(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296572
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】小便用水洗システム
(51)【国際特許分類】
E03D 13/00 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
E03D13/00
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-133943(P2016-133943)
(22)【出願日】2016年7月6日
(62)【分割の表示】特願2012-200291(P2012-200291)の分割
【原出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-173030(P2016-173030A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】393030958
【氏名又は名称】村角株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100076820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 健次
(74)【代理人】
【識別番号】100150326
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 知久
(72)【発明者】
【氏名】村角 英彦
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−026090(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3060805(JP,U)
【文献】
特開2004−321474(JP,A)
【文献】
実開昭61−076884(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00 − 7/00,9/00 − 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に取り付けられる小便器本体と、小便器本体の前方で床面に設けられた両足場と、前記両足場より低い位置に設けられ落下する尿を受け止めるための受け部からなり、
前記受け部は、小便器本体の下からその前方向且つ両足場の間に延設される前部と、小便器本体の下からその両横方向に延設される後部からなるとともに、受け部を洗浄するための洗浄水の放出口と排水口が設けられてユニット化されていることを特徴とする小便用水洗システム。
【請求項2】
小便器本体の水洗と連動して洗浄水が放出口から受け部内に放出されることを特徴とする請求項1に記載の小便用水洗システム。
【請求項3】
放出口は、受け部の前部の先端に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の小便用水洗システム。
【請求項4】
小便器本体からの排水管は当該小便器本体が取り付けられた壁側に配置され、小便器本体の下には配管が設けられないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の小便用水洗システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗式の小便用水洗システムに係り、詳しくは、小便器から垂下した尿や誤って小便器外に放出された尿が床面に落下し、汚染したり、悪臭を発したりするのを防止した小便用水洗システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、小便用の便器は、尿が当る部分と両側の壁とからなり、下部に突出した形状の尿受け部を有している。従って、適切に使用すれば、たとえ放出された尿が小便器にあたっても、両側の壁に阻まれるため、小便器の外に飛び出さないように設計され、放尿終了間際の尿滴も前方に突出した尿受け部で受け止められ、床面には落下しないように設計されている。
【0003】
しかしながら、使用者は不浄なイメージがある小便器からある程度離れて用を足そうとする傾向があるため、放出された尿が小便器の周縁部にあたって周りに飛び散ったり、小便器を伝って床に垂れる等の不都合が生じることがある。特に、放尿終了間際に尿が尿受け部に届かず、床面を汚染することが多い。このため、「もう一歩前へ」等のメッセージもしばしば見かけられるが、効果は殆ど上らず、床面に尿の溜まりができたり、尿の凝固物が付着したりして、外観を損なうばかりでなく、悪臭を放つ原因になっている。尿の溜まりや尿の凝固物を避けようとして小便器から離れようとすると、上記現象は益々顕著となる。 また、尿やその凝固物が靴の裏等に付着すると、それらを周囲に撒き散らすことになり、衛生上も深刻な問題である。更に、尿によりタイル、目地やコンクリートが劣化するという問題もある。
このような問題は頻繁に清掃すれば、ある程度解決できるが、会社等にあっては費用の関係もあって、一日一回程度が普通であり、上記の問題は殆ど解決されていないのが実情である。
【0004】
