【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (学術研究集会名)電子情報通信学会SR研究会 (発表者) 水谷 圭一、原田 博司 (発表日) 平成25年10月17日 (学術研究集会名)電子情報通信学会SR研究会 (発表者) 水谷 圭一、松村 武、石津 健太郎、藍 洲、村上 誉、原田 博司 (発表日) 平成26年2月24日 (ウェブサイトのアドレス)http://search.ieice.org/bin/summary.php?id=e97−b_4_875 (公開者) 水谷 圭一、藍 洲、原田 博司 (掲載日) 平成26年4月1日 (学術研究集会名) IEEE WCNC 2014 (公開者) 水谷 圭一、原田 博司 (発表日) 平成26年4月7日
【文献】
Keiichi Mizutani et al. ,Windowing pulse shaping for IEEE 802.15.4m NB-OFDM,IEEE 802.15-13-0031-03-004m,IEEE,2013年 1月15日,Slides 1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記送信電力上限値パラメータテーブルは、時間軸ウィンドウイング処理の種類、OFDM変調方式、任意のスペクトラムマスク規定、ディジタル帯域制限フィルタやRF回路の特性を含むハードウェア性能、OFDM通信の規格のうち何れか1以上からなる条件項目からなる通信条件毎に記憶されていること
を特徴とする請求項1記載のOFDM信号送信装置。
上記スループットパラメータテーブルは、時間軸ウィンドウイング処理の種類、OFDM変調方式、チャネルの符号化の種別、符号化率、ガードインターバル長、OFDM通信の規格のうち何れか1以上からなる条件項目からなる通信条件毎に記憶されていること
を特徴とする請求項1又は2記載のOFDM信号送信装置。
OFDM信号の冒頭に付加されるプリアンブルに対して設定した時間軸ウィンドウイングの種類、時間軸ウィンドウイング長、帯域制限フィルタの種類、帯域制限フィルタの応答のいずれか1以上を事前に受信装置側に通知する通知手段を備えること
を特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項記載のOFDM信号送信装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態として、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式の信号を送信するOFDM信号送信装置について、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0019】
図1は、本発明を適用したOFDM信号送信装置1が適用されるOFDM通信システム10のブロック構成を示している。OFDM通信システム10では、このOFDM信号送信装置1に加え、当該OFDM信号送信装置1から送信されたOFDM信号を受信するOFDM信号受信装置2とを有している。
【0020】
OFDM信号送信装置1は、送信信号データが供給される変調・符号化処理部11と、変調・符号化処理部11に接続されたOFDM信号生成部20と、OFDM信号生成部20に接続された時間軸ウィンドウイング処理部12と、時間軸ウィンドウイング処理部12に接続された帯域制限フィルタ13と、パラメータテーブル格納部17と、時間軸ウィンドウイング処理部12、パラメータテーブル格納部17に接続される通信条件選択部19と、パラメータテーブル格納部17に接続されている条件取得部18とを備えている。
【0021】
また、このOFDM信号送信装置1は、OFDM信号の同期用プリアンブル部分が供給される同期パラメータ設定部15及び時間軸ウィンドウイング処理部16と、これに接続される帯域制限フィルタ31とを備え、さらに帯域制限フィルタ13、31に接続されるシンボル連結処理部14とを備えている。
【0022】
また、このOFDM信号送信装置1は、送信信号データ部分と同期用プリアンブル部分がシンボル連結されたOFDM信号の送信電力を制御する、送信電力制御部32とを備えている。この送信電力制御部32は、変調・符号化処理部11と、シンボル連結処理部14とに接続されている。
【0023】
OFDM信号受信装置2は、OFDM信号送信装置1からOFDM信号が送信されてくる同期検出部21と、同期検出部21に接続されるOFDM復調部22と、OFDM復調部22に接続される復調・復号処理部23とを備えている。
【0024】
変調・符号化処理部11は、パラメータテーブル格納部17に格納されているスループットパラメータテーブル、送信電力パラメータテーブルの情報を参照した上で、送信信号データについて、誤り訂正符号化及び変調を施す。この変調・符号化処理部11は、符号化および変調を経て生成された送信信号データをOFDM信号生成部20へ出力する。
【0025】
OFDM信号生成部20は、変調・符号化処理部11から送信されてくる送信信号データに基づいてOFDM信号を生成する。このOFDM信号生成部20は、OFDM信号の生成に必要なサブキャリアデータを生成する。OFDM信号生成部20は、生成されたサブキャリアデータに対して逆フーリエ変換を行い、直交周波数分割多重化し、またガードインターバル(GI)を付加することで、OFDMデータシンボルを生成する。OFDM信号生成部20は、生成したOFDM信号を時間軸ウィンドウイング処理部12へと送信する。
【0026】
