特許第6296412号(P6296412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296412
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】排ガス浄化システム及び排ガス浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/94 20060101AFI20180312BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20180312BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20180312BHJP
   B01J 23/56 20060101ALI20180312BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20180312BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20180312BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20180312BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20180312BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   B01D53/94 222
   B01D53/56 100
   B01D53/81
   B01J23/56 A
   B01J23/44 AZAB
   B01J23/50 A
   F01N3/10 A
   F01N3/08 A
   F01N3/28 301F
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-122293(P2013-122293)
(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公開番号】特開2014-237117(P2014-237117A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿幸
(72)【発明者】
【氏名】濱口 豪
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏生
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−071071(JP,A)
【文献】 特開2000−230414(JP,A)
【文献】 特表平10−509377(JP,A)
【文献】 特開2002−153734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00−53/96
B01J 21/00−38/74
F01N 3/08
F01N 3/10
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ、前記内燃機関から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を浄化する排ガス浄化システムであって、
NOxを吸着可能なNOx吸着材と、該NOx吸着材の下流側に配置したNOx還元触媒と、該NOx還元触媒の下流側に配置したNO分解触媒とを前記排気通路内に備え、
前記NO分解触媒が、Rhである活性金属と、Ce酸化物中にZr、La及びPrからなる群から選択される少なくとも1種を含有する担体と、を含んでおり、150℃における活性酸素吸放出速度が5μmol/g/sec以上のものであることを特徴とする排ガス浄化システム。
【請求項2】
前記NO分解触媒による分解処理前の前記排ガス又は/及び前記NO分解触媒による分解処理中の前記排ガスに、水素含有ガスを間欠的に供給する水素含有ガス供給手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化システム。
【請求項3】
前記水素含有ガスの供給量が、Hの総容量がNO総容量の2倍以上であり、且つH濃度がNO濃度の3倍以上となる条件を満たすことを特徴とする請求項2に記載の排ガス浄化システム。
【請求項4】
NOxを吸着可能なNOx吸着材と、該NOx吸着材の下流側に配置したNOx還元触媒と、該NOx還元触媒の下流側に配置したNO分解触媒とを内燃機関の排気通路内に配設し、前記内燃機関から排出される排ガスを前記NOx吸着材、前記NOx還元触媒及び前記NO分解触媒に接触させることにより該排ガス中に含まれる窒素酸化物を浄化する排ガス浄化方法であって、
前記NO分解触媒が、Rhである活性金属と、Ce酸化物中にZr、La及びPrからなる群から選択される少なくとも1種を含有する担体と、を含んでおり、150℃における活性酸素吸放出速度が5μmol/g/sec以上のものであることを特徴とする排ガス浄化方法。
【請求項5】
前記NO分解触媒による分解処理前の前記排ガス又は/及び前記NO分解触媒による分解処理中の前記排ガスに、水素含有ガスを間欠的に供給することを特徴とする請求項に記載の排ガス浄化方法。
【請求項6】
前記水素含有ガスの供給量が、Hの総容量がNO総容量の2倍以上であり、且つH濃度がNO濃度の3倍以上となる条件を満たすことを特徴とする請求項に記載の排ガス浄化方法。
【請求項7】
前記排ガスを、200℃以下の温度で前記NO分解触媒に接触させることを特徴とする請求項のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化システム及び排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料消費率の低い希薄燃焼式(リーンバーン)エンジン等の内燃機関からの排ガスを浄化するために従来から様々な排ガス浄化用触媒の研究が進められてきた。そして、近年では、より低温条件下においてNOx吸着性能を発揮する触媒の研究がされており、種々の排ガス浄化用触媒及びその製造方法が開示されている。
