特許第6296510号(P6296510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6296510-移動物体の位置検索登録システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296510
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】移動物体の位置検索登録システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20180312BHJP
   G06F 17/30 20060101ALI20180312BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20180312BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20180312BHJP
【FI】
   G06Q50/10ZJM
   G06F17/30 310Z
   G06F17/30 170Z
   G08B25/04 K
   G01S5/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-165260(P2015-165260)
(22)【出願日】2015年8月24日
(65)【公開番号】特開2016-110618(P2016-110618A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年11月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-254524(P2014-254524)
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308036103
【氏名又は名称】株式会社ナスカ
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】井上 昌宏
【審査官】 大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−015407(JP,A)
【文献】 特開2005−311649(JP,A)
【文献】 特開2001−338373(JP,A)
【文献】 特開2012−150767(JP,A)
【文献】 特開2013−143123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
G01S 5/02
G06F 17/30
G08B 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録の対象となる移動体もしくは移動者に装着あるいは付着可能なブルートゥース規格の電波を発する発信器と、
前記発信器の電波を受信可能な複数の移動式もしくは固定式のビーコン通信機器と、
前記ビーコン通信機器とインターネットあるいは通信回線を通じて通信可能な主制御コンピュータと、
を備えた移動物体の位置検索登録システムであって、
前記発信器は、発信内容として当該発信器毎に異なるIDを少なくとも発信するものであり、
前記複数のビーコン通信機器は、それぞれ
1)捜索対象の前記移動体もしくは移動者に装着あるいは付着された発信器の記録対象となる特定のIDを受信し、
2)前記特定のIDを有する電波を受信すると、受信した旨を当該特定のIDおよび自己位置情報と共に主制御コンピュータに送信する、
プログラムを備え、
前記主制御コンピュータは、
1)前記発信器から送信された当該特定のIDを受信する複数の前記ビーコン通信機器の内の特定の位置に存するものをポイント対象ビーコン通信機器として複数箇所において登録し、前記ポイント対象ビーコン通信機器からの記録対象のIDを受信したことの知らせを受信すると当該受信の度毎に記録対象のIDと当該ポイント対象ビーコン通信機器の位置情報とを記憶する機能、
2)前記記録の対象となる移動体もしくは移動者に装着あるいは付着された発信器のIDを前記ポイント対象ビーコン通信機器が受信する毎に、当該IDにポイントを付与する機能、
3)当該ID毎にポイントの付与情報を出力する機能、
を備える移動物体の位置検索登録システム。
【請求項2】
前記ポイント対象ビーコン通信機器の前記特定の位置は、少なくとも以下の一つの位置であり、