条件取得部18は、このOFDM信号送信装置1により、これから送信しようとするOFDM信号において必須となる(通信システムの規格、ディジタル帯域制限フィルタやRF回路の特性を含むハードウェア性能、および任意のスペクトラムマスク規定等の)環境として与えられる条件項目、および要求されるスペクトラムマスク規定に対する設計マージン項目を取得する。この条件項目は、通信システムの規格、ディジタル帯域制限フィルタやRF回路の特性を含むハードウェア性能、および任意のスペクトラムマスク規定等の何れか1以上であってもよい。この取得の方法としては、直接手入力を行うようにしてもよいし、インターネット等の公衆通信網から取得するようにしてもよい。また、予めかかる条件が条件取得部18において入力された状態となっていてもよい。条件取得部18は、取得した条件項目に関する情報を通信条件選択部19へ送信する。
【0027】
通信条件選択部19は、パラメータテーブル格納部17に記憶されている、通信条件毎の時間軸ウィンドウイング長に対するスループットの関係の中から、何れか1の通信条件を選択する。通信条件選択部19は、この通信条件の選択時において条件取得部18において取得された必須の条件項目、および条件取得部18において取得された必須の条件項目の基で、最大のスループットを達成できる通信条件を選択する。通信条件選択部19は、選択した通信条件のうち、誤り訂正符号の種類、符号化率、変調方式の何れか1以上をOFDM信号受信装置2側における復調・復号処理部23へ送信する。また通信条件選択部19は、選択した通信条件の時間軸ウィンドウイング長を時間軸ウィンドウイング処理部12へ通知する。また通信条件選択部19は、選択した通信条件のうち、送信電力値を送信電力制御部32へ通知する。
【0028】
時間軸ウィンドウイング処理部12は、OFDM信号生成部20から送信されてくるOFDM信号について、通信条件選択部19において選択された通信条件に応じた時間軸ウィンドウイング長で時間軸ウィンドウイング処理を施す。この時間軸ウィンドウイング処理部12において実行される時間軸ウィンドウイング処理の詳細は、後段において詳述する。時間軸ウィンドウイング処理部12は、このウィンドウイング処理したOFDM信号を帯域制限フィルタ13へ出力する。
【0029】
帯域制限フィルタ13は、時間軸ウィンドウイング処理部12からのOFDM信号を構成するOFDMシンボルに帯域制限フィルタなどの送信ディジタルフィルタ処理を施す。
【0030】
送信電力パラメータテーブルは、(通信システムの規格、ディジタル帯域制限フィルタやRF回路の特性を含むハードウェア性能、および任意のスペクトラムマスク規定等の何れか1以上)環境として与えられる条件項目、および要求されるスペクトラムマスク規定に対する設計マージン項目という条件の基で、時間軸ウィンドウイング処理を施すための時間軸ウィンドウイング長に対する最大送信電力もしくは送信帯域内における送信信号のPSDの最大値に相当する帯域内最大送信PSDの関係が条件項目毎に予め記憶されているハードディスク、メモリ等、もしくは上記関係を算出できるプログラムである。
【0031】
スループットパラメータテーブルは、パラメータテーブル格納部17から与えられる最大送信電力もしくは帯域内最大送信PSDの基で、時間軸ウィンドウイング処理を施すための時間軸ウィンドウイング長に対するスループットの関係が通信条件毎に予め記憶されているハードディスク、メモリ等、もしくは上記関係を算出できるプログラムである。
【0032】
時間軸ウィンドウイング処理部16は、OFDM信号を構成するプリアンブル部分に対して任意の時間軸ウィンドウイング処理を施す。ちなみに、時間軸ウィンドウイング処理部16は、このような時間軸ウィンドウイング処理を行う代わりに、例えばプリアンブル部分のみ対して帯域制限フィルタを通過させるようにしてもよい。時間軸ウィンドウイング処理部16は、このような処理を施したOFDM信号のプリアンブル部分のデータシンボルをシンボル連結処理部14へと送信する。また、時間軸ウィンドウイング処理部16は、プリアンブル部に対して実行した時間軸ウィンドウイング処理における時間軸ウィンドウイング長や、帯域制限フィルタに関する情報を同期パラメータ設定部15へ通知する。
【0033】
同期パラメータ設定部15は、OFDM信号のプリアンブル部分に付される、同期を取るためのパラメータを抽出する。この同期パラメータ設定部15は、時間軸ウィンドウイング処理部16から通知された時間軸ウィンドウイング長や、帯域制限フィルタに関する情報を抽出する。同期パラメータ設定部15は、これら同期を取るためのパラメータや時間軸ウィンドウイング長や、帯域制限フィルタに関する情報をOFDM信号受信装置2における同期検出部21へ報知する。この報知の方法としては、例えば無線信号を送信するようにしてもよい。
【0034】
また時間軸ウィンドウイング長や、帯域制限フィルタに関する情報は、同期パラメータ設定部15において抽出したものをOFDM信号受信装置2側に報知する以外に、例えばOFDM信号送信装置1側において設定するこれらの情報を、OFDM信号受信装置2側において予め設定しておくようにしてもよい。これにより情報を報知することなく、OFDM信号送信装置1側で設定したプリアンブル部分に関する情報を予めOFDM信号受信装置2側において持たせることが可能となる。
【0035】
帯域制限フィルタ31は、時間軸ウィンドウイング処理部16からのOFDM信号を構成するプリアンブル部分に帯域制限フィルタなどの送信ディジタルフィルタ処理を施す。
【0036】
シンボル連結処理部14は、帯域制限フィルタ13から出力されてくるOFDM信号の実データ部分と、帯域制限フィルタ31から出力されてくる、OFDM信号のプリアンブル部分とを互いに連結処理する。
