【文献】
橘高 重義,プラスチックの帯電防止,日本,日刊工業新聞社/白井十四雄,1969年 8月20日,3版,第30−31頁,3.1帯電列
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フルオロポリマー含有粒子が、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンのコポリマー、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンのターポリマー、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマーのうち、少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
前記粉末コーティング組成物が、該粉末コーティング組成物中の固体合計の約0.1重量%から約5重量%の正に帯電した粒子を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用する場合、「疎水性の/疎水性」という用語および「疎油性の/疎油性」という用語は、例えば、水およびヘキサデカン(または炭化水素、シリコーン油など)の接触角がそれぞれ約90°以上であるような表面の濡れ挙動を指す。例えば、疎水性/疎油性の表面において、約10〜15μLの水/ヘキサデカン液滴は丸まり、平衡状態の接触角は約90°以上である。
【0012】
本明細書で使用する場合、「超疎水性/超疎水性の表面」という用語および「超疎油性の/超疎油性」という用語は、水/ヘキサデカンの接触角が約120°以上の表面濡れ性を指す。
【0013】
「高疎水/高疎水の表面」という用語および「高疎油の/高疎油」という用語は、水/ヘキサデカンの接触角が約150°以上であり、約10〜15μLの水/ヘキサデカン液滴が、水平面から数度傾けた表面を自由に転がり落ちることを指す。高疎水の/高疎油の表面に対する水/ヘキサデカン液滴のすべり角は、約10°以下であってもよい。傾いた高疎水/高疎油の表面では、表面の後退接触角が大きく、液滴の上側での界面は、固体表面に付着する傾向が低く、液滴の抵抗に重力が勝ち、表面を滑り落ちる。高疎水/高疎油の表面は、前進接触角と後退接触角のヒステリシスが非常に小さい(例えば、40°以下)と記述することができる。大きな液滴は重力の影響をより大きく受け、滑り落ちやすい傾向があり、一方、小さな液滴は、動かない状態または所定の位置に保持される傾向が大きいことに留意されたい。
【0014】
以下に詳細に示すある実施形態によって、電子写真式画像形成装置/プリンター中でトナーを変更することなく、低光沢定着器部材を用い、低光沢印刷物を製造することができる。いくつかの実施形態は、固有の粉末コーティングプロセスおよび低光沢印刷用途のための粉末コーティングされた低光沢フュージング部材を得るための条件に関するものである。実施形態は、高光沢印刷から低光沢印刷へとすばやく変更できるという利点を有しており、これを使用して広範囲の印刷光沢を達成することができる。
【0015】
定着器部材に対し、微細な表面粗さを導入すると、このような定着器部材を用いて印刷した場合、平滑な表面を有する定着器部材を用いて印刷した画像と比較して、光沢が低い画像を製造することができる。いくつかの実施形態では、定着器部材の外側層/剥離層中でエアロゲルを使用し、微細な表面粗さを与えることができる。ある実施形態では、低光沢定着器部材は、エアロゲル(例えば、シリカエアロゲル)を、アルミナ、シリカ、ジルコニアまたはゲルマニアを含む正に帯電した粒子(例えば、摩擦帯電する粉末添加剤)を用い、フルオロポリマー含有(例えば、ペルフルオロアルコキシ)トップコート/外側層に組み込むことによって製造することができる。均一な低光沢印刷物を提供するために、質感を形成する粒子(例えば、エアロゲル粒子)を定着器部材に均一に堆積/分散させることが望ましい。
【0016】
上述のように、接触型フュージングシステムを備える電子写真式画像形成装置において異なる印刷光沢を達成するのに2種類の手法が存在する。1つの手法は、トナーを改変することであり、他の手法は、定着器部材表面を改質することである。
図1は、単一のトナー層の色がシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの場合、およびプロセス(2つのトナー層)の色がレッド、グリーン、ブルーの場合の印刷光沢(y軸)とロール光沢(x軸)の関係を示すグラフである。
図1に示すように、ロール光沢と印刷光沢との間に相関関係がある。低光沢ロール(例えば、微細な表面粗さが大きい)は、低い印刷光沢と相関関係にあり、高光沢ロール(例えば、平滑な表面)は、高い印刷光沢と相関関係にある。
【0017】
いくつかの実施形態は、基材(例えば、他の基材の中でも、特に定着器部材)を粉末コーティングする方法に関する。このような方法は、静電ガン(例えば、コロナガン)によって基材に粉末コーティング組成物を塗布することを含んでいてもよい。粉末コーティング組成物は、第1の材料と第2の材料の混合物を含んでいてもよく、第1の材料と第2の材料は密度が異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、混合物は、複数のエアロゲル粒子(例えば、第1の材料として)と、複数のフルオロポリマーを含有する粒子(例えば、第2の材料として)とを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、粉末コーティング組成物は、アルミナ、シリカ、ジルコニアまたはゲルマニアを含む複数の正に帯電した粒子をさらに含んでいてもよい。基材は、粉末コーティング組成物を塗布する間、接地していてもよい。静電ガンは、少なくとも1つの電極と、高電圧発生器とを備えていてもよく、高電圧発生器は、約0KV〜約100KV、約20KV〜約80KV、または約40KV〜約60KVの負極性電圧を発生させ、粉末コーティング組成物の塗布中に、この電圧が電極に印加される。いくつかの実施形態では、高電圧発生器によって約100キロボルト(kVまたはKV)の負極性電圧が発生し、粉末コーティング組成物の塗布中に、この電圧が電極に印加される。ある実施形態では、静電ガンは、丸いスプレーノズル/先端または平坦なスプレーノズル/先端を有していてもよい。いくつかの実施形態では、静電ガンは、丸いスプレーノズル/先端形状を有していてもよい。
