(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
〔実施形態1〕
図1は本発明による歩行訓練システム及び歩行訓練器を歩行器に取り付けた実施形態1を示す図である。
図2は実施形態1の歩行訓練システム及び歩行訓練器で歩行訓練を行う様子を示す平面図である。
図3は実施形態1の歩行訓練システム及び歩行訓練器で歩行訓練を行う様子を示す側面図である。
【0013】
図1〜
図3、
図5(A)に示されるように、歩行訓練システム10は、歩行データ検出ユニット20と、歩行データ表示ユニット30とを有する。歩行データ検出ユニット20は、歩行訓練器50の左右両側に配置された一対の把持部54L、54Rに設けられた一対のセンサユニット60L、60Rと、通信ユニット(通信手段)70とを有する。尚、一対の把持部54L、54Rは、歩行訓練器50に固定された構成としても良いし、あるいは歩行訓練器50に対して分離可能な構成としても良い。すなわち、歩行訓練器50は、本歩行訓練システム専用のものでなくても良く、例えば、既存のものに一対のセンサユニット60L、60R、及び通信ユニット(通信手段)70を後から取り付けた構成であっても良い。
【0014】
歩行訓練器50は、歩行訓練を行う訓練者Pが把持する手摺り52と、手摺り52の両端に設けられた一対の把持部54L、54Rと、一対の把持部54L、54Rを支持するフレーム56と、フレーム56の底部に設けられた複数の車輪58とを有する。一対の把持部54L、54Rは、上方からみるとU字状に形成された手摺り52の両端に設けられ、水平方向(後方)に平行に延在しており、手摺りとして訓練者Pに把持される。また、訓練者Pの正面に位置する手摺り52の中間位置には、通信ユニット70が取り付けられている。尚、歩行訓練器50は、上記構成のものに限らず、例えば、平行棒のように訓練者Pの左右両側に把持することができる棒状のものが配置されたものでも良い。
【0015】
訓練者Pは、U字状に形成された手摺り52の内側に入り、左右両側に位置する各把持部54L、54Rを左手、右手で上方から把持する。そして、訓練者Pは、一対のセンサユニット60L、60Rによる検出精度を安定させるため、予め指示された方向から各把持部54L、54Rを把持しながら歩行訓練を行う。
【0016】
また、フレーム56は、手摺り52を所定高さ位置に支持する支柱57と、底部に車輪58を有するU字状に形成された車輪支持部59とを有する。車輪支持部59は、手摺り52よりも外側に装架されるため、訓練者Pの歩行動作を妨げないように配置されている。
【0017】
一対のセンサユニット60L、60Rは、一対の把持部54L、54Rの付け根部分に取り付けられており、訓練者Pが把持部54L、54Rを押圧する力の大きさに応じた力検出信号を出力する。通信ユニット70は、例えば、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)シリアル通信などの短距離無線通信技術により送受信可能な通信機である。また、通信ユニット70は、データ変換部72と、データ送受信部74とを有する。データ変換部72は、20Hzのサンプリング周期で一対のセンサユニット60L、60Rにより検出された力検出信号を取得し、無線信号に変換する。データ送受信部74は、データ変換部72により変換された当該無線信号を歩行データ表示ユニット30のデータ処理装置90に送信する。また、通信ユニット70は、データ変換部72及びデータ送受信部74に電源供給を行うバッテリ(図示せず)が収納されている。
【0018】
歩行データ表示ユニット30は、表示装置(表示手段)80と、データ処理装置(演算手段)90とを有する。表示装置80は、歩行訓練器50から離れた場所に別体に設けられ、訓練者Pが見やすいように大型ディスプレイからなり、且つスタンド82により所定高さ位置に支持されている。尚、表示装置80は、訓練者Pの位置に応じて画面の向きを回動可能に支持されており、歩行訓練で移動する訓練者Pから見やすい方向にリモートコントローラによる手動調整、または内臓カメラの画像データによる訓練者Pの位置検出に基づいて自動調整される。