【0037】
送信電力制御部は、シンボル連結処理部14から出力されてくるOFDM信号の送信電力を、通信条件選択部19において選択された送信電力値に基づいて制御する。送信電力制御部は、この送信電力制御されたOFDM信号を、無線送信する。
【0038】
なおOFDM信号送信装置1は、上述した構成以外にも、OFDM信号の送信に必要な図示しない一般的な回路、ブロックを備えている。
【0039】
OFDM信号受信装置2は、送信電力制御部32から送信されてくるOFDM信号を受信し、同期を取るための処理を行う。このとき同期検出部21には、同期パラメータ設定部15から同期を取るためのパラメータが報知されるため、これに基づいて同期を取ることが可能となる。また同期検出部21には、同期パラメータ設定部15から、プリアンブル部分における時間軸ウィンドウイング長や、帯域制限フィルタに関する情報が通知されている場合には、同期をとる上でこれらの情報を参照する。またプリアンブル部分について、その通知されている時間軸ウィンドウイング長に基づいて復調等も行うことが可能となる。
【0040】
OFDM復調部22は、同期検出部21で検知された同期情報に基づき、フレーム同期および周波数同期、GI除去を行い、フーリエ変換によりサブキャリア信号に変換する。このサブキャリア信号に伝送路等化を施し、復調・復号処理部23へ送信する。
【0041】
復調・復号処理部23は、伝送路等化されたサブキャリア信号について復調および誤り訂正復号処理を行う。なお、復調・復号処理部23は、例えばBPSKやQPSK等、他のいかなる変調方式であってもよいし、ブロック畳込み符号化等、他のいかなる符号化方式であってもよい。この復調・復号処理部23は、通信条件選択部19において選択された通信条件に基づいて復調、復号を行う。復調・復号処理部23による復調、復号処理を経て、受信信号データが得られる。
【0042】
なおOFDM信号受信装置2は、上述した構成以外にも、OFDM信号の受信に必要な図示しない一般的な回路、ブロックを備えている。
【0043】
次に、本発明を適用したOFDM信号送信装置1の動作について説明をする。本発明を適用したOFDM信号送信装置1では、例えば一時的あるいは継続的に一次利用者が不使用状態にあるTVホワイトスペース又はホワイトスペースを二次利用者が有効活用するための、IEEE802.15.4m、IEEE802.11.af、IEEE802.22/22b等の規格に基づいてOFDM信号を送信する。但し、このOFDM信号送信装置1は、このようなホワイトスペースを二次利用者が利用する場合に限定されるものではなく、それ以外の通常のOFDM通信においても適用可能であることは勿論である。
【0044】
図2は、OFDM信号送信装置1において実際に送信すべきOFDM信号を生成するためのフローチャートを示している。このOFDMの生成フローは、大きく分類してステップS11〜S14までの周波数領域と、ステップS14〜S19に至るまでの時間領域に分けられる。また、
図3は、本発明を適用したOFDM信号送信装置1の動作について説明するためのフロー図である。
【0045】
先ずステップS11において、送信信号データについて直−並列変換を行った後、ステップS12においてチャネルコーディングを行う。このチャネルコーディングは、主として変調・符号化処理部11において行われる誤り訂正のチャネル符号化処理に相当する。次にステップS13へ移行して、入力されたデータ系列に対して畳み込みインタリーブ処理等を行う。次にステップS14へ移行し、OFDMシンボル単位で一括して逆フーリエ変換し、時間領域のベースバンドのOFDM信号を生成する。即ち、ステップS14において周波数領域から時間領域へシフトすることとなる。ちなみに、このステップS13、S14の処理は、それぞれOFDM信号生成部20において行われる。
【0046】
次にステップS15へ移行し、並−直列変換を行った後、ステップS16へ移行してOFDM信号に対しガードインターバルを付加する。これにより、マルチパスフェージングに耐性を持たせることが可能となる。
【0047】
次にステップS17へ移行し、時間軸ウィンドウイング処理部12によりシンボル間の不連続性を低減するための時間軸ウィンドウイング処理を施す。次にステップS18において、時間軸ウィンドウイング処理が行われたOFDM信号について、帯域制限フィルタ13によるフィルタリング処理を行い、最後にディジタルアナログ(D/A)変換処理を行う(ステップS19)。
【0048】
図4は、ステップS16について行う時間軸ウィンドウイング処理について説明するための図である。横軸を時間軸としたとき、この時間軸のOFDM信号は、
図4(a)に示すように、ステップS16において付された期間T
Gからなるガードインターバルと、OFDM信号に相当する期間T
Fのシンボルとから構成される。またガードインターバルも含めたOFDMのシンボル長をTsとする。このガードインターバルの期間T
Gを中心とした時間帯は、OFDM信号における後半のシンボルをコピーすることで構成される。
【0049】
ところで、このOFDM信号は、あくまでそのシンボル内では連続信号として構成されるものの、シンボル間の境界は、不連続点が生じる。この不連続点には、多くの周波数成分が含まれるため、帯域外において不要な輻射成分を発生させる。そこでシンボル間の境界に生じる不連続点に対して時間軸ウィンドウイング処理を施すことにより、信号波形を平滑化し、不要な帯域外輻射を抑圧することをステップS16において行う。
【0050】
この時間軸ウィンドウイング関数を導入した第mシンボルのOFDM時間軸送信信号;x
