特許第6296451号(P6296451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6296451地盤試料のサンプリングにおけるモニタリングシステムおよびこれを用いたサンプリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296451
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】地盤試料のサンプリングにおけるモニタリングシステムおよびこれを用いたサンプリング方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 25/00 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
   E21B25/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-6361(P2015-6361)
(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公開番号】特開2016-132874(P2016-132874A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2016年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000121844
【氏名又は名称】応用地質株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】谷川 正志
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−242459(JP,A)
【文献】 特開平10−205267(JP,A)
【文献】 特開2008−069531(JP,A)
【文献】 特開平10−002179(JP,A)
【文献】 特開2007−277940(JP,A)
【文献】 特開2009−243186(JP,A)
【文献】 米国特許第05417295(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリング装置のスピンドルを回転させて当該スピンドルに連結されたロッドの下端に設けたビットによって地盤を掘削しつつ掘削孔内に送水して、上記ロッドの下部に設けたコアチューブ内のサンプラー内に、掘削された上記地盤の試料となる円柱状のコアを充填させて採取する地盤試料のサンプリングの状態をモニタリングするシステムであって、
上記送水の圧力および流量、上記スピンドルの変位量、上記ロッドの回転数、上記掘削孔内の水位、上記掘削時の上記スピンドルから上記ビットまでの総重量、および上記ロッドに作用させる上方または下方への付加荷重が入力される制御装置と、この制御装置からの出力信号を表示するモニタとを備え、
上記制御装置は、上記送水の送水圧および送水流量、上記変位量から算出した上記ビットの地盤中への掘削速度、上記ロッドの回転数、および上記総重量と上記付加荷重との和から上記掘削孔内の水中の上記ロッド、上記コアチューブおよび上記ビットに作用する浮力を減じて算出された上記ロッドの先端荷重をリアルタイムで上記モニタに並列的に表示させることを特徴とする地盤試料のサンプリングにおけるモニタリングシステム。
【請求項2】
上記制御装置は、上記モニタに、上記先端荷重、上記送水圧、上記送水流量、上記掘削速度および上記回転数をデジタル表示させるとともに、これら上記先端荷重、上記送水圧、上記送水流量、上記掘削速度および上記回転数の上限値および下限値およびこれら上下限値の範囲内における上記先端荷重、上記送水圧、上記送水流量、上記掘削速度および上記回転数の位置をアナログ表示させることを特徴とする請求項1に記載の地盤試料のサンプリングにおけるモニタリングシステム。
【請求項3】
ボーリング装置のスピンドルを回転させて当該スピンドルに連結されたロッドの下端に設けたビットによって地盤を掘削しつつ掘削孔内に送水して、上記ロッドの下部に設けたサンプラー内に掘削された上記地盤の試料となる円柱状のコアを充填させて採取する地盤試料のサンプリング方法において、