1)人通りの少ない通り、
2)夜間に人通りの少ない場所、
3)老人が散歩をするだけで見回りとしてカウントする位置、
かつ、前記特定の位置により、ポイント数が異なるよう設定可能な、請求項1に記載の移動物体の位置検索登録システム。
【請求項3】
前記ポイントは、少なくとも以下の一つの要因において、追加ポイントもしくはポイント加算が設定可能な、請求項1または2に記載の移動物体の位置検索登録システム。
1)22時以降から翌6時までに発信器から受信された場合、
2)発信器を所定年齢以上の人が保持する場合、
3)発信器を専門的知識を持っている人が保持し、指定する場所のビーコン通信機器がこれを受信した場合、
4)当該ID毎に移動の距離または時間が所定以上の場合、
5)複数の所定のIDが受信される複数同時移動の場合。
【請求項4】
前記発信器が、
1)お守りケースに入っている形態、
2)数珠の形態、
3)ステッキに仕込まれている形態、
4)衣服の襟もしくは襟の内側あるいはタグに縫い付けられた形態、
の少なくとも一の形態で構成された請求項1から3のいずれかに記載の移動物体の位置検索登録システム。
【請求項5】
前記発信器は、他の発信器の電波を受信し、当該受信した発信器の特定のIDを記憶して自己の特定のIDと共に送信する機能を備えた請求項1〜4のいずれかに記載の移動物体の位置検索登録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に装着あるいは付着された発信器の電波を受信して当該移動体の位置を検索する移動物体の位置検索登録システムに関し、特に、徘徊高齢者(及び若年性認知症疾患者も含む)、飼い猫あるいは盗難されたバイク等の位置を検索し登録可能な移動物体の位置検索登録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
徘徊高齢者(及び若年性認知症疾患者も含む)問題は認知症の中では家族に負担がかかり地域社会を巻き込む問題であり、徘徊を行う本人にとっても不安でリスクのある問題である。帰る家への道が分からなくなるという徘徊は、それが起こった際に社会でフォローできる仕組みを作っておく事が大切である。
近年の状況としては、
1.行方不明者や事故につながるケースが増加している、
2.家族や介護者の見守りには限界があり、地域全体での対応が必要、
3.地域特性の違いから都市部では住民のスクラムが組みにくく対策が見つからない、
4.「見守る目」を増やすために小学生に認知症の教育が始まった、
5.普段の暮らしの中で見守る発想は都市の規模に関係なく有効な仕組みである、
6.行政機関の地域枠を超えて身元照会ができる仕組みづくりも急がれている、
というものである。
【0003】
徘徊高齢者対策で家人や介護者を助けるものとして徘徊対策機器が発売されている。その機能は加齢の進行状態によって求められる内容が変わる。現状では最初の徘徊までの対応策は名札などをつける対策が主流で、徘徊が頻発してくると、
1. 玄関先に踏めばブザーが鳴るような設備を導入する。もしくは自宅や施設から移動すると電波で察知し、特定小電力無線で連絡をする機器を導入する。
2. GPS機能のついた端末機器を持たせ、いざという時にはパソコンやスマートフォンから地図を見て特定する。
という方法を家族が講じることになる(例えば、特許文献1参照)。
また、徘徊対策機器そのものを身につける高齢者側のインセンティブが十分でなく、積極的に高齢者等が位置情報検索や記録のための検索端末を身につけるしくみが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特許3731736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方法には以下の問題がある。
1.は出入口全てに設備の設置が必要で、家人が必ず近くに居なければ効果がない。何より高齢者の外出を制限するようでイメージが悪い。介護をしていく上で身体拘束と捉えられかねないリスクもある。
2.は盗難品追跡用を介護用に転用したものを含めて2タイプある。
ア. GPSロガー(記録)タイプのものがあるがその機器に位置を記録しているだけ。よって徘徊高齢者を発見して機器を回収してからしか経路を特定することはできないので、行方不明になった高齢者を発見するという事には役に立たない。
