【実施例】
【0038】
以下に実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「重量%」及び「重量部」を示す。
【0039】
(実施例1)
PPTA(分子量約20,000)1kgを4kgの濃硫酸に溶解し、直径0.1mmのホールを1000個有する口金からせん断速度30,000sec
−1となるよう吐出し、4℃の水中に紡糸した後、10%の水酸化ナトリウム水溶液で、10℃×15秒の条件で中和処理し、その後、110℃×15秒間熱処理をして、水分率35%のPPTA繊維(水分率0%換算のとき総繊度1,670dtex)を調製した。
【0040】
このPPTA繊維に、硬化性エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテルを40部、相溶化剤としてジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル60部を含有する薬剤原液を付与し、硬化性エポキシ化合物と相溶化剤をPPTA繊維に浸透・含浸させた後、ボビンに巻き取り、PPTA繊維複合体を製造した。含浸量(対絶乾繊維重量換算)は、硬化性エポキシ化合物が0.4%、相溶化剤が0.6%であった。
【0041】
得られたPPTA繊維複合体をロービングカッターで6mmに切断した。この含水PPTA繊維複合体短繊維の乾燥重量として200gを、60kgのイオン交換水に分散させ、シングルディスクリファイナーを用い3000rpmの条件でフィブリル化し、PPTA繊維複合体パルプを得た。JIS P8121−2号の方法により測定したパルプのろ水度は770mLであった。
【0042】
こうして得られた含水PPTA繊維複合体パルプの乾燥重量として25gを、パルプ離解装置を用いて3000rpmで4リットルの水に分散させ、次いで25cm角の角型シートマシーンにより、♯80メッシュの金網を用いて、常法に従って抄紙を行い、その後乾燥して25cm角、単位重量400g/m
2 のパラアラミド紙を得た。
【0043】
次に、得られたパラアラミド紙を、レゾール型フェノール樹脂プレポリマーを等量のメタノールで希釈した樹脂液に浸漬させて、樹脂液を含浸させた後、60℃で20分間乾燥してプリプレグを得た。プリプレグを更に12.5cm角4枚に切り分け、1枚はそのまま、残り3枚は積層し、165℃、25MPaの加圧下で10分間処理し、硬化させ、0.6mmおよび1.8mm厚の12.5cm角のアラミドパルプ強化フェノール樹脂プレートを作成した。
【0044】
こうして得られた0.6mmのプレートからJIS K7162に記載の1BB引張試験片、1.8mmのプレートからJIS K7162に記載の曲げ試験片を切り出した。
【0045】
(実施例2)
相溶化剤を用いず、また、硬化性エポキシ化合物としてグリセロールポリグリシジルエーテル100部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、PPTA繊維複合体を製造した。硬化性エポキシ化合物の含浸量(対絶乾繊維重量換算)は1.0%であった。このPPTA繊維複合体を用い、実施例1と同様の方法でPPTA繊維複合体パルプを得た。
実施例1で得たPPTA繊維複合体パルプの代わりに、上記で得たPPTA繊維複合体パルプを用いた他は、実施例1と同様の方法で試験片を得た。
【0046】
(実施例3)
相溶化剤を用いず、また、硬化性エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテル100部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、PPTA繊維複合体を製造した。硬化性エポキシ化合物の含浸量(対絶乾繊維重量換算)は1.0%であった。このPPTA繊維複合体を用い、実施例1と同様の方法でPPTA繊維複合体パルプを得た。
実施例1で得たPPTA繊維複合体パルプの代わりに、上記で得たPPTA繊維複合体パルプを用いた他は、実施例1と同様の方法で試験片を得た。
【0047】
(実施例4)
硬化性エポキシ化合物としてグリセロールポリグリシジルエーテル100部、相溶化剤としてジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル150部を含有する薬剤原液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、PPTA繊維複合体を製造した。硬化性エポキシ化合物の含浸量(対絶乾繊維重量換算)は1.0%、相溶化剤は1.5%であった。このPPTA繊維複合体を用い、実施例1と同様の方法でPPTA繊維複合体パルプを得た。
実施例1で得たPPTA繊維複合体パルプの代わりに、上記で得たPPTA繊維複合体パルプを用いた他は、実施例1と同様の方法で試験片を得た。
【0048】
(比較例1)
硬化性エポキシ化合物および相溶化剤を付与しない以外は、実施例1で調製した水分率35%のPPTA繊維(水分率0%換算のとき総繊度1,670dtex)を用い、実施例1と同様の方法でPPTA繊維パルプを得た。
実施例1で得たPPTA繊維複合体パルプの代わりに、上記で得た
PPTA繊維パルプを用いた他は、実施例1と同様の方法で試験片を得た。
【0049】
(比較例2)
実施例1で得られた6mmの含水PPTA繊維複合体短繊維を、シングルディスクリファイナーでフィブリル化することなくそのまま実施例1と同様の方法で抄紙した紙は紙力が弱く、樹脂含浸後の乾燥時に亀裂が発生し、プリプレグを作成することができなかった。
【0050】
(比較例3)
PPTA(分子量約20,000)1kgを4kgの濃硫酸に溶解し、直径0.1mmのホールを1000個有する口金からせん断速度30,000sec
−1となるよう吐出し、4℃の水中に紡糸した後、10%の水酸化ナトリウム水溶液で、10℃×15秒の条件で中和処理し、その後、200℃×15秒間熱処理をして、水分率7%のPPTA繊維(水分率0%換算のとき総繊度1,670dtex)を調製した。
このPPTA繊維に実施例1と同様の方法で硬化性エポキシ並びに相溶化剤を付与した後、実施例1と同様の方法でPPT繊維複合体パルプを得た。更に実施例1と同様の方法で試験片を得た。
【0051】
<評価試験>
(1)水分率;試料約5gの重量を測定し、300℃×20分間の熱処理を行い、25℃、65%RHで5分間放置した後、再度重量を測定する。ここで使う水分率は[乾燥前重量−乾燥後重量]/[乾燥後重量]で得られるドライベース水分率である。
【0052】
(2)ろ水度;JIS−P8121−2号(パルプのカナダ標準ろ水度(Canadian Standard Freeness 又は CSF)により測定した。
【0053】
(3)重量平均繊維長;Op Test Equipment(CANADA)社製 HiRes Fiber Quality Analyzer により測定した。
【0054】
(4)引張強さ、引張破断伸び、曲げ強さ、曲げ弾性率;
作製した試験片を用い、JIS K7162号の方法により引張強さ、引張破断伸び、JIS K7017号の方法により曲げ強さ、曲げ弾性率を測定した。
【0055】
上記の実施例1〜4および比較例1で得たパルプ及び試験片について、上記の評価試験により評価した結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1より、本発明のPPTA繊維複合体パルプは、比較例1および比較例3のパルプに比べて、アラミドパルプ強化フェノール樹脂の引張強さ、曲げ強さおよび曲げ弾性率が優れていたことより、耐熱性、機械的強度および耐久性に優れる原料となり得ることがわかる。