m(t)を以下の(1)式に示す。
【0052】
ここでX
nmは第mシンボルのn番目のサブキャリア信号、Δf=fs/Nはサブキャリア間隔(Fsはサンプリング周波数、Nは全サブキャリア数)、Lはオーバーサンプリングの倍数である。
【0053】
またw(t)は、シンボル端における不連続点を平滑化するための時間軸ウィンドウイング関数である。このw(t)は、例えばIEEE802.11a/g/n等で一般的に用いられる時間軸ウィンドウイング関数として、以下の(2)式に示すレイズドコサインウィンドウ等で具体化される。ちなみにT
TRはウィンドウイング長である。
【0055】
このようなウィンドウイング関数;w(t)を
図4(b)の時間軸にも反映させている。OFDMシンボル間の境界において、ウィンドウイング関数;w(t)が曲線状に傾斜しているのが示されている。OFDM信号に対してこのようなウィンドウイング関数;w(t)を乗じた状態を
図4(c)に示す。このようなウィンドウイング関数;w(t)が乗じられた、隣接する他の第m−1シンボル及び第m+1シンボルのOFDM信号と組み合わせた状態を
図4(d)に示す。
【0056】
この
図4における時間軸ウィンドウイング長は、実際に上述したウィンドウイング関数;w(t)に基づいてウィンドウイングを施す時間に相当するものである。この時間軸ウィンドウイング長が長いほどウィンドウイング関数;w(t)によりウィンドウイングが施される時間帯が長くなる。そしてウィンドウイング関数;w(t)の形状は、傾斜がその分緩やかになる。これに対して、時間軸ウィンドウイング長が短いほどウィンドウイング関数;w(t)によりウィンドウイングが施される時間帯が短くなり、ウィンドウイング関数;w(t)の形状は、傾斜がその分急峻になる。
【0057】
図5は、時間軸ウィンドウイング処理後のIEEE802.11.af規格に基づいたOFDM信号の、送信スペクトラムを示している。横軸を中心周波数からの偏差とし、縦軸を最大値からの相対値量で規定されるPSD、以下、相対値PSD(dBr/100kHz)を示している。
【0058】
図5に示すように、ウィンドウイング長;T
TRが長くなるにつれてスペクトラムマスクに対する帯域外輻射が小さくなることが分かる。時間軸ウィンドウイング処理を全く施さない場合(T
TR=0μs)の場合には、帯域外においてスペクトラムマスクを超える周波数成分が非常に大きいのに対して、時間軸ウィンドウイング処理をある程度施した場合(T
TR=1.5μs)には、OFDM信号の帯域外の輻射電力が抑圧される。更にこの時間軸ウィンドウイング長を長くすると(T
TR=6.0μs)、OFDM信号の帯域外の輻射電力が更に抑圧される。この
図5の例では、時間軸ウィンドウイング長;T
TRを6.0μsとした場合に、スペクトラムマスクを満足することが可能となる上、要求されるスペクトラムマスク規定に対する10dB以上の設計マージンを確保出来ることが示されている。
【0059】
特にホワイトスペースにおける二次利用者の無線通信においては、一次利用者への干渉を防ぐために、送信スペクトラムマスクの条件も厳しいものとなるが、かかる条件を満足するような時間軸ウィンドウイング長を探索することとなる。
【0060】
図6は、IEEE802.11.af規格に基づいたOFDM信号の時間軸ウィンドウイング長;T
TRに対する、帯域端部における相対値PSD、以下、相対値帯域端部PSD;P
oob(dBr/100kHz)、およびスペクトラムマスクに対するマージン;P
m(dB)の関係を示している。時間軸ウィンドウイング長;T
TRを長くするにつれて、相対値帯域端部PSD;P
oobが低下し、スペクトラムマスクに対するマージン;P
mが増加していく傾向が示されている。このため、一見すれば、この時間軸ウィンドウイング長T
TRを長くするほど、帯域外に輻射してしまう電力を効果的に抑制することが可能となることが示されている。
【0061】
一方、
図7は、IEEE802.11.af規格に基づいたOFDM信号の時間軸ウィンドウイング長(T
TR)に対するスループットの関係を示している。ちなみに、この
図7に示される傾向は、変調方式が16QAMであり、ブロック畳込み符号化及び軟判定ビタビ符号化とした場合における一例である。この
図7に示すようにブロック畳込み符号化を行わない場合には、時間軸ウィンドウイング長;T
TRがガードインターバル長;T
Gを超えた場合にはスループットが急激に低下する。その理由としては、ガードインターバルを超えるOFDMシンボルが、この時間軸ウィンドウイング処理により、復調に必要な時間軸信号が削られるため、復元が困難になるため、その分スループットが低くなってしまうためである。
【0062】
しかしながら、ブロック畳込み符号化を行った場合、時間軸ウィンドウイング長;T
TRがガードインターバル長;T
Gを超える場合であっても、符号化率を変えることにより、スループットの劣化に対する耐性を強くすることが可能となる。例えば符号化率を5/6とした場合、時間軸ウィンドウイング長;T
TRが15μs以内においてスループットが低下することなくほぼ一定であるのに対して、これが15μsを超えると急激にスループットの劣化が始まる。同様に、符号化率を3/4とした場合、時間軸ウィンドウイング長;T
TRが16μs以内においてスループットが低下することなくほぼ一定であるのに対して、これが16μsを超えると急激にスループットの劣化が始まる。以下、符号化率を下げるに従い、スループットの劣化が始まる時間軸ウィンドウイング長;T