イ. 携帯電話の通信網とGPSを使ったものは捜索するのに最強のツールになっているが、携帯電話タイプのものは小型化されているとは言え最小で7.9cm×4.3cm×2.25cmあり、手のひらサイズよりも少し大きく首から下げるなどの携帯方法が取れない。その結果、外出時に持たせる事ができない例が多発しており、自治体のレンタル品になっていても利用者は少ない。小型のボックスタイプのものは3.7cm×3.9cm×1.5cmと小さく、靴に仕込むこともできるが小さいがゆえにバッテリーが5時間しか持たない。また加齢が進むと靴を履かないで外出する例もあり、介護現場では現状の大きさのものは不評で身に付けられるものが要望されている。また、GPSタイプのものは全てバッテリーが数日しかもたず、充電器などへ接触しての充電しか出来ない。しかしその手間を省くと用をなさないので介護現場では実用的ではないというのが実情である。介護士もその仕事柄「人に対する注意」に意識を高めており、「機器に対してのチェック」は業務の多忙さと知識不足から無理な面がある。更に購入のイニシャルコスト・ネットワーク利用料のランニングコストもかかり、複数台の契約をすることは費用負担が大きいという問題があった。
【0006】
モバイル通信における廉価な通信端末用の規格としてブルートゥース規格(以下「ブルートゥース」と記す。)が知られている。ブルートゥースは2.4GHz帯を79の周波数チャンネルに分け、利用する周波数をランダムに変える周波数ホッピングを行いながら、半径10m〜100m程度のブルートゥース搭載機器と、最大24Mbpsで無線通信を行うものである。しかしながら、ブルートゥースでは半径10m〜100m程度の通信範囲が限度であり徘徊高齢者等を発見するシステム用の通信機器としては使用できないものであった。
【0007】
上記したそれぞれの従来技術では、移動者(あるいは物)の捜索等の目的に対し、装着性、大きさ、電池の寿命、通信の範囲等で技術的な問題があった。
また、積極的に高齢者等が位置情報検索や記録のための検索端末を身につけるインセンティブがなくシステムが社会に受け入れられにくい問題があり、これを解決するしくみが求められている。
本発明の課題は、上記した従来技術の問題点を解決し、記録対象となる移動体(徘徊高齢者等)にとって比較的負荷にならない大きさの発信器が採用可能で、消費電力も使用可能な範囲を維持し、広範囲の検索が可能で、位置情報等が徘徊老人等にとってもポイントの取得でインセンティブが提供できる移動物体の位置検索登録システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明は、記録の対象となる移動体もしくは移動者に装着あるいは付着可能なブルートゥース規格の電波を発する発信器と、
前記発信器の電波を受信可能な複数の移動式もしくは固定式のビーコン通信機器と、
前記ビーコン通信機器とインターネットあるいは通信回線を通じて通信可能な主制御コンピュータと、
を備えた移動物体の位置検索登録システムであって、
前記発信器は、発信内容として当該発信器毎に異なるIDを少なくとも発信するものであり、
前記複数のビーコン通信機器は、それぞれ
1)捜索対象の前記移動体もしくは移動者に付された発信器の記録対象となる特定のIDを受信し、
2)前記特定のIDを有する電波を受信すると、受信した旨を当該特定のIDおよび自己位置情報と共に主制御コンピュータに送信する、
プログラムを備え、
前記主制御コンピュータは、
1) 前記発信器から送信された当該特定のIDを受信する前記複数のビーコン通信機器の内の特定の位置に存するものをポイント対象ビーコン通信機器として複数箇所において登録し、前記ポイント対象ビーコン通信機器からの記録対象のIDを受信したことの知らせを受信すると当該受信の度毎に記録対象のIDと当該ポイント対象ビーコン通信機器の位置情報とを記憶する機能、
2) 前記記録の対象となる移動体もしくは移動者に装着あるいは付着された発信器のIDを前記ポイント対象ビーコン通信機器が受信する毎に、当該IDにポイントを付与する機能、
3) 当該ID毎にポイントの付与情報を出力する機能、
を備える移動物体の位置検索登録システムを提供するものである。
【0009】
前記ポイント対象ビーコン通信機器の前記特定の位置は、少なくとも以下の一つの位置であり、
1)人通りの少ない通り、
2)夜間に人通りの少ない場所、
3)老人が散歩をするだけで見回りとしてカウントする位置、
かつ、前記特定の位置により、ポイント数が異なるよう設定可能な構成としてもよい。
【0010】
前記ポイントは、少なくとも以下の一つの要因において、追加ポイント・ポイント加算が可能な構成としてもよい。
