(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296640
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】生コン残渣の処理方法
(51)【国際特許分類】
B28C 7/16 20060101AFI20180312BHJP
B28C 5/42 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
B28C7/16
B28C5/42
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-235764(P2013-235764)
(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公開番号】特開2015-93473(P2015-93473A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】506099029
【氏名又は名称】株式会社土地改良センター
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】村松登
【審査官】
小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−313581(JP,A)
【文献】
特開平11−076706(JP,A)
【文献】
特開2009−165812(JP,A)
【文献】
特開2003−033604(JP,A)
【文献】
特開平10−272477(JP,A)
【文献】
特開2002−045610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00−9/04
B01D21/02
C02F 1/52
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コンドラムから生コンを送出して所定の構築箇所へ搬入後、生コン残渣が残る生コンドラム内に、生コン残渣の固形物が10%乃至20%、水が80%乃至85%程度の割合となるよう水を注入し、水の注入後には、前記生コン残渣を水と固形物とに分離させる分離剤を投入し、分離剤投入後は、前記生コン残渣が固まらないよう前記生コンドラムを回転させ、前記生コン残渣を水と砂利及び砂を含む生コン残渣固形物とに予め前記生コンドラム内で分離させ、次いで、さらに前記生コンドラムを回転させて、前記砂利及び砂を含む生コン残渣固形物を砂利及び砂と重金属が封入された生コン残渣物とに分離し、
前記投入する分離剤は、ペーパースラッジが28乃至68重量部、無水石膏が10乃至50重量部、硫酸バンドが3乃至43重量部、消石灰が8乃至48重量部、ソーダ灰が0.4乃至28重量部、ポルトランドセメントが0.3乃至26重量部、高分子ポリマーが0.1乃至11重量部、チオ硫酸ソーダが0.15乃至23重量部、硫酸第1鉄が0.1乃至22重量部、シリカが0.05乃至21重量部、を含んで配合構成されてなり、
前記分離後、砂利及び砂と重金属が封入された生コン残渣物とがドラム内から取り出され、網目状に構成されたバイブロスクリーン上に送出され、前記バイブロスクリーンは水平方向に揺動され、バイブロスクリーンの網目を抜けた生コン残渣物や水は原水槽に貯留され、バイブロスクリーン上には網目を通過しない砂利が残り、該砂利はベルトコンベアを介して所定の回収箇所に回収され、重金属が混入した生コン残渣物が付着しない砂利となり、
原水槽に貯留された水とバイブロスクリーンの網目を抜けた生コン残渣物はポンプにより吸い上げられ、クラッシュファイヤーに投入され、クラッシュファイヤー内では、さらに水と重金属を含む生コン残渣物と砂とに分離され、前記砂は洗浄を経てリサイクルが可能な砂として回収され、水と重金属を含んだ生コン残渣物はスラッジ水槽に移送され、該スラッジ水槽内では撹拌された後、ろ布で形成されたフィルター内に移送され、該フィルター内でプレス処理され、重金属が含まれた生コン残渣物からなる脱水ケーキと重金属を含まない水とに分離され、該水は上澄水槽に送られた後、再利用される、