TRが長くなることが分かる。一方、符号化率が下がるにつれて、最大スループット自体は低下するが、多少送信時間が長くなっても、厳しいスペクトラムマスクにおける帯域外輻射の条件を満たすことができ、かつスループットの劣化を防ぐことでより確実な信号の復調が可能となる。
【0063】
このように本発明では、時間軸ウィンドウイング長;T
TRがガードインターバル長;T
Gを超える場合であっても、符号化率を変えることにより、スループットの劣化に対する耐性を強くすることが可能となる事を示している。但し、基本的には時間軸ウィンドウイング処理による帯域外輻射電力抑圧性能、すなわち相対値帯域端部PSD;P
oobと、スループットとの間にはトレード・オフの関係があるため、より効率的なシステム設計のためには時間軸ウィンドウイング処理による帯域外輻射電力抑圧性能(相対値帯域端部PSD;P
oob)と、スループットとの関係を紐付ける必要がある。
【0064】
ところで、例えばFCCのTVホワイトスペースにおける二次利用者に対する送信スペクトラムマスク規定は表1に示す通り、デバイスの種類に応じて、帯域内送信電力上限値(dBm/6MHz)、帯域内送信PSD上限値;P
txmask(dBm/100kHz)、帯域外送信PSD上限値;P
edgemask(dBm/100kHz)が全て絶対値で規定されている。
【0066】
例えば、FCCの可搬型デバイス2用スペクトラムマスク規定では、帯域内送信電力上限値は30dBm/6MHz、帯域内送信PSD上限値はP
txmask=2.6dBm/100kHz、帯域外送信PSD上限値はP
edgemask=−52.8dBm/100kHzとされている。
【0067】
したがって、実際に送信するOFDM信号の、絶対値で規定される帯域内の最大送信PSD、以下、絶対値帯域内最大PSDをP
txmax(dBm/100kHz)、絶対値で規定される帯域端部の送信PSD、以下、絶対値帯域端部PSDをP
edge(dBm/100kHz)とすると、例えば、絶対値帯域内最大PSD;P
txmaxを設定し得る上限値である帯域内送信PSD上限値;P
txmaskに設定したとき、ある時間軸ウィンドウイング長;T
TRによる時間軸ウィンドウイング処理における相対値帯域端部PSD;P
oobでは、要求される送信スペクトラムマスク規定における帯域外送信PSD上限値;P
edgemaskと、この要求される送信スペクトラムマスクに対する設計マージン;P
mR(dB)とにより決定される、帯域端部において満たすべき絶対値で規定される設計最大PSD、以下、絶対値帯域端部最大PSD;P
edgemax=P
edgemask−P
mR(dBm/100kHz)を満足できない場合、すなわちP
edge=P
txmax+P
oob>P
edgemaxとなってしまう場合、送信信号全体の電力を低減することでもこれを満たすことができる。
【0068】
図8は、FCCのTVホワイトスペースにおける二次利用者(可搬型デバイス2)に対して絶対値で規定される送信スペクトラムマスクと、時間軸ウィンドウイング処理後のIEEE802.11.af規格に基づいたOFDM信号の、送信信号スペクトラムを示している。横軸を中心周波数からの偏差とし、縦軸は絶対値で定義されるPSD、以下、絶対値PSD(dBm/100kHz)を示している。
【0069】
例えば設計マージンをP
mR=10dBとすると、帯域内において、P
txmask=2.6dBm/100kHz以下となるP
txmaxと、帯域端部において、P
edgemax=P
edgemask−P
mR=−52.8−10=−62.8dBm/100kHz以下となるP
edge、とを併せ持つOFDM信号を生成する必要がある。
【0070】
時間軸ウィンドウイング処理を行わない場合、つまり時間軸ウィンドウイング長;T
TR=0usの場合、相対値帯域端部PSD;P
oobは約−25dBr/100kHzである。したがって、FCCの可搬型デバイス2用スペクトラムマスク規定が定める帯域内送信PSD上限値;P
txmask=2.6dBm/100kHzをOFDM信号の絶対値帯域内最大PSD;P
txmaxとしてしまうと、絶対値帯域端部PSDは、P
edge=P
txmask+P
oob=2.6−25=−22.4dBm/100kHzとなり、帯域端部において、P
edgemax=−62.8dBm/100kHzを40.4dB超過してしまう。したがってこのような場合、送信電力全体を40.4dB低減することで、要求条件を達成する事ができるが、送信電力全体を40.4dB低減するということは、すなわち受信側におけるビットエネルギー対雑音電力密度比;Eb/N0(dB)も40.4dB低減してしまう事を示しており、大幅な受信品質の劣化を引き起こしてしまう。
【0071】
一方で、時間軸ウィンドウイング処理を行った場合、例えば時間軸ウィンドウイング長;T
TR=6.0usの場合、相対値帯域端部PSD;P
oobは約39dBr/100kHzである。つまり時間軸ウィンドウイング長T
TR=0usの場合に比べて14dBr/100kHz程帯域外輻射を抑圧する。したがって、時間軸ウィンドウイング長;T
TR=0usの場合に比べて14dB送信電力を大きくしても差し支えなく、送信電力全体の低減を40.4−14=26.4dBに抑える事ができる。
【0072】
このように本発明によれば(3)式のように、絶対値帯域内最大PSD;P
txmaxは、スペクトラムマスク規定で与えられる帯域内送信PSD上限値;P
txmaskと、スペクトラムマスク規定と設計マージン、および時間軸ウィンドウイング長;T
TRによって制御される値である、P
edgemask−P
mR−P
oob(dBm/100kHz)との、いずれか小さい値が選択され決定される。
【0074】
