(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ローパスフィルタは、前記サンプルホールド部が出力した前記処理用信号の値が維持又は上昇した場合には、前記ピーク値を保持して閾値用基準値として出力することを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、紙幣においては、その一部又は全部がポリマーで形成されたものが実用化されている。一部がポリマーで形成された紙幣は、その部分がセンサ光の大半を透過する程度の透過性を有している。全部がポリマーで形成された紙幣も、外周部分や内側の一部に印刷が施されているものの、やはり少なくとも一部がセンサ光の大半を透過する程度の透過性を有している。従って、従来の紙幣検知装置では、たまたま発光素子と受光素子との間にポリマー紙幣の透過領域が位置してしまうとセンサ光の大半が透過されるので、その透過領域を判断部側が連続搬送される紙幣間のギャップであると判断し、紙幣が正確に検知できなくなるおそれがあった。
【0005】
紙幣の透過領域は、センサ光を100%透過するものではなく、例えば90%程度のセンサ光を透過するものとして形成される。従って、判断部の判断ロジックを、例えばセンサ光の発光量に対して95%以上のセンサ光を受光した場合には紙幣間のギャップであると判断し、センサ光の発光量に対して95%未満のセンサ光を受光した場合には紙幣に設けられた透過領域であると判断することで、正確に紙幣の通過を検知することが考えられる。
【0006】
ところで、このように全受光量に対して近接した閾値を設け、紙幣の検知を行う場合、前提として受光センサの出力値が、受光量の増減に対してリニアに変動することが必要となる。このようにリニアな特性の受光センサを用いれば、受光量が85%、90%、95%と上昇すれば、その上昇量に対応して出力値も上昇するので、上述したような紙幣検知を行うことができる。
【0007】
しかしながら、受光センサの中には、ある一定の受光量までは出力値がほとんど上昇せず、ある受光量を超えると一気に出力値が上昇するような受光量と出力値との関係が比例関係にない、いわばノンリニアな特性のものもある。受光量に対して出力値がリニアに変動するリニアな特性の受光センサは比較的高価である一方で、受光量に対して出力値がノンリニアに変動するノンリニアな特性の受光センサは比較的廉価である。このような価格背景に基づいて本発明者らは、上述した紙幣の検知においても、比較的廉価な受光センサを用いることができないか検討を行った。
【0008】
ここで、リニアな特性の受光センサ及びノンリニアな特性の受光センサそれぞれの、受光量と出力値との関係を
図9に示す。
図9においては、リニアな特性の受光センサの特性線LNと、ノンリニアな特性の受光センサの特性線nLNとを示している。ノンリニアな特性の受光センサを用いて上述した透過領域を含む紙幣を検知する場合には、特性線nLNの領域ARを用いることになる。数値的なイメージで比較をすると、リニアな特性の受光センサでは、全受光量に対して80%,85%,90%,95%の光量が入力されれば出力値80,85,90,95を出力するのに対して、ノンリニアな特性の受光センサでは、全受光量に対して80%,85%,90%,95%の光量が入力されれば出力値50,90,92,95を出力する。
【0009】
ノンリニアな特性の受光センサを用いる場合は、光を受光したか否かを判断するのが一般的であるから、判断ロジックとしては例えば「出力値30未満はオフと判断し、出力値30以上はオンと判断」といったようなものが用いられる。そのような用途に鑑みれば、受光量が0ではなく実質的にセンサ光を受光した場合に出力値を30以上確実に出力できればよく、その判断領域以外では入力された光量に対する出力値は変動することが許容される。そのため、ある条件下では90%の受光量に対して92の出力値を出力するものの、別の条件下では90%の受光量に対して95の出力値を出力するといったように出力値が変動することになり、全受光量に近い光量に対する出力値に基づく判断が事実上不可能なものとなっている。
【0010】