ことを特徴とする生コン残渣の処理方法。
【請求項2】
生コン車の生コンドラムから生コンを送出して所定の構築箇所へ搬入後、生コン残渣が残る生コンドラム内に、生コン残渣の固形物が10%乃至20%、水が80%乃至85%程度の割合となるよう水を注入し、水の注入後には、前記生コン残渣を水と固形物とに分離させる分離剤を投入し、分離剤投入後は、前記生コン残渣が固まらないよう前記生コンドラムを回転させ、前記生コン残渣を水と砂利及び砂を含む生コン残渣固形物とに予め前記生コンドラム内で分離させ、次いで、さらに前記生コンドラムを回転させて、前記砂利及び砂を含む生コン残渣固形物を砂利及び砂と重金属が封入された生コン残渣物とに分離し、
前記投入する分離剤は、ペーパースラッジが28乃至68重量部、無水石膏が10乃至50重量部、硫酸バンドが3乃至43重量部、消石灰が8乃至48重量部、ソーダ灰が0.4乃至28重量部、ポルトランドセメントが0.3乃至26重量部、高分子ポリマーが0.1乃至11重量部、チオ硫酸ソーダが0.15乃至23重量部、硫酸第1鉄が0.1乃至22重量部、シリカが0.05乃至21重量部、を含んで配合構成されてなり、
前記分離後、砂利及び砂と重金属が封入された生コン残渣物とがドラム内から取り出され、網目状に構成されたバイブロスクリーン上に送出され、前記バイブロスクリーンは水平方向に揺動され、バイブロスクリーンの網目を抜けた生コン残渣物や水は原水槽に貯留され、バイブロスクリーン上には網目を通過しない砂利が残り、該砂利はベルトコンベアを介して所定の回収箇所に回収され、重金属が混入した生コン残渣物が付着しない砂利となり、
原水槽に貯留された水とバイブロスクリーンの網目を抜けた生コン残渣物はポンプにより吸い上げられ、クラッシュファイヤーに投入され、クラッシュファイヤー内では、さらに水と重金属を含む生コン残渣物と砂とに分離され、前記砂は洗浄を経てリサイクルが可能な砂として回収され、水と重金属を含んだ生コン残渣物はスラッジ水槽に移送され、該スラッジ水槽内では撹拌された後、ろ布で形成されたフィルター内に移送され、該フィルター内でプレス処理され、重金属が含まれた生コン残渣物からなる脱水ケーキと重金属を含まない水とに分離され、該水は上澄水槽に送られた後、再利用される、
ことを特徴とする生コン残渣の処理方法。
【請求項3】
前記生コンドラム内の生コン残渣に洗浄水を投入して分離処理物を形成し、前記分離剤は前記分離処理物の容量の1%乃至3%の分量を投入した、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の生コン残渣の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、生コン車による建設現場などへの生コン搬入後、生コン車のドラム内に残った生コンの残余物(残渣)を処理するなど生コン残渣の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、生コン車は、バッチャープラントや生コン工場と呼ばれる製造工場で作られた生コンクリート(フレッシュ・コンクリート、生コン)を建築や土木の工事現場へ輸送するために使われる。
【0003】
生コンクリートは輸送中でも適度な撹拌を行わないと骨材や水が分離し、均一でなくなってしまう。よって、容器(ドラム)をゆっくりと回転させて撹拌しながら輸送する必要がある。走行中に荷台上で可動する機構を搭載し、駆動軸をエンジン回転軸から分岐させるなどの特別な構造を持つため、特種用途自動車のいわゆる8ナンバー車となる。あらかじめ工場で生産されたコンクリート(レディーミクストコンクリート)を撹拌しながら輸送するものをアジテータというが、生コン車はアジテータに比べ、ドラムを高速で回転させることができる。しかしながら、構造的にはどちらも大差なく、最近ではコンクリートの輸送が容易になったことや、現場内に製造設備を設置したりするようになったことから車両内でコンクリートを製造する需要が少なくなってきていることで、アジテータが普及しており、生コン車もアジテータとして使用できるものが主流となってきている。