【0018】
基材は、粉末コーティングに適していることが当該技術分野で知られている任意の基材であってもよい。いくつかの実施形態では、基材は、当該技術分野で知られているものの中でも、特に、定着器部材、例えば、定着器ロールであってもよい。いくつかの実施形態では、基材は、金属(例えば、特に自動車および家庭用途で使用される金属)を含んでいてもよい。基材は、ある実施形態では、中密度繊維板を含んでいてもよい。基材は、粉末コーティングされる場合、コーティングは、特に、非粘着性料理器具、海洋汚染物質による付着物に耐性がある材料、自己洗浄性の窓、他の建築材料、機械類のコーティング、型剥離性パッケージ、インクおよびトナーのパッケージ、落書き防止性構成要素、またはインクジェット印刷および油を使用しない印刷に適したものであってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、塗布された粉末コーティング組成物を硬化させることによって、基材の上に剥離層/外側層を作成することができる。硬化は、ある実施形態では、塗布された粉末コーティング組成物を約255℃〜約400℃、約260℃〜約380℃、または約280℃〜約350℃まで加熱することを含んでいてもよい。ある実施形態では、剥離層/外側層は、厚みが約5ミクロン〜約250ミクロン、約10ミクロン〜約100ミクロン、約20ミクロン〜約80ミクロン、または約30ミクロン〜約50ミクロンであってもよい。いくつかの実施形態では、剥離層/外側層は、75°で測定した場合、表面光沢が約5ggu(Gardner光沢単位)〜約45ggu、約10ggu〜約40ggu、または約15ggu〜約35gguであってもよい。
【0020】
剥離層/外側層は、表面自由エネルギーが、外側層に使用するフルオロポリマー基材(例えば、硬化したフルオロポリマーを含有する粒子)自体の表面エネルギーより低くてもよい。実施形態では、エアロゲル粒子が分散したフルオロポリマーから、表面エネルギーが約20mN/m
2未満の剥離層を得ることができる。いくつかの実施形態では、表面自由エネルギーは、高疎水性表面の場合、約10mN/m
2未満、約10mN/m
2〜約2mN/m
2、約10mN/m
2〜約5mN/m
2、または約10mN/m
2〜約7mN/m
2であってもよい。
【0021】
フルオロポリマー(例えば、特に、TeflonおよびPFA)は、一般的に粉末から処理され、次いで、約300℃〜約380℃の溶融温度にされ、密着したコーティングを生成する。エアロゲルとフルオロポリマー含有粒子を合わせ、溶融させると、エアロゲル粒子を内包し、融合したフルオロポリマーマトリックスを製造することができる。剥離層には、以下に記載する比率でフルオロポリマーマトリックス全体に分散したエアロゲル粒子が組み込まれる。
【0022】
粉末コーティングは、定着器コーティングにとって望ましい処理方法であるが、フルオロポリマーおよびエアロゲル粉末は、粉末コーティング処理中に分離する傾向があり、不完全な硬化および不均一な剥離層を生じる。フルオロポリマー粉末(例えば、フルオロポリマーを含有する粒子)およびエアロゲル粉末は、一緒にコーティングし、硬化させ、低光沢印刷物を調製するのに適切な定着器トップコートを作成することができる2種類の異なる粉末である。摩擦帯電する粉末/フルオロポリマーを含有する粒子およびエアロゲル粒子(両方とも負に帯電している)と反対の電荷である正に帯電した粒子を添加すると、粉末間に会合が起こり、粉末コーティングプロセス全体で均一な混合物を得ることができる。正に摩擦帯電する粉末/正に帯電した粒子を、フルオロポリマーを含有する粒子およびエアロゲル粒子と混合すると、硬化させ、低光沢融合用途のための密着したコーティングを得つつ、濡れ性を高めることができる。
【0023】
実施形態では、粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物中の固体合計の約0.1重量%〜約5重量%、約0.2重量%〜約5重量%、または約0.5重量%〜約2重量%のエアロゲル粒子を含んでいてもよい。ある実施形態では、エアロゲル粒子は、平均粒径が約1ミクロン〜約100ミクロン、約3ミクロン〜約50ミクロン、または約5ミクロン〜約20ミクロンであってもよい。エアロゲル粒子は、グラムあたりの表面積が約400m
2/g〜約1200m
2/g、約500m
2/g〜約1200m
2/g、または約700m
2/g〜約900m
2/gであってもよい。
【0024】
