(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示した各実施形態に基づいて、本発明の誘導加熱装置を説明する。なお、以下に説明する各実施形態において、同一の構成要素には同一の符号を付与する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における誘導加熱装置100を示す概略の構成図である。
誘導加熱装置100は、電源回路20と、制御回路9と、加熱コイル50と、トッププレート60と、磁性体70とを含んで構成される。誘導加熱装置100は、IHクッキングヒータとも呼ばれており、トッププレート60に載置された鍋10を誘導加熱する。
【0013】
電源回路20は、整流回路2と、インバータ3と、共振回路4とを有する。電源回路20は、商用周波数の電源1から電力が供給され、この電力で加熱コイル50を駆動する。
整流回路2は、入力された交流を整流して直流を出力する。整流回路2は、例えばダイオードなどを含んで構成されるブリッジ回路である。
インバータ3は、高周波の交流電流を出力する共振型インバータである。インバータ3は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタやIGBT(Insulated-Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチと、これら半導体スイッチの駆動用のドライバを含んで構成される。
共振回路4は、加熱コイル50と共振させる回路である。共振回路4は、コンデンサを含んで構成される。
制御回路9は、電源回路20の各スイッチのオンオフ、各部の電圧/電流検出、インバータ3の周波数の調整などを行う。
【0014】
鍋10は、加熱対象の調理器具である。鍋10は、トッププレート60に載置されて、加熱コイル50によって誘導加熱される。
加熱コイル50は、例えばリッツ線を用いた誘導加熱用のコイルである。
トッププレート60は、鍋10を載置するためプレートである。トッププレート60は、磁気損失の少ない耐熱ガラスなどで構成され、加熱コイル50の上面を覆っている。
磁性体70は、例えば高い透磁率を持つフェライトで構成され、加熱コイル50の下面に設けられる。
【0015】
図2は、第1の実施形態における誘導加熱装置100の等角投影図である。
誘導加熱装置100は、加熱コイル50と、磁性体70と、トッププレート60とを備えている。この加熱コイル50は、磁性体70の上部に配置され、トッププレート60で上面を覆われている。トッププレート60には、鍋10が載置されている。
加熱コイル50は、誘導加熱用のコイルであり、コイル50a(第1のコイル)とコイル50b(第2のコイル)とを含んで構成される。コイル50bは、コイル50aの外径より大きい内径を有する。
コイル50aは、コイル50bの内側に、正方形に巻回される。コイル50bは、正方形に巻回されたコイル50aの四方に十字形に張り出すように巻回される。コイル50bの一部分は、コイル50aと近接して巻回される。コイル50bの他の部分は、コイル50aと遠隔して巻回される。
コイル50bとコイル50aとの間には、コイル50aとコイル50bとによって作られる隙間領域が4か所設けられる。コイル50aの電流の向きと、コイル50bの電流の向きとは逆である。
加熱コイル50は、電源回路20から供給された交流電流を磁束に変換する。この磁束は、鍋10に鎖交する。これにより鍋10は、渦電流が流れて加熱される。
【0016】
図3は、第1の実施形態における誘導加熱装置100の加熱コイル50の電流と磁束とを説明する平面図である。ここでは、或るタイミングにおける電流の向きと磁束の向きとを記号で示している。加熱コイル50には交流電流が流れる。よって、電流の向きと磁束の向きとは、時間と共にそれぞれ反転する。
加熱コイル50は、コイル50aとコイル50bとを含んで構成される。
コイル50aは、略正方形に巻かれて、その内側に磁束発生領域51a(第1の磁束発生領域)を備える。コイル50aに反時計まわりの電流が流れるとき、磁束発生領域51aには奥から手前向きの磁束が発生する。コイル50aは、コイル50bの内側に巻回される。
【0017】
コイル50bは、コイル50aの外径より大きい内径を有し、コイル50aを囲むように巻回される。コイル50aに流れる電流の向きと、コイル50bに流れる電流の向きとは逆である。
コイル50bの部分55は、コイル50aと近接して巻回される。コイル50bの部分56は、コイル50aと遠隔して巻回される。これにより、コイル50bとコイル50aとの間には、コイル50aとコイル50bによって作られる4箇所の磁束発生領域51b(第2の磁束発生領域)が形成される。よって、加熱コイル50は、1箇所の磁束発生領域51aと4箇所の磁束発生領域51bとを備えるように巻回される。
4箇所の磁束発生領域51bには、コイル50bの電流と、コイル50aの一部の電流とがループ状に流れる。よって、コイル50bに時計まわりの電流が流れるとき、磁束発生領域51bには、手前から奥向きの磁束が発生する。磁束発生領域51bに発生する磁束は、磁束発生領域51aに発生する磁束とは逆方向である。4箇所の磁束発生領域51bは、磁束発生領域51aを取り囲む。
【0018】
図4は、第1の実施形態における誘導加熱装置100の加熱コイル50の電流と磁束とを説明するIV-IV断面図である。ここでは、或るタイミングにおける電流の向きと磁束の向きとを記号で示している。
加熱コイル50は、コイル50bとコイル50aとを含んで構成される。コイル50bとコイル50aとの間には、それぞれ磁束発生領域51bが形成される。コイル50aの内周には、磁束発生領域51aが形成される。
左端のコイル50bの断面に手前から奥向きの電流が流れると、これと隣り合う左側のコイル50aの断面には、奥から手前向きの電流が流れる。これにより、左側の磁束発生領域51bには、下向きの磁束が発生する。
右側のコイル50aの断面に手前から奥向きの電流が流れると、これと隣り合う右端のコイル50bの断面には、奥から手前向きの電流が流れる。これにより、右側の磁束発生領域51bには、下向きの磁束が発生する。
左側のコイル50aの断面に奥から手前向きの電流が流れると、これと隣り合う右側のコイル50aの断面には、手前から奥向きの電流が流れる。これにより、磁束発生領域51aには、上向きの磁束が発生する。
