(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
病室で自身の担当患者を看ている際に、同じ病室の担当外の患者に問題が生じ、当該患者の担当看護師の所在が不明である場合や到着に時間を要する場合、電子カルテなどにより最低限の情報を得ることができたとしても、患者の容態は刻一刻と変化するため、担当看護師から最新情報を得ることなく応急措置を行うのはリスクがある。また、自身の周囲で突発事象が発生し、人を集める必要がある場合、病院内では大声を出しづらく、大声を出せたとしても各看護師は各病室で作業をしており、向かうべき場所がどこであるかを速やかに知るのは必ずしも容易ではない。
【0005】
本発明の目的は、一定の領域内の異なる場所に散った複数の職員間で容易に情報を共有することを可能とする情報共有システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の情報共有システムは、相互に無線通信を行う、管理装置と複数の端末装置とを備える。管理装置は、トリガ発生手段と信号転送手段とを備える。トリガ発生手段は、所定の要件の充足により所定の端末装置にトリガ信号を送信する。信号転送手段は、所定の端末装置のいずれかから音声信号を受信し、これを当該端末装置以外の所定の端末装置に対して送信する。端末装置は、収音手段と放音手段とを備える。収音手段は、トリガ信号の受信を契機に音声を収音し、音声信号に変換して管理装置に送信する。放音手段は、当該端末装置以外の所定の端末装置のいずれかから管理装置を介して送信された音声信号を受信し、音声に変換して放音する。
【0007】
これにより、満たすべき要件を適切に設定することで、情報を共有すべき場面に端末装置の操作を行うことなく別の場所にいる職員と会話をすることができ、容易に情報を共有することが可能となる。
【0008】
(2)信号転送手段は、複数の端末装置から同時に音声信号を受信したとき、それぞれの音声信号をタイミングをずらして送信するようにしてもよい。これにより、端末装置において複数の音声を混線させることなく放音することができる。
【0009】
(3)所定の要件として、例えば、所定の時刻になったことが挙げられる。所定の時刻は1つの時刻でもよいし、1時間毎など定期的な時刻としてもよい。業務を妨げない程度の定期的な時刻を設定し、定期的に会話可能な状態とすることで、別々の場所に散った職員間で情報共有する機会を確実に提供することができる。
【0010】
(4)管理装置が各端末装置の位置を逐次特定する端末位置特定手段を更に備え、所定の要件を、いずれかの端末装置が所定の位置に移動したこととしてもよい。
【0011】
(5)所定の位置は、例えば或る1つの位置とする。ここでいう位置とは実質的には、端末装置やIMESの送受信機と、その付近にある無線LANのアクセスポイントやIMES(Indoor MEssaging System)の送受信機などのデバイスと、の通信により特定可能な一定の領域を意味する。これは、端末位置特定手段による位置の特定に用いる無線LANのアクセスポイントやIMESの送受信機などのデバイスは、一定の領域ごとに配置され、一般に、当該デバイスの設置位置が当該一定の領域内にある端末装置の位置として特定されるためである。例えば、アクセスポイントや送受信機を病室ごとに設けた場合、所定の位置は病室単位で設定することになる。
【0012】
所定の端末装置は、例えば本システムに係る全ての端末装置とする。
【0013】
このように構成することで、端末装置を携帯する職員が或る病室に移動すると、本システムに係る端末装置を携帯する全ての職員の間で会話が可能となる。これにより、別々の場所で作業をしている職員間で必要に応じタイムリーに情報を共有することができる。そのため、自身が担当していない患者に問題が生じた場合に担当看護師を呼び出したり、最新情報を問い合わせて容態に応じた応急措置を施したりすることができる。
【0014】
所定の位置を、複数の位置からなる或る範囲としてもよい。複数の位置は隣接していても隣接していなくてもよい。これにより、端末装置を携帯する職員が当該範囲に移動することで当該職員の端末装置を含む複数の端末装置の間で会話をすることが可能となる。
【0015】
