(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296649
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】シール構造、及び回転機械
(51)【国際特許分類】
F01D 11/08 20060101AFI20180312BHJP
F01D 5/20 20060101ALI20180312BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20180312BHJP
F01D 11/02 20060101ALI20180312BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
F01D11/08
F01D5/20
F01D25/00 M
F01D11/02
F16J15/447
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-42142(P2014-42142)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2015-169077(P2015-169077A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】松本 和幸
(72)【発明者】
【氏名】桑村 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】大山 宏治
(72)【発明者】
【氏名】田中 良典
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−068227(JP,A)
【文献】
特開2013−019537(JP,A)
【文献】
特開2013−199860(JP,A)
【文献】
特開2006−291967(JP,A)
【文献】
特開2002−228014(JP,A)
【文献】
特開2013−209981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/02
F01D 11/00−24
F01D 25/00
F16J 15/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転するロータの外周面と、前記ロータを径方向外周側から囲うように配置されたステータの内周面との間の間隙をシールするシール構造であって、
前記ロータの外周面と前記ステータの内周面のうちの一方に軸線方向に並べて設けられ、前記ロータの軸線方向の上流側を向く段差面と、を有して他方側に突出する複数のステップ部と、
前記他方に設けられ、各々の前記ステップ部の周面に向けて延出し、対応するステップ部の周面との間に微小隙間を形成するシールフィンと、を有し、
前記シールフィンは、径方向において前記他方から所定距離の領域よりさらに前記一方側の先端近傍が、上流側に向けて傾斜し、かつ、前記所定距離の領域に突起物が形成されておらず、
前記微小隙間をHとし、
前記シールフィンと、前記ステップ部の前記軸線方向上流側における段差面との間の距離をLとすると、全ての前記ステップ部及び全ての前記シールフィンにおいて、以下の式を満足することを特徴とするシール構造。
1.8<L/H<2.2
【請求項2】
前記シールフィンの角度は、径方向において前記他方から所定距離の領域まで連続的に変化していることを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシール構造を備えることを特徴とする回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータとステータとの間の間隙をシールするシール構造、及び回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、回転機械である蒸気タービンの一種として、ケーシングと、ケーシングの内部に回転自在に設けられた軸体(ロータ)と、ケーシングの内周部に固定配置された複数の静翼と、これら複数の静翼の下流側において軸体に放射状に設けられた複数の動翼とを備えたものがある。このような蒸気タービンのうち衝動タービンの場合は、蒸気(流体)の圧力エネルギーを静翼によって速度エネルギーに変換し、この速度エネルギーを動翼によって回転エネルギー(機械エネルギー)に変換している。また、反動タービンの場合は、動翼内でも圧力エネルギーが速度エネルギーに変換され、蒸気が噴出する反動力により回転エネルギー(機械エネルギー)に変換される。