このように、隣り合う磁束発生領域には、それぞれ逆向きの磁束が発生する。各磁束発生領域の磁束経路は閉じる。これにより遠方への磁束が弱まるので、漏洩磁束を低減可能である。
【0019】
図5は、第1の実施形態における誘導加熱装置100の加熱コイル50の電流と磁束とを説明するV-V断面図である。
このV-V断面図は、
図4に示したIV-IV断面図と同様な電流が流れ、同様な磁束が発生する。各磁束発生領域の磁束経路は、同様に閉じる。これにより、遠方への磁束が弱まるので、漏洩磁束を低減可能である。
【0020】
図6は、第1の実施形態における誘導加熱装置100の加熱コイル50の電流と磁束とを説明するVI-VI断面図である。ここでは、凡例で電流の向きの記号と磁束の向きの記号で示している。
左端のコイル50bの断面に手前から奥向きの電流が流れると、これと隣り合う右端のコイル50bの断面には、奥から手前向きの電流が流れる。これにより、磁束発生領域51bには、下向きの磁束が発生する。このとき、
図4と
図5に示したように、磁束発生領域51bに隣り合う磁束発生領域51aには、上向きの磁束が発生する。よって、磁束発生領域51bの磁束経路と磁束発生領域51aの磁束経路は閉じる。これにより、遠方への磁束が弱まり、漏洩磁束を低減可能である。
【0021】
図7は、第1の実施形態における誘導加熱装置100で加熱したときの鍋10の電流分布を示す底面図である。
図中の矢印は、鍋10の底面に流れる電流分布を示している。コイル50aで生じる磁束による渦電流は、時計周りとなる。外側のコイル50bとコイル50aの一部で生じる磁束による渦電流は、反時計周りとなる。
【0022】
図8は、第1の実施形態における誘導加熱装置100と比較例の誘導加熱装置100でそれぞれ加熱したときの鍋10の底面の電流密度を示したグラフである。グラフの実線は、
図7のVIII-VIII間の電流密度である。グラフの破線は、同外径かつ同巻数の円形コイルで加熱した比較例の電流密度である。
鍋10の外側である−50mmから−100mm、および+50から+100mmにおいて、第1実施形態の電流密度と比較例の電流密度は、同様の分布となる。しかし、鍋10の中心である−50mmから+50mmにおいて、第1実施形態の電流密度は、比較例の電流密度よりも高くなる。よって、第1実施形態の加熱コイル50は、外側だけでなく内側にも渦電流が流れ、被加熱物を均一に加熱する効果が得られることが判る。
【0023】
図9は、第1の実施形態における誘導加熱装置100の加熱コイル50を構成する第1のコイルであるコイル50aを示す図である。
コイル50aは、リッツ線が巻回されて構成される。コイル50aの一端は、端子50aiである。コイル50aの他端は、端子50aoである。リッツ線は、端子50aiから、4巻だけ時計回りに巻回されて、端子50aoに至る。
【0024】
図10は、第1の実施形態における誘導加熱装置100の加熱コイル50を構成する第2のコイルであるコイル50bを示す図である。
コイル50bは、リッツ線が巻回されて構成される。コイル50bの一端は、端子50biである。コイル50bの他端は、端子50boである。リッツ線は、端子50biから、反時計回りに4周巻回されて、端子50boに至る。
【0025】
図11は、第1の実施形態における第1のコイルと第2のコイルとを組み合わせた加熱コイル50を示す図である。
加熱コイル50は、コイル50aとコイル50bとをそれぞれ作成して組み合わせることにより構成される。コイル50aの端子50aoと、コイル50bの端子50biとを接続し、コイル50aをコイル50bの中央に配置することで、加熱コイル50が構成される。
【0026】
この加熱コイル50は、コイル50aを巻いた後にコイル50bを巻いて作成する構成である。コイル50aは右巻き、コイル50bは左巻きで、コイル50aの内側のコイル端を端子50ai、外側のコイル端を端子50ao、コイル50bの内側のコイル端を端子50bi、外側のコイル端を端子50boとする。端子50aoと端子50biを接続し、端子50aiと端子50boを電源回路20と接続することでコイル50aとコイル50bの一部が近接し、他の部分が遠隔する構成となる。
なお、第1の実施形態の加熱コイル50は、四角形状のコイル50aと、十字形状のコイル50bとで構成されるが、これに限らない。
【0027】
図12は、第1の実施形態の第1変形例の加熱コイル50Aの構成を示す図である。
第1変形例の加熱コイル50Aは、コイル50aとコイル50bとを同時に巻いてゆく構成である。コイル50aは、内側から巻き始めて磁束発生領域51aを形成し、1巻目でコイル50bの外側から巻いて4箇所の磁束発生領域51bを形成する。このように形成した加熱コイル50Aも、コイル50aとコイル50bの部分55が近接し、部分56が遠隔する構成となる。
【0028】
図13は、第1の実施形態の第2変形例の加熱コイル50Bの構成を示す図である。
第2変形例の加熱コイル50Bは、コイル50aの巻き数が1で、コイル50bの巻き数が4の構成である。コイル50aの巻き数に比べてコイル50bの巻き数が多いと磁束発生領域51aの磁束よりも、磁束発生領域51bの磁束が強くなる。よって、外側であるコイル50b付近の加熱が大きくなる。
これとは逆に、コイル50aの巻き数が4で、コイル50bの巻き数が1の構成としてもよい。コイル50bの巻き数に比べてコイル50aの巻き数が多いと、磁束発生領域51bの磁束よりも、磁束発生領域51aの磁束が強くなる。よって、内側であるコイル50a付近の加熱が大きくなる。このように、コイル50aの巻き数とコイル50bの巻き数とを異ならせることにより、所望の領域を加熱可能となる。
コイル50a,50bは、リッツ線を用いている。しかし、これに限られず、コイル50a,50bは、例えば単線の線材を用いてもよい。また、コイル50aとコイル50bとは、それぞれ異なる材質や形状としてもよい。
【0029】
図14は、第1の実施形態の第3変形例の加熱コイル50Cの構成を示す図である。
加熱コイル50Cは、円形状のコイル50aと、楕円形状のコイル50bとを組み合わせた構成である。コイル50aは、円形状に巻回されて磁束発生領域51aを形成する。コイル50bは、コイル50aの外径よりも大きく、かつ楕円形状に巻回される。
コイル50bの部分55は、コイル50aと近接して巻回される。コイル50bの部分56は、コイル50aと遠隔して巻回される。これにより、コイル50bとコイル50aとの間には、2箇所の磁束発生領域51bが形成される。
【0030】