また、所定の位置を、端末装置が複数集合した或る1つの位置又は複数の位置からなる或る範囲としてもよい。或る位置や範囲に端末装置を携帯する複数の職員が集まった場合、当該位置や範囲において何らかの問題が生じていることが想定される。そこで、このような状況の下で、当該位置や範囲にいない職員の端末装置を含む本システムに係る全ての端末装置間で会話を可能とすることで、応援要請や情報の共有などを容易に行えるようになる。
【0016】
なお、隣接する位置との間で肉声でのやりとりで足りる場合には、所定の端末装置は、全ての端末装置から所定の位置に隣接する位置にある端末装置を除外して設定してもよい。
【0017】
(6)所定の位置を或る1つの位置とし、管理装置が、当該位置に端末装置が移動したときに当該端末装置が当該位置の担当者の端末装置であるか否かを、位置とその位置の担当者とその担当者の端末装置との対応関係が記録された担当者テーブルを参照して判断する端末判断手段を更に備え、端末判断手段による判断結果が否であるときに、所定の端末装置を、所定の位置にある当該所定の位置を担当していない者の端末装置と所定の位置にない当該所定の位置の担当者の端末装置としてもよい。これにより、当該所定の位置を担当していない者が複数の者に呼びかけることなく直接に担当者に問い合わせをすることが可能となる。
【0018】
(7)管理装置は、音声信号の受信時刻を取得する時刻取得手段と、当該音声信号を送信した端末装置、当該音声信号の受信時刻、及び受信時刻における当該端末装置の位置を記憶する記憶手段と、を更に備えてもよい。これにより、管理装置に音声信号を受信した時刻及び当該音声信号が送信された場所が記憶され、後日、当該時刻・場所に当該端末装置の利用者が居たこと、会話が行われたことの立証などに、記憶された情報を使用することができる。
【0019】
(8)記憶手段は、更に音声信号の内容を記憶してもよい。記憶する内容は、音声信号そのものでもよいし、音声認識により抽出されたキーワードでもよい。これにより会話内容も記憶されるため、音声信号が送信された時刻・場所において、いかなる会話がされたかの立証する際などに、記憶された情報を役立てることができる。
【0020】
(9)管理装置は、端末装置と、その端末装置の利用者と、その利用者の各行動の予定時刻と予定位置とを少なくとも含む行動予定と、の対応関係が記録された行動管理テーブルを参照し、端末装置の利用者の行動の予定時刻から所定の時間内に、当該利用者の端末装置から音声信号を受信し、かつ、当該端末装置の位置が行動の予定位置であるか否かを判定し、否の場合に当該行動の未実行を示す情報を出力する行動判定手段と、当該情報の内容を表示する表示手段と、を更に備えてもよい。これにより、予定の時刻・場所における会話が存在していないことをもって、予定の時刻・場所においてなすべき行動がされていないことを管理装置の表示手段上で速やかに確認し、必要な対処をすることができる。また、予定どおり行動しなかったことによる、患者などの不満や不満の発生を最小限に抑えることができる。
【0021】
(10)行動判定手段が、端末装置の利用者について予定された行動の未実行を示す情報を当該利用者の端末装置に送信し、放音手段が、当該情報の受信を契機にアラーム音を放音し、当該端末装置が、当該情報の内容を表示する表示手段を更に備えてもよい。これにより、予定の行動が未実行の利用者に未実行であることを通知し、必要な補足行動を促すことができる。また、予定どおり行動しなかったことによる、患者などの不満や不満の発生を最小限に抑えることができる。
【0022】
(11)上記(9)の情報共有システムでは、或る利用者の端末装置と他の所定の端末装置との間でやりとりされる音声信号のうち、管理装置が当該利用者の端末装置から受信した音声信号について、その受信時刻及びその時の当該端末装置の位置と、行動管理テーブルに記された行動予定と、を照合して予定時刻及び予定場所に当該利用者が居たか否かを判定している。つまり、管理装置は当該利用者の端末装置から何らかの音声信号を受信していれば、その音声信号を他の所定の端末装置に転送するか否かにかかわらず、当該利用者が予定通りに行動したか否かの判定をすることは可能である。そこでこのような場合には、例えば次のように管理装置と端末装置を構成すればよい。
【0023】