1)22時以降から翌6時までに発信器から受信された場合、
2)発信器を所定年齢以上の人が保持する場合、
3)発信器を専門的知識を持っている人が保持し、指定する場所のビーコン通信機器がこれを受信した場合、
4)当該ID毎に移動の距離または時間が所定以上の場合、
5)複数の所定のIDが受信される複数同時移動の場合。
【0011】
前記発信器が、
1)お守りケースに入っている形態、
2)数珠の形態、
3)ステッキに仕込まれている形態、
4)衣服の襟もしくは襟の内側あるいはタグに縫い付けられた形態、
の少なくとも一の形態で構成されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
1)ビーコン通信機器としては、スマートフォンが広く普及しており、住民の多数存在するスマートフォンを使うという現在のインフラをフル活用した仕組みであるため、大規模のシステムが低コストで構築可能。
2)安価で小型な発信器を事前に装着しておくだけでいざという時に対応可能。
3)いつも稼働しているものではなく、非常時にのみ機能させることができる。
4)移動することで、あるいは特定の場所、経路を通ることで、生活等に密接したポイントが付与されるので、検索、記録システムに参加するインセンティブが生まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態における移動物体の位置検索登録システムが適用されるシステムの構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態における移動物体の位置検索登録システムの構成を示した図である。図1において、本移動物体の位置検索登録システムでは、記録の対象となる徘徊高齢者や紛失バイク、いなくなった猫などの移動体もしくは移動者1には、ブルートゥース規格の電波(いわゆるビーコン電波)を発する発信器2が、お守りに装着されている。発信器2の電波を受信可能な複数のスマートフォン3もしくは携帯通信機器4は、あらかじめ協力を同意した全国の地域住民5が保持している。発信器2は付加機能として自己以外のブルートゥース電波(ビーコン電波)を受信する機能を備え、受信した電波の特定のIDを記憶しておき、自己の特定のIDと共に当該受信した他者の特定のIDも自己の特定のIDと共に発信する機能を有する。スマートフォン3もしくは携帯通信機器4は無線回線の利用が可能で、インターネットを通じて通信可能な主制御コンピュータ(主制御コンピュータ6を含む)6に通信接続される。スマートフォン3もしくは携帯通信機器4に代えて、あるいは加えて固定式の通信機器100を使用してもよい。固定式では、記録の対象となる発信器2の移動経路(交通の要所、地域の人に出入りのある要所、交差点Cや病院H、高齢者の擁護施設Iや各住宅の玄関、公民館、学校、警察署P、交番、徘徊が懸念される田舎道の要所)で電源等が確保できる場所であればよい。スマートフォン3もしくは携帯通信機器4、固定式通信機器100を総称して本願発明ではビーコン通信機器と呼ぶ。
また、探索のために発信器2自体を探索の必要な箇所(山の登り口等)に設置しておき、他の発信器2から発信された他の特定のIDを当該発信器2が記憶しておくことで、発信器2の電波を受信可能なビーコン通信機器(スマートフォン3もしくは携帯通信機器4等)が山の登り口にある当該発信器2の特定のIDと合わせて他の特定のIDを受信することで、山の登り口に来た移動体の他の特定のIDを把握することもできる。
【0015】
なお発信器2は、直径3cm程度の球状であって電池を内蔵している。したがって、お守りの袋に入れたり、数珠の一部に組み込んだり、ステッキに仕込んだり、衣服の襟もしくは襟の内側あるいはタグに縫い付けたりすることが容易である。発信内容として当該発信器2毎に異なるIDを少なくとも発信する機能を備えたものであり、ブルートゥースは2.4GHz帯を79の周波数チャンネルに分け、利用する周波数をランダムに変える周波数ホッピングを行いながら、半径10m〜100m程度のブルートゥース搭載機器と、無線通信を行うものである。そして、複数のビーコン通信機器(スマートフォン3、携帯通信機器4、もしくは固定式通信機器)は、捜索対象の前記移動体もしくは移動者1に付された発信器の記録対象となる特定のIDを受信する、とともに、特定のIDを有する電波を受信すると、受信した旨を当該特定のIDおよび自己位置情報と共に主制御コンピュータに送信する、プログラムがアプリケーションケーションとして予めインターネット等を通じてダウンロードされて備えている。
