(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
無停電電源装置は、停電等によって外部電源から負荷装置へ電力が供給されない状態になったときに、負荷装置の動作を継続するために、予め充電した二次電池から負荷装置へ電力を供給する電源装置である。無停電電源装置の二次電池は、通常時に外部電源の電力で充電されるのが一般的である。無停電電源装置に用いられる二次電池の一例として、例えばニッケル水素二次電池等のアルカリ二次電池が公知である。
【0003】
アルカリ二次電池は、その性質上、定格電圧よりも高い電圧で充電を行う必要がある。しかし一般的に無停電電源装置において、アルカリ二次電池の定格電圧は、外部電源の電圧と同じである。そのため、そのままでは外部電源の電力でアルカリ二次電池を満充電状態まで充電することができない。
【0004】
このようなことから外部電源の電圧を昇圧する補助電源(DC/DCコンバータ)を備える無停電電源装置が公知である。より具体的にはアルカリ二次電池の充電時には、外部電源の電圧を補助電源で昇圧し、その昇圧した電圧でアルカリ二次電池を充電する。それによって外部電源の電圧と同じ定格電圧のアルカリ二次電池であっても、そのアルカリ二次電池を定格電圧よりも高い電圧で満充電状態まで充電することができる。また無停電電源装置ではないが、補助電源を用いた技術の一例として、電動モータの電力需要が一時的に増加したときに、電動モータに供給可能な電力量を補助電源によって増加させるモータ制御装置が公知である(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
しかし補助電源で外部電源の電圧を昇圧し、その昇圧した電圧でアルカリ二次電池を充電する従来技術は、充電時に大きな電力損失が生ずるという課題がある。またこのような従来技術は、その電力損失によって生ずる補助電源の発熱が無停電電源装置の信頼性等の面で問題となる場合がある。このような課題に対し、例えば直列接続された複数の単位セルを含む二次電池を充電する際に、その複数の単位セルの一部を選択的に電力変換器に接続する分割充電制御を行う充電制御装置が公知である(例えば特許文献2を参照)。この分割充電制御を行う充電制御装置は、二次電池を構成する複数の単位セルに選択的に充電するため、より小型の電力変換器を用いることができる。それによって分割充電制御を行う充電制御装置は、電力変換器における電力損失を小さくすることができるので、電力変換器の発熱を低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記の分割充電制御を行う充電制御装置は、二次電池を構成する複数の単位セルに選択的に充電する時分割充電であるため、二次電池を満充電状態まで充電するのに長い時間を要することになる虞がある。
【0008】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、発熱が少なく短時間で充電が可能な無停電電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、外部電源から負荷装置へ電力を供給する電源ラインに並列に接続される入出力端子と、定格電圧が前記外部電源の電圧と同じ電圧である電池ユニットと、前記外部電源の電圧を前記電池ユニットの定格電圧と前記電池ユニットの充電電圧との差分に相当する電圧に変換する電圧変換装置と、前記外部電源の電圧に前記電圧変換装置の出力電圧を加算した電圧で、前記電池ユニットを充電する充電回路と、前記外部電源の停電時に、前記入出力端子を通じて前記電池ユニットから前記負荷装置へ放電する放電回路と、を備える無停電電源装置である。
【0010】
ここで電池ユニットの充電電圧は、電池ユニットの定格電圧より高い電圧であり、電池ユニットを満充電状態まで充電するのに必要な電圧である。他方、外部電源の電圧は、電池ユニットの定格電圧と同じ電圧である。そのため外部電源の電圧でそのまま電池ユニットを充電することはできない。
【0011】
電圧変換装置は、外部電源の電圧を電池ユニットの定格電圧と電池ユニットの充電電圧との差分に相当する電圧に変換する。そして充電回路は、外部電源の電圧に電圧変換装置の出力電圧を加算した電圧で電池ユニットを充電する。それによって電池ユニットの充電電圧で電池ユニットを充電することができるので、従来のように時分割充電制御をする必要がない。したがって短時間で電池ユニットを満充電状態まで充電することができる。
【0012】
そして本発明において電圧変換装置は、外部電源の電圧を電池ユニットの定格電圧と電池ユニットの充電電圧との差分に相当する電圧に変換するので、外部電源の電圧を昇圧する従来技術に比べて、電圧変換装置で生ずる電力損失を大幅に低減することができる。それによって電圧変換装置の発熱を従来よりも大幅に低減することができる。