尚、上述した例は、ポリマー紙幣の不検知事象についてであるけれども、検知対象がクレジットカードやICカードといったカード類でも、その一部又は全部が透明であれば同様に起きうる課題である。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置全体の大きな改変を必要とせず、また、センサの種類を問わず、ポリマー紙幣又はカードの有無を正確に検知することができる検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る検知装置は、搬送される紙幣又はカードが所定位置を通過したか否かを検知する検知装置であって、光を透過しやすい透過領域と透過しにくい非透過領域とを有する紙幣又はカードを搬送する搬送路と、前記搬送路を搬送される紙幣又はカードの主面に対して交わるように照射されるセンサ光を出射する発光素子と、前記発光素子が出射したセンサ光を受光する受光素子と、前記受光素子の受光量を示す受光量信号に基づいて前記所定位置を紙幣又はカードが通過したか否かを判断する通過判断部と、を備える。本発明における通過判断部は、(1)前記受光量信号の変動幅を制限しインパルスノイズを除去することで、処理用信号を生成するスルーレートリミッタと、(2)前記処理用信号の値が、前記非透過領域の透過率を基準とし前記非透過領域を検出するための第1閾値を下回った場合に、前記第1閾値を下回る前の前記処理用信号の値を保持して出力する一方で、前記処理用信号の値が前記第1閾値を上回った場合にはその保持を解除するサンプルホールド部と、(3)前記サンプルホールド部が出力した前記処理用信号の値が減少した場合には、前記所定位置を検出対象となる紙幣又はカードが通過し終わるのに要する時間よりも長い時間をかけて、前記サンプルホールド部が出力した前記処理用信号の値のピーク値を漸減させながら閾値用基準値として出力するローパスフィルタと、(4)前記処理用信号の値と前記閾値用基準値に基づく第2閾値とを比較し、前記処理用信号の値が前記第2閾値を下回っている場合には、前記所定位置を1枚の紙幣又はカードが通過中であると判断し、前記処理用信号の値が前記第2閾値を上回った場合に前記所定位置を1枚の紙幣又はカードが通過完了したと判断する比較判断部と、を有する。
【0013】
本発明者らは、ノンリニアな特性を有する受光素子であっても、全受光量に近い領域において的確な判断基準となる閾値を設けるためには、検知対象となる紙幣又はカードが通過判断部に到達したことを的確に把握し、その到達時点に近い時点での全受光量を極力ノイズが乗らない状態で把握することが必要であると考えた。更に、その全受光量に基づいた閾値が透過領域を検知し得る程度に保持しつつ、検知対象となる紙幣又はカードが通過判断部を通り過ぎた場合には即座に初期状態に戻すことができるシステムを構築することが必要であると考えた。この考えに基づき、本発明における通過判断部では、スルーレートリミッタと、サンプルホールド部と、ローパスフィルタと、比較判断部とを設けている。
【0014】
本発明におけるスルーレートリミッタは、受光量信号の変動幅を制限しインパルスノイズを除去して処理用信号を生成しているので、受光量信号への外乱光の混在や、受光量信号の急激な変動によるインパルスノイズを除去し、閾値の設定に適合する処理用信号を供給することができる。サンプルホールド部は、その処理用信号に基づいて紙幣又はカードが通過判断部に来たか否かを判断するための第1閾値を用いて、処理用信号の保持及び解除を行う部分である。第1閾値は、紙幣又はカードの非透過領域の透過率を基準とし、処理用信号の値が下回った場合には紙幣又はカードが通過判断部に来たと判断するためのものである。この第1閾値は、透過領域の判断には用いられないので、光が受光素子に到達しているか否かを判断できればよく、受光素子がノンリニアな特性を有するものであっても誤検知が生じないような低い値に設定することができる。サンプルホールド部は、処理用信号の値が第1閾値を下回った場合には、処理用信号の保持を解除する。このように処理用信号の保持を解除するため、何らの対策もしなければ、処理用信号の値が急激に減少してしまうところ、本発明ではローパスフィルタを設けることで、処理用信号の値が急激に減少してしまうことを防止している。より具体的には、サンプルホールド部が出力した処理用信号の値が減少した場合には、所定位置を検出対象となる紙幣又はカードが通過し終わるのに要する時間よりも長い時間をかけて、サンプルホールド部が出力した処理用信号の値のピーク値を漸減させながら閾値用基準値として出力する。