【0004】
ここで、生コン車は、通常のトラックが備える要素に加えて以下のような装置や部品が必要とされる。
【0005】
まず、前述の様に、ドラムを必要とする。ドラムとは、生コンクリートを積載するための略円筒状をなす容器であり、走行中も常に回転し続けて骨材や水との分離を防ぎ、生コンクリートを均質に保つ機能を果たす。
【0006】
内部には螺旋形のプレートが付いており、生コンクリートを積む時は車両後方から見て反時計(左)方向に回し、下ろす時は逆回転する。ドラム混合容量は0.9m
3(2トン車)から4.25m
3(10トン車)程である。
次に、生コン車は、ホッパを有している。ホッパとは、車両後部上方にある、生コンクリートの投入口を指標する。最近では品質確保のため運搬時はカバーをかけることが多い。
次に、フローガイドを有している。フローガイドとは、後方の略V型をなす生コンの通り道のことである。生コンをシュートに集める、いわゆる「じょうご」の役目を果たしている。
次に、シュートを有する。シュートとは、生コンクリートを目的の荷降し位置へ導くための樋を指標するものであり、左右に回転する他に上下動作もできる構成となっている。
【0007】
例えば、コンクリートポンプ車のホッパ内など比較的高い場所へ降ろす時はシュートを上げる必要があるからである。
ここで、前述した生コン車による建設現場などへの生コン搬入後、生コン車のドラム内には生コンの残余物(残渣)があり、この生コンの残渣とドラム内を洗浄した洗浄水の処理をどの様にするかが課題とされている。
【0008】
従来は、図に示すように、生コン車のドラム内を洗浄すると共に、前記ドラム内から生コンの残渣を取り出し、それを網目状のパイプロスクリーン上に載置して、砂利と砂とを回収していた。
【0009】
しかしながら、前記回収した砂利と砂には残渣のコンクリートが付着しており、そのため、土壌基準値以上の重金属も付着し、これら砂利や砂も産業廃棄物として処理せざるを得ないものであった。
【0010】
また、砂利や砂から分離した水についても,重金属が混入しているため下水として処理することできないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−221486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来の課題に対処すべく創案されたものであって、生コン車のドラム内を洗浄すると共に、前記ドラム内から生コンの残渣を取り出し、それを網目状のパイプロスクリーン上に載置して、砂利と砂とを回収する際、前記回収した砂利と砂には残渣のコンクリートが付着せず、そのため、土壌基準値以上の重金属も付着せず、もって、これら砂利や砂も産業廃棄物として処理せずに再利用でき、しかも、砂利や砂から分離した水についても,重金属が混入していないため下水として処理することができる生コン残渣の処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による生コン残渣の処理方法は、
生コンドラムから生コンを送出して所定の構築箇所へ搬入後、生コン残渣が残る生コンドラム内に、
生コン残渣の固形物が10%乃至20%、水が80%乃至85%程度の割合となるよう水を注入し、水の注入後には、前記生コン残渣を水と固形物とに分離させる分離剤を投入し、
分離剤投入後は、前記生コン残渣が固まらないよう前記生コンドラムを回転させ、前記生コン残渣を水と砂利及び砂を含む生コン残渣固形物とに予め
前記生コンドラム内で分離させ、次いで、
さらに前記生コンドラムを回転させて、前記砂利及び砂を含む生コン残渣固形物を砂利及び砂と重金属が封入された生コン残渣物とに分離
し、