管理装置は、トリガ発生手段、信号受信手段、時刻取得手段、端末位置特定手段、記憶手段、行動判定手段、及び表示手段を備える。トリガ発生手段は、端末装置が所定の位置に移動した際に、当該端末装置にトリガ信号を送信する。信号受信手段は、端末装置から音声信号を受信する。時刻取得手段は、端末装置から受信した音声信号の受信時刻を取得する。位置特定手段は、端末装置の位置を逐次特定する。記憶手段は、音声信号の内容、音声信号の受信時刻、及び当該音声信号を送信した端末装置の位置を記憶する。行動判定手段は、端末装置と、その端末装置の利用者と、その利用者の各行動の予定時刻と予定位置とを少なくとも含む行動予定と、の対応関係が記録された行動管理テーブルを参照し、当該端末装置の利用者の行動の予定時刻から所定の時間内に、当該利用者の当該端末装置から音声信号を受信し、かつ、受信時刻における当該端末装置の位置が当該行動の予定位置であるか否かを判定し、否の場合に当該行動の未実行を示す情報を出力する。表示手段は、当該情報の内容を表示する。端末装置は、トリガ信号の受信を契機に音声を収音し、音声信号に変換して管理装置に送信する収音手段を少なくとも備える。
【0024】
このような構成により、相手方の端末装置が無くても、予定時刻及び予定場所における看護師の在不在を判定することができる。そのため、例えば、単に端末装置30を携帯する看護師が病室など或る位置に移動し、患者などに対して発話したか否かによって、予定時刻及び予定場所における看護師の在不在を判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の情報共有システム及びプログラムの実施形態を説明する。なお、以下では病院内において複数の看護師が情報を共有する実施形態を例にとって説明するが、本発明は複数人が所定の領域内でリアルタイムに情報を共有したい様々な場合において適用可能であり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
〔システムの構成〕
図1は、情報共有システム1の概略図である。情報共有システム1は、管理装置10、複数のアクセスポイント20、及び複数の端末装置30を備える。管理装置10は、有線LANや無線LANなどのネットワークNWを介して接続されたアクセスポイント20を介して端末装置30と通信を行う。アクセスポイント20と端末装置30との間は任意の無線通信手段により通信を行う。アクセスポイント20及び端末装置30の個数は任意である。
【0028】
図2は、管理装置10の構成の一例を示す図である。管理装置10はコンピュータであり、CPU11、ROM12、RAM13、入力部14、表示部15、記憶部16、及び通信部17を備える。
【0029】
CPU11は、ROM12や記憶部16に記憶されたプログラムを実行し、管理装置10の機能を実現する。ROM12はコンピュータを動作させるための基本的なプログラムなどを記憶する不揮発性メモリである。RAM13はCPU11のワークエリアを提供する揮発性メモリである。入力部14は、キーボードやポインティングデバイス等の入力デバイスであって、利用者が入力した情報をCPU11に提供する。表示部15は、LCDなどのディスプレイを備え、CPU11の制御に従い各種の情報を表示する表示手段である。記憶部16は、HDDやフラッシュメモリ等の記憶媒体であり、CPU11が実行する各種プログラムや実行に用いるテーブルなどの各種ファイルを記憶する。通信部17は、ネットワークNWに接続するためのインタフェースであり、CPU11の制御に従い、ネットワークNWに接続されたアクセスポイント20を介して端末装置30との間で各種情報の送受を行う。
【0030】
アクセスポイント20は、端末装置30との間で通信を行うための無線LANなどのアクセスポイントである。アクセスポイント20は、例えば
図3に示すように病室、廊下、トイレ、外来エリア、検査室、手術室など病院内の各所に複数設置され、それぞれ自身の通信領域内にある端末装置30との間で任意の通信方式により無線通信を行う。各アクセスポイント20には自身の識別IDであるアクセスポイントIDが付与されている。
【0031】
端末装置30は、看護師が携帯するノートPC、タブレット端末、又はハンディターミナル等の端末装置である。端末装置30には自身の識別IDである端末IDが付与されている。
