(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296752
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】糖尿病治療薬の投与量を判定する方法、判定装置、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20180312BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20180312BHJP
G01N 33/72 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
C12Q1/68 A
C12M1/34 Z
G01N33/72 A
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-221168(P2013-221168)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-80464(P2015-80464A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼刊行物名 第56回 日本糖尿病学会年次学術集会 プログラム・抄録集、S−230ページ、一般社団法人 日本糖尿病学会 発行日 平成25年4月25日 ▲2▼集会名 第56回 日本糖尿病学会年次学術集会 開催日 平成25年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】505195764
【氏名又は名称】株式会社サインポスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 義光
【審査官】
千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−186425(JP,A)
【文献】
特開2011−125218(JP,A)
【文献】
糖尿病, 2002, Vol. 45, Suppl. 2, S-90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算部と記録部とを備える装置において、糖尿病治療薬の投与量を判定する方法であって、
前記記録部が、取得した被験者の遺伝子多型情報および臨床データを記録するステップと、
前記演算部が、取得した前記遺伝子多型情報内に特定の遺伝子多型が存在するか否かを識別するステップと、
前記演算部が、前記特定の遺伝子多型の存在の有無および前記臨床データに基づいて、糖尿病治療薬の投与量を判定するステップと、
を含み、
前記臨床データが、前記被験者の血中HbA1c値を含み、前記特定の遺伝子多型が、p22phoxのC242T遺伝子多型と、アルドース還元酵素(Aldose reductase)の106T遺伝子多型とを含み、
前記糖尿病が2型糖尿病であり、前記糖尿病治療薬がピオグリタゾンである、判定方法。
【請求項2】
前記演算部が、前記判定するステップにおいて、予め重回帰分析によって決定された回帰式を用いて、前記被験者の所定の期間経過後の血中HbA1c値の推定値を計算し、
前記回帰式が、血中HbA1c値の変化量dHbA1cを目的変数とし、前記被験者の前記血中HbA1c値と前記p22phox C242Tアレルの有無および前記AR-106Tアレルの有無とを説明変数として、糖尿病患者データの集合を重回帰分析して得られた式である、請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
前記臨床データが、さらに前記被験者の性別と既往歴とを含み、
前記判定するステップが、
前記演算部が、前記被験者の前記性別が男性であり、かつ、前記被験者の前記既往歴に所定の既往歴があると判断する場合に、前記被験者を前記糖尿病治療薬の投薬対象から除外するステップと、
前記演算部が、前記被験者の前記血中HbA1c値が第1のしきい値以上であると判断する場合に、前記血中HbA1c値についての、第1の期間経過後の第1の推定値および第2の期間経過後の第2の推定値をそれぞれ計算するステップと、
前記演算部が、前記被験者の前記性別が女性であるか、あるいは、前記血中HbA1c値の前記第1の推定値が第2のしきい値未満であると判断する場合に、前記糖尿病治療薬を第1の量で投与すると決定するステップと、
前記演算部が、前記血中HbA1c値の前記第1の推定値が前記第2のしきい値以上であり、かつ、前記血中HbA1c値の前記第2の推定値が前記第2のしきい値未満であると判断する場合に、前記糖尿病治療薬を第2の量で投与すると決定するステップとを含む、請求項2に記載の判定方法。
【請求項4】
前記所定の既往歴が前立腺腫瘍である、請求項3に記載の判定方法。
【請求項5】
前記判定するステップが、さらに、
前記演算部が、前記糖尿病治療薬投与中の、これまでの前記被験者の前記臨床データの経過情報に基づいて、前記糖尿病治療薬の投与量を、前記第2の量に増量するか否かを判定するステップを含む、請求項3に記載の判定方法。
