(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軌道を走行する列車から無線送信される当該列車の列車位置情報及び前記軌道を複数に分割した各区間における列車在線情報を取得し、前記列車位置情報に基づいて無線による情報通信が可能な列車の在線区間を検知すると共に前記列車在線情報に基づいて全ての列車の在線区間を検知し、これらの検知結果から各区間に在線している列車が無線による情報通信が可能な列車であるか否か及び異常区間の有無を判定し、判定結果に基づいて前記軌道を走行する各列車を制御するように構成され、
列車が無線による情報通信が可能な列車である場合、当該列車の在線する区間から当該列車の先行列車の在線する区間までの間の信号機を進行現示として当該列車による前記先行列車の在線する区間への進入を可能とすると共に、当該列車の車上装置が当該列車の走行制御に用いる当該列車の停止位置の目標であって、前記先行列車が無線による情報通信が可能な列車で前記先行列車の列車位置情報が取得できる場合には前記先行列車の列車位置情報に基づいて設定される一方、前記先行列車が無線による情報通信を行えない列車で前記先行列車の列車位置情報を取得できない場合には前記先行列車が在線している区間の一つ手前の区間の終端に設定される前記停止位置の目標を含む列車制御情報を当該列車に無線送信し、
列車が無線による情報通信が行えない列車である場合、当該列車の先行列車の在線する区間の直前の信号機を停止現示として当該列車による前記先行列車の在線する区間への進入を禁止し、
前記列車位置情報によって無線による情報通信が可能な列車の在線が検知されているが、前記列車在線情報によっては列車の在線が検知されていない区間がある場合には、当該区間を前記異常区間として特定して当該区間への列車の進入を禁止する、
列車制御システム。
先行列車及びその後続列車が無線による情報通信が可能な列車であり、先行列車及びその後続列車の列車位置情報を取得できる場合には、両列車の間隔を移動閉塞方式によって制御し、
先行列車及びその後続列車の少なくとも一方が無線による情報通信が行えない列車であり、先行列車及びその後続列車の少なくとも一方の列車位置情報を取得できない場合には、両列車の間隔を固定閉塞方式によって制御する、請求項1又は2に記載の列車制御システム。
先行列車及びその後続列車が無線による情報通信が可能な列車であり、先行列車及びその後続列車の列車位置情報を取得できる場合には、前記先行列車の列車位置情報に基づいて前記後続列車の走行を制御し、
先行列車及びその後続列車の少なくとも一方が無線による情報通信が行えない列車であり、先行列車及びその後続列車の少なくとも一方の列車位置情報を取得できない場合には、前記先行列車が在線している区間の一つ手前の区間で前記後続列車を停止させるように前記後続列車の走行を制御する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の列車制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による列車制御システムの全体構成を示している。この列車制御システムは、所定の軌道Rに適用され、当該軌道Rにおいて、地上側設備との間で無線による情報通信が可能なCBTC列車T1と、地上側設備との間で無線による情報通信が行えない非CBTC列車T2との同時かつ安全な走行を可能とする。
【0010】
本実施形態において、CBTC列車T1は、車上無線機11、車上子12及びCBTC車上装置13を備えており、車上無線機11によって地上側設備から無線送信された列車制御情報を受信し、CBTC車上装置13によって速度制御や制動制御を含む各種制御が行われるようになっている。一方、非CBTC列車T2は、車上無線機やCBTC車上装置を備えていない又はこれらの故障等によって、無線による情報通信が行えない状態の列車である。
【0011】
本実施形態による列車制御システムは、
図1に示すように、地上側設備として、軌道R上に所定の間隔をあけて配置された複数の地上子21と、軌道Rに沿って所定の間隔をあけて配置された複数の沿線無線機22と、前記列車制御情報を生成してCBTC列車T1の走行制御を行うCBTC地上装置23と、主に非CBTC列車T2の走行制御を行う連動装置24と、を備えている。
【0012】
