は設けられる。
【0030】
吸気路噴射装置4について説明すると、吸気路噴射装置4は、上記の第1側吸気路5a(第1側吸気ポート32aと第1多岐通路部52aからなる第1側吸気路5a)に燃料を噴射するよう構成される第1側吸気路噴射装置4aと、上記の第2側吸気路5b(第2側吸気ポート32bと第2多岐通路部52bからなる第2側吸気路5b)に燃料を噴射するよう構成される第2側吸気路噴射装置とを含む。より具体的には、図2に例示されるように、吸気路噴射装置4は、その先端部41が吸気ポート32の内側に伸びることによって、燃料を噴射するための燃料噴射口43は吸気ポート32の内部に位置しており、これによって吸気ポート32内に燃料を噴射するよう構成されても良い。また、バンク内13とバンク間からなるバンク空間において、吸気路噴射装置4は、図4に例示されるように、第1多岐通路部52aと第2多岐通路部52bとの間に設けられても良い。
【0031】
また、吸気路噴射装置4には低圧燃料供給パイプ44が連結されており、この低圧燃料供給パイプ44および燃料パイプ46を介して燃料タンク(不図示)から低圧状態で燃料(低圧燃料)が供給される。すなわち、燃料パイプ46を介して供給される燃料は、一旦、バンク12毎の低圧燃料供給パイプ44にそれぞれ供給され、この低圧燃料供給パイプ44によってそれぞれの吸気路噴射装置4(図1の例示ではバンク12毎に3個)に分配される。なお、図2に示されるように、固定部材45を用いることで、多岐通路部52に固定されても良い。
【0032】
より詳細には、図4に例示されるように、第1バンク12aのための第1側低圧燃料供給パイプ44aと、第2バンク12bのための第2側低圧燃料供給パイプ44bとには、吸気路噴射装置4がそれぞれ複数連結されている(図1図4ではそれぞれ3個)。すなわち、これらの第1側低圧燃料供給パイプ44aと第2側低圧燃料供給パイプ44bは、バンク12の形状に合わせて前後方向に長い形状をしている。そして、各バンク12が有する各シリンダ23の燃焼室31に燃料を供給するために、第1側低圧燃料供給パイプ44aと第2側低圧燃料供給パイプ44bには、複数の吸気路噴射装置4がそれぞれ連結されている。また、各低圧燃料供給パイプ44(44a、44b)の長手方向の一端(図4の例では前後方向における前方向)に燃料パイプ46が連結されても良く、この各低圧燃料供給パイプ44に連結される2つの燃料パイプ46は上流において一本に合流された後に、図示しない燃料ポンプに連結されても良い。
【0033】
そして、これらの第1側吸気路噴射装置4aと第2側吸気路噴射装置4bは、それぞれ、第1側吸気路5aと第2側吸気路5bの突出部51に設けられる。すなわち、第1側吸気路噴射装置4aは、第1側吸気路5aと第2側吸気路5bの間において、第1側吸気路5aのうちの第2バンク側へ最も突出する部分である第1側突出部51aに設けられ、前記第2側吸気路噴射装置は、前記第1側吸気路5aと前記第2側吸気路5bの間において、第2側吸気路5bのうちの前記第1バンク側へ最も突出する部分である第2側突出部51bに設けられる。図2には第1バンク12a側の断面が例示されているが、図2の例示では、吸気路噴射装置4の先端部41が、上方に向けて開口する吸気ポート32の開口33に挿入されることで、吸気路噴射装置4の燃料噴射口43が吸気ポート32の内側に位置している。これによって、吸気路噴射装置4は、吸気路内(第1側吸気路、第2側吸気路)に燃料を噴射するよう構成されている。
【0034】
また、第1多岐通路部52aと第2多岐通路部52bとは、それぞれバンク12に沿って上方に伸びていることにより、バンク内13とバンク間からなるバンク空間は広く形成されることになる。このようなバンク空間に吸気路噴射装置4は設けられるため、吸気路噴射装置4の設置するに際して障害物となる物が少なく、様々な角度で吸気路噴射装置4を設置することが可能となる。さらに、吸気路噴射装置4の左右方向の外周には、2つのバンク12が位置すると共に、第1多岐通路部52aと第2多岐通路部52bが位置し、これらが保護壁としての役割を果たすことになる。
【0035】