【請求項6】
前記回帰式が、
dHbA1c=a×HbA1c+b×p22phox+c×AR+d (式1)
の形式で表され、ここで、定数a、b、c、dは、前記重回帰分析により決定される偏回帰係数である、請求項2〜5のいずれかに記載の判定方法。
【請求項7】
演算部と記録部とを備え、糖尿病治療薬の投与量を判定する装置であって、
前記記録部が、取得した被験者の遺伝子多型情報および臨床データを記録し、
前記演算部が、取得した前記遺伝子多型情報内に特定の遺伝子多型が存在するか否かを識別し、
前記演算部が、前記特定の遺伝子多型の存在の有無および前記臨床データに基づいて、糖尿病治療薬の投与量を判定し、
前記臨床データが、前記被験者の血中HbA1c値を含み、前記特定の遺伝子多型が、p22phoxのC242T遺伝子多型と、アルドース還元酵素(Aldose reductase)の106T遺伝子多型とを含み、
前記糖尿病が2型糖尿病であり、前記糖尿病治療薬がピオグリタゾンである、判定装置。
【請求項8】
糖尿病治療薬の投与量を判定するプログラムであって、
コンピュータに、
取得した被験者の遺伝子多型情報および臨床データを記録する機能と、
取得した前記遺伝子多型情報内に特定の遺伝子多型が存在するか否かを識別する機能と、
前記特定の遺伝子多型の存在の有無および前記臨床データに基づいて、糖尿病治療薬の投与量を判定する機能と、
を実現させ、
前記臨床データが、前記被験者の血中HbA1c値を含み、前記特定の遺伝子多型が、p22phoxのC242T遺伝子多型と、アルドース還元酵素(Aldose reductase)の106T遺伝子多型とを含み、
前記糖尿病が2型糖尿病であり、前記糖尿病治療薬がピオグリタゾンである、判定プログラム。
【請求項9】
糖尿病治療薬の投与量を判定するプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
コンピュータに、
取得した被験者の遺伝子多型情報および臨床データを記録する機能と、
取得した前記遺伝子多型情報内に特定の遺伝子多型が存在するか否かを識別する機能と、
前記特定の遺伝子多型の存在の有無および前記臨床データに基づいて、糖尿病治療薬の投与量を判定する機能と、
を実現させ、
前記臨床データが、前記被験者の血中HbA1c値を含み、前記特定の遺伝子多型が、p22phoxのC242T遺伝子多型と、アルドース還元酵素(Aldose reductase)の106T遺伝子多型とを含み、
前記糖尿病が2型糖尿病であり、前記糖尿病治療薬がピオグリタゾンである、判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】
糖尿病治療薬の投与量を判定する装置であって、
取得した被験者の遺伝子多型情報および臨床データを記録する手段と、
取得した前記遺伝子多型情報内に特定の遺伝子多型が存在するか否かを識別する手段と、
前記特定の遺伝子多型の存在の有無および前記臨床データに基づいて、糖尿病治療薬の投与量を判定する手段と、
を備え、
前記臨床データが、前記被験者の血中HbA1c値を含み、前記特定の遺伝子多型が、p22phoxのC242T遺伝子多型と、アルドース還元酵素(Aldose reductase)の106T遺伝子多型とを含み、
前記糖尿病が2型糖尿病であり、前記糖尿病治療薬がピオグリタゾンである、判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病治療薬の投与量を判定する方法に関し、より詳細には、糖尿病患者の遺伝情報に基づいて、治療薬の投与量を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ある疾患に対して薬物治療を行ううえで、あるひとつの薬剤が、同じ疾患を有するすべての患者に対して同様に作用するわけではないことが知られている。これを受けて、近年では、患者の遺伝的特徴に合わせて最も効率的な薬物投与を行うという、ゲノム薬理学およびオーダーメード医療の機運が高まっている。ゲノム薬理学によると、薬剤の効果が有効に作用するか否かは、患者自身が有する遺伝的背景に基づいて決まると考えられている。このようなゲノム薬理学の機運の高まりを受けて、今後は、それぞれの患者を薬剤に対するレスポンダとノンレスポンダとに識別することにより、それぞれの患者に応じた最適な薬剤の投与判定および投与計画を行うことが期待されている。
【0003】