【0015】
このように閾値用基準値を出力すると、処理用信号の値の急激な減少に追従しない閾値用基準値を出力することができる。この閾値用基準値は全受光量の出力値より微小に小さいものの、透過領域を判断するにあたっては実質的に同等であるとみなして第2閾値を設定することができる。換言すれば、紙幣又はカードの透過領域が通過中の場合には、その透過光による処理用信号の値が第2閾値よりも低くなるように設定することができる一方で、紙幣又はカードが通りすぎた場合には、その全受光量における処理用信号の値が第2閾値よりも上回るように第2閾値を設定することができる。このように第2閾値を設定することで、比較判断部では、処理用信号の値と第2閾値とを比較し、処理用信号の値が第2閾値を下回っている場合には、所定位置を1枚の紙幣又はカードが通過中であると判断し、処理用信号の値が第2閾値を上回った場合に所定位置を1枚の紙幣又はカードが通過完了したと判断することができる。
【0016】
また本発明に係る検知装置では、前記ローパスフィルタは、前記サンプルホールド部が出力した前記処理用信号の値が維持又は上昇した場合には、前記ピーク値を保持して閾値用基準値として出力することも好ましい。
【0017】
本発明では、第2閾値が設定された後、紙幣又はカードが通過判断部を通過した場合には、サンプルホールド部が出力した処理用信号の値が上昇する。そこでこの好ましい態様では、サンプルホールド部が出力した処理用信号の上昇に対応し、そのピーク値を保持することで紙幣又はカードの通過完了を判断するとともに、紙幣又はカードの連続検知が可能となる。
【0018】
また本発明に係る検知装置では、前記発光素子は、高周波回路により駆動され、前記通過判断部に環境ノイズを排除するためのハイパスフィルタを設け、このハイパスフィルタを通すことで前記処理用信号を得ることも好ましい。
【0019】
この好ましい態様では、発光素子を高周波で交流駆動し、通過判断部には環境ノイズを排除するハイパスフィルタを設けることで、直流成分である環境ノイズをカットし、交流成分のみを取り出すことができる。従って、直流成分で駆動される別の発光素子からの光といった外乱光が入射しても、それらの影響を排除することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、装置全体の大きな改変を必要とせず、また、センサの種類を問わず、にポリマー紙幣又はカードの有無を正確に検知することができる検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0023】
図1を参照しながら本発明の実施形態である紙幣検知装置について説明する。尚、以下の説明では、いわゆるポリマー紙幣を検知する紙幣検知装置を例に説明しているけれども、本発明に係る検知装置の実施形態はこれに限られるものではなく、例えば一部又は全部が透明なカードを検知するカード検知装置としてもよい。
図1は、本発明の実施形態である紙幣検知装置DMを示す概略構成図である。
図1に示されるように、紙幣検知装置DMは、紙幣搬送路10(搬送路)と、発光素子20と、受光素子30と、通過判断部40とを備えている。
【0024】
紙幣搬送路10は、紙幣Bを搬送するための通路である。紙幣Bは、紙幣搬送路10の所定位置101まで搬送される。紙幣Bが所定位置101まで搬送されたことを検知するため、所定位置101に発光素子20と受光素子30とが配置されている。
【0025】
発光素子20は、紙幣Bの有無を検知するためのセンサ光を出射する素子である。発光素子20は、紙幣搬送路10を搬送される紙幣Bの主面(表面又は裏面)に対して交わるように照射されるセンサ光を出射する。
【0026】
受光素子30は、発光素子20が出射したセンサ光を受光する素子である。受光素子30は、その受光量を示すデータである受光量信号(受光量情報)を有無判断部40に出力する。従って、発光素子20と受光素子30とは、所定位置101を挟んで互いに反対側に配置されている。発光素子20が出射するセンサ光は、必ずしも所定位置101における紙幣Bの主面に対して直交する必要はないけれども、本実施形態の場合は、センサ光が紙幣Bの主面に対して直交するように設けられている。