小便器を伝って床に垂れる尿を間を置かずに洗い流すことができる小便器としては、特許文献1に記載されているような、小便器の下に垂れ受け皿が設けられたものが提案されている。しかしながら、特許文献1に記載の小便器では、トラップ方式を採用しているため、構造が極めて複雑となり高価とならざるを得ず、また、トラップ内の尿や水の悪臭が外部に漏れ出すことが避けられない。さらに、小便を小便器の壁に当てて両側に飛び散らしたり、壁外に放出することも多いが、このような場合には何ら対処されておらず、上記問題の解決は不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−26090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる実情に鑑み、上記問題を解決するもので、小便器から床に垂れる尿だけでなく、壁外に飛び散らせたり放出する尿も瞬時に洗い流すことができる、衛生的な小便用水洗システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の特徴は、壁面に取り付けられる小便器本体と、小便器本体の前方で床面に設けられた両足場と、前記両足場より低い位置に設けられ落下する尿を受け止めるための受け部からなり、前記受け部は、小便器本体の下からその前方向且つ両足場の間に延設される前部と、小便器本体の下からその両横方向に延設される後部からなるとともに、受け部を洗浄するための洗浄水の放出口と排水口が設けられてユニット化されている小便用水洗システムである。
【0008】
本発明の他の特徴は、小便器本体の水洗と連動して洗浄水が放出口から受け部内に放出される上記の小便用水洗システムである。
【0009】
本発明の他の特徴は、放出口は、受け部の前部の先端に設けられる上記の小便用水洗システムである。
【0010】
本発明の他の特徴は、小便器本体からの排水管は当該小便器本体が取り付けられた壁側に配置され、小便器本体の下には配管が設けられない上記の小便用水洗システムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の小便用水洗システムは、小便器本体の下からその前方向且つ両足場の間に延設される前部と、小便器本体の下からその両横方向に延設される後部からなる受け部を有しているため、小便器から垂れる尿を受け部の前部で受け止めるとともに、壁外に放出されたり、壁に当たって飛び散る尿を受け部の後部で受け止めることができる。
受け部に落ちた尿は放出口からの洗浄水により洗い流されるので、尿の溜まりができたり、尿の凝固物が付着することもなく、悪臭の発生も防がれ、極めて衛生的である。また、尿によりタイル、目地やコンクリートが劣化するという問題も解決される。
【0012】
また、受け皿の洗浄を小便器の水洗と連動させれば、小便器の水洗と同時又は必要により、一定時間後に受け部に落ちた尿も直ちに洗浄することができるので、尿の凝固や悪臭が発生せず、常に極めて清潔に保つことができる。
【0013】
放水口を受け部の前部の先端に設ければ、受け部のなかで最も汚れやすい前部を重点的に洗浄することができる。
【0014】
小便器本体からの排水管を当該小便器本体が取り付けられた壁側に配置し、小便器本体の下側から配管を排除すれば、配管が邪魔にならず、受け部を簡単に洗浄することができる。
【0015】
両足場と、放出口と排水口を備えた受け部をユニット化すれば、既設の小便器の下に受け部ユニットを設置し配管するだけで、通常の小便器を簡単に本発明の小便用水洗システムにリフォームできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明の小便用水洗システムの一例を示す概略断面図である。
【
図3】
図3(a)は
図1の小便用水洗システムで用いる受け部の平面図であり、(b)は受け部の別例を示す平面図である。
【
図4】
図4(a)は両足場と受け部を含むユニットの平面図であり、(b)はその正面図であり、(c)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の小便用水洗システム1は、例えば
図1及び
図2に示したように、壁面Wに取り付けられる小便器本体2と、小便器本体2の前方で床面に設けられた両足場3と、前記両足場3より低い位置に設けられ落下する尿を受け止めるための受け部4からなり、前記受け部4は、小便器本体2の下からその前方向且つ両足場3の間に延設される前部4aと、小便器本体2の下からその両横方向に延設される後部4bからなるとともに、受け部4を洗浄するための洗浄水の放出口5と排水口6が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明の小便用水洗システム1は、
図1及び
図2に例示されるように、小便器本体2と、両足場3と、受け部4と、からなる。
本発明で用いる小便器本体2の形状は特に限定されないが、俗に朝顔型と称される壁掛け型小便器が好ましい。また、壁掛け型の中でも、排水管2aが壁内に収容され、小便器と床面との間に配管がないタイプの小便器が、受け部4の洗浄がさらに容易になるので好ましい。
【0019】
本発明において両足場3は、小便器を用いる際に使用者が足を乗せる部分であり、小便器本体2の前方の床面に配置される。また、本発明において受け部4は小便器本体2からこぼれ落ちた尿を受け止める部分であり、当該受け部4に落ちた尿を洗浄水で洗い流すように構成されている。
受け部4は、洗浄水が両足場3に逆流して使用者の足を汚すことがないように、両足場3よりも低い位置に配置される。両足場3と受け部4の高度差は特に限定されず、洗浄水の量や流速等を考慮して両足場3に洗浄水が逆流せず、且つ両足場3及び受け部4の清掃がしやすい程度の高度差にすればよいが、通常は3〜5cm程度が適切である。
【0020】
受け部4は、
図2に例示されるように、前部4aと後部4bからなる。前部4aは小便器本体2の下からその前方向、即ち使用者側に延設される部分である。両足場3はこの前部4aの両脇に配置されるので、使用者が小便器本体2を使用する際には、前部4aをまたいだ状態になる。そして、放尿終了間際に尿が小便器本体2の尿受け部2bに届かないような場合には、落下した尿をこの前部4aで受け止めることにより、両足場3や床面が尿で汚されるのを防ぐ。
【0021】
受け部4の後部4bは、
図2に例示されるように、小便器本体2の下からその両横方向に延設される部分である。この部分は尿が誤って小便器の壁外に、又は壁に当って両側に飛び散るような場合に、横方向に飛び散った尿を受け止めて、床面が尿で汚されるのを防ぐ。