下記特許文献1には、薬剤の選択方法が開示されている。特許文献1の選択方法によると、前立腺肥大症患者ごとの遺伝的背景に基づいて、複数の交感神経遮断薬の中から、患者に応じた最適な薬剤を選択することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−005785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、患者の遺伝的背景に基づいた薬剤選択の機運が高まっており、下記特許文献1に示されるように、一部の疾患については薬剤選択の方法が提案されている。しかしながら、種々の疾患のうち、近年の生活習慣病の増加により患者数も増大している糖尿病については、薬剤の治療効果と遺伝因子との関連性について、未だ十分に報告がなされていないのが実情である。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、糖尿病治療薬の投与の要否および投与量について、患者毎の遺伝的背景に基づいたより適切な判定を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を進めていたところ、種々の遺伝子多型のうち、酸化ストレス関連性遺伝子多型p22phox C242Tアレル、糖化関連性遺伝子多型AR(Aldose reductase)-106Tアレル、または感染防御関連性遺伝子多型CD14(cluster of differentiation 14)-159Tアレルと、糖尿病患者の血中HbA1c値の変化値との間に、単相関で有意な差が生じていることを見出し、これら3つのいずれかの遺伝子多型を有する2型糖尿病患者に、糖尿病治療薬であるピオグリタゾンが有効であることを見出した。インスリン感受性に関連するPPAR-r (Pro12Ala)、レジスチン(C-420G)、PGC-1(G1564A)、およびIRS-1(G3494A)、sEH(G860A)遺伝子多型については、糖尿病患者の血中HbA1c値の変化値との間に有意な関連性が認められないことを見出した。
【0008】
また、本発明者は、この知見をもとに、糖尿病患者の現在の血中HbA1c値と、p22phox C242Tアレルの有無およびAR-106Tアレルの有無とにより、所定の期間(6ヶ月)経過後の血中HbA1c値の低下度の推定が可能であることを見出し、推定に用いる回帰式を見出した。2型糖尿病患者の多く(約39%)はp22phox C242TアレルまたはAR-106Tアレルを有しており、ピオグリタゾンが有効症例であることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に示す態様を含むものである。
【0010】
本発明に係る第1の判定方法は、
演算部と記録部とを備える装置において、糖尿病治療薬の投与量を判定する方法であって、
前記記録部が、取得した被験者の遺伝子多型情報および臨床データを記録するステップと、
前記演算部が、取得した前記遺伝子多型情報内に特定の遺伝子多型が存在するか否かを識別するステップと、
前記演算部が、前記特定の遺伝子多型の存在の有無および前記臨床データに基づいて、糖尿病治療薬の投与量を判定するステップと、
を含み、
前記臨床データが、前記被験者の血中HbA1c値を含み、前記特定の遺伝子多型が、p22phoxのC242T遺伝子多型と、アルドース還元酵素(Aldose reductase)の106T遺伝子多型とを含む、判定方法である。
【0011】
また、本発明に係る第1の判定装置は、
演算部と記録部とを備え、糖尿病治療薬の投与量を判定する装置であって、
前記記録部が、取得した被験者の遺伝子多型情報および臨床データを記録し、
前記演算部が、取得した前記遺伝子多型情報内に特定の遺伝子多型が存在するか否かを識別し、
前記演算部が、前記特定の遺伝子多型の存在の有無および前記臨床データに基づいて、糖尿病治療薬の投与量を判定し、
前記臨床データが、前記被験者の血中HbA1c値を含み、前記特定の遺伝子多型が、p22phoxのC242T遺伝子多型と、アルドース還元酵素(Aldose reductase)の106T遺伝子多型とを含む、判定装置である。
【0012】
また、本発明に係る判定プログラムは、
糖尿病治療薬の投与量を判定するプログラムであって、
コンピュータに、
取得した被験者の遺伝子多型情報および臨床データを記録する機能と、
取得した前記遺伝子多型情報内に特定の遺伝子多型が存在するか否かを識別する機能と、
前記特定の遺伝子多型の存在の有無および前記臨床データに基づいて、糖尿病治療薬の投与量を判定する機能と、
を実現させ、
前記臨床データが、前記被験者の血中HbA1c値を含み、前記特定の遺伝子多型が、p22phoxのC242T遺伝子多型と、アルドース還元酵素(Aldose reductase)の106T遺伝子多型とを含む、判定プログラムである。
【0013】
また、本発明に係る判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、
糖尿病治療薬の投与量を判定するプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
コンピュータに、
取得した被験者の遺伝子多型情報および臨床データを記録する機能と、
取得した前記遺伝子多型情報内に特定の遺伝子多型が存在するか否かを識別する機能と、
前記特定の遺伝子多型の存在の有無および前記臨床データに基づいて、糖尿病治療薬の投与量を判定する機能と、
を実現させ、
前記臨床データが、前記被験者の血中HbA1c値を含み、前記特定の遺伝子多型が、p22phoxのC242T遺伝子多型と、アルドース還元酵素(Aldose reductase)の106T遺伝子多型とを含む、判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0014】
