(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296539
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】水陸両用車の履帯収納装置
(51)【国際特許分類】
B60F 3/00 20060101AFI20180312BHJP
B62D 55/30 20060101ALN20180312BHJP
【FI】
B60F3/00 B
!B62D55/30 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-31360(P2014-31360)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-155267(P2015-155267A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2016年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 進一
(72)【発明者】
【氏名】松浦 宏
(72)【発明者】
【氏名】石川 格
(72)【発明者】
【氏名】松永 高志
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 宏司
【審査官】
北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第8002596(US,B2)
【文献】
中国特許出願公開第1559849(CN,A)
【文献】
国際公開第2007/141515(WO,A1)
【文献】
特開平11−278023(JP,A)
【文献】
特開平03−279088(JP,A)
【文献】
特開平10−218044(JP,A)
【文献】
特開平09−132177(JP,A)
【文献】
実公昭53−025963(JP,Y1)
【文献】
実開昭52−070840(JP,U)
【文献】
特開平08−207838(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第0970830(EP,A2)
【文献】
国際公開第2004/091945(WO,A1)
【文献】
米国特許第03487802(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60F 3/00
B62D 55/084、55/10、55/15、55/30、
55/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が水陸両用車の車体に固定された支点であり、他端が前記水陸両用車の転輪の軸受を把持しており、当該転輪に対して下向きの付勢を与えるアームと、
前記水陸両用車の履帯の上下間に固定され、前記水陸両用車の水上航行時に、前記履帯を上向きに押圧することで持ち上げて前記車体内に収納し、前記履帯を含んだ前記水陸両用車の船底を平らな状態にする油圧シリンダとを備え、
前記油圧シリンダは、前記アームに隣接して設けられ、前記アームの前記支点から前記履帯に対して押圧する
ことを特徴とする水陸両用車の履帯収納装置。
【請求項2】
前記アームは、前記水上航行時に前記付勢を解除する
ことを特徴とする請求項1に記載の水陸両用車の履帯収納装置。
【請求項3】
前記アームは、油気圧式である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水陸両用車の履帯収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水陸両用車の履帯収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水陸両用車は、陸上走行用履帯(以下、履帯)、及び、水上航行用推進装置が備えられることで、陸上において不整地を走破することができ、かつ、水上を航行することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5253570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水陸両用車の水上航行時において、高速滑走を実現するには、船底を平らな状態にして抵抗を抑えるのがよい。そのためには、船底から下方に出ている履帯を車体内に収納する必要がある。
【0005】
上記特許文献1には、水陸両用車の水上航行時に、履帯をカバーを用いて持ち上げることで、車体内に収納する技術が開示されているが、当該技術では、装置が大掛かりなものとなってしまう。
【0006】
よって、本発明は、簡便な装置構成で、履帯を持ち上げ、車体内に収納することができる水陸両用車の履帯収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係る水陸両用車の履帯収納装置は、
一端が水陸両用車の車体に固定された支点であり、他端が前記水陸両用車の転輪の軸受を把持しており、当該転輪に対して下向きの付勢を与えるアームと、
前記水陸両用車の履帯の上下間に固定され、前記水陸両用車の水上航行時に、前記履帯を上向きに押圧することで持ち上げて前記車体内に収納し、前記履帯を含んだ前記水陸両用車の船底を平らな状態にする油圧シリンダとを備え
、
前記油圧シリンダは、前記アームに隣接して設けられ、前記アームの前記支点から前記履帯に対して押圧する
ことを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係る水陸両用車の履帯収納装置は、
上記第1の発明に係る水陸両用車の履帯収納装置において、
前記アームは、前記水上航行時に前記付勢を解除する
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係る水陸両用車の履帯収納装置は、
上記第1又は2の発明に係る水陸両用車の履帯収納装置において、
前記アームは、油気圧式である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る水陸両用車の履帯収納装置によれば、簡便な装置構成で、履帯を持ち上げ、車体内に収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】水陸両用車が陸上走行中の場合の、本発明の実施例1に係る水陸両用車の履帯収納装置を説明する概略図である。(a)は