【0016】
家人や介護者などの捜索依頼者9は、端末8等から、検索対象となる移動体もしくは移動者1に装着あるいは付着された発信器2の検索対象のIDを主制御コンピュータに送信し、捜索依頼を行う。又は、捜索依頼者9が捜索の依頼を事務局に依頼し、事務局のオペレータが主制御コンピュータ6を操作することもできる。
また、主制御コンピュータ6は、記録の対象となる移動体もしくは移動者1に装着あるいは付着された発信器2の記録対象のIDを受付ける機能、記録対象のIDを複数のスマートフォン3、携帯通信機器4、もしくは固定式通信機器100などのビーコン通信機器にインターネットや通信回線を通じ送信する、前記ビーコン通信機器からの当該特定のIDの送信を受信した旨および受信したスマートフォン3、携帯通信機器4、もしくは固定式通信機器100などのビーコン通信機器の位置情報を受信する、記録の対象となる移動体もしくは移動者1に装着あるいは付着された発信器2の発見とその位置情報をディスプレイ7に出力し、また通信を介して遠方の端末8へも発見の旨と位置を出力する、プログムを備え、ている。また、捜索依頼者9の了解が得られれば、予め登録した顔写真を特定のIDと関連させて登録しておくことで、当該特定のIDの送信を受信した前記ビーコン通信機器に顔写真を送信して本人確認も可能となる。
スマートフォン3もしくは携帯通信機器4、固定式の通信機器100などのビーコン通信機器は、設定を変えることにより、捜索依頼の有無に関係なく、特定されているか否かを問わずに、受信したすべてのIDを主制御コンピュータ6に送信する機能とすることも可能であり、このときは主制御コンピュータ6が受信したすべてのIDと位置情報を記憶しておき、捜索依頼が発生した時にその情報を検索に利用することもできる。
【0017】
また、本発明の実施の形態においては、発信器が、
1)お守りケースに入っている形態、
2)数珠の形態、
3)ステッキに仕込まれている形態、
4)衣服の襟もしくは襟の内側あるいはタグに縫い付けられた形態、
5)シリコン樹脂や塩化ビニール等で完全防水仕様になった形態、
の少なくとも一の形態で構成されている。
【0018】
スマートフォン3、携帯通信機器4もしくは固定式通信機器100のビーコン通信機器では、
1.アプリケーションケーションストアからアプリケーションをダウンロード
2.インストール
がされて、このアプリケーションッケーションの作動のもとで、
捜査が開始される:(事務局のオペレータの操作等で主制御コンピュータ6が捜索/捜査開始を作動する)
すなわち、
1.プッシュ通知で捜索依頼を受け取る
2.アプリケーションケーションの起動(常時稼動していてもよい)
3.自動で捜索IDを主制御コンピュータ6(主制御コンピュータ6を含んで良い)から取得
4.アプリケーションの終了。もしくはそのまま稼動。
5.アプリケーションがブルートゥースの電波を受信(発信器2からの)。捜索IDでない電波に関しては何も反応しない。
6.捜索IDのブルートゥースを探知した場合、スマートフォン3等のビーコン通信機器に表示
7.アプリケーションから送信ボタンを操作(自動送信でもよい)。主制御コンピュータ6(主制御コンピュータ6を含んで良い)に時間・位置情報(位置座標等)を送信。
8.希望する事務局のオペレータはスマートフォン3の保持者が入力した消息情報を見ることができる。
【0019】
以上のような実施の形態を見守りネット(仮称)プロジェクトとすると、
住民が自分のスマートフォン3からアプリを立ち上げるだけで、半径100mの検索が可能になり、それを網の目に配置することによって広範囲でも徘徊高齢者を発見するポイント対象ビーコン通信機器100になることが出来るシステムを構築することが可能となる。
本実施の形態では以下のことが更に可能となる。
1.住民のスマートフォンを徘徊高齢者探知の為のポイント対象ビーコン通信機器100としての利用、
2.スマートフォンの短距離通信機能(ブルートゥース=車やヘッドホンなどに接続するのに一般的に使われている)を使い、音楽や通話ではなく、徘徊高齢者の情報を通信させること、
3.徘徊高齢者が身に着けるものとして最短・最少・最軽量の対策電子機器の利用、
4.介護者の現状に即したメンテナンス・フリーの運用技術、等の実用化。
【0020】
また、既存の徘徊高齢者保護の連絡網と比較して、
1.FAXや電話より圧倒的に捜査依頼の連絡が早い