図15は、第1の実施形態の第4変形例の加熱コイル50Dの構成を示す図である。
加熱コイル50Dは、十字形状のコイル50aと、四角形状のコイル50bとを組み合わせた構成である。
コイル50aは、十字形状に巻回されて磁束発生領域51aを形成する。コイル50bは、コイル50aの外径よりも大きく、かつ四角形状に巻回される。
コイル50bの部分55は、コイル50aと近接して巻回される。コイル50bの部分56は、コイル50aと遠隔して巻回される。これにより、コイル50bとコイル50aとの間には、4箇所の磁束発生領域51bが形成される。
【0031】
図16は、第1の実施形態の第5変形例の加熱コイル50Eの構成を示す図である。
加熱コイル50Eは、逆三角形状のコイル50aと、三角形状のコイル50bとを組み合わせた構成である。
コイル50aは、逆三角形状に巻回されて磁束発生領域51aを形成する。コイル50bは、コイル50aの外径よりも大きく、かつ三角形状に巻回される。
コイル50bの部分55は、コイル50aと近接して巻回される。コイル50bの部分56は、コイル50aと遠隔して巻回される。これにより、コイル50bとコイル50aとの間には、3箇所の磁束発生領域51bが形成される。
【0032】
加熱コイルは、
図14から
図16に示した円形状、楕円形状、四角形状、三角形状、十字形状の各コイルを組み合わせることで様々な変形例を構成できる。また、加熱コイルは、巻き数の異なる2つのコイルの組み合わせてもよく、更にコイルの配置を変更してもよい。
【0033】
図17は、第1の実施形態の第6変形例の加熱コイル50Fの構成を示す図である。
加熱コイル50Fは、4巻きの円形状のコイル50aと、1巻きの四角形状のコイル50bとを組み合わせた構成である。
コイル50aは、円形状に巻回されて磁束発生領域51aを形成する。コイル50bは、コイル50aの外径よりも大きく、かつ四角形状に巻回される。
コイル50bの部分55は、コイル50aと近接して巻回される。コイル50bの部分56は、コイル50aと遠隔して巻回される。これにより、コイル50bとコイル50aとの間には、磁束発生領域51bが形成される。
【0034】
図18は、第1の実施形態の第7変形例の加熱コイル50Gの構成を示す図である。
加熱コイル50Gは、4巻きの円形状のコイル50aと、1巻きの円形状のコイル50bとを組み合わせた構成である。コイル50aの中心軸と、コイル50bの中心軸とは異なり、同心円上にない構成である。
コイル50aは、円形状に巻回されて磁束発生領域51aを形成する。コイル50bは、コイル50aの外径よりも大きく、かつ四角形状に巻回される。
コイル50bの部分55は、コイル50aと近接して巻回される。コイル50bの部分56は、コイル50aと遠隔して巻回される。これにより、コイル50bとコイル50aとの間には、磁束発生領域51bが形成される。
以上の構成により、均一加熱が可能となり、漏洩磁束の低減が図れ、加熱対象の形状やデザイン等に合わせて様々なコイル形状にすることができる。
【0035】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態のコイルを多重にして構成した加熱コイル50を用いた誘導加熱装置100の例を説明する。なお、第2の実施形態の誘導加熱装置100のうち、第1の実施形態で図示して説明した構成および機能の説明は省略する。
【0036】
図19は、第2の実施形態における多重にしたコイルを含んで構成した加熱コイル50Hの電流と磁束とを説明する平面図である。ここでは、或るタイミングにおける電流の向きと磁束の向きとを記号で示している。
加熱コイル50Hは、コイル50a〜50dで構成される。コイル50c(第3のコイル)の内径は、コイル50bの外径より大きい。コイル50cの一部分は、コイル50bと近接して巻回される。コイル50cの他の部分は、コイル50bと遠隔して巻回される。これにより、コイル50cとコイル50bとの間には、8箇所の磁束発生領域51cが形成される。コイル50cには、コイル50bとは反対向きの電流が流れる。
8箇所の磁束発生領域51c(第3の磁束発生領域)には、コイル50cの電流と、コイル50bの一部の電流とがループ状に流れて磁束が発生する。磁束発生領域51cに発生する磁束は、磁束発生領域51bに発生する磁束とは逆方向である。8箇所の磁束発生領域51cは、4箇所の磁束発生領域51bを取り囲む。
【0037】
コイル50d(第4のコイル)の内径は、コイル50cの外径より大きい。コイル50dの一部分は、コイル50cと近接して巻回される。コイル50dの他の部分は、コイル50cと遠隔して巻回される。これにより、コイル50dとコイル50cとの間には、12箇所の磁束発生領域51d(第4の磁束発生領域)が形成される。コイル50dには、コイル50cとは反対向きの電流が流れる。
12箇所の磁束発生領域51dには、コイル50dの電流と、コイル50cの一部の電流とがループ状に流れて磁束が発生する。磁束発生領域51dに発生する磁束は、磁束発生領域51cに発生する磁束とは逆方向である。12箇所の磁束発生領域51dは、8箇所の磁束発生領域51cを取り囲む。
このように隣り合う磁束発生領域には、それぞれ逆向きの磁束が発生する。各磁束発生領域の磁束経路は閉じる。これにより、遠方への磁束が弱まるので、漏洩磁束を低減可能である。
【0038】
図20は、第2の実施形態の加熱コイルの電流と磁束とを説明する断面図である。
図20は、
図19に示す加熱コイル50HのXX-XX断面の或るタイミングにおける電流の向きと磁束の向きとを記号で示している。
加熱コイル50Hは、コイル50a〜50dを含んで構成される。コイル50dとコイル50cとの間には、それぞれ磁束発生領域51dが形成される。コイル50cとコイル50bとの間には、それぞれ磁束発生領域51cが形成される。コイル50bとコイル50aとの間には、それぞれ磁束発生領域51bが形成される。コイル50aの内周には、磁束発生領域51aが形成される。
各磁束発生領域51dと各磁束発生領域51bとに下向きの磁束が発生したとき、各磁束発生領域51cと各磁束発生領域51aとには、上向きの磁束が発生する。このように隣り合う磁束の経路は閉じるため、遠方への磁束が弱まり、漏洩磁束が低減できる。
【0039】
図21は、第2の実施形態の加熱コイル50Hの中央部に小径鍋11を載置したときの平面図である。
ここでは、小径鍋11を加熱コイル50Hの中央に載置している。このときの火力を1.0とする。
【0040】