図1の破線Aで囲われた部分の拡大図、(b)は水陸両用車の正面図である。
【
図3】水陸両用車が水上航行中の場合の、本発明の実施例1に係る水陸両用車の履帯収納装置を説明する概略図である。(a)は
図1の破線Aで囲われた部分の拡大図、(b)は水陸両用車の正面図である。
【
図4】本発明の実施例2におけるアーム部分の概略的拡大図である。(a)は陸上走行時の状態であり、(b)は水上航行時の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る水陸両用車の履帯収納装置を実施例にて図面を用いて説明する。
【0013】
[実施例1]
本発明の実施例1に係る水陸両用車の履帯収納装置について、
図1〜3を用いて説明する。
図1は、水陸両用車の概略的側面図である。
図2は、水陸両用車が陸上走行中の場合の、本発明の実施例1に係る水陸両用車の履帯収納装置を説明する概略図であり、
図2(a)は
図1の破線Aで囲われた部分の拡大図、
図2(b)は水陸両用車の正面図である。
図3は、水陸両用車が水上航行中の場合の、本発明の実施例1に係る水陸両用車の履帯収納装置を説明する概略図であり、
図3(a)は
図1の破線Aで囲われた部分の拡大図、
図3(b)は水陸両用車の正面図である。
【0014】
本発明の実施例1に係る水陸両用車の履帯収納装置は、
図1に示す、履帯11、起動輪12、誘導輪13及び転輪14を備える水陸両用車10に配設されるものである。
【0015】
そして、本発明の実施例1に係る水陸両用車の履帯収納装置は、
図2(a)に示すように、複数のアーム15及び複数の油圧シリンダ16を備える。
【0016】
アーム15は、一端が水陸両用車10の車体に固定された支点15aであり、他端が転輪14の軸受14aを把持しており、転輪14に対して下向きの付勢を与えるものである。
【0017】
油圧シリンダ16は、履帯11上下間(履帯11の上部と下部との間)に固定され、水陸両用車10の水上航行時に、履帯11(履帯11の上部)を上向きに押圧することで持ち上げて車体内に収納し、船底を平らな状態にする。なお、この押圧の力は、アーム15の下向きの付勢の力を考慮して設定する。
【0018】
図2(b)に示すように、本装置が配設された水陸両用車10は、陸上走行時には、従来の水陸両用車と同様に陸上走行を行う。すなわち、油圧シリンダ16は履帯11を押圧しないため、履帯11が船底から下方に出ている状態となる。
【0019】
一方、水上滑走時には、
図3(a)に示すように、油圧シリンダ16により、履帯11を上向きに押圧して持ち上げる(支点15aの高さ(一点鎖線の高さ)は、
図2(a)と
図3(a)とで同じである)。
【0020】
これにより、
図3(b)に示すように、本装置が配設された水陸両用車10は、水上航行時に、履帯11が持ち上げられ車体内に収納されるため、船底が平らな状態となり、高速滑走を行うことができる。
【0021】
したがって、本発明の実施例1に係る水陸両用車の履帯収納装置によれば、簡便な装置構成で、履帯を持ち上げ、車体内に収納することができる。
【0022】
[実施例2]
本発明の実施例2に係る水陸両用車の履帯収納装置は、本発明の実施例1に係る水陸両用車の履帯収納装置における、アーム部分の装置構成を変更したものである。以下、実施例1と相違する部分を中心に説明する。
【0023】
本発明の実施例2に係る水陸両用車の履帯収納装置について、
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の実施例2におけるアーム部分の概略的拡大図であり、
図4(a)は陸上走行時の状態であり、
図4(b)は水上航行時の状態である。
【0024】
本発明の実施例2に係る水陸両用車の履帯収納装置は、複数のアーム25及び複数の油圧シリンダ16を備える。なお、油圧シリンダ16は実施例1と同様の装置構成である。
【0025】
アーム25は、一端が車体に固定された支点25aであり、他端が転輪14の軸受14aを把持しており、転輪14に対して、陸上走行時には下向きの付勢を与え、水上航行時には付勢を解除するものである。換言すれば、アーム25は、陸上走行時には下向きに傾斜し、水上航行時には略水平方向となる。
【0026】
より詳述すると、まず、アーム25は油気圧式であり、内部に、油室21a,21b、ガス室22a,22b及びピストン23を備えるものである。
【0027】
ピストン23は、軸部23aが支点25aの中心部に固定され、一端に油室21a及びガス室22aによるシリンダが配設され、他端に油室21b及びガス室22bによるシリンダが配設され、2つの端部(上記一端及び上記他端)が軸部23aに対して垂直方向に並んだ、略U字型のものである。
【0028】
そして、ピストン23は、油室21a,21b内の油圧、及び、ガス室22a,22b内のガス圧の制御によって、長手方向の傾斜角度の変更が可能である。また、アーム25は、ピストン23に連動して傾斜角度が変更される。
【0029】
上記装置構成としたアーム25は、陸上走行時には、
図4(a)に示すように、下向きに傾斜し、転輪14に対して下向きの付勢を与える。
【0030】
よって、水陸両用車10は、実施例1と同様の陸上走行を行う。すなわち、アーム25は転輪14に対して下向きの付勢を与え、油圧シリンダ16は履帯11を押圧しないため、履帯11が船底から下方に出ている状態となる。
【0031】
一方、上記装置構成としたアーム25は、水上航行時には、
図4(b)に示すように、略水平方向となり、転輪14に対する付勢を解除する。
【0032】
よって、水陸両用車10は、水上航行時に、履帯11が持ち上げられ車体内に収納されるため、船底が平らな状態となり、高速滑走を行うことができるだけでなく、水上航行時に、転輪14に対するアーム25による下向きの付勢を解除するため、履帯11を持ち上げる際の油圧シリンダ16の力を、実施例1よりも低減することが可能である。
【0033】
したがって、本発明の実施例2に係る水陸両用車の履帯収納装置によれば、簡便な装置構成で、履帯を持ち上げ、車体内に収納することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、水陸両用車の履帯収納装置として好適である。
【符号の説明】
【0035】
10 水陸両用車
11 履帯
12 起動輪
13 誘導輪
14 転輪
14a (転輪の)軸受
15,25 アーム
15a,25a (アームの)支点
16 油圧シリンダ
21a,21b 油室
22a,22b ガス室
23 ピストン
23a (ピストンの)軸部