2.「誰(名前)を探す」という情報を伝える必要が無いため、個人のプライバシーが守られる方法を構築するのが革新的
3.発見の情報が捜索者の末端まで瞬時に行きわたるのが革新的
であるという特徴を有する。
【0021】
また、本システムでは、徘徊高齢者保護のシステムに対する徘徊高齢者側のインセンティブを考慮している。すなわち主制御コンピュータ6は、記録の対象となる移動体もしくは移動者1に装着あるいは付着された発信器2の記録対象のIDを記憶し、記録対象のIDを複数の前記ビーコン通信機器に送信するとともに、発信器2から送信された当該特定のIDを受信する複数の前記ビーコン通信機器の内の特定の位置に存するものをポイント対象ビーコン通信機器として複数箇所において登録しておくことができる。このポイントは、貯まったポイントが生活圏内にある他のポイントシステム(コンビニや、スーパーマーケットあるいは百貨店等)に移管することができるものとなっている。本システムでは、ポイント対象ビーコン通信機器からの記録対象のIDを受信したことの知らせを主制御コンピュータ6が受信すると、当該受信の度毎に記録対象のIDと当該ポイント対象ビーコン通信機器の位置情報とが主制御コンピュータ6に記憶され、前記記録の対象となる移動体もしくは移動者1に装着あるいは付着された発信器2のIDを前記ポイント対象ビーコン通信機器が受信する毎に、当該IDにポイントを付与する。
【0022】
主制御コンピュータ6においては、ID毎にポイントの付与情報を、定期的にあるいは随時、提携先のポイントサービス会社(あるいはコンビニ、スーパーマーケット、百貨店)などのポイントシステム等に出力する機能を備える。探知されたポイント対象ビーコン通信機器の位置情報は主制御コンピュータ6に集積されており、それを時系列に並べ替える事によって、毎行動の特性を割り出すことが出来る。高齢者がスマートフォンを持ち、後期高齢者等の自宅前を散歩するだけで、後期高齢者等が発信器2を所持していると、位置確認等の安否確認ができる。なるべく地域において人が移動や通過、立寄、散歩して欲しい場所にポイント対象ビーコン通信機器を設置しておけば、後期高齢者等の通常は自宅内に設置された発信器2の移動状況を生活情報として捉え、その移動内容をスマートフォン2や固定式通信機器100から主制御コンピュータ6に送り位置や移動情報が記録される。
散歩は安否確認ポイントとしてポイント付与される。人通りの少ない通りにポイント対象ビーコン通信機器を配置し、老人が散歩をするだけで見回りとしてポイントをカウントすることで、ポイントでお礼を付与する事ができる。夜間(例えば22時以降から明け方午前6時まで)などは、主制御コンピュータ6に送られてきた時間をチェックする事でポイント率を上げて付与することができる。老人が専門的知識を持っている場合は、それがマッチする、専門的な知識が必要な場所での散歩はポイント率を変えて付与できる(例えば土木の仕事に従事していた人が、河川敷やダムなどを散歩した場合など)。散歩の距離や時間に応じてもポイント率を変えられる。ひとりよりも数人(高齢者の社会性)で散歩する方がポイント率を高くする。貯まったポイントは生活圏内にある他のポイントシステムに移管することがで
きる。
【0023】
以上のように、ポイント対象ビーコン通信機器の設置位置は、少なくとも以下の一つの位置であれば有効である。1)人通りの少ない通り、2)夜間に人通りの少ない場所、3)老人が散歩をするだけで見回りとしてカウントする位置。
またポイント対象ビーコン通信機器の設置位置により、ポイント数が異なるよう設定することもできる。前記ポイントは、少なくとも以下の一つの要因において、追加付与したり増加付与することができる。
1)22時以降から翌6時までに発信器から受信された場合、
2)発信器を所定年齢以上の人が保持する場合、
3)発信器を専門的知識を持っている人が保持し、指定する場所のビーコン通信機器100がこれを受信した場合、
4)当該ID毎に移動の距離または時間が所定以上の場合(散歩の時間や距離が長いこと)、
5)複数の所定のIDが受信される複数同時移動の場合(集団移動と見なして)、
などである。
このようにして移動する側(位置確認や記録の対象者1)において、ポイントが溜まり、スーパー、やコンビニ、百貨店での生活ポイントに使用出来るというメリットがり、日常的に移動することで、あるいは特定の場所、経路を通ることで、生活等に密接したポイントが付与され、本システムに参加するインセンティブが生まれる。
【0024】
