【0008】
次に、本発明を実施するための形態のシャープペンシルについて説明する。なお、シャープペンシルにおいて、筆記芯の送り出される側を「先端側」とし、その反対側を「後端側」とする。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係るシャープペンシルについて、
図1〜
図15を参照しつつ説明する。
図1及び
図2に示すように、シャープペンシル10は、中空状の軸筒11と、軸筒11内に設けられて、筆記芯Lの把持及び解除を行うチャックユニット20とを備えている。
チャックユニット20は、筆記芯Lを収容する管状の芯ケース21と、芯ケース21の先端部に固着されて筆記芯Lを把持するためのチャック体22と、チャック体22の先端部に挿嵌された環状のチャックリング23と、チャック体22を挿通されてチャック体22及び芯ケース21を後方へ付勢するチャックスプリング24とを備えている。
図1に示すように、芯ケース21の後端部にはノック部材17が設けられている。本実施の形態に係るノック部材17は、芯ケース21の後端部に装着された受け台17aと、受け台17a内に挿嵌された消しゴム17bと、受け台17aに装着されたカバー17cとを備えている。
シャープペンシル10は、ノック部材17が軸筒11に対して先端方向へ押圧操作されることにより、チャックスプリング24の付勢力に抗して芯ケース21及びチャック体22が軸筒11内を前進し、チャック体22の先端部が、チャックリング23から先端側へ突出すると共に拡開されて、チャック体22が筆記芯Lを解放する状態となる。そして、ノック部材17の押圧操作が解除されることにより、チャックスプリング24の付勢力により芯ケース21及びチャック体22が軸筒11内を後退し、チャック体22の先端部がチャックリング23内に没入されて、チャック体22が筆記芯Lを把持する状態となる。
図1及び
図2に示すように、軸筒11は、前後方向に開口した筒状の軸筒本体12と、軸筒本体12の先端に装着された中空状の先具13とを備えている。
図2及び
図4に示すように、先具13は、外周が軸筒本体12の外周に連続し、先端にかけて滑らかに先細る先細部13aと、外周が先細部13aの後端から段状に順次縮径して、軸筒本体12内に挿着される挿入筒部13bとを備えている。本実施の形態では、軸筒本体12の先端部内周の雌ねじ12a(
図2参照)に挿入筒部13bの先端部外周の雄ねじ13cが螺合することにより、軸筒本体12と先具13とが固定されているが、他の周知の固定方法を用いてもよい。また、挿入筒部13bには、その後端縁から先端方向に伸びたスリット13dが対向位置に一対形成される。スリット13dには、軸方向の中間の位置に周方向の幅が拡大された拡大幅部13eが形成されている。
図2及び
図3に示すように、先具13内には、筆記芯Lを挿通可能なスライダ26が設けられており、先細部13aの先端開口からスライダ26の一部が外部へ突出可能となっている。また、先具13の挿入筒部13bには、芯ケース21を挿通された固定部材14が固定される。軸筒11におけるスライダ26と固定部材14との間には、チャックスプリング24の外周を覆うと共に芯ケース21の先端部外周に装着された先端側回転子31、及び、芯ケース21に挿通されるとともに先端側回転子31の後端部に挿入された後端側回転子32が設けられている。これらについて、以下に詳述する。
図6及び
図7に示すように、スライダ26は、先端にかけて外周を先細に形成された先端部26aと、先端部26aの後端から後端方向にかけて略同一の外径に形成された中間胴部26bと、外周を中間胴部26bの後端から後端方向にかけて段状に拡径された後端部26cとを有している。ここで、先具13の内周は、
図5に示すように、先端から後端にかけて段状に拡径しており、順次小径孔13f、中径孔13g及び大径孔13iが形成されている。小径孔13fは、スライダ26の先端部26a及び中間胴部26bが挿通可能であるが、スライダ26の後端部26cが挿通不能に形成されている。また、中径孔13g及び大径孔13iは、スライダ26の先端部26a、中間胴部26b及び後端部26cが挿通可能に形成されている。
