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特許6296481構造体、移動物体特定システム及び駐車場管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296481
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】構造体、移動物体特定システム及び駐車場管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/02 20060101AFI20180312BHJP
   G08G 1/015 20060101ALI20180312BHJP
   G08G 1/14 20060101ALI20180312BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20180312BHJP
   G07B 15/00 20110101ALI20180312BHJP
   E04H 6/10 20060101ALI20180312BHJP
   E04H 6/00 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   G08G1/02 A
   G08G1/015 A
   G08G1/14 A
   G01C21/28
   G07B15/00 M
   E04H6/10 A
   E04H6/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-167104(P2013-167104)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-35190(P2015-35190A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 孝明
(72)【発明者】
【氏名】渡部 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】木村 寛治
(72)【発明者】
【氏名】原田 良一
(72)【発明者】
【氏名】星 悠太郎
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−018498(JP,A)
【文献】 特開平08−235486(JP,A)
【文献】 特開2004−272360(JP,A)
【文献】 特開2007−272676(JP,A)
【文献】 特開2007−058718(JP,A)
【文献】 米国特許第07983838(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/02
E04H 6/00
E04H 6/10
G01C 21/28
G07B 15/00
G08G 1/015
G08G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体の移動方向に沿って前記移動物体と接触するよう設置され、前記接触する面に複数列の凹凸構造が形成され、前記移動物体との接触時に前記各凹凸構造が異なる擬似雑音信号を発生させる構造体であって、
前記擬似雑音信号は、前記移動物体の情報を取得するために、正規化された後に基準車速における振動パターンと対比される構造体
【請求項2】
移動物体の移動方向に沿って前記移動物体と接触するよう設置されるものであって、前記接触する面に異なる擬似雑音信号を発生させる複数列の凹凸構造が形成された構造体と、
前記移動物体と前記構造体の複数列の凹凸構造との接触によって発生する、少なくとも1つの波形が重畳した擬似雑音信号を正規化し、基準車速における振動パターンと対比して前記移動物体に関する情報を特定する移動物体特定手段と、
を有することを特徴とする移動物体特定システム。
【請求項3】
前記移動物体に関する情報が、前記構造体の設置位置における、前記移動物体の通過の有無、通過時刻、通過方向、通過速度、通過した移動物体の車幅又は通過した移動物体の車種の少なくともいずれか1つの情報を含むものであること、
を特徴とする請求項2に記載の移動物体特定システム。
【請求項4】
前記接触によって発生する少なくとも1つの波形が重畳した擬似雑音信号から抽出されたユニークな情報と、前記ユニークな情報に対応付けて予め記憶されている位置に関する情報とから、前記移動物体に関する情報として位置情報を特定する位置特定手段を、
更に有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の移動物体特定システム。
【請求項5】
前記移動物体特定手段は、前記移動物体と前記構造体の複数列の凹凸構造との接触によって発生する、少なくとも1つの波形が重畳された擬似雑音信号から前記移動物体の車種を特定する、
ことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1つに記載の移動物体特定システム。
