(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、
図1を参照して、第1実施形態を説明する。
図1に示す浮き検出装置1は、搬送路に面接触した状態で搬送される印刷物の搬送路からの局所的な浮きを検出する装置である。浮き検出装置1は、検査画像取得部2と、差分画像生成部3と、勾配取得部4と、浮き検出部5と、を備えている。
【0010】
検査画像取得部2は、搬送路に面接触した状態で搬送される印刷物を撮像して検査画像を取得する。
【0011】
差分画像生成部3は、画素毎に、前記検査画像における輝度値と、基準画像における輝度値と、の差分から構成される差分画像を生成する。
【0012】
勾配取得部4は、差分画像の特定ライン上における輝度値の勾配を取得する。
【0013】
浮き検出部5は、輝度値の勾配に基づいて、印刷物の搬送路からの局所的な浮きを検出する。
【0014】
即ち、印刷物が搬送路から局所的に浮いた場合、差分画像の特定ライン上における輝度値の勾配に特有の傾向が現れる。従って、上記の浮き検出装置1は、極めて簡便な方法で、印刷物の搬送路からの局所的な浮きを検出することが可能となる。また、印刷物の搬送路からの局所的な浮きを検出することが可能となることで、本来であれば印刷欠陥がない印刷物であるのに、上記浮きが発生したことで印刷物に印刷欠陥があったと誤検出されてしまうことを回避できるようになる。
【0015】
<第2実施形態>
以下、
図2から
図14を参照して、第2実施形態を説明する。
【0016】
(構成)
図2に示すように、印刷システム100は、印刷機10と、印刷機10によって印刷された印刷物Pを搬送する検査胴11と、検査胴11によって搬送される印刷物Pを検査する検査装置12と、を備えている。
【0017】
検査胴11は、円筒状であって、外周面11aを有する。印刷物Pは、外周面11aに面接触した状態で次工程へ搬送され、図示しない裁断機によって所定のサイズに裁断される。検査胴11の外周面11aは、搬送路の一具体例である。
【0018】
検査装置12は、印刷物Pの印刷欠陥を検出する装置である。具体的には、検査装置12は、検査胴11の外周面11aに面接触した状態の印刷物Pを撮像して検査画像を取得し、検査画像に基づいて、印刷物Pの印刷欠陥を検出するように構成されている。
【0019】
検査装置12は、ラインスキャナカメラ20と、2つの光源21と、中央演算処理器としてのCPU22(Central Processing Unit)と、読み書き自由のRAM23(Random Access Memory)と、読み出し専用のROM24(Read Only Memory)と、を備えている。そして、CPU22がROM24に記憶されているプログラムを読み出して実行することで、プログラムは、CPU22などのハードウェアを、検査画像取得部25、前処理部26、テンプレート画像生成部27、差分画像生成部28、欠陥検出部29、勾配取得部30、特徴量抽出部31、閾値生成部32、浮き検出部33、として機能させる。
【0020】
ラインスキャナカメラ20は、印刷機10から受信する同期信号に基づいて動作することで、所定の搬送速度で搬送される印刷物Pをライン状にスキャンし、所定の時間間隔で一次元画像であるスキャン画像を検査画像取得部25に出力する。
【0021】
各光源21は、印刷物Pを所定の光量で照明する。
【0022】
検査画像取得部25は、ラインスキャナカメラ20を制御することで、外周面11aに面接触した状態で搬送される印刷物Pを撮像して二次元画像である検査画像を取得する。
【0023】
前処理部26は、検査画像に対して所定の前処理を実施する。
【0024】
テンプレート画像生成部27は、基準画像としてのテンプレート画像を生成する。
【0025】
差分画像生成部28は、画素毎に、検査画像における輝度値と、テンプレート画像における輝度値と、の差分から構成される差分画像を生成する。
【0026】
欠陥検出部29は、差分画像に基づいて、印刷物Pの印刷欠陥を検出する。
【0027】
勾配取得部30は、差分画像の特定ライン上における輝度値の勾配を取得する。
【0028】
特徴量抽出部31は、輝度値の勾配の特徴量を抽出する。
【0029】
閾値生成部32は、浮き検出部33による浮き検出に使用される閾値を生成する。
【0030】
浮き検出部33は、差分画像の特定ライン上における輝度値の勾配に基づいて、印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを検出する。
【0031】
そして、浮き検出部33は、欠陥検出部29が印刷欠陥を検出し、且つ、浮き検出部33が浮きを検出した場合、欠陥検出部29による検出を誤検出と見做すように構成されている。