図2に示すように、先具13に後端開口から挿入されたスライダ26は、一部が先具13の先端開口から外部へ突出するものの、中間胴部26b先端の段部26d(
図6参照)が中径孔13g先端の段部13h(
図5参照)に当接することにより、先具13におけるスライダ26の前進が阻止される。
図7に示すように、スライダ26の内周は、先端から後端にかけて段状又はテーパー状に順次拡径した形状となっており、軸方向中間の位置にチャックリング23の挿嵌される挿嵌部26eが形成されている。また、スライダ26の後端部26cの内周には、周方向に環状に凹んだ嵌合凹部26fが形成されている。また、スライダ26の先端部には、チャック体22の拡開時に筆記芯Lを保持可能な芯戻り止め27が設けられている。なお、スライダ26の先端部には、筆記芯Lを挿通されるガイドパイプ28が設けられているが、必ずしもガイドパイプ28を設ける必要はない。
図6に示すように、スライダ26には、その後端縁から先端方向に伸びた切り欠き部26gが形成されており、この切り欠き部26gと後述の先端側回転子31の延出部31eとが嵌合する。
図10及び
図11に示すように、固定部材14は、前後方向に開口した筒状に形成されており、その内部には芯ケース21が周方向に回転可能かつ軸方向に移動可能に挿通されている(
図2参照)。また、固定部材14は、先具13の挿入筒部13b内に挿嵌される大径部14cと、外周を大径部14cの先端から段状に縮径された小径部14bとを備えている。小径部14bは、後述する後端側回転子32内に挿入可能に形成されている(
図2参照)。大径部14cの外周には、径方向外方に突出した一対の係止突起14aが形成されている。一対の係止突起14aが先具13の拡大幅部13eにそれぞれ嵌合することにより、固定部材14が先具13に対して周方向に回転不能且つ軸方向に移動不能に取り付けられている。つまり、固定部材14は、先具13を含む軸筒11に対して固定されている。
図8及び
図9に示すように、先端側回転子31は、スライダ26の後端部26c内に挿入される先端側第1筒部31aと、外周を先端側第1筒部31aの後端から段状に拡径された先端側第2筒部31bとを有する。先端側第1筒部31aの先端には、径方向内方に突設されたフランジ部31cが形成されている。このフランジ部31cの突出端縁に囲まれた孔を、チャック体22の先端部、チャックリング23及びチャックスプリング24が通過できないように形成されている(
図2参照)。チャックスプリング23は、フランジ部31cの後端面から芯ケース21の先端縁に亘って配設されており、上述のようにチャック体22を後端方向へ付勢している。このチャック体22の先端部が、挿嵌されたチャックリング23を先端側回転子31のフランジ部31cに当接させており、先端側回転子31とチャックユニット20とが係合することとなる。
図8及び
図9に示すように、先端側第1筒部31aの外周には、径方向外方に突出した嵌合凸部31dが周方向に環状に形成されている。また、先端側第1筒部31aの外周には、先端側第2筒部31bの先端縁から先端方向に延出した延出部31eが形成されている。嵌合凸部31dがスライダ26の嵌合凹部26f(
図7参照)に嵌合するとともに、延出部31eがスライダ26の切り欠き部26g(
図7参照)に嵌合することにより、先端側回転子31とスライダ26とが周方向への相対回転不能に連結される。先端側第2筒部31bの内周には、後端にかけて段状に拡径した段部31fが形成されると共に、後述する複数の第1ラチェット歯44が周方向に連設されている。
図8及び
図9に示すように、後端側回転子32は、先端側回転子31の先端側第2筒部31b内に挿入される後端側第1筒部32aと、外周が後端側第1筒部32aの後端から段状に拡径した後端側第2筒部32bとを有する。先端側回転子31に後端開口から挿入された後端側回転子32は、その先端縁が先端側回転子31の段部31fに当接することにより、これ以上の前進が阻止されるようになっている(
図2参照)。なお、先端側回転子31の後端縁と後端側第2筒部32bの先端縁とが当接するように形成してもよい。
図9に示すように、後端側第2筒部32bの内周の先端部には、先端にかけて段状に縮径した段部32eが形成されている。