【請求項6】
前記移動物体特定手段は、前記移動物体と前記構造体の複数列の凹凸構造との接触によって発生する、少なくとも1つの波形が重畳された擬似雑音信号から前記移動物体の車幅を特定し、前記車幅から前記移動物体の車種を特定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の移動物体特定システム。
【請求項7】
前記移動物体特定手段は、前記移動物体に搭載されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の移動物体特定システム。
【請求項8】
前記構造体は、マットの表面に一体的に形成された、
ことを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか1つに記載の移動物体特定システム。
【請求項9】
駐車場における車両の移動方向に沿って前記車両と接触するように複数設置されるものであって、前記接触する面に前記移動方向に沿って延びる異なる擬似雑音信号を発生させる複数列の凹凸構造が形成された構造体と、
前記車両の移動に伴って、前記車両と前記構造体の複数列の凹凸構造との接触によって時系列で発生する、少なくとも1つの波形が重畳した複数の擬似雑音信号のうち、時間的に最後に発生した擬似雑音信号から、前記車両を駐車したエリアを特定する駐車エリア特定手段と、
を有することを特徴とする駐車場管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動物体に関する情報を特定する、構造体、移動物体特定システム及び駐車場管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動物体に関する情報を特定する技術として、特開2003−279361号公報(特許文献1)に記載されたナビゲーションシステムが提案されている。かかるナビゲーションシステムは、GPS(Global Positioning System)電波を受信できるときには衛星測位により現在位置又は所定地点の通過を特定し、GPS電波を受信できないときには自律測位により現在位置又は所定地点の通過を特定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−279361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、屋内駐車場、ショッピングモールなど、GPS電波を受信できない場所や、直接波ではなく反射波が第1波となる場所や、直接波が見え隠れする場所などでのナビゲーションは、自律測位によりある程度の精度をもって現在位置又は所定地点の通過を特定可能であるが、例えば、何度も方向を変えると現在位置又は所定地点の通過の特定精度が大幅に低下してしまう。このような現象は、屋外であっても、GPS電波の到達が困難な状態で起こり得る。従って、移動物体に関する情報の特定は、外的要因に影響されてしまい、その特定精度が低下するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、外的要因に影響されずに、移動物体に関する情報を特定できる構造体、移動物体特定システム及び駐車場管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、構造体は、移動物体の移動方向に沿って移動物体と接触するよう設置され、接触する面に複数列の凹凸構造が形成され、移動物体との接触時に各凹凸構造が異なる擬似雑音信号を発生させる。擬似雑音信号は、移動物体の情報を取得するために、正規化された後に基準車速における振動パターンと対比される。
【0007】
また、移動物体特定システムは、移動物体と構造体の複数列の凹凸構造との接触によって発生する、少なくとも1つの波形が重畳した擬似雑音信号を正規化し、基準車速における振動パターンと対比して移動物体に関する情報を特定する。
【0008】
駐車場管理システムは、車両の移動に伴って、車両とその移動方向に沿って延びる構造体の複数列の凹凸構造との接触によって時系列で発生する、少なくとも1つの波形が重畳した複数の擬似雑音信号のうち、時間的に最後に発生した擬似雑音信号から、車両を駐車しエリアを特定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外的要因に影響されずに、移動物体に関する情報を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ショッピングモールに併設された屋内駐車場の一例を示す概要図である。
図2】構造体の一例を示す平面図である。
図3】構造体により発生する擬似雑音信号の一例を示す説明図である。
図4】車両に搭載された移動物体特定システムの一例を示す構成図である。
図5】コントロールユニットの内部機能の一例を示す詳細図である。
図6】データベースのデータ構造の一例を示す説明図である。
図7】制御プログラムの一例を示すフローチャートである。