【0019】
また、データ処理装置90は、データ送受信部100と、記憶部110と、データ解析部120と、画像生成部130とを有する。データ送受信部100は、歩行訓練器50の通信ユニット70から送信されたデータ(力検出信号)を受信し、受信信号を保存用データ形式に変換して記憶部110に出力する。記憶部110は、データ送受信部100で受信されたデータを時系列データとして順次記憶する。データ解析部120は、記憶部110に記憶された各データ(力検出信号)を読み出して左右の把持部54L、54Rに作用する力分布(力の割合)を演算し、把持部54L、54Rに作用する力の差から当該訓練者Pの重心位置、左右方向の上体バランス等の歩行訓練中の訓練者Pのデータを解析する。画像生成部130は、解析結果から表示装置80に表示するグラフィック(左右の力の差が分かるようにデザインされた判定画像の画像データ)を生成する。
【0020】
〔荷重センサによる力検出方法〕
図4は訓練者が歩行訓練器を用いて歩行訓練する際の力を検出する荷重センサを示す図である。
図4に示されるように、センサユニット60L、60Rの各荷重センサ部(力検出手段)62は、把持部54L、54Rの付け根部分(訓練者Pの立つ位置より前側の位置)に設けられている。一対の荷重センサ部62は、歪みゲージ等の力検出センサからなり、把持部54L、54Rに作用する荷重に応じて手摺り52に生じる歪み量に比例した検出信号(電圧)を出力する。尚、センサユニット60は、把持部54L、54Rのどちらでも同じ構成であるので、ここで、右側の把持部54の作用について説明する。
【0021】
一対の荷重センサ部62は、把持部54Rより前側に位置する手摺り52の外周の上側と下側に直接貼り付けられている。訓練者Pの右手が把持した把持部54Rには、上方から下方に向けて力Fが作用する。訓練者Pは、歩行訓練を行う場合、脚の動きがスムーズに行えないと、把持部54Rに体重をかけ脚にかかる重みを軽減しようとするため、把持部54Rに作用する力Fが大きくなる。尚、当該訓練者Pによる歩行訓練時、手摺り52への依存は左右で同一になるとは限らないため、左右それぞれの手摺り52の把持部54L、54Rにおいて別個に手摺り依存荷重(力F)を計測する。
【0022】
手摺り52に生じる歪み量εは、歪み計測点M1(荷重センサ部62の位置)から訓練者Pが力F(N)を付与する荷重重心位置M2までの距離Lと、荷重量(力F)の積に比例する。歪み量εと荷重量(力F)に関して次式(1)の関係が成立する。
【0023】
F=C・ε/L ・・・(1)
尚、Cは本実施形態1で使用する歩行訓練器50の固有の変換係数である。距離Lを正確に計測するため、距離L1と距離L2に分割して考える。距離L1は、手の荷重重心位置M2から訓練者Pの手の前側端面までの距離である。また、距離L2は、歪み計測点M1から訓練者Pの手の前側端面までの距離である。これらの距離L1、L2を式(1)に代入すると次式が得られる。
【0024】
F=C・ε/(L1+L2) ・・・(2)
上記式(2)により、変換係数Cを予め求めておけば、歩行訓練中の歪み量εと距離L1、L2を計測することで手摺り52に作用する依存荷重量(力F)を算出することができる。
【0025】
また、上記距離L1は、当該訓練者Pが歩行訓練器50を用いて歩行訓練を行う間に随時計測する第1の方法と、定数として処理する第2の方法とがある。第1の方法は、複数の圧力センサを訓練者Pの手と手摺り52との間に挟み、各圧力センサの計測値を比較することで実現できる。しかしながら、手摺り52は、訓練者Pが握るのに適した形状、及び、質感に設計されているため、訓練者Pの手の平や訓練者Pが触れる手摺り表面に圧力センサを取り付けるのは望ましくない。
【0026】
また、手摺り52を把持するときの握力が計測される荷重重心位置M2に影響するので、圧力センサを手摺り52に取り付けて距離L1を計測することは望ましくない。そこで、第2の方法により距離L1を予め一定値に設定し、手摺り52への依存荷重を計測する。
【0027】