【0003】
この種の蒸気タービンでは、動翼の先端部と、動翼を囲繞して蒸気の流路を形成するケーシングとの間に径方向の間隙が形成され、また、静翼の先端部と軸体との間にも径方向の間隙が形成されているのが通常である。しかし、動翼先端部とケーシングとの間隙を下流側に通過する漏洩蒸気は、動翼に対して回転力を付与しない。また、静翼先端部と軸体との間隙を下流側に通過する漏洩蒸気は、その圧力エネルギーが静翼によって速度エネルギーに変換されないため、下流側の動翼に対して回転力をほとんど付与しない。したがって、蒸気タービンの性能向上のためには、間隙を通過する漏洩蒸気の流量(漏洩流量)を低減することが重要となる。
【0004】
従来では、例えば特許文献1のように、動翼の先端部に、軸方向上流側から下流側に向かって高さが次第に高くなる複数のステップ部を設け、ケーシングに、各ステップ部に向けて延出する複数のシールフィンを設け、各ステップ部と各シールフィンの先端との間に微小隙間を形成した構造のタービンが提案されている。
このタービンでは、上流側から間隙に入り込んだ流体がステップ部の段差面に衝突することで、段差面の上流側に主渦が発生し、段差面の下流側(微小隙間の上流側近傍)に剥離渦が発生する。そして、微小隙間の上流側近傍に生じる剥離渦によって、微小隙間を通り抜ける漏れ流れの低減化が図られている。すなわち、動翼の先端部とケーシングとの間隙を通過する漏洩流体の流量の低減化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−080452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、蒸気タービンの性能向上に対する要望は強く、したがって漏洩流量をさらに低減化することが求められている。
【0007】
本発明は、ロータとステータとの間の間隙をシールするシール構造において、漏洩流量をより低減化した高性能なシール構造、及び回転機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様によれば、シール構造は、軸線回りに回転するロータの外周面と、前記ロータを径方向外周側から囲うように配置されたステータの内周面との間の間隙をシールするシール構造であって、前記ロータの外周面と前記ステータの内周面のうちの一方に軸線方向に並べて設けられ、前記ロータの軸線方向の上流側を向く段差面と、を有して他方側に突出する複数のステップ部と、前記他方に設けられ、各々の前記ステップ部の周面に向けて延出し、対応するステップ部の周面との間に微小隙間を形成するシールフィンと、を有し、前記シールフィンは、径方向において前記他方から所定距離の領域よりさらに前記一方側の先端近傍が、上流側に向けて傾斜し、かつ、前記所定距離の領域に突起物が形成されて
おらず、前記微小隙間をHとし、前記シールフィンと、前記ステップ部の前記軸線方向上流側における段差面との間の距離をLとすると、全ての前記ステップ部及び全ての前記シールフィンにおいて、以下の式を満足する。
1.8<L/H<2.2
【0009】
このような構成によれば、従来の場合と同様に、上流側から間隙に入り込んだ流体が各々のステップ部の段差面に衝突することで、段差面の上流側には主渦が発生する。また、各々のステップ部の段差面と周面との角部(エッジ)において主渦から一部の流れが剥離することにより、段差面の下流側に位置する各々のステップ部の周面上には、主渦と反対方向に回る剥離渦が発生する。この剥離渦は、シールフィンの先端からステップ部の周面に向かうダウンフローを生じさせるため、剥離渦がシールフィンの先端とステップ部との間の微小隙間を通過する流体を低減する縮流効果を奏する。
【0010】
そして、シールフィン上において他方側から一方側に向かって流れる流体が、シールフィンの先端近傍の傾斜により上流側に戻されつつ、微小隙間を通り抜けることによって、流体がシールフィンの先端近傍を迂回するように流れる。この流体の流れと剥離渦とにより、縮流効果を強め、漏洩流量を低減することができる。
【0012】
このような構成によれば、後述するシミュレーション結果に示すように、剥離渦による縮流効果がより高くなり、漏洩流量をさらに低減することができる。
【0013】
上記シール構造において、前記シールフィンの角度は、径方向において前記他方から所定距離の領域まで連続的に変化している構成としてもよい。
【0014】