【0032】
図4は、端末装置30の構成の一例を示す図である。端末装置30はコンピュータであり、CPU31、ROM32、RAM33、入力部34、表示部35、記憶部36、通信部37、収音部38、及び放音部39を備える。
【0033】
CPU31は、ROM32や記憶部36に記憶されたプログラムを実行し、端末装置30の機能を実現する。ROM32はコンピュータを動作させるための基本的なプログラムなどを記憶する不揮発性メモリである。RAM33はCPU31のワークエリアを提供する揮発性メモリである。入力部34は、キーボードやポインティングデバイス等の入力デバイスであって、利用者が入力した情報をCPU31に提供する。表示部35は、LCDなどのディスプレイを備え、CPU31の制御に従い各種の情報を表示する表示手段である。なお、表示部35はタッチパネル方式の入力部34と一体的に構成してもよい。記憶部36は、HDDやフラッシュメモリ等の記憶媒体であり、CPU31が実行する各種プログラムや実行に用いる各種ファイルを記憶する。通信部37は、アクセスポイント20と任意の通信方式での無線通信を行うためのインタフェースであり、CPU31の制御に従い、アクセスポイント20及びネットワークNWを介して、管理装置10との間で各種情報の送受を行う。収音部38はマイクロフォンなどであり、端末装置30を携帯する利用者の発話を収音し音声信号に変換してCPU31に提供する。放音部39はスピーカーやヘッドホンなどであり、CPU31から提供を受けた音声信号を音声に変換して放音する。収音部38と放音部39は、端末装置30とは別に、頭部に装着可能な一体型のヘッドセットとして構成し、端末装置30との間を有線又は無線で接続するように構成してもよい。これにより、会話をする際に端末装置30本体を手で持つ必要がなくなるため、手の自由を確保することができる。
【0034】
〔機能の実現方法〕
続いて管理装置10、アクセスポイント20、及び端末装置30により本発明の情報共有システム1の機能がどのように実現されるかについて説明する。
【0035】
<第1実施形態>
情報共有システム1は、所定の要件の充足により、端末装置30を携帯する看護師が別の端末装置30を携帯する別の看護師との間で情報を共有することを可能とするシステムである。機能ブロック図を
図5に示す。
【0036】
管理装置10の記憶部16には、トリガ発生プログラム、転送プログラム、及び端末IDテーブルをあらかじめ記憶しておく。
【0037】
トリガ発生プログラムは、トリガ発生手段101の機能を実現するプログラムである。CPU11に読み込まれて実行されることで、所定の要件の充足の有無を監視し、充足した場合にトリガ信号を発生して、通信部17から所定の端末装置に向けて送信するように制御する。
【0038】
所定の端末装置は、例えば、本システムに係る全ての端末装置30としてもよいし、用途に応じて適宜定めたルールに従って一部の端末装置30に限定しても構わない。
【0039】
所定の要件としては例えば、所定の時刻になったことや、いずれかの端末装置30が所定の位置に移動したことなどが挙げられる。
【0040】
所定の要件を所定の時刻になったこととする場合、所定の時刻は1つの時刻でもよいし、1時間毎など定期的な時刻としてもよい。業務を妨げない程度の定期的な時刻を設定し、定期的に会話可能な状態とすることで、別々の場所に散った看護師間で情報共有する機会を確実に提供することができる。
【0041】
所定の要件を所定の位置に移動したこととする場合、端末装置30の位置を逐次特定する必要がある。管理装置10は端末装置30の位置を、例えば次のような方法で特定する。なお、ここでいう位置とは、実質的には、端末装置30とアクセスポイント20との通信により特定可能な一定の領域を意味する。これは、アクセスポイント20は一定の領域ごとに配置され、一般に、アクセスポイント20の設置位置が当該アクセスポイント20が設置された一定の領域内にある端末装置30の位置として特定されるためである。
【0042】
端末装置30から、端末IDが音声信号とともに、又は端末IDのみが送信されると、最寄りのアクセスポイント20がこれを受信し、自身のアクセスポイントIDを付加して管理装置10に送信する。