また、距離L1の変動要因を除くため、訓練者Pは把持部54を親指を除く4本指を手摺り52に対して上方から垂直にして握ることで計測値のばらつきを防止する。
【0028】
ここで、訓練者Pが把持部54L、54Rを把持する際、歩行訓練器50への依存荷重を認識し、歩行状況を把握するために必要な荷重計測の分解能について検討する。訓練者Pの歩行訓練器50に対する依存度が高いほど、手摺り52への依存荷重は増加する傾向にある。また、訓練者Pの歩行訓練器50に対する依存度が低いほど、手摺り52への依存荷重は減少する傾向にある。
【0029】
例えば、痙直型の脳性麻痺児に対して、免荷装置により体重の免荷を行った状態で歩行訓練を実施した研究では、免荷量は体重の約40%〜60%程度に設定されている。また、慢性脳卒中患者に対して、免荷装置により体重の免荷を行った状態で歩行訓練を実施した研究では、免荷量が体重の20%〜30%程度に設定されている。これらのことから、免荷重や訓練者Pが手摺り52にかける荷重量は、体重に対する割合で評価することが望ましいと考えられる。
【0030】
そこで、体重と比較するため、目標分解能を1kg、つまり約10Nの依存荷重を計測するセンサユニット60を有する本発明の歩行訓練システム10を用いた実証実験を行った結果、荷重計測の目標分解能が歩行訓練中の訓練者Pが手摺り52への依存荷重を認識し、歩行の状況を把握するのに十分であることを確認した。
【0031】
手摺り52への依存荷重は、歩行中に左右で同じ変化を示すとは限らないので、手摺り52にかかる荷重を左右別に計測する。そこで、荷重センサ部62を手摺り52の左右に、上側と下側のそれぞれ一対ずつ貼り付けることで、把持部54L、54Rを押圧したときの歪み量を計測する。尚、一対の荷重センサ部62は、荷重の作用方向が下向きの場合、手摺り52の上側に貼り付けられた荷重センサ部62が引張り荷重による歪み量を検出し、手摺り52の下側に貼り付けられた荷重センサ部62が圧縮荷重による歪み量を検出する。
【0032】
また、荷重センサ部62より出力された電圧値Vε(力検出信号)をアンプに通して増幅することで、10Nの分解能で荷重計測が可能になる。さらに、訓練者Pによって握りやすい把持位置がことなることから、荷重センサ部62の計測位置M1から訓練者Pの手の前側位置までの距離L2を計測し、当該訓練者Pの手の横幅の半分の寸法L1を加算して荷重作用点の位置M2から計測位置M1までの距離Lを求める。これで、訓練者Pによって把持部54L、54Rの異なる位置を把持しても手摺り52にかかる荷重を計測できる。
【0033】
図5は歩行訓練器50の手摺り52に設けられた力検出ユニットを示す図である。
図5(A)に示されるように、歩行訓練器50の手摺り52は、上方から見るとU字状に痙性されており、1つの把持部54L、54Rの基端に連結された連結部55を有する。連結部55の両端と把持部54L、54Rの基端との接続箇所には、センサユニット60L、60Rが設けられている。
【0034】
図5(B)に示されるように、センサユニット60L、60Rは、荷重センサ部62と、手摺り52に締結されたベース64と、把持した手の前側端部までの距離を計測する光測距センサ66と、光測距センサ66の上方を覆うようにベース64の上側に結合されたカバー68とを有する。荷重センサ部62は、歪みゲージからなり、手摺り52の外周の上側と下側に直接貼り付けられているので、
図5(B)ではベース64の内側に配置されてみえない。
【0035】
また、光測距センサ66は、手摺り52の延在方向(後方の水平方向)に沿うように光を照射して手摺り52を把持した手からの反射光を捉えて計測位置M1から訓練者Pの手の前側位置までの距離L2(
図4参照)を計測する。そして、光測距センサ66により計測された距離L2に、当該訓練者Pの手の横幅の半分の寸法L1を加算して荷重作用点の位置M2から計測位置M1までの距離Lを算出する。尚、ベース64及びカバー68の側面には、光測距センサ66が光を出射し、反射光を受光するための光通過用の開口(U字状溝の組み合わせたもの)が設けられている。
【0036】