また、本発明に係る第2の判定方法は、
糖尿病治療薬の投与量を判定する方法であって、
被験者の遺伝子多型情報および臨床データを取得するステップと、
取得した前記遺伝子多型情報内に特定の遺伝子多型が存在するか否かを識別するステップと、
前記特定の遺伝子多型の存在の有無および前記臨床データに基づいて、糖尿病治療薬の投与量を判定するステップと、
を含み、
前記臨床データが、前記被験者の血中HbA1c値を含み、前記特定の遺伝子多型が、p22phoxのC242T遺伝子多型と、アルドース還元酵素(Aldose reductase)の106T遺伝子多型とを含む、判定方法である。
【0015】
また、本発明に係る第2の判定装置は、
糖尿病治療薬の投与量を判定する装置であって、
取得した被験者の遺伝子多型情報および臨床データを記録する手段と、
取得した前記遺伝子多型情報内に特定の遺伝子多型が存在するか否かを識別する手段と、
前記特定の遺伝子多型の存在の有無および前記臨床データに基づいて、糖尿病治療薬の投与量を判定する手段と、
を備え、
前記臨床データが、前記被験者の血中HbA1c値を含み、前記特定の遺伝子多型が、p22phoxのC242T遺伝子多型と、アルドース還元酵素(Aldose reductase)の106T遺伝子多型とを含む、判定装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、糖尿病薬の治療効果と関連性が見出された特定の遺伝子多型が、患者の遺伝子多型情報内に含まれているか否かを識別することで、糖尿病治療薬の投与の要否および投与量について、患者毎の遺伝的背景に基づいたより適切な判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る糖尿病治療薬の投与量を判定する装置を含むシステム全体を示すブロック図である。
【
図2】判定装置が行う判定処理を示すフローチャートである。
【
図3】判定装置が行うステップS4の判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する説明を省略する。
【0019】
以下の説明において、「遺伝子多型」とは、同一集団内において、一つの遺伝子座に2種類以上の対立遺伝子(アレル)が存在する遺伝子の多様性を意味する。具体的には、ある集団において一定の頻度以上で存在する遺伝子の変異を示す。ここでいう遺伝子の変異は、RNAとして転写される領域に限定されるものではなく、プロモーター、エンハンサー等の制御領域などを含むヒトゲノム上で特定しうるすべてのDNAにおける変異を含むものである。ヒトゲノムDNAの99.9%は各個人間で共通しており、残る0.1%がこのような多様性の原因となり、特定の疾患に対する感受性、薬物や環境因子に対する反応性の個人差として関与し得る。遺伝子多型があっても表現型に差が出るとは限らない。なお、SNP(一塩基多型)も遺伝子多型の一種であるが、本発明が対象とする遺伝子多型はこれに限られない。
【0020】
図1は、本発明に係る糖尿病治療薬の投与量を判定する装置(以下、判定装置と記す)を含むシステム全体を示すブロック図である。
図1に示すように、システムは、病院1に設置された採血手段11およびコンピュータ12と、分析機関2に設置された遺伝子多型解析用アレイ21およびコンピュータ22と、サービス提供機関3に設置された判定装置31とを備えている。ここで、コンピュータ12、22、および判定装置31は、インターネットなどの通信回線4に接続されている。
【0021】
判定装置31は、CPU32と、メモリ33と、ハードディスクなどの記録部34と、外部との通信を行う通信インタフェース(以下、I/Fと記す)部35と、キーボードなどの操作部36と、液晶ディスプレイなどの表示部37と、入出力I/F部38と、各部間でデータを交換するための内部バス39とを備えている。記録部34には、糖尿病薬の治療効果に関連性を有することが見出された特定の遺伝子多型の情報が、参照テーブルとして予め記録されている。
【0022】
判定装置31による投与量判定処理についての詳細は後述する。判定装置31を含むシステム全体の動作を説明すると、次の通りである。
【0023】
まず、病院1において、採血手段11によって被験者の遺伝子(ゲノム)を抽出可能な検体(以下、被験試料と記す)が採取される。このとき、臨床データ(被験者ID、性別、採血情報(現在および過去のHbA1c値を含む)、既往歴、身体所見、糖尿病治療薬のこれまでの投与経過など)がコンピュータ12の記録部に記録される。被験試料は、分析機関2に提供され、遺伝子多型解析用アレイ21を用いて分析され、遺伝子型を有する遺伝子多型が検出される。遺伝子多型解析用アレイ21は、遺伝子多型を検出するためのプローブを高密度に整列させて、シリコンウェハーやガラススライド等の支持体上に固定化したものであり、プローブとしては、特定の疾患(本発明では、糖尿病)に関連する遺伝子多型を特異的に認識して捕捉するものであればよい。