【0043】
管理装置10の記憶部16には、更に、アクセスポイントテーブルと端末位置特定プログラムをあらかじめ記憶しておく。
【0044】
アクセスポイントテーブルは、アクセスポイントIDとアクセスポイント20の設置位置とを対応付けるリストである。
【0045】
端末位置特定プログラムは、端末位置特定手段103の機能を実現するプログラムである。CPU11に読み込まれて実行されることで、端末装置30から逐次送信された端末IDと、これにアクセスポイント20で付加されたアクセスポイントIDと、を通信部17で逐次受信し、アクセスポイントテーブルを参照してアクセスポイントIDに対応するアクセスポイント20の設置位置を逐次特定して、この位置を当該端末IDの端末装置30の現在位置として逐次特定するように制御する。例えば、端末IDを受信したアクセスポイント20が或る病室に設置されたものである場合、当該端末IDを送信した端末装置30の現在位置が当該病室であると特定する。なお、逐次特定した端末装置30の現在位置は、必要に応じ参照できるようRAM13や記憶部16に記憶する。
【0046】
なお、上記の位置特定方法はあくまで一例であり、端末装置30の位置を特定できれば任意の特定方法を採用して構わない。例えば、単にひとつのアクセスポイント20に着目して、当該アクセスポイント20の設置位置を当該アクセスポイント20が設置された一定の(広い)領域内にある端末装置30の位置と特定するのではなく、端末装置30における複数のアクセスポイント20からの信号の受信強度の相違に基づく解析により、より狭い領域で端末装置30の位置を特定してもよい。また、位置の特定にIMESを利用する場合には、アクセスポイント20とは別に一定の領域ごとにIMESの送受信機を配置し、当該送受信機の設置位置を当該一定の領域内にある端末装置30の位置として特定してもよい。無線LANの場合、アクセスポイントは大量の情報の送受を主たる目的とするため、ある程度の強度で信号を送信する必要がある。そのため、干渉の問題を避けるべく、アクセスポイントの設置密度に限界が生じ、これにより位置の特定精度にも限界が生じる。これに対し、IMESの送受信機は位置情報の提供に特化し、信号の送信強度を抑えることが可能なため、送受信機を密度高く設置して、位置の特定精度を高めることができる。
【0047】
所定の位置としては、例えば、或る1つの位置、複数の位置からなる或る範囲、又は端末装置30が複数集合した或る1つの位置若しくは複数の位置からなる或る範囲とするとよい。
【0048】
転送プログラムは、信号転送手段102の機能を実現するプログラムである。CPU11に読み込まれて実行されることで、所定の端末装置のいずれかの端末装置30から送信された端末ID及び音声信号を通信部17で受信し、全ての端末装置30の端末IDが記録されたリストである端末IDテーブルを参照して、当該音声信号を通信部17から当該端末装置30以外の所定の端末装置30に送信するように制御する。
【0049】
なお、音声信号を複数の端末装置30から同時に受信した場合に、それぞれの音声信号をタイミングをずらして所定の端末装置30に送信する制御を行うように転送プログラムを構成してもよい。これにより、音声信号を受信する端末装置30において複数の音声を混線させることなく放音することができる。
【0050】
端末装置30の記憶部36には、ID送信プログラム、収音プログラム、及び放音プログラムをあらかじめ記憶しておく。ID送信プログラムは、CPU31に読み込まれ実行されることで、端末IDを通信部37から管理装置10に逐次送信するように制御する。収音プログラムは、収音手段138の機能を実現するプログラムである。CPU31に読み込まれ実行されることで、管理装置10から送信されたトリガ信号を通信部37で受信し、これを契機に収音部38で音声を収音して音声信号に変換し、通信部37から管理装置10に送信するように制御する。放音プログラムは、放音手段139の機能を実現するプログラムである。CPU31に読み込まれ実行されることで、当該端末装置30以外の所定の端末装置30のいずれかから管理装置10を介して送信された音声信号を通信部37で受信し、放音部39で音声に変換して放音するように制御する。
【0051】