図9は、FCCのTVホワイトスペースにおける二次利用者(可搬型デバイス)用送信スペクトラムマスク規定、および各設計マージンをP
mR=0,10,20,30,40[dB]としたときに、時間軸ウィンドウイング処理にレイズドコサイン関数を用いたIEEE802.11.af規格に基づいたOFDM信号に対して、上記で説明した手順により得られる、時間軸ウィンドウイング長;T
TRと絶対値帯域内最大PSD;P
txmaxとの関係(左の縦軸)、およびこの絶対値帯域内最大PSD;P
txmaxに伴い決定される受信Eb/N0利得;Γ(dB)(右の縦軸)との関係を示した、本発明による電力パラメータテーブルの一例である。
【0075】
ここでは、受信側における平均Eb/N0;γ(dB)を式(4)に示す通り、時間軸ウィンドウイング処理を用いない場合(時間軸ウィンドウイング長;T
TR=0μs)、且つ、設計マージンなし(P
mR=0dB)の場合において信号が送信されたときの平均受信Eb/N0;γ
0(dB)と、
図9によって決定される受信Eb/N0利得;Γとの和で定義している。
【0077】
時間軸ウィンドウイング長;T
TRが小さい時には、絶対値帯域内最大PSD;P
txmaxは、スペクトラムマスク規定を満たす様に、帯域内送信PSD上限値;P
txmask以下に抑えられている。時間軸ウィンドウイング長;T
TRが大きくなるにつれて、絶対値帯域内最大PSD;P
txmaxは増加する。時間軸ウィンドウイング長;T
TRが十分大きい時には、絶対値帯域内最大PSD;P
txmaxは帯域内送信PSD上限値;P
txmaskに等しくなる。
【0078】
また、絶対値帯域内最大PSD;P
txmaxの増加に伴い、受信Eb/N0利得;Γもそれに対応して増加する。すなわち、時間軸ウィンドウイング長;T
TRを大きくすることで、受信側における信号の電力強度を改善する事ができることを示している。
【0079】
一方で、前述の通り、大きな時間軸ウィンドウイング長;T
TRはスループットの低下を招く。
図10は
図9で示した時間軸ウィンドウイング長;T
TRに応じた送信電力制御、およびそれに伴う平均受信Eb/N0の増減を考慮して、
図7の時間軸ウィンドウイング長;T
TRに対するスループット;Rとの関係を計算し直した、γ
0=0dB、P
mR=0dBの場合の本発明によるスループットパラメータテーブルの一例である。
【0080】
図10のスループットパラメータテーブルでは、IEEE802.11af規格における必須な変調符号化率の組み合わせである、MCS0〜7(表2に詳細を記載)までについて示している。時間軸ウィンドウイング長;T
TRが小さい時、送信電力が抑えられ、平均受信Eb/N0が劣化するため、結果としてスループット;Rが大幅に劣化する。しかし、時間軸ウィンドウイング長;T
TRがある程度大きくなると、帯域外の不要な輻射電力が抑えられ、送信電力をスペクトラムマスク規定の範囲内、および帯域端部において要求される条件を満たす範囲で増加させても差し支えなくなる。そのためスループット;Rが増加する。しかし、時間軸ウィンドウイング長;T
TRを必要以上に増大させると、受信側で復調・復号に必要な信号成分が削り取られ、結果としてスループット;Rが劣化する。
【0082】
例えば、MCS番号が4の場合は、時間軸ウィンドウイング長;T
TRが0μs〜2.25μsおよび15.0μs以上においてスループット;Rが劣化するが、時間軸ウィンドウイング長;T
TRが2.25μs〜15.0μsの範囲においてはスループット;Rは劣化しない。
【0083】
したがって、本発明によれば、この送信電力制御を考慮したスループットテーブルにより、最大のスループットを達成し得る、最適な時間軸ウィンドウイング長;T
TRoptを選択すべきである。最適な時間軸ウィンドウイング長;T
TRoptと成り得る値に範囲がある場合は、出来るだけ多くのMCSにおいてその最大スループットを達成できる値に設定するべきである。
【0084】
例えば、
図10においては、時間軸ウィンドウイング長;T
TR=3.75μsにおいて全てのMCSでそれぞれ最大スループットを得られる事が分かる。したがってこのような場合、最適な時間軸ウィンドウイング長;T
TRoptとしてこのT
TR=3.75μsを選択するべきである。
【0085】
最適な時間軸ウィンドウイング長;T
TRoptが決定されると、
図9に示す送信電力パラメータテーブルより、自動的に送信信号電力制御値が決定される。例えばT
TRopt=3.75μsが選択された場合、
図9よりその時の絶対値帯域内最大PSDはP
txmaxは2.6dBm/100kHzとして決定される。
【0086】
与えられた環境および設計条件によって、最適な時間軸ウィンドウイング長と送信電力制御値がひとたび決定されると、後は通常行われる適応変調と同様に、無線通信環境に応じて変化する受信信号レベルに従って変調方式や符号化率(MCS)等が決定される。
【0087】
このように、本発明によれば、最適なウィンドウイング長および送信電力制御を行う事で、与えられた環境、および設計条件を満たしつつ、達成し得る最大のスループットの獲得を可能とする。
【0088】
上述した実施の形態は、説明の簡略化ためにある特定の条件項目に着目したが、本条件項目を他の値、システム等に置き換えてもこれらの類似の傾向が現れる。
【0089】
表3は、条件項目の一例を示すリストである。条件項目1は、スペクトラムマスク規定に関するものである。条件項目2は、使用するシステムに関するものである。条件項目3はガードインターバルの長さT