図22は、第2の実施形態の加熱コイル50Hの奥部に小径鍋11を載置したときの平面図である。
ここでは、小径鍋11を加熱コイル50の奥(12時の方向)に載置している。このときの火力は、中央部に載置した場合(
図21参照)と比較すると、1.07となる。このように、載置場所にかかわらず安定した火力を得ることができる。
【0041】
図23は、第2の実施形態の加熱コイル50Hの左奥部に小径鍋11を載置したときの平面図である。
ここでは、小径鍋11を加熱コイル50Hの左奥(10時半の方向)に載置している。このときの火力は、中央部に載置した場合(
図21参照)と比較すると、1.06となる。このように、載置場所にかかわらず安定した火力を得ることができる。
以上の構成により、加熱コイル50の電流の位相を変えることで安定した火力を得ることができ、漏洩磁束の低減も図れる。
【0042】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、各コイルの電流位相を変更して、火力を調整する誘導加熱装置100の例を説明する。第2の実施形態では、隣り合うコイルの電流を逆相としている。これに対して第3の実施形態では、隣り合うコイルの電流の一部を同相としている。これにより、火力の調整が可能である。
【0043】
図24は、第3の実施形態の多重にしたコイルを含んで構成した加熱コイル50Jの電流と磁束とを説明する平面図である。ここでは、鍋10の中心付近の火力を大きくするコイル電流の一例を示し説明する。
加熱コイル50Jは、
図19に示した第2の実施形態と同様に、コイル50a〜50dで構成される。コイル50cの電流は、コイル50a,50b,50dの電流に対して反対向きに流れる。
磁束発生領域51a,51bには、同一方向の磁束が発生する。磁束発生領域51cには、コイル50cの電流とコイル50bの一部の電流とがループ状に流れて、磁束発生領域51a,51bとは反対向きの磁束が発生する。磁束発生領域51dには、コイル50dの電流とコイル50cの一部の電流とがループ状に流れて、磁束発生領域51cとは反対向きの磁束が発生する。
【0044】
図25は、
図24のXXV-XXV断面の加熱コイル50Jの電流と磁束とを説明する図である。ここでは、或るタイミングにおける電流の向きと磁束の向きとを記号で示している。
加熱コイル50Jは、コイル50a〜50dを含んで構成される。コイル50dとコイル50cとの間には、それぞれ磁束発生領域51dが形成される。コイル50cとコイル50bとの間には、それぞれ磁束発生領域51cが形成される。コイル50bとコイル50aとの間には、それぞれ磁束発生領域51bが形成される。コイル50aの内周には、磁束発生領域51aが形成される。
【0045】
コイル50aの電流とコイル50bの電流とは同相のため、中心付近に位置する磁束発生領域51aの磁束が強まり、よって火力が大きくなる。
各磁束発生領域51dに上向きの磁束が発生するとき、各磁束発生領域51cには、下向きの磁束が発生する。コイル50cの電流は、隣接するコイル50b,50dの電流に対して逆相である。そのため、コイル50b,50c間の磁束発生領域51cの磁束と、この磁束発生領域51cと隣り合う磁束発生領域51dの磁束の経路は閉じ、漏洩磁束が低減できる。
以上の構成により、多重にしたコイルの電流の向き、即ち、位相を変えることで火力を制御することができ、加熱領域の調整も可能であり、かつ漏洩磁束の低減を図ることが可能である。
なお、第3の実施形態の加熱コイル50Lは、最外周のコイル50dを第3のコイルとし、コイル50cを第2のコイルとし、コイル50bを第1のコイルとして考えてもよい。
【0046】
なお、第2の実施形態の加熱コイル50Hおよび第3の実施形態の加熱コイル50Lは、十字形状のコイルを多重に組み合わせた構成とした。しかし、これに限られず、加熱コイルは、様々な形状のコイルを組み合わせてもよい。
【0047】
図26は、第3の実施形態の第1変形例の加熱コイル50Kの構成を示す図である。
第1変形例の加熱コイル50Kは、円形状のコイル50aと、楕円形状のコイル50bと、四角形状のコイル50cとを多重に用いて構成される。このように加熱コイルは、様々の形状のコイルを用いて構成されるので、様々な調理機器の形状に適用しやすくなり、かつ、加熱領域の調整も可能となる。
【0048】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第1の実施形態の加熱コイル50を少なくとも2個以上配置した誘導加熱装置100Cの例を説明する。第1の実施形態で説明した構成および機能の説明は省略する。
【0049】
図27は、第4の実施形態における誘導加熱装置100Cを示す等角投影図である。
図2に示した第1の実施形態の誘導加熱装置100と同一の要素には同一の符号を付与している。
第4の実施形態の誘導加熱装置100Cは、第1の実施形態とは異なる4個の加熱コイル50−1〜50−4を備えている。それ以外は、第1の実施形態と同様に構成されている。
各加熱コイル50−1〜50−4は、トッププレート60に載置される鍋10の外径よりも小さい外径である。誘導加熱装置100Cは、各加熱コイル50−1〜50−4に通電して鍋10を加熱する。以下、各加熱コイル50−1〜50−4を特に区別しないときには、単に加熱コイル50と記載する。
【0050】
図28は、第4の実施形態における誘導加熱装置100Cの回路図である。
図1に示した第1の実施形態の誘導加熱装置100と同一の要素には同一の符号を付与している。
第4の実施形態の誘導加熱装置100Cは、第1の実施形態とは異なり、4個のインバータ3−1〜3−4と、4個の共振回路4−1〜4−4とを備えている。
4個のインバータ3−1〜3−4は、整流回路2の出力に並列に接続される。各インバータ3−1〜3−4は、それぞれ共振回路4−1〜4−4に接続される。各共振回路4−1〜4−4は、それぞれ加熱コイル50−1〜50−4に接続される。制御回路9は、各インバータ3−1〜3−4の駆動の開始と停止、および駆動の周波数および/またはデューティをそれぞれ制御する。これにより、誘導加熱装置100Cは、各加熱コイル50−1〜50−4を独立に制御して、火力を調整可能である。
【0051】
図29は、第4の実施形態の各加熱コイルの平面図を示す。
図3に示した第1の実施形態の加熱コイル50と同一の要素には同一の符号を付与している。
加熱コイル50−1〜50−4は、それぞれ第1の実施形態の加熱コイル50と同様に構成されている。
