【実施例】
【0029】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0030】
米糠酵素処理組成物の調製
次のようにして、米糠を酵素処理して、酵素処理物を得た。酵素処理物は、米糠のタンパク質が酵素により分解されて調製されたペプチドが複数種含まれる組成物である。
【0031】
酵素としては、サーモリシン(株式会社ペプチド研究所;Code3504)、αキモトリプシン(東京化成工業株式会社;code C0342)、及びペプシン(SIGMA;「Pepsin from porcine gastric mucosa」)を用いた。
【0032】
また、米糠としては、ハイブレフ(サンブラン株式会社製)を用いた。ハイブレフは、米糠を圧搾することより脱脂を行った圧搾脱脂米糠である。
【0033】
まず、超純水に米糠を30g/Lとなるように混合し、これにサーモリシンを0.4g/Lとなるように加えた。そして、当該混合物を37℃インキュベータ内でスターラーを用いて250r.p.m.で攪拌しながら20時間インキュベートした。さらに、沸騰水浴に浸漬して15分間処理し、酵素を失活させた。15℃、7150r.p.m.(8000×g)15分で遠心分離処理を行い、得られた上清のpHをNaOHを用いて7.0に調整し、フィルターペーパーNo.2(アドバンテック社製)を用いて濾過して、得られた濾液を凍結乾燥した。当該凍結乾燥物を、米糠サーモリシン処理組成物として検討に用いた。なお、当該米糠サーモリシン処理組成物を、以下「HB−T」と記載することがある。
【0034】
また、当該サーモリシン処理と同様にして、サーモリシンのかわりにキモトリプシン又はペプシンを用い、米糠のキモトリプシン処理組成物、及び米糠のペプシン処理組成物(凍結乾燥物)を得た。ただし、ペプシン処理を行う際には、HClによりpHを2.0に調整した上で処理を行った。当該米糠キモトリプシン処理組成物を以下「HB−C」と記載することがある。また、当該米糠ペプシン処理組成物を以下「HB−P」と記載することがある。
【0035】
なお、サーモリシンを加えない以外は、当該サーモリシン処理と同様の処理を行い、組成物(凍結乾燥物)を得た。当該組成物を以下「I−HB」と記載することがある。
【0036】
ゴマサーモリシン処理物の精製
上記特許文献1及び非特許文献1に記載されるように、ゴマのサーモリシン処理物は、ACE阻害活性を有することが知られており、ゴマサーモリシン処理物が含まれる食品も上市されている。そこで、次のようにしてゴマサーモリシン処理物を精製し、対照として用いた。
【0037】
市販されている「胡麻麦茶」(サントリー株式会社)700mLをナスフラスコへ入れ、凍結乾燥させて凍結乾燥物を2.4g得た。当該凍結乾燥物をゴマサーモリシン処理物として用いた。以下当該凍結乾燥物を「ゴマ−T」と記載することがある。なお、上記非特許文献1によれば、「胡麻麦茶」700mL中には約1.8gのゴマサーモリシン処理物(ペプチド)が含まれている。
【0038】
ACE阻害活性の測定
各サンプルのACE阻害活性の測定は、測定キット「ACE Kit - WST」(株式会社同仁化学研究所)を用いて行った。当該キットは、3-Hydroxybutyryl-Gly-Gly-Gly (3HB-GGG)から切り出されてくる3-Hydroxybutyric acid (3HB)を酵素法により検出するものである。操作は当該キットの取扱説明書に従い、ACE阻害率を測定した。
【0039】
<HB−T及びゴマ−TのACE阻害活性測定>
HB−T及びゴマ−Tについて、それぞれACE阻害活性を測定した(n=3)。それぞれの測定結果からIC50値を求めた。IC50値の結果を
図1に示す。なお、
図1中のゴマ−Tの濃度は、ゴマペプチド量(上記「ゴマサーモリシン処理物の精製」における約1.8g)を基準とした値である。当該結果から、HB−Tは、ゴマ−Tに比べ、ACE阻害活性が有意に高いことがわかった。
【0040】
<HB−T、HB−C、及びHB−PのACE阻害活性測定>
HB−T、HB−C及びHB−Pを、それぞれ超純水に溶解させ、それぞれACE阻害活性を測定した(n=3)。結果を
図2に示す。また、それぞれの測定結果から求めたIC50値を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
当該結果から、特にHB−T及びHB−C(すなわち、米糠のサーモリシン処理組成物及びキモトリプシン処理組成物)は、優れたACE阻害活性を有することがわかった。
【0043】
HB−TのACE阻害活性成分の分画
<限外濾過による分画>