所定の位置を或る1つの位置、例えば或る病室とし、所定の端末装置を本システムに係る全ての端末装置30とすると、或る端末装置30を携帯する看護師が当該病室に移動することで、本システムに係る端末装置30を携帯する全ての職員の間で会話が可能となる。これにより、別々の場所で作業をしている各職員間で必要に応じタイムリーに情報を共有することができる。そのため、自身が担当していない患者に問題が生じた場合に担当看護師を呼び出したり、最新情報を問い合わせて容態に応じた応急措置を施したりすることができる。
【0052】
所定の位置を、複数の位置からなる或る範囲とすると、端末装置30を携帯する看護師が当該範囲に移動することで当該看護師の端末装置30を含む複数の端末装置30の間で会話をすることが可能となる。なお、複数の位置は一般には隣接していることが想定されるが、必ずしも隣接していなくてもよい。
【0053】
また、所定の位置を、端末装置30が複数集合した或る1つの位置又は複数の位置からなる或る範囲としてもよい。或る位置や範囲に端末装置30を携帯する複数の看護師が集まった場合、当該位置や範囲において何らかの問題が生じていることが想定される。そこで、このような状況の下で、当該位置や範囲にいない看護師の端末装置30を含む本システムに係る全ての端末装置30の間で会話可能とすることで、応援要請や情報の共有などが容易に行えるようになる。
【0054】
隣接する位置との間で肉声でのやりとりで足りる場合には、所定の端末装置を、全ての端末装置30から所定の位置に隣接する位置にある端末装置30を除外したものとしてもよい。
【0055】
<第2実施形態>
或る端末装置30が所定の或る1つの位置に移動した際に、他の全ての端末装置30の間で会話可能な状態にすることは、数多くの相手との会話が可能となる反面、当該位置に無関係な相手にとっては会話が単なるノイズとなり、業務効率の低下を招く場合がある。このような問題は、例えば、次のような構成により解消しうる。当該構成の機能ブロック図を
図6に示す。
【0056】
管理装置10の記憶部16は、端末判断プログラムと担当者テーブルをあらかじめ記憶する。端末判断プログラムは、端末判断手段104の機能を実現するプログラムである。担当者テーブルは、各位置の担当者とその担当者が携帯する端末装置30との対応関係が記録されたリストである。端末判断プログラムは、CPU11に読み込まれ実行されることで、各端末装置30の現在位置をRAM13や記憶部16を参照するなどにより逐次監視し、或る位置に或る端末装置30が移動したとき、当該端末装置30を携帯する看護師が当該位置の担当であるか否かを担当者テーブルを参照して判断し、判断結果が否であるときに、所定の端末装置を、当該位置にある当該位置を担当していない者の端末装置30と当該位置にない当該位置の担当者の端末装置30と設定するように制御する。
【0057】
これにより、当該位置に移動した当該位置を担当していない看護師が、複数の者に呼びかけることなく直接に当該位置を担当する看護師に問い合わせをすることが可能となる。
【0058】
<第3実施形態>
端末装置30から音声信号を受信した時刻及びその時の当該端末装置30の位置を管理装置10に記憶しておくことで、後日、当該時刻・場所に当該端末装置30を利用する看護師が居たこと、会話が行われたことの立証などに使用することができる。このような機能は例えば次のような構成により実現できる。当該構成の機能ブロック図を
図7に示す。
【0059】
管理装置10の記憶部16は、時刻取得プログラム及び記憶プログラムをあらかじめ記憶する。時刻取得プログラムは、時刻取得手段105の機能を実現するプログラムである。記憶プログラムは、記憶手段106の機能を実現するプログラムである。記憶プログラムが、時刻取得プログラム及び端末位置特定プログラムとともにCPU11に読み込まれ実行されることで、端末装置30から送信された音声信号の受信時刻を取得し、当該受信時刻を当該端末装置30の端末ID及び当該受信時刻における当該端末装置30の位置とともにRAM13や記憶部16に記憶するように制御する。これにより、端末装置30から音声信号が送信された時刻・場所がRAM13や記憶部16に記憶され、以後必要に応じて参照することが可能となる。
【0060】