加熱コイル50−1と加熱コイル50−2との間には、領域52−12が確保される。同様に、加熱コイル50−2と加熱コイル50−3との間には、領域52−23が確保される。加熱コイル50−3と加熱コイル50−4との間には、領域52−34か確保される。加熱コイル50−1と加熱コイル50−4との間には、領域52−41か確保される。これにより、隣り合う加熱コイル50同士を結合させる効果を得ることができる。以下、各領域52−12,52−23,52−34,52−41を特に区別しないときは、単に領域52と記載する。
次に各加熱コイル50−1〜50−4の通電方向について説明する。
【0052】
(ケース#1)
図30は、第4の実施形態の各加熱コイルに流れる電流が全て同相である場合の電流と磁束とを説明する平面図である。
図30は、或るタイミングにおける電流の向きと磁束の向きとを記号で示している。
各加熱コイル50−1〜50−4は、それぞれ第1の実施形態の加熱コイル50と同様に、コイル50aとコイル50bとを含んで構成される。各加熱コイル50−1〜50−4において、コイル50aに流れる電流と、コイル50bに流れる電流とは逆方向である。
各加熱コイル50−1〜50−4のコイル50bに流れる電流は、全て同方向である。ここでは、加熱コイル50−1のコイル50bに流れる電流と、加熱コイル50−2のコイル50bに流れる電流とが時計回りのときのタイミングを図示している。このとき、加熱コイル50−1,50−2間に確保された領域52−12は、周囲に反時計回りの電流の流れが形成されることにより、奥から手前向きの磁束が発生する。
他の各領域52−23,52−34,52−41も同様に、周囲に反時計回りの電流の流れが形成されることにより、奥から手前向きの磁束が発生する。
【0053】
図31は、
図30における鍋10の底面の磁束密度分布の図である。この底面図は、
図30に示す平面図の鏡像である。
この磁束密度分布によれば、各領域52−12,52−23,52−34,52−41および加熱コイル50−1〜50−4の外周の磁束がやや高いが、全体として、各部の磁束は比較的均一である。よって、この通電方向の制御は、均一加熱に効果がある。
【0054】
図32(a)〜(h)は、
図30における各加熱コイル50に流れる電流と制御信号の波形図である。
図32(a)は、加熱コイル#1(加熱コイル50−1)に流れる電流を示す波形図である。
加熱コイル#1には、正弦波の電流が流れる。
図32(b)は、加熱コイル#2(加熱コイル50−2)に流れる電流を示す波形図である。
加熱コイル#2には、加熱コイル#1の電流と同相、かつ正弦波の電流が流れる。
図32(c)は、加熱コイル#3(加熱コイル50−3)に流れる電流を示す波形図である。
加熱コイル#3には、加熱コイル#1の電流と同相、かつ正弦波の電流が流れる。
図32(d)は、加熱コイル#4(加熱コイル50−4)に流れる電流を示す波形図である。
加熱コイル#4には、加熱コイル#1の電流と同相、かつ正弦波の電流が流れる。
【0055】
図32(e)は、インバータ#1(インバータ3−1)を制御する制御信号を示す波形図である。
インバータ#1の制御信号は、HighレベルとLowレベルとを所定周期で繰り返す方形波である。これにより、加熱コイル#1には、正弦波の電流が流れる。
【0056】
図32(f)は、インバータ#2(インバータ3−2)を制御する制御信号を示す波形図である。
インバータ#2の制御信号は、HighレベルとLowレベルとを所定周期で繰り返す方形波であり、かつインバータ#1の制御信号と同相である。これにより、加熱コイル#1には、加熱コイル#1の電流と同相、かつ正弦波の電流が流れる。
【0057】
図32(g)は、インバータ#3(インバータ3−3)を制御する制御信号を示す波形図である。
インバータ#3の制御信号は、HighレベルとLowレベルとを所定周期で繰り返す方形波であり、かつインバータ#3の制御信号と同相である。これにより、加熱コイル#3には、加熱コイル#1の電流と同相、かつ正弦波の電流が流れる。
【0058】
図32(h)は、インバータ#4(インバータ3−4)を制御する制御信号を示す波形図である。
インバータ#4の制御信号は、HighレベルとLowレベルとを所定周期で繰り返す方形波であり、かつインバータ#4の制御信号と同相である。これにより、加熱コイル#4には、加熱コイル#1の電流と同相、かつ正弦波の電流が流れる。
【0059】
制御回路9は、全てのインバータ3−1〜3−4が同期して駆動するように制御する。これにより、各加熱コイル50−1〜50−4には同相の電流が流れる。すなわち各加熱コイル50−1〜50−4の電流は、同じ向きに流れる。そのため、各領域52−12,52−41,52−23,52−34における磁束は、全て同じ方向となる。
【0060】
(ケース#2)
図33は、第4の実施形態の各加熱コイルに流れる電流が列ごとに逆相である場合の電流と磁束とを説明する平面図である。
図33は、或るタイミングにおける電流の向きと磁束の向きとを記号で示している。ここで列とは、加熱コイル50−1および加熱コイル50−2、または、加熱コイル50−3および加熱コイル50−4で構成される。
加熱コイル50−1の電流および加熱コイル50−2の電流に対して、加熱コイル50−3の電流および加熱コイル50−4の電流は、逆方向に流れる。すなわち加熱コイル50−1,50−2の電流に対して、加熱コイル50−3,50−4の電流は、逆相である。領域52−12と、領域52−34とには、垂直かつ逆方向の磁束が発生する。
このタイミングにおいて、領域52−23の周囲の加熱コイル50−2,50−3間の電流は、鍋10の中心から外側方向へ流れる。領域52−41の周囲の加熱コイル50−4,50−1間の電流は、鍋10の外側から中心方向へ流れる。
【0061】
図34は、
図33における鍋10の磁束密度分布の底面図である。
この磁束密度分布によれば、加熱コイル50間で同方向に電流が流れる領域52−41,52−23で磁束密度が特に高くなる。よって、この通電方向の制御は、局部的な加熱に効果がある。
ケース#2における鍋10の磁束密度の総和は、ケース#1よりも高くなる。よって、この通電方向の制御は、鍋10の加熱量の調整にも効果がある。
【0062】
図35は、
図33における各加熱コイルに流れる電流と制御信号の波形図である。
図35(a)は、加熱コイル#1(加熱コイル50−1)に流れる電流を示す波形図である。