上記の構成によれば、第1バンク12aと第2バンク12bの吸気路噴射装置4(第1側吸気路噴射装置4a、第2側吸気路噴射装置4b)のそれぞれは、一対のバンク12の間(バンク内13)やバンク内13の上方の空間(バンク間)などのバンク空間において、最も突出する部分(第1側突出部51a、第2側突出部51b)に設けられる。これによって、吸気路噴射装置4の設置領域と設置角度の自由度を増大させることができる。このため、好ましい噴射角度での燃料噴射を容易に実現できるため、燃費を向上させることができる。また、吸気路噴射装置4は、吸気ポート32(第1側吸気ポート32a、第2側吸気ポート32b)と多岐通路部52(第1多岐通路部52a、第2多岐通路部52b)からなる吸気路5(第1側吸気路5a、第2側吸気路5b)の内側に設けられる。このため、第1バンク12aと第2バンク12bと多岐通路部52が保護壁の役割を果たし、この保護壁によって吸気路噴射装置4を保護することができる。
【0036】
また、他の幾つかの実施形態では、図1に示されるように、第1側吸気ポート32aの開口33と第2側吸気ポート32bの開口33は上方を向いている。すなわち、吸気ポート32の開口33が上方を向くことによって、突出部51には、吸気ポート32の開口33が形成されるシリンダヘッド部3が含まれる。このため、吸気路噴射装置4をシリンダヘッド部3に設置することができる。例えば、上述のように、シリンダヘッド部3に設けられる吸気ポート32の開口33を上記ベース形状の一部分を広げることで、吸気路噴射装置4の先端部を挿入可能として、吸気路噴射装置4をシリンダヘッド部3に設けても良い。上記の構成によれば、シリンダヘッド部3に形成される吸気ポート32に吸気路噴射装置4を固定することができるので、吸気路噴射装置4の設置の安定性を高めることができ、V型エンジン1の信頼性を高めることができる。
なお、その他の幾つかの実施形態では、吸気ポート32の開口33は上方を向いていなくても良く、突出部51は多岐通路部52やシリンダヘッド部3に形成される。このため、吸気路噴射装置4は、多岐通路部52やシリンダヘッド部3に設けられている。
【0037】
また、他の幾つかの実施形態では、図1に示されるように、第1側突出部51aは、第1側吸気ポート32aの開口33と第1多岐通路部52aの開口が連結される連結部54であり、第2側突出部51bは、第2側吸気ポート32bの開口33と第2多岐通路部52bの開口が連結される連結部54となっている。上記の構成によれば、シリンダヘッド部3に吸気路噴射装置を固定することができるので、吸気路噴射装置の設置の安定性を高めることができ、V型エンジンの信頼性を高めることができる。
なお、その他の幾つかの実施形態では、吸気ポート32の開口33は上方を向いていなくても良く、突出部51は多岐通路部52やシリンダヘッド部3に形成される。このため、吸気路噴射装置4は、多岐通路部52やシリンダヘッド部3に設けられている。
【0038】
また、他の幾つかの実施形態では、図1に示されるように、一対のバンク12の間において第1側吸気路噴射装置4aの下方に設けられ、第1バンク12aの燃焼室31内に燃料を直接噴射するよう構成される第1側筒内噴射装置6aと、一対のバンク12の間において第2側吸気路噴射装置4bの下方に設けられ、第2バンク12bの燃焼室31内に燃料を直接噴射するよう構成される第2側筒内噴射装置6bと、をさらに備える。
【0039】
図2に例示されるように、シリンダヘッド部3は、バンク内13を形成する側面側から筒内噴射装置6が挿入可能に構成されており、挿入される筒内噴射装置6の燃料噴射口63が燃焼室31に面するよう構成されている。そして、シリンダヘッド部3に挿入される筒内噴射装置6の先端部61が燃焼室31に向けて伸びることで、先端部61の最先端にある燃料噴射口63は燃焼室31に対して開口するよう構成されている。また、図2に示されるように、筒内噴射装置6(先端部61)は、吸気ポート32に沿うようにして、シリンダヘッド部3の内部に設置されても良い。
【0040】
また、筒内噴射装置6には高圧燃料供給室64(蓄圧室)が連結されており、高圧燃料供給室64およびサプライポンプ(不図示)を介して燃料タンク(不図示)から高圧状態の燃料(高圧燃料)が供給される。例えば、高圧燃料供給室64にはサプライポンプ(不図示)により燃料タンク内の燃料が供給され、エンジン1の回転速度に応じてサプライポンプから所定圧で燃料が高圧燃料供給室64に供給されても良い。そして、高圧燃料供給室64では燃料が所定の燃圧に調整され、高圧燃料供給室64から所定の燃圧に制御された高圧燃料が筒内噴射装置6に供給されるよう構成されても良い。なお、吸気路噴射装置4と筒内噴射装置6の説明で用いる高圧、低圧とは、両者を比較した際の相対的な圧力を意味している。例えば、高圧状態の燃料は、低圧状態の燃料よりも圧力が高いことを意味し、逆に、低圧状態の燃料とは、高圧状態の燃料よりも圧力が低いことを意味している。