【0024】
本発明では、遺伝子多型解析用アレイ21を用いて検出する遺伝子多型には、判定に用いるp22phox C242TおよびAR-106Tが少なくとも含まれていれば良く、本発明が目的とする糖尿病治療薬の投与量判定以外の他の検査を行う関係で、これら以外の遺伝子多型が含まれていても良い。遺伝子多型解析用アレイ21を用いて検出する遺伝子多型の一例を表1に示す。
【0026】
検出された遺伝子多型情報は、一旦コンピュータ22の記録手段に記録され、その後通信回線4を介してサービス提供機関3の判定装置31に送信される。判定装置31は、通信I/F部35を介して分析機関2のコンピュータ22から遺伝子多型情報を受信し、記録部34に記録する。また、判定装置31は、病院1のコンピュータ12から臨床データを受信して、記録部34に記録する。
【0027】
その後、判定装置31は、受信した遺伝子多型情報が、予め記録部34に記録しておいた参照テーブルに含まれているか否かを検索し、その結果に応じて治療薬の投与の要否および投与量を判定する。判定後、判定装置31は、判定結果を、通信回線4を介して病院1のコンピュータ12に送信する。コンピュータ12によって受信された判定結果は、臨床データ(少なくとも被験者ID)と関連させて、コンピュータ12の記録部に記録され、適宜呼び出されて利用(例えば、被験者に提示)される。判定結果を送信する病院1のコンピュータ12を特定する情報は、例えば、病院1のコンピュータ12から、臨床データに含めて送信すればよい。
【0028】
上記の被験試料の分析に関して、被験者の遺伝子型を検出する方法であればいかなる方法も使用することができる。一般的な方法としては、被験者の血液、痰、皮膚、気管支肺胞洗浄液、その他の体液、あるいは組織等、DNAを含むものを被験試料として用いる。解析方法としては多くの方法が知られており、例えばシークエンス法、PCR法、ASP−PCR法、TaqMan法、インベーダーアッセイ法、MALDI−TOF/MS法、分子ビーコン法、ライゲーション法などを例示することができる(Clin.Chem.43:1114−1120,1997)。なお、シークエンス法とは、遺伝子多型を含むDNA領域を直接にシークエンスする方法である。PCR法においては、遺伝子多型に特異的なプライマーを用いて、ある遺伝子多型のみを特異的に増幅する。PCR法においては、最も3’側に遺伝子多型の核酸を配置するのが一般的であるが、Allele Specific Primer(ASP)−PCR法のように、3’末端側から2番目に遺伝子多型を有するプライマーを配置する方法などのように、遺伝子多型をプライマーのどの領域に置くか、また、検出する遺伝子以外にどのような核酸配列を入れるかなど、プライマーのデザインには、遺伝子多型を識別できる限り特に制限はない。TaqMan法において蛍光色素と消光物質により両端を標識したアレル特異的プローブを標的部位にハイブリダイズさせて、この部位を含む領域を増幅するように設計したプライマーでPCR反応を行う。プライマーからのPCR反応がこのアレル特異的プローブがハイブリダイズした領域に達すると、Taqポリメラーゼの5プライムヌクレアーゼ活性によりハイブリダイズしたプローブの5’末端に存在する蛍光色素が切断され、消光物質から離れることにより蛍光が生ずる。この手法により、アレル特異的プローブがどの程度ハイブリダイズしていたかがわかる。インベーダーアッセイ法においては、鋳型の遺伝子多型部位から5’側に特異的配列を持ち、3’側にフラップ配列を持つアレルプローブと、鋳型の遺伝子多型部位からの3’側の特異的配列を有するインベーダープローブ、さらに、フラップ配列に相補的な配列を含むFRETプローブとの3種類のオリゴヌクレオチドを使い、TaqMan法と同様の原理にてどのアレルプローブがハイブリズダイズしたかを特定できる。MALDI−TOF/MS法においては、遺伝子多型部位に隣接するプライマーを作成してこの領域を増幅させた後、遺伝子多型部位の1塩基のみをddNTPを用いて増幅する。ついで、MALDI−TOF/MSを用いて、付加したddNTPの種類を識別することにより遺伝子多型を同定する。Hybrigene法などのDNAチップ法と総称される方法においては、アレイ上に遺伝子多型を含むオリゴヌクレオチドプローブを配置し、PCR増幅させたサンプルDNAとのハイブリダイゼーションを検出する。
【0029】
図2は、判定装置31が行う判定処理を示すフローチャートである。以下、
図2のフローチャートに従って、判定装置31による投与量判定処理を具体的に説明する。なお、以下においては、特に断らない限り、CPU32が行う処理として記載する。また、CPU32は、メモリ33を、ワーク領域や、処理途中のデータを一時記憶する領域として使用し、必要に応じて処理途中および処理結果のデータを記録部34に記録する。
【0030】
ステップS1では、判定に用いる被験者の遺伝子多型情報および臨床データを取得する。
【0031】