エアロゲルは、一般的な用語では、孔の流体を除去し、孔の流体を空気と置き換えることによって固体相になるまで乾燥したゲルと記述することができる。本明細書で使用する場合、「エアロゲル」は、典型的には、ゲルから作られる一般的に非常に低密度セラミック固体である材料を指す。したがって、「エアロゲル」という用語を用い、乾燥中にゲルがほとんど縮まず、空隙率および関連する特徴を保つように乾燥したゲルを示す。対照的に、「ヒドロゲル」は、孔の流体が水性液である濡れたゲルを記述するために用いられる。「孔の流体」との用語は、孔の構成要素を作成する間に孔構造に含まれる流体を記述する。乾燥させると(例えば、超臨界乾燥による)、かなりの量の空気を含むエアロゲル粒子が生成し、低密度で表面積が大きい固体が生じる。したがって、種々の実施形態では、エアロゲルは、質量密度が小さい、比表面積が大きい、空隙率が非常に大きいという特徴を有する微細セルを含む低密度材料である。エアロゲルは、非常に多くの小さな相互に接続した孔を含む固有の構造によって特徴づけることもできる。溶媒を除去した後、重合した材料を不活性雰囲気下で熱分解してエアロゲルを作成する。
【0025】
任意の適切なエアロゲル構成要素を使用してもよい。実施形態では、エアロゲル構成要素は、例えば、無機エアロゲル、有機エアロゲル、炭素エアロゲル、およびこれらの混合物から選択されてもよい。ある実施形態では、セラミックエアロゲルも適切に使用することができる。これらのエアロゲルは、シリカを含んでいてもよいが、さらに、金属酸化物(例えば、アルミナ、チタニアおよびジルコニア)、または炭素を含んでいてもよく、場合により、金属のような他の元素でドープされていてもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル構成要素は、ポリマー系エアロゲル、コロイド状エアロゲル、およびこれらの混合物から選択されるエアロゲルを含んでいてもよい。
【0026】
エアロゲル構成要素は、最初に望ましい粒径の粒子として作られてもよく、または、もっと大きな粒子として作成し、次いで、望ましい粒径になるように粒径を小さくしてもよい。例えば、作成したエアロゲル材料を粉砕してもよく、または、ナノメートルからミクロンの大きさのエアロゲル粒子として直接作成してもよい。
【0027】
実施形態のエアロゲル粒子は、空隙率が約50%〜約99.9%であってもよく、この場合、エアロゲルは、約99.9%の空の空間を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル粒子は、空隙率が約50%〜約99.0%、または約50%〜約98%であってもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル構成要素の孔は、直径が約2nm〜約500nm、または約10nm〜約400nm、または約20nm〜約100nmであってもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル構成要素は、空隙率が約50%より大きくてもよく、直径が100nm未満または約20nm未満の孔を有していてもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル構成要素は、球状、またはほぼ球状、円柱形、棒状、ビーズ状、立方体、平板状などの粒子の形態であってもよい。
【0028】
実施形態では、エアロゲル構成要素としては、平均体積粒径が約1μm〜約100μm、約3μm〜約50μm、または約5μm〜20μmのエアロゲル粒子、粉末または分散物が挙げられる。エアロゲル構成要素は、単一の分子が十分に分散していると思われるエアロゲル粒子、または2個以上の粒子の凝集物としての粒子、または粒子群をフルオロポリマー材料の中に含んでいてもよい。
【0029】
一般的に、実施形態で使用するエアロゲルの種類、空隙率、孔径、量は、得られる組成物の望ましい性質およびエアロゲルを合わせるポリマーの性質に基づいて選択することができる。
【0030】
エアロゲル構成要素を特徴づける相互に接続する孔の連続したモノリス構造によって、エアロゲルを製造するために使用される材料によっては、高い表面積も導かれ、導電性は、熱的および電気的に非常に伝導性のものから、熱的および電気的に非伝導性のものまでさまざまであってもよい。さらに、実施形態でのエアロゲル構成要素は、グラムあたりの表面積が約400m
2/g〜約1200m
2/g、約500m
2/g〜約1200m
2/g、または約700m
2/g〜約900m
2/gの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル構成要素は、電気抵抗が約1.0×10
−4Ω−cmより大きくてもよく、例えば、約0.01Ω−cm〜約1.0×10
16Ω−cm、約1Ω−cm〜約1.0×10
8Ω−cm、または約50Ω−cm〜約750,000Ω−cmであってもよい。種々の実施形態で使用する異なる種類のエアロゲルは、さらに、電気抵抗が導電性(約0.01Ω−cm〜約1.00Ω−cm)から絶縁性(約10
16Ω−cmより大きい)であってもよい。実施形態の導電性エアロゲル(例えば、炭素エアロゲル)を他の導電性フィラーと合わせ、他の方法では得ることが困難な物理特性、機械特性、電気特性の組み合わせを製造することができる。
【0031】
実施形態で適切に使用可能なエアロゲルを無機エアロゲル、有機エアロゲル、炭素エアロゲルの3つの主要なカテゴリーに分けることができる。いくつかの実施形態では、剥離層は、無機エアロゲル、有機エアロゲル、炭素エアロゲル、およびこれらの混合物から選択される1種類以上のエアロゲルを含んでいてもよい。例えば、実施形態は、同じ種類のエアロゲルを複数、例えば、2種類以上の無機エアロゲルの組み合わせ、2種類以上の有機エアロゲルの組み合わせ、または2種類以上の炭素エアロゲルの組み合わせを含んでいてもよく、または、異なる種類のエアロゲルを複数、例えば、1種類以上の無機エアロゲル、1種類以上の有機エアロゲル、および/または1種類以上の炭素エアロゲルを含んでいてもよい。例えば、化学的に修飾された疎水性シリカエアロゲルを高導電性炭素エアロゲルと合わせ、同時に、コンポジットの疎水性および電気特性を改変し、それぞれの性質の所望な目標値を達成してもよい。