【0041】
上記の構成によれば、V型エンジン1には吸気路噴射装置4と筒内噴射装置6とが設けられるため、運転状況に適した燃料噴射を行うことができる。また、バンク内13に筒内噴射装置6が設けられるため、吸気路噴射装置4と同様に、両方のバンク12による保護壁によって筒内噴射装置6を保護することができる。
【0042】
また、他の幾つかの実施形態では、図1に示されるように、エンジン1は、第1バンク12aと第2バンク12bからなる一対のバンク12のそれぞれに形成されるシリンダ23の軸線(シリンダ軸線L)は、クランク軸心(クランク軸15の軸中心O)に対してクランク軸15の回転方向(矢印Eの方向)と同一方向にオフセットされている。
【0043】
このようなオフセットを有するエンジン1について説明すると、各バンク12がオフセットされていない通常エンジンは、各デッキシリンダ部21における複数のシリンダ軸線L1が、クランク軸15の軸中心Oを通る位置にある。これに対して、上記のオフセットされているエンジン1では、クランク軸15の軸中心Oからシリンダブロック部2のアッパーデッキ面26までの長さ(デッキ高さH)を保ったまま、各デッキシリンダ部21の複数のシリンダ軸線Lをクランク軸15の軸中心Oに対してクランク軸15の回転方向Eと同じ方向へオフセット量δだけ平行移動(オフセット)させている。なお、図1では、複数のシリンダ軸線Lと複数のシリンダ軸線L1は、それぞれ最も前面にあるものに重なって示されている。
【0044】
そして、このオフセットによって、回転方向Eの前側の第1バンク12aは通常エンジンの位置と比較して高くなり、回転方向Eの後ろ側の第2バンク12bは低くなることによって、両方のバンク12は上下方向に高低差が生じている。このため、第1バンク12aと第2バンク12bのそれぞれの吸気ポート32にも上下方向の位置にも差が生じており、図1の例示では、高さH1を有する第1側吸気ポート32aの開口33の位置と、高さH2を有する第2側吸気ポート32bの開口33の位置の高低差は、H1−H2(H1>H2)となっている。なお、図1の実施形態では、オフセット量δは、第1バンク12aと第2バンク12bで同じであるが、他の幾つかの実施形態では、第1バンク12aと第2バンク12bでそれぞれ異なったオフセット量δであっても良い。
【0045】
このような、オフセットによる高低差を有す一対のバンク12のバンク空間に、吸気路噴射装置4と筒内噴射装置6とは設けられる。そして、2つのバンク12のそれぞれの吸気路噴射装置4同士、および、2つのバンク12のそれぞれの筒内噴射装置6同士は、上述のオフセットにより生じた2つのバンク12の高低差に伴って、上下方向の位置が異なっている。すなわち、第1バンク12aに設けられる吸気路噴射装置4は、第2バンク12bに設けられる吸気路噴射装置4よりも上下方向において上方に位置している。一方、第1バンク12aに設けられる筒内噴射装置6は、第2バンク12bに設けられる筒内噴射装置6よりも上下方向において上方に位置している。
【0046】
この点について詳述すると、シリンダヘッド部3における吸気ポート32の位置や、吸気路噴射装置4および低圧燃料供給パイプ44の位置や、筒内噴射装置6および高圧燃料供給室64の位置は、第1バンク12aと第2バンク12bで同じである。ところが、両方のバンク12の高低差に従って、これらの上下方向の位置がそれぞれ異なっている。そして、図1図3の例示では、第1バンク12aの方が第2バンク12bよりも上方に位置するため、第1バンク12aの第1側吸気ポート32aと吸気路噴射装置4と低圧燃料供給パイプ44とは、第2バンク12bの第2側吸気ポート32bと吸気路噴射装置4と低圧燃料供給パイプ44よりもそれぞれ上方に位置している。同様に、第1バンク12aの筒内噴射装置6と高圧燃料供給室64とは、第2バンク12bの筒内噴射装置6と高圧燃料供給室64よりもそれぞれ上方に位置している。このように、オフセットによる一対のバンク12の高低差を利用することで、バンク内13が狭い場合であっても、両方のバンク12の吸気路噴射装置4および筒内噴射装置6の両方の燃料噴射装置を、一対のバンク12の間(バンク内13)やバンク内13の上方の空間(バンク間)などのバンク空間に設置することが可能となっている。
