特許第6296674号(P6296674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6296674-光学用粘着シート 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296674
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】光学用粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20180101AFI20180312BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20180312BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20180312BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C09J7/00
   C09J7/02
   G06F3/041
   G06F3/044
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-519745(P2011-519745)
(86)(22)【出願日】2010年6月10日
(86)【国際出願番号】JP2010059842
(87)【国際公開番号】WO2010147047
(87)【国際公開日】20101223
【審査請求日】2011年12月27日
【審判番号】不服2015-19822(P2015-19822/J1)
【審判請求日】2015年11月4日
(31)【優先権主張番号】特願2009-145392(P2009-145392)
(32)【優先日】2009年6月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】馬場 紀秀
(72)【発明者】
【氏名】岸岡 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】野中 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】夏井 正頼
(72)【発明者】
【氏名】麓 弘明
(72)【発明者】
【氏名】寶田 翔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝
【合議体】
【審判長】 冨士 良宏
【審判官】 原 賢一
【審判官】 天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−76432(JP,A)
【文献】 特開2009−79203(JP,A)
【文献】 特開2007−161909(JP,A)
【文献】 特開2003−268052(JP,A)
【文献】 特開平9−90125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
G06F3/044
G02B5/30
G02F1/1333-1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系粘着剤層を含む光学用粘着シートであって、
前記アクリル系粘着剤層が、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマーをベースポリマーとし、
前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、さらに、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドから選択される少なくとも1つのモノマーが含まれ、
前記の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100重量部に対して40〜70重量部であり、
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの割合が、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100重量部に対して0〜59重量部であり、
前記のアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドから選択される少なくとも1つのモノマーの割合が、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100重量部に対して1〜30重量部であり、
周波数1MHzでの比誘電率が3.16〜5.96であり、
周波数1MHzでの誘電正接が0.065〜0.116であり、
周波数1.0×10Hzでの比誘電率が周波数1.0×10Hzでの比誘電率の73〜91%であり、
周波数1.0×10Hzでの誘電正接と周波数1.0×10Hzでの誘電正接との差の絶対値が0.034〜0.090であり、
厚み精度が、10%以下であり、静電容量方式のタッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられることを特徴とする光学用粘着シート。
【請求項2】
前記アクリル系粘着剤層が、さらに(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマーをベースポリマーとする請求項1記載の光学用粘着シート。
【請求項3】
前記アクリル系粘着剤層が、紫外線照射による紫外線重合方法で調製された粘着剤組成物から形成される請求項1又は2記載の光学用粘着シート。
【請求項4】
請求項1〜の何れか1項に記載の光学用粘着シートを用いた液晶表示装置又は入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの前記表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられるようになってきている。これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合わせる用途に粘着シートが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