まず、分析機関2から通信回線4経由で遺伝子多型情報を取得し、記録部34に記録する。遺伝子多型情報は、遺伝子型を有する遺伝子多型毎に付与した遺伝子多型コードとして伝送および記録され、データ形式は、例えば、依頼元の病院毎に付与した病院コードおよび被験者毎に付与した被験者IDの組の各々に、複数の遺伝子多型コードg
i(i=1〜n)が対応付けられた形式である。また、病院1から通信回線4経由で被験者の臨床データを取得し、依頼元の病院コードを付与したうえで記録部34に記録する。臨床データのデータ形式は、例えば、性別については、男性の場合変数SEX=1とし、女性の場合SEX=2として臨床データに記録する。既往歴や身体所見についても、それぞれの病名または症状について、システム上で使用する変数名を予め決定しておき、病歴有りまたは症状有りの場合に値を1とし、病歴無しまたは症状無しの場合に値を0として、変数名と値とをセットにして臨床データに記録する。例えば、既往歴[前立腺腫瘍]=0や、身体所見[下腿浮腫]=1として臨床データに記録する。
【0032】
ステップS2では、ステップS1において取得した被験者の遺伝子多型情報内に、特定の遺伝子多型が存在するか否かを識別する。
【0033】
具体的には、一つの{病院コード,被験者ID}について、複数の遺伝子多型コードg
i(i=1〜n)を記録部34から読み出し、読み出した遺伝子多型コードg
iが、予め記録部34に記録しておいた参照テーブルに含まれているか否かを識別する。参照テーブルには、糖尿病薬の治療効果に関連性を有することが見出された特定の遺伝子多型の情報が予め記録されており、本実施形態では、具体的には、p22phox C242T遺伝子多型およびAR-106T遺伝子多型が遺伝子多型コードの形式で記録されている。
【0034】
例えば、記録部34から遺伝子多型コードg
1を読み出し、この遺伝子多型コードg
1が参照テーブルに含まれているか否かを識別する。含まれていれば、この遺伝子多型コードg
1に対応するフラグに値「1」(true)を設定する(フラグは予め「0」(false)に初期化されているとする)。この識別処理を、複数の遺伝子多型コードg
i(i=1〜n)のすべてについて実行する。
【0035】
ステップS3では、ステップS2にて記録したフラグの値に基づいて判断し、フラグの値がすべて「0」(false)、すなわち、被験者の遺伝子多型情報内に、参照テーブルに記載した特定の遺伝子多型が存在していなかった場合には、この時点で治療薬投与の必要性がないと判断し、ステップS4の処理を行わずにステップS5に移行する。いずれかのフラグの値が「1」(true)であれば、所定の判定式を用いるステップS4の処理に移行する。
【0036】
ステップS4では、ステップS2にて記録したフラグの値とステップS1にて取得した臨床データとを用い、所定の判定式に基づいて治療薬投与の要否および投与量を判定する。
【0037】
まず、ステップS4で用いる判定式について説明する。判定式には、血中HbA1c値の変化量dHbA1cを目的変数とし、現在の血中HbA1c値とp22phoxC242Tアレルの有無およびAR-106Tアレルの有無とを説明変数とし、糖尿病患者データの集合を重回帰分析することによって決定された回帰式を用いる。回帰式の値の計算には、ステップS2にて識別した、特定の遺伝子多型の有無の情報であるフラグの値と、ステップS1にて取得した被験者の臨床データ(現在の血中HbA1c値)とを使用する。血中HbA1c値の変化量dHbA1cを求める回帰式は次の通りである。
【0038】
dHbA1c=a*HbA1c+b*p22phox+c*AR+d (式1)
ここで、HbA1cは現在の血中HbA1c値(単位%、NGSP国際標準値)であり、p22phoxおよびARはそれぞれ、p22phox C242Tアレルの有無およびAR-106Tアレルの有無であり、「1」または「0」の値をとる。定数a,b,c,dは、重回帰分析によって決定される偏回帰係数である。重回帰分析については周知であるので説明を省略する。
【0039】
定数a,b,c,dを決定するために行った重回帰分析の結果の一例を表2に示す。表2に示す例では、定数a=−0.4384、b=−0.6728、c=−0.3187、d=2.9624である。
【0041】
(式1)により求めた変化量dHbA1cから、第1の期間(3ヶ月)経過後の血中HbA1c値の推定値HbA1c(3m)と、第2の期間(6ヶ月)経過後の血中HbA1c値の推定値HbA1c(6m)とをそれぞれ求めると次の通りである。
【0042】
HbA1c(3m)=HbA1c+0.5*dHbA1c (式2)
HbA1c(6m)=HbA1c+1.0*dHbA1c (式3)
(式2)および(式3)により求められる血中HbA1c値は、被験者に糖尿病治療薬を投与した際に、どの程度血中HbA1c値が変化するのかを推定するための指標となる。
【0043】
次に、ステップS4において行う具体的な判定手順について、以下に一例を説明する。
図3は、判定装置31が行うステップS4の判定処理を示すフローチャートである。以下に説明する判定手順の一例では、現在の血中HbA1c値を含む臨床データと、回帰式から得られた、所定の期間(3ヶ月および6ヶ月)経過後の血中HbA1c値の推定値HbA1c(3m),HbA1c(6m)とを参照して、治療薬の投与量を判定する。