【0047】
上記の構成によれば、上記のオフセットにより生じる前記一対のバンク12の高低差を利用することで、互いにぶつかり合うなどの相互干渉が生じることなく、第1バンク12aと第2バンク12bの吸気路噴射装置4(第1側吸気路噴射装置4a、第2側吸気路噴射装置4b)をバンク空間に設置することができる。また、吸気路噴射装置4と筒内噴射装置6は、第1バンク12aと第2バンク12bの両方で共通するものを用いることができるため、第1バンク12aと第2バンク12bのそれぞれのために設計・製造する必要がなく、コストを下げることもできる。
【0048】
また、他の幾つかの実施形態では、図5の側面図に示されるように、第1側吸気路噴射装置4aと第2側吸気路噴射装置4bとは互いに前後方向にずらされて配置される。すなわち、図5に示されるように、第1バンク12aの低圧燃料供給パイプ44aに概ね等間隔に連結される吸気路噴射装置4aと、第2バンク12bの低圧燃料供給パイプ44bに概ね等間隔に連結される吸気路噴射装置4bの前後方向の位置は一致していない。図5の例示では、前後方向において、第1バンク12aの吸気路噴射装置4aは相対的に前方向に位置すると共に、第2バンク12bの吸気路噴射装置4bは相対的に後ろ方向に位置することで、両者は前後方向にずらされている。
【0049】
なお、筒内噴射装置6がバンク内13に設けられる場合には、図5に示されるように、筒内噴射装置6aと筒内噴射装置6bとは互いに前後方向にずらされて配置されてもよい。すなわち、図5に示されるように、第1バンク12aの高圧燃料供給室64aに概ね等間隔に連結される筒内噴射装置6aと、第2バンク12bの高圧燃料供給室64bに概ね等間隔に連結される筒内噴射装置6bの前後方向の位置は一致していない。図5の例示では、前後方向において、第1バンク12aの筒内噴射装置6aは相対的に前方向に位置すると共に、第2バンク12bの筒内噴射装置6bは相対的に後ろ方向に位置することで、両者は前後方向にずらされている。
【0050】
このような吸気路噴射装置4と筒内噴射装置6とをそれぞれ前後方向にずらすにあたっては、両方のバンク12が有する前後方向でのずれ幅Wを利用しても良い。すなわち、エンジン1は、図6の平面図に示されるように、エンジン本体11の前後方向において、第1バンク12aは相対的に前方向に位置し、第2バンク12bは相対的に後方に位置している。これは、V型エンジン1では一本のクランク軸15が2つのバンク12によって共有されるため、コンロッド25が前後方向に干渉することなくクランク軸15が連結されるように、第1バンク12aと第2バンク12bは前後方向にずらされていることによる。このため、第1バンク12aと第2バンク12bは、前後方向の位置がずれ幅Wだけ相対的にずれている。
【0051】
上記の構成によれば、一対のバンク12の挟み角(バンク角)が狭い場合においても、第1側吸気路噴射装置4aと第2側吸気路噴射装置4bをバンク空間に配置することができる。
【0052】
また、他の幾つかの実施形態では、第1多岐通路部52aと第2多岐通路部52bの上流側に連結される他の吸気通路9は、図1図3に例示されるような主通路部7であっても良い。
【0053】
主通路部7の構成について説明すると、主通路部7は、第1多岐通路部52aと第2多岐通路部52bとを連結すると共に2つのバンク12の間の上方に設けられる過給機8に連結されるよう構成されている。より具体的には、この主通路部7は、バンク12間の空間の上部とエンジン本体11の左右方向における左右の両側を囲むような形状をしており、この主通路部7によって囲まれる空間に過給機8は設置されている。また、過給機8の吐出口84は、過給機8の上部を覆うように左右方向に延在する主通路部7の中央部分に連結されており、この中央部分の下方にはバンク内13が位置している。このように、過給機8の吸気の吐出口84は上方を向いており、上方に向けて吐出される吸気を第1多岐通路部52aと第2多岐通路部52bに振り分けて導入するよう構成される。