【0003】
例えば、特開2009−22929号公報(特許文献1)には、水素の酸化触媒成分と亜酸化窒素の還元触媒成分とが、両触媒成分間を電子が移動し得るように接合され、かつ前記接合とは別個に両触媒成分間をプロトンが移動し得るプロトン導電性固体電解質で接合されてなることを特徴とする水素の存在下で亜酸化窒素を分解する亜酸化窒素の分解触媒、それを備える亜酸化窒素の分解装置及びそれを用いる亜酸化窒素の分解方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されている亜酸化窒素の分解触媒、それを備える亜酸化窒素の分解装置及びそれを用いる亜酸化窒素の分解方法は、NOx浄化性能が十分ではなく、亜酸化窒素分解性能の発現も低酸素濃度下に限られるなど必ずしも十分ではなかった。従って、高い水準でNOx浄化性能が求められるディーゼル車やガソリンリーンバーン車などの実車から排出される実排ガス条件においては、NOxの浄化が十分ではなく、副生するNOの分解も十分ではなかった。
【0004】
また、特開2011−519号公報(特許文献2)には、Al、Zr及びCeからなる群から選択される少なくとも1種の元素(A)と、Ag、Mn、Co、Cu及びFeからなる群から選択される少なくとも1種の元素(B)と、Tiとを含有する担体、及び、該担体に担持されたAg、Mn、Co、Cu及びFeからなる群から選択される少なくとも1種の元素(C)のメタル又は酸化物からなる粒子を備え、且つ、前記担体が、前記担体の表面上の直径2nmの任意の複数の測定点をTEM−EDX分析した際に、全測定点の70%以上において、前記元素(B)の含有率が0.5〜10mol%であり且つ前記Tiの含有率が0.3mol%以上であるという条件を満たす前記Tiと前記元素(B)との複合部が確認されるものであることを特徴とする排ガス浄化用触媒が開示されている。同公報の記載によれば、低温条件下において十分に高度なNOx吸着性能を有し、しかも硫黄被毒後の触媒から硫黄成分を比較的低温で脱離させることが可能な排ガス浄化用触媒を提供することが可能となっている。しかしながら、近年は、排ガス浄化用触媒に対する要求特性が益々高まっており、低温条件下において十分に高度なNOx吸着性能を有するとともに、十分に高度な水準で低いNO副生率とすることが可能な排ガス浄化用触媒が求められるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−22929号公報
【特許文献2】特開2011−519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、200℃以下という低温度域において、十分に高度なNOx浄化性能を有し、且つ十分に高度な水準で低いNO副生率とすることが可能な排ガス浄化システム及び排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、排ガス浄化システムにおいて、NOxを吸着可能なNOx吸着材と、該NOx吸着材の下流側に配置したNOx還元触媒と、該NOx還元触媒の下流側に配置したNO分解触媒とを前記排気通路内に備えるとともに、前記NO分解触媒としてCeを含有する担体に特定の活性金属を添加することにより、200℃以下という低温度域において、十分に高度なNOx浄化性能を有し、且つ十分に高度な水準で低いNO副生率とすることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の排ガス浄化システムは、内燃機関の排気通路に設けられ、前記内燃機関から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を浄化する排ガス浄化システムであって、NOxを吸着可能なNOx吸着材と、該NOx吸着材の下流側に配置したNOx還元触媒と、該NOx還元触媒の下流側に配置したNO分解触媒とを前記排気通路内に備え、前記NO分解触媒が、Rhである活性金属と、Ce酸化物中にZr、La及びPrからなる群から選択される少なくとも1種を含有する担体と、を含んでおり、150℃における活性酸素吸放出速度が5μmol/g/sec以上のものであることを特徴とするものである。
【0009】
上記本発明の排ガス浄化システムにおいては、前記NO分解触媒による分解処理前の前記排ガス又は/及び前記NO分解触媒による分解処理中の前記排ガスに、水素含有ガスを間欠的に供給する水素含有ガス供給手段を更に備えることが好ましい。
【0010】
また、上記本発明の排ガス浄化システムにおいては、前記水素含有ガスの供給量が、Hの総容量がNO総容量の2倍以上であり、且つH濃度がNO濃度の3倍以上となる条件を満たすことが好ましい。
【0012】
本発明の排ガス浄化方法は、NOxを吸着可能なNOx吸着材と、該NOx吸着材の下流側に配置したNOx還元触媒と、該NOx還元触媒の下流側に配置したNO分解触媒とを内燃機関の排気通路内に配設し、前記内燃機関から排出される排ガスを前記NOx吸着材、前記NOx還元触媒及び前記NO分解触媒に接触させることにより該排ガス中に含まれる窒素酸化物を浄化する排ガス浄化方法であって、前記NO分解触媒が、Rhである活性金属と、Ce酸化物中にZr、La及びPrからなる群から選択される少なくとも1種を含有する担体と、を含んでおり、150℃における活性酸素吸放出速度が5μmol/g/sec以上のものであることを特徴とするものである。
【0013】
上記本発明の排ガス浄化方法においては、前記NO分解触媒による分解処理前の前記排ガス又は/及び前記NO分解触媒による分解処理中の前記排ガスに、水素含有ガスを間欠的に供給することが好ましい。
【0014】
また、上記本発明の排ガス浄化方法においては、前記水素含有ガスの供給量が、Hの総容量がNO総容量の2倍以上であり、且つH濃度がNO濃度の3倍以上となる条件を満たすことが好ましい。
【0015】
さらに、上記本発明の排ガス浄化方法においては、前記排ガスを、200℃以下の温度で前記NO分解触媒に接触させることが好ましい。
【0017】