また、歩行訓練器50の手摺り52は、高さ調整を行う高さ調整機構(図示せず)を有する構成であるので、センサユニット60L、60Rが高さ調整機構と干渉しないようにベース64及びカバー68により荷重センサ部62及び光測距センサ66が保護されている。
【0037】
図6は本発明による歩行訓練システムの制御系を示す図である。
図6に示されるように、訓練者Pは歩行訓練を行う場合、両手で歩行訓練器50の左右両側に装架された把持部54L、54Rを把持して押しながら前進する。その際、訓練者Pは、正面の表示装置80に表示された判定画像(データ処理装置90により生成された歩行訓練中の手摺り依存荷重の偏りを示す画像)をみて、現在の左右の体のバランス及び重心のずれを確認しながら表示装置80に向かって歩くことになる。そのため、表示装置80は、訓練者Pに対して表示された判定画像を視覚情報としてフィードバックすることができる。従って、訓練者Pは、表示装置80に表示された判定画像をみて、手摺り依存荷重の偏りが生じないように体の姿勢や左右のバランスを修正しながら歩行訓練を行える。
【0038】
また、歩行訓練器50に搭載された通信ユニット70においては、センサユニット60L、60Rの荷重センサ部62により検出された手摺り52の歪み量ε及び光測距センサ66により計測された距離L2の各計測データをデータ変換部72で無線信号に変換し、データ送受信部74より無線信号を送信する。
【0039】
歩行データ表示ユニット30のデータ処理装置90のデータ解析部120は、通信ユニット70から送信された各計測データ(ε、L2)を受信すると、各計測データ(ε、L2)及び予め設定された当該訓練者Pの手の横幅の半分の寸法L1、及び変換係数Cを前述した式(2)に代入して訓練者Pが把持部54L、54Rに付加する各荷重量(力FL、FR)を演算する。
【0040】
さらに、データ処理装置90の画像生成部130は、上記解析結果から演算された把持部54L、54Rに付加する各荷重量(力FL、FR)に基づくグラフィック(左右の力の差が分かるようにした画像データ)を生成する。そして、表示装置80は、画像生成部130により生成された画像データ(把持部54L、54Rに作用する力分布を示すグラフィック)をリアルタイムで表示する。これにより、訓練者Pは、表示装置80に表示された画像データを視覚情報としてフィードバックされ、歩行訓練中の左右方向の重心位置のずれや、歩行訓練中の左右のバランスなどを視覚的に認識することができる。
【0041】
図7は表示装置80に表示される歩行訓練中の画像データの表示例を示す図である。表示装置80に表示される歩行訓練中の画像データの表示例としては、
図7に示される画像データ300を表示する。この画像データ300は、手摺り52を上方からみたU字状の擬似手摺り310と、把持部54L、54Rを把持した位置(荷重が付加された位置)を示す把持マーカ320L、320Rと、把持部54L、54Rに付加する各荷重量FL、FRの大きさを示す荷重メータ330L、330Rとを有する。また、荷重メータ330Lは、緑色で表示され、荷重メータ330Rは赤色で表示されるため、離れた場所からでも視認しやすい。
【0042】
擬似手摺り310に対する把持マーカ320L、320Rの表示位置により光測距センサ66から当該訓練者Pが把持部54L、54Rを把持した手の前側端面までの距離L(L
L,L
R)が認識される。また、荷重メータ330L、330Rにより、当該訓練者Pの左手による荷重(力FL)と右手による荷重(力FR)とが認識される。
【0043】
尚、画像データ300の表示例としては、
図7に示す以外のもの(例えば、荷重の目安となる閾値に対して超過分を赤色、下回る分を緑色で表示させ、荷重を量的に認識できるよう複数のバーの積み重ねで荷重を示す)でも良い。
【0044】
従って、訓練者が歩行訓練しながら表示装置80に表示される歩行訓練中の画像データ300を視認(視覚的フィードバック)することで、左右の手摺り52の把持部54L、54Rへの依存荷重をリアルタイムで訓練者P自身が確認することが可能になり、訓練者P自身が左右の手摺り52への依存に気付いて自ら補正して偏りや手摺り依存荷重を減らし、より依存度の低い歩行を修得することが可能になる。