前記投入する分離剤は、ペーパースラッジが28乃至68重量部、無水石膏が10乃至50重量部、硫酸バンドが3乃至43重量部、消石灰が8乃至48重量部、ソーダ灰が0.4乃至28重量部、ポルトランドセメントが0.3乃至26重量部、高分子ポリマーが0.1乃至11重量部、チオ硫酸ソーダが0.15乃至23重量部、硫酸第1鉄が0.1乃至22重量部、シリカが0.05乃至21重量部、を含んで配合構成され
てなり、
前記分離後、砂利及び砂と重金属が封入された生コン残渣物とがドラム内から取り出され、網目状に構成されたバイブロスクリーン上に送出され、前記バイブロスクリーンは水平方向に揺動され、バイブロスクリーンの網目を抜けた生コン残渣物や水は原水槽に貯留され、バイブロスクリーン上には網目を通過しない砂利が残り、該砂利はベルトコンベアを介して所定の回収箇所に回収され、重金属が混入した生コン残渣物が付着しない砂利となり、
原水槽に貯留された水とバイブロスクリーンの網目を抜けた生コン残渣物はポンプにより吸い上げられ、クラッシュファイヤーに投入され、クラッシュファイヤー内では、さらに水と重金属を含む生コン残渣物と砂とに分離され、前記砂は洗浄を経てリサイクルが可能な砂として回収され、水と重金属を含んだ生コン残渣物はスラッジ水槽に移送され、該スラッジ水槽内では撹拌された後、ろ布で形成されたフィルター内に移送され、該フィルター内でプレス処理され、重金属が含まれた生コン残渣物からなる脱水ケーキと重金属を含まない水とに分離され、該水は上澄水槽に送られた後、再利用される、
ことを特徴とし、
または、
生コン車の生コンドラムから生コンを送出して所定の構築箇所へ搬入後、生コン残渣が残る生コンドラム内に、
生コン残渣の固形物が10%乃至20%、水が80%乃至85%程度の割合となるよう水を注入し、水の注入後には、前記生コン残渣を水と固形物とに分離させる分離剤を投入し、
分離剤投入後は、前記生コン残渣が固まらないよう前記生コンドラムを回転させ、前記生コン残渣を水と砂利及び砂を含む生コン残渣固形物とに予め
前記生コンドラム内で分離させ、次いで、
さらに前記生コンドラムを回転させて、前記砂利及び砂を含む生コン残渣固形物を砂利及び砂と重金属が封入された生コン残渣物とに分離
し、
前記投入する分離剤は、ペーパースラッジが28乃至68重量部、無水石膏が10乃至50重量部、硫酸バンドが3乃至43重量部、消石灰が8乃至48重量部、ソーダ灰が0.4乃至28重量部、ポルトランドセメントが0.3乃至26重量部、高分子ポリマーが0.1乃至11重量部、チオ硫酸ソーダが0.15乃至23重量部、硫酸第1鉄が0.1乃至22重量部、シリカが0.05乃至21重量部、を含んで配合構成され
てなり、
前記分離後、砂利及び砂と重金属が封入された生コン残渣物とがドラム内から取り出され、網目状に構成されたバイブロスクリーン上に送出され、前記バイブロスクリーンは水平方向に揺動され、バイブロスクリーンの網目を抜けた生コン残渣物や水は原水槽に貯留され、バイブロスクリーン上には網目を通過しない砂利が残り、該砂利はベルトコンベアを介して所定の回収箇所に回収され、重金属が混入した生コン残渣物が付着しない砂利となり、
原水槽に貯留された水とバイブロスクリーンの網目を抜けた生コン残渣物はポンプにより吸い上げられ、クラッシュファイヤーに投入され、クラッシュファイヤー内では、さらに水と重金属を含む生コン残渣物と砂とに分離され、前記砂は洗浄を経てリサイクルが可能な砂として回収され、水と重金属を含んだ生コン残渣物はスラッジ水槽に移送され、該スラッジ水槽内では撹拌された後、ろ布で形成されたフィルター内に移送され、該フィルター内でプレス処理され、重金属が含まれた生コン残渣物からなる脱水ケーキと重金属を含まない水とに分離され、該水は上澄水槽に送られた後、再利用される、
ことを特徴とし、
または、
前記
生コンドラム内の生コン残渣に洗浄水を投入して分離処理物を形成し、
前記分離剤は前記分離処理物の