請求項1または2に記載のモニタリングシステムを用いて、上記モニタに表示された数値に基づいて上記送水圧、上記送水流量、上記掘削速度、上記回転数および上記付加荷重を調整することを特徴とする地盤試料のサンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤試料となるサンプリングコアに地層の乱れが少ない高品質コアサンプリングを可能にする地盤試料のサンプリングにおけるモニタリングシステムおよびこれを用いたサンプリング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地盤の地質や岩盤の状態を解明するために、地盤を掘削して地盤試料となるコアを採取するボーリング調査が広く行われている。
このボーリング調査は、一般にボーリング装置のスピンドルにロッドを連結し、このロッドの下端に取り付けたビットによって地盤を掘削しつつ掘削孔内に送水することにより、当該ロッドの下部に設けたサンプラー内に円柱状のコアを充填させて採取するものである。
【0003】
図4は、このようにして採取されたサンプリングコアを示すもので、地上から掘削最深部までを単位長さ(図では1m)に分割して順次並列的に陳列したものである。
このようなサンプリングコアを採取するに際しては、試料の乱れや欠損等が少なく、地層の状態がきれいに参照できる高品質のサンプリングコアを得ることが望ましい。
【0004】
ところが、上記サンプリング方法においては、通常地盤を掘削する前には、深度による地層の相違が未知であるために、掘削時に岩盤、礫質、粘土質等の地質の変化によって掘削抵抗が変動し、この結果、試料の品質が悪化し、地盤の適正な評価ができなくなるという問題点がある。
【0005】
そこで、従来は、送水ラインの流量をできるだけ少なくし、かつビットが岩盤に与える荷重を小さくし、回転を調整することで、ゆっくり丁寧に時間をかけて掘削を行うように対応していた。
【0006】
しかしながら、掘削時におけるこのような調整は、熟練した作業者が、個別のゲージ計の変化等を参考にしながら、経験や勘に頼って行っているために、作業者の技量によっては、安定的して高品質のサンプリングコアを得ることが難しいという問題点があった。
なお、下記特許文献1にも、この種のサンプリングコアを採取するための調査ボーリング装置および工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−154039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、サンプリングコアに地層の乱れが少ない高品質コアサンプリングを可能にする試料のサンプリングにおけるモニタリングシステムおよびこれを用いたサンプリング方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ボーリング装置のスピンドルを回転させて当該スピンドルに連結されたロッドの下端に設けたビットによって地盤を掘削しつつ掘削孔内に送水して、上記ロッドの下部に設けたコアチューブ内のサンプラー内に、掘削された上記地盤の試料となる円柱状のコアを充填させて採取する地盤試料のサンプリングの状態をモニタリングするシステムであって、上記送水の圧力および流量、上記スピンドルの変位量、上記ロッドの回転数、上記掘削孔内の水位、上記掘削時の上記スピンドルから上記ビットまでの総重量、および上記ロッドに作用させる上方または下方への付加荷重が入力される制御装置と、この制御装置からの出力信号を表示するモニタとを備え、上記制御装置は、上記送水の送水圧および送水流量、上記変位量から算出した上記ビットの地盤中への掘削速度、上記ロッドの回転数、および上記総重量と上記付加荷重との和から上記掘削孔内の水中の上記ロッド、上記コアチューブおよび上記ビットに作用する浮力を減じて算出された上記ロッドの先端荷重をリアルタイムで上記モニタに並列的に表示させることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記制御装置は、上記モニタに、上記先端荷重、上記送水圧、上記送水流量、上記掘削速度および上記回転数をデジタル表示させるとともに、これら上記先端荷重、上記送水圧、上記送水流量、上記掘削速度および上記回転数の上限値および下限値およびこれら上下限値の範囲内における上記先端荷重、上記送水圧、上記送水流量、上記掘削速度および上記回転数の位置をアナログ表示させることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、ボーリング装置のスピンドルを回転させて当該スピンドルに連結されたロッドの下端に設けたビットによって地盤を掘削しつつ掘削孔内に送水して、上記ロッドの下部に設けたサンプラー内に掘削された上記地盤の試料となる円柱状のコアを充填させて採取する地盤試料のサンプリング方法において、請求項1または