また、軌道Rには、当該軌道Rを複数に分割した各区間(閉塞区間)BSにおける列車の在線を検知する在線検知手段が設けられており、各区間BSの境界付近には信号機25が設けられている。在線検知手段は、各区間BSにおける列車の在線を検知できるものであればよく、特に制限されないが、例えば、軌道回路、ループコイル又は車軸検知器が該当する。本実施形態においては、各区間BSへの列車の進入及び進出を検知できる車軸検知器26を前記在線検知手段として採用している。
【0013】
各地上子21は、例えばトランスポンダで構成され、軌道Rを走行するCBTC列車T1の車上子12と電磁結合して信号の送受信を行う。本実施形態において、各地上子21は、各区間BSの所定位置に配置されており、軌道Rにおける自身の位置を示す位置情報を、電磁結合されたCBTC列車T1の車上子12に送信する。
CBTC列車T1では、車上子12が地上子21から前記位置情報を受信すると、車上子12の受信した前記位置情報が車上装置13へと出力され、車上装置13によって当該CBTC列車T1の位置(自列車の位置)が算出される。より具体的には、車上装置13は、地上子21から受信した位置情報と、速度発電機(図示省略)による走行距離とに基づいて軌道Rにおける自列車の位置を算出する。算出された自列車の位置は、車上無線機11を介して無線送信される。
【0014】
各沿線無線機22は、軌道Rを走行するCBTC列車T1の車上無線機11との間で各種情報の送受信を行う。本実施形態において、各沿線無線機22は、その通信範囲内に位置するCBTC列車T1から無線送信される自列車の位置(列車位置情報)を受信する。また、各沿線無線機22は、CBTC地上装置23の生成した前記列車制御情報をCBTC列車T1に対して無線送信する。各沿線無線機22によって受信された前記列車位置情報はCBTC地上装置23に出力される。
【0015】
CBTC地上装置23は、軌道Rを走行する各CBTC列車T1の前記列車制御情報を生成する。CBTC地上装置23は、CBTC列車T1の位置を検知する列車位置検知部231と、CBTC列車T1の列車制御情報を生成するCBTC制御部232とを含む。
【0016】
列車位置検知部231は、各沿線無線機22の受信したCBTC列車T1の列車位置情報を入力し、軌道Rを走行する各CBTC列車T1の位置を検知する。また、列車位置検知部231は、各区間BSに関する情報を有しており、検知した各CBTC列車T1の位置がどの区間BSに属するか否かを判定する。したがって、列車位置検知部231は、各CBTC列車T1の軌道Rにおける位置(絶対位置)と共に、各CBTC列車T1の在線する区間(以下「CBTC在線区間」という)を検知することができる。列車位置検知部231によって検知された各CBTC列車T1の位置及び前記CBTC在線区間は、CBTC制御部232及び連動装置24に出力される。
【0017】
CBTC制御部232は、列車位置検知部231によって検知された各CBTC列車T1の位置及びCBTC在線区間と、後述する連動装置24によって検知された列車在線区間とを入力する。この列車在線区間は、CBTC列車T1又は非CBTC列車T2が在線している区間BSを示すものである。そして、CBTC制御部232は、軌道Rを走行する各CBTC列車T1の前記列車制御情報を生成し、所定の沿線無線機12を介して各CBTC列車T1(の車上無線機11)に向けて送信することにより各CBTC列車T1の走行制御を行う。CBTC制御部232が行う処理の詳細については後述する。
【0018】
ここで、軌道R全体を複数の制御領域に分割し、制御領域ごとにCBTC地上装置23を設けるようにしてもよい。この場合、各CBTC地上装置23は、自身の担当する制御領域内に属する一つ又は複数の沿線無線機22からCBTC列車T1の列車位置情報を入力すると共に、少なくとも隣接するCBTC地上装置23との間で情報の送受信を行えるように構成する。
【0019】
連動装置24は、軌道Rの各区間BSにおける列車の在線状況に基づいて各信号機25の動作を制御する。連動装置24は、列車が在線している区間を検知する在線区間検知部241と、各列車の進路制御を行う進路制御部242と、を含む。
【0020】
在線区間検知部241は、前記在線検知手段(車軸検知器26)から各区間BS内に列車(すなわち、CBTC列車T1又は非CBTC列車T2)が在線しているか否かを示す情報(列車在線情報)を入力し、軌道Rにおいて列車が在線する区間BSを列車在線区間として検知する。在線区間検知部241によって検知された前記列車在線区間は、進路制御部242及びCBTC地上装置23に出力される。
【0021】