容量の1%乃至3%の分量を投入した、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる生コン残渣の処理方法であれば、生コン車のドラム内を洗浄すると共に、前記ドラム内から生コンの残渣を取り出し、それを網目状のパイプロスクリーン上に載置して、砂利と砂とを回収する際、前記回収した砂利と砂には残渣のコンクリートが付着せず、そのため、土壌基準値以上の重金属も付着せず、もって、これら砂利や砂も産業廃棄物として処理せずにリサイクルして再利用でき、しかも、砂利や砂から分離した水についても,重金属が混入していないため下水として処理することができるとの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図に示す実施例に基づき説明する。
【0017】
図1は生コン残渣処理工程の一例を示すもので、符号1は生コン車を示す。
【0018】
なお、本発明において、生コン残渣処理は、生コン車1の生コンドラム2に限定はされない。生コン車1に積まれていない生コンドラム2の生コン残渣処理にも適用されるものである。
【0019】
生コン車1は構築物の所定構築箇所に到着後、生コン車1から生コンを前記構築箇所へ送出する。
【0020】
その後、生コン車1側では、生コン残渣が残るドラム2内に、生コン残渣を水と固形物とに分離すべく分離剤を投入する作業を行う。
【0021】
ここで、分離剤の投入時期についても何ら限定がなく、生コンを搬入した現場での投入ではなく、生コン残渣処理場に帰社した後、分離剤を投入しても構わない。しかし、ドラム2内で生コン残渣が固まらないようドラム2は回転させておくことが必要である。
【0022】
なお、前記分離剤の投入前には、前記ドラム2内に洗浄水を注入し、ドラム2内を洗浄するが、生コン残渣はドラム2内の壁面に付着して容易に剥がれない。
【0023】
例えば、洗浄水の注入は、10トン車の生コン車1の場合は、ドラム2内で約30リットルの容量となるまで行われることがある。そして、生コン残渣と水との割合は、例えば生コン残渣の固形物が10%乃至20%、水が80%乃至85%程度の割合となる。
【0024】
この30リットルの容量に対し、分離剤は400g程度の投入となる。すなわち、分離剤の投入は、全体の容量の約1%乃至3%の分量で充分機能するものとなる。
【0025】
分離剤投入後は、生コン車1のドラム2を回転させる。例えば、生コン車1の帰社戻り運転中の時間を利用して、前記ドラム2を回転させても構わない。
【0026】
そして、前記の回転作業により生コン残渣を
水と砂利及び砂を含む生コン残渣固形物とに予めドラム2内で分離させるものとする。ここで、ドラム2を回転させる時間については何ら限定されないが、例えば数分間乃至数十分間で構わない。前記分離剤投入後、ドラム2を数分間乃至数十分間回転させることにより、分離剤がドラム内部のあらゆる箇所に行き渡り、水と砂利及び砂と重金属が封入された生コン残渣
物とに分離させるものとなる。
【0027】
前記投入する分離剤は、ペーパースラッジが28乃至68重量部、無水石膏が10乃至50重量部、硫酸バンドが3乃至43重量部、消石灰が8乃至48重量部、ソーダ灰が0.4乃至28重量部、ポルトランドセメントが0.3乃至26重量部、高分子ポリマーが0.1乃至11重量部、チオ硫酸ソーダが0.15乃至23重量部、硫酸第1鉄が0.1乃至22重量部、シリカが0.05乃至21重量部、を含んで配合構成されている。この分離剤の詳細は後述する。
【0028】
帰社した生コン車1は
図1に示すように、ドラム2内から前述の例えば30リットルの生コン残渣が取り出され、例えば網目状に構成されたバイブロスクリーン3上に送出され、載置される。バイブロスクリーン3は水平方向に揺動され、バイブロスクリーン3の網目を抜けたコンクリート残渣や水は原水槽4に貯留される。
【0029】
バイブロスクリーン3上には網目を通過しない砂利6が残り、該砂利6はベルトコンベア5を介して所定の回収箇所に回収される。
【0030】
しかして、この砂利6には、前記分離剤が投入されたドラム2内でコンクリート残渣から確実に分離され、もって、重金属が混入したコンクリート残渣が付着せず、また、付着しても簡単に剥がれるものとなり、リサイクルできる砂利6となっている。
【0031】