なお、本発明の排ガス浄化システム及び排ガス浄化方法によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明においては、内燃機関の排気通路にNOx吸着材、NOx還元触媒及びNO分解触媒が設けられており、内燃機関から排出される窒素酸化物を含有する排ガスは、NOx吸着材及びNOx還元触媒に接触され、NOxが浄化されるとともに、条件により(特に還元雰囲気下で)NOが生成される。生成されたNOは、NO分解触媒に接触すると、NO分解触媒のNOの解離サイトであるRhである活性金属とその近傍の担体のCe上の高速酸素吸脱着サイトの働きにより、NOの解離により生じた酸素種を担体のCe上に効率よく吸着し、Hによる再生機能により脱着させることができるものと本発明者らは推察する。さらに、上記活性金属とその近傍の高速酸素吸脱着サイトの働きによる酸素種の吸着及びHによる再生の働きは200℃以下の低温度域において奏することができるため、そのような低温度域においても、十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能となるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、200℃以下という低温度域において、十分に高度なNOx浄化性能を有し、且つ十分に高度な水準で低いNO副生率とすることが可能な排ガス浄化システム及び排ガス浄化方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】調製例5で得られたNO分解触媒のNO分解活性に及ぼす評価温度の影響を示すグラフである。
図2】調製例5で得られたNO分解触媒の50℃におけるNO分解活性に及ぼす前処理温度の影響を示すグラフである。
図3】実施例1及び比較例1で得られた触媒の150℃におけるNO分解波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
先ず、本発明の排ガス浄化システムについて説明する。すなわち、本発明の排ガス浄化システムは、内燃機関の排気通路に設けられ、前記内燃機関から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を浄化する排ガス浄化システムであって、NOxを吸着可能なNOx吸着材と、該NOx吸着材の下流側に配置したNOx還元触媒と、該NOx還元触媒の下流側に配置したNO分解触媒とを前記排気通路内に備え、前記NO分解触媒が、Rh、Pt、Cu、Co、Ni、Fe、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属と、Ceを含有する担体と、を含んでいることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の排ガス浄化システムのNOx吸着材は、内燃機関の排気通路内に備えられ、NOxを吸着可能なNOx吸着材であることが必要である。このようなNOx吸着材としては特に制限されず、排ガス浄化システムに用いることが可能なNOx吸着材を適宜用いることができる。
【0023】
なお、上記NOx吸着材は、200℃以下の温度域において、酸素過剰雰囲気下においてNOxを吸着し還元雰囲気下において吸着したNOxを脱離する特性を有する低温NOx吸着材であることが好ましい。
【0024】
このようなNOx吸着材としては、特開2011−519号公報に例示されるNOx吸着材であることが好ましい。
【0025】
また、本発明にかかるNOx還元触媒は、内燃機関の排気通路内に備えられ、上記NOx吸着材の下流側に配置していることが必要である。このようなNOx還元触媒としては特に制限されず、例えば、排ガス浄化システムに用いることが可能なNOx還元触媒やNOx吸蔵還元触媒を適宜用いることができる。NOx還元触媒としては、例えば、Pt(白金)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、等の貴金属と、酸化アルミニウム(Al)等の担体とを含んでいるものがある。NOx吸蔵還元触媒としては、例えばPt(白金)、Rh(ロジウム)等の貴金属と、NOx吸蔵材とを含んでいるものがある。
【0026】
このようなNOx還元触媒としては、低温域における還元性能の観点から、貴金属としてPt又はPdを用いたものであることが好ましく、貴金属としてPt及びPdを用いたものであることが特に好ましい。
【0027】
また、本発明にかかるNO分解触媒は、内燃機関の排気通路内に備えられ、上記NOx還元触媒の下流側に配置しているとともに、前記NO分解触媒が、Rh、Pt、Cu、Co、Ni、Fe、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属と、Ceを含有する担体とを含んでいることが必要である。
【0028】
先ず、本発明にかかるNO分解触媒は、内燃機関の排気通路内に備えられ、上記NOx還元触媒の下流側に配置していることが必要である。NO分解触媒を上記NOx吸着材及び上記NOx還元触媒の下流側に配置することにより、内燃機関から排出される窒素酸化物を含有する排ガスがNOx吸着材又は/及びNOx還元触媒に接触されNOxが浄化される際に、条件により(特に還元雰囲気下で)生成されたNOを、その後にNO分解触媒に接触すると、該NO分解触媒の活性金属とその近傍の高速酸素吸脱着サイトの働きにより、200℃以下という低温度域において十分に高度な水準でNOx浄化を実現するとともに十分に高度な水準で低いNO副生率とすることが可能となる。
【0029】
次に、該NO分解触媒は、Rh、Pt、Cu、Co、Ni、Fe、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属を含んでいることが必要である。活性金属としてRh、Pt、Cu、Co、Ni、Fe、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種を用いることにより、該活性金属と該活性金属近傍の担体のCe上の高速酸素吸脱着サイトとの働きにより、NOの解離により生じた酸素種をCe上に効率よく吸着することが可能となる。