進路制御部242は、在線区間検知部241から入力した列車在線区間と、CBTC地上装置23の列車位置検知部231から入力したCBTC在線区間とに基づいて、列車の進入を禁止する区間(進入禁止区間)を設定し、各信号機25の動作を制御することにより各列車の進路制御を行う。進路制御部242が行う処理の詳細については後述する。
【0022】
ここで、CBTC地上装置23のCBTC制御部232の行う処理について説明する。
[在線列車の種別判定]
上述したように、CBTC制御部232には、列車位置検知部231によって検知されたCBTC在線区間、及び、連動装置24の在線区間検知部241によって検知された列車在線区間が入力される。そこで、CBTC制御部232は、入力された前記CBTC在線区間と前記列車在線区間とを比較して、軌道Rの各区間BSに在線している列車の種類を判定する。すなわち、各区間BSに在線している列車がCBTC列車T1であるか非CBTC列車T2であるかを判定する。
【0023】
具体的には、CBTC制御部232は、下記(1)〜(4)に示すようにして各区間BSに在線している列車の種類を判定する。換言すれば、CBTC制御部232は、軌道Rの各区間BSにおける列車の在線状況を把握する。
【0024】
(1)列車位置検知部231によってCBTC列車T1の在線が検知されており、かつ、在線区間検知部241によってCBTC列車T1又は非CBTC列車T2の在線が検知されている区間BSについては、CBTC列車T1が在線していると判定する。
【0025】
(2)列車位置検知部231によってはCBTC列車T1の在線が検知されていないが、在線区間検知部241によってCBTC列車T1又は非CBTC列車T2の在線が検知されている区間BSについては、非CBTC列車T2が在線していると判定する。
【0026】
(3)列車位置検知部231によってCBTC列車T1の在線が検知されておらず、かつ、在線区間検知部241によってCBTC列車T1又は非CBTC列車T2の在線が検知されていない区間BSについては、いずれの列車も在線していないと判定する。
【0027】
(4)なお、列車位置検知部231によってCBTC列車T1の在線が検知されているが、在線区間検知部241によっては列車の在線が検知されていない区間BSがあった場合には、当該区間BSを異常区間として特定すると共にCBTCに異常があると判定する。
【0028】
[CBTC列車T1の列車制御情報の生成]
CBTC制御部232は、上記のようにして把握した各区間BSにおける列車の在線状況に基づき、各CBTC列車T1の列車制御情報を生成する。具体的には、次のようにして各CBTC列車T1の列車制御情報を生成する。なお、ここでは、前記列車制御情報を生成するCBTC列車T1を「対象CBTC列車」という。
【0029】
CBTC制御部232は、まず、対象CBTC列車に先行する列車がCBTC列車T1であるか否かを判定する。先行する列車がCBTC列車T1である場合には、先行列車及びその後続列車である対象CBTC列車の両方の列車位置情報を取得できる。そのため、CBTC制御部232は、先行するCBTC列車T1(先行列車)の列車位置情報に基づいて、対象CBTC列車(後続列車)の停止目標を設定する。そして、CBTC制御部232は、設定した前記停止目標を含む情報を対象CBTC(後続列車)の列車制御情報として生成する。
【0030】
前記停止目標は、前記先行するCBTC列車T1に可能な限り近づけた対象CBTC列車の停止位置の限界点(停止限界)を含み、例えば、先行するCBTC列車T1との間に安全な距離(間隔)が確保された、当該先行するCBTC列車T1の後方位置とすることできる。生成された列車制御情報は、対応する沿線無線機22、すなわち、対象CBTC列車をその通信範囲に含む沿線無線機22を介して、対象CBTC列車へと送信される。
【0031】
一方、先行する列車が非CBTC列車T2である場合には、対象CBTC列車に先行する列車の列車位置情報を取得できない。このため、CBTC制御部232は、先行する非CBTC列車T2が在線している区間BSへの対象CBTC列車の進入を禁止することで安全を確保する。すなわち、CBTC制御部232は、列車の進行方向で見て、先行する非CBTC列車T2(先行列車)が在線している区間BSの一つ手前の区間BSにおける所定位置、好ましくは、前記一つ手前の区間BSの終端を、対象CBTC列車(後続列車)の停止目標とし、この停止目標を含む情報を列車制御情報として生成する。生成された列車制御情報は、対応する沿線無線機22を介して、対象CBTC列車へと送信される。