原水槽4に貯留された水とバイブロスクリーン3の網目を抜けたコンクリート残渣はポンプにより吸い上げられ、クラッシュファイヤー7に投入される。
【0032】
クラッシュファイヤー7内では、さらに水と重金属を含む生コン残渣と砂8とに分離され、前記砂8は重金属を含む生コン残渣と分離され、洗浄などを経てリサイクルが可能な砂8として回収される。
【0033】
次に、水と重金属を含んだ生コン残渣はスラッジ水槽9に移送され、該スラッジ槽9内では撹拌機10によって撹拌された後、ろ布などで形成されたフィルター内に移送され、このフィルタープレス11内でプレス処理される。
【0034】
プレス処理されると、いわゆる重金属が含まれた生コン残渣からなる脱水ケーキ12と重金属を含まない水13とに分離され、この水13は上澄水槽14に送られた後、各箇所で再利用されるものとなる。
【0035】
ここで、分離剤につき説明する。
【0036】
該分離剤は、まず、ペーパースラッジが28乃至68重量部、配合される。
【0037】
このペーパースラッジ(paper sludge)は、例えば、製紙工程で排出される廃棄物であり、セルロースを含む繊維物が主成分であり、最近ではこれを焼却してできる炭化物(PSC)が更なる有効資源として注目されている。
【0038】
そして、炭化させたペーパースラッジ灰(PSC)は、表面が多孔質になっていて、そのため、消臭剤・化学物質吸着材など多岐にわたる用途が期待されており、本発明ではこのペーパースラッジを28乃至68重量部、配合するものとする。
【0039】
次に、無水石膏が10乃至50重量部、配合される。無水石膏とは、結晶水を持たない硫酸カルシウムで、可溶性無水石膏(III型無水石膏)と不溶性無水石膏(II型無水石膏)がある。半水石膏を加熱(180℃〜190℃)して得られる可溶性無水石膏は、空気中の水分を吸着して半水石膏に戻る。一方、不溶性無水石膏は天然に存在するが、二水石膏を300℃〜700℃で焼成することでも得られる。不溶性無水石膏は水を加えても容易に水和反応しないが、凝結促進剤を加えて硬化させることができる。本発明では、可用性無水石膏が用いられるものとなる。
【0040】
また、硫酸バンドが3乃至43重量部、配合される。当該硫酸バンドは、本発明において汚泥水中の浮遊物を沈降させるために用いられる。
【0041】
次に、消石灰が8乃至48重量部、配合される。消石灰の原料は石灰石であり、該石灰石は粉砕・焼成・加水(消化)等の工程を経る事で、炭酸カルシウム(炭カル)、生石灰、消石灰と名前を変え、使用方法も変わる。生石灰に加水して消化、熟成させたものが消石灰となる。
【0042】
CaO(酸化カルシウム)+H
2O(水)→Ca(OH)
2(水酸化カルシウム)
形状は白色の微粉体で、粒径は150μm以下が主体となる。かさ比重は0.4〜0.55程度、難溶解性であるが、スラリーにすると強いアルカリ性を示す。
【0043】
飲料水のpHは5.8〜8.6と規定されている為、原水の酸性度が高い場合に消石灰の強いアルカリ性を利用してpH調整(中和)目的に凝集池や沈殿池に注入される場合がある。但し、消石灰は粉体を溶解する手間がかかりハンドリングの悪さから原水のpH調整用途で使用されている現場は少なくなっている。むしろ赤水防止及び配管内壁に被膜を作る目的で配水池に消石灰を注入する事例が増えている。また、家庭から出た排水は下水処理場で処理されるが、反応槽で微生物により分解された汚泥を凝集沈殿させる際に、消石灰は、他の無機凝集剤等と併せて使用される。又、脱臭・殺菌目的で注入する場合もある。
【0044】
さらに、ゴミ焼却場等の排ガス中のSOxやHCl除去用途で消石灰が使用されており、またバグフィルターで回収した飛灰から砒素等の不純物が溶出するのを防止する目的で灰加湿器に粉末消石灰を供給する用途もある。ごみ固形燃料(RDF)成型用途では、殺菌作用を利用して微生物による発酵を抑える為に消石灰を混合する。
【0045】
その他、製糖工場で砂糖を精製する際に、高濃度の砂糖水溶液に消石灰を加え二酸化炭素(CO
2)を吹き込み、炭酸カルシウム(CaCO