図12に示すように、後端側第2筒部32bの内部には、固定部材14の小径部14bの一部が挿嵌されている。この固定部材14の小径部14bの外周には、リターンスプリング33が後端側第2筒部32bの後端と固定部材14の大径部14cの先端縁との間に配設されており、リターンスプリング33が後端側回転子32を先端方向へ付勢している。このリターンスプリング33による後端側回転子32の付勢により、先端側回転子31、スライダ26及びチャックユニット20も先端方向に付勢されている。また、チャック体22の把持する筆記芯Lに後端方向への押圧力が負荷されると、リターンスプリング33の付勢力に抗して、チャックユニット20、スライダ26、先端側回転子31及び後端側回転子32が軸筒11内を後端方向へ後退するようになっている。
図12に示すように、固定部材14の外周に設けられた係合突起14dが、後端側回転子32に設けられた貫通孔32cに挿入係合されている。係合突起14d及び貫通孔32cは、軸筒11内における後端側回転子32の後退に伴いその後端側回転子32を一方の周方向に回転(正回転)させ、軸筒11内における後端側回転子32の前進に伴いその後端側回転子32を他方の周方向に回転(逆回転)させる変換手段40として機能する。これらについて、以下に詳述する。
図10及び
図11に示すように、固定部材14の小径部14bには、その先端から後端方向に延びた一対のスリット14eが2組形成されており、この一対のスリット14eに挟まれた各部分が、弾性変形可能な揺動片14fとなっている。各揺動片14fの外周には、径方向外方に向けて突出した係合突起14dが形成されている。小径部14bが後端側回転子32の後端側第2筒部32b内へ挿入される際、揺動片14fが径方向内方へ湾曲しつつ後端側第2筒部32b内を先端方向へ進入してゆき、係合突起14dが貫通孔32cに進入すると共に揺動片14fがその弾性力により常態に復帰するようになっている。
図8及び
図9に示すように、後端側回転子32の後端側第2筒部32bには、一対の貫通孔32cが対向する位置に形成されている。
図12及び
図13に示すように、各貫通孔32cには、揺動片14fの係合突起14dが挿入されている。各貫通孔32cは、後端側回転子32の周方向に対して傾斜して延びている。具体的には、各貫通孔32cは、後端側回転子32において正回転方向側の周方向へ延びるにしたがい後端側へ傾斜している。なお、本実施の形態では、各貫通孔32が後端側回転子32を厚み方向に貫通しているが、後端側回転子32の内周に窪んだ内周溝としてもよい。
図13に示すように、リターンスプリング33の付勢力に抗して後端側回転子32が後端方向へ後退すると、貫通孔32cが係合突起14dに対して摺動しつつ後端側回転子32が正回転することになる(
図15における矢印N方向、具体的には反時計回り)。なお、貫通孔32cが係合突起14dに対して最大限摺動するまで後端側回転子32が後退したとき、又は貫通孔32cが係合突起14dに対して最大限摺動する直前まで後端側回転子32が後退したとき、後端側回転子32の段部32eに固定部材14の小径部14bの先端が当接するように形成することが望ましい。
図12に示すように、リターンスプリング33の付勢力により後端側回転子32が先端方向へ前進すると、貫通孔32cが係合突起14dに対して摺動しつつ後端側回転子32が逆回転することになる(
図15における矢印R方向、具体的には時計回り)。
図8及び
図9に示した後端側回転子32は、先端側回転子31内に後端側第1筒部32aが挿入される。後端側回転子32には、周方向へ延びた第1弾性片42が延設されている。第1弾性片42には、延設方向の端部に第1ラチェット爪43が形成されている。先端側回転子31の内周には、周方向へ連設されると共に第1ラチェット爪43が選択的に係止可能な複数の第1ラチェット歯44が形成されている。第1弾性片42及び第1ラチェット歯44は、軸筒11内において後端側回転子32の正回転に伴い先端側回転子31を正回転させるものの、後端側回転子32の逆回転時には先端側回転子31に対して後端側回転子32を空回りさせる正回転送り手段41として機能する。これらについて、以下に詳述する。