画像表示方式のトレンドとしてタッチパネル式のものが盛んに注目されており、特に静電容量方式のタッチパネルが普及している。このような静電容量方式のタッチパネルでは、透明部材を貼り合わせる目的に加えて、絶縁層として粘着剤層(粘着剤による層)が使用されている。静電容量方式のタッチパネルは、タッチパネルを指などで触れた際、その位置の出力信号が変化し、その信号の変化量がある閾値を超えた場合にセンシングする仕組みになっている。静電容量方式のタッチパネルでは、静電容量の値が一定値で安定しないと誤動作の原因となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−363523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の粘着剤層が使用された静電容量方式のタッチパネルにおいて、粘着剤層に起因すると考えられる誤作動が発生する場合があった。特に、表示装置などの外部からのノイズに起因して、信号が大きく変動した場合に誤作動が発生する場合があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、光学部材に適用されても光学部材の機能や特性を損なうことがない光学用粘着シートを提供すること、特に静電容量方式のタッチパネルにおける透明部材を貼り合わせるために使用されても、タッチパネルとした場合の誤動作の発生を防止することができる光学用粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、周波数1MHzでの比誘電率が特定の範囲であり、周波数1MHzでの誘電正接が特定範囲である光学用粘着シートを用いると、光学部材の誤動作を生じることがなく、光学部材において求められる感度を損なうことがないこと、特に静電容量方式のタッチパネルに用いられた場合に、静電容量方式のタッチパネルの誤動作を生じることがなく、またその感度を損なうこともないことを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、アクリル系粘着剤層を含む光学用粘着シートであって、前記アクリル系粘着剤層が、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマーをベースポリマーとし、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、さらに、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドから選択される少なくとも1つのモノマーが含まれ、前記の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100重量部に対して40〜70重量部であり、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの割合が、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100重量部に対して0〜59重量部であり、前記のアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドから選択される少なくとも1つのモノマーの割合が、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100重量部に対して1〜30重量部であり、周波数1MHzでの比誘電率が3.16〜5.96であり、周波数1MHzでの誘電正接が0.065〜0.116であり、周波数1.0×10Hzでの比誘電率が周波数1.0×10Hzでの比誘電率の73〜91%であり、周波数1.0×10Hzでの誘電正接と周波数1.0×10Hzでの誘電正接との差の絶対値が0.034〜0.090であり、厚み精度が、10%以下であり、静電容量方式のタッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられることを特徴とする光学用粘着シートを提供する。
【0013】
また、本発明は、アクリル系粘着剤層が、さらに(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマーをベースポリマーとする前記の光学用粘着シートを提供する。
【0014】
また、本発明は、アクリル系粘着剤層が、紫外線照射による紫外線重合方法で調製された粘着剤組成物から形成される前記の光学用粘着シートを提供する。
【0017】
さらにまた、本発明は、前記の光学用粘着シートを用いた液晶表示装置又は入力装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光学用粘着シートによれば、前記構成を有しているので、光学部材に適用されても光学部材の機能や特性を損なうことはない。特に、静電容量方式のタッチパネルにおける透明部材の貼り合わせに使用されても、タッチパネルとした場合の誤動作の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の光学用粘着シートを用いて部材を貼り合わせて形成された静電容量方式のタッチパネルの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の光学用粘着シートは、周波数1MHzでの比誘電率が2〜8であり、周波数1MHzでの誘電正接が0より大きく0.2以下である。本発明の光学用粘着シートは、光学部材を貼り合わせる目的に加えて、絶縁体として使用されている。
【0021】
本発明の光学用粘着シートは、粘着剤層を少なくとも有しており、テープ状及びシート状のいずれの形態も含む。また、本発明の光学用粘着シートは、基材(基材層)を有しない基材レスタイプであってもよいし、基材(基材層)を有する基材付きタイプであってもよい。さらに、片面のみが粘着性を有する片面粘着シートであってもよいし、両面が粘着性を有する両面粘着シートであってもよい。さらにまた、粘着面を提供する粘着剤層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。なお、上記「基材(基材層)」には、粘着シート使用時に剥離される剥離ライナー(セパレーター)は含まれない。
【0022】
本発明の光学用粘着シートは、光学部材に適用された際に光学部材の機能や特性を阻害しない観点、特に静電容量方式のタッチパネルに適用された際のセンシングの感度と安定性の観点から、周波数1MHzでの比誘電率が2〜8であり、好ましくは周波数1MHzでの比誘電率が2.5〜6.5である。例えば、本発明の光学用粘着シートが静電容量方式のタッチパネルに適用されている場合、周波数1MHzでの比誘電率が2未満であると、タッチパネルのセンシングに必要な静電容量値が小さくなるため、ノイズ信号の影響を受けやすくなり、センシングのシグナルとノイズの比率が低下するため誤動作を生じやすくなり好ましくない。一方周波数1MHzでの比誘電率が8を超えると、静電容量値が大きくなりすぎて、信号に時間遅れが生じやすくなり、センシングの感度が低下するため好ましくない。
【0023】