【0030】
ここで本発明のNO分解触媒の活性金属は、その金属酸化物の生成熱が、70kcal/mol以下であることをあることが好ましい。金属酸化物の生成熱を70kcal/mol以下とすることにより、200℃以下という低温度域におけるNO分解性能がより向上する傾向にある。
【0031】
本発明においては、前記活性金属の担持量としては特に制限されないが、担体100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。活性金属の担持量が下限未満になると、活性点数が十分でなく、高い活性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、分散性が低下し、高い活性が得られない傾向にある。
【0032】
また、本発明にかかるNO分解触媒の担体は、Ceを含有することが必要である。Ceを含有する担体とすることにより、該担体上にRh、Pt、Cu、Co、Ni、Fe、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属を粒子径が小さく且つ均一に制御された活性金属粒子として形成することが可能となる。また、前記活性金属とその近傍の担体のCe上の高速酸素吸脱着サイトの働きを発揮させることが可能となる。また、NOの解離により生じた酸素種を担体のCe上に効率よく吸着し、Hによる再生機能により脱着させることが可能となり、200℃以下の低温度域においても、十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能となる。
【0033】
Ceを含有する担体としては、セリウムの酸化物、水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩等を少なくとも含む担体が挙げられるが、比較的高比表面積を有するという観点からセリウムの酸化物であることが好ましい。この場合、Ce酸化物(酸化セリウム)を単独で用いてもよく、また、酸化セリウムをその他の1種以上の金属酸化物と固溶させて得られる複合酸化物、又は、それらの混合物を用いることができる。
【0034】
本発明にかかるCeを含有する担体においては、担体中のセリウムの含有量としては特に制限されないが、酸化物換算で30〜95質量%が好ましく、50〜90質量%がより好ましい。セリウムの含有量が下限未満になると、十分な酸素吸脱着能が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担体として耐熱性が低下し、十分な酸素吸脱着能と活性金属粒子の高分散化が得られない傾向にある。
【0035】
このようなCeを含有する担体に含有させることが可能なセリウム以外の成分としては、触媒の担体に利用することが可能な公知の他の成分を適宜利用することができる。このようなCeを含有する担体に含有するセリウム以外の他の成分としては、担体の熱安定性や触媒活性の観点から、例えば、チタニウム(Ti)、ケイ素(Si)、リン(P)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、ランタン(La)等の元素の酸化物を好適に用いることができる。
【0036】
なお、本発明のNO分解触媒の担体は、Ce酸化物中にZr(ジルコニウム)、La(ランタン)及びPr(プラセオジム)からなる群から選択される少なくとも1種を含有しているものであることが好ましい。担体として、Zr、La及びPrからなる群から選択される少なくとも1種を含有したCe酸化物とすることにより、CeOの還元を起こり易くするとともにOSC(酸素貯蔵能)を低温から発現させる効果がより向上する傾向にある。また、前記Ceを含有する担体中に含有するZr、La及びPrからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が、金属元素換算で、5〜70モル%がより好ましく、10〜50モル%が特に好ましい。Zr、La及びPrからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が下限未満になると、担体として耐熱性が低下し、十分な酸素吸脱着能と活性金属粒子の高分散化が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、十分な酸素吸脱着能が得られない傾向にある。
【0037】
また、本発明のNO分解触媒においては、NO分解触媒の150℃における活性酸素吸放出速度が、5μmol/g/sec以上であることが好ましい。NO分解触媒の150℃における活性酸素吸放出速度を、5μmol/g/sec以上とすることにより、NOの解離により生成した酸素の脱離除去効果が十分得られるようになる傾向にある。
【0038】
また、前記Ceを含有する担体にRh、Pt、Cu、Co、Ni、Fe、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属を担持させる方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、Ptを含む化合物(例えば、硝酸塩、塩化物、酢酸塩等の白金の塩や、白金の錯体など)を水やアルコール等の溶媒に溶解した溶液を準備して、これらの溶液を前記Ceを含有する担体に接触させ(例えば前記Ceを含有する担体を水やアルコール等の溶媒に分散させた分散液中に上記溶液を添加することにより、上記溶液を前記Ceを含有する担体に接触させ)、乾燥し、焼成する方法を採用してもよい。なお、このような乾燥や焼成の際の条件は特に制限されず、公知の条件を適宜採用することができ、例えば、乾燥条件としては80〜140℃で1〜24時間程度加熱する条件を、焼成条件としては200〜500℃で0.5〜5時間程度加熱する条件を、それぞれ採用してもよい。
【0039】
