(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296469
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】空気誘導キャップ及びこれを備える燃焼ダクト
(51)【国際特許分類】
F02C 7/18 20060101AFI20180312BHJP
F23R 3/06 20060101ALI20180312BHJP
F23R 3/42 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
F02C7/18 C
F23R3/06
F23R3/42 D
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-45453(P2017-45453)
(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公開番号】特開2017-223214(P2017-223214A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0075247
(32)【優先日】2016年6月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507002918
【氏名又は名称】ドゥサン ヘヴィー インダストリーズ アンド コンストラクション カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シム、ヤングサム
(72)【発明者】
【氏名】リー、ドンゴン
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公告第00685068(GB,A)
【文献】
米国特許第02841958(US,A)
【文献】
米国特許第03581492(US,A)
【文献】
特開昭59−112129(JP,A)
【文献】
特開2008−169840(JP,A)
【文献】
特表2014−509710(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0338347(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102013221286(DE,A1)
【文献】
特開2010−256005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02
F02C 7/18
F23R 3/06, 3/42
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が表面を流れ、前記空気が流入する複数の通孔が形成されたガスタービンの燃焼ダクトと、
水平面に対して上向きに傾斜した上面と、前記上面の縁部のうち前記空気が入り込む入口側の縁部を除く残りの縁部に沿って下方に延設された壁面と、を有する複数の空気誘導キャップと、
を備え、前記複数の空気誘導キャップのうち一つの空気誘導キャップが前記複数の通孔のうち一つの通孔を囲繞するように前記燃焼ダクトの上に結合され、
前記空気の流れに沿う方向に配列された複数の空気誘導キャップは、前記空気の流れの下流に進むにつれてその高さが大きくなる、燃焼ダクト。
【請求項2】
前記燃焼ダクトは、スリーブである請求項1に記載の燃焼ダクト。
【請求項3】
前記上面の入口の反対側の背面の縁部は、円弧をなす請求項1または2に記載の燃焼ダクト。
【請求項4】
前記上面の入口の反対側の背面の縁部は、半円をなす請求項3に記載の燃焼ダクト。
【請求項5】
前記上面の入口側の縁部の両端から延びる前記壁面の縁部は、外側に向かって傾斜するように形成される請求項1から4のいずれか一項に記載の燃焼ダクト。
【請求項6】
前記上面の水平面に対する正射影内に前記通孔が収容される大きさに前記上面が形成される請求項1から5のいずれか一項に記載の燃焼ダクト。
【請求項7】
前記壁面の入口の反対側の背面の縁部から下方に延設されて前記通孔に嵌め込まれる突出部材をさらに備える請求項1から6のいずれか一項に記載の燃焼ダクト。
【請求項8】
前記突出部材は、前記通孔の内周面に密着される請求項7に記載の燃焼ダクト。
【請求項9】