図8に示すように、後端側回転子32の後端側第1筒部32aには、厚み方向に貫通した側孔32dが形成されている。側孔32dの側端縁から正回転方向側の周方向へ延びた第1弾性片42が、後端側第1筒部32aと一体に形成されている。第1弾性片42における延設方向の端部には、第1ラチェット爪43が形成されている。なお、本実施の形態では、第1弾性片42が後端側回転子32と一体に形成されているが、第1弾性片42と後端側回転子32とを別体に形成して、この第1弾性片42を後端側回転子32へ取付けるようにしても良い。
図15に示すように、複数の第1ラチェット歯44は、先端側回転子31の内周に周方向へ連設されている。隣接する2つの第1ラチェット歯44の間に、第1弾性片42の第1ラチェット爪43が入り込む。第1ラチェット歯44は、第1ラチェット爪43の端面43aが係止可能な第1係止歯面44aと、第1ラチェット爪43が摺接可能な第1緩傾斜歯面44bとを有しており、先端側回転子31の内周に第1係止歯面44aと第1緩傾斜歯面44bとが交互に周方向へ連続して形成されている。
後端側回転子32が軸筒11内を正回転(
図15における矢印N方向、具体的には反時計回り)する場合、第1ラチェット爪43の端面43aが第1ラチェット歯44の第1係止歯面44aに当接して、第1ラチェット爪43がこの第1ラチェット歯44を乗り越えることができない。そして、後端側回転子32の正回転に伴い、先端側回転子31が第1ラチェット爪43に押動されて正回転されるようになっている。これに対し、後端側回転子32が軸筒11内を逆回転(
図15における矢印R方向、具体的には時計回り)する場合、第1弾性片42が径方向内方へ変形すると共に、第1ラチェット爪43が第1緩傾斜歯面44bを摺動して第1ラチェット歯44を乗り越えることができる。そして、第1弾性片42が弾性変形しつつ第1ラチェット爪43が次の第1ラチェット歯44に接触することとなる。なお、本実施の形態では、先端側回転子31の内周に40個の第1ラチェット歯44が設けられており、第1弾性片42の第1ラチェット爪43が1つの第1ラチェット歯44を乗り越える毎に後端側回転子32が約9度逆回転するが、本発明がこれに限定されないことは言うまでもない。
図2及び
図3に示すように、スライダ26は、その内部に先端側第1筒部31aを挿入された状態で先端回転子31に連結されると共に、先具13内に相対回転可能に挿嵌されている。
図6及び
図7に示すように、スライダ26には、周方向へ延びた第2弾性片47が延設されている。第2弾性片47には、延設方向の端部に第2ラチェット爪48が形成されている。
図5に示すように、軸筒11の内周には、周方向へ連設されると共に第2ラチェット爪48が選択的に係止可能な複数の第2ラチェット歯49が形成されている。第2弾性片47及び第2ラチェット歯49は、軸筒11内において先端側回転子31の正回転を許容するものの先端側回転子31の逆回転を阻止する逆回転規制手段46として機能する。これらについて、以下に詳述する。
図6及び
図7に示すように、スライダ26の後端部26cには、厚み方向に貫通した側孔26hが形成されている。側孔26hの側端縁から逆回転方向側の周方向へ延びた第2弾性片47が、後端部26cと一体に形成されている。第2弾性片47における延設方向の端部には、第2ラチェット爪48が形成されている。なお、本実施の形態では、第2弾性片47がスライダ26と一体に形成されているが、スライダ26と第2弾性片47とを別体に形成して、この第2弾性片47をスライダ26に取付けるようにしても良い。
図14に示すように、複数の第2ラチェット歯49は、先具13の内周に周方向へ連設されている。隣接する2つの第2ラチェット歯49の間に、第2弾性片47の第2ラチェット爪48が入り込む。第2ラチェット歯49は、第2ラチェット爪48の端面48aが係止可能な第2係止歯面49aと、第2ラチェット爪48が摺接可能な第2緩傾斜歯面49bとを有しており、先具13の内周に第2係止歯面49aと第2緩傾斜歯面49bとが交互に周方向へ連続して形成されている。
軸筒11内において後端側回転子32の正回転によって先端側回転子31と共にスライダ26が正回転(