2に記載のモニタリングシステムを用いて、上記モニタに表示された数値に基づいて上記送水圧、上記送水流量、上記掘削速度または上記回転数を調整することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1または2に記載の発明およびこれを用いた請求項3に記載の発明によれば、地層の変化に基づく掘削状態の変化が顕著に現れる送水の送水圧および送水流量、掘削速度、ロッドの回転数およびロッドの先端荷重を、1つのモニタでリアルタイムに確認することができるために、ロッドの先端荷重が急激に高くなる等の現象が生じた際に、送水や掘削速度等を即座に調整することにより、容易に高品質のサンプリングコアを採取することが可能になる。
【0013】
特に、従来からボーリング装置に付随した計測機器類によっては把握できなかったロッドの先端荷重もリアルタイムで目視することができるために、掘削状況の把握を一層容易に行うことができる。
【0014】
また、掘削毎に、採取されたサンプリングコアと、その掘削時の経時的な上記諸元の変化等を対比することにより、高品質なサンプリングコアを採取するために適当とされる先端荷重、送水圧、送水流量、掘削速度および回転数の上限値および下限値を見出すことができる。
【0015】
そこで、請求項2に記載の発明のように、モニタに、上記諸元のデジタル表示と共に上記上限値および下限値の範囲を表記し、上記諸元が上記範囲内のどの位置にあるかをアナログ表示させれば、高い熟練を要することなく、容易に高品質なサンプリングコアを採取することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るモニタリングシステムを示す全体の概略構成図である。
図2図1のモニタにおける表示画面を示す正面図である。
図3図1のモニタリングシステムによって得られたデータを深度を縦軸にして示すグラフである。
図4】地盤試料のサンプリング方法によって採取されたサンプリングコアを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および図2は、本発明に係る地盤試料のサンプリングにおけるモニタリングシステムの一実施形態を示すものである。
図1において、符号1はボーリング装置を示すもので、このボーリング装置1には、エンジンによって回転駆動されるスピンドル2が回転自在かつ油圧スイベル3によって昇降自在に設けられている。
【0018】
このスピンドル2は、下端部に設けられたチャック4によって複数本のロッド5が連結されており、最下部のロッドの下端部にサンプラーを内包したコアチューブ6が取り付けられている。そして、コアチューブ6の下端部に、地盤を掘削するためのビット7が固定されている。
【0019】
また、ボーリング装置1に近接して、泥水タンク8内に貯留されている泥水を掘削孔H内に送水するためのポンプ9が設けられ、このポンプ9の吐出側に接続された送水管10の先端部が、ロッド5内の中空部を介して掘削孔Hの下部に送水するように、ロッド5の上端部に接続されている。
【0020】
そして、送水管10には、ロッド5内に送られる泥水の圧力および流量を測定する水圧計11および流量計12が介装されている。また、ボーリング装置1には、スピンドル2の変位量を計測する変位計13、ロッド5の回転数を計測する回転計14、油圧スイベル3の上方荷重弁を開いてスピンドル2に上方への付加荷重を掛けた際の荷重を検出する上方荷重計15および下方荷重弁を開いて下方への付加荷重を与えた際の荷重を検出する下方荷重計16が設置されている。
【0021】
そして、これらの計測機器類で計測された値に基づいて、コアのサンプリングにおける状態を把握するためのモニタリングシステムが設けられている。
このモニタリングシステムは、データロガーを内蔵した制御装置20と、この制御装置20からの出力信号を表示するモニタ21とから概略構成されたものである。
【0022】
制御装置20には、泥水の水圧計11および流量計12、スピンドル2の変位計13、ロッド5の回転計14、油圧スイベル3の上方荷重計15および下方荷重計16からの出力信号線が接続されている。
【0023】
そして、制御装置20は、図2に示す表示画面に見られるように、これら泥水の水圧計11および流量計12、スピンドル2の変位計13、ロッド5の回転計14、油圧スイベル3の上方荷重計15および下方荷重計16等から、モニタ21に送水の送水圧および送水流量、スピンドル2の変位量から算出したビット7の地盤中への掘削速度、ロッド5の回転数、およびロッド5の先端荷重をリアルタイムにモニタ21にて並列的に表示させるものである。