加熱コイル#1には、正弦波の電流が流れる。
図35(b)は、加熱コイル#2(加熱コイル50−2)に流れる電流を示す波形図である。
加熱コイル#2には、加熱コイル#1の電流と同相、かつ正弦波の電流が流れる。
図35(c)は、加熱コイル#3(加熱コイル50−3)に流れる電流を示す波形図である。
加熱コイル#3には、加熱コイル#1,#2の電流とは逆相、かつ正弦波の電流が流れる。
図35(d)は、加熱コイル#4(加熱コイル50−4)に流れる電流を示す波形図である。
加熱コイル#4には、加熱コイル#3と同相の正弦波の電流が流れる。
【0063】
図35(e)は、インバータ#1(インバータ3−1)を制御する制御信号を示す波形図である。
インバータ#1の制御信号は、HighレベルとLowレベルとを所定周期で繰り返す方形波である。これにより、加熱コイル#1には、正弦波の電流が流れる。
【0064】
図35(f)は、インバータ#2(インバータ3−2)を制御する制御信号を示す波形図である。
インバータ#2の制御信号は、HighレベルとLowレベルとを所定周期で繰り返す方形波であり、かつインバータ#1の制御信号と同相である。これにより、加熱コイル#2には、加熱コイル#1の電流と同相、かつ正弦波の電流が流れる。
【0065】
図35(g)は、インバータ#(インバータ3−3)を制御する制御信号を示す波形図である。
インバータ#3の制御信号は、HighレベルとLowレベルとを所定周期で繰り返す方形波であり、かつインバータ#1の制御信号とは逆相である。これにより、加熱コイル#3には、加熱コイル#1の電流とは逆相、かつ正弦波の電流が流れる。
【0066】
図35(h)は、インバータ#4(インバータ3−4)を制御する制御信号を示す波形図である。
インバータ#4の制御信号は、HighレベルとLowレベルとを所定周期で繰り返す方形波であり、かつインバータ#3の制御信号と同相である。これにより、加熱コイル#4には、加熱コイル#3の電流と同相、かつ正弦波の電流が流れる。
【0067】
制御回路9は、インバータ3−1,3−2を同期して駆動するように制御する。更に制御回路9は、インバータ3−1の制御信号がHighのとき、インバータ3−3,3−4の制御信号をLow、インバータ3−1の制御信号がLowのときHighとして駆動するように制御する。加熱コイル50−3および加熱コイル50−4の電流は、加熱コイル50−1および加熱コイル50−2の電流に対して逆相となる。
【0068】
(ケース#3)
図36は、第4の実施形態において、隣接する各加熱コイルに流れる電流が全て逆相である場合の電流と磁束とを説明する平面図である。
図36は、或るタイミングにおける電流の向きと磁束の向きとを記号で示している。
加熱コイル50−1の電流および加熱コイル50−3の電流に対して、加熱コイル50−2の電流および加熱コイル50−4の電流は、それぞれ逆相である。すなわち、いずれの加熱コイルの電流に対して、これと斜め方向に隣接する加熱コイルの電流は、すべて逆相である。
領域52−12,52−34の周囲の各加熱コイルの電流が鍋10の中心から外側へ流れるとき、領域52−41,52−23の周囲の各加熱コイルの電流は、鍋10の外側から中心へ流れる。
【0069】
図37は、
図36における鍋10の磁束密度分布の底面図である。
図37は、
図36の鏡像である。
この磁束密度分布によれば、加熱コイル間で同方向に電流が流れる領域52−12,52−23,52−34,52−41で磁束密度が特に高くなる。よって、この通電方向の制御は、局部的な加熱に効果がある。
ケース#3における鍋10の磁束密度の総和は、ケース#2よりも更に高くなる。よって、この通電方向の制御は、鍋10の加熱量の調整にも効果がある。
【0070】
図38(a)〜(h)は、
図36における各加熱コイルに流れる電流と制御信号の波形図である。
図38(a)は、加熱コイル#1(加熱コイル50−1)に流れる電流を示す波形図である。
加熱コイル#1には、正弦波の電流が流れる。
図38(b)は、加熱コイル#2(加熱コイル50−2)に流れる電流を示す波形図である。
加熱コイル#2には、加熱コイル#1の電流とは逆相、かつ正弦波の電流が流れる。
図38(c)は、加熱コイル#3(加熱コイル50−3)に流れる電流を示す波形図である。
加熱コイル#3には、加熱コイル#2の電流とは逆相、かつ正弦波の電流が流れる。
図38(d)は、加熱コイル#4(加熱コイル50−4)に流れる電流を示す波形図である。
加熱コイル#4には、加熱コイル#3とは逆相、かつ正弦波の電流が流れる。
【0071】
図38(e)は、インバータ#1(インバータ3−1)を制御する制御信号を示す波形図である。
インバータ#1の制御信号は、HighレベルとLowレベルとを所定周期で繰り返す方形波である。これにより、加熱コイル#1には、正弦波の電流が流れる。
【0072】
図38(f)は、インバータ#2(インバータ3−2)を制御する制御信号を示す波形図である。
インバータ#2の制御信号は、HighレベルとLowレベルとを所定周期で繰り返す方形波であり、かつインバータ#1の制御信号とは逆相である。これにより、加熱コイル#2には、加熱コイル#1の電流とは逆相、かつ正弦波の電流が流れる。
【0073】
図38(g)は、インバータ#3(インバータ3−3)を制御する制御信号を示す波形図である。
インバータ#3の制御信号は、HighレベルとLowレベルとを所定周期で繰り返す方形波であり、かつインバータ#2の制御信号とは逆相である。これにより、加熱コイル#3には、加熱コイル#2の電流とは逆相、かつ正弦波の電流が流れる。
【0074】
図38(h)は、インバータ#4(インバータ3−4)を制御する制御信号を示す波形図である。
インバータ#4の制御信号は、HighレベルとLowレベルとを所定周期で繰り返す方形波であり、かつインバータ#3の制御信号とは逆相である。これにより、加熱コイル#4には、加熱コイル#3の電流とは逆相、かつ正弦波の電流が流れる。
【0075】
制御回路9は、インバータ3−1,3−3を同期して駆動する。制御回路9は更に、インバータ3−1の制御信号がHighのとき、インバータ3−2,3−4の制御信号をLowとして、インバータ3−1の制御信号がLowのときインバータ3−2,3−4の制御信号をHighとして駆動する。加熱コイル50−2,50−4の電流は、加熱コイル50−1,50−3の電流に対して逆相(図中では180°位相差)となる。
【0076】