また、本発明のNO分解触媒においては、その形態は特に制限されず、例えば、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態とすることができる。ここで用いられる基材も特に制限されず、得られる触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等を好適に採用されすることができる。また、ここで用いられる基材の材質も特に制限されないが、コージェライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用することができる。
【0040】
また、このような基材に前記NO分解触媒を担持する方法も特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、モノリス状基材に担体を担持せしめて担体の粉末からなるコート層を形成した後、前記コート層に前記金属粒子を担持せしめ、その後、前記コート層に前記第三の金属を担持せしめる方法や、あらかじめ前記金属粒子を担持せしめた担体を用い、これをモノリス状基材に担持せしめてコート層を形成した後、前記コート層に前記第三の金属を担持せしめる方法等を採用することができる。
【0041】
なお、このようなNO分解触媒においては、本発明の効果を損なわない範囲で用いることが可能な他の成分を適宜担持してもよい。
【0042】
本発明の排ガス浄化システムにおいては、前記NO分解触媒による分解処理前の前記排ガス又は/及び前記NO分解触媒による分解処理中の前記排ガスに、水素含有ガスを間欠的に供給する水素含有ガス供給手段を更に備えることが好ましい。このように前記排ガスに水素含有ガスを間欠的に供給することにより、NOの解離を促進するとともに、Ce上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。
【0043】
本発明に用いる水素含有ガスとしては、水素(H)を含有するガスであれば特に限定されず、例えば、水素ガスや、水素ガスに窒素ガス、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン)などのガスを混入した水素混合ガスなどが挙げられる。
【0044】
また、上記水素含有ガス供給手段の配設位置は、NO分解触媒が配設された箇所や、NO分解触媒の配設箇所より前の排気経路の適宜箇所、などが挙げられる。
【0045】
本発明においては、前記水素含有ガスの供給量が、Hの総容量がNO総容量の2倍以上であり、且つH濃度がNO濃度の3倍以上となる条件を満たすものであることが好ましい。水素の供給量が前記条件を満たすように水素含有ガスを供給することにより、NOの過渡分解効果が十分得られる傾向にある。
【0046】
また、本発明の排ガス浄化システムにおいては、内燃機関の排気通路にNOx吸着材、NOx還元触媒及びNO分解触媒が設けられているが、NOx吸着材、NOx還元触媒及びNO分解触媒からなる触媒群が複数設けられていてもよい。また、本発明にかかるNOx吸着材、NOx還元触媒及びNO分解触媒以外の他の触媒と組み合わせて利用してもよい。このような他の触媒としては、特に制限されず、公知の触媒を適宜用いてもよい。
【0047】
以上、本発明の排ガス浄化システムについて説明したが、以下、本発明の排ガス浄化方法について説明する。
【0048】
本発明の排ガス浄化方法は、NOxを吸着可能なNOx吸着材と、該NOx吸着材の下流側に配置したNOx還元触媒と、該NOx還元触媒の下流側に配置したNO分解触媒とを内燃機関の排気通路内に配設し、前記内燃機関から排出される排ガスを前記NOx吸着材、前記NOx還元触媒及び前記NO分解触媒に接触させることにより該排ガス中に含まれる窒素酸化物を浄化する排ガス浄化方法であって、前記NO分解触媒が、Rh、Pt、Cu、Co、Ni、Fe、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属と、Ceを含有する担体と、を含んでいることを特徴とするものである。
【0049】
本発明の排ガス浄化方法において用いるNOx吸着材、NOx還元触媒及びNO分解触媒は、上記本発明の排ガス浄化システムにおいて用いる前記NOx吸着材、前記NOx還元触媒及び前記NO分解触媒と同様のものを用いることができる。また、内燃機関の排気通路内への前記NOx吸着材、前記NOx還元触媒及び前記NO分解触媒の配設についても、上記本発明の排ガス浄化システムにおける配置と同様である。
【0050】
本発明においては、前記内燃機関から排出される排ガスを前記NOx吸着材、前記NOx還元触媒及び前記NO分解触媒に接触させることにより該排ガス中に含まれる窒素酸化物を浄化する排ガス浄化方法であることが必要である。ここで、内燃機関から排出される排ガスを前記NOx吸着材、前記NOx還元触媒及び前記NO分解触媒に接触させる方法としては、特に制限されず、例えば、内燃機関の排気通路内に前記NOx吸着材、前記NOx還元触媒及び前記NO分解触媒を配置し、ガソリン車のエンジン、ディーゼルエンジン、燃料消費率の低い希薄燃焼式(リーンバーン)エンジン等の内燃機関から排出される排ガスを、排気通路内において上記本発明の前記NOx吸着材、前記NOx還元触媒及び前記NO分解触媒に接触させる方法等を採用してもよい。
【0051】
本発明の排ガス浄化方法においては、NO分解触媒による分解処理前の排ガスに、水素含有ガスを間欠的に供給することが好ましい。これにより、NOの解離を促進するとともに、Ce上に吸着した酸素種の脱着を促進することができる。
【0052】
ここで、本発明で用いる水素含有ガスとしては、水素(H)を含有するガスであれば特に限定されず、例えば、水素ガスや、水素ガスに窒素ガス、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン)などのガスを混入した水素混合ガスなどが挙げられる。
【0053】
次に、本発明の排ガス浄化方法においては、前記水素の供給量が、H添加間隔でのHの総量がNO総量の2倍以上であり、且つH濃度がNO濃度の3倍以上となる条件を満たすものであることが好ましい。水素の供給量を、該範囲内とすることにより、NO解離のための活性金属の活性化と残存酸素の脱離除去効果が十分得られる。
【0054】