【0013】
これにより本発明の第1の態様によれば、発熱が少なく短時間で充電が可能な無停電電源装置を提供できるという作用効果が得られる。
【0014】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、外部電源から負荷装置へ電力を供給する電源ラインに並列に接続される入出力端子と、直列に接続された第1電池パック及び第2電池パックを含み、定格電圧が前記外部電源の電圧と同じ電圧である電池ユニットと、前記外部電源の電圧を前記電池ユニットの定格電圧と前記電池ユニットの充電電圧との差分に相当する電圧に変換する電圧変換装置と、前記電圧変換装置の出力電圧で前記第1電池パックを充電し、前記外部電源の電圧で前記第2電池パックを充電する充電回路と、前記外部電源の停電時に、前記入出力端子を通じて前記電池ユニットから前記負荷装置へ放電する放電回路と、を備える無停電電源装置である。
【0015】
電圧変換装置は、外部電源の電圧を電池ユニットの定格電圧と電池ユニットの充電電圧との差分に相当する電圧に変換する。そして充電回路は、電圧変換装置の出力電圧で第1電池パックを充電し、外部電源の電圧で第2電池パックを充電する。それによって電池ユニットの第1電池パック及び第2電池パックをそれぞれの充電電圧(定格電圧より高い電圧)で充電することができる。そして第1電池パックの充電と第2電池パックの充電は、並行して同時に行うことができるので、従来のように時分割充電制御をする必要がない。したがって短時間で電池ユニットを満充電状態まで充電することができる。
【0016】
そして本発明において電圧変換装置は、外部電源の電圧を電池ユニットの定格電圧と電池ユニットの充電電圧との差分に相当する電圧に変換するので、外部電源の電圧を昇圧する従来技術に比べて、電圧変換装置で生ずる電力損失を大幅に低減することができる。それによって電圧変換装置の発熱を従来よりも大幅に低減することができる。
【0017】
これにより本発明の第2の態様によれば、発熱が少なく短時間で充電が可能な無停電電源装置を提供できるという作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発熱が少なく短時間で充電が可能な無停電電源装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
尚、本発明は、以下説明する実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0021】
<第1実施例>
本発明の第1実施例について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る無停電電源装置10の第1実施例を図示した回路図である。
【0022】
無停電電源装置10は、停電等によって外部電源20から負荷装置30へ電力を供給できない状態になったときに、負荷装置30の動作を継続するために、負荷装置30へ電力を供給する電源装置である。
第1実施例の無停電電源装置10は、入出力端子11、電池ユニット12、DC/DCコンバータ13、充電回路14、放電回路15、制御装置16を備える。
【0023】
入出力端子11は、外部電源20から負荷装置30へ電力を供給する電源ライン21に並列に接続される。ここで外部電源20は、例えば商用交流電力を電圧V1の直流電力に変換する電源装置である。また負荷装置30は、電圧V1の直流電力で動作する電子機器である。
【0024】
電池ユニット12は、定格電圧が外部電源20の電圧V1と同じ電圧の電池電源である。電池ユニット12は、ニッケル水素二次電池等のアルカリ二次電池を直列乃至並列に接続することによって構成された電池パック120を含む。また電池ユニット12は、電池パック120の電圧及び温度を検出する回路を含む(図示省略)。
【0025】
「電圧変換装置」としてのDC/DCコンバータ13は、外部電源20の電圧V1を電池ユニット12の定格電圧と電池ユニット12の充電電圧との差分に相当する電圧V3に変換する。より具体的にはDC/DCコンバータ13は、外部電源20の電圧V1を電圧V3に降圧する入出力絶縁型の降圧型DC/DCコンバータである。DC/DCコンバータ13の入力側は、+端子が入出力端子11に接続されており、−端子がグランドに接続されている。またDC/DCコンバータ13の出力側は、+端子が充電回路14のスイッチSW1の一端側に接続されており、−端子が入出力端子11に接続されている。
【0026】
充電回路14は、スイッチSW1、ダイオードD1を含む。より具体的には充電回路14は、スイッチSW1の一端側がDC/DCコンバータ13の出力側の+端子に接続されており、スイッチSW1の他端側がダイオードD1のアノードに接続されている。ダイオードD1のカソードは、電池ユニット12の正極端子に接続されている。このような構成の充電回路14において電池ユニット12は、スイッチSW1をオンすることによって、外部電源20の電圧V1にDC/DCコンバータ13の出力電圧V3を加算した電圧で充電される。