【0045】
〔歩行訓練システム10の実証実験〕
ここで、条件の異なる訓練者による歩行訓練システム10の実証実験について説明する。尚、当該実証実験では、歩行障害を有する脳性麻痺患者(CP1)1名と、自立歩行が可能な健常者(HP1)1名による歩行訓練による手摺り依存荷重の実証実験を行った。尚、本実験では、訓練者が予め決められた所定距離(例えば、10mの直線距離)を歩行訓練した際の依存荷重データを記録した。
【0046】
図8は本発明による歩行訓練システムの実証試験の結果を示すグラフである。
図8(A)は脳性麻痺患者(CP1)による表示装置80を使用しない場合の手摺り52の歪み量εから演算された荷重FL,FRの変化を時系列的に示す実験結果である。
図8(B)は脳性麻痺患者(CP1)による表示装置80を使用しない場合の荷重の大きさの分布を示すヒストグラムである。
図8(A)(B)に示されるように、脳性麻痺患者(CP1)による歩行訓練を歩行訓練器50で行い、且つ表示装置80を使用しない場合、当該訓練者(CP1)が把持部54L、54Rをかなり強く押しており、手摺り52に対する両手による荷重が増大していることが分かる。また、当該訓練者(CP1)は、右側の手摺り依存荷重の最大値が左側よりも大きいことが分かる。
【0047】
尚、把持部54L、54Rに作用する荷重(力の大きさ)は、当該訓練者Pの体重や筋力によって個人差があるものの、当該訓練者Pの重心が体の中心にあれば、歩行訓練中に作用する荷重が左右でバランス(釣り合う)ため、ほぼ同じ大きさの力となる。
【0048】
図8(C)は脳性麻痺患者(CP1)による表示装置80を使用した場合の手摺り52の歪み量εから演算された荷重FL、FRの変化を時系列的に示す実験結果である。
図8(D)は脳性麻痺患者(CP1)による表示装置80を使用した場合の荷重の大きさの分布を示すヒストグラムである。
図8(C)(D)に示されるように、脳性麻痺患者(CP1)による歩行訓練を歩行訓練器50で行い、且つ表示装置80による画像表示を使用した場合、表示装置80に画像データ300(
図7参照)が表示される。画像データ300には、
図8(C)に示す荷重FL、FRの変化が荷重メータ330L、330Rの長さの変化として表示されるため、訓練者は歩行訓練中の左右の荷重変化をリアルタイムで視認することが可能である。
【0049】
そのため、当該訓練者(CP1)は、表示装置80に表示された画像データ300を視認(視覚情報フィードバック)すると同時に、歩行訓練中の手摺り依存荷重の偏りと大きさを認識して手摺り依存荷重の偏りが小さくなる方向に体重移動を行って自動的に修正することになる。その結果、把持部54L、54Rへの荷重が大幅に小さくなり、表示装置80による画像データ300の視覚情報フィードバックを使用しない場合よりも手摺り52に対する両手による手摺り依存荷重が減少していることが分かる。
【0050】
図8(E)は健常者(HP1)による表示装置80を使用した場合の手摺り52の歪み量εから演算された荷重FL、FRの変化を時系列的に示す実験結果である。
図8(F)は健常者(HP1)による表示装置80を使用した場合の荷重の大きさの分布を示すヒストグラムである。
図8(E)(F)に示されるように、健常者(HP1)による歩行訓練を歩行訓練器50で行い、且つ表示装置80に表示される画像データ300の視覚情報フィードバックを使用した場合、当該訓練者(HP1)自身が歩行訓練器50に頼らないで歩行訓練を行えるので、手摺り依存荷重の偏りが小さいことが分かる。その結果、脳性麻痺患者(CP1)よりも把持部54L、54Rへの荷重が大幅に小さくなり、手摺り52に対する手摺り依存荷重がかなり減少していることが分かる。また、当該訓練者(HP1)は、左右の手摺り依存荷重がほぼ同じ大きさであることから、重心が体の中心にあることが分かる。
【0051】
〔実施形態2〕
図9は実施形態2の歩行訓練システム及び歩行訓練器で歩行訓練を行う様子を示す側面図である。尚、