また、記憶プログラムを、端末装置30からの音声信号の受信時刻及び当該受信時刻における当該音声信号を送信した端末装置30の位置とともに、更に、音声信号自体又はその要約やキーワードを、RAM13や記憶部16に記憶させる制御を行うように構成してもよい。これにより会話内容も記憶されるため、音声信号が送信された時刻・場所において、いかなる会話がされたかの立証する際などに、記憶された情報を役立てることができる。なお、音声信号から要約やキーワードを生成・抽出して記憶する場合、生成・抽出する方法は任意である。
【0061】
<第4実施形態>
端末装置30から音声信号を受信した時刻及びその時の当該端末装置30の位置を、看護師による行動の予定時刻及び予定場所と照合することで、当該予定時刻及び予定の場所に当該看護師が居たか否かを確認することができる。このような機能は、例えば、次のような構成により実現できる。当該構成の機能ブロック図を
図8に示す。
【0062】
管理装置10の記憶部16は、行動判定プログラム、行動管理テーブル、及び表示プログラムをあらかじめ記憶する。行動判定プログラムは、行動判定手段107の機能を実現するプログラムである。行動管理テーブルは、端末装置30と、当該端末装置30を利用する看護師と、当該看護師の各行動の予定時刻と予定位置とを少なくとも含む行動予定と、の対応関係が記録されたリストである。行動判定プログラムは、端末位置特定プログラム、転送プログラム、及び時刻取得プログラムとともにCPU11に読み込まれ実行される。プログラムの実行により、行動管理テーブルを参照し、端末装置30を利用する看護師の行動の予定時刻から所定の時間内に、当該看護師の当該端末装置30から音声信号を受信し、かつ、受信時刻における当該端末装置30の位置が行動の予定位置であるか否かを判定し、否の場合に当該行動の未実行を示す情報を出力する。未実行を示す情報は、単に未実行が発生していることのみでもよいが、どの看護師であるか、どの行動か、などの情報を含めてもよい。
表示プログラムは、表示手段115の機能を実現するプログラムである。CPU11に読み込まれ実行されることにより、行動判定プログラムの実行により出力された未実行を示す情報を表示部15に表示する制御を行う。
【0063】
これにより、予定の時刻・場所における会話が存在していないことをもって、予定の時刻・場所においてなすべき行動がなされていないことを管理装置10の表示部15において速やかに確認し、必要な対処をすることができる。また、予定どおり行動しなかったことによる、患者などの不満や不満の発生を最小限に抑えることができる。
【0064】
<第5実施形態>
行動の未実行を示す情報を、更に、通信部17から当該看護師の端末装置30に送信するように行動判定プログラムを構成し、端末装置30においてこれを受信し、表示部35に表示するように構成してもよい。当該構成の機能ブロック図を
図9に示す。このとき、端末装置30においては、記憶部36に情報受信表示プログラムをあらかじめ記憶しておく。情報受信表示プログラムは、表示手段135の機能を実現するプログラムであり、CPU31に読み込まれ実行されることにより、管理装置10から送信された行動の未実行を示す情報を通信部37で受信し、表示部35に表示する制御を行う。
【0065】
これにより、予定どおりに行動していない看護師に予定が未実行であることを通知し、必要な補足行動を促すことができる。また、予定どおり行動しなかったことによる、患者などの不満や不満の発生を最小限に抑えることができる。
【0066】
<第6実施形態>
予定時刻及び予定場所における看護師の在不在を判定する上記の判定方法においては、或る看護師の端末装置30と他の所定の端末装置との間でやりとりされる音声信号のうち、管理装置10が当該看護師の端末装置30から受信した音声信号について、その受信時刻及びその時の当該端末装置30の位置と、行動管理テーブルに記された行動予定と、を照合して予定時刻及び予定場所に当該看護師が居たか否かを判定している。つまり、管理装置10は当該看護師の端末装置30から何らかの音声信号を受信していれば、その音声信号を他の所定の端末装置に転送するか否かにかかわらず、当該看護師が予定通りに行動したか否かの判定をすることは可能である。すなわち、管理装置10における音声信号の転送機能は不要である。そこでこのような場合には、例えば次のように管理装置と端末装置を構成すればよい。当該構成の機能ブロック図を