また、上記水素含有ガスの供給は、NO分解触媒が配設された箇所に水素含有ガス供給手段により供給する方法、NO分解触媒の配設箇所より前の排気経路の適宜箇所に水素含有ガス供給手段により供給する方法、などが挙げられる。
【0055】
なお、本発明においては、NO分解触媒による分解処理前のNO含有ガスに、水素含有ガスを間欠的に供給することが好ましい。このように分解処理前のNO含有ガスに水素含有ガスを間欠的に供給することにより、NOの解離を促進するとともに、Ce上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。
【0056】
また、水素含有ガスを接触させる条件及び方法としては、特に制限されないが、接触条件としては、上述のHの総量及び濃度がNO分解触媒の上流にて実現できる条件であることが好ましい。この条件とすることにより、NOの解離及びCe上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。接触方法としては、NO分解触媒の上流側に添加或いはエンジン制御により発生させる方法であることが好ましい。この方法とすることにより、NOの解離及びCe上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。
【0057】
また、水素含有ガスの供給において、間欠的な供給とは、一定の時間をおいて水素含有ガスを繰り返し供給することを意味する。なお、間欠的供給の条件、間欠供給の具体的方法、供給手段としては、特に制限されないが、間欠的供給の条件は、非供給時に生成するNOに対して、十分な量を短時間で供給することが好ましい。具体的には、H添加間隔でのHの総量がNO総量の2倍以上であり、且つH濃度がNO濃度の3倍以上となる条件であることが好ましい。この条件とすることにより、NOの解離及びCe上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。間欠的供給の具体的な方法としては、3sec以上継続してHが供給されることが好ましい。この方法とすることにより、NOの解離及びCe上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。間欠的供給の供給手段としては、NO分解触媒の上流側に添加或いはエンジン制御により発生させる方法であることが好ましい。この方法とすることにより、NOの解離及びCe上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。
【0058】
また、本発明においては、前記排ガスを、200℃以下の温度で前記NO分解触媒に接触させることが好ましい。これにより、200℃以下という低温度域におけるNO分解性能がより向上する傾向にある。さらに、前記NO分解触媒への前記排ガスの接触温度が、150℃以下の温度であることがより好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(調製例1:触媒担体の調製)
直径30mm、長さ25mmLの六角セルコージェライトモノリス基材(セル密度:400cell/inch)に対して、ウォッシュコート法を利用して、アルミナ粉末(平均粒子径22μm、WRグレース社製の商品名「M1386」)を、前記モノリス基材1Lあたりのコート量が200g/Lとなるようにしてコートし、触媒担体(A)を調製した。
【0061】
(調製例2:触媒担体の調製)
直径30mm、長さ25mmLの六角セルコージェライトモノリス基材(セル密度:400cell/inch)に対して、ウォッシュコート法を利用して、硝酸セリウムとオキシ硝酸ジルコニルと硝酸ランタンと硝酸プラセオジムを用いて共沈法により調製したセリア−ジルコニア−ランタン−プラセオジア粉末(平均粒子径20μm、セリア60部-ジルコニア30部-ランタナ3部-プラセオジア7部の複合酸化物)を、前記モノリス基材1Lあたりのコート量が160g/Lとなるようにしてコートし、触媒担体(B)を調製した。
【0062】
(調製例3:触媒担体の調製)
直径30mm、長さ25mmLの六角セルコージェライトモノリス基材(セル密度:400cell/inch)に対して、ウォッシュコート法を利用して、硝酸セリウムとオキシ硝酸ジルコニルと硝酸ランタンと硝酸プラセオジムを用いて共沈法により調製したセリア−ジルコニア−ランタン−プラセオジア粉末(平均粒子径20μm、セリア70部-ジルコニア20部-ランタナ3部-プラセオジア7部の複合酸化物)を、前記モノリス基材1Lあたりのコート量が160g/Lとなるようにしてコートし、触媒担体(C)を調製した。
【0063】
(調製例4:触媒担体の調製)
直径30mm、長さ25mmLの六角セルコージェライトモノリス基材(セル密度:400cell/inch)に対して、ウォッシュコート法を利用して、セリア粉末(硝酸セリウムを用いて沈殿法により調製したセリア粉末(平均粒子径20μm、セリア100部))を、前記モノリス基材1Lあたりのコート量が200g/Lとなるようにしてコートし、触媒担体(A)を調製した。
【0064】
(調製例5:NO分解触媒の調製)
調製例2で得られた触媒担体(B)に対して、前記モノリス基材1Lあたりのロジウム(Rh)の担持量が1g/Lとなるようにして、硝酸ロジウム水溶液を吸着担持させた後、大気中、300℃の温度条件で3時間焼成して、Rhセリア複合酸化物からなるNO分解触媒(P1)を調製した。
【0065】
(調製例6:NO分解触媒の調製)
調製例3で得られた触媒担体(C)に対して、前記モノリス基材1Lあたりのロジウム(Rh)の担持量が1g/Lとなるようにして、硝酸ロジウム水溶液を吸着担持させた後、大気中、300℃の温度条件で3時間焼成して、Rhセリア複合酸化物からなるNO分解触媒(P2)を調製した。
【0066】
(調製例7:NO分解触媒の調製)
調製例4で得られた触媒担体(D)に対して、前記モノリス基材1Lあたりのロジウム(Rh)の担持量が1g/Lとなるようにして、硝酸ロジウム水溶液を吸着担持させた後、大気中、300℃の温度条件で3時間焼成して、RhセリアからなるNO分解触媒(P3)を調製した。
【0067】
(調製例8:NOx還元触媒の調製)