Gに関するものであり、例えばOFDMシンボル長の比率等から構成されるものである。また条件項目4は、誤り訂正符号化に関するものであり、ブロック畳込み符号化、LDPC符号化等がある。条件項目5は、誤り訂正復号に関するものであり、硬判定ビタビ復号、軟判定ビタビ復号等がある。条件項目6は、符号化率に関するものである。また条件項目7は、時間軸ウィンドウイング処理の種類に関するものであり、レイズドコサインとするか、直線状とするか、・・・等がある。また、条件項目8は、変調方式に関するものであり、BPSK、QPSK、16QAM、64QAM、256QAM等がある。
【0090】
なお、これら条件項目は、上述した
図1、3に示すように、環境として与えられる項目(例えば条件項目1〜3)と、システムを最適化するために可変とされた項目(例えば条件項目4〜8)とに分類することができる。
【0092】
なお、条件項目は、表1の全ての条件項目が必須ではなく、少なくともシステム(OFDM通信の規格)、ガードインターバル長、誤り訂正符号化の種別、誤り訂正復号の種別、符号化率、時間軸ウィンドウイング処理の種類、変調方式のうち何れか1以上からなるものであればよい。また条件項目は、表1に示される条件項目に限定されるものではなく、他のいかなる通信項目が何種類に亘って加わっていてもよい。
【0093】
これら各条件項目のうち一つずつ項目を選択することにより一つの通信条件が確定することとなる。例えば、上述した
図10のMCS番号3の例では、条件項目1のスペクトラムマスク規定は、FCC可搬型2、条件項目2のシステムは、IEEE802.11.af、条件項目3のガードインターバルの長さは、1/4、条件項目4の誤り訂正符号化はブロック畳込み符号化、条件項目5の誤り訂正復号は軟判定ビタビ復号、条件項目6の符号化率は1/2、条件項目7のウィンドウイングの種類はレイズドコサイン、条件項目8の変調方式は、16QAMがそれぞれ選択されて一つの通信条件が形成されることとなる。他の通信条件についても、それぞれ条件項目1〜8からそれぞれ一つずつ選択されることで構成されることとなる。このため、通信条件は、条件項目1〜7におけるそれぞれの項目数に応じて、数百、数千通りにもなり得る。
【0094】
また、それぞれ条件項目1〜6からそれぞれ一つずつ選択された一の通信条件毎に、
図9、
図10に示すような時間軸ウィンドウイング長T
TRに対する調整可能な最大送信電力の範囲、およびスループットの関係が一つずつ得られることとなる。本発明においては、通信条件毎に、この時間軸ウィンドウイング長T
TRに対する調整可能な最大送信電力の範囲の関係を、送信電力パラメータテーブルに、時間軸ウィンドウイング長T
TRに対するスループットの関係を、スループットパラメータテーブルにそれぞれ記憶させておく。
【0095】
通信条件選択部19は、このパラメータテーブル格納部17にアクセスし、これに記憶されている時間軸ウィンドウイング長T
TRに対するスループットの関係に基づいて通信条件の選択を行う。通信条件選択部19は、この通信条件の選択を行う上で、今回送信しようとするOFDM信号に求められる帯域外輻射の抑制条件を取得する必要がある。帯域外輻射の抑制条件は、条件取得部18を介して取得する。通信条件選択部19は、取得した帯域外輻射の抑制条件に基づいて、これを満たすような通信条件を選択することとなる。表4は、通信条件選択部19により、各条件項目1〜8について塗りつぶされた項目からなる通信条件が選択された例を示している。条件項目1〜6についてそれぞれ一つずつ条件が選択されているのが示されている。
【0097】
このとき通信条件選択部19は、通信条件選択部19を介して、上述した帯域外輻射の抑制条件に加え、OFDM信号送信装置1により送信すべきOFDM信号において必須となる条件項目をも予め取得するようにしてもよい。
【0098】
表5は、OFDM信号送信装置1により送信すべきOFDM信号において必須となる条件項目を取得した結果を示している。表中の太枠で囲まれた太字の部分が、必須となる条件項目を示している。条件項目1としてFCC可搬型1、条件項目2としてIEEE802.15.4m、条件項目3として1/4、条件項目4についてブロック畳込み符号化、条件項目5について硬判定ビタビ復号、条件7として直線状が、今回送信するOFDM信号において必須となる条件項目であるものとする。かかる場合には、これら必須となる条件項目を満たした上で、更に未確定の条件項目6、8を選択することが通信条件選択部19により行われることとなる。
【0100】
通信条件選択部19は、パラメータテーブル格納部17にアクセスし、このような必須の条件項目1〜5、7を満たす調整可能な送信電力および時間軸ウィンドウイング長T
TRの範囲に対するスループットの関係を識別する。この識別した調整可能な送信電力および時間軸ウィンドウイング長T
TRの範囲に対するスループットの関係から、取得した帯域外輻射の抑制条件にも適合する通信項目6、8を選択することとなる。かかる通信項目6、8の選択におけるコンセプトは、上述と同様に
図9および10に示すような時間軸ウィンドウイング長T
TRの範囲に対する調整可能な送信電力およびスループットの関係から、帯域外輻射の抑制条件を満たす符号化率、変調方式等を選択し、通信項目6、8、および最適な送信電力および時間軸ウィンドウイング長T
TRを決定していくこととなる。
【0101】
ちなみに、上述した例では、条件項目1〜5、7が予め確定している場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではなく、条件項目6、8が予め決定している場合には、それを満たすような他の条件項目を、上述と同様にパラメータテーブル格納部17にアクセスすることにより決定していくこととなる。