【0032】
無機エアロゲル(例えば、シリカエアロゲル)は、一般的に、金属酸化物ゾル−ゲルの重縮合によって作られ、高度に架橋した透明ヒドロゲルを形成する。これらのヒドロゲルを超臨界乾燥させ、無機エアロゲルを作成する。
【0033】
有機エアロゲルは、一般的に、レゾルシノールとホルムアルデヒドのゾル−ゲル重縮合によって作られる。これらのヒドロゲルを超臨界乾燥させ、有機エアロゲルを作成する。
【0034】
炭素エアロゲルは、一般的に、有機エアロゲルを不活性雰囲気下で熱分解することによって作られる。炭素エアロゲルは、三次元網目構造になるように配置された共有結合ナノメートル粒子で構成される。炭素エアロゲルは、表面積が大きい炭素粉末とは異なり、酸素を含まない表面を有し、化学的に修飾し、ポリマーマトリックスとの相溶性を上げることができる。それに加え、炭素エアロゲルは、一般的に導電性であり、電気抵抗は約0.005Ω−cm〜約1.00Ω−cmである。いくつかの実施形態では、コンポジットは、1種類以上の炭素エアロゲルおよび/または1種類以上の炭素エアロゲルと1種類以上の無機エアロゲルおよび/または有機エアロゲルのブレンドを含んでいてもよい。
【0035】
実施形態に含まれてもよい炭素エアロゲルは、ポリマー系およびコロイド系の2種類の形態を示し、別個の特徴を有する。炭素エアロゲルの形態の種類は、エアロゲルの調製の詳細によって変わるが、両方とも分子クラスターの動的凝集によって生じる。つまり、ナノ細孔、約20Å(オングストローム)未満であってもよく、絡み合ったナノ結晶性のグラフィックリボンで構成されていてもよい炭素エアロゲルの一次粒子は、クラスターを形成し、約20Å〜約500Åの二次粒子(つまりメソ細孔)を形成する。これらのメソ細孔は、鎖を生成し、多孔性炭素エアロゲルマトリックスを生成してもよい。
【0036】
実施形態では、炭素エアロゲルを金属と合わせるか、または金属でコーティングするか、または金属をドープし、導電性、磁化率、および/または分散性を高めることができる。金属をドープした炭素エアロゲルを単独で、または他の炭素エアロゲルおよび/または無機エアロゾルまたは有機エアロゲルとのブレンドで使用してもよい。金属がドープされた炭素エアロゲルを使用する実施形態に、任意の適切な金属、または金属の混合物、金属酸化物およびアロイが含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、炭素エアロゲルに、遷移金属(周期律表に定義されるような)およびアルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、カドミウム、インジウム、スズ,水銀、タリウムおよび鉛から選択される1種類以上の金属をドープしてもよい。ある実施形態では、炭素エアロゲルに、銅、ニッケル、スズ、鉛、銀、金、亜鉛、鉄、クロム、マンガン、タングステン、アルミニウム、白金、パラジウム、および/またはルテニウムをドープしてもよい。例えば、実施形態では、銅がドープされた炭素エアロゲル、ルテニウムがドープされた炭素エアロゲル、およびこれらの混合物がコンポジットに含まれていてもよい。
【0037】
例えば、すでに記載したように、エアロゲル構成要素がナノメートルの大きさの粒子を含む実施形態では、これらの粒子またはその一部が、ポリマーの分子格子構造内にある分子間および分子内の空間を占めていてもよく、したがって、水分子がこれらの分子レベルの空間に組み込まれるのを防ぐことができる。このような遮断によって、最終的なコンポジットの親水性を下げることができる。それに加え、多くのエアロゲルは、疎水性である。疎水性のエアロゲル構成要素を組み込むことで、実施形態のコンポジットの親水性を下げることもできる。親水性が小さくなったコンポジット、およびこのコンポジットから作られる任意の構成要素は、環境での安定性が高く、例えば、低湿度と高湿度が周期的に入れ替わる条件での安定性が高い。
【0038】
エアロゲル粒子は、当該技術分野で既知のものの中でも、例えば、アルキルシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、アミノシラン、メタクリルシランのような表面官能基を含んでいてもよい。実施形態では、表面処理材料は、エアロゲルと反応性であり、改変された表面相互作用を生じる官能基を含む。表面処理は、組成物表面に対し、非粘着性の相互作用を可能にするのにも役立つ。
【0039】
それに加え、多孔性エアロゲル粒子は、フルオロポリマーと相互に入り込んでいてもよく、相互に絡み合っていてもよく、それによって、ポリマー格子を強化することができる。したがって、エアロゲル粒子がポリマー格子と相互に入り込んでいるか、または相互に絡み合っている実施形態の最終的なコンポジットの機械特性を高め、安定化することができる。
【0040】
例えば、一実施形態では、エアロゲル構成要素は、平均粒径が約5〜15ミクロン、空隙率が約90%以上、バルク密度が約40〜100kg/m
3、表面積が約600〜800m
2/gのシリカシリケートを含んでいてもよい。もちろん、所望な場合には、1種類以上の性質がこれらの範囲からはずれた材料を使用してもよい。
【0041】