図14における矢印N方向、具体的には反時計回り)する場合、第2弾性片47が径方向内方へ変形するとともに、第2ラチェット爪48が第2緩傾斜歯面49bを摺動して第2ラチェット歯49を乗り越えることができる。そして、第2弾性片47が弾性変形しつつ第2ラチェット爪48が次の第2ラチェット歯49に接触することとなる。これにより、後端側回転子32が正回転する際にスライダ26が先具13に対して空回りするため、スライダ26及び先端側回転子31が正回転できるようになっている。これに対し、軸筒11内において後端側回転子32が逆回転する場合に、先端側回転子31及びスライダ26に対して逆回転方向(
図14における矢印R方向、具体的には時計回り)への力が働いても、第2ラチェット爪48の端面48aが第2ラチェット歯49の第2係止歯面49aに当接して、第2ラチェット爪48がこの第2ラチェット歯49を乗り越えることができない。また、上述のように、軸筒11内において後端側回転子32が逆回転する場合(
図15における矢印R方向、具体的には時計回り)、後端側回転子32の第1弾性片42が径方向内方へ変形すると共に第1ラチェット爪43が先端側回転子31の第1緩傾斜歯面44bを摺動して第1ラチェット歯44を乗り越えることができる。これにより、後端側回転子32が逆回転する際に先端側回転子31に対して空回りするため、先端回転子31及びスライダ26が逆回転せずに回転位置を維持するようになっている。
なお、本実施の形態では、先具13の内周に40個の第2ラチェット歯49が設けられており、第2弾性片47の第2ラチェット爪48が1つの第2ラチェット歯49を乗り越える毎にスライダ26が約9度正回転するが、本発明がこれに限定されないことは言うまでもない。
次に、シャープペンシル10の動作を説明する。
軸筒11の後端部に設けられたノック部材17がノック操作されると、チャックユニット20が筆記芯Lを順次先端方向へ繰り出し、スライダ26のガイドパイプ28から筆記芯Lの先端が外部へ突出する。突出した筆記芯Lの先端にリターンスプリング33の付勢力より大きな押圧力が負荷されると、筆記芯Lを把持するチャックユニット20、先端側回転子31、後端側回転子32及びスライダ26が軸筒11内を後端方向へ向けて後退する。後端側回転子32が軸筒11に対して後退すると、後端側回転子32の貫通孔32cが固定部材14の係合突起14dに対して摺動しつつ後端側回転子32が軸筒11に対して正回転(
図15中の矢印N方向)する。
そして、後端側回転子32が軸筒11に対して正回転すると、正回転送り手段41により先端側回転子31及びスライダ26も正回転する。即ち、先端側回転子31が後端側回転子32の第1ラチェット爪43に押動されて正回転し(
図14中の矢印N方向)、先端側回転子31に連結されたスライダ26が先具13内を空回りして正回転する。このとき、チャックリング23とチャックスプリング24とが先端側回転子31のフランジ部31cを挟持しており、先端側回転子31の正回転に伴いチャックユニット20も正回転することにより、チャック体22の把持する筆記芯も正回転することとなる。
突出した筆記芯L先端への押圧が解除されると、筆記芯Lを把持するチャックユニット20、先端側回転子31、後端側回転子32及びスライダ26が、リターンスプリング33の付勢力より軸筒11内を先端方向へ向けて前進する。後端側回転子32が前進すると、後端側回転子32の貫通孔32cが固定部材14の係合突起14dに対して摺動しつつ後端側回転子32が軸筒11に対して逆回転していく(
図15中の矢印R方向)。
また、後端側回転子32が軸筒11に対して逆回転していくと、逆回転規制手段46によりスライダ26及び先端側回転子31の逆回転が阻止されて、後端側回転子32が先端側回転子31内を空回りする。即ち、後端側回転子32の逆回転に伴い先端側回転子31及びスライダ26に対して逆回転方向(
図14中の矢印R方向)の力が働くが、スライダ26及び先端側回転子31が第2ラチェット爪48と先具13の第2ラチェット歯49とにより逆回転を阻止されて回転位置を維持し、後端側回転子32が先端側回転子31内を空回りして逆回転する。したがって、スライダ26及び先端側回転子31が軸筒11に対して逆回転せず、先端側回転子31に係合するチャックユニット20も、このチャックユニット20の把持する筆記芯Lも逆回転せずに回転位置を維持することとなる。