【0054】
すなわち、主通路部7は、過給機8の吐出口84から上方に向けて吐出される吸気を、エンジン本体11の互いに外側を向く両方向(図1では、左右方向の左方向と右方向の両方向)に向けて振り分けるよう構成される外向き部71と、外向き部71によって左右の両方向に振り分けられる吸気を上方から下方へ向けてそれぞれ導くよう構成される上下部72(左右の両側の2つ)と、この上下部72から流出する吸気をエンジン本体11の内側の方向にそれぞれ戻すよう構成される集合部73(左右の両側の2つ)を備えている。すなわち、主通路部7において、吸気は、過給機8の吐出口84から外向き部71によって左右の両方向に振り分けられた後、それぞれ、上下部72、集合部73を通過して多岐通路部52(62a、62b)に導かれる。なお、図1に示されるように、外向き部71と集合部73が過給機8の上面よりも外側に伸びるなどによって、上下部72と過給機8の間には空間(空気層)が形成されても良い。
【0055】
なお、外向き部71の過給機8の吐出口84が連結される部分には、過給機8の吐出口84からの吸気の吐出向きに対向するように前後方向に伸びるリブ部76が設けられても良い。このリブ部76は、外向き部71の補強の役割と、上述の吸気を左右方向への振り分けのためのガイドの役割を担っている。すなわち、過給機8からの高圧の吸気が衝突する箇所にリブ部76は位置することで、主通路部7の強度を増加させると共に、リブ部76が有する滑らかな突出形状に沿って吸気が左と右の両方向に流れるよう構成されている。材料に関しては、アルミ等の金属材料や樹脂材料など、全てを同一材料で製造(形成)しても良いし、外向き部71と集合部73を金属材料で製造し、上下部72を樹脂で製造するなど各部毎に材料を変えて製造しても良い。
【0056】
また、上下部72により形成される吸気通路の内部には、インタークーラ74を備えても良く、過給機8による過給などによって上昇する吸気の温度を冷却することで、温度上昇による空気密度が減少を防止することができる。図1図4の例示では、インタークーラ74は水冷式となっており、インタークーラ74には、インタークーラ74の内部に冷却水などの冷却媒体を循環させるための冷却通路を接続するための2つの冷却通路接続口75が設けられている。例えば、冷却媒体は、下側の冷却通路接続口75から導入され、上側の冷却通路接続口75から排出されても良い。さらに、上下部72には、上下部72を補強するための柱部77が複数本設けられても良く、特に、過給機8が外向き部71に宙吊りされる場合には、外向き部71と過給機8の全ての重量を上下部72は支持することになるため、柱部77によって上下部72の強度を高めている。図1図5の例示では、柱部77は、四角柱のような形状を有する上下部72に合わせて6本用いられており、上下部72の各角に位置する4本と、各角の前後方向の間に1本ずつ設けられても良い。
【0057】
一方、過給機8は、図1図6に示される実施形態では、スーパーチャージャ(機械式過給機)である。そして、図2に示されるように、過給機本体81と駆動軸82とを含んで構成されており、過給機本体81は主通路部7によって囲まれる一方で、駆動軸82は、過給機本体81の前面から前方向に向かって突出するようにして過給機本体81に取り付けられている。スーパーチャージャについて説明すると、過給機本体81の内部に収容された2つのロータがエンジンの動力によって回転駆動されることで吸気を過給する。より詳細には、駆動軸82の軸方向の一方には上記のロータが結着されると共に、駆動軸82の他方の端部にはプーリー83が結着されている。そして、プーリー83にはベルトなどでエンジン1の出力軸と繋がれており、エンジン1の出力軸の回転によってベルト等で繋がれたプーリー83が回転駆動されると共に、このプーリー83の回転駆動によってロータが回転駆動される。そして、過給機本体81の内部で2つのロータがかみ合うように回転することで吸気を過給し、吐出口84から高圧の吸気が吐出される。その他の幾つかの実施形態では、過給機8はターボチャージャ(排気タービン過給機)であっても良い。
【0058】