エアロゲル構成要素の性質に依存して、エアロゲル構成要素をそのまま使用してもよく、または、化学的に修飾してもよい。例えば、エアロゲルの表面化学を種々の用途に向けて改変してもよく、例えば、エアロゲル表面を、エアロゲルの分子構造の表面または内部の化学置換によって親水性または疎水性の性質を有するように改変してもよい。例えば、エアロゲル構成要素の疎水性を高めるような化学修飾が望ましい場合がある。このような化学処理が望ましい場合、当該技術分野でよく知られている任意の従来の化学処理を使用してもよい。例えば、エアロゲル粉末のこのような化学処理は、表面のヒドロキシル基を有機基または部分的にフッ素化した有機基などで置き換えることを含んでいてもよい。
【0042】
概して、広範囲のエアロゲル構成要素が当該技術分野で知られており、種々の用途に応用されてきた。例えば、毛髪、スキンケア、制汗用の組成物のような配合物に多くのエアロゲル構成要素(粉砕した疎水性のエアロゲル粒子を含む)を低コスト添加剤として使用してきた。ある具体的で非限定的な例は、すでに化学処理された市販の粉末(粒径が約5〜15ミクロンのDow Corning VM−2270エアロゲル微粒子)である。
【0043】
実施形態では、粉末コーティング組成物は、少なくとも1つがフルオロポリマー構成要素に分散しているか、または結合している上述のエアロゲルを少なくとも含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲルは、フルオロポリマー構成要素に均一に分散および/または結合しているが、特定の目標を達成するための実施形態では、不均一な分散または結合を使用することもある。例えば、いくつかの実施形態では、エアロゲルは、フルオロポリマー構成要素に不均一に分散するか、または結合し、剥離/外側層、基材層、単一層の異なる部分などに高濃度のエアロゲルを与えてもよい。
【0044】
任意の適切な量のエアロゲルをフルオロポリマー構成要素に組み込み、所望な結果を得てもよい。例えば、コーティング/外側層は、コーティングの合計重量の約0.1重量%〜約10重量%のエアロゲル、約0.2重量%〜約5重量%のエアロゲル、または約0.5重量%〜約2重量%のエアロゲルから作られてもよい。エアロゲル粒子の粒径は、約1μm〜約100μm、約3μm〜約50μm、または約5μm〜約20μmであってもよい。
【0045】
剥離層/外側層の例示的な実施形態としては、エアロゲル粒子と、場合により、摩擦により正に帯電する粒子/正に帯電した粒子がエアロゲル粒子の中に分散した少なくとも1つのフルオロポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーを含有する粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンのコポリマー、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンのターポリマー、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマーのうち、少なくとも1つを含んでいてもよい。フルオロポリマーを含有する粒子によって化学安定性および熱安定性を与えることができ、表面エネルギーを低くすることができる。フルオロポリマーを含有する粒子は、融点が約255℃〜約360℃、または約280℃〜約330℃であってもよい。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーを含有する粒子は、平均粒径が約5ミクロン〜約50ミクロン、約5ミクロン〜約40ミクロン、または約7ミクロン〜約30ミクロンであってもよい。ある実施形態では、フルオロポリマーを含有する粒子は、平均粒径が約15ミクロンであってもよい。
【0046】
上述のように、ある実施形態では、粉末コーティング組成物は、さらに、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ゲルマニア、または他の正に帯電した金属酸化物材料を含む複数の正に帯電した粒子(摩擦により帯電する粒子)を含んでいてもよい。金属酸化物である正に帯電した粒子は、ヒュームド金属酸化物、沈殿した金属酸化物から、またはゲルから作られてもよい。いくつかの実施形態では、粉末コーティング組成物は、シリカを含む複数の正に帯電した粒子を含んでいてもよい。ある実施形態では、複数の正に帯電した粒子は、ヒュームドシリカを含んでいてもよい。正に帯電した粒子(例えば、摩擦によって正に帯電する粒子)を疎水性剤で処理し、いくつかの実施形態では、粒子を疎水性にしてもよい。使用可能な疎水性剤としては、当該技術分野で既知のものの中で、特に有機シラン、有機シロキサン、ポリ有機シロキサン、有機シラザン、ポリ有機シラザンが挙げられる。ある実施形態では、正に帯電した粒子を表面処理剤で処理してもよい。
【0047】
正に帯電した粒子は、粉末コーティング組成物の帯電特性を高め、流動性を高め、ホースによる輸送性を高め、ブロッキングおよび衝突による融合に対する耐性を高め、良好なスプレーパターンを生じ、低い静止角(円錐の高さ)を与え、水分への感度を下げることができる。
【0048】
摩擦によって正に帯電する粒子(例えば、正に帯電した粒子)を、フルオロポリマーを含有する粒子(例えば、PFA粒子)、エアロゲル粒子(例えば、シリカエアロゲル粒子)を含む粉末コーティング組成物に加えると、粉末コーティング処理が可能になる。フルオロポリマーは、エアロゲル粒子と同様に、部分的に負電荷を有する。ミクロン未満の大きさの正に耐電する摩擦によって帯電する粒子(正に帯電した粒子)は、フルオロポリマーを含有する粒子およびエアロゲル粒子の両方と会合し、粒子間の会合する構成要素として働き、2種類の構成要素の混合物を単一の粉末として挙動させることが可能である。
【0049】