図8】構造体の他の例を示す平面図である。
図9】構造体により発生する擬似雑音信号の他の例を示す説明図である。
図10】屋内駐車場に設置された移動物体特定システムの一例を示す構成図である。
図11】データベースのデータ構造の他の例を示す説明図である。
図12】制御プログラムの他の例を示すフローチャートである。
図13】構造体の形状の第1変形例を示す平面図である。
図14】構造体の形状の第2変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1は、ショッピングモールに併設された屋内駐車場の一例の概要を示す。
【0012】
屋内駐車場100は、外部の道路からの入口ゲート110と、外部の道路への出口ゲート120と、車両などが走行する内部通路130と、複数の駐車エリア140と、を有する。屋内駐車場100において、入口ゲート110から内部通路130へと進入した車両150は、内部通路130を走行して、車両運転者が所望する駐車エリア140まで進行する。
【0013】
このとき、車両150に搭載されたカーナビゲーションシステムは、屋内であることからGPS電波を受信できなくなり、例えば、主に車速パルスやジャイロセンサなどを使用した自律測位により現在位置を特定する。しかし、カーナビゲーションシステムにおいては、そもそも基本的には車速パルス、ジャイロセンサ及びGPSの情報にカルマンフィルタリングを施して位置推測を行い、この位置推測結果に基づきマッチングを行って位置特定をしており、GPSを補助的に用いていた。このため、車両運転者が所望する駐車エリア140まで到着するまでに、GPS電波を受信できないと、マッチングによる位置特定精度が徐々に低下し、正確な現在位置を特定できなくなってしまう。
【0014】
そこで、屋内駐車場100の内部通路130の所定位置に、移動物体の一例としての車両150の移動方向に沿って、車両150との接触により、一意な擬似雑音信号(機械的な振動、音響的な振動など)を発生させる構造体200が設置される。構造体200は、車両150の車輪と接触する接触面、即ち、図2に示すように、所定寸法を有する矩形形状のマット202の表面(上面)に、擬似雑音信号を発生させる凹凸構造204が一体的に形成されたものである。凹凸構造204としては、例えば、位置特定符号系列であるM系列(maximal-length sequences)を使用することができる。構造体200をマット202の表面に一体的に形成することで、例えば、これを駐車場などの施設に設置する作業工数を削減することができる。
【0015】
そして、車両150が構造体200の上を通り過ぎるとき、車両150の車輪が構造体200の凹凸構造204と接触し、図3に示すように、構造体200ごとに一意な擬似雑音信号が発生する。このため、例えば、車両150の移動に伴って発生した擬似雑音信号を解析することで、その擬似雑音信号はどの構造体200で発生したかを特定することができる。また、構造体200とその設置位置(位置座標)とを関連付けておけば、擬似雑音信号を発生した構造体200から車両150の現在位置を特定することができる。
【0016】
図4は、構造体200により発生した擬似雑音信号から現在位置を特定する、車両150に搭載された移動物体特定システム300の一例を示す。
【0017】
車両150には、車両150が構造体200の上を通り過ぎるときに発生する擬似雑音信号の波形を検出する振動センサ310と、車速を検出する車速センサ320と、コンピュータを内蔵したコントロールユニット330と、が搭載されている。振動センサ310は、例えば、車両150の車軸、サスペンションなど、車輪と共に変位する部分に取り付けられている。また、車速センサ320は、図示しない変速機の出力軸に取り付けられ、その回転速度から車速を検出する。振動センサ310及び車速センサ320の出力信号は、コントロールユニット330へと入力される。そして、コントロールユニット330は、フラッシュROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリに格納された制御プログラムを実行することで、車両150と構造体200の凹凸構造204との接触によって発生する擬似雑音信号から、車両150の現在位置を特定する。なお、車速センサ320の代わりに、例えば、CAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークを介して接続された、エンジンコントロールユニットから車速信号を読み込むようにしてもよい。また、擬似雑音信号が音響的な振動である場合には、振動センサ310として、マイクなどの音響センサを使用することもできる。
【0018】
コントロールユニット330は、図5に示すように、構造体200の位置座標と擬似雑音信号の振動パターンとを関連付けたデータベース332を有する。データベース332には、図6に示すように、コンピュータにおける情報処理のためのID(識別子)と、位置座標(X,Y,Z)と、基準車速における振動パターンと、を関連付けたレコードが複数登録されている。従って、振動パターンが特定できれば、これから位置座標を特定することができる。なお、位置座標としては、三次元座標(X,Y,Z)に限らず、二次元座標(X,Y)であってもよい。