本発明の光学用粘着シートは、特に静電容量方式のタッチパネルに適用された際にタッチパネルの駆動に必要な電気エネルギーを有効に利用するという観点から、周波数1MHzでの誘電正接が0.2以下(例えば0より大きく0.2以下)であり、好ましくは周波数1MHzでの誘電正接が0.15以下(例えば0より大きく0.15以下)である。周波数1MHzでの誘電正接の値が0.2を超えると、静電容量方式のタッチパネルに適用された際に電気エネルギーのロスが大きくなり、パネル駆動に必要な消費電力が大きくなるため好ましくない。
【0024】
また、本発明の光学用粘着シートは、特に静電容量方式のタッチパネルに適用された際のタッチパネルの動作安定性の観点から、周波数1.0×106Hzでの比誘電率は周波数1.0×104Hzでの比誘電率の60%以上であることが好ましく、より好ましくは周波数1.0×104Hzでの比誘電率の70%以上である。周波数1.0×106Hzでの比誘電率は周波数1.0×104Hzでの比誘電率の60%未満であると、タッチパネル内の信号の周波数がノイズの影響を受けて大きく変化した場合、比誘電率が大きく変化し静電容量値も大きく変化することから、センシングは不安定となり誤動作を生じさせる場合がある。
【0025】
また、本発明の光学用粘着シートでは、特に静電容量方式のタッチパネルに適用された際のタッチパネルの動作安定性の観点から、周波数1.0×106Hzでの誘電正接と周波数1.0×104Hzでの誘電正接との差の絶対値は0.15以下であることが好ましく、より好ましくは周波数1.0×106Hzでの誘電正接と周波数1.0×104Hzでの誘電正接との差の絶対値は0.12以下である。周波数1.0×106Hzでの誘電正接と周波数1.0×104Hzでの誘電正接との差の絶対値が0.15を超えると、例えば、静電容量方式のタッチパネルに使用する場合、信号の周波数の大きな変化により誤動作を生じさせる場合がある。
【0026】
比誘電率及び誘電正接は、JIS K 6911に準じて、求められる。
【0027】
本発明の光学用粘着シートでは、厚み精度(厚みのばらつき)は、特に静電容量方式のタッチパネルに適用された際のタッチパネルの動作安定性の観点から、目的とする厚みに対して10%以下であることが好ましく、好ましくは5%以下である。厚み精度が、10%を越えると、例えば、光学用粘着シートの静電容量の変化を生じるおそれがある。このような静電容量の変化は、静電容量方式のタッチパネルに使用する場合、出力信号の変化となり、誤動作の原因となることがある。
【0028】
厚み精度は、以下のようにして求められる。50mm×75mmの範囲で長手方向に5点設定し、各測定点において、1/1000ダイヤルゲージを用いて、各測定点での厚みを測定する。最大厚みと目的とする厚みとの差を、目的とする厚みで除した数値をパーセント表示した値(下記の式(1)参照)、及び、最小厚みと目的とする厚みとの差を、目的とする厚みで除した数値をパーセント表示した値(下記の式(2)参照)を求める。そして、前者の絶対値及び後者の絶対値を対比して、その数値の大きい方の値を厚み精度(%)とする。
(最大厚み−目的とする厚み)/(目的とする厚み)×100 (1)
(最小厚み−目的とする厚み)/(目的とする厚み)×100 (2)
【0029】
本発明の光学用粘着シートは、特に制限されないが、視認性の点から、高い透明性を有していることが好ましい。例えば、可視光波長領域における全光線透過率(JIS K 7361に準じる)が90%以上であることが好ましい。また、本発明の粘着剤層のヘーズ値(JIS K 7136に準じる)は、例えば、5.0%以下が好ましく、より好ましくは2.0%以下である。なお、上記全光線透過率及びヘーズ値は、例えば、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定することができる。
【0030】
(粘着剤層)
光学用粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤におけるベースポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、公知の粘着剤(感圧性接着剤)(例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤など)におけるベースポリマーから適宜選択して用いることができる。なお、ベースポリマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0031】
なお、本発明の光学用粘着シートにおいて、粘着剤層中のベースポリマーの含有量は、粘着剤層の総重量に対して、60重量%以上(例えば60〜100重量%)であることが好ましく、より好ましくは80〜100重量%である。
【0032】
透明性、加工性、耐久性などの観点から、ベースポリマーとしては公知のアクリル系粘着剤やポリエーテル系粘着剤におけるベースポリマーを好適に用いることができ、特にアクリル系粘着剤におけるベースポリマーを好適に用いることができる。
【0033】
ポリエーテル系粘着剤のベースポリマーとしては、特に制限はないが、例えば、ポリオキシアルキレン系重合体が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体としては、中でも、重合体の主鎖が、下記の一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものが好適である。
【0034】
一般式(1):−R1−O−
(式中、R1はアルキレン基である)
【0035】
1は、炭素数1〜14の、さらには2〜4の、直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましい。
【0036】
一般式(1)で示される繰り返し単位の具体例としては、−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2CH(C25)O−、−CH2C(CH32O−、−CH2CH2CH2CH2O−等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特に、入手性、作業性の点から、−CH2CH(CH3)O−を主たる繰り返し単位とする重合体が好ましい。また、重合体の主鎖にはオキシアルキレン基以外の繰り返し単位が含まれていてもよい。この場合、重合体中のオキシアルキレン単位の総和は、80重量%以上が好ましく、特に好ましくは90重量%以上である。
【0037】
ポリオキシアルキレン系重合体は、直鎖状の重合体でも分岐を有する重合体でもよく、それらの混合物であってもよいが、良好な粘着性を得るために、直鎖状の重合体を50重量%以上含有していることが好ましい。
【0038】