【0032】
本実施形態において、外周面11aに面接触した状態で搬送される印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを検出する浮き検出装置は、少なくとも、検査画像取得部25、差分画像生成部28、勾配取得部30、浮き検出部33を備えて構成されている。
【0033】
(作動)
次に、検査装置12の作動を説明する。本実施形態において、検査装置12は、印刷物Pの印刷欠陥を検出するに際し、実際には印刷物Pに印刷欠陥がないにも拘らず印刷物Pが外周面11aから局所的に浮き上がっていることに起因して誤って印刷物Pに印刷欠陥があったと判定することがないよう、即ち、印刷物Pの印刷欠陥の誤検出を防止すべく、印刷物Pの外周面11aからの浮きも同時に検出するようにしている。
【0034】
検査装置12の作動は、大きく2つに分けられる。即ち、検査装置12の作動は、印刷物Pの外周面11aからの浮きを検出する際に用いられる判定用の閾値を生成する閾値生成フローと、印刷物Pの印刷欠陥と上記の浮きを検出する欠陥検出フローと、によって構成されている。なお、以降の説明において、印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを単に「浮き欠陥」と称する場合がある。
【0035】
<閾値生成フロー>
以下、
図3から
図13を参照して、閾値生成フローを説明する。
【0036】
ステップS100:
先ず、検査画像取得部25は、ラインスキャナカメラ20を制御することで、外周面11aに面接触した状態で搬送される印刷物Pを撮像して二次元画像である検査画像を複数回、取得する。ここで、撮像対象としての印刷物Pとしては、何れも印刷欠陥がないものを用意する。また、印刷物Pを撮像するに際しては、撮像時に浮き欠陥のある印刷物Pと、撮像時に浮き欠陥のない印刷物Pと、を予めグループ分けしておく。これにより、検査画像取得部25は、検査画像として、印刷欠陥も浮き欠陥もない検査画像と、印刷欠陥はないが浮き欠陥がある検査画像と、を区別可能に取得する。検査画像は、例えば256階調のグレースケール画像である。以下、説明の便宜上、印刷欠陥も浮き欠陥もない検査画像を完全検査画像と称し、印刷欠陥はないが浮き欠陥がある検査画像を不完全検査画像と称する。好ましくは、完全検査画像及び不完全検査画像は、夫々、1000枚程度用意するとよい。
【0037】
ステップS110:
次に、前処理部26は、検査画像取得部25が取得したすべての検査画像に対して所定の前処理を実施する。
図4には、前処理のフローを示している。即ち、1つの検査画像に対し、平滑化補正処理(S200)、画像切出し処理(S210)、伸縮補正処理(S220)、回転補正処理(S230)、シェーディング歪補正処理(S240)を実施する。平滑化補正処理(S200)とは、例えば、1つの画素の輝度値を周辺画素の平均値に置き換える処理であって、主として検査画像のノイズ低減を目的としている。画像切出し処理(S210)とは、ラインスキャナカメラ20のスキャン方向に複数の印刷物Pが並べられていた場合に、ラインスキャナカメラ20のスキャン方向において検査画像を切り分けるなどして、1つの検査画像に1つの印刷物Pが写るようにするための処理である。伸縮補正処理(S220)は、印刷物Pの伸縮性に起因した検査画像の歪みを補正するものであって、例えば、特開2011−76204号公報にその詳細が開示されている。回転補正処理(S230)とは、印刷物P固有の座標軸を検査画像の座標軸に一致させるための補正処理である。シェーディング歪補正処理(S240)とは、ラインスキャナカメラ20のレンズの収差や光源21による照明の向きに起因した印刷物Pの輝度のムラを補正する処理である。
【0038】
ステップS120:
次に、テンプレート画像生成部27は、基準画像としてのテンプレート画像を生成する。本実施形態において、テンプレート画像は、すべての完全検査画像の平均値画像である。従って、テンプレート画像生成部27は、画素毎に、すべての完全検査画像における輝度値の平均値を演算して、テンプレート画像における輝度値とする。
【0039】
ステップS130:
次に、差分画像生成部28は、画素毎に、検査画像における輝度値と、テンプレート画像における輝度値と、の差分から構成される差分画像を生成する。差分画像生成部28は、すべての完全検査画像に対応する差分画像を生成すると共に、すべての不完全検査画像に対応する差分画像を生成する。以降の説明において、完全検査画像に対応する差分画像を完全差分画像と称し、不完全検査画像に対応する差分画像を不完全差分画像と称する。本実施形態において、差分画像の輝度値は256階調のグレースケールで表現され、演算の便宜上、白色側にオフセットされている。即ち、差分画像生成部28は、画素毎に、差分画像における輝度値を、テンプレート画像における輝度値から検査画像における輝度値を引いた差分値に128を加えた値とする。これとは逆に、差分画像生成部28は、画素毎に、差分画像における輝度値を、検査画像における輝度値からテンプレート画像における輝度値を引いた差分値に128を加えた値としてもよい。