【0019】
また、コントロールユニット330は、制御プログラムを実行することで、構造体200により発生した擬似雑音信号から現在位置(通過位置情報)を特定する位置特定手段334を実現する。位置特定手段334は、振動センサ310及び車速センサ320の出力信号を適宜読み込み、データベース332を参照して、現在位置を特定する。
【0020】
図7は、車両150に搭載されたコントロールユニット330が起動されたことを契機として、コントロールユニット330が所定時間ごとに繰り返し実行する制御プログラムの一例を示す。
【0021】
ステップ1(図では「S1」と略記する。以下同様。)では、コントロールユニット330が、振動センサ310から振動信号を読み込む。
【0022】
ステップ2では、コントロールユニット330が、振動センサ310から読み込んだ振動信号に基づいて、車両150の走行振動以外の振動があるか否かを判定する。ここで、走行振動は、振動センサ310の振動信号を常時監視し、例えば、その振動信号の移動平均などとすることができる。そして、コントロールユニット330は、走行振動以外の振動があると判定すれば処理をステップ3へと進める一方(Yes)、走行振動以外の振動がないと判定すれば処理を終了させる(No)。
【0023】
ステップ3では、コントロールユニット330が、車速センサ320から車速信号を読み込む。
【0024】
ステップ4では、コントロールユニット330が、車速センサ320から読み込んだ車速信号に基づいて、振動センサ310から読み込んだ振動信号を正規化する。即ち、車両150が構造体200の上を通り過ぎるとき、その車速が必ずしも基準車速であるとは限らない。このため、車速に応じて振動信号を適宜調整し、基準車速における振動信号、要するに、データベース332に登録されている振動パターンとのマッチングが容易な振動パターンに変換する。なお、振動信号の正規化は、必ずしも必要ではない。
【0025】
ステップ5では、コントロールユニット330が、データベース332を参照し、振動信号から現在位置を特定する。具体的には、コントロールユニット330は、データベース332を参照し、ステップ4で正規化された振動信号に応じた振動パターンを特定する。ここで、振動信号に応じた振動パターンの特定は、完全一致の振動パターンに限らず、例えば、公知の統計手法などを適用して求めた類似度が所定値以上である振動パターンであってもよい。そして、コントロールユニット330は、特定した振動パターンにより特定されるレコードから位置座標を抽出し、その位置座標を現在位置とみなす。
【0026】
ステップ6では、コントロールユニット330が、ステップ5で特定した現在位置を外部に出力する。
【0027】
このような移動物体特定システム300によれば、車両150に搭載されたコントロールユニット330は、構造体200の上を通り過ぎるときに発生する振動信号を振動センサ310から読み込み、車速信号に基づいて振動信号を正規化する。また、コントロールユニット330は、データベース332を参照し、正規化された振動信号と同一又は類似する振動パターンを特定する。そして、コントロールユニット330は、特定された振動パターンを含むレコードから位置座標を読み込み、その位置座標を車両150の現在位置とみなして出力する。コントロールユニット330から出力された現在位置は、例えば、ナビゲーションシステムにおいてマップマッチングなどに利用される。
【0028】
従って、GPS電波を受信できないなどの外的要因に影響されずに、屋内駐車場100において車両150の現在位置を特定することができる。
【0029】
ところで、ショッピングモールに併設された屋内駐車場100が有料駐車場の場合、出口ゲート120から出場する車両150の運転者に対して、例えば、利用時間に応じた料金を請求する。有料駐車場の利用料金は、四輪車と二輪車とで異なることが多い。このため、出口ゲート120の近くに設置されている構造体200により、車両150の車幅を特定し、少なくとも、四輪車と二輪車とを区別、要するに、車両150の車種を特定できるようにしたい。
【0030】
そこで、図8に示すように、構造体200のマット202の表面に、車両150の移動方向に沿って、異なる擬似雑音信号を発生させる複数列の凹凸構造204(204A〜204K)を形成する。なお、図示の構造体200は、11列の凹凸構造204A〜204Kを有しているが、その列数は11列に限らず、2列以上の複数列とすることもできる。
【0031】