アクリル系粘着剤のベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーを必須のモノマー成分として形成される。本発明では、このようなアクリル系モノマーとして、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、単に「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」を称する場合がある)や(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを好適に用いることができる。なお、また、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表し、他も同様である。
【0039】
本発明では、前記のアクリル系モノマーとして、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いる場合、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単独で用いてもよいし、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとを併用して用いてもよい。なお、併用する場合、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとの割合は、特に制限されず、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルより、多くても、少なくてもよく、さらに同一であってもよい。
【0040】
上記の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。中でも、アルキル基の炭素数が1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より好ましくはアルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0041】
上記の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどが挙げられる。中でも、アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、特にアクリル酸2−メトキシエチル(2MEA)が好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0042】
なお、上記アクリル系モノマーの含有量は、粘着剤層の接着性の観点から、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して、70重量%以上(例えば70〜100重量%)が好ましく、より好ましくは80重量%以上(例えば80〜100重量%)であり、さらにより好ましくは90重量%以上(例えば90〜100重量%)である。
【0043】
また、ベースポリマーであるアクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、上記アクリル系モノマー(直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル)以外に、極性基含有モノマー、多官能性モノマーやその他の共重合性モノマーが共重合モノマー成分として含まれていてもよい。
【0044】
極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。上記極性基含有モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0045】
極性基含有モノマーとしては、上記の中でも、カルボキシル基含有モノマー又はその酸無水物、ヒドロキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、複素環含有ビニル系モノマーが好ましく、特に好ましくはアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル(HHA)、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(4HBA)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)などである。
【0046】
極性基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して、40重量%以下(例えば、0.01〜40重量%)が好ましく、より好ましくは1〜30重量%である。含有量が40重量%を超えると、例えば、粘着剤層の凝集力が高くなりすぎ、応力緩和性が低下するおそれがある。また、含有量が0.01重量%未満で少なすぎると、粘着剤層の凝集力が低下して粘着性能が低下する。
【0047】
多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。上記多官能性モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0048】
多官能性モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して5重量%以下(例えば、0.001〜5重量%)である。含有量が5重量%を超えると粘着剤層の凝集力が高くなりすぎ、応力緩和性が低下するおそれがある。
【0049】
また、上記の極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の共重合性モノマー(その他の共重合性モノマー)としては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルやフェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの前述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0050】
ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーは、上記のモノマー成分を公知乃至慣用の重合方法により重合して調製することができる。アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法や活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法、光重合方法)などが挙げられる。上記の中でも透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましく、特に比較的厚い粘着剤層を形成する場合には、活性エネルギー線重合方法が好ましく、中でも、紫外線照射による紫外線重合方法が好ましい。