【0027】
放電回路15は、スイッチSW2、ダイオードD2を含む。より具体的には放電回路15は、スイッチSW2の一端側が電池ユニット12の正極端子に接続されており、スイッチSW2の他端側がダイオードD2のアノードに接続されている。ダイオードD2のカソードは、入出力端子11に接続されている。このような構成の放電回路15は、外部電源の停電時にスイッチSW2をオンすることによって、入出力端子11を通じて電池ユニット12から負荷装置30へ放電することができる。
【0028】
制御装置16は、公知のマイコン制御装置である。制御装置16は、電池ユニット12の電圧V2や温度等に基づいて、スイッチSW1及びスイッチSW2のオン/オフ等の制御を実行する。
【0029】
次に第1実施例の無停電電源装置10の動作について、引き続き
図1を参照しながら説明する。
【0030】
制御装置16は、通常時、つまり外部電源20から負荷装置30へ電力が供給されている状態では、外部電源20の電力で電池ユニット12を満充電状態まで充電する。より具体的には、スイッチSW1をオンし、スイッチSW2をオフすることによって、外部電源20の電圧V1にDC/DCコンバータ13の出力電圧V3を加算した電圧で電池ユニット12を充電する(符合A)。そして電池ユニット12が満充電状態まで充電された後、スイッチSW1をオフする。他方、制御装置16は、停電時にはスイッチSW2をオンすることによって、入出力端子11を通じて電池ユニット12の電力を負荷装置30へ放電する(符合B)。
【0031】
電池ユニット12の充電電圧は、電池ユニット12の定格電圧より高い電圧であり、電池ユニット12を満充電状態まで充電するのに必要な電圧である。前述したように、DC/DCコンバータ13の出力電圧V3は、電池ユニット12の定格電圧と電池ユニット12の充電電圧との差分に相当する。また電池ユニット12の定格電圧は、外部電源20の電圧V1と同じ電圧である。
【0032】
例えば定格電圧が1.35Vのニッケル水素二次電池の電池セルを満充電状態まで充電するのに必要な充電電圧は、約1.5Vとなる。ここで外部電源20の電圧V1を54Vとする。また定格電圧が1.35Vのニッケル水素二次電池の電池セルを40個直列に接続して、定格電圧が外部電源20の電圧V1と同じ54Vとなる電池ユニット12を構成する。この場合、電池ユニット12を満充電状態まで充電するのに必要な充電電圧は、約60V(1.5V×40)となる。したがってDC/DCコンバータ13の出力電圧V3を約6Vとすればよい。
【0033】
本発明に係る無停電電源装置10は、スイッチSW1をオンすることによって、その充電電圧(電圧V1+V3)で電池ユニット12が充電されることになるので、電池ユニット12を満充電状態まで充電することができる。それによって本発明に係る無停電電源装置10は、従来のように時分割充電制御をする必要がないので、短時間で電池ユニット12を満充電状態まで充電することができる。
【0034】
またDC/DCコンバータ13は、外部電源20の電圧V1を電池ユニット12の定格電圧と電池ユニット12の充電電圧との差分に相当する電圧V3に降圧する。そのため本発明に係る無停電電源装置10は、外部電源20の電圧V1を昇圧する従来技術に比べて、DC/DCコンバータ13で生ずる電力損失を大幅に低減することができる。それによって本発明に係る無停電電源装置10は、DC/DCコンバータ13の発熱を従来よりも大幅に低減することができる。
【0035】
このようにして本発明によれば、発熱が少なく短時間で充電が可能な無停電電源装置10を提供することができる。
【0036】
<第2実施例>
本発明の第2実施例について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、本発明に係る無停電電源装置10の第2実施例を図示した回路図である。
【0037】
第2実施例の無停電電源装置10は、第1実施例と同様に、入出力端子11、電池ユニット12、DC/DCコンバータ13、充電回路14、放電回路15、制御装置16を備える。そして第2実施例の無停電電源装置10は、電池ユニット12の構成と充電回路14の構成が第1実施例と異なる。それ以外の構成要素については、第1実施例と同様であるため、同一の構成要素には同一の符合を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
第2実施例の電池ユニット12は、直列に接続された第1電池パック121及び第2電池パック122を含み、定格電圧が外部電源20の電圧V1と同じ電圧である。第2実施例においては、第1電池パック121の電圧と第2電池パック122の電圧とを合算した電圧が電池ユニット12の電圧V2となる。