【0032】
そして、前記列車制御情報を受信した対象CBTC列車においては、CBTC車上装置13が、自列車の位置や速度、自列車の制動性能、及び、前記列車制御情報に含まれた前記停止目標に基づいて速度照査パターンを生成し、この生成した速度照査パターンに基づいて、適宜、制動制御を行って自列車の速度を制御する。これにより、先行列車及びその後続列車の列車位置情報を取得できる場合には、先行列車と後続列車の間隔が移動閉塞方式によって制御され、先行列車の列車位置情報を取得できない場合には、先行列車と後続列車との間隔が実質的に固定閉塞方式によって制御されることになる。
【0033】
なお、CBTC制御部232は、前記異常区間として特定された区間BSがある場合には、その旨を連動装置24及び図示省略した中央管理装置や駅装置などに送信するようにするのが好ましい。
【0034】
次に、連動装置24の進路制御部242が行う処理について説明する。
上述したように、進路制御部242には、在線区間検知部241によって検知された在線区間情報と、CBTC地上装置23の列車位置検知部231によって検知されたCBTC在線区間とが入力されており、CBTC制御部232と同様に、進路制御部242も軌道Rの各区間BSに在線している列車の種類を判定することできる(上記(1)〜(4)を参照)。そこで、進路制御部242は、次のようにして各列車の進路制御を行う。
なお、進路制御部242は、自らが各区間BSに在線している列車の種類を判定することに代えて、CBTC制御部232から判定結果を入力するようにしてもよい。
【0035】
進路制御部242は、まず進路制御の対象となる列車(対象列車)がCBTC列車T1であるか非CBTC列車T2であるかを判定する。
そして、進路制御部242は、前記対象列車がCBTC列車T1である場合には、前記対象列車に対して、前記対象列車の在線する区間BSの一つ先の区間BSから当該対象列車に先行する列車(先行列車)の在線する区間BSまでの進路を設定する。この場合、進路制御部242は、前記対象列車の在線する区間BSから前記先行列車の在線する区間BSまでの間にある各信号機25を進行現示(B現示)とする。これにより、CBTC列車T1)については、原則として信号機25によってはその走行が停止されず、CBTC制御部232によって生成された列車制御情報による速度制御や制動制御が行われる。
【0036】
一方、前記対象列車が非CBTC列車T2である場合には、進路制御部242は、前記対象列車に対して、前記対象列車の在線する区間BSの一つ先の区間BSから当該対象列車の列車(先行列車)の在線する区間BSの一つ手前の区間BSまでの進路を設定する。すなわち、前記先行列車の在線する区間BSには進路が設定されない。この場合、進路制御部242は、前記先行列車の在線する区間BSとその一つ手前の区間BSとの境界付近にある信号機25、換言すれば、前記先行列車の在線する区間BSの直前の信号機25を停止現示(R現示)とする。これにより、先行列車がCBTC列車T1であるか非CBTC列車T2であるかにかかわらず、その後続列車である前記対象列車(非CBTC列車T2)については、前記先行列車の在線する区間BSへの進入が禁止され、先行列車と後続列車との間隔が固定閉塞方式によって制御される。なお、前記先行列車の在線する区間BSとその一つ手前の区間BSとの境界付近にある信号機25が前記先行列車の在線する区間BSの「閉塞信号機」に相当する。
【0037】
また、進路制御部242は、前記異常区間として特定された区間BSがある場合には、例えば、当該異常区間の直前の信号機25を注意現示(Y現示)や警戒現示(YY現示)として列車の運転者に注意を促したり、又は、停止現示(R現示)として当該異常区間への列車の進入を禁止したりしてもよい。
【0038】
次に、以上のように構成された列車制御システムによる列車の走行制御について具体的に説明する。
図2は、先行列車及びその後続列車がCBTC列車T1である場合、すなわち、列車制御システムが先行列車及びその後続列車の列車位置情報を取得できる場合を示している。
この場合、上述したように、後続列車の在線する区間BSから先行列車の在線する区間BSまでの間にある各信号機25は進行現示となっており、後続列車は信号機によって各区間への進入を禁止されない。したがって、後続列車は、CBTC制御部232によって生成された列車制御情報に基づいて制御される。すなわち、後続列車の停止目標は、区間BSとは無関係に先行列車の位置に基づいて設定され、例えば、先行列車に可能な限り近づけた位置(停止限界)とすることができる。これにより、CBTC列車同士の間では、両列車の間隔が移動閉塞方式によって制御され、安全かつ高効率(高密度)な列車運行を実現できる。