【0051】
活性エネルギー線重合(光重合)に際して照射される活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に制限されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0052】
溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0053】
アクリル系ポリマーの調製に際しては、重合反応の種類に応じて、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤を用いることができる。重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
上記光重合開始剤としては、特に制限されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0055】
上記のベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0056】
光重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量100重量部に対して0.005〜1重量部が好ましい。なお、光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0057】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、従来、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0058】
光学用粘着シートの粘着剤層には、架橋剤が用いられていてもよい。架橋剤が用いられていると、アクリル系ポリマーを架橋させ、粘着剤層の凝集力を一層大きくすることができる。架橋剤としては、特に制限されず従来公知のものを広く用いることができるが、特にイソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤を好適に用いることができる。なお、架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0059】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−トなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。
【0060】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」を用いることができる。
【0061】
上記架橋剤の使用量としては、特に制限されず、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、通常、0.001〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜10重量部である。中でも、イソシアネート系架橋剤を用いる場合、イソシアネート系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜3重量部である。また、エポキシ系架橋剤を用いる場合、エポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜5重量部である。
【0062】
光学用粘着シートの粘着剤層には、また、必要に応じて、架橋促進剤、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂など)、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。
【0063】
本発明の光学用粘着シートの粘着剤層の形成方法は、公知慣用の粘着剤層の形成方法を用いることが可能であり、またベースポリマーの重合方法などによっても異なり、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。(1)ベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)を形成するモノマー成分の混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物及び必要に応じて光重合開始剤などの添加剤を含む組成物(粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物)を、基材または剥離ライナー上に塗布(塗工)し、活性エネルギー線を照射して、粘着剤層を形成する。(2)ベースポリマー、溶剤、必要に応じて添加剤を含む組成物(粘着剤組成物、溶剤型の粘着剤組成物)(溶液)を、基材または剥離ライナー上に塗布(塗工)し、乾燥および/または硬化して粘着剤層を形成する。(1)及び(2)の方法では、必要に応じて、加熱・乾燥工程が設けられていてもよい。なお、上記「モノマー混合物」とはベースポリマーを形成するモノマー成分のみからなる混合物を意味する。また、上記「部分重合物」とは、上記モノマー混合物の構成成分のうち1又は2以上の成分が部分的に重合している組成物を意味する。さらにまた、「粘着剤組成物」には「粘着剤層を形成するための組成物」という意味を含むものとする。
【0064】
なお、上記の粘着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いることができる。
【0065】
粘着剤層の厚みとしては、特に制限されないが、5〜500μmが好ましく、好ましくは10〜250μmである。
【0066】
(基材)
本発明の光学用粘着シートが基材を有するタイプである場合、基材としては、特に制限されないが、プラスチックフィルム、反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板などの各種光学フィルムが挙げられる。上記プラスチックフィルムなどの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリサルフォン、ポリアリレート、商品名「アートン(環状オレフィン系ポリマー;JSR社製)」、商品名「ゼオノア(環状オレフィン系ポリマー;日本ゼオン社製)」等の環状オレフィン系ポリマーなどのプラスチック材料が挙げられる。なお、プラスチック材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、上記の「基材」とは、光学用粘着シートを被着体(光学部材等)に使用(貼付)する際には、粘着剤層とともに被着体に貼付される部分である。光学用粘着シートの使用時(貼付時)に剥離される剥離ライナー(セパレータ)は「基材」には含まない。