粉末コーティングプロセス中の粉末会合の結果、混合物中の低密度エアロゲル粒子の均一な密度を失うことなく、均一な混合物が生成し、コーティングしつつ望ましいエアロゲル比を維持する。さらに、粒子間の会合によって、溶融したフルオロポリマーを含有する粒子をエアロゲル粒子で濡らし、空隙がなく、低光沢融合用途で使用するのに適した密着性コーティングがを得ることもできる。
【0050】
ある実施形態では、粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物中の固体合計の約0.1重量%〜約5重量%、約0.2重量%〜約3重量%、または約0.5重量%〜約1.5重量%の正に帯電した粒子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、正に帯電した粒子は、平均粒径が約5nm〜約1μm、約10nm〜約500nm、または約20nm〜約100nmであってもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、粉末コーティング組成物は、グラムあたりの表面積が約30m
2/g〜約400m
2/g、約50m
2/g〜約300m
2/g、または約100m
2/g〜約200m
2/gのヒュームドアルミナ粒子を含む正に帯電した粒子を含んでいてもよい。
【0052】
ある実施形態では、粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物中の固体合計の約0.1重量%〜約10重量%のエアロゲル粒子、約70重量%〜約99重量%のフルオロポリマーを含有する粒子と、場合により、約0.1重量%〜約5重量%の正に帯電した粒子とを含んでいてもよく、正に帯電した粒子は、アルミナ、シリカ、ジルコニアまたはゲルマニアを含む。いくつかの実施形態では、正に帯電した粒子は、アルミナを含んでいてもよい。
【0053】
添加剤およびさらなる導電性または非導電性のフィラーが剥離層/外側層に存在していてもよい。種々の実施形態では、他のフィラー材料または添加剤(例えば、無機粒子を含む)を粉末コーティング組成物に使用し、次いで剥離層を作成してもよい。本明細書で使用する導電性フィラーとしては、カーボンブラック、例えば、カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、アセチレンブラック、フッ素化カーボンブラックなど、カーボンナノチューブ、金属酸化物およびドープされた金属酸化物、例えば、酸化スズ、二酸化アンチモン、アンチモンがドープされた酸化スズ、二酸化チタン、インジウム酸化物、亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムがドープされた三酸化チタンなど、およびこれらの混合物を挙げることができる。特定のポリマー、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ピロール、ポリインドール、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリアズレン、ポリアゼピン、ポリ(フッ素)、ポリナフタレン、有機スルホン酸の塩、リン酸塩、脂肪酸エステル、これらのアンモニウム塩またはホスホニウム塩、およびこれらの混合物を導電性フィラーとして使用してもよい。種々の実施形態では、当業者が知っている他の添加剤を含む開示されたコンポジット材料を作成することもできる。
【0054】
均一なトップコート/外側層を製造するために、粉末コーティングの前に、粉末の組み合わせを混合して均一な粉末を作成しなければならない。いくつかの実施形態では、音響による混合プロセスによってフルオロポリマーとエアロゲルの粉末混合物を与えることができる。音響による混合プロセスを用い、フルオロポリマー粒子とエアロゲル粒子(例えば、シリカエアロゲル)を合わせ、粉末コーティングに適した粉末混合物を製造することができる。他の添加剤も、粉末混合物の中に有効に分散させることができる。
【0055】
音響混合機を用いた有効な混合は、粉末混合物および容器(混合系)の共鳴周波数で起こり、約1分〜約5分、いくつかの実施形態では、約1.5分〜約4分、またはいくつかの実施形態では、約2分〜約3分間混合してもよい。音響混合機中、低周波数で混合すると、粒子を穏やかに混合することができ、脆いエアロゲル粒子の破壊が起こらない。微粒子を生成することなく、そのままのエアロゲル粒子を維持することは、微細なエアロゲル粒子は、濡れて非密着性のトップコート/剥離層を製造するのを妨害するため、低光沢または表面の質感を必要とする他の用途のためのエアロゲル粒子の所望な粒径を維持し、硬化中の濡れ性を維持するのに重要な場合がある。音響混合プロセスは、簡単にスケールアップすることができる。音響混合によって、正に帯電した粒子をフルオロポリマーおよびエアロゲル混合物に有効に加えることもできる。アルミナを摩擦によって正に帯電する微粒子をフルオロポリマー/エアロゲル混合物に加えると、部分的に負のPFAと部分的に負のエアロゲル粒子が一緒に会合し、均一な粉末の混合を促進することが示された。
【0056】
アルミナである正に帯電した粒子も、硬化中に濡れ性および密着性を促進する。提案された音響混合方法は、正に帯電した粒子を効果的に分散する。PFA/エアロゲル粉末の音響混合について、複数の利点が明らかである。
【0057】