【0022】
なお、
図2に示した例において、受け部4の形状は、後部4bがトイレの壁の全幅に渡って設けられており、前部4aは後部4bの中央付近から一定幅で延設され、全体として
図3(a)に示した形状であるが、本発明で使用できる受け部4の形状はこれに限定されず、例えば、
図3(b)に示したように、前部4aの幅を後部4bから遠ざかるほど狭くしたテーパー状としてもよいし、或いは、前部4aの先端4a1や、後部4bの側端4b1の角を丸めて半円形にしてもよく、その他、所望のデザイン化してもよく、即ち、小便器本体2に届かなかったり、小便器本体2の周縁部に当って飛び散った尿を受け止めることができる形状であれば、どのような形状でも採用できる。
また、壁際に数個の小便器本体2を連設するような場合には、隣接する受け部4の後部4bを互いに接続して連通一体化させてもよい。
【0023】
本発明において、受け部4で受け止めた尿は、適宜、洗浄水で洗い流されるように構成される。即ち、受け部4には、洗浄水を受け部4内に導入するための放出口5と、使用後の洗浄水を受け部4外に排出するための排水口6が設けられる。
放出口5の位置は、洗浄水を受け部4全体に行き渡らせることができる限り特に限定されないが、小便器を使用する際、放尿終了間際には尿が小便器本体2の尿受け部2bに届かないケースが多く、受け部4の前部4aが最も汚れやすいという実情を考慮すれば、前部4aの先端4a1に放出口5を設けて、前部4aを重点的に洗浄できるようにするのが好ましい。また、放出口5を必要に応じ2箇所以上、例えば前部4aの先端4a1と後部4bの側端4b1に設けてもよい。
排水口6の位置も特に限定されないが、放出口5から放出された洗浄水が受け部4全体に拡がるのを妨げない位置に設けるのが好ましく、例えば、放出口5を前部4aの先端4a1だけに設けられる場合には、後部4bの側端4b1付近に排水口6を設けるのが好ましい。
なお、複数の小便器本体2を連設し、隣接する受け部4の後部4bを接続して連通一体化した場合、排水口6は一体化された受け部4につき1箇所設ければ十分であるが、必要に応じ2個以上設けてもよい。
【0024】
放出口5の構造は特に限定されず、最も単純な場合として、端部が開放された水道管を放出口5とし、少量の水を常に流すように構成することもできるが、通常の場合にはバルブを設け、必要なときに洗浄水を流すように構成される。洗浄水はフィルム状に流すと、少量の水でよいので経済的であり好ましい。
バルブを設けた場合、放出口5を開放して洗浄水を流すタイミングは特に限定されないが、小便器本体2を水洗するタイミングと連動して受け部4にも洗浄水を流すように構成するのが好ましいが、必要により、一定時間毎に定期的に洗浄水を流すようにしてもよく、また、これらの組み合わせでもよい。放出口5を2箇所以上に設ける場合は、一方を小便器本体2の水洗と連動させ、他方を一定時間毎に洗浄するようにしてもよく、具体的には、汚れやすい前部4aを洗浄する放出口5は小便器本体2の水洗と連動させ、比較的汚れにくい後部4bを洗浄する放出口5は一定時間毎に洗浄水を放出するようにしてもよい。
なお、ここでいう連動とは、小便器本体2の水洗と同時に洗浄水を放出する場合のみならず、小便器本体2の水洗から一定時間後に洗浄水を放出するような場合も含まれるが、清潔面、衛生面からは前者が好ましい。
本発明の小便用水洗システムの素材は、ステンレス、アルミ等の金属、ホウロウ、陶磁、樹脂等のいずれでもよいが、軽量で耐久性があり、外観が清潔感に富み、加工性が良好である点でステンレスが好ましい。
【0025】
本発明の小便用水洗システムは、小便器本体2、両足場3、受け部4を備えた水洗システムとして新に施工されるか、又は既設の小便器にリフォームされる。リフォームの場合、
図4に例示したように、予め両足場3と放出口5と排水口6を備えた受け部4とを含むユニット化し、これを既設の小便器の下に設置することによって簡単に小便用水洗システムにリフォームすることもできる。
図4に示したユニット1aは、両足場3及び放出口5と排水口6を備えた受け部4からなり、これを既設の小便器の下に設置し、放出口5及び排水口6を配管することにより、本発明の小便用水洗システムとすることができる。
ユニット1aを既設の小便器に設置する場合、既設の小便器の床面とユニット1a(受け部4の裏面)とが接触している場合、ユニット1aを設置した床面を掃除する際に汚れがユニット1aと床面との間に溜まりやすく掃除がしにくくなる。従って、ユニット1aと床面との間に間隔を保つためのスペーサーを介在させるほうが好ましい。
図4に示した例では、受け部4の裏面に脚部4cを設け、この脚部4cにより床面とユニット1aの受け部4の裏面との間に間隔を保つように構成されているが、これに限定されず、ユニット1aとは別体のスペーサーをユニット1aの受け部4の裏面に敷設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上記したとおり、本発明の小便用水洗システムは、小便器本体の下からその前方向且つ両足場の間に延設される前部と、小便器本体の下からその両横方向に延設される後部からなる受け部を備えており、小便器本体の外横方向に洩れ出た尿は両横方向に設けられた後部の受け部で受け、また、小便器本体の前方の尿受け部より洩れ出た尿は前方に設けられた前部の受け部で受け、これらの受け部で受けた尿を洗い流すように構成されている。
したがって、尿の溜りができたり、凝固物で汚れがこびりついたり、悪臭を発することがなく、清潔で衛生的な小便用水洗システムを提供することができる。更に、床面のタイルやコンクリート等が尿により劣化することがないのでこれらの耐久性が高められ、極めて有用性の高いものである。
【符号の説明】
【0027】
1 小便用水洗システム
1a ユニット
2 小便器本体
2a 排水管
2b 小便器本体の尿受け部
3 両足場
4 受け部
4a 前部
4a1 先端
4b 後部
4b1 側端
4c 脚部
5 放出口
6 排水口
W 壁面