【0067】
基材としては、中でも、光学用粘着シートで高い透明性を得る点から、透明基材が好ましい。上記「透明基材」とは、例えば、可視光波長領域における全光線透過率(JIS K 7361に準じる)が85%以上である基材が好ましく、さらに好ましくは90%以上である基材をいう。また、上記透明基材としては、PETフィルムや、商品名「アートン」、商品名「ゼオノア」などの無配向フィルムが挙げられる。
【0068】
上記基材の厚みは、特に限定されず、例えば、12〜50μmが好ましい。なお、上記基材は単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。また、基材表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの適宜な公知乃至慣用の表面処理が施されていてもよい。
【0069】
また、基材は、光学部材であってもよい。つまり、本発明の光学用粘着シートは、光学部材からなる基材及び粘着剤層から構成されていてもよい。
【0070】
(剥離ライナー)
本発明の光学用粘着シートの粘着剤層表面(粘着面)は、使用時までは剥離ライナー(セパレータ)により保護されていてもよい。なお、光学用粘着シートの各粘着面は、2枚の剥離ライナーによりそれぞれ保護されていてもよいし、両面が剥離面となっている剥離ライナー1枚により、ロール状に巻回される形態で保護されていてもよい。剥離ライナーは粘着剤層の保護材として用いられており、被着体に貼着する際に剥がされる。また、本発明の光学用粘着シートが基材レス両面粘着シートの場合には、剥離ライナーは粘着剤層の支持体の役割も担う。なお、剥離ライナーは必ずしも設けられていなくてもよい。上記剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素系ポリマーからなる低接着性基材や無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素系ポリマーからなる低接着性基材におけるフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。上記無極性ポリマーからなる低接着性基材における無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、剥離ライナーは公知乃至慣用の方法により形成することができる。また、剥離ライナーの厚み等も特に制限されない。
【0071】
(光学用粘着シート)
本発明の光学用粘着シートは、絶縁層として作用し、信号の周波数の変化や環境(温度、湿度)の変化に伴う静電容量の変化が抑制された粘着剤層を有する。また、このような粘着剤層において厚み精度もすぐれる。さらに本発明の光学用粘着シートは、透明性にも優れる。
【0072】
本発明の光学用粘着シートは、より具体的には、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)や光学製品の製造用途などに用いられる。
【0073】
上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有する部材をいう。光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば、特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)、入力装置等の機器(光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルムなど)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護フィルム、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材が挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態をも含むものとし、例えば、「偏光板」は「偏光フィルム」、「偏光シート」も含むものとする。
【0074】
上記表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられる。また、上記入力装置としては、タッチパネル(特に静電容量方式タッチパネル等)などが挙げられる。
【0075】
本発明の光学用粘着シートとしては、上記の中でも、静電容量方式タッチパネルを構成する部材を貼り合わせる用途等に好ましく用いられる。
【0076】
上記の光学部材としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ガラス、金属薄膜などからなる部材(例えば、シート状やフィルム状、板状の部材など)などが挙げられる。なお、本発明における「光学部材」には、上記の通り、被着体である表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護フィルム等)も含むものとする。
【0077】
本発明の光学用粘着シートによる光学部材の貼り合わせの態様としては、特に限定されないが、例えば、(1)本発明の光学用粘着シートを介して光学部材同士を貼り合わせる態様、(2)本発明の光学用粘着シートを介して光学部材を光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよいし、(3)光学部材を含む本発明の光学用粘着シートを、光学部材または光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよい。なお、上記(3)の態様においては、本発明の光学用粘着シートは基材が光学部材(偏光フィルムをはじめとする光学フィルムなど)である光学用粘着シートであることが好ましい。
【0078】
なお、光学部材の表面(少なくとも片面)に、本発明の光学用粘着シートを、貼付、積層することにより、光学部材の少なくとも片面に粘着剤層(本発明の粘着剤層であることが好ましい)を有する粘着型光学部材を得ることができる。
【0079】
より具体的な例として、本発明の光学用粘着シートを用いて部材を貼り合わせて形成された静電容量方式のタッチパネルの一例の概略図を図1に示す。図1において、1は静電容量方式タッチパネルであり、11は透明保護レンズであり、12は光学用粘着シートであり、13aはITOガラス基板であり、13bはITO膜(透明導電膜)であり、14は液晶ディスプレイである。静電容量方式タッチパネル1は、「透明保護レンズ11」と「ITO膜13bが両面に設けられているITOガラス基板13a」とが光学用粘着シート12を介して貼り合わせられており、さらに「ITO膜13bが両面に設けられているITOガラス基板13a」と「液晶ディスプレイ14」とが光学用粘着シート12を介して貼り合わせられている。なお、静電容量方式タッチパネル1ではITOガラス基板13aの両面にITO膜13bが設けられているタイプが用いられているが、一般的に静電容量方式タッチパネルではITOガラス基板の片面にITO膜が設けられているタイプが用いられていてもよい。