制御回路9は、ケース#1〜#3の制御を切り替えることにより、各加熱コイル50−1〜50−4の位相をそれぞれ制御して、誘導加熱装置100Cの加熱領域と火力とを調整することができる。制御回路9は、隣接する2隣接する2個の加熱コイル50に流れる電流の位相差を同位相に制御して火力を低下させ、この電流の位相差を逆位相に制御して火力を上昇させる。
【0077】
同様に図示しないが、加熱コイル50−1の電流のみが逆相の場合、加熱コイル50−1,50−2間および加熱コイル50−1,50−4間で、それぞれ鍋10の中心から遠ざかる方向、または鍋10の中心に近づく方向に電流が流れる。そのため、鍋10の磁束密度分布は、領域52−12および領域52−41で高くなる。火力も領域52−12,52−41で高くなる。
以上の構成により、誘導加熱装置100Cは、加熱コイル50を複数配置して、制御回路9で各加熱コイル50の電流に位相差を設けるか否かを制御することにより、加熱領域と火力とを調整可能となる。
なお、回路部について
図21に示したが、これに限らない。
【0078】
図39は、第4の実施形態の変形例の誘導加熱装置100Dの回路図である。
この変形例の誘導加熱装置100Dは、インバータ3によって加熱コイル50−1〜50−4に給電する方式である。インバータ3は、正極端子と中点端子との間、および、中点端子と負極端子の間に、交流電力を供給する。正極端子と中点端子との間に印加される電圧は、中点端子と負極端子の間に印加される電圧とは逆相である。
各加熱コイル50−1,50−3は、それぞれ電流センサ92−1,92−3と共振回路4−1,4−3とスイッチ91−1,91−3とが直列に接続されて、インバータ3の正極端子と中点端子との間に接続される。
各加熱コイル50−2,50−4は、それぞれ電流センサ92−2,92−4と共振回路4−2,4−4とスイッチ91−2,91−4とが直列に接続されて、インバータ3の中点端子と負極端子との間に接続される。
【0079】
各加熱コイル50−1〜50−4の正極側は、それぞれ端子53−1〜53−4に接続される。各加熱コイル50−1〜50−4の負極側は、それぞれ端子54−1〜54−4に接続される。
スイッチ91−1〜91−4は、電流を遮断するスイッチであり、例えば半導体スイッチやリレーなどである。スイッチ91−1〜91−4は、制御回路9によりオンオフされる。
共振回路4−1〜4−4は、共振コンデンサを含む共振回路であり、図中ではスイッチ91−1〜91−4と加熱コイル50−1〜50−4間にそれぞれ直列接続される。しかし、加熱コイル50−1〜50−4間に並列に共振コンデンサが接続される構成でもよい。
この変形例では、加熱コイル50−1〜50−4に対して、
図11に示した加熱コイル50を使用する場合について説明する。
【0080】
(ケース#1)
ケース#1(
図30参照)に示した加熱コイル50−1〜50−4を全て同相とするには、以下のように接続する。
加熱コイル50−1の端子50aiは、端子53−1と接続する。端子50boは、端子54−1と接続する。加熱コイル50−2の端子50aiは、端子53−2と接続する。端子50boは、端子54−2と接続する。
加熱コイル50−3の端子50ai(
図11参照)は、端子54−3と接続する。端子50boは、端子53−3と接続する。加熱コイル50−4の端子50aiは、端子54−4を接続する。端子50boは、端子53−4と接続する。
【0081】
このように接続した場合、加熱コイル50−1,50−3の電流に対する加熱コイル50−2,50−4の電流は、同相となる。そのため、制御回路9がスイッチ91−1〜91−4をオンとすると、
図31に示したものと同様な加熱が可能になる。
【0082】
(ケース#2)
ケース#2で示したように、加熱コイル50−3,50−4を、加熱コイル50−1,50−2とは逆相とするには、以下のように接続する。
加熱コイル50−1の端子50ai(
図11参照)は、端子53−1と接続する。端子50boは、端子54−1と接続する。加熱コイル50−2の端子50aiは、端子54−2と接続する。端子50boは、端子53−2と接続する。
加熱コイル50−3の端子50aiは、端子53−3と接続する。端子50boは、端子54−3と接続する。加熱コイル50−4の端子50aiは、端子54−4と接続する。端子50boは、端子53−4と接続する。
【0083】
このように接続した場合、加熱コイル50−1,50−2の電流に対する加熱コイル50−3,50−4の電流は、逆相となる。そのため、制御回路9がスイッチ91−1〜91−4をオンすると、
図34と同様な加熱が可能になる。
【0084】
(ケース#3)
ケース#2で示したように、加熱コイル50−2,50−4を、加熱コイル50−1,50−3とは逆相とするには、以下のように接続する。
加熱コイル50−1の端子50ai(
図11参照)は、端子53−1と接続する。端子50boは、端子54−1と接続する。加熱コイル50−2の端子50aiは、端子53−2を接続する。端子50boは、端子54−2と接続する。
加熱コイル50−3の端子50aiは、端子53−3と接続する。端子50boは、端子54−3と接続する。加熱コイル50−4の端子50aiは、端子53−4と接続する。端子50boは、端子54−4と接続する。
【0085】
このように接続した場合、加熱コイル50−1,50−3の電流に対して、加熱コイル50−2,50−4の電流は、逆相となる。そのため、制御回路9がスイッチ91−1〜91−4をオンとすると、
図37と同様な加熱が可能になる。
【0086】
また、この変形例の回路によれば、給電したい箇所の加熱コイルに係るスイッチをオンすることかできると共に、給電したくない箇所の加熱コイルに係るスイッチをオフすることができる。よって、制御回路9は、鍋10が上部に載置されていない箇所の加熱コイルへの給電を停止することができる。これにより、省エネが図れると共に、不要な磁束放射の低減が図れる。
【0087】
(第5の実施形態)
本実施形態では第1の実施形態の加熱コイル50を複数配置した誘導加熱装置100Eによる複数の調理器具の加熱の例を説明する。第1の実施形態で説明した構成および機能の説明は省略する。
【0088】
図40は、第5の実施形態の加熱コイル群50Mを用いた誘導加熱装置100Eを示す概略の平面図である。
誘導加熱装置100Eは、料理に使用する加熱調理器であり、内部に不図示の電源回路20(
図1参照)と、制御回路9と、磁性体70とを有する。トッププレート60は、加熱コイル群50Mの上面を覆っている。