以上のように、第1の実施の形態によれば、筆圧により後端側回転子32が軸筒11内を後退する場合に、貫通孔32cが係合突起14dに対して最大限摺動するとき、第2弾性片47の第2ラチェット爪48が複数のラチェット歯49を乗り越えるように形成することができる。これにより、筆圧が強い場合には、軸筒11内における後端側回転子32の後退距離が長くなり、貫通孔32cが係合突起14dに対して摺動する距離が長くなり、第2弾性片47の第2ラチェット爪48の乗り越える第2ラチェット歯49数が多くなるため、筆記芯Lを大きな回転角度で回転させることができる。これに対し、筆圧が弱い場合には、軸筒11内における後端側回転子32の後退距離が短くなり、貫通孔32cが係合突起14dに対して摺動する距離が短くなり、第2弾性片47の第2ラチェット爪48の乗り越える第2ラチェット歯49数が少なくなるため、筆記芯Lを小さな回転角度で回転させることができる。したがって、筆圧の強弱に応じて筆記芯Lを適切な回転角度で回転させることが可能である。
なお、筆圧により後端側回転子32が軸筒11内を後退する場合に、貫通孔32cが係合突起14dに対して最大限摺動するとき、第2弾性片47の第2ラチェット爪48が1つのラチェット歯49を乗り越えるように形成することもできる。これにより、筆圧の強弱に拘らず筆記芯Lを常に一定の回転角度で回転させることが可能である。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係るシャープペンシルについて、
図16〜
図23を参照しつつ説明する。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同様な部品や部分については、第1の実施の形態と同じ符号を付し、これらについて繰り返し説明しない。
第1の実施の形態では、スライダ26が軸筒11(先具13)に対して相対回転可能に形成されているが、第2の実施の形態では、スライダ26が軸筒11(先具13)に対して相対回転不能に形成されている。
詳述すると、先具13の内周は、
図18に示すように、先端から後端にかけて段状に拡径されて、小径孔13fと大径孔13iとが形成されている。小径孔13fは、スライダ26の先端部26a及び中間胴部26bが挿通可能であるが、スライダ26の後端部26cが挿通不能に形成されている。また、大径孔13iは、スライダ26の先端部26a、中間胴部26b及び後端部26cが挿通可能に形成されている。さらに大径孔13iの先端部には、軸方向に延びる凸条13jが周方向に所定間隔毎に複数設けられている。
図19及び
図20に示すように、スライダ26の後端部26cの先端部外周には、軸方向に延びる凹溝26jが周方向に所定間隔毎に複数設けられている。これらの凹溝26jに先具13の凸条13jを嵌合させることにより、スライダ26が先具13に対して相対的に回転しなくなる。つまり、凹溝26jと凸条13jとがスライダ26の回り止めとして機能する。
また、第1の実施の形態では、第1回転子である先端側回転子31の嵌合凸部31dがスライダ26の嵌合凹部26fに嵌合するとともに、先端側回転子31の延出部31eとスライダ26の切り欠き部26gとが嵌合することにより、先端側回転子31とスライダ16とが相対回転不能に連結されている。これに対し、第2の実施の形態では、
図7及び
図8に示したスライダ26と先端側回転子31との回り止めとして機能する延出部31e及び切り欠き部26gが設けられておらず、
図20及び
図21に示すように、先端側回転子31の嵌合凸部31dとスライダ26の嵌合凹部26fとを嵌合させることにより、先端側回転子31とスライダ26とが周方向への相対回転可能に連結される。
また、第1の実施の形態では、第2弾性片47がスライダ26に設けられ、第2ラチェット歯49が軸筒11(先具13)の内周に設けられているが、第2の実施の形態では、
図16及び
図21や
図20に示すように、第2弾性片57が先端側回転子31に設けられ、第2ラチェット歯59がスライダ26の内周に設けられている。
詳述すると、
図21及び