【0080】
このような静電容量方式タッチパネルは、光学用粘着シートで絶縁層としての粘着剤層を有し、該粘着剤層は信号の周波数の変化や環境(温度、湿度)の変化に伴う静電容量の変化が少なく、安定していることから、感度がよく、動作の安定性に優れている。また、光学用粘着シートの透明性が高いことから、視認性にも優れる。
【0081】
(光学機器)
本発明において、光学機器には、前記光学用粘着シートが用いられている。光学機器では、前記光学用粘着シートは、例えば、光学機器を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材の貼り合わせに用いられている。このような光学機器は、前記光学用粘着シートが用いられているので、感度がよく、動作の安定性に優れ、さらに視認性にも優れる。
【0082】
光学機器としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの表示装置(画像表示装置)、タッチパネル(特に静電容量方式タッチパネル)などの入力装置等が挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例5は、本願発明に含まれないものであるが、参考例として記載する。
【0084】
実施例1
(光重合性組成物の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート40重量部、2−メトキシエチルアクリレート59重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−1−オン(商品名「イルガキュア651」チバ・ジャパン社製)0.05重量部、及び1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」チバ・ジャパン社製)0.05重量部を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合することによって、重合率10%の部分重合物(モノマーシロップ)を得た。
この部分重合物100重量部に、イソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製、固形分75重量%)を固形分換算で0.1重量部添加した後、これらを均一に混合して光重合性組成物を調製した。
【0085】
(粘着シートの作製)
片面をシリコーンで剥離処理した厚み75μmのポリエステルフィルムの剥離処理面に、上記光重合性組成物を厚み150μmになるように塗布して塗布層を形成し、該塗布層上に、片面をシリコーン剥離処理した厚みが38μmのポリエステルフィルムの剥離処理面を貼り合わせてから、厚み38μmのポリエステルフィルム側の面上からランプ直下での照射面の強度が5mW/cm2になるようにランプ高さを調節したブラックライトにより、紫外線を照射した。光量で3600mJ/cm2照射されるまで重合を行い、厚み150μmのアクリル系粘着シートを作製した。
【0086】
実施例2
(光重合性組成物の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート69重量部、2−メトキシエチルアクリレート30重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1重量部、アクリル酸3重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−1−オン(商品名「イルガキュア651」チバ・ジャパン社製)0.05重量部、及び1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」チバ・ジャパン社製)0.05重量部を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合することによって、重合率10%の部分重合物(モノマーシロップ)を得た。
この部分重合物100重量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート0.01重量部を添加した後、これらを均一に混合して光重合性組成物を調製した。
【0087】
(粘着シートの作製)
片面をシリコーンで剥離処理した厚み75μmのポリエステルフィルムの剥離処理面に、上記光重合性組成物を厚み150μmになるように塗布して塗布層を形成し、該塗布層上に、片面をシリコーン剥離処理した厚み38μmのポリエステルフィルムの剥離処理面を貼り合わせてから、厚み38μmのポリエステルフィルム側の面上からランプ直下での照射面の強度が5mW/cm2になるようにランプ高さを調節したブラックライトにより、紫外線を照射した。光量で3600mJ/cm2照射されるまで重合を行い、厚み150μmのアクリル系粘着シートを作製した。
【0088】
実施例3
(光重合性組成物の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート68重量部、2−メトキシエチルアクリレート24重量部、N−ビニルピロリドン6重量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド2重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−1−オン(商品名「イルガキュア651」チバ・ジャパン社製)0.05重量部、及び1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」チバ・ジャパン社製)0.05重量部を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合することによって、重合率10%の部分重合物(モノマーシロップ)を得た。
この部分重合物100重量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート0.015重量部を添加した後、これらを均一に混合して光重合性組成物を調製した。
【0089】
(粘着シートの作製)
片面をシリコーンで剥離処理した厚み75μmのポリエステルフィルムの剥離処理面に、上記光重合性組成物を厚み150μmになるように塗布して塗布層を形成し、該塗布層上に、片面をシリコーン剥離処理した厚み38μmのポリエステルフィルムの剥離処理面を貼り合わせ、厚み38μmのポリエステルフィルム側の面上から、ランプ直下での照射面の強度が5mW/cm2になるようにランプ高さを調節したブラックライトにより、紫外線を照射した。光量で3600mJ/cm2照射されるまで重合を行い、厚み150μmのアクリル系粘着シートを作製した。