このような構成によれば、発生した主渦や剥離渦の流れがシールフィンによって阻害されにくくなるため、シールフィンの先端部近傍の傾斜の効果をより強めることができる。
【0015】
また、本発明は上記いずれかのシール構造を備える回転機械を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロータの外周面と、ロータを径方向外周側から囲うように配置されたステータの内周面との間の間隙をシールするシール構造において、縮流効果を強め、漏洩流量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の蒸気タービンの概略構成断面図である。
【
図2】本発明の実施形態を示す図であって、
図1における要部Iを示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の実施形態を示す図であって、
図2のシールフィンを示す拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の蒸気タービンの作用説明図である。
【
図5】微小隙間を流れる蒸気の挙動を説明する図であり、(a)は本発明の実施形態のシールフィンにおける蒸気の挙動を、(b)は従来の傾斜の無いシールフィンにおける蒸気の挙動を説明する図である。
【
図6】距離Lと微小隙間Hとの縦横比L/Hと、微小隙間Hを通過する蒸気の流量係数Cdとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の回転機械である蒸気タービンについて図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の蒸気タービン1は、ケーシング10(ステータ)と、ケーシング10の内方に回転自在に設けられ、動力を図示しない発電機等の機械に伝達する回転軸30と、ケーシング10に保持された静翼40と、回転軸30に設けられた動翼50と、回転軸30を軸回りに回転可能に支持する軸受部60とを備えて大略構成されている。
【0019】
蒸気Sは、図示しない蒸気供給源と接続された蒸気供給管20を介して、ケーシング10に形成された主流入口21から導入され、蒸気タービン1の下流側に接続された蒸気排出管22から排出される。
【0020】
ケーシング10は、内部空間が気密に封止されていると共に、蒸気Sの流路とされている。このケーシング10の内壁面には、回転軸30が挿通されるリング状の仕切板外輪11が強固に固定されている。
軸受部60は、ジャーナル軸受装置61及びスラスト軸受装置62を備えており、回転軸30を回転自在に支持している。
【0021】
静翼40は、ケーシング10から内周側に向かって伸び、回転軸30を囲繞するように放射状に多数配置される環状静翼群を構成しており、それぞれ上述した仕切板外輪11に保持されている。
【0022】
これら複数の静翼40からなる環状静翼群は、回転軸30の軸方向(以下、単に軸方向と呼ぶ)に間隔を空けて複数形成されており、蒸気の圧力エネルギーを速度エネルギーに変換して、下流側に隣接する動翼50に流入させる。
【0023】
動翼50は、回転軸30の回転軸本体31の外周部に強固に取り付けられ、各環状静翼群の下流側において、放射状に多数配置されて環状動翼群を構成している。
これら環状静翼群と環状動翼群とは、一組一段とされている。このうち、最終段における動翼50の先端部は、回転軸30の周方向(以下、単に周方向と呼ぶ)に隣接する動翼50の先端部同士と連結されておりシュラウド51(ロータ)と呼ばれている。
【0024】
図2に示すように、動翼50の先端部をなすシュラウド51は、ケーシング10の仕切板外輪11との間に径方向の間隙を介して対向配置されている。そして、シュラウド51とケーシング10の仕切板外輪11との間には、シール構造2が設けられている。以下、シール構造2の構成要素について詳細に説明する。
【0025】
シュラウド51には、段差面53(53A〜53C)を有して仕切板外輪11側に突出する三つのステップ部52(52A〜52C)が、軸方向に並べて設けられている。
動翼50から三つのステップ部52A〜52Cの外周面(周面)54A〜54C(54)に至る三つのステップ部52A〜52Cの突出高さは、軸方向の上流側から下流側に向かうにしたがって漸次高くなるように設定されている。これにより、各々のステップ部52の段差面53は、軸方向の上流側に向いている。また、本実施形態では、各々のステップ部52の段差面53が径方向に平行しており、三つの段差面53A〜53Cの高さが同一に設定されている。さらに、本実施形態では、各々のステップ部52の外周面54が軸方向に平行している。