調製例1で得られた触媒担体(A)にジニトロジアンミンPt水溶液及び硝酸パラジウム水溶液を、担体1LあたりのPt、Pdの担持量が2.6g/L、1.3g/Lとなるようにして、吸着担持させた後、大気中、300℃の温度条件で3時間焼成してPtPdアルミナからなるNOx還元触媒(Q1)を調製した。
【0068】
(調製例9:NOx吸着材の調製)
(Agアルミナの調製)
調製例1で得られた触媒担体に、硝酸銀水溶液を担体1L当りのAgの担持量が0.4mol/Lとなるようにして吸着させた後、大気中、550℃の温度条件で5時間焼成して、Agアルミナを調製した。
(TiAgアルミナの調製) 先ず、クエン酸1.5molをイオン交換水450mLに溶解させ、得られた溶液を75℃に加熱した。次に、前記溶液にチタンイソプロポキシド0.3molを加え、溶解させた後、室温まで冷却し、チタンクエン酸錯体水溶液(0.64mol/L)を調製した。この水溶液を、上記のAgアルミナに触媒1L当りTi担持量が0.27mol/Lとなるようにして吸水含浸させて担持し、大気中、550℃の温度条件で5時間焼成してTiAgアルミナからなるNOx吸着材(R1)を調製した。
【0069】
[調製例5〜7で得られた触媒の特性評価]
<性能評価試験1:活性酸素量試験>
調製例5〜7で得られたNO分解触媒(P1〜P3)をそれぞれ用い、測定装置として全自動流通式触媒評価装置(分析計:堀場製作所社製、商品名:「MEXA−7100D」)を用いて、以下のようにして触媒の過渡活性酸素吸放出速度を測定した。すなわち、先ず、各触媒に対して、150℃の温度条件下において、表1に示すガスを使用して、COとOを間欠的に10分間供給した後、150℃におけるCO脱離量を測定し、NO分解触媒P1〜P3の活性酸素量に関する情報を得た。なお、COを導入後5秒間で生成したCO生成速度を過渡活性酸素吸放出速度として算出した。
【0070】
得られた結果を、表2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表2に示す結果からも明らかなように、本発明にかかるNO分解触媒P1〜P3(調製例1〜3)においては、いずれも高い過渡活性酸素吸放出速度を有することが確認された。特に、NO分解触媒P1及びP2では、より高い過渡活性酸素吸放出速度を有することが確認された。
【0074】
<性能評価試験2:過渡NO分解活性評価試験>
調製例5〜7で得られたNO分解触媒(P1〜P3)をそれぞれ用い、排ガス触媒自動評価装置((株)ベスト測器製、商品名:CATA−5000)により、以下のようにして過渡NO分解活性試験を行った。すなわち、先ず、調製例5〜7で得られた各排ガス浄化用触媒を500℃の温度条件下において、15L/分の流量で、O(1容量%)及びN(99容量%)からなるガスを10分間流して前処理を行った。次に、前処理後のNO分解触媒(P1〜P3)に対して、500℃〜50℃の温度条件下において、15L/分の流量で、H(1容量%)及びN(99容量%)からなるガスを2分間流して還元前処理を行った。次いで、上記還元前処理後のNO分解触媒(P1〜P3)に対して、150℃〜50℃の温度条件下において、15L/分の流量でNO(0.01容量%)及びN(バランス)からなるガスを、40〜60分間流して、過渡時のNO分解量を測定した。
【0075】
調製例5(P1)の触媒を用いて、過渡NO分解活性試験を行った結果を、図1及び図2に示す。図1は500℃H前処理後の50〜150℃におけるNO分解活性(NO低減率)の経時変化を、図2は50〜400℃における前処理後の50℃におけるNO分解活性(NO低減率)の経時変化を示す。50℃以上のH処理において、50℃からの低温においてNO分解活性を発現することが確認された。
【0076】
(実施例1)
調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1、17cc、30mmφ×25mmL)と調製例5で得られたNO分解触媒(P1、17cc、30mmφ×25mmL)を準備し、以下のようにH間欠添加を含む過渡変動条件下にて性能評価試験に供した。
<性能評価試験3:耐久試験>
先ず、内径5cm、長さ100cmの試験用ガス管を用意し、該試験用ガス管の上流側に調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1、17cc、30mmφ×25mmL)を、下流側に調製例5で得られたNO分解触媒(P1、17cc、30mmφ×25mmL)を配置した。次に、試験用ガス管に空気を1L/分の流量で流通させ、750℃で5時間保持する耐久試験を行った。
【0077】
<性能評価試験4:低温吸着材からの脱離NOx模擬評価(過渡NO分解活性試験)>
次に、耐久試験後の実施例1の排ガス浄化用触媒を用い、以下のようにして過渡NO分解活性試験を行った。すなわち、先ず、排ガス触媒自動評価装置((株)ベスト測器製、商品名:CATA−5000)を用意し、上流側に調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1、17cc、30mmφ×25mmL)を、下流側に調製例5で得られたNO分解触媒(P1、17cc、30mmφ×25mmL)を配置した。次に、リーン雰囲気で吸着したNOxのリッチ雰囲気における脱離を模擬した表3に示すリーン1/リッチガスを60sec/20secで変動させながら150℃にて流すことによりNOx及びNOの生成分解挙動を調べた。
【0078】
【表3】
【0079】
(実施例2)
調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1、17cc、30mmφ×25mmL)と調製例6で得られたNO分解触媒(P2、17cc、30mmφ×25mmL)を準備し、実施例1と同様にして、耐久試験及び過渡NO分解活性試験を行った。各評価試験においては、調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1)を上流側に、調製例6で得られたNO分解触媒(P2)を下流側に配置した。
【0080】
参考例1