図10に示す。
【0067】
管理装置10の記憶部16は、トリガ発生プログラム、信号受信プログラム、端末位置特定プログラム、時刻取得プログラム、記憶プログラム、表示プログラム、アクセスポイントテーブル、及び行動管理テーブルをあらかじめ記憶する。
【0068】
トリガ発生プログラムは、CPU11に読み込まれて実行されることで、いずれかの端末装置30が所定の位置に移動したか否かを監視し、移動した場合にトリガ信号を発生して、通信部17から当該端末装置30に向けて送信するように制御する。
【0069】
端末装置30から、端末IDが音声信号とともに、又は端末IDのみが送信されると、最寄りのアクセスポイント20がこれを受信し、自身のアクセスポイントIDを付加して管理装置10に送信する。
【0070】
端末位置特定プログラムは、CPU11に読み込まれて実行されることで、端末装置30から逐次送信された端末IDとこれにアクセスポイント20で付加されたアクセスポイントIDとを通信部17で逐次受信し、アクセスポイントテーブルを参照してアクセスポイントIDに対応するアクセスポイント20の設置位置を逐次特定して、この位置を当該端末IDの端末装置30の現在位置として逐次特定するように制御する。
【0071】
信号受信プログラムは、信号受信手段108の機能を実現するプログラムである。CPU11に読み込まれて実行されることで、端末装置30から送信された端末ID及び音声信号を通信部17で受信するように制御する。
【0072】
時刻取得プログラムは、CPU11に読み込まれ実行されることで、端末装置30からの音声信号の受信時刻を取得するように制御する。
【0073】
記憶プログラムは、時刻取得プログラム、端末位置特定プログラム、及び信号受信プログラムとともにCPU11に読み込まれ実行されることで、音声信号の受信時刻、当該受信時刻における当該音声信号を送信した端末装置30の位置、及び当該音声信号の内容をRAM13や記憶部16に記憶するように制御する。
【0074】
行動判定プログラムは、時刻取得プログラム、端末位置特定プログラム、信号受信プログラム、及び記憶プログラムとともにCPU11に読み込まれ実行される。プログラムの実行により、行動管理テーブルを参照し、端末装置30を利用する看護師の行動の予定時刻から所定の時間内に、当該看護師の当該端末装置30から音声信号を受信し、かつ、受信時刻における当該端末装置30の位置が行動の予定位置であるか否かを判定し、否の場合に当該行動の未実行を示す情報を出力し、表示部15に表示する制御を行う。
【0075】
端末装置30の記憶部36には、少なくとも、ID送信プログラム、及び収音プログラムをあらかじめ記憶しておく。ID送信プログラムは、CPU31に読み込まれ実行されることで、端末IDを通信部37から管理装置10に逐次送信するように制御する。収音プログラムは、CPU31に読み込まれ実行されることで、管理装置10から送信されたトリガ信号を通信部37で受信し、これを契機に収音部38で音声を収音して音声信号に変換し、通信部37から管理装置10に送信するように制御する。
【0076】
このような構成により、相手方の端末装置30が無くても、予定時刻及び予定場所における看護師の在不在を判定することができる。そのため、例えば、単に端末装置30を携帯する看護師が病室など或る位置に移動し、患者などに対して発話したか否かによって、予定時刻及び予定場所における看護師の在不在を判定することができる。
【0077】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…情報共有システム 10…管理装置 11、31…CPU
12、32…ROM 13、33…RAM 14、34…入力部
15、35…表示部 16、36…記憶部 17、37…通信部
20…アクセスポイント 30…端末装置 38…収音部 39…放音部
101…トリガ発生手段 102…信号転送手段 103…端末位置特定手段
104…端末判断手段 105…時刻取得手段 106…記憶手段
107…行動判定手段 108…信号受信手段 115、135…表示手段
138…収音手段 139…放音手段 NW…ネットワーク