【0024】
この際に、制御装置20は、図2に示すように、モニタ21上に、上記送水圧、送水流量、掘削速度、回転数および先端荷重をデジタル表示させるとともに、各々の表示欄に隣接して各々の上限値LMAXおよび下限値LMINの範囲内における上記送水圧、送水流量、掘削速度、回転数および先端荷重の位置Pをアナログ表示させるように設定されている。
【0025】
次に、上記構成からなるモニタリングシステムを用いた本発明に係る地盤試料のサンプリング方法の一実施形態を、上記制御装置20の具体的な機能とともに説明する。
先ず、掘削前に、制御装置20の入力手段からスピンドル2からビット7までの総重量、具体的にはスピンドル2の重量、ロッド5の単位重量×本数、コアチューブ6の重量およびビット7の重量を入力するとともに、掘削孔H内の地下水Wと供給した泥水による水位を入力しておく。
【0026】
次いで、スピンドル2を最上部まで上昇させて、チャック4を締めることによりロッド5を一体化し、掘削中断のボタンを押すことにより、掘削が開始され、表示が掘削中に切り替わる。そして、この掘削時に、泥水の水圧計11、流量計12およびロッド5の回転計14からの検出信号により、それぞれ上記モニタ21に泥水圧、泥水流量および回転数がリアルタイムに表示される。
【0027】
また、スピンドル2の変位計13からの検出信号からビット7の地盤中への掘削速度が算出されてリアルタイムに表示される。さらに、スピンドル2からビット7までの総重量に、下方荷重計16で検出されたロッド5への付加荷重が付加されてロッド5に対する下方への総荷重が算出されるとともに、入力された掘削孔H内の水位から、当該水中のロッド5、コアチューブ6およびビット7に作用する浮力が算出され、上記総重量から上記浮力を差し引くことにより、ロッド5の先端荷重が算出されてモニタ21にリアルタイムに表示される。
【0028】
次いで、掘削が進行してスピンドル2が最下部まで到達したら、上記掘削中のボタンを押して掘削を中断させ、チャック4を開いて、必要に応じてロッド5の追加を行い、スピンドル2を最上部まで上昇させて、再び上記掘削を実行する。そして、所定深度まで上記掘削作業を繰り返すことにより、地盤試料のサンプリング作業が終了する。
【0029】
以上説明したように、上記構成からなるモニタリングシステムおよびこれを用いた地盤試料のサンプリング方法によれば、地層の変化に基づく掘削状態の変化が顕著に現れる送水の送水圧および送水流量、掘削速度、ロッド5の回転数およびロッド5の先端荷重を、1つのモニタ21でリアルタイムに確認することができるために、ロッド5の先端荷重が急激に高くなる等の現象が生じた際に、送水や掘削速度等を即座に調整することにより、容易に高品質のサンプリングコアを採取することが可能になる。
【0030】
特に、従来からボーリング装置に付随した計測機器類によっては把握できなかったロッド5の先端荷重もリアルタイムで目視することができるために、掘削状況の把握を一層容易に行うことができる。
【0031】
例えば、図3は、制御装置20に組み込まれているデータロガーで得られた送水圧、送水流量、油圧荷重、先端荷重、ロッド回転数および掘削速度の変化を、掘削深度を縦軸にして示すものである。同図中、Case-1は、送水流量の急激な低下が目視されたため、良好で無い岩盤と判断し、回転数を低下させて送水流量を低下させた区間であり、Case-2は、先端荷重が急激に振れたために、コア詰まりを防止するために、油圧荷重を増加させ、かつ送水流量を低下させた区間である。
【0032】
このようにして、モニタ21に表示される諸元の変化によって、ロッドの回転数、油圧荷重、送水流量等を適宜調整することにより、高い熟練度を要することなく、サンプリングコアに地層の乱れの少ない高品質コアサンプリングを実現することができる。
【0033】
また、モニタ21に、上記諸元のデジタル表示と共に上限値LMAXおよび下限値LMINの範囲を表記し、上記諸元が上記範囲内のどの位置Pにあるかをアナログ表示させているために、高い熟練を要することなく、容易に高品質なサンプリングコアを採取することが可能になるとともに、経験の浅い作業者に対しては、早期の熟練教育を行うことも可能になる。
【符号の説明】
【0034】
1 ボーリング装置
2 スピンドル
3 油圧スイベル
4 チャック
5 ロッド
6 コアチューブ(サンプラー)
7 ビット
8 泥水タンク
9 ポンプ
10送水管10
20 制御装置
21 モニタ
H 掘削孔
MAX 上限値
MIN 下限値
P アナログ表示位置
図1
図2
図3
図4