【0040】
ステップS140:
次に、勾配取得部30は、差分画像の特定ライン上における輝度値の勾配を取得する。以下、説明の便宜上、
図5に示すように、本実施形態における印刷物Pは、日本銀行券の千円券とする。そして、
図6及び
図7に示すように、本実施形態において特定ラインLは、例えば、印刷物Pの隅部cに描かれている数字Fと交差するように設定されている。
図6に示す例では、特定ラインLは印刷物Pの長辺に平行な方向で数字Fと交差している。
図7に示す例では、特定ラインLは印刷物Pの短辺に平行な方向で数字Fと交差している。
図6及び
図7に示す例に限らず、特定ラインLは、他の文字・図形・記号・その他の絵柄と交差するように設定してもよい。印刷物Pの隅部cは特に外周面11aから浮きやすいので、特定ラインLは印刷物Pの隅部cに設定することが好ましい。
【0041】
図8には、印刷物Pの隅部cに相当する差分画像を示している。
図8(a)は、完全差分画像の隅部cを示している。
図8(b)は、軽度の浮き欠陥が認められた印刷物Pに対応する不完全差分画像の隅部cを示している。
図8(c)は、重度の浮き欠陥が認められた印刷物Pに対応する不完全差分画像の隅部cを示している。なお、
図8(a)〜(c)は、出願人の事情により解像度を意図的に落としている。
図8(a)に示すように、完全差分画像であっても印刷機10の機差やロット違いにより、ベタ塗りの差分画像となるわけではない。
図8(b)や
図8(c)に示すように、浮き欠陥の程度により差分画像上における輝度値のバラツキが大きくなっている。
【0042】
図9に示すグラフは、
図8(a)の完全差分画像の特定ラインL上における輝度値の勾配を示している。
図10に示すグラフは、
図8(b)の不完全差分画像の特定ラインL上における輝度値の勾配を示している。
図11に示すグラフは、
図8(c)の不完全差分画像の特定ラインL上における輝度値の勾配を示している。
図9から
図11において、横軸は画素のX座標であり、縦軸は輝度値である。
図9から
図11に示すように、浮き欠陥の有無やその程度に応じて、輝度値の勾配が変化している。これは裏を返せば、差分画像の輝度値の勾配に基づいて浮き欠陥を検出可能であることを意味している。
【0043】
ステップS150:
次に、特徴量抽出部31は、輝度値の勾配の特徴量を抽出する。以下、
図12及び
図13を参照して、特徴量抽出部31の作動を詳細に説明する。
図12には、特徴量抽出部31の抽出フローを示している。
図13には、各種特徴量の抽出を図解するものである。
図13の上部に示すグラフにおいて、横軸は画素のX座標であり、縦軸は輝度値である。
図13では、特定ラインLの長さが32ピクセルであるものとし、縦軸の1マスは256階調の輝度値の単位変化分に相当している。
図13には、特定ラインLにおける輝度値の勾配を例示するために作成されたサンプルであって、
図9から
図11に示すものとは異なるものである。
【0044】
図12に示すように、特徴量抽出部31は、特徴量Aから特徴量Iまでをこの順に演算する。
【0045】
ステップS300:特徴量抽出部31は、特徴量Aとして、隣接画素間の輝度値の差分を演算する。
ステップS310:特徴量抽出部31は、特徴量Bとして、隣接画素間の輝度値の勾配の符号を演算する。
ステップS320:特徴量抽出部31は、特定ラインL上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けする。これにより、特徴量抽出部31は、特徴量Cとして、特定ラインL上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、特定ラインL上でのブロックの出現パターンを取得する。ここで、出現パターンとは、例えば、特定ラインL上で最初に出現する勾配の正負を意味している。また、特徴量抽出部31は、別の特徴量として、特定ラインL上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、特定ラインL上でのブロックそのものの数を演算する。
ステップS330:特徴量抽出部31は、特徴量Dとして、各ブロックの画素数を演算する。