前記突出部材は、パイプ又はパイプの一部を切り欠いた形状である請求項7または8に記載の燃焼ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気の流れを燃焼ダクトの通孔に導くための空気誘導キャップに係り、さらに詳しくは、空気の入口部を上向きに傾斜するように長くすることにより、冷却空気の流量を十分に確保し、空気の流れを通孔を貫通する垂直方向に導き易いだけではなく、通孔の入口領域において乱流が発生し難いことから安定的な空気の流れを形成することのできる空気誘導キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、高温・高圧の燃焼ガスを用いてタービンを稼動させる回転型熱機関である。一般に、ガスタービンは、圧縮機、燃焼機及びタービンを備え、圧縮機において圧縮された空気が燃料と混合されて燃焼されることにより膨張する高温の燃焼ガスが生成され、この燃焼ガスの力を用いてタービンを回転させることにより動力を得ることになる。
【0003】
燃焼機において生成された高温の燃焼ガスをタービンまで伝達するためにはダクト構造物が必要であるが、このようなダクト構造物は燃焼ダクト組立体とも呼ばれる。燃焼ダクト組立体は、通常、燃焼機と隣り合うライナーと、前記ライナーと連結されるトランジションピース及びこれらを囲繞するスリーブを備える。
【0004】
燃焼ダクト組立体6の一実施形態について
図1を参照してより具体的に説明すると、ライナー2の上流側には燃焼機1が配置されるが、トランジションピース3と連結されるライナー2の下流側の外面には外側に凸状に湾曲した環状のスプリングシール5が取り付けられている。この環状のスプリングシール5は、普通、フラシール(hula seal)とも呼ばれる。また、トランジションピース3は、ライナー2の下流側に取り付けられたスプリングシール5の凸状部と弾力的に接触する内壁と、前記内壁を囲繞する外壁の二重管構造を有する。このため、ライナー2及びトランジションピース3は、たとえ高温の燃焼ガスによる熱変形が生じてもスプリングシール5の弾性を媒介として互いにスライドしながらこれを収容できるように連結される。
【0005】
ところが、燃焼ダクト組立体6は、高温の燃焼ガスが流れる通路であるため、適切な冷却が求められる。このために、圧縮機(図示せず)において高圧で圧縮された空気の一部をガスタービンのハウジング内に充填し、トランジションピース3の外壁及びライナー2を囲繞するスリーブ4に多数の通孔7を穿孔して圧縮空気がスリーブ4の外面からトランジションピース3に向かって流入するようにしている。スリーブ4の内側に流入した空気は、燃焼機1に向かって上昇しながらトランジションピース3及びライナー2を冷却させ、最終的には燃焼機1内に入り込んで燃料と混ざって燃焼される。
【0006】
このような圧縮空気が高温のライナー2及びトランジションピース3を適切に冷却させるためには、優先的に、スリーブ4に形成された通孔7を介してできる限り多量の空気が流入できなければならない。このために、スリーブ4の通孔7の周りには、空気の流れを通孔7内に導くための各種の部材が設けられる場合もある。
【0007】
特許文献1には、このような空気誘導手段として、スクープ8が開示されている。スクープ8は、その形状がアイスクリームをすくい取る一種のしゃくしのような形状をしているところから名付けられたが、半球を半分に切った後、再び半分に切った1/4球状殻の形状を呈している。スクープ8の直径はスリーブ4の通孔7のそれよりもやや大きく、このようなスクープ8を通孔7の周りに沿って貼着して約半分を囲繞するようにすれば、通孔7の周りを通る空気がスクープ8に捕捉されて通孔7内に入り込む。このため、スクープ8は、スリーブ4内に入り込む空気量を増大させる機能を有する。
【0008】
しかしながら、
図2に示すような形状を有するスクープによる空気の流入量の増加効果は限界に達しており、ガスタービンの出力の増加とあいまって高まりつつある燃焼発熱量に堪えられないが故に、これに対する改善措置が講じられる必要があるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国登録特許第6,494,044号(2002年12月17日付けで登録)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、スリーブに形成された通孔内に入り込む圧縮空気の流入量を増大させることのできる新規な形状の空気誘導キャップを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、空気の流れを底面側の通孔に導くための空気誘導キャップであって、水平面に対して上向きに傾斜した上面と、前記上面の縁部のうち前記空気が入り込む入口側の縁部を除く残りの縁部に沿って下方に延設された壁面と、を備える。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記上面の入口の反対側の背面の縁部は、円弧、例えば、半円をなす。