HB−Tを超純水に溶解した溶液を、限外濾過により分画した。具体的には、HB−T水溶液(濃度:3mg/mL)15mLを限外濾過膜付き遠心カラム(Millipore社製アミコンウルトラ 10,000NMWLメンブレン)に詰めて、遠心(4000×g, 25 ℃, 40 min)し、濾液及び膜上に残った液を回収した。当該濾液については、さらに限外濾過膜付き遠心カラム(Millipore社製アミコンウルトラ 3,000NMWLメンブレン)に詰めて遠心(4000×g, 25 ℃, 40 min)し、濾液及び膜上に残った液を回収した。
【0044】
以上のようにして、HB−T水溶液を(i)約10kDa以上画分、(ii)約10〜3kDa画分、及び(iii)約3kDa以下画分、の3画分に分画した。これら(i)〜(iii)の画分について、それぞれを凍結乾燥し、超純水に溶解させ、上記と同様にしてACE阻害活性を測定した。測定結果をグラフにしたものを
図3に示す。また、各画分120μg/mLにおけるACE阻害活性をグラフにしたものを
図4に示す。当該結果から、HB−TのACE阻害活性は、主に10kDa以下の成分が有するものであることがわかった。
【0045】
<オープンカラムによる分画>
メタノールに溶いた担体(フジシリシア化学社製 CHROMATOREX ODS DM1020T)をカラムに40 g詰めて、分画用カラムとした。当該カラムを20%メタノールで置換し、少量(2ml程度)の超純水に溶解したHB−T2.8gをアプライした。その後20%メタノールで溶出を行った。
【0046】
カラムから溶出した液を5mLずつ試験管に回収した。計20本(各試験管に回収された溶出液をNO.1〜NO.20とする)、合計100mLを回収した。この後、さらに40%メタノールを5mLカラムにアプライし、溶出液を5mL回収し、さらに100%メタノールを5mLカラムにアプライし、溶出液を5mL回収した。
【0047】
そして、各フラクションを幾つかのグループ毎に合一し、エバポレーターによって蒸留した。残ったサンプル量の重量を測定した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
例えば、表2において、NO欄の「4−5」はNO.4及び5の回収溶出液を合一したことを示す。これをエバポレーターによって蒸留した結果、1.6868gのサンプルが残ったことを示し、当該重量は全回収サンプル量の53.9%を占めることを示す。
【0050】
得られた各サンプル及びHB−Tについて、TLC(薄層クロマトグラフィー)により、展開した。TLCプレートとしてHPTLC Silicagel 60 RP-18 WF254S(Merck Millipore)を用い、展開液として20%メタノールを用いた。また、各サンプル及びHB−Tを超純水に溶解(80μg/mL)し、上記と同様にしてACE阻害活性を測定した。TLCの結果を
図5に、ACE阻害活性測定結果を
図6に示す。なお、
図6の縦軸の数値は「ACE阻害活性(%)」を示す。
【0051】
また、No.12〜14及び15〜20のサンプルをさらに合一し(約0.13gに相当)、適量の10%メタノールに溶解させ分画用サンプルとした。さらに、メタノールに溶いた担体(フジシリシア化学社製 CHROMATOREX ODS DM1020T)をカラムに7.1 g詰めて、分画用カラムとし、前記分画用サンプルをアプライし、10%メタノールで溶出を行い、溶出液を5mLずつ試験管に回収した(計18本)。得られた各回収液を、エバポレーターで蒸留した後、展開液として10%メタノールを用いた点以外は上記と同様にしてTLCで展開した。結果を
図7に示す。
【0052】
図7で示されるTLCに供された各試験管(計18本;no.1〜18)の溶出液について、no.1〜no.18とし、no.2及び3、no.4のみ、no.5〜8、no.9〜15、を合一し、それぞれサンプルII−2−3、II−4、II−5−8、II−9−15とした。これら4種のサンプルをエバポレーターで蒸留後、超純水に溶解させ、上記と同様にしてACE阻害活性を測定した(終濃度は80μg/mL)。なお、終濃度80μg/mLとは、ACE阻害活性を上記キットで測定するにあたり、測定時に各サンプルの濃度が80μg/mLとなるようにしたということである。各サンプルの重量はエバポレーターで蒸留した際に測定した値である。II−4、II−5−8、II−9−15についてのACE阻害活性測定結果を
図8に示す。
【0053】
血圧降下作用の検討
雄性の本態性高血圧ラット(SHR/Izm)に、HB−Tを4週間反復投与し、収縮期血圧を測定して、HB−Tの血圧降下作用を検討した。