【0027】
通過判断部40は、受光素子30の受光量を示す受光量信号に基づいて所定位置101を紙幣又はカードが通過したか否かを判断する部分である。通過判断部40の具体的なブロック構成について
図2を参照しながら説明する。
図2は、通過判断部40のブロック構成図である。
【0028】
図2に示されるように、通過判断部40は、スルーレートリミッタ401と、包絡線検波回路402と、第1閾値入力回路403と、サンプルホールド回路404(サンプルホールド部)と、コンパレータ405と、ローパスフィルタ406と、第2閾値入力回路407と、コンパレータ408と、を備える。引き続いて、各構成要素の機能について説明する。
【0029】
スルーレートリミッタ401は、受光素子30の受光量を示す受光量信号に基づいて、処理用信号を生成し、サンプルホールド回路404に出力する部分である。スルーレートリミッタ401は、受光量信号の変動幅を制限しインパルスノイズを除去することで、処理用信号を生成するものである。換言すれば、スルーレートリミッタ401は、受光量信号のインパルスノイズを除去して信号を平滑化するために適用する最初の入力フィルタである。
図3は、スルーレートリミッタ401の処理前後の波形を示す図であって、スルーレートリミッタ401に入力される受光量信号の波形を(A)に示し、スルーレートリミッタ401から出力される処理用信号の波形例を(B)に示す。
【0030】
スルーレートリミッタ401は、マイコンが受光素子30から出力される受光量信号の「現在の読み値」変数を保持する。一般的なシステムでは、新しいセンサ読み値が生成されると、「現在の読み値」変数は新しい値で置き換わるように構成されているけれども、スルーレートリミッタ401では、新しい読み値が生成されると、最新の読み値が「現在の読み値」変数よりも高いか低いかに従って「現在の読み値」を1ずつ増減するように構成されている。従って、極端な読み値であるインパルスノイズが入力されても、最新の読み値が「現在の読み値」よりも高いことから、スルーレートリミッタ401は、「現在の読み値」を1つ増やす。発光素子30から出力される受光量信号の現在の読み値が200で、次の取得結果の値が300の場合、スルーレートリミッタは「現在の読み値」を201に更新する。スルーレートリミッタ401から出力される処理用信号が現在の読み値である300に到達するためには、続く99回のスキャンが現在の読み値よりも高い値である必要がある。この挙動は、各サンプルの影響を制限するように働くため、インパルスノイズが影響を与えている場合、インパルスノイズの影響を受けた1つの読み値は、読み値変数にわずか1ビット分のノイズしか生じさせない。尚、実際には、「現在の読み値」変数の変化がゆっくりであるため、サンプリングレートを高く設定する必要がある。
【0031】
サンプルホールド回路404は、処理用信号の値が第1閾値を下回った場合には第1閾値を下回る前の処理用信号の値を保持して出力する一方で、処理用信号の値が第1閾値を上回った場合にはその保持を解除するものである。第1閾値は、検知対象物である紙幣又はカードにおける非透過領域の透過率を基準とし、非透過領域を検出するための閾値である。本実施形態の場合、サンプルホールド回路404は、コンパレータ405からの指示信号に基づいて、処理用信号の値を保持し、その保持を解除する。
【0032】
コンパレータ405へは、第1閾値入力回路403から出力される信号と、スルーレートリミッタ401を通った処理用信号とが入力される。第1閾値入力回路403には、包絡線検波回路402からエンベロープ信号が出力される。包絡線検波回路402は、受光素子30から出力される受光量信号に基づいて、エンベロープ信号を生成する。包絡線検波回路402は、追加の変数を使用して、受光素子30のベースラインからの平均偏差を追跡し、包絡線を生成してノイズレベルを追跡することでエンベロープ信号を生成する。第1閾値入力回路403は、包絡線検波回路402から出力されるエンベロープ信号の信号値の25%を第1閾値とし、コンパレータ405へ出力する。
【0033】