また、過給機8は、図1図3に示される実施形態では、その上部を覆う主通路部7に宙吊りされている(吊り下げられている)。すなわち、主通路部7と過給機8の吐出口84との連結部以外には、例えば、過給機8の下部を下から支えるなどの過給機8を支持する構造をエンジン1は有していない。他の幾つかの実施形態では、過給機8を支持する他の構造をエンジン1は備えており、過給機8は宙吊りされていなくても良い。
【0059】
また、過給機8の吸気口85には他の吸気通路9が連結されている。そして、図1に例示されるように、他の吸気通路9にはスロットル装置93が連結されても良く、さらにその上流には、空気をきれいにするエアークリーナや空気の取り入れ口である吸気ダクト(不図示)などが設けられても良い。また、図4には例示されるように、過給機8の吸気口85に連結される他の吸気通路9と外向き部71とを連結する過給機8の過給圧を逃すためのバイパス通路91が過給機8の背面に設けられても良く、バイパス通路91の流路にはバイパス通路91の連通状態を制御するバイパスバルブ92も設けられても良い。また、他の吸気通路9には、過給機8の上流側において吸気量を制御するスロットル装置93や、EGR装置に用いられるEGRバルブが設けられても良い。
【0060】
このように、主通路部7と過給機が保護壁の役割を果たし、この保護壁によって、燃料噴射装置(吸気路噴射装置4および筒内噴射装置6)や燃料供給装置(低圧燃料供給パイプ44および高圧燃料供給室64)の周囲の保護を保護するよう構成しても良い。
【0061】
また、他の幾つかの実施形態では、図3に例示されるように、第1多岐通路部52aは、前方分岐通路53fと中央分岐通路53cと後方分岐通路53rの3つの分岐通路を有するが、前方分岐通路53fと中央分岐通路53cとの間、および、後方分岐通路53rと中央分岐通路53cとの間は、それぞれ結合壁55によって結合されている。同様に、図示は省略されているが、第2多岐通路部52bにおいても、前方分岐通路53fと中央分岐通路53cとの間、および、後方分岐通路53rと中央分岐通路53cとの間は、それぞれ結合壁55によって結合されている。このように、分岐通路53の間に隙間がないか、あるいは、隙間が小さくすることで、多岐通路部52の保護壁としての機能が強化され、吸気路噴射装置4と筒内噴射装置6の保護を強化することができる。
【0062】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。

【符号の説明】
【0063】
1 V型エンジン
11 エンジン本体
12 バンク
12a 第1バンク
12b 第2バンク
13 バンク内(第1バンクと第2バンクの間)
15 クランク軸
2 シリンダブロック部
21 デッキシリンダ部
22 クランクケース部
23 シリンダ
24 ピストン
25 コンロッド
26 アッパーデッキ面
28 オイルパン

3 シリンダヘッド部
31 燃焼室
32 吸気ポート
32a 第1側吸気ポート
32b 第2側吸気ポート
33 吸気ポートの開口
35 排気ポート
37 ロッカカバー

4 吸気路噴射装置
4a 第1側吸気路噴射装置
4b 第2側吸気路噴射装置
41 先端部
43 燃料噴射口
44 低圧燃料供給パイプ
44a 第1側低圧燃料供給パイプ
44b 第2側低圧燃料供給パイプ
45 固定部材
46 燃料パイプ

5 吸気路
5a 第1側吸気路
5b 第2側吸気路
51 突出部
51a 第1側突出部
51b 第2側突出部
52 多岐通路部(吸気マニホールド)
52a 第1多岐通路部
52b 第2多岐通路部
53 分岐通路
54 連結部
55 結合壁


6 筒内噴射装置
61 先端部
63 燃料噴射口
64 高圧燃料供給室
66 燃料パイプ

7 主通路部
71 外向き部
72 上下部
73 集合部
74 インタークーラ
75 冷却通路接続口
76 リブ部
77 柱部

8 過給機
81 過給機本体
82 駆動軸
83 プーリー
84 吐出口
85 吸気口

9 他の吸気通路
91 バイパス通路
92 バイパスバルブ
93 スロットル装置

W 距離
O クランク軸の軸中心O(クランク軸心)
E クランク軸の回転方向
D バンクのオフセット方向
δ オフセット量
H デッキ高さ
H1 第1側吸気ポートの開口の高さ
H2 第2側吸気ポートの開口の高さ
H3 第1バンクと第1集合部の距離
F 吸気の流れ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6