本実施の形態により得られるシステム自体の全体的な効果は以下の通りである。
1.住民のスマートフォンを使うという現在のインフラをフル活用した仕組みであるため、低コストで構築可能。
2.加齢の進捗に合わせて機器を変える必要はなく、安価で小型な発信器を事前にお守り代わりとして導入していくだけでいざという時に対応可能。
3.社会全体で地域高齢者を守る参加者意識の高揚が得られる。
4.いつも稼働しているものではなく、非常時にのみ機能させることができる。
5.個人情報は分割されて運営されるので特定されにくい上、その管理は各個人のコントロール下に置くことができるので安心。
6.氏名など個人を特定する情報を一般に流通させないため、プライバシーが守られる。
【0025】
また、本システムでは、ポイント対象ビーコン通信機器からの記録対象のIDを受信したことの知らせを主制御コンピュータ6が受信すると、当該受信の度毎に記録対象のIDと当該ポイント対象ビーコン通信機器の位置情報とが主制御コンピュータ6に記憶されるので(ポイント付与に先行してまたは同時に)、以下の効果を有する。
[発信器として]
1.発信器が低価格で得られる。
高齢者は、発信器を捨てたりするので、一つはお守りの中、もう一つは履物の中、
さらに衣服に付ける、などの何重もの対策が必要なことがあり、低価格となった発信器を一人の高齢者が複数個持つことができる。
2.発信器はブルートゥースであり小さく3cm×3cm×1.5cm位、又は直径3cm程度の球状あるいは更に小さくなったもので構成でき、「お守り」に入るサイズが可能で、首から下げたり、又は靴にはめ込めるようにすることができる。また、日常の生活で支障が出ないよう薄型の設計で、服への縫込みなども可能にする。
3.洗濯ができる防水加工を施すことができる。
4.構成は基版+発信チップ+電池(もしくはバッテリー)で軽薄短小低価格を実現でき、電池の寿命も送信時間を4秒に一回とすることで長期に使用可能となる。短距離無線通信技術としてクラス1等のブルートゥースを利用している。
【0026】
[受信側として]
1.市販のスマートフォンを利用する。
受信の機能はスマートフォンに専用アプリをダウンロードするだけで、最初からスマートフォンの持っている通信機能を使うだけなので全体のシステム構築費が安価。
2.住民は専用アプリのダウンロードのみで見守りネットに参加できる。
行方不明など緊急事態が起こってからでもアプリ起動だけで簡単に捜索に参加できる。
3.参加の度合いを住民自らがコントロールできる。
参加の明確な意思表示を住民に個別に求めることができる。
4.スマートフォン自体で特定の発信器(個人)を探す機能はない。
受信した情報はIDを自動的に主制御コンピュータ6に送られるので徘徊高齢者の名前や特徴を知る必要はなく、徘徊高齢者とその家族の個人のプライバシーが守られる。
【0027】
[主制御コンピュータ6(サーバを含んでよい)として]
1.地域住民の善意を集められるコミュニティ機能。
(家人・介護者からのお礼メッセージなどの閲覧が可能)
2.徘徊高齢者のIDと捜索依頼IDの自動照合機能
(照合後、デジタルマップに出力)
3.発信器・住民登録機能
(電池のライフサイクルなどアラートも自動発信)
またシステム運用のポイントとして、
4.行動範囲が広い若者向けムーブメントを起こさせられる。
5.多様なユーザー(=多様な機器)からのアクセスに対応できる。
【0028】
本実施の形態の特徴は、発信器がGPSを使った機器(携帯電話)に比べ、圧倒的に小さく・軽い点である。機能を絞り込めるので安価でランニングコストもあまりかからない。家人の工夫次第でどのようなところにも付けられることでGPS機器の最大の問題点であった「持って出ていない」状態を回避することが可能になる。また徘徊高齢者の家人と、地域住民を繋ぐためのプログラムを構築することができる。その主たる機能は、
1.家人からのID登録---------複数の発信器の登録可能
2.家人からの捜査依頼受付----スマートフォン・パソコン・電話での受付が可能
3.該当地域のスマートフォンへのプッシュ通知----高齢者宅を中心に半径6km
4.住民のスマートフォンから自動で送られてきたID情報を照会する機能
----捜査依頼IDとの突き合せ
5.照合ができたIDの家人に連絡する機能
----Eメール・SMS・音声電話の組み合わせ
6.家人からの発見報告の受付-------感謝等のメッセージも受け付け可能
となる。設計のポイントはIDと紐づけされる情報は家人の連絡先だけで名前を関連付ける必要は無いため、プライバシーが守られる。