調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1、17cc、30mmφ×25mmL)と調製例7で得られたNO分解触媒(P3、17cc、30mmφ×25mmL)を準備し、実施例1と同様にして、耐久試験及び過渡NO分解活性試験を行った。各評価試験においては、調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1)を上流側に、調製例7で得られたNO分解触媒(P3)を下流側に配置した。
【0081】
(比較例1)
調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1、17cc、30mmφ×25mmL)を準備し、実施例1と同様にして、耐久試験及び過渡NO分解活性試験を行った。
【0082】
(比較例2)
調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1、17cc、30mmφ×25mmL)と調製例5で得られたNO分解触媒(P1、17cc、30mmφ×25mmL)を準備し、実施例1と同様にして、耐久試験を行った。また、表3に示すリーン2ガスを150℃において定常的に流すこと以外は、実施例1と同様にして、過渡NO分解活性試験を行った(H添加を含む定常リーン条件下にて性能評価試験)。各評価試験においては、調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1)を上流側に、調製例5で得られたNO分解触媒(P1)を下流側に配置した。
【0083】
<低温吸着材からの脱離NOx模擬評価試験の結果>
実施例1〜2、参考例1及び比較例2を用いて過渡NO分解活性試験を実施した結果を、表4に示す。
【0084】
表4に示す結果からも明らかなように、実施例1〜の触媒は、比較例2に比較して何れもNOx分解活性、NO分解過渡活性が向上しており、NOxからのN変換に対して有効であること確認された。また、比較例2の定常条件ではNOxが分解活性を示さず、H間欠添加が有効であることが確認された。さらに、実施例1〜においては、より高い過渡活性酸素吸放出速度を有する調製例5のCe材を用いた実施例1でより高いN変換率を示すことが確認された。
【0085】
【表4】
【0086】
また、上記試験における実施例1及び比較例1のNO生成挙動を、図3に示す。
【0087】
図3に示す結果からも明らかなように、上流側のNOx還元触媒によりNOx分解時に生成するNOを、下流側のNO分解触媒によって分解できることが確認された。
【0088】
参考例2
調製例9で得られたNOx吸着材(R1、17cc、30mmφ×25mmL)と調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1、17cc、30mmφ×25mmL)と調製例7で得られたNO分解触媒(P3、17cc、30mmφ×25mmL)を準備し、耐久試験(実施例1の性能評価試験3と同様にして実施)及びNOx浄化活性試験(性能評価試験5)を行った。なお、各耐久試験においては、調製例9で得られたNOx吸着材(R1)を上流側に、調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1)をNOx吸着材(R1)の下流側に、調製例7で得られたNO分解触媒(P3)をNOx還元触媒(Q1)の下流側に配置した。
【0089】
<性能評価試験5:NOx浄化活性試験>
排ガス触媒自動評価装置((株)ベスト測器製、商品名:CATA−5000)を用意し、表5のモデルガスを用いてNOx浄化性能を調査した。
【0090】
先ず、排ガス触媒自動評価装置に、NOx吸着材(R1)、NOx還元触媒(Q1)及びNO分解触媒(P3)を、上記に示す通りに配置した。次に、400℃にて表5に示すリッチ前処理ガスを5分間流通させた後、表5に示すリーン前処理ガスを5分間流通させて前処理を行った。次いで、表5に示すリーン2のガスにて150℃に降温し、続いて、リーン1のガスを10分間流通させたNOx吸着過程1を行った。次に、表5に示すリーン2のガスに切り替えて5分間保持した後(脱離過程1)、表5に示すリッチガスに切り替えてNOx還元過程を行った。次いで、表5に示すリーン2ガスに切り替えて5分間保持した後(脱離過程2)、表5に示すリーン1のガスを10分間流通させたNOx吸着過程2を行い、NOx浄化量及びNO生成率を調査した。NOx浄化量は、NOx吸着過程2におけるNOx吸着量から、脱離過程1、脱離過程2及びNOx還元過程におけるNOx脱離量を差し引くことにより算出し、NO生成率は全過程におけるNO生成量のNOx浄化量に対する比率により算出した。
【0091】
【表5】
【0092】
(比較例3)
調製例9で得られたNOx吸着材(R1、17cc、30mmφ×25mmL)と調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1、17cc、30mmφ×25mmL)を準備し、参考例2と同様にして、耐久試験及びNOx浄化活性試験を行った。なお、各耐久試験においては、調製例9で得られたNOx吸着材(R1)を上流側に、調製例8で得られたNOx還元触媒(Q1)をNOx吸着材(R1)の下流側に配置した。
【0093】
<評価試験の結果>
参考例2及び比較例3を用いてNOx浄化活性試験を実施した結果を、表6に示す。
【0094】
表6に示す結果からも明らかなように、参考例2の触媒は、比較例3の触媒に比較してNOの生成が大幅に低減されることが確認された。
【0095】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明したように、本発明によれば、200℃以下という低温度域において、十分に高度なNOx浄化性能を有し、且つ十分に高度な水準で低いNO副生率とすることが可能な排ガス浄化システム及び排ガス浄化方法を提供することが可能となる。このような本発明の排ガス浄化システム及び排ガス浄化方法は、自動車の内燃機関からの排ガスを浄化する際に用いる排ガス浄化システム及び排ガス浄化方法等として特に有用である。
図1
図2
図3