本明細書には、フルオロポリマーを含有する粒子、エアロゲル粒子と、場合により、摩擦によって正に帯電する粒子とを一緒に有効に混合するための音響混合プロセスが開示されている。音響混合機は、低周波数、高強度の音響エネルギーを使用し、それによって、サンプル容器全体にせん断場が加えられる。音響混合プロセスは、エアロゲル粒子が破壊して、トップコートの硬化を悪化させてしまうような微粒子を作成しないほど十分に穏やかである。さらに、音響混合によって、正に帯電した粒子の均一な分布によってもっと均一なコーティングを得ることもでき、粉末混合物の有効な流動および異なる粒子間の会合を与えることができる。最後に、音響混合機について使用される約2分の混合時間によって、その代わりとなる技術と比較して、時間と資源を節約することができる。
【0058】
共鳴音響混合は、遊星ミキサーでみられる従来のインペラーによる撹拌または超音波混合とは区別される。低周波数、高強度の音響エネルギーを用い、混合容器全体にわたって均一なせん断場を作成する。その結果、迅速に流動化し(流動床のように)、材料が分散する。それに加え、共鳴音響混合は、高せん断キャビテーション混合とは区別される。
【0059】
共鳴音響混合は、音響エネルギーの周波数が数桁小さい超音波混合とは異なる。その結果、混合規模は大きくなる。バルク流を誘発することによるインペラーによる混合とは異なり、音響混合は、混合体積全体にわたってマイクロスケールで起こる。
【0060】
音響混合において、混合すべき構成要素に音響エネルギーを伝える。周期的に振動する機械的駆動部が、工学的に設計されたプレート、偏心おもり、バネで構成される機械システム内で動きを作り出す。次いで、このエネルギーを音響によって、混合すべき材料に伝える。その原理となる技術は、システムが共鳴状態で動くことである。この態様で、質量要素から機械システム中の要素へとエネルギーがほぼ完全に交換される。
【0061】
共鳴音響混合において、エネルギーを吸収する唯一の要素(ある程度無視できる摩擦損失は別とする)は、混合物自体の負荷である。したがって、共鳴音響混合は、機械エネルギーを混合材料に直接伝える非常に効果的な様式を与える。共鳴周波数は、約15ヘルツ〜約2000ヘルツ、またはいくつかの実施形態では、約20ヘルツ〜約1800ヘルツ、または約20ヘルツ〜約1700ヘルツであってもよい。共鳴音響混合は、約5〜約100の加速G力で行うことができる。
【0062】
音響混合機は、低い周波数、低いせん断共鳴エネルギーに依存し、混合のためのエネルギー効率を最大にする技術である。共鳴音響混合機は、分散物を100Gまでの力で激しく振り混ぜる。分散物を共鳴周波数で混合し、エネルギーの使用を最大にすることができる。このプロセスは、強度の大きな低せん断による振動を利用し、分散物のすべての領域を同時に混合しつつ、ゆるやかに凝集した粒子の天然での分離を誘発する。この技術は、高粘度系に有用であろう。共鳴音響混合機は、Resodyn(商標)Acoustic Mixersから入手可能である。
【0063】
以下の実施例によって、本明細書の実施形態をさらに定義し、記述する。他の意味であると示されていない限り、あらゆる部およびパーセントは重量基準である。
【実施例】
【0064】
1.粉末コーティング組成物の調製
100gのPFA 320(ペルフルオロアルコキシフルオロポリマー)粉末(DuPontから入手可能)、1.25gのVM−2270エアロゲルシリカ粒子(Dow Corning(登録商標))、0.125gのSpectrAl(登録商標)100(CABOT Corporation製のヒュームドアルミナ)を125μmのふるいにかけ、Resodyn
TM音響混合機を用い、強度100%で4分間混合した。
【0065】
2.粉末コーティングプロセス
粉末コーティング組成物をミニホッパー(Nordson Corporation)に入れ、振動する床の上部に置いた。粉末コーティング組成物を流動化させるために、空気の供給部を接続し、空気圧を0.2bar(製造業者が推奨するように)に設定した。振動する床の振動強度を70%に設定し、この材料を流動させる。一般的な研究の場合、ブランクにはシリコーン定着器ロールを使用した。機械による試験の場合、ブランクのシリコーンロールに、最初にプライマーPL−990CL(DuPont)の薄層を厚みが3μm〜約5μmになるように噴霧7し、粉末コーティング組成物をシリコーンに付着させる。ロールを120℃のオーブンで20分間あらかじめ加熱しておいたため、プライマーをすばやく乾燥した。
【0066】
図4に示すように、均一に粉末を堆積させるために、定着器ロールを回転ステージに取り付けた。さらに
図4に示されるように、粉末コーティングの静電(コロナ)ガンを翻訳ステージに取り付けた。静電ガンを、平坦な先端のノズル形状または丸い先端のノズル形状とともに使用した。さらに、100キロボルト(kV)の負極性電圧を、静電ガンのノズル/先端にある電極に印加した。ガンを片方の端からもう一方の端まで移動させつつ、この粉末をロールに均一に運んだ。コーティングの後、定着器ロールをオーブン中340℃で31分間焼き、粉末コーティング組成物を溶融し、コーティングを作成した。
【0067】
3.粉末コーティングされた定着器ロールの特性決定
それぞれのロールのロール光沢をBYK Gardnerの75度光沢測定器を用いて測定し、光沢の読みは、定着器ロールに沿う光沢測定器で読み取った。
【0068】
表1(以下)には、2つのロールについて粉末コーティングの設定と、このコーティングの対応する光沢(75度)測定結果がまとめられている。
【表1】
【0069】
ノズル/先端の形状を変えると、製造されたロールの光沢が平坦な先端では54.6ggu、丸い先端では24.4gguに変化した。これらの定着器ロールを用いて製造される印刷物は、それぞれ光沢が50gguおよび25gguになると予想される(