ステップS340:特徴量抽出部31は、特徴量Eとして、各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の差分の累積値を演算する。
ステップS350:特徴量抽出部31は、特徴量Fとして、隣接画素間の輝度値の勾配の角度を演算する。
ステップS360:特徴量抽出部31は、特徴量Gとして、各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の勾配の角度の累積値を演算する。
ステップS370:特徴量抽出部31は、特徴量Hとして、隣接画素間の輝度値の勾配の斜辺長を演算する。この斜辺長は、隣接画素間の輝度値の勾配の角度の絶対値のアークコサインに相当している。
ステップS380:特徴量抽出部31は、特徴量Iとして、各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の勾配の斜辺長の累積値を演算する。
【0046】
ステップ160:
図3に戻り、閾値生成部32は、浮き検出部33による浮き検出に使用される閾値を生成する。具体的には、以下の通りである。
【0047】
S170:閾値生成部32は、特徴量毎に、特徴量の平均値を演算する。
S180:閾値生成部32は、特徴量毎に、特徴量の標準偏差を演算する。
S190:閾値生成部32は、機械学習における代表的な教師付き学習を用いて、特徴量毎に、完全検査画像と不完全検査画像を切り分けるための閾値を生成する。具体的には、閾値生成部32は、完全差分画像における特徴量と、不完全差分画像における特徴量を入力とし、完全差分画像と不完全差分画像とを区別して認識するための閾値を、特徴量毎に演算する。
【0048】
<欠陥検出フロー>
以下、
図14を参照して、欠陥検出フローを説明する。
【0049】
ステップS400:
先ず、検査画像取得部25は、ラインスキャナカメラ20を制御することで、外周面11aに面接触した状態で搬送される検査対象としての印刷物Pを撮像して二次元画像である検査画像を取得する。
【0050】
ステップS410:
次に、前処理部26は、検査画像取得部25が取得したすべての検査画像に対して所定の前処理を実施する。
【0051】
ステップS420:
次に、差分画像生成部28は、画素毎に、検査画像における輝度値と、テンプレート画像における輝度値と、の差分から構成される差分画像を生成する。
【0052】
ステップS430:
次に、欠陥検出部29は、差分画像に基づいて、印刷物Pの印刷欠陥を検出する。例えば差分画像の一部の輝度値が250を超えていたり5未満であるとき、印刷物Pには黒欠陥又は白欠陥があることになる。
【0053】
ステップS440:
次に、欠陥検出部29は、ステップS430にて印刷欠陥を検出した場合(S440:YES)、処理をステップS450に進める。一方、欠陥検出部29は、ステップS430にて印刷欠陥を検出しなかった場合(S440:NO)、印刷物Pに印刷欠陥がなかったと判定して(S510)、処理を終了する。
【0054】
ステップS450:
次に、勾配取得部30は、差分画像の特定ラインL上における輝度値の勾配を取得する。
【0055】
ステップS460:
次に、特徴量抽出部31は、輝度値の勾配の特徴量を抽出する。具体的には、特徴量抽出部31は、前述したように、特徴量Aから特徴量Iまでをこの順に演算する。
【0056】
ステップS470:
次に、浮き検出部33は、差分画像の特定ラインL上における輝度値の勾配に基づいて、浮き欠陥を検出する。具体的には、浮き検出部33は、差分画像の特定ラインL上における輝度値の勾配の特徴量に基づいて、浮き欠陥を検出する。更に具体的には、浮き検出部33は、特徴量毎に、差分画像の特定ラインL上における輝度値の勾配の特徴量を閾値生成部32が生成した閾値と比較することで、浮き欠陥を検出する。本実施形態において、浮き検出部33は、(1)特定ラインL上でのブロックの数、(2)特定ラインL上でのブロックの出現パターン、(3)各ブロックの画素数、(4)各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の差分の累積値、(5)各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の勾配の角度の累積値、(6)各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の勾配の斜辺長の累積値、の(1)から(6)までのうち少なくとも何れか1つ又は複数、或いは全部に基づいて、浮き欠陥を検出する。なお、上記(1)の特徴量と閾値との比較結果、上記(2)の特徴量と閾値との比較結果、・・・上記(6)の特徴量と閾値との比較結果、から成る複数の比較結果の一部又は全部をAND条件で連結するか、一部又は全部をOR条件で連結するか、については機械学習の学習結果に依る。