図22に示すように、先端側回転子31の先端側第1筒部31aには、厚み方向に貫通した側孔31gが形成されている。側孔31gの側端縁から逆回転方向側の周方向へ延びた第2弾性片57が、先端側第1筒部31aと一体に形成されている。第2弾性片57における延設方向の端部には、第2ラチェット爪58が形成されている。なお、本実施の形態では、第2弾性片57が先端側回転子31と一体に形成されているが、先端側回転子31と第2弾性片57とを別体に形成して、この第2弾性片57を先端側回転子31に取付けるようにしても良い。
図20に示すように、複数の第2ラチェット歯59は、スライダ26の後端部26cの内周に周方向へ連設されている。隣接する2つの第2ラチェット歯59の間に、第2弾性片57の第2ラチェット爪58が入り込む。
図23に示すように、第2ラチェット歯59は、第2ラチェット爪58の端面58aが係止可能な第2係止歯面59aと、第2ラチェット爪58が摺接可能な第2緩傾斜歯面59bとを有しており、スライダ26の内周に第2係止歯面59aと第2緩傾斜歯面59bとが交互に周方向へ連続して形成されている。
軸筒11内において後端側回転子32の正回転によって先端側回転子31が正回転(
図23における矢印N方向、具体的には反時計回り)する場合、第2弾性片57が径方向内方へ変形するとともに、第2ラチェット爪58が第2緩傾斜歯面59bを摺動して第2ラチェット歯59を乗り越えることができる。そして、第2弾性片57が弾性変形しつつ第2ラチェット爪58が次の第2ラチェット歯59に接触することとなる。これにより、後端側回転子32が正回転する際に先端側回転子31がスライダ26に対して空回りするため、先端側回転子31が正回転できるようになっている。これに対し、軸筒11内において後端側回転子32が逆回転する場合に、先端側回転子31に対して逆回転方向(
図23における矢印R方向、具体的には時計回り)への力が働いても、第2ラチェット爪58の端面58aが第2ラチェット歯59の第2係止歯面59aに当接して、第2ラチェット爪58がこの第2ラチェット歯59を乗り越えることができない。また、第1の実施の形態と同様に、軸筒11内において後端側回転子32が逆回転する場合、後端側回転子32の第1弾性片42が径方向内方へ変形すると共に第1ラチェット爪43が先端側回転子31の第1緩傾斜歯面44bを摺動して第1ラチェット歯44を乗り越えることができる。これにより、後端側回転子32が逆回転する際に先端側回転子31に対して空回りするため、先端回転子31が逆回転せずに回転位置を維持するようになっている。
なお、本実施の形態では、スライダ26の内周に40個の第2ラチェット歯59が設けられており、第2弾性片57の第2ラチェット爪58が1つの第2ラチェット歯59を乗り越える毎に先端側回転子31が約9度正回転するが、本発明がこれに限定されないことは言うまでもない。
次に、シャープペンシル10の動作を説明する。
軸筒11の後端部に設けられたノック部材17がノック操作されると、チャックユニット20が筆記芯Lを順次先端方向へ繰り出し、スライダ26のガイドパイプ28から筆記芯Lの先端が外部へ突出する。突出した筆記芯Lの先端にリターンスプリング33の付勢力より大きな押圧力が負荷されると、筆記芯Lを把持するチャックユニット20、先端側回転子31、後端側回転子32及びスライダ26が軸筒11内を後端方向へ向けて後退する。後端側回転子32が軸筒11に対して後退すると、後端側回転子32の貫通孔32cが固定部材14の係合突起14dに対して摺動しつつ後端側回転子32が軸筒11に対して正回転する。
そして、後端側回転子32が軸筒11に対して正回転すると、正回転送り手段41により先端側回転子31も正回転する。即ち、先端側回転子31が後端側回転子32の第1ラチェット爪43に押動されて、先端側回転子31がスライダ26内を空回りして正回転する(
図23中の矢印N方向)。このとき、チャックリング23とチャックスプリング24とが先端側回転子31のフランジ部31cを挟持しており、先端側回転子31の正回転に伴いチャックユニット20も正回転することにより、チャック体22の把持する筆記芯も正回転することとなる。