また、住民が捜索に協力するために必要な行動は簡単で、自分のスマートフォンのアプリを立ち上げるだけである。捜索の対象である徘徊高齢者の名前・服装・特徴等を知る必要は無い事と、発見の為の捜索活動や連絡などは全て自動で行うことである。
【0029】
本願発明は介護現場を支援する発明であり、これを「ゆいシステム」と名付けると、このシステムはスマートフォンを持っている人なら、誰でもボランティアとして参加することが出来、その方法は、たとえば「みつけて.net」というアプリケーションをダウンロードするだけで可能となる。そのアプリケーションは徘徊高齢者の「お守り」が発信する微弱な電波を捉えて、自動で報告をする。その電波は100mぐらいしか届かない、本当に微弱な電波ですが、実際に人手で捜索するのと同じくらいの効力を持っている。会ったことのないお年寄りを見つけ出すことは現場では難しいです。徘徊されている方かどうか?捜索依頼が出ている方かどうかの判断は実は難しいことなのですが、本発明ではその判断はアプリケーションが自動的に行ってくれる。ボランティアの人はアプリケーションが入ったスマートフォンを持っているだけで、徘徊高齢者の人が100m以内に入ってきてくれれば、発見のお知らせをすることが出来る。
【0030】
携帯通信機器4としてさらに応用形態として「車のカーナビ」に仕込まれている形態が可能である。カーナビの通信機能で徘徊者の発信器2を察知し、カーナビに時間の情報を蓄積、オーナーが車に乗った際にオーナーのスマートフォン3とペアリングを実行した際に、その情報をスマートフォン3に送信し、スマートフォン3で受信した発信器2の内容を、スマートフォン3から主制御コンピュータ6に送るシステムを構成する。ブルートゥースは短距離しか判別できないが、複数のスマートフォンの情報を主制御コンピュータ6でマッピングすることにより、座標を導き出し、地図上にマッピングする。
【0031】
更に、認知症の行動パターンを予測する仕組みが考えられる。
1.自立時からの行動パターンを分析して無意識化での行動パターンを予測する仕組み。
予め登録された移動者等は、時系列的に複数時点での位置情報が得られ次第記録しておくことで、認知症による徘徊が始まる前から、個人の散歩コースなどの情報を収集して置くことができる。もしもの際にこの過去の移動経路やコースを参考にすることで、捜索や位置確保のための有効な情報が得られる。
2.捜索時に探知できていないという情報を集めて、捜索方向を決める仕組み
スマートフォンの台数とその位置情報から、高密度な検索が行われた場所を特定し、もしもの際に捜索しなくていいエリアとして捜索する人に情報提供をする。
【0032】
更に、徘徊高齢者捜索の用途を他の用途(ストーカー目的)として利用されることを防止するために、家族による捜索依頼、介護施設・公共機関からの捜索依頼など、複数の依頼が合致した場合、特に捜索依頼を可能とする者を権限のある者(親族や、物であれば所有者や抵当権者)にのみ、捜索を開始、もしくは捜索結果を表示するようにすることが重要である。また、逆にストーカー目的等で、検索されたくない人を特定して、検索依頼や、結果報告を拒絶するしくみも重要となる。
また、ブルートゥースでは、特定のIDが送信されるが、これだけでは個人が特定できないので、個人情報が保護される。また、特定のIDからの個人情報の照合はその依頼者の権限管理を上記したような関係者に絞ることで個人情報管理が行え、しかるべき権限の機関あるいは人に対してその結果表示をコントロールできる。
【0033】
更に、複数のスマートフォン(2台以上)が受信した電波の中にある距離情報(ブルートゥースで可能)を主制御コンピュータ6で集約させ、徘徊者の移動の方向と速度を算出し、現在地を予測する仕組みも考えられる。通信される内容には個人情報は含まれない。個人情報は流通することはない。スマートフォン3もしくは携帯通信機器4を保持しているあらかじめ協力に同意した全国の地域住民5を協力や権限の度合いに応じてクラス分けしておき、信頼のおける協力者に対しては、捜索対象者の保護や確保を電話もしくはメールにて依頼できる仕組みを作ることができるのも、本発明の応用として考えられる。
【符号の説明】
【0034】
1:徘徊高齢者などの移動者 2:発信器
3:スマートフォン 4:携帯通信機器
5:地域住民 6:主制御コンピュータ(サーバ含む)
7:ディスプレイ 8:端末
9:家人・介護者などの捜索依頼者 100:固定式通信機器




図1