【0057】
ステップS480:
次に、浮き検出部33は、ステップS470にて浮き欠陥を検出した場合(S480:YES)、欠陥検出部29による印刷欠陥の検出は誤検出だったと判定して(S490)、処理を終了する。一方、浮き検出部33は、ステップS470にて浮き欠陥を検出しなかった場合(S480:NO)、印刷物Pに印刷欠陥が確かにあったと判定して(S500)、印刷機10に警告信号を出力した上で処理を終了する。
【0058】
以上に、第2実施形態を説明したが、上記第2実施形態は、以下の特徴を有する。
【0059】
検査装置12(浮き検出装置)は、検査胴11の外周面11a(搬送路)に面接触した状態で搬送される印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを検出する、印刷物Pの浮き検出装置であって、外周面11aに面接触した状態で搬送される印刷物Pを撮像して検査画像を取得する検査画像取得部25と、画素毎に、検査画像における輝度値と、基準画像における輝度値と、の差分から構成される差分画像を生成する差分画像生成部28と、差分画像の特定ラインL上における輝度値の勾配を取得する勾配取得部30と、輝度値の勾配に基づいて、印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを検出する浮き検出部33と、を備える。以上の構成によれば、検査胴11の外周面11aに面接触した状態で搬送される印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを検出することができる。
【0060】
即ち、印刷物Pが外周面11aから局所的に浮いた場合、差分画像の特定ラインL上における輝度値の勾配に特有の傾向が現れる。従って、上記の検査装置12は、極めて簡便な方法で、印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを検出することが可能となる。また、印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを検出することが可能となることで、本来であれば印刷欠陥がない印刷物Pであるのに、上記浮きが発生したことで印刷物Pに印刷欠陥があったと誤検出されてしまうことを回避できるようになる。
【0061】
また、検査装置12は、輝度値の勾配の特徴量を抽出する特徴量抽出部31を更に備える。浮き検出部33は、輝度値の勾配の特徴量に基づいて、印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを検出する。即ち、印刷物Pの浮き欠陥は、差分画像の輝度値の勾配の特徴量として検出するのが最も簡便且つ精度がよい。従って、以上の構成によれば、検査胴11の外周面11aに面接触した状態で搬送される印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを簡便に且つ精度よく検出することができる。
【0062】
また、浮き検出部33は、輝度値の勾配の特徴量を閾値と比較することで、印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを検出する。以上の構成によれば、簡素な演算で、浮き欠陥を検出できる。
【0063】
また、特徴量は、以下(1)から(6)までの少なくとも何れか1つを含む。
(1)特定ラインL上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、特定ライン上でのブロックの数、
(2)特定ラインL上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、特定ライン上でのブロックの出現パターン、
(3)特定ラインL上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、各ブロックの画素数、
(4)特定ラインL上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の差分の累積値、
(5)特定ラインL上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の勾配の角度の累積値、
(6)特定ラインL上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の勾配の斜辺長の累積値。
【0064】