コンパレータ405は、第1閾値入力回路403から出力される第1閾値と、スルーレートリミッタ401を通った処理用信号とを比較し、処理用信号の値が第1閾値を下回った場合には第1閾値を下回る前の処理用信号の値を保持して出力する。また、コンパレータ405は、第1閾値入力回路403から出力される第1閾値と、スルーレートリミッタ401を通った処理用信号とを比較し、処理用信号の値が第1閾値を上回った場合にはその保持を解除する。
【0034】
ローパスフィルタ406は、サンプルホールド回路404が出力した処理用信号の値が減少した場合には、所定位置101を検出対象となる紙幣又はカードが通過し終わるのに要する時間よりも長い時間をかけて、サンプルホールド回路404が出力した処理用信号の値のピーク値を漸減させながら閾値用基準値として出力する。また、ローパスフィルタ406は、サンプルホールド回路404が出力した処理用信号の値が維持又は上昇した場合には、ピーク値を保持して閾値用基準値として出力する。本実施形態の場合、ローパスフィルタ406は、デジタルフィルタであってピークホールド機能を持つIIRバターワース型ローパスフィルタとして構成される。ローパスフィルタ406のブロック構成図を
図4に示す。
【0035】
図4に示されるように、ローパスフィルタ406は、乗算器406aと、遅延器406bと、乗算器406cと、乗算器406dと、乗算器406eと、比較器406fと、加算器406gと、加算器406hと、を備える。比較器406fには、入力信号X(処理用信号)と出力信号Yとが入力され、X<Yの場合、すなわち入力信号Xが減少した場合には、1次のIIR型フィルタとして機能させるため、スイッチSWを遅延器406b側に切り替える。そして、フィルタ係数B1の乗算器406d,406eと、フィルタ係数A1の乗算器406cとからなる回路を形成する。フィルタ係数A1,B1は、ローパスフィルタ405の時定数が1秒程度となるように設定される。
【0036】
一方、X>Yの場合、すなわち入力信号Xが増加した場合には、入力波形に追従する必要があるため、IIR型フィルタに新たにフィルタ係数C1の乗算器406aを追加するように、スイッチSWを切り替える。入力信号は、フィルタ係数C1の乗算器406aを介して遅延器406bに代入され、同時に乗算器406c,406eにも代入される。フィルタ係数C1は、C1=(1―B1)/(A1*B1+B1)として定められる。
【0037】
このように構成することで、X>Yでは、入力信号XにC1を乗じた結果をZ−1とA1,B1へ供給することで、Y=Xとなる伝達関数を実現し、Z−1へもY=Xとなるための値を記憶する。一方、X<Yの場合には、単なる1次IIR型のローパスフィルタとして動作することから、下向きに包絡する。
【0038】
図
2に戻って説明を続ける。コンパレータ408へは、第2閾値入力回路407から出力される信号と、スルーレートリミッタ401を通った処理用信号とが入力される。第2閾値入力回路407には、ローパスフィルタ40
6から閾値用基準値となる信号が出力される。第2閾値入力回路407は、ローパスフィルタ40
6から出力される閾値用基準値の
95%を第2閾値とし、コンパレータ408へ出力する。
【0039】
コンパレータ40
8は、第2閾値入力回路407から出力される第2閾値と、スルーレートリミッタ401を通った処理用信号とを比較し、処理用信号の値が第2閾値を下回っている場合には、所定位置101を1枚の紙幣又はカードが通過中であると判断し、処理用信号の値が第2閾値を上回った場合に所定位置101を1枚の紙幣又はカードが通過完了したと判断する。
【0040】
引き続いて、具体的な紙幣の例を元に、本実施形態における通過判断部40の挙動を説明する。
図5には、その説明に用いる紙幣の一例である紙幣Bを示されており、
図6には、
図5に示す紙幣Bを検知する際の各部の挙動を示す信号波形が示されている。
図6の(A)は紙幣Bの流れを示し、(B)はスルーレートリミッタ401が出力する処理用信号の信号レベルを示し、(C)はサンプルホールド回路404が出力する信号レベルを示し、(D)はローパスフィルタ406が出力する信号レベルを示し、(E)は第2閾値入力回路407が出力する第2閾値の信号レベルと(B)に示す処理用信号の信号レベルとの比較を示す図である。
【0041】
図