図9において、前述した実施形態1と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
図9に示されるように、歩行訓練システム400では、通信ユニット70の上面に小型液晶モニタ410が設けられている。この小型液晶モニタ410は、訓練者Pの正面に設けられ、データ処理装置90の画像生成部130で生成された画像データ(把持部54L、54Rに作用する力分布)を受信して当該画像データを表示する。そのため、訓練者Pは、表示装置80から離れた場所にいても小型液晶モニタ410に表示された画像データ300を同様に視認(視覚情報フィードバック)することが可能になる。また、訓練者Pが表示装置80と反対方向に移動する場合でも小型液晶モニタ410に表示された画像データ300を視認しながら歩行訓練を行える。従って、訓練者は、何処にいても歩行訓練中の手摺り依存荷重の偏りによる左右の荷重変化をリアルタイムで視認することが可能である。
【0052】
上記実施形態では、歩行障害を有する訓練者を対象に歩行訓練を行う場合について説明したが、これに限らず、本歩行訓練システムは、例えば、訓練者が歩行動作を補助する動作補助装置を装着してモータトルクを股関節や膝関節に伝達されながら歩行訓練を行う場合にも有効である。
【0053】
〔実施形態3〕
図10は実施形態3の歩行訓練システム及び歩行訓練器を示す側面図である。
図11は実施形態3の歩行訓練システムのセンサ−把持ユニットを任意の歩行訓練器に連結するためのアタッチメント部を示す分解斜視図である。
【0054】
図10に示されるように、実施形態3の歩行訓練システム500は、アタッチメント部(連結手段)510を介して左右一対のセンサ−把持ユニット520を既存の歩行訓練器(歩行器、平行棒など)50Aの手摺り52の左右両側に連結して使用することができる。歩行訓練器50Aは、既に販売されているもの、あるいは一般的な歩行器として製造されたものであり、一対のセンサ−把持ユニット520を適宜取り付けることで、実施形態1、2と同様に、歩行訓練中の画像データ300を視認(視覚的フィードバック)しながら歩行訓練が行える。
【0055】
図11に示されるように、アタッチメント部510は、歩行訓練器50Aの手摺り52に固定される固定具であり、二分割可能な構成である。また、アタッチメント部510は、上半体510Aと下半体510Bとを有し、上半体510A及び下半体510Bのフランジ部512をボルト、ナットなどの締結部材により連結されることで、手摺り52に固定される。
【0056】
センサ−把持ユニット520は、センサボックス530と、丸棒状に形成された把持部540とを有する。センサボックス530は、内部に、前述したセンサユニット60L、60Rの荷重センサ部62及び光測距センサ66と、通信ユニット70とが収納されている。また、センサ−把持ユニット520は、アタッチメント部510の上半体510Aの上面514にボルト、ナットなどの締結部材により固定されることで、アタッチメント部510を介して手摺り52に固定される。
【0057】
また、センサ−把持ユニット520においては、センサボックス530のセンサユニット60L、60R(荷重センサ部62)により検出された把持部540の歪み量ε及び光測距センサ66により計測された距離L2の各計測データをデータ変換部72で無線信号に変換し、データ送受信部74より無線信号を送信する。そして、データ処理装置90は、歩行訓練中の画像データ300(
図7参照)を生成して表示装置80に出力する。
【0058】
従って、訓練者Pは、前述した実施形態1、2と同様に、表示装置80に表示された判定画像をみて、手摺り依存荷重の偏りが生じないように体の姿勢や左右のバランスを修正しながら歩行訓練を行える。よって、訓練者Pは、表示装置80に表示される歩行訓練中の画像データ300(
図7参照)を視認することで、手摺り依存荷重の偏りによる左右の荷重変化を修正することを修得できる。
【0059】
そのため、新たに歩行訓練器を購入することなく、既存の歩行訓練器50Aを用いて本歩行訓練システム500を導入することが可能になる。