【0013】
また、前記上面の入口側の縁部の両端から延びる前記壁面の縁部は、外側に向かって傾斜するように形成されてもよい。
【0014】
ここで、前記上面の水平面に対する正射影内に前記通孔が収容される大きさに前記上面が形成されることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の実施形態によっては、前記壁面の入口の反対側の背面の縁部から下方に延設されて前記通孔に嵌め込まれる突出部材をさらに備えていてもよい。
【0016】
前記突出部材は、前記通孔の内周面に密着されてもよく、このために、前記突出部材は、パイプ又はパイプの一部を切り欠いた形状であってもよい。
【0017】
一方、本発明による空気誘導キャップを備える燃焼ダクトは、空気が表面を流れ、前記空気が流入する複数の通孔が形成されたガスタービンの燃焼ダクトと、水平面に対して上向きに傾斜した上面と、前記上面の縁部のうち前記空気が入り込む入口側の縁部を除く残りの縁部に沿って下方に延設された壁面と、を有する複数の空気誘導キャップと、を備え、一つの前記空気誘導キャップが一つの前記通孔を囲繞するように前記燃焼ダクトの上に結合される。
【0018】
ここで、前記空気の流れに沿う方向に配列された複数の空気誘導キャップは、前記空気の流れの下流に進むにつれてその高さが大きくなるように作製されてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記燃焼ダクトはスリーブであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
上述したような構成を有する本発明の空気誘導キャップは、空気の入口部が上向きに傾斜していることから、入口の断面積が増加して冷却空気の流量の確保が有利となり、上面が通孔を向く方向に傾斜していることから、空気の流れを通孔を貫通する垂直方向に導き易いというメリットを有する。
【0021】
また、本発明は、空気誘導キャップの上面が通孔を全て覆う程度に長く形成されていることから、従来のスクープとは異なり通孔の入口領域において乱流が発生し難いので、安定的な空気の流れが形成可能であるという効果を有する。
【0022】
さらに、本発明の空気誘導キャップは、通孔に嵌め込まれる突出部材をさらに備えて空気誘導キャップを通孔に対して正確に位置を合わせて結合するとともに、垂直方向の空気の流れを燃焼ダクトの奥側まで案内することが可能である。
【0023】
さらにまた、本発明は、複数の空気誘導キャップを燃焼ダクトに配置するに当たって、空気の流れに沿う方向に配列された複数の空気誘導キャップが空気の流れの下流に進むにつれてその高さが大きくなるようにすることにより、燃焼ダクトの全体に亘って満遍なく均一な冷却効果を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】ガスタービンの燃焼ダクト組立体に対する一般的な構造を示す図である。
【
図2】従来の燃焼ダクトに配設されるスクープを示す図である。
【
図3】
図2のスクープに流入する空気の流れを模式的に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による空気誘導キャップを示す斜視図である。
【
図5】
図4の空気誘導キャップに対する側断面図である。
【
図6】空気誘導キャップの他の実施形態を示す斜視図である。
【
図7】本発明の空気誘導キャップが燃焼ダクトであるスリーブに結合された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の実施形態について説明するに当たって、当業者であれば明らかに理解可能な公知の構成についての説明は、本発明の要旨を曖昧にしないために省略される。また、各図面の構成要素に参照符号を付するに当たって、同じ構成要素に対してはたとえ他の図面の上に表示されているとしてもできる限り同じ符号を付し、図面を参照するときには、図示の線の太さや構成要素の大きさなどが説明の明瞭性及び便宜性のために誇張されて示されているということを考慮しなければならない。
【0026】