また、印刷物Pの検査装置12は、外周面11aに面接触した状態で搬送される印刷物Pを撮像して検査画像を取得する検査画像取得部25と、画素毎に、検査画像における輝度値と、基準画像における輝度値と、の差分から構成される差分画像を生成する差分画像生成部28と、差分画像に基づいて、印刷物Pの印刷欠陥を検出する欠陥検出部29と、差分画像の特定ラインL上における輝度値の勾配を取得する勾配取得部30と、輝度値の勾配に基づいて、印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを検出する浮き検出部33と、を備える。欠陥検出部29が印刷欠陥を検出し、且つ、浮き検出部33が浮きを検出した場合、欠陥検出部29による検出を誤検出と見做す。以上の構成によれば、実際には印刷欠陥がないにもかかわらず印刷欠陥があったものと誤検出してしまうことを効果的に回避することができる。
【0065】
なお、本実施形態において、検査装置12は印刷機10に併設することとしたが、必ずしも検査装置12を印刷機10に併設する必要はない。即ち、検査装置12を、印刷機能を有さない印刷物搬送機に併設することとしてもよい。
【0066】
<第3実施形態>
次に、
図15を参照して、第3実施形態を説明する。
【0067】
上記第2実施形態では、搬送路の一具体例として、印刷物Pが検査胴11の外周面11aに面接触した状態で次工程へ搬送されるものとした。しかし、これに代えて、本実施形態では、搬送路の他の具体例として、印刷物Pは平坦な搬送ベルト13に面接触した状態で次工程へ搬送される。以上の構成によっても、浮き検出部33は、問題なく、輝度値の勾配に基づいて、印刷物Pの搬送ベルト13からの局所的な浮きを検出することができる。
【0068】
上記第2及び第3実施形態において、印刷物Pとして日本銀行券の千円券を用いて説明したが、印刷物Pは、国債券や証券、商品券、その他の金券、各種帳票類等印刷物であってもよい。
【0069】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0070】
(付記1)
搬送路に面接触した状態で搬送される印刷物の前記搬送路からの局所的な浮きを検出する、印刷物の浮き検出装置であって、
前記搬送路に面接触した状態で搬送される前記印刷物を撮像して検査画像を取得する検査画像取得部と、
画素毎に、前記検査画像における輝度値と、基準画像における輝度値と、の差分から構成される差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記差分画像の特定ライン上における輝度値の勾配を取得する勾配取得部と、
前記輝度値の勾配に基づいて、前記印刷物の前記搬送路からの局所的な浮きを検出する浮き検出部と、
を備える、
浮き検出装置。
【0071】
(付記2)
付記1に記載の浮き検出装置であって、
前記輝度値の勾配の特徴量を抽出する特徴量抽出部を更に備え、
前記浮き検出部は、前記輝度値の勾配の特徴量に基づいて、前記印刷物の前記搬送路からの局所的な浮きを検出する、
浮き検出装置。
【0072】
(付記3)
付記2に記載の浮き検出装置であって、
前記浮き検出部は、前記輝度値の勾配の特徴量を閾値と比較することで、前記印刷物の前記搬送路からの局所的な浮きを検出する、
浮き検出装置。
【0073】
(付記4)
付記2又は3に記載の浮き検出装置であって、
前記特徴量は、以下(1)から(6)までの少なくとも何れか1つを含む、
浮き検出装置。
(1)前記特定ライン上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、前記特定ライン上でのブロックの数、
(2)前記特定ライン上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、前記特定ライン上でのブロックの出現パターン、
(3)前記特定ライン上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、各ブロックの画素数、
(4)前記特定ライン上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の差分の累積値、
(5)前記特定ライン上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の勾配の角度の累積値、
(6)前記特定ライン上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の勾配の斜辺長の累積値。
【0074】
(付記5)
搬送路に面接触した状態で搬送される印刷物の前記搬送路からの局所的な浮きを検出する、印刷物の浮き検出方法であって、
前記搬送路に面接触した状態で搬送される前記印刷物を撮像して検査画像を取得する検査画像取得ステップと、