【0044】
ステップS41では、被験者が投薬対象から除外されるべきか否かを判定する。例えば、被験者の性別が男性であり、かつ前立腺腫瘍の既往歴が有る場合には、ステップS42にて治療薬の投与の必要が無いと判定した後、ステップS4の判定処理を終了する。条件に当てはまる場合には、ステップS43に移行する。
【0045】
ステップS43では、現在の血中HbA1c値が所定の第1のしきい値(例えば8.0)以上であるか否かを判定する。条件に当てはまる場合には、(式1)〜(式3)に基づいてHbA1c(3m)およびHbA1c(6m)を計算してステップS44に移行し、当てはまらない場合には、後述するステップS48に移行する。
【0046】
ステップS44では、治療薬を所定の第1の量(例えば、15mg)で投与するか否かを判定する。判定条件は次の2つであり、(1)性別が女性であるか、あるいは、(2)HbA1c(3m)が所定の第2のしきい値(例えば、7.0)未満であるか、である。(1)または(2)のいずれかの条件を満たしている場合には、ステップS45にて、治療薬を第1の量で投与すると判定した後、後述するステップS48に移行し、どちらの条件も満たさない場合には、ステップS46に移行する。
【0047】
ステップS46では、治療薬を所定の第2の量(例えば、30mg)で投与するか否かを判定する。判定条件は、HbA1c(3m)が第2のしきい値(7.0)以上であり、かつ、HbA1c(6m)が第2のしきい値(7.0)未満、である。条件を満たしている場合には、ステップS47にて、治療薬を第2の量で投与すると判定した後、後述するステップS48に移行し、条件を満たさない場合にはそのままステップS48に移行する。
【0048】
ステップS48では、治療薬投与中のこれまでの臨床データの経過情報に基づいて、治療薬の投与量を増量すべきか否かを判定する。薬剤増量の判定条件は、例えば、これまでの治療薬の投与量が第1の量(15mg)であり、かつ、第1の量での治療薬の投与期間が通算で6ヶ月を越えており、かつ、被験者の身体所見に「下腿浮腫」等の副作用の発現が無い場合に、ステップS49にて、治療薬の投与量を第2の量に増量すると判定した後、ステップS4の判定処理を終了する。
【0049】
ステップS5では、すべての{病院コード,被験者ID}について処理が終了したか否かを判断し、終了したと判断するまでステップS2〜S4の処理を繰り返す。
【0050】
すべての{病院コード,被験者ID}について処理が終了したと判断すれば、ステップS6において、ステップS3またはS4にて判定した治療薬投与の要否および投与量についての情報と、被験者IDとを対応させて、通信回線4を介して、依頼元の病院コードに対応するコンピュータ12に送信する。
【0051】
以上の処理によって、判定装置31による一連の投与量判定処理が完了する。なお、上記説明した判定処理は、汎用コンピュータを使用して、ハードディスクまたはCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されているコンピュータプログラムを読み出し、または通信回線を介してコンピュータプログラムを取得し、それをCPUが実行することによって行うことも可能である。
【0052】
以上、本発明を特定の実施の形態によって説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
【0053】
上記実施の形態では、糖尿病薬の治療効果に関連性を有することが見出された特定の遺伝子多型の情報として、p22phox C242T遺伝子多型およびAR-106T遺伝子多型を用いているが、判定に用いる遺伝子多型は、これら2つの遺伝子多型に加えてCD14-159T遺伝子多型を用いてもよい。感染防御関連性遺伝子多型であるCD14-159Tについても、糖尿病患者の血中HbA1c値の変化値との間に単相関で有意な差が生じていることが、本発明者によって見出されている。このCD14-159T遺伝子多型を判定に用いる場合は、(式1)の回帰式の説明変数としてCD14-159Tアレルの有無を追加したうえで、新たな回帰式を用いて重回帰分析を行い、新たに偏回帰係数を決定すればよい。
【0054】
また、上記実施形態のステップS41またはS48において例示した既往歴の有無および身体所見の有無は一例であり、判定に考慮すべき既往歴や身体所見について新たな報告がなされた場合には、それに応じて判定基準に適宜追加または変更を行えばよい。
【0055】
また、本発明の装置は、上記した判定処理を実現可能である限り、必要に応じて他の構成を適宜追加または他の構成に置き換えた装置とすることができる。例えば、表示部37および操作部36に代えて、これらが一体化されたタッチパネル式の構成として実現されてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、判定に用いる被験者の遺伝子多型情報および臨床データを、通信回線4を介して取得しているが、データの取得経路はこれに限定されず、判定に用いるデータ等を何らかの記録手段(例えば、個人毎に付与したICカード、メモリカードなどの携帯型記録手段)に記録しておき、これからデータ等を適宜読み出して使用してもよい。