また、本発明の実施形態の構成要素について説明するに当たって、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語が使用可能である。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語により当該構成要素の本質や順番又は順序などが限定されることはない。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」又は「接続」されると記載されている場合、その構成要素はその他の構成要素に直接的に連結若しくは接続されてもよいが、各構成要素の間にさらに他の構成要素が介在されながら間接的に「連結」、「結合」又は「接続」されてもよいと理解すべきである。
【0027】
図3の(a)及び(b)は、
図2に示す従来のスクープ8を側面及び平面からそれぞれ眺めた図である。
【0028】
図3から明らかなように、従来の1/4球状殻の形状であるスクープ8は、球面にぶつかった個々の空気の流れの反射角がその位置に応じて異なるため、その流れが重なり合い、一部は通孔7の外側に戻っていく場合もある。このような複雑な空気のぶつかりは、結果的に通孔7の入口領域に不規則的な乱流を形成し、このような乱流は、通孔7内に空気が円滑に流入できない邪魔として働く。また、通孔7の入口領域に形成された乱流は、後続する空気の流れまで妨げてしまい、これを解消するために圧縮空気の圧力を増加させると、空気の流速が大きくなるため、乱流の形成の尺度となるレイノルズ数を増やしてしまう悪影響として働く。
【0029】
本発明は、このような従来の空気誘導手段であるスクープ8の構造的な問題を解消するために案出されたものであり、その詳細な構造については、本発明の一実施形態による空気誘導キャップ10を示す
図4及び
図5に基づいて説明する。
【0030】
本発明は、上述した従来のスクープ8の機能と同様に、燃焼ダクト、例えば、スリーブ4の表面を流れる空気の流れを底面側の通孔7に導くための空気誘導キャップ10に関するものである。このため、空気誘導キャップ10は、通孔7がその内部に位置するように囲繞する形状に配置及び結合される。
【0031】
空気誘導キャップ10は、水平面に対して上向きに傾斜した上面20と、前記上面20の縁部のうち空気が入り込む入口32側の縁部を除く残りの縁部に沿って下方に延設された壁面30と、を備える構造を有する。すなわち、入口32側及び下面を除く残りの面が閉じている構造である。
【0032】
空気誘導キャップ10の長さ、すなわち、上面20の長さは、水平面に対する上面20の正射影内に底面側の通孔7が収容される大きさに形成されてもよい。換言すると、空気誘導キャップ10内に通孔7の全体が納まってもよく、これは、従来の1/4球状殻の形状のスクープ8が通孔7の約半分のみを囲繞する構造とは相違する。
【0033】
このような構造の空気誘導キャップ10は、空気が流入する入口32部が上向きに傾斜しているので、入口の断面積が増加して冷却空気の流量の確保が有利となる。
【0034】
また、
図5に模式的に示すように、上面20が通孔7を向く方向に傾斜しているので、一旦空気誘導キャップ10内に流入した空気の流れを通孔7を貫通する垂直方向に導き易い。
【0035】
さらに、本発明の空気誘導キャップ10は、その上面20が通孔7を全て覆う程度に長く形成されているので、従来のスクープ8のように通孔7の入口領域において乱流が発生し難く、通孔7に向かって流線がずっと続いて流れる層流の形成を誘導することになる。
【0036】
このため、上述したような本発明の空気誘導キャップ10は、燃焼ダクトの表面を流れる空気が通孔7内に流入する安定的な空気の流れを形成するのに非常に適した構造である。
【0037】
また、空気誘導キャップ10の上面20において、入口32の反対側の背面34縁部は、円弧面、例えば、半円をなしてもよい。これは、円形である通孔7の縁部に密着されるように壁面30を形成することにより、入口32の反対側の壁面30にぶつかった空気が通孔7に向かって収束される方向に集まるようにするためである。
【0038】
さらに、上面20の入口32側の縁部の両端から延びる前記壁面30の縁部は、外側に向かって傾斜するように形成されてもよい。すなわち、
図4の斜視図に示すように、空気誘導キャップ10の空気の入口32の両脇に僅かに開かれている開放面が形成されるようにする。
【0039】
これは、
図5に示すように、通孔7に流入する空気の分布は、主として通孔7の背面(空気流入方向の反対側の面)に偏っているため、空気入口32の両脇に僅かな開放面を形成しても、一旦空気誘導キャップ10内に導かれた空気が再び抜け出る虞はあまりなく、このため、空気誘導キャップ10の長手方向に対して僅かに斜めに流れる空気を内部に受け入れるために入口32の両脇を僅かに開いておくのが有利となる傾向にあるためである。
【0040】