【0039】
第2実施例の充電回路14は、スイッチSW1、ダイオードD1に加えて、さらにスイッチSW3とダイオードD3を含む。より具体的には充電回路14は、スイッチSW1の一端側がDC/DCコンバータ13の出力側の+端子に接続されており、スイッチSW1の他端側がダイオードD1のアノードに接続されている。ダイオードD1のカソードは、第1電池パック121の正極端子に接続されている。DC/DCコンバータ13の出力側の−端子は、第1電池パック121の負極端子に接続されている。また充電回路14は、スイッチSW3の一端側が入出力端子11に接続されており、スイッチSW3の他端側がダイオードD3のアノードに接続されている。ダイオードD3のカソードは、第2電池パック122の正極端子に接続されている。
【0040】
このような構成の充電回路14は、DC/DCコンバータ13の出力電圧V3で第1電池パック121を充電し、外部電源20の電圧V1で第2電池パック122を充電することができる。より具体的には充電回路14は、スイッチSW1をオンすることによって、DC/DCコンバータ13の出力電圧V3で第1電池パック121が充電される。また充電回路14は、スイッチSW3をオンすることによって、外部電源20の電圧V1で第2電池パック122が充電される。
【0041】
制御装置16は、通常時、つまり外部電源20から負荷装置30へ電力が供給されている状態では、外部電源20の電力で電池ユニット12を満充電状態まで充電する。より具体的には、スイッチSW1及びスイッチSW3をオンし、スイッチSW2をオフすることによって、DC/DCコンバータ13の出力電圧V3で第1電池パック121を充電し(符合C)、外部電源20の電圧V1で第2電池パック122を充電する(符合D)。そして第1電池パック121が満充電状態まで充電された後、スイッチSW1をオフする。また第2電池パック122が満充電状態まで充電された後、スイッチSW3をオフする。他方、制御装置16は、停電時にはスイッチSW2をオンすることによって、入出力端子11を通じて電池ユニット12の電力を負荷装置30へ放電する(符合E)。
【0042】
例えば定格電圧が1.35Vのニッケル水素二次電池の電池セルを満充電状態まで充電するのに必要な充電電圧は、約1.5Vとなる。ここで外部電源20の電圧V1を54Vとする。また定格電圧が1.35Vのニッケル水素二次電池の電池セルを40個直列に接続して、定格電圧が外部電源20の電圧V1と同じ54Vとなる電池ユニット12を構成する。この場合、電池ユニット12を満充電状態まで充電するのに必要な充電電圧は、約60V(1.5V×40)となる。したがってDC/DCコンバータ13の出力電圧V3を約6Vとすればよい。
【0043】
そして電池ユニット12の第1電池パック121は、定格電圧が1.35Vのニッケル水素二次電池の電池セルを4個直列に接続して構成すれば、その定格電圧は5.4Vとなる。また電池ユニット12の第2電池パック122は、残りのニッケル水素二次電池の電池セル36個を直列に接続して構成すれば、その定格電圧は48.6Vとなる。定格電圧を5.4Vの第1電池パック121は、満充電状態まで充電するのに必要な充電電圧が6V(1.5V×4)であるから、DC/DCコンバータ13の出力電圧V3(約6V)で満充電状態まで充電することができる。また定格電圧を48.6Vの第2電池パック122は、満充電状態まで充電するのに必要な充電電圧が54V(1.5V×36)であるから、第1電池パック121の充電と並行して同時に、外部電源20の電圧V1(54V)で満充電状態まで充電することができる。
【0044】
このように第2実施例の無停電電源装置10は、スイッチSW1及びスイッチSW3をオンすることによって、第1電池パック121及び第2電池パック122をそれぞれの充電電圧(定格電圧より高い電圧)で充電することができる。そして第1電池パック121の充電と第2電池パック122の充電は、並行して同時に行うことができる。それによって本発明に係る無停電電源装置10は、従来のように時分割充電制御をする必要がないので、短時間で電池ユニット12を満充電状態まで充電することができる。
【0045】
またDC/DCコンバータ13は、外部電源20の電圧V1を電池ユニット12の定格電圧と電池ユニット12の充電電圧との差分に相当する電圧V3に降圧する。そのため本発明に係る無停電電源装置10は、外部電源20の電圧V1を昇圧する従来技術に比べて、DC/DCコンバータ13で生ずる電力損失を大幅に低減することができる。それによって本発明に係る無停電電源装置10は、DC/DCコンバータ13の発熱を従来よりも大幅に低減することができる。
【0046】
このようにして本発明によれば、発熱が少なく短時間で充電が可能な無停電電源装置10を提供することができる。