【0090】
実施例4
(光重合性組成物の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート70重量部、N−ビニルピロリドン26重量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド4重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−1−オン(商品名「イルガキュア651」チバ・ジャパン社製)0.05重量部、及び1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」チバ・ジャパン社製)0.05重量部を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合することによって、重合率10%の部分重合物(モノマーシロップ)を得た。
この部分重合物100重量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート0.015重量部を添加した後、これらを均一に混合して光重合性組成物を調製した。
【0091】
(粘着シートの作製)
片面をシリコーンで剥離処理した厚み75μmのポリエステルフィルムの剥離処理面に、上記光重合性組成物を厚み180μmになるように塗布して塗布層を形成し、該塗布層上に、片面をシリコーン剥離処理した厚み38μmのポリエステルフィルムの剥離処理面を貼り合わせ、厚み38μmのポリエステルフィルム側の面上から、ランプ直下での照射面の強度が5mW/cm2になるようにランプ高さを調節したブラックライトにより、紫外線を照射した。光量で3600mJ/cm2照射されるまで重合を行い、厚み180μmのアクリル系粘着シートを作製した。
【0092】
実施例5
2−エチルヘキシルアクリレート28重量部、エチルアクリレート64重量部、メチルメタクリレート5重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部、及び酢酸エチル100重量部を、4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で約60℃で反応させて得たアクリル系ポリマー溶液に、イソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製、固形分75重量%)を固形分換算で1重量部配合し、これを片面をシリコーン剥離処理した厚み50μmのポリエステルフィルムの剥離処理面に塗布して、加熱乾燥し、その上に(塗布層上に)、片面をシリコーン剥離処理した厚み38μmのポリエステルフィルムの剥離処理面を貼り合わせ、厚み30μmのアクリル系粘着シートを作製した。
【0093】
(評価)
実施例及び比較例について、比誘電率、誘電正接、厚み精度、透過率等を測定した。これらの測定結果を表1に示した。
【0094】
比誘電率、誘電正接)
周波数1.0×106Hzでの比誘電率、周波数1.0×104Hzでの比誘電率、周波数1.0×106Hzでの誘電正接、周波数1.0×104Hzでの誘電正接を、JIS K 6911に準じて、下記条件で測定した。
測定方法:容量法(装置:Agilent Technologies 4294A Precision Impedance Analyzer使用)
電極構成: 12.1mmΦ、0.5mm厚みのアルミ板
対向電極: 3oz 銅板
測定環境:23±1℃、52±1%RH
【0095】
表1において、[A]は周波数1.0×106Hzでの比誘電率であり、[B]は周波数1.0×104Hzでの比誘電率であり、[C]は周波数1.0×106Hzでの誘電正接であり、[D]は周波数1.0×104Hzでの誘電正接である。
【0096】
また、周波数1.0×106Hzでの比誘電率の測定値、周波数1.0×104Hzでの比誘電率の測定値から、周波数1.0×104Hzでの比誘電率を100%とした場合における周波数1.0×106Hzでの比誘電率の百分率(%)を、下記式より求めた。
(周波数1.0×106Hzでの比誘電率)/(周波数1.0×104Hzでの比誘電率)×100
そして、周波数1.0×104Hzでの比誘電率を100%とした場合における周波数1.0×106Hzでの比誘電率の百分率(%)を、表1の「[A]/[B]」の欄に示した。
【0097】
さらに、周波数1.0×106Hzでの誘電正接の測定値と周波数1.0×104Hzでの誘電正接の測定値から、周波数1.0×106Hzでの誘電正接と周波数1.0×104Hzでの誘電正接との差の絶対値を求めた。
そして、周波数1.0×106Hzでの誘電正接と周波数1.0×104Hzでの誘電正接との差の絶対値を、表1の「[C]−[D]」の欄に示した。
【0098】
(厚み精度)
厚み精度は、以下のようにして求めた。50mm×75mmの範囲で長手方向に5点設定し、各測定点において、1/1000ダイヤルゲージを用いて、各測定点での厚みを測定する。最大厚みと目的とする厚みとの差を、目的とする厚みで除した数値をパーセント表示した値(下記の式(1)参照)、及び、最小厚みと目的とする厚みとの差を、目的とする厚みで除した数値をパーセント表示した値(下記の式(2)参照)を求める。そして、前者の絶対値及び後者の絶対値を対比して、その数値の大きい方の値を厚み精度(%)とする。
(最大厚み−目的とする厚み)/(目的とする厚み)×100 (1)
(最小厚み−目的とする厚み)/(目的とする厚み)×100 (2)
【0099】
(可視光線透過率)
ヘーズメータ(装置名「HM−150」村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例を用いて、図1に示すような静電容量方式のタッチパネルを作製したところ、実施例を用いた静電容量方式のタッチパネルでは、センシングの感度や安定性にすぐれており、誤動作を生じる事はなかった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の光学用粘着シートは、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)や光学製品の製造用途などに用いられる。特に、静電容量方式タッチパネルを構成する部材を貼り合わせる用途等に好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0103】
1 静電容量方式タッチパネル
11 透明保護レンズ
12 光学用粘着シート
13a ITOガラス基板
13b ITO膜
14 液晶ディスプレイ
図1