【0057】
また、分析機関から取得した個人の遺伝子多型情報および臨床データを、サービス提供機関のデータベースに個人IDと対応させて記録しておき、各個人に個人IDを通知しておけば、個人IDの連絡を受けるだけで、データベースに記録されている対応する遺伝子多型情報および臨床データを用いて、再度の投与量判定処理が可能となる。
【0058】
また、上記実施の形態では、
図2および
図3に示す判定処理をCPU32が行う処理として記載しているが、CPU32が行う処理をそれぞれの機能に分類して、各機能毎に専用の電子回路を作製し、これら電子回路が
図2および
図3の判定処理を分担して実行してもよい。
【0059】
また、上記実施の形態では、
図2および
図3に示す判定処理をCPU32が行う処理として記載しているが、処理に用いるデータが例えば紙データ等で可視化されている限り、判定処理にて行う演算処理および識別処理は適宜人間が行ってもよい。
【実施例1】
【0060】
以下、実験例の説明を通じて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実験例により何ら限定されるものではない。
【0061】
・調査内容
以下の実験例では、糖尿病治療薬であるピオグリタゾンと種々の遺伝子多型との関連性を調査した。具体的には、インスリン感受性改善薬であるピオグリタゾンを6ヶ月投与した際の、被験者のHbA1c値の変化と、種々の臨床データおよびインスリン感受性関連遺伝子多型との関連性を調査し、ピオグリタゾンの血糖管理効果に影響を及ぼす遺伝因子および臨床データを同定した。
【0062】
・被験者
神奈川県および大阪府の各1病院に通院している、ピオグリタゾンを新規に15mg〜30mg投与する2型糖尿病患者、合計137名(男性91名、女性46名、年齢60.7±10.8歳)を対象とした。2型糖尿病患者の判定は、世界保健機構(WHO)の判定基準に基づいて行った。すべての被験者には、本研究の趣旨および内容を十分に説明した後、書面にてインフォームド・コンセントを得た。
【0063】
・関連性を調査した遺伝子多型
被験者の概要を表3に示す。関連性を調査した遺伝子多型については、実施形態の説明中の表1に示した通りである。
【0064】
【表3】
【0065】
・調査結果
表1に示す種々の遺伝子多型のうち、酸化ストレス関連性遺伝子多型p22phox C242Tアレル、糖化関連性遺伝子多型AR(Aldose reductase)-106Tアレル、または感染防御関連性遺伝子多型CD14(cluster of differentiation 14)-159Tアレルと、糖尿病患者の血中HbA1c値の変化値との間に、単相関で有意な差が生じていることを見出した。CD14の遺伝子多型と臨床データとの関係についての調査結果を表4に、p22phoxの遺伝子多型と臨床データとの関係についての調査結果を表5に、ARの遺伝子多型と臨床データとの関係についての調査結果を表6に示す。これら表4〜表6について、血中HbA1c値の変化値ΔHbA1cのp値に着目すると、CD14の遺伝子多型についてはp=0.0097であり、p22phoxの遺伝子多型についてはp=0.004であり、ARの遺伝子多型についてはp=0.001であり、何れにケースについてもp値は十分に低く、血中HbA1c値の変化値ΔHbA1cの値が統計学的に有意であると判断された。
【0066】
一方、インスリン感受性に関連するPPAR-r (Pro12Ala)、レジスチン(C-420G)、PGC-1(G1564A)、およびIRS-1(G3494A)、sEH(G860A)遺伝子多型については、糖尿病患者の血中HbA1c値の変化値との間に有意な関連性が認められなかった。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
次に、表4および表5の結果を参照して、ピオグリタゾン投与後6ヶ月経過後の被験者の血中HbA1c値を推定するために、重回帰分析により、血中HbA1c値の変化量dHbA1cを求める回帰式を決定した。説明変数には、被験者の現在の血中HbA1c値と、p22phox C242Tアレルの有無と、AR-106Tアレルの有無とを用いた。回帰式については、実施形態の説明中の(式1)に示した通りであり、重回帰分析の結果については、実施形態の説明中の表2に示した通りである。(式1)の回帰式により求めた変化量dHbA1cから、(式3)により6ヶ月経過後の血中HbA1c値の推定値を求めることができ、(式2)により3ヶ月経過後の血中HbA1c値の推定値を求めることができた。
【符号の説明】
【0071】
1 病院
2 分析機関
3 サービス提供機関
4 通信回線
11 採血手段
12、22 コンピュータ
21 遺伝子多型解析用アレイ
31 判定装置
32 CPU
33 メモリ
34 記録部
35 通信インタフェース部
36 操作部
37 表示部
38 入出力インタフェース部
39 内部バス