3)を生成し、不純物を吸着して沈殿除去するのに使用されている。この様に、活躍の場面は多岐に渡り、本発明の分離剤においても汚泥水の存する固形物を凝集沈殿させるに際し重要な役目を果たしている。
【0046】
次に、ソーダ灰が0.4乃至28重量部、配合される。ソーダ灰とは炭酸ナトリウムであり、当該ソーダ灰はガラス原料、石けん、洗剤、無機化学向け原料あるいは食品添加物用途など幅広い分野で利用される。本発明では、主に、水処理助剤として使用される。
【0047】
また、ポルトランドセメントが0.3乃至26重量部、配合される。
【0048】
一般に「セメント」とは「ポルトランドセメント」を指標し、特に普通ポルトランドセメントを指している。これは、普通ポルトランドセメントの用途範囲が非常に広く、「オールラウンドなセメント」と指標されるからである。
【0049】
しかしながら、本発明においてポルトランドセメントには、普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩の各種ポルトランドセメントのいずれかの一種またはいずれかのセメントを選択して混合されたものを指標する。
【0050】
次に、高分子ポリマーが0.1乃至11重量部、配合される。高分子ポリマーは、少ない使用量であっても優れた凝集効果を発揮する。またPH値により効果の変化があり、中性からアルカリ性を示す汚泥水の分離処理に優れている。ここで高分子ポリマーとしてはアニオン系高分子ポリマーが好ましい。
【0051】
次に、チオ硫酸ソーダが0.15乃至23重量部、配合される。チオ硫酸ソーダとは別名チオ硫酸ナトリウムとも称され、水処理助剤として使用される。
【0052】
次に、硫酸第1鉄が0.1乃至22重量部、配合される。硫酸第一鉄は、酸化第二鉄・紺青等の顔料・屎尿処理・産業廃水(ヘドロ等)の中和・凝集沈降剤・土壌改良剤などの多用途に対応する。脱硫及び脱臭効果に関し、本品は硫化水素・アンモニアを同時吸着する効果が優れており、屎尿並びに下水処理・鶏糞乾燥時の脱臭、魚腸骨処理工場の脱臭等と悪臭公害防止に最適とおいわれている。本発明において沈殿促進剤として機能するものとなる。
【0053】
次に、シリカが0.05乃至21重量部を含んで配合される。クロロシラン類・珪酸ナトリウムなどから生産される二酸化珪素(SiO2)である。本発明において水処理助剤として使用される。
【0054】
次に、
図2を参照して本実施例の具体例を説明する。
【0055】
本実施例では、ペーパースラッジを60g、無水石膏を20g、硫酸バンドを13g、消石灰を5g、ソーダ灰を10g、ポルトランドセメントを15g、高分子ポリマーを2g、チオ硫酸ソーダを5g、硫酸第1鉄を5g、シリカを15g配合し、本発明による分離剤150gを生成した。
【0056】
そして、当該分離剤を例えば工場などあるいは建設現場などに生コンを供給した生コン車1のドラム2内の生コン残渣について適用した。
【0057】
ドラム2内への洗浄水の注入は、ドラム2内で全体の容量が約30リットルの容量となるまで行われる。そして、生コン残渣と水との割合は、例えば生コン残渣の固形物が約15%乃至20%、水が約80%乃至85%程度の割合となる。
【0058】
この30リットルの容量に対し、分離剤は400g程度の投入となる。すなわち、分離剤の投入は、全体の容量の約1%乃至3%の分量で充分機能するものとなる。
【0059】
そして、約4分間ドラム2を回転させると、水と砂利と砂と重金属を含んだ固形物とに分離した。該固形物は含水率80%程度の固形物であり、充分に手で持てる程度に固まるものとなった。そしてその固形物内には六価クロムなどの重金属を閉じ込めることができた。よって分離した水、砂利、砂には前記重金属は土壌環境基準値以上は含まれていないものであった。
【符号の説明】
【0060】
1 生コン車
2 ドラム
3 バイブロスクリーン
4 原水槽
5 ベルトコンベア
6 砂利
7 クラッシュファイヤー
8 砂
9 スラッジ水槽
10 撹拌機
11 フィルタープレス
12 脱水ケーキ
13 水
14 上澄水槽