【0026】
一方、仕切板外輪11には、シュラウド51に対応する部位に周方向に延びる環状溝12が形成されており、本実施形態では、環状溝12が仕切板外輪11の内周面から径方向外側に窪んで形成されている。前述したシュラウド51は、この環状溝12内に入り込むように配されている。
そして、前述した三つのステップ部52A〜52Cに対向するように径方向内側に向く環状溝12の底部には、三つの環状凹部13(13A〜13C、内周面)が軸方向に並べて形成されている。三つの環状凹部13A〜13Cは、上流側から下流側に向かって、段差により漸次拡径して形成されている。
【0027】
また、軸方向に隣り合う二つの環状凹部13,13の境界に位置する各々のケーシング側端縁部14には、シュラウド51に向けて径方向内側に延出するシールフィン5(5A〜5C)が設けられている。これらケーシング側端縁部14及びシールフィン5の軸方向位置は、各々のステップ部52の外周面54に対向するように設定されている。具体的に説明すれば、三つのシールフィン5A〜5Cは、軸方向に間隔をあけて配列され、三つのステップ部52A〜52Cに1:1で対応するように設けられている。そして、本実施形態では、三つのシールフィン5A〜5Cが軸方向に等間隔で配列されている。
【0028】
各々のステップ部52の外周面54と各々のシールフィン5の先端との間には、径方向の微小隙間H(H1〜H3)が画成されている。微小隙間Hの各寸法は、ケーシング10や動翼50の熱伸び量、動翼50の遠心伸び量等を考慮した上で、両者が接触しない安全な範囲で、最小のものに設定されている。そして、本実施形態では、三つの微小隙間H1〜H3の寸法が同一に設定されている。
【0029】
そして、以上のようにシールフィン5が設けられることで、シュラウド51と仕切板外輪11との間には、三つのキャビティC(C1〜C3)が軸方向に配列して形成されている。各々のキャビティCは、各々のステップ部52に対応するシールフィン5と、このシールフィン5に対して軸方向上流側に対向する隔壁との間に形成されている。
なお、各キャビティCの径方向寸法Dと軸方向寸法Wとの比D/W(キャビティの縦横比D/W)は、後述するように、同一のキャビティC内に発生する剥離渦SVの大きさが主渦MVよりも小さくなるように、1.0に近くなるように設定されることが好ましい(
図4参照)。
【0030】
図3に示すように、本実施形態のシールフィン5は、径方向における環状凹部13から所定距離の領域R1よりさらにシュラウド51側の先端近傍が、上流側に向けて傾斜している。即ち、本実施形態のシールフィン5は、シールフィン5の先端近傍だけが部分的に曲げられており、先端部近傍に上流側に傾斜する折曲部19が形成されている。
【0031】
また、シールフィン5と、それに対応するステップ部52の軸方向上流側における段差面53との間の距離(各々の微小隙間Hから上流側の段差面53に至る各々のステップ部52の外周面54の長さ寸法)をLとすると、この距離Lのうち少なくとも1つは、以下の式(1)を満足して形成されている。
1.25<L/H<2.75・・・ (1)
即ち、距離Lは微小隙間Hの2倍程度に設定されている。
【0032】
また、シールフィン5全体の角度は、径方向において環状凹部13から所定距離の領域R1まで連続的に変化している。即ち、シールフィン5の径方向における領域R1においては、シールフィン5には突起物は形成されていない。
【0033】
ここで、上記の構成からなる蒸気タービン1の動作について説明する。
まず、図示しないボイラなどの蒸気供給源から蒸気供給管20を介して、蒸気Sがケーシング10の内部空間に流入する。
ケーシング10の内部空間に流入した蒸気Sは、各段における環状静翼群と環状動翼群とを順次通過する。この際には、圧力エネルギーが静翼40によって速度エネルギーに変換され、静翼40を経た蒸気Sのうちの大部分が同一の段を構成する動翼50間に流入し、動翼50により蒸気Sの速度エネルギー・圧力エネルギーが回転エネルギーに変換されて、軸体30に回転が付与される。一方、蒸気Sのうちの一部(例えば、数%)は、静翼40から流出した後、環状溝12内(動翼50のシュラウド51とケーシング10の仕切板外輪11との間隙)に流入する、いわゆる、漏洩蒸気となる。
【0034】
図4に示すように、環状溝12内に流入した蒸気Sは、まず、第一キャビティC1に流入すると共に一段目のステップ部52Aの段差面53Aに衝突して、上流側に戻るように流れる。これにより、第一キャビティC1内には、反時計回り(第一回転方向)に回る主渦MV1が発生する。