【0102】
最終的に、条件項目1〜8毎に一つずつ具体的な項目が選択されて一つの通信条件が確定することとなる。通信条件選択部19は、この確定した通信条件を時間軸ウィンドウイング処理部12へ通知する。時間軸ウィンドウイング処理部12は、この通知された通信条件に基づいて時間軸ウィンドウイング処理を施す。これにより、送信すべきOFDM信号は、帯域外輻射の抑制条件を満たすような時間軸ウィンドウイング処理が施され、なおかつスループットの劣化も防止できるような通信条件で構成されることとなる。
【0103】
なお通信条件選択部19は、選択した通信条件をOFDM信号受信装置における誤り復調・復号処理部23へも通知する。復調・復号処理部23は、受信したOFDM信号について、通知された通信条件に基づいて復号化することが可能となる。
【0104】
このように本発明を適用したOFDM信号送信装置1は、パラメータテーブルで決定された最大送信電力もしくは帯域内最大送信PSDを考慮した、時間軸ウィンドウイング長に対するスループットの関係が、誤り訂正符号およびその符号化率、変調方式(変調多値数)、ガードインターバル長、最大送信電力もしくは帯域内最大送信PSDの何れか1以上の調整可能な通信条件毎に予め記憶されている。そして、帯域外輻射の抑制条件を満たす送信電力および時間軸ウィンドウイング長をパラメータテーブル格納部17に記憶されているスループットとの関係において、上記条件項目を満たす通信条件の中から選択する。詳細には、スループットパラメータテーブル、送信電力パラメータテーブルに記憶されている調整可能な通信条件とスループットとの関係において、上記環境として与えられる条件および上記要求されるスペクトラムマスク規定に対する設計マージンの基でスループットを最大とする、時間軸ウィンドウイング長、誤り訂正符号およびその符号化率、変調方式(変調多値数)、送信電力の何れか1以上を選択する。これらの動作を自動的に行うことが可能となることから、OFDM通信システム10を構築する際に、条件取得部18を介した条件入力を行うことで自動的に、帯域外輻射の抑制条件を満たし、なおかつスループットの劣化も防止できる最適な通信条件を選択することが可能となる。
【0105】
これらのプロセスは、
図3に示すような手順で実行される。先ず条件取得として、通信システム規格、帯域制限フィルタの種類及びそのフィルタ係数、RF回路の性能、スペクトラムマスク規定の何れか1以上の条件取得を行う。
【0106】
次にスループットパラメータテーブル内には、自由調整なパラメータ群として、ウィンドウイング関数、及びそのウィンドウイング長、送信電力、変調多値数、誤り訂正符号及びその符号化率が記憶され、送信電力パラメータテーブルには、ウィンドウイング関数、及びそのウィンドウイング長、最大送信電力(最大PSD)が記憶され、この最大PSDに調整可能な送信電力の範囲が支配される。これらのパラメータテーブルに記憶される情報及び取得した条件から、スループットを算出し、これに基づいて通信条件を選択する。この選択は、スループットを最大にする最適な調整パラメータの組み合わせ(ウィンドウイング関数、及びそのウィンドウイング長、変調多値数、誤り訂正符号及びその符号化率、送信電力)を決定することに他ならない。
【0107】
また、一度設置したOFDM通信システム10において、送信すべきOFDM信号において必須となる条件項目に変更が生じた場合には、当該条件項目を条件取得部18を介して取得することにより、自動的な最適な通信条件を選択することが可能となる。
【0108】
特に本発明によれば、回路構成を複雑化させること無く、不要な送信信号電力の低減を行うことなく実現できることから、極めて安価で、しかも普及性にも優れた構成とすることが可能となる。
【0109】
更に本発明によれば、例えば米国FCCで定められている規定をはじめとする、様々な厳しい送信スペクトラムマスク規定に対して、帯域制限のための時間軸ウィンドウイング長を適応的に選択することができ、この時間軸ウィンドウイングの帯域外輻射電力抑圧性能やその他の通信条件を考慮して送信電力を制御することで効率的にTVホワイトスペースまたはホワイトスペースを利用できるシステムとすることができる。
【0110】
また本発明によれば、上述したOFDM信号送信装置1として具現化される場合に限定されるものではなく、OFDM通信システムを設計するための設計プログラムとして具現化されるものであってもよい。かかる場合には、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等の電子機器等に実装されるプログラムとして具現化されるものであり、
図1、3に示すような構成要素の動作を、プログラムのステップとして実行していくこととなる。
【0111】
先ず、時間軸ウィンドウイング処理を施すための時間軸ウィンドウイング長に対する調整可能な送信電力やスループットの関係を通信条件毎に予め取得し、これをPCの記憶手段(ハードディスクやメモリ等)にスループットパラメータテーブルとして記憶させる。次に実際の設計フェーズに移行する場合には、OFDM信号送信装置から送信すべきOFDM信号において必須となる条件項目、及び帯域外輻射の抑制条件を取得する。次に取得した帯域外輻射の抑制条件を満たす送信電力および時間軸ウィンドウイング長を、送信電力パラメータテーブルに記憶されている送信電力との関係およびスループットパラメータテーブルに記憶されているスループットとの関係において、条件項目を満たす通信条件の中から選択する。最後に、選択した時間軸ウィンドウイング長、送信電力及びその通信条件を解として出力する。