画素毎に、前記検査画像における輝度値と、基準画像における輝度値と、の差分から構成される差分画像を生成する差分画像生成ステップと、
前記差分画像の特定ライン上における輝度値の勾配を取得する勾配取得ステップと、
前記輝度値の勾配に基づいて、前記印刷物の前記搬送路からの局所的な浮きを検出する浮き検出ステップと、
を含む、
浮き検出方法。
【0075】
(付記6)
付記5に記載の浮き検出方法であって、
前記輝度値の勾配の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップを更に含み、
前記浮き検出ステップでは、前記輝度値の勾配の特徴量に基づいて、前記印刷物の前記搬送路からの局所的な浮きを検出する、
浮き検出方法。
【0076】
(付記7)
付記6に記載の浮き検出方法であって、
前記浮き検出ステップでは、前記輝度値の勾配の特徴量を閾値と比較することで、前記印刷物の前記搬送路からの局所的な浮きを検出する、
浮き検出方法。
【0077】
(付記8)
付記6又は7に記載の浮き検出方法であって、
前記特徴量は、以下(1)から(6)までの少なくとも何れか1つを含む、
浮き検出方法。
(1)前記特定ライン上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、前記特定ライン上でのブロックの数、
(2)前記特定ライン上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、前記特定ライン上でのブロックの出現パターン、
(3)前記特定ライン上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、各ブロックの画素数、
(4)前記特定ライン上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の差分の累積値、
(5)前記特定ライン上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の勾配の角度の累積値、
(6)前記特定ライン上における複数の画素を、各画素における輝度値の勾配の正負に基づいてブロック分けして得られる、各ブロックにおける隣接画素間の輝度値の勾配の斜辺長の累積値。
【0078】
(付記9)
コンピュータに、
付記5から8までの何れかに記載の浮き検出方法を実行させるためのプログラム。
【0079】
(付記10)
搬送路に面接触した状態で搬送される印刷物を撮像して検査画像を取得する検査画像取得部と、
画素毎に、前記検査画像における輝度値と、基準画像における輝度値と、の差分から構成される差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記差分画像に基づいて、前記印刷物の印刷欠陥を検出する欠陥検出部と、
前記差分画像の特定ライン上における輝度値の勾配を取得する勾配取得部と、
前記輝度値の勾配に基づいて、前記印刷物の前記搬送路からの局所的な浮きを検出する浮き検出部と、
を備え、
前記欠陥検出部が前記印刷欠陥を検出し、且つ、前記浮き検出部が前記浮きを検出した場合、前記欠陥検出部による前記検出を誤検出と見做す、
印刷物の検査装置。
【0080】
(付記11)
搬送路に面接触した状態で搬送される印刷物を撮像して検査画像を取得する検査画像取得ステップと、
画素毎に、前記検査画像における輝度値と、基準画像における輝度値と、の差分から構成される差分画像を生成する差分画像生成ステップと、
前記差分画像に基づいて、前記印刷物の印刷欠陥を検出する欠陥検出ステップと、
前記差分画像の特定ライン上における輝度値の勾配を取得する勾配取得ステップと、
前記輝度値の勾配に基づいて、前記印刷物の前記搬送路からの局所的な浮きを検出する浮き検出ステップと、
を含み、
前記欠陥検出ステップにおいて前記印刷欠陥を検出し、且つ、前記浮き検出ステップにおいて前記浮きを検出した場合、前記欠陥検出ステップにおける前記検出を誤検出と見做す、
印刷物の検査方法。
【解決手段】検査装置12は、検査胴11の外周面11aに面接触した状態で搬送される印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを検出する、印刷物Pの浮き検出装置であって、外周面11aに面接触した状態で搬送される印刷物Pを撮像して検査画像を取得する検査画像取得部25と、画素毎に、検査画像における輝度値と、基準画像における輝度値と、の差分から構成される差分画像を生成する差分画像生成部28と、差分画像の特定ラインL上における輝度値の勾配を取得する勾配取得部30と、輝度値の勾配に基づいて、印刷物Pの外周面11aからの局所的な浮きを検出する浮き検出部33と、を備える。