筆記芯L先端への押圧が解除されると、筆記芯Lを把持するチャックユニット20、先端側回転子31、後端側回転子32及びスライダ26が、リターンスプリング33の付勢力より軸筒11内を先端方向へ向けて前進する。後端側回転子32が前進すると、後端側回転子32の貫通孔32cが固定部材14の係合突起14dに対して摺動しつつ後端側回転子32が軸筒11に対して逆回転していく。
また、後端側回転子32が軸筒11に対して逆回転していくと、逆回転規制手段46により先端側回転子31の逆回転が阻止されて、後端側回転子32が先端側回転子31内を空回りする。即ち、後端側回転子32の逆回転に伴い先端側回転子31に対して逆回転方向(
図23中の矢印R方向)の力が働くが、先端側回転子31が第2ラチェット爪58とスライダ26の第2ラチェット歯59とにより逆回転を阻止されて回転位置を維持し、後端側回転子32が先端側回転子31内を空回りして逆回転する。したがって、先端側回転子31が軸筒11に対して逆回転せず、先端側回転子31に係合するチャックユニット20も、このチャックユニット20の把持する筆記芯Lも逆回転せずに回転位置を維持することとなる。
以上のように、第2の実施の形態によれば、筆圧により後端側回転子32が軸筒11内を後退する場合に、貫通孔32cが係合突起14dに対して最大限摺動するとき、第2弾性片57の第2ラチェット爪58が複数のラチェット歯59を乗り越えるように形成することができる。これにより、筆圧が強い場合には、軸筒11内における後端側回転子32の後退距離が長くなり、貫通孔32cが係合突起14dに対して摺動する距離が長くなり、第2弾性片57の第2ラチェット爪58の乗り越える第2ラチェット歯59数が多くなるため、筆記芯Lを大きな回転角度で回転させることができる。これに対し、筆圧が弱い場合には、軸筒11内における後端側回転子32の後退距離が短くなり、貫通孔32cが係合突起14dに対して摺動する距離が短くなり、第2弾性片47の第2ラチェット爪58の乗り越える第2ラチェット歯59数が少なくなるため、筆記芯Lを小さな回転角度で回転させることができる。したがって、筆圧の強弱に応じて筆記芯Lを適切な回転角度で回転させることが可能である。
なお、筆圧により後端側回転子32が軸筒11内を後退する場合に、貫通孔32cが係合突起14dに対して最大限摺動するとき、第2弾性片57の第2ラチェット爪58が1つのラチェット歯59を乗り越えるように形成することもできる。これにより、筆圧の強弱に拘らず筆記芯Lを常に一定の回転角度で回転させることが可能である。
(変形例)
上述した実施の形態の他、以下のような変形例も可能である。
例えば、変換手段40の係合突起を後端側回転子32の内周に設けるとともに、変換手段40の貫通孔を固定部材14に形成してもよい。
また、変換手段40の係合突起を後端側回転子32の外周に設けるとともに、変換手段40の貫通孔を先具13(軸筒11)に形成してもよい。
また、後端側回転子32内に先端側回転子31の後端を挿入されるように形成すると共に、正回転送り手段41の第1弾性片を先端側回転子31に設け、正回転送り手段41の第1ラチェット歯を後端側回転子32の内周に形成してもよい。
また、上述した実施の形態では、第1ラチェット歯44と第2ラチェット歯49,59とを同数形成したが、第2ラチェット歯49,59を第1ラチェット歯44よりも多く形成してもよい。
また、本実施の形態の変形例として、スライダ26を有さないシャープペンシルとすることもできる。この場合、逆回転規制手段46の第2弾性片を先端側回転子31に設けるとともに、逆回転規制手段46の第2ラチェット歯を先具13(軸筒11)に形成することができる。
また、上述した実施の形態に係る軸筒11は、軸筒本体12内に先具13の後端部を挿着させるように形成されているが、先具13内に軸筒本体12の先端部を挿着させるように形成してもよい。また、軸筒11は、軸筒本体12と先具13とが別体に形成されているが、軸筒本体12と先具13とが一体的に形成されてもよい。
なお、上述した実施の形態では、
図14、
図15及び
図23において、正回転方向Nが反時計回りとなり、逆回転方向Rが時計回りとなるように形成したが、正回転方向が時計回りとなり、逆回転方向が反時計回りとなるように形成してもよいことは言うまでもない。