図1を参照、ロール光沢と印刷光沢の相関関係をみる)。したがって、粉末コーティング中、静電ガンに丸い先端を使用すると、上述のように調製した粉末コーティング組成物を用い、低光沢印刷物を製造することが可能な定着器ロールを製造することができた。
【0070】
走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影した粉末コーティングしたロールの表面画像を
図5Aおよび5Bに示す。
図5Aは、平坦な先端ノズルを用いて製造された粉末コーティングされたロールの表面を示し、
図5Bは、丸い先端ノズルを用いて製造された粉末コーティングされたロールの表面を示す。丸い先端形状を用いて製造されたロール(
図5B)は、ロール上にもっと多くのエアロゲルが堆積し、そのロール光沢を低下させた。
【0071】
4.静電ガンのキロボルト(kVまたはKV)の設定がロール光沢に与える影響
図6は、粉末コーティングに使用される静電(コロナ)ガンにおいて、kV(負極性電圧)の設定の関数としてのロール光沢を示す。コロナガンのkVの設定は(スプレーノズル/先端の形状に加え)、製造されるロール光沢に影響を与える。平坦なノズル/先端の場合、kVの全範囲にわたってロール光沢が比較的高く保たれるため、ロール光沢は、kVの設定に対し、それほど感度が高くなかった。しかし、丸いノズル/先端の場合、使用するkV設定に関連して、ロール光沢が高く調整されたり、低く調整されたりした。最大量のエアロゲルが堆積すると思われる最適なkV設定、その結果としての光沢の低下を解明することができる。
【0072】
5.粉末コーティングされた定着器ロールの機械による試験
低光沢ロールを上述のように調製したが、静電ガンのkV設定は50kVであった。50kV設定で製造したロールについて測定されたロール光沢は、約35gguであった。
【0073】
実験的な粉末コーティングされたロールをXerox 700 Digital Color Pressを用いて試験した。TOS(シリコーンより優れたTEFLON(登録商標))から製造したロールを定着器CRU(顧客の交換ユニット)からはずし、粉末コーティングされたロールと交換した。次いで、CRUをXerox 700 Digital Color Pressに入れ、コーティングされていない紙(Xerox Color Xpressions Select 90g/m
2)またはコーティングされた紙(Xerox Digital Color Elite Gloss 120g/m
2)のどちらかで標準的な光沢指標を用いて印刷物を製造した。標準的なプリンターの設定をこれらの試験で使用した。印刷物の光沢(シアン、イエロー、マゼンタ、ブラックのような色の単一層と、レッド、グリーン、ブルーのような色の2層)をBYK Gardner 75度光沢測定器で測定した。
【0074】
試験ロールを用いた長期間の印刷操作も、Xerox 700 Digital Color Pressを用いて行った。10,000枚(10KP)の印刷試験の場合、Xerox Color Xpressions Planet 213g/m
2紙をプリンターに通し、1000枚ごとに、印刷光沢の値がどのように変動していくかを決定するために、色指標を印刷した。
図7は、Color Xpressions Select(CXS)紙およびDigital Color Elite Gloss(DCEG)紙を用い、異なる色について測定した光沢を示す。
図7Aは、Xerox 700 Digital Color Pressにおける標準的な定着器ロールと、50kVの設定を用いて調製した約35gguの75度ロール光沢を有するロールを比較した、CXS紙に印刷した色の結果を示す。
図7Bは、Xerox 700 Digital Color Pressにおける標準的な定着器ロールと、50kVの設定を用いて調製した約35gguの75度ロール光沢を有するロールを比較した、DCEG紙に印刷した色の結果を示す。上述のように製造したロールは、DC700のコントロール定着器ロールと比較して、低い印刷光沢を有していた。
【0075】
図7は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの単一層の色と、レッド、グリーン、ブルーのプロセス色を測定した印刷光沢を普通紙の光沢とともに示す。低光沢ロールは、DC700定着器ロールコントロール(Xerox 700 Digital Color Pressに供給された標準的な定着器ロール)と比較して、CXS(コーティングされていない)紙基材およびDCEG(コーティングされた)紙基材の両方への低光沢印刷物の製造を可能にした。
【0076】
図8は、50kVの設定(負極性電圧)で、丸いノズル先端を有する静電粉末コーティングガンを用いて製造した定着器ロールを用い、Xerox 700 Digital Color Pressを用いた10KPの印刷試験にわたり、印刷光沢を示す。この印刷物の光沢が低いという特徴は、黒色およびDCEG紙を用いて10KP印刷しても維持されていた。
【0077】
図9は、時間0に、液体スプレーコーティングされた低光沢ロールによって作られる印刷物、時間0に、ある実施形態(50kVで粉末コーティングされ、丸い先端ノズルを用いる)の粉末コーティングされたロールによって作られる印刷物、10KP試験後に、同じ粉末コーティングされたロールによって作られる印刷物について、変動係数の観点で、印刷した微細な光沢を示す。10KP試験に黒色およびDCEG紙を使用した。粉末コーティングされた低光沢ロールは、時間0で、また10KPのストレスのかかる試験の後であっても、スプレーコーティングされた低光沢ロールよりも小さな領域の光沢という観点で、良好な印刷品質を有していた。