一方、本発明の実施形態によっては、壁面30の入口32の反対側の背面34の縁部から下方に延設されて前記通孔7に嵌め込まれる突出部材40をさらに備えていてもよく、このような実施形態は
図6に示されている。
【0041】
突出部材40としてパイプ又はパイプの一部を切り欠いた部品を用いて空気誘導キャップ10の入口32の反対側の背面34内に溶接などの方法を用いて結合するか、あるいは、プレス・折り曲げ加工などを用いて空気誘導キャップ10及び突出部材40を一体にしてもよい。
【0042】
突出部材40は、通孔7内に挿入される部分であり、空気誘導キャップ10を通孔7に対して結合すると、外部には空気誘導キャップ10の上面20及び壁面30のみが視認され、突出部材40は内部に納まって外部には露出されない。特に、通孔7の内周面に密着されるように、突出部材40は通孔7の直径に対応する外径を有することが好ましい。
【0043】
このような突出部材40は、2種類の機能を有する。
第一に、空気誘導キャップ10に配設された突出部材40を通孔7に嵌め込むことにより、通孔7に対する空気誘導キャップ10の位置合わせ作業を誤差なしに正確に且つ手軽に行うことができる。一旦通孔7に突出部材40を嵌め込むと、作業者は空気誘導キャップ10の入口の方向のみを調整して溶接などを用いて固定すればよい。このような便利性は、多数の空気誘導キャップ10を一々に燃焼ダクトの表面に取り付ける作業を行うに当たって、かなりの作業効率の向上をもたらす。
【0044】
第二に、突出部材40が通孔7に入り込む垂直方向の空気の流れを燃焼ダクトの奥側まで案内することができる。
図1に示す燃焼ダクト組立体6を参照すると、スリーブ4の内側には僅かな間隔をあけて燃焼ガスが流れるライナー2及びトランジションピース3が配置されているが、スリーブ4を通過した空気は、この高温のライナー2及びトランジションピース3の表面を冷却させなければならない。このため、突出部材40を用いてライナー2及びトランジションピース3の表面に近付くように空気を誘導又は噴出すると、その冷却効果がかなり向上する。
【0045】
図7は、上述したような空気誘導キャップ10が燃焼ダクトに配設された実施形態を示すものである。ここで、燃焼ダクトは、スリーブ4を対象としている。
【0046】
スリーブ4の表面には圧縮空気が流れており、この空気を内側に流入させるための複数の通孔7が形成されている。上述した本発明の空気誘導キャップ10は、一つずつそれぞれの通孔7を囲繞するように配置及び固定され、特に、空気誘導キャップ10の入口32は、空気の主な流動方向に合わせられるようにその方向が取られる必要がある。
【0047】
スリーブ4の表面を流れる空気の流れは、ガスタービンが設計された形状及び配置などによりほとんど定められた方向に沿うことになる。このような空気の流れの方向に沿って複数の空気誘導キャップ10が列をなしてもよく、
図7に破線で括られた3つの空気誘導キャップ10がこれに相当する一例として表示されている。
【0048】
この場合、
図7の「A−A」断面図に示すように、空気の流れの下流に進むにつれて列をなす各空気誘導キャップ10の高さh、h'、h''は次第に大きくなることが好ましい。これは、上流側の空気誘導キャップ10が下流側の空気誘導キャップ10内に空気が流入することを妨げる虞があるということを考慮したものであり、このように空気の流れに沿って列をなす空気誘導キャップ10の高さに漸進的な差等を設けることにより、燃焼ダクトの全体に亘って万遍なく均一な冷却効果を発現することができる。
【0049】
ここで、
図7は、突出部材40のない
図4の実施形態としての空気誘導キャップ10を適用した例を示しているが、
図6の突出部材40まで備える空気誘導キャップ10が同じ様相に適用可能であるということは通常の技術者であれば明らかに理解できる筈である。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態が図示及び説明されているが、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する当業者であれば、本発明の原則や精神から逸脱しない範囲内において本実施形態を変形することができるということが理解できる筈である。よって、本発明の権利範囲は請求項の記載内容及びその均等物によって定められる筈である。
【符号の説明】
【0051】
1 燃焼機
2 ライナー
3 トランジションピース
4 スリーブ
5 スプリングシール
6 燃焼ダクト組立体
7 通孔
8 スクープ
10 空気誘導キャップ
20 上面
30 壁面
32 入口
34 背面
40 突出部材
h、h'、h'' 空気誘導キャップの高さ