【0039】
図3は、先行列車が非CBTC列車T2であり、かつ、その後続列車がCBTC列車T1である場合、すなわち、先行列車の列車位置情報が取得できない場合を示している。
この場合においても、
図2の場合と同様、後続列車の在線する区間BSから先行列車の在線する区間BSまでの間にある各信号機25は進行現示となっており、後続列車は、CBTC制御部232によって生成された列車制御情報に基づいて制御される。そして、後続列車の停止目標は、先行列車の在線する区間BSの一つ手前の区間BS内における所定位置(好ましくは、終端)に設定される。これにより、後続列車であるCBTC列車T1は、先行列車の在線する区間BSの一つ手前の区間BSで停止される、すなわち、両列車の間隔が実質的に固定閉塞方式によって制御されることとなり、先行列車である非CBTC列車T2に衝突することが回避される。
【0040】
図4は、先行列車がCBTC列車T1であり、かつ、その後続列車が非CBTC列車T2である場合、すなわち、後続列車の列車位置情報が取得できない場合を示している。
この場合、上述したように、先行列車の在線する区間BSの直前の信号機25が停止現示とされるため、先行列車の在線する区間BSへの後続列車の進入が禁止され、後続列車は先行列車の在線する区間BSの一つ手前の区間BSで停止する。すなわち、先行列車とその後続列車の間隔が固定閉塞方式によって制御される。また、後続列車の停止目標が、実質的に、先行列車の在線する区間BSの一つ手前の区間BSの終端に設定されることになる。これにより、前記列車制御情報によって走行制御を行えない非CBTC列車T2が先行列車に衝突することが回避される。なお、先行列車及びその後続列車が非CBTC列車T2である場合、すなわち、先行列車及びその後続列車の列車位置情報を取得できない場合についても同様である。
【0041】
以上説明したように、本実施形態による列車制御システムでは、軌道上1にCBTC列車T1と非CBTC列車T2とが混在する場合であっても、軌道Rにおける各列車の位置及び/又は在線区間を把握した上で、CBTC列車T1及び非CBTC列車T2のそれぞれに対して適切な走行制御を行うことができ、CBTC列車T1であるか非CBTC列車T2であるかにかかわらず、当該列車の先行列車との衝突が回避される。具体的には、本実施形態による列車制御システムでは、先行列車とその後続列車の両方がCBTC列車T1である場合には、両列車の間隔が移動閉塞方式によって制御され、先行列車及びその後続列車の少なくとも一方が非CBTC列車T2である場合には、両列車の間隔が固定閉塞方式によって制御される。これにより、同一軌道R内におけるCBTC列車T1と非CBTC列車T2との安全な混在運転を実現できる。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図5は、第2実施形態による列車制御システムの全体構成を示している。なお、第1実施形態による列車制御システム(
図1)と共通する要素については同一の符号を用い、その機能も同じであるものとする。第2実施形態よる列車制御システムも、所定の軌道Rに適用され、当該軌道Rにおいて、地上側設備との間で無線による情報通信が可能なCBTC列車T1と、前記地上側設備との間で無線による情報通信が行えない非CBTC列車T3との同時かつ安全な走行を可能とする。
【0043】
第2実施形態による列車制御システムは、
図5に示すように、地上側設備として、複数の地上子21と、複数の沿線無線機22と、CBTC地上装置23と、非CBTC列車T3の走行制御を行うATC地上装置41と、を備えている。また、軌道Rには、当該軌道Rを複数に分割した各区間(閉塞区間)BSにおける列車の在線を検知する在線検知手段として軌道回路又はループコイル(図示省略)が設けられている。
【0044】
本実施形態においても、CBTC列車T1は、車上無線機11、車上子12及びCBTC車上装置13を備えており、地上側設備から無線送信された列車制御情報を車上無線機11によって受信し、CBTC車上装置13によって自列車の速度制御や制動制御を含む各種制御が行われるようになっている。一方、本実施形態における非CBTC列車T3は、受電器31及びATC車上装置32を備えており、地上側設備から前記軌道回路又は前記ループコイルを介して送信された信号を受電器31によって受信し、ATC車上装置32によって自列車の速度制御及び/又は制動制御が行われるようになっている。