このようにすれば、車両150の一例としての四輪車が構造体200の上を通り過ぎるときには、車両150の左右の車輪が離間した異なる列の凹凸構造204に接触するので、図9に示すように、複数の振動の波形が合成(重畳)した擬似雑音信号が発生する。一方、車両150の他の例としての二輪車が構造体200の上を通り過ぎるときには、車幅方向に1つの車輪しかないため、1列の凹凸構造204にのみ接触し、図3に示すように、1つの振動の波形からなる擬似雑音信号が発生する。なお、車両150の1つの車輪が隣接する2列の凹凸構造204に接触する場合には、隣接する2列の凹凸構造204により発生する2つの振動の波形が合成されているので、その振動パターンの違いを介して、離間した異なる列の凹凸構造204と接触している状態と区別することができる。
【0032】
従って、構造体200により発生する擬似雑音信号を解析することで、この上を通過した車両150の車幅を特定することができ、その車両150が四輪車か二輪車であるかを特定することができる。
【0033】
車両150の車種を特定するために、屋内駐車場100には、図10に示すように、移動物体特定システム400が設置されている。具体的には、屋内駐車場100の出口ゲート120の近くにある構造体200には、構造体200の上を車両150が通り過ぎることで発生する擬似雑音信号の波形を検出する振動センサ410が取り付けられる。この振動センサ410は、構造体200に1つだけ設けられていてもよく、また、その凹凸構造204A〜204Kの列ごとに設けられていてもよい。そして、振動センサ410の出力信号は、コンピュータを内蔵した制御装置420に入力される。制御装置420は、フラッシュROMなどの不揮発性メモリに格納された制御プログラムを実行することで、車両150の通過を特定すると共に、車両150の車種を特定する。具体的には、制御装置420は、制御プログラムを実行することで、車両150の通過を特定する通過特定手段422と、車両150の車種を特定する車種特定手段424を実現する。ここで、通過特定手段422及び車種特定手段424は、移動物体特定手段の一例として挙げられる。
【0034】
制御装置420に備えられるデータベース426には、図6に示すレコードに加え、図11に示すように、車種情報と、基準車速における振動パターンと、を関連付けたレコードが登録されている。データベース426に登録される振動パターンは、二輪車であれば、1列の凹凸構造204又は隣接する2列の凹凸構造204と接触するため、1つの振動又は2つの振動が合成された振動のパターンとなる。また、四輪車であれば、離間した2位置にある1列又は隣接した2列の凹凸構造204と接触するため、少なくとも2つの振動が合成された振動のパターンとなる。そして、制御装置420は、次のようにして車両150の通過及び車種を特定する。
【0035】
図12は、制御装置420が起動されたことを契機として、制御装置420が所定時間ごとに繰り返し実行する制御プログラムの一例を示す。
【0036】
ステップ11では、制御装置420が、振動センサ410から振動信号を読み込む。ここで、複数の振動センサ410が備えられている場合には、制御装置420は、各振動センサ410から振動信号を夫々読み込み、これを合成した振動信号を生成すればよい。
【0037】
ステップ12では、制御装置420が、振動センサ410から読み込んだ振動信号に基づいて、車両150が構造体200の上を通り過ぎることにより発生する振動があるか否か、即ち、車両150が構造体200を通過したか否かを判定する。そして、制御装置420は、振動があると判定すれば処理をステップ13へと進める一方(Yes)、振動がないと判定すれば処理を終了させる(No)。このとき、出口ゲート120の近くに設置した構造体200の位置座標が既知であるため、制御装置420は、出口ゲート120の近くに複数の構造体200が設置されていても、車両150の車種を特定するために設置した構造体200の上を車両150が通り過ぎたか否かを判定することができる。
【0038】
ステップ13では、制御装置420が、データベース426を参照し、車両150の車種を特定する。具体的には、制御装置420は、データベース426を参照し、ステップ11で読み込んだ振動信号に応じた振動パターンを特定する。ここで、振動信号に応じた振動パターンの特定は、完全一致の振動パターンに限らず、例えば、公知の統計手法などを適用して求めた類似度が所定値以上である振動パターンであってもよい。そして、制御装置420は、特定した振動パターンにより特定されるレコードから車種情報を抽出し、少なくとも、車両150が四輪車か二輪車かを特定する。
【0039】
なお、データベース426を参照するときに、制御装置420は、車両150の車速(通過速度)を間接的に特定し、これを用いて振動信号を正規化するようにしてもよい。このようにすれば、振動パターンのマッチング精度を向上させることができる。この場合、制御装置420は、車両150の車速を直接検出できないので、例えば、構造体200により発生する擬似雑音信号の継続時間を計測し、これと凹凸構造204の形成長さとから車速を求めるようにすればよい。
【0040】
ステップ14では、制御装置420が、車種情報を外部に出力する。制御装置420から外部に出力された車種情報は、例えば、駐車料金を徴収する料金徴収システムで利用することができる。