その際、特に一段目のステップ部52Aの段差面53Aと外周面54Aとの角部(エッジ)において、主渦MV1から一部の流れが剥離されることで、一段目のステップ部52Aの外周面54A上には、主渦MV1と反対の時計回り(第二回転方向)に回る剥離渦SV1が発生する。
【0035】
この剥離渦SV1は、一段目のステップ部52Aとシールフィン5Aとの間の第一微小隙間H1の上流側近傍に位置している。特に、剥離渦SV1のうち径方向内側に向かうダウンフローが第一微小隙間H1の直前で生じるため、第一キャビティC1から第一微小隙間H1を通って下流側の第二キャビティC2に流入する漏れ流れを低減する縮流効果が、上記剥離渦SV1によって得られる。
【0036】
蒸気Sが、第一キャビティC1から第一微小隙間H1を通り抜けて第二キャビティC2内に流入すると、第二キャビティC2内には第一キャビティC1の場合と同様に主渦MV2が発生するとともに、剥離渦SV2が発生する。
さらに、蒸気Sが第二微小隙間H2を通過して第三キャビティC3内に流入すると、第一、第二キャビティC1,C2の場合と同様に、第三キャビティC3内には、主渦MV3が発生するとともに、剥離渦SV3が発生する。
【0037】
図5(a)に示すように、シールフィン5上において径方向外周側から径方向内周側に向かって流れる蒸気Sは、シールフィンの先端近傍の折曲部19の傾斜により上流側に戻されつつ、微小隙間Hを通り抜けることによって、蒸気Sがシールフィン5の先端近傍を迂回するように流れる。この蒸気Sの流れと剥離渦SVとにより、縮流効果が強まり、擬似的な隙間V1が小さくなるため、漏洩流量を低減することができる。
【0038】
一方、
図5(b)に示すように、従来の傾斜の無いシールフィン105の場合、シールフィン105上において径方向外周側から径方向内周側に向かって流れる蒸気Sは、迂回量が小さいため、本実施形態のシールフィン5と比較すると擬似的な隙間V2は大きく、漏洩流量は、本実施形態のシール構造よりも大きくなる。
【0039】
上記実施形態によれば、シールフィン5上において上流側から下流側に向かって流れる蒸気Sが、シールフィン5の先端近傍の傾斜により上流側に戻されつつ、微小隙間Hを通り抜けることによって、蒸気Sがシールフィン5の先端近傍を迂回するように流れる。この蒸気Sの流れと剥離渦SVとにより、縮流効果を強め、漏洩流量を低減することができる。
【0040】
また、微小隙間をHとし、シールフィン5と、ステップ部52の軸方向上流側における段差面53との間の距離をLとすると、数式1.8<L/H<2.2を満たすように設定した。これにより、後述するシミュレーション結果に示すように、剥離渦SVによる縮流効果がより高くなり、漏洩流量をさらに低減することができる。
【0041】
また、シールフィン5の全体の角度が、径方向において環状凹部13から所定距離の領域R1まで連続的に変化していることにより、発生した主渦MVや剥離渦SVの流れがシールフィン5によって阻害されにくくなるため、シールフィン5の先端部近傍の傾斜の効果をより強めることができる。
【0042】
なお、上述した効果は、
図6に示すように、発明者が実施した実験の結果からも明らかである。
図6に示すグラフは、ステップ部52における縦横比L/Hと、対応する微小隙間Hを通過する蒸気Sの流量係数Cdとの関係について実験した結果である。このグラフでは、流量係数Cdが小さいほど、微小隙間Hを通過する蒸気Sの流量が小さいことを示している。
このグラフによれば、微小隙間Hについて、流量係数Cdを最小とする縦横比L/Hの最適値が存在することが分かる。微小隙間Hにおける縦横比L/Hの最適値は2.0である
【0043】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 蒸気タービン
2 シール構造
5(5A〜5C) シールフィン
10 ケーシング(ステータ)
11 仕切板外輪
12 環状溝
13(13A〜13C) 環状凹部(内周面)
14 端縁部
18 折曲点
19 折曲部
20 蒸気供給管
21 主流入口
22 蒸気排出管
30 回転軸
31 回転軸本体
40 静翼
50 動翼
51 シュラウド(ロータ)
52(52A〜52C) ステップ部
53(53A〜53C) 段差面
54(54A〜54C) 外周面
60 軸受部
61 ジャーナル軸受装置
62 スラスト軸受装置
C(C1〜C3) キャビティ
D 径方向寸法
H(H1〜H3) 微小隙間
L 距離
MV 主流
S 蒸気
SV 剥離流
W 軸方向寸法