【0045】
ATC地上装置41は、在線区間検知部411と、ATC制御部412と、を含む。
在線区間検知部411は、前記軌道回路又は前記ループコイルから列車在線情報を入力し、軌道Rにおいて列車が在線する区間を列車在線区間として検知する。在線区間検知部441によって検知された列車在線区間は、ATC制御部412及びCBTC地上装置23に出力される。
【0046】
ATC制御部412は、在線区間検知部411から列車在線区間を入力すると共にCBTC地上装置23の列車位置検知部231からCBTC在線区間を入力し、軌道Rの各区間BSにおける列車の在線状況を把握する。そして、ATC制御部412は、非CBTC列車T3をこれに先行する列車(先行列車)の在線する区間BSの一つ手前の区間BSで停止させるための信号を生成し、前記軌道回路又は前記ループコイルを介して送信することにより、各非CBTC列車T3の走行制御を行う。なお、ここでは、前記信号を生成する非CBTC列車T3を「対象非CBTC列車」という。
【0047】
具体的には、ATC制御部412は、対象非CBTC列車の先行列車の在線する区間BSを確認し、前記対象非CBTC列車が前記先行列車の在線する区間BSの一つ手前の区間BSで停止できるように、対象非CBTC列車の在線する区間BSと前記先行列車の在線する区間BSとの間の各区間BSにおける対象非CBTC列車の制限速度を設定する。そして、ATC制御部412は、設定した制限速度に対応する信号を生成して前記軌道回路又は前記ループコイルを介して送信する。
【0048】
受電器31によって前記信号を受信した対象非CBTC列車においては、ATC車上装置33が、受信した前記信号に含まれた制限速度と自列車の速度とを比較して、適宜、制動制御を行って自列車の速度を制御する。これにより、対象非CBTC列車は、前記先行列車の在線する区間BSに近づくにつれて減速されると共に、前記先行列車の在線する区間BSの一つ手前の区間BSで停止することとなり、前記列車制御情報によって走行制御を行えない非CBTC列車T3が先行列車に衝突することが回避される。
【0049】
第2実施形態による列車制御システムにおいても、第1実施形態と同様に、CBTC列車T1同士の間では安全かつ高効率(高密度)な列車運行を実現しつつ、CBTC列車T1と非CBTC列車T3との衝突や非CBTC列車T3同士の衝突を回避して、同一軌道R内におけるCBTC列車T1と非CBTC列車T3との安全な混在運転を実現できる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能であることはもちろんである。以下にいくつか例示する。
【0051】
例えば、上述した各実施形態においては、軌道を複数に分割した各区間(閉塞区間)における列車の在線を検知する在線検知手段として、車軸検知器、軌道回路又はループコイルを用いているが、これに限るものではない。在線検知手段として、バリス検知器やトロリーコンタクタなどを利用してもよい。すなわち、在線検知手段は、各区間における列車の在線を直接又は間接的に検知できるものであればよく、例えば、電波や電磁波などを利用して各区間における列車の在線を検知したり、列車側との信号の送受信によって当該列車の在線区間を検知したりしてもよい。
【0052】
また、上述した第2実施形態においては、前記非CBTC列車をその先行列車の在線する区間の一つ手前の区間で停止させるための信号として、前記非CBTC列車の各区間における制限速度に対応する信号を生成しているが、これに限るものではない。例えば、ATC制御部412が、先行列車の在線する区間BSの一つ手前の区間BSにおける所定位置(好ましくは、終端)を前記非CBTC列車の停止目標とする信号を生成してもよい。この場合においては、例えば、非CBTC列車にさらに車上子を設け、ATC制御部412は、地上子21を介して、生成した前記信号を送信するように構成する。そして、非CBTC列車では、前記車上子によって自列車の位置及び前記停止目標を受信し、ATC車上装置が、自列車の位置や速度、自列車の制動性能、及び、前記停止目標に基づいて速度照査パターンを生成し、この生成した速度照査パターンに基づいて、適宜、制動制御を行って自列車の速度を制御する。このようにしても同一軌道内におけるCBTC列車と非CBTC列車との安全な混在運転を実現できる。