【0041】
このような移動物体特定システム400によれば、屋内駐車場100において、車両150の通過を特定できると共に、その車両150が少なくとも四輪車か二輪車かを特定することができる。従って、駐車料金の徴収に資することができる。
【0042】
ここで、移動物体特定システム400においては、車両に関する情報として、車両150の通過の有無及び車種に加えて、擬似雑音信号の発生時刻から通過時刻を特定したり、車両150の通過方向、通過速度及び車幅などを特定してもよい。なお、車両150の通過方向は、例えば、擬似雑音信号のパターンの出現方向(順番又は時間的に、反転しているか否か)から特定したり、車両150の移動方向に沿って異なる擬似雑音信号を発生させる凹凸構造204を少なくとも2つ形成し、その擬似雑音信号の発生順序から特定すればよい。
【0043】
車両150の車種を特定する処理において、少なくとも2つの振動が合成された振動パターンを直接比較する代わりに、その振動パターンを複数の単一の振動パターンに分離してもよい。そして、車両150の車輪が接触した凹凸構造204を特定し、その凹凸構造204が隣接しているか離間しているかを介して、少なくとも四輪車か二輪車かを特定してもよい。
【0044】
車両150が四輪車の場合、小型車か大型車かで、駐車料金が異なることがある。この場合には、例えば、車両150の前輪及び後輪が構造体200の上を通り過ぎるときに発生する擬似雑音信号の時間差及び車速から、車両150の全長を推定することもできる。そして、車両150の車種に加えて、その全長から駐車料金を決定すればよい。
【0045】
また、車両150が屈曲路に沿って走行する場合には、構造体200として、車両150の走行経路に沿った形状、例えば、図13に示すようなドーナツ形状、図14に示すような円弧形状などとすることもできる。この場合、構造体200は、車両150の両輪が接触可能な大きさを有する。なお、図13及び図14において破線で示すように、ドーナツ形状、円弧形状などの構造体200に複数列の凹凸構造204を形成すれば、車両150の車種を特定することができる。
【0046】
移動物体としては、四輪車及び二輪車を含む車両150に限らず、例えば、モノレール、鉄道車両などであってもよい。モノレールの場合には、走行路面に限らず、車体側面に取り付けられているタイヤが接触する側壁に構造体200を設置することができる。また、鉄道車両の場合には、軌道を構成するレールの上面に凹凸を形成することで、構造体200を設置することができる。
【0047】
さらに、構造体200としては、図2及び図8に示すマット状のものに限らず、例えば、移動物体たる車両150が走行する路面上に凹凸構造204を直接形成することもできる。
【0048】
また、車両150の位置、車幅及び種類を特定するために、複数の構造体200を使用するようにしてもよい。
【0049】
さらに、図1に示す屋内駐車場100において、車両150を識別可能である場合には、車両150の位置の時間的な変化から、その軌跡を求めることができる。この場合、例えば、運転者などが所持する携帯端末にアプリケーションをインストールし、携帯端末とアクセスポイント(基地局)との通信より携帯端末の識別子(ID)を求め、携帯端末の識別子を、車両150を識別する識別子として使用すればよい。なお、アクセスポイントとしては、屋内駐車場100の管理者が設置したもの、公共施設などの既設のものを利用することができる。
【0050】
構造体200により車両150の軌跡が求められる場合には、次のようにして、屋内駐車場100において車両150を駐車した駐車エリア140を特定可能な、駐車場管理システムを構築することもできる。即ち、車両150の軌跡は、車両150の移動に伴って、車両150と構造体200の凹凸構造204との接触によって時系列で発生する複数の擬似雑音信号から特定される位置を順次結んだものである。このため、車両150の軌跡のうち、時間的に最後に発生した擬似雑音信号から特定される位置は、車両150を駐車した駐車エリア140であるとみなすことができる。そこで、屋内駐車場100に設置された制御装置(図示せず)に駐車エリア特定手段を実装し、時系列で発生する複数の擬似雑音信号のうち、時間的に最後に発生した擬似雑音信号から、車両150を駐車した駐車エリア140を特定する。なお、駐車場管理システムは、屋内駐車場100に限らず、屋外駐車場にも設置することができる。
【符号の説明】
【0051】
100 屋内駐車場
140 駐車エリア
150 車両
200 構造体
202 マット
204 凹凸構造
300 移動物体特定システム
310 振動センサ
330 コントロールユニット
332 データベース
334 位置特定手段
400 移動物体特定システム
410 振動センサ
420 制御装置
422 通過特定手段
424 車種特定手段
426 データベース
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