加熱コイル群50Mは、第1の実施形態の加熱コイル50(
図3参照)よりも小さな加熱コイル50を複数個配置したものである。
トッププレート60の上には加熱対象である鍋10および小径鍋11が載置されている。操作盤93は、この誘導加熱装置100の火力の調整を行う部位である。ユーザは、この操作盤93により火力を調整する。
【0089】
図41は、第5の実施形態の誘導加熱装置100Eの動作を説明する図である。
図41では、給電する加熱コイル50を強調表示している。
加熱対象である鍋10や小径鍋11が載置されると、この鍋10や小径鍋11を載置した位置の加熱コイル50の電流が変化する。制御回路9は、これら加熱コイル50の電流の変化を検知して、鍋10や小径鍋11の有無を検出する。
この
図41において、制御回路9は、加熱コイル50−23,50−33,50−34,50−35,50−44に流れる電流の変化を検知して、鍋10の位置を検出する。誘導加熱装置100Eは、加熱コイル50−23,50−33,50−34,50−35,50−44によって、鍋10を加熱する。
制御回路9は、加熱コイル50−17に流れる電流の変化を検知して、小径鍋11の位置を検出する。誘導加熱装置100Eは、加熱コイル50−17によって、鍋10を加熱する。
【0090】
ユーザは、操作盤93を操作して、誘導加熱装置100Eの火力を調整する。
鍋10を大火力で加熱する場合、制御回路9は、加熱コイル50−34の電流のみ、他の加熱コイル50−23,50−33,50−35,50−44の電流に対し逆相とする。これにより、加熱コイル50−34と他の加熱コイル50−23,50−33,50−35,50−44との間の領域における加熱を強めることができる。
鍋10の右側を大火力で加熱する場合、制御回路9は、加熱コイル50−35の電流のみ、他の加熱コイル50に対して逆相とする。これにより、加熱コイル50−34と加熱コイル50−35との間の領域における加熱を強めることができる。
鍋10を小火力で加熱する場合、制御回路9は、加熱コイル50−34のみ駆動してもよく、1または複数の加熱コイル50を間欠駆動して火力を落としてもよい。また、制御回路9は、鍋10の直下の加熱コイル50−34を常時駆動し、かつ加熱コイル50−23,50−33,50−35,50−44を間欠駆動しつつ、かつ電流位相を制御してもよい。これにより、より細かな火力と加熱領域の調整とが可能となる。
【0091】
図42は、第5の実施形態の誘導加熱装置100Eの加熱コイル群50Mの加熱モードの制御処理を示すフローチャートである。ここで加熱モードとは鍋の加熱領域、加熱量、またはその両方を変更するためのコイル電流の制御モードのことをいう。
ユーザが操作盤93を操作して誘導加熱装置100Eによる加熱を指示すると、制御回路9は、加熱モードの制御処理を開始する。
ステップS10において、制御回路9は、加熱コイル群50Mのすべての加熱コイル50をオンする。
ステップS11において、制御回路9は、加熱コイル群50Mを構成する各加熱コイル50の電流値を検出する。
ステップS12において、制御回路9は、加熱コイル群50Mのすべての加熱コイル50をオフする。
ステップS13において、制御回路9は、検出した各加熱コイル50の電流値に基づき、鍋10などが載置されている加熱コイル50を特定する。
ステップS14において、制御回路9は、特定した加熱コイル50に係るスイッチをオンする。
ステップS15において、制御回路9は、操作盤93によって指示された加熱モードに応じてフローを分岐する。制御回路9は、均一加熱モード(小火力)が指示されたとき、ステップS16の処理を行い、局部加熱モード1(中火力)が指示されたとき、ステップS17の処理を行い、局部加熱モード2(大火力)が指示されたとき、ステップS18の処理を行う。なお、ここで中火力とは、均一加熱モードの小火力から局部加熱モード2の大火力までの間のすべての火力をいう。
【0092】
ステップS16において、制御回路9は、特定した加熱コイル50全ての電流を同相として、
図42の処理を終了する。
ステップS17において、制御回路9は、指示された火力(中火力)に応じて、特定した加熱コイル50の電流を縦横交互に逆相とする運転と、すべて同相とする運転とを間欠的に切り替え、
図42の処理を終了する。
ステップS18において、制御回路9は、特定した加熱コイル50の電流を縦横交互に逆相で運転し、
図42の処理を終了する。
【0093】
以上の構成により、複数の鍋10が載置された際にも、これら複数の鍋10を同時に加熱することができ、ユーザの利便性向上が図れる。また、各加熱コイル50の電流を調整することで、加熱領域の制御も可能となる。
なお、本実施形態の加熱モードは、ユーザが操作盤で火力を操作することによって調整されるが、これに限られない。ユーザが操作盤で調理の種類を操作したときに適宜調整されてもよい。例えば、ユーザが煮込み調理を指定したとき、コイルの電流位相差を同相として焦げ付きを抑止する。ユーザが強火で焼き目をつける調理を指定したとき、コイルの電流位相差を逆相とするなどである。
また、大火力で均一加熱したい場合に、すべてのコイルを同相して加熱を均一として、かつ、コイルに給電する周波数を共振周波数に近づけることで、コイル電流を増加させて大火力としてもよい。
なお、コイル電流の変化により鍋10の載置位置を検出したが、これに限らない。鍋10の載置位置は、例えば、赤外線センサ・可視光センサ・圧力センサなどによって検出してもよく、カメラによる画像認識によって検出してもよい。
第5の実施形態では、各加熱コイル50の巻きを同方向としたが、これに限られない。各加熱コイル50の巻き方向が異なるものを組み合わせてもよい。
【0094】
図43は、第5の実施形態の第1変形例の加熱コイル群50Nを示す平面図である。
加熱コイル群50Nは、十字形状の加熱コイル50を格子状に等間隔に配置し、かつ各格子の中央には、45度傾斜させた十字形状の加熱コイル50をそれぞれ配置している。このように、加熱コイル50の向きを変更してもよい。
【0095】
図44は、第5の実施形態の第2変形例の加熱コイル群50Pを示す平面図である。
加熱コイル群50Pは、十字形状の加熱コイル50を格子状に等間隔に配置し、かつ市松状に、45度傾斜させた十字形状の加熱コイル50をそれぞれ配置している。このように、加熱コイル50の向きを変更してもよい。
また、各加熱コイルの間隔が異なってもよい。更に
図12から
図18に示したような様々な形状の加熱コイルを複数配置してもよい。