【0054】
具体的には次のようにして検討を行った。
【0055】
HB−Tを蒸留水に溶解させて100mg/mL又は10mg/mLの投与サンプルを調製した。また、I−HBを蒸留水に溶解させて100mg/mLの投与サンプルを調製した。また、カプトプリルを蒸留水に溶解させて0.5mg/mLの投与サンプルを調製した。なお、これらの投与サンプルは用時調製した。また、カプトプリルはACE阻害薬であり、ポジティブコントロールとして用いた。
【0056】
また、市販の雄性の本態性高血圧ラット(SHR/Izm)を購入し、7週間の馴化期間経過後、収縮期血圧の平均値と標準偏差値が群間でおおよそ均等になるように、下記表3に示すように群分けを行った。
【0057】
【表3】
【0058】
群1のラットには蒸留水を、群2のラットにはHB−T(10mg/mL)の投与サンプルを50mg/kgとなるように、群3のラットにはHB−T(100mg/mL)の投与サンプルを50mg/kgとなるように、群4のラットにはI−HB(100mg/mL)の投与サンプルを50mg/kgとなるように、群5のラットにはカプトプリル(0.5mg/mL)投与サンプルを2.5mg/kgとなるように、それぞれ投与した。各サンプル投与は、1日1回、2.5mL用シリンジおよびテフロン製胃ゾンデを用いて、胃内に強制経口投与することで行った。
【0059】
収縮期血圧の測定は、各ラットを加温器に入れて約36〜38℃に加温し、ラットの安定(心拍数の変動と外観上の動きで判断)を確認した後、血圧を3回測定してその平均値を測定値とすることで行った。測定は、検討スタート日、及びスタート1週間後、2週間後、3週間後のサンプル投与前に行った。測定機器として非観血式自動血圧測定装置BP-98A(株式会社ソフトロン製)を用いた。
【0060】
さらに、各群のラットについて、検討開始4週間後の血圧測定を行った後、16時間以上絶食させた。そして、イソフルラン麻酔下にて腹部大動脈から全採血し(抗凝固剤としてヘパリンナトリウムを使用)、安楽死させた。致死確認後に肺を採取した。また、採取した血液は遠心分離するまで氷中にて保存した。遠心分離は3,000 rpm、15分、4℃にて行い、血漿を得た。得られた血漿は、80℃以下にて保存した。また、採取した肺も80℃以下で保存した。
【0061】
上記のようにして得られた各ラットの肺を用いて、益田の方法(Masuda O., Nakamura Y., and Takano T., The journal of nutrition 126, 3063−3068, 1996)に準じた方法により酵素画分の抽出を行った。具体的には、各肺の左肺の下半分を切りとり、これを用いて4000μl/1gの試料となるようにBuffer(50mmol/l Tris−HCl(pH7.9)/0.3M NaCl)を加えた後、ホモジナイザーで45秒間攪拌し、その上清を超遠心(44000×g、90min、4℃)した。超遠心後に得られた上清を廃棄し、再度Buffer50mmol/l Tris−HCl(pH7.9)/0.3M NaCl)を4000μl/gの試料となるよう加え、超遠心(44000×g、90min、4℃)した。その後、得られた沈殿物に対し、0.5%TritonX含有上記Bufferを4000μl/1g試料となるよう加え、氷上で60min放置した。放置したサンプルを遠心(1000×g、10min、4℃)し、得られた上清を酵素画分とした。
【0062】
酵素分画のACE活性をアンジオテンシン−1変換酵素活性測定キット(有限会社ライフ研究所)によって測定した。
【0063】
血圧測定結果を
図9に、肺におけるACE活性測定結果を
図10に、それぞれ示す。
【0064】
血中のトロポニンの測定
上記のようにして得られた各ラットの血漿中のトロポニン量を、MILLIPLEX Rat Cardiovascular Disease (CDV) Panel 1(メルクミリポア社製)を用いて測定した。結果を
図11に示す。なお、トロポニンは、心筋にかかる負荷の度合の指標として知られており、トロポニン量が多いほど心臓への負荷が大きいことを示す。(よって、トロポニン量が少なければ、抗高血圧効果が奏されていることが推定される。)
【0065】
処方例
以下に、HB−Tを用いた処方例を示す。
<処方例1:飲料>〔%は質量%を示す〕
HB−T 3g(1.5%)
ライム果汁 7g(3.5%)
りんご透明濃縮果汁 18g(9%)
水 172g(86%)
合計 200g(100%)
なお、上記原料を撹拌混合した後、95℃達温まで加熱殺菌した。
調製した飲料は、pHが3.24、Brixが9.84であった。