5に示されるように、紙幣Bは、非透過領域Baと、透過領域Bbとを有する。非透過領域Baは、センサ光を実質的に通さないか、通しても極めて少ない量のセンサ光のみを通す領域である。紙幣Bは、全体が透明なポリマーシートによって形成されており、非透過領域Baはポリマーシートに着色を施して形成されている。透過領域Bbは、透明なポリマーシートに着色をせず、センサ光を透過させることができる領域である。
【0042】
インターバルが0.02秒程度で紙幣Bが連続搬送されると、処理用信号の信号レベルは
図6の(A)に示すようになる。本実施形態では、非透過領域Baの透過率を0%とし、透過領域Bbの透過率を90%としている。サンプルホールド回路404は、第1閾値(25%)を用いてサンプルホールドを行うので、
図6の(B)に示すように紙幣Bの間及び透過領域Bbの通過後にサンプルホールドを行う。
【0043】
ローパスフィルタ40
6は、サンプルホールド回路404から出力される信号レベルが低下すると漸減する信号値を出力するので、
図6の(D)に示すように、サンプルホールド間においては100%の信号レベルを漸減させながら(例えば99.9%となるように)閾値用基準値を出力する。
【0044】
第2閾値入力回路407からは、閾値用基準値の信号レベルの95%を第2閾値として出力する。上述した漸減期間であっても、0.1%程度しか信号レベルの低下が無いので、90%の透過率である透過領域Bbの検出には支障がない。
【0045】
なお、第1閾値は、固定の値を設定しても良い。固定の閾値の設定は、最も簡単で処理時間もメモリも節約が可能であるが、特に雑音環境など外的要因により設定値にばらつきが出る場合がある。このような場合には、実行時に入力される光量信号の値を複数取得し、これを基に閾値の設定を行う手法をとり得る。
【0046】
なお、本実施形態では、バターワース型のローパスフィルタ406を用いているが、これに代えて、時系列データを平滑化する手法を用いた移動平均型のフィルタ、例えば、L点移動平均ローパスフィルタを用いることも可能である。L点移動平均のローパスフィルタとしては、有限インパルス応答(FIR)フィルタを用いることも、無限インパルス応答(IIR)フィルタを用いることも可能である。ノイズが注入される状況においては、FIRフィルタが有効であるがメモリ使用量が多い。一方で、IIRフィルタを用いれば、メモリ使用量は低いがフィルタ機能は低下することに留意する必要がある。
【0047】
上記実施形態では、発光素子20は直流駆動による態様を想定している。しかしながら、光センサを使用する環境では、他のセンサも同じ機械や装置の内部で使用されており、他のセンサ光源が漏れて、透過率計測に悪影響を与える可能性がある。これを回避するため、発光素子20を高周波交流駆動し、受光側では環境雑音をカットするハイパスフィルタを用いることも好ましい。この好ましい例の概略回路構成を
図7に示す。
図7に示されるように、発光素子20を比較的高い周波数(例えば100kHz)で発光させるように、高周波駆動回路601を構成する。そして受光素子30側には、100p程度のコンデンサを含むハイパスフィルタ602を設け、その後段にはダイオード検波によるアナログ包絡線検波回路603を設けることで、直流成分のノイズを排除した受信信号を受け取ることができる。
【0048】
このような態様では、高周波で交流駆動される発光素子20からの信号を受光素子30で受光することとしておけば、装置内部等で影響を与える他のセンサ等は直流駆動で構成されているため、外乱となる要素はセンシングされず、ノイズの除去が容易で、正確な検知が可能になる。
【0049】
また、上記実施形態では、検知可能な紙幣として
図5に非透過領域Baと、透過領域Bbとを備えた紙幣Bを示したが、本発明では、これと異なる種類の紙幣の検知も可能である。例えば、
図8に示す例は、紙幣Bとは透過領域の配置が異なる紙幣BAを示す図である。
図8に示されるように、紙幣BAは、一端側から順に、非透過領域BAaと、透過領域BAbと、非透過領域BAaと、透過領域BAcと、非透過領域BAaとを有している。
【0050】
このように互いに透過率の異なる複数の透過領域BAb,BAcを有している場合、最も光を透過しやすい透過領域を透過するセンサ光を受光素子30が受光した光量信号に基づいて